石炭原料コンビナート

 

先日、新聞社の人から中国でダウケミカルが石炭を原料とする コンビナートを検討しているが、そういうものがコスト的にも成り立つ可能性があるのか、という質問がきています。
可能性があるから検討しているのでしょうと言っていますが。
昔、石炭化学といえば、石炭からアセチレンをつくりそれをもとに エチレン、ポリエチレンなどをつくっていたと思いますが、技術的に進歩をしたのでしょうか。


Dow発表 http://www.knak.jp/big/dow.htm#coal-to-olefin

要は石炭も石油も成分は同じですので、石炭を液化すれば石化原料になります。

南アフリカでは長い間アパルトハイトにより石油禁輸を受けていたため、サソール社が豊富な石炭を利用したフィッシャー・トロプシュ合成反応(というそうですが)による合成油の生産を行っていました。
三菱化学がサソール社とのJV、Sasol Dia Acrylates (South Africa) (Pty) Limitedを設立し、アクリル酸及びアクリル酸エステルの製造をおこなっていますが、これは「Sasol社の供給する最先端の独自の石炭液化技術により得られる石炭ベースのプロピレン及びエタノール並びに当社技術により生産されるノルマルブタノールの競争力ある安価な原料と、当社の世界的競争力をもつアクリル酸及びアクリル酸エステルの製造技術を組み合わせ」たものです。
 
http://www.m-kagaku.co.jp/newsreleases/2001/20011022-1.html
FSの結果、実際に三菱がJVをつくったのですから、競争力は十分あるということでしょう。

石炭液化によるジメチルエーテルの試作もいろんなところで行われています。

石油価格の上昇で石炭液化も競争力が出てきたのかも知れません。ダウのJV相手の神華集団は1995年に設立された国有企業で、 世界8大炭田の一つとされている神府東勝鉱区の開発・運営を担当しています。恐らく石炭のコストはかなり安いと思われます。
FSの結果が楽しみです。

石油公団 石油/天然ガス用語辞典 
http://oilresearch.jogmec.go.jp/glossary/framesetj_se.html

石炭液化  liquefaction of coal

高分子炭素化合物から成る石炭を低分子化合物に分解し,液体の炭化水素すなわち石油製品に変える技術である。
液化法は石炭を粉砕し,溶剤と混合して高温・高圧下で水素と直接反応させる直接液化法と,石炭を一度ガス化(石炭ガス化)し,生成ガスを分離・精製した原料を合成反応させ液化する間接液化法に大別される。直接液化は,20世紀初めにドイツで開発され,第二次世界大戦中に一時期工業化された実績を持つが,石油危機以降米国,西独を中心に技術開発が再開され,米国のEDS法,SRC II法,H−Coal法や西独のポット・ブロッヘ法などで数百トン/日規模のパイロット運転研究が実施された。
我が国はサンシャイン計画に基づき研究に取り組んでおり,NEDO(新エネルギー総合開発機構)の下で,オーストラリアに褐炭を対象とした50トン/日プラントを運転中で,また国内にれき(瀝)青炭を対象に250トン/日パイロット・プラントを建設運
転する計画も進められている。
間接液化は直接液化と比較してコストが高いとされているが,現在南アフリカのサソール・プラントが数万バーレル/日の商業生産を行っている。

もう一つの記事
http://www.knak.jp/china/china-3.htm#nedo

神華石炭液化プロジェクト事態はすでにスタートしています。
しかも、これを進めるためのFSは
NEDOの技術で実施したものでした。
1981年にNEDOが中国煤炭工業局(現煤炭工業局)との間で「石炭液化技術共同開発に関する協議書」を締結しています。


豪州ビクトリア褐炭液化計画のプロセスを添付します。