日本経済新聞 2008/11/30

株式譲渡益の確定申告
 


A.高齢者や専業主婦が株式譲渡益を確定申告する際の主な注意点

高齢者
 
社会保険料(国民健康保険、後期高齢者医療制度保険料、介護保険料)の負担増

  所得割の計算方法で「旧ただし書き」方式を採用する自治体では、社会保険料の負担増の度合いが大きい

 医療費の窓口負担増(70歳以上の高齢者)

  通常は窓口負担の割合は1割だが、以下の条件に当てはまると3割になる
 
  「住民税の課税所得145万円以上」かつ「
年間収入金額が単身世帯で383万円以上、2人以上世帯で520万円以上」
                             ↓
           株式については
譲渡益ではなく売却代金で判断される

専業主婦

 配偶者控除の対象を外れることによる負担増

  合計所得金額が38万円を超えると、配偶者控除の対象を外れる
     ↓
    
株式譲渡損失の繰り越し控除前の所得金額(その年の所得金額)で判断される



B. 株式譲渡益を確定申告すると、社会保険料はどれだけ上がるか?

  事例 夫の公的年金額は年240万円、妻は年60万円(妻の課税所得はゼロ)

  @は国民健康保険料と介護保険料、
  A後期高齢者医療制度保険料と介護保険料が、
    譲渡益の申告により、一切申告しない場合と比べて上がる金額を試算

  @国民健康保険に加入のケース
     夫67歳、妻66歳で、2人とも国民健康保険に加入
    A後期高齢者医療制度に加入のケース
       夫77歳、妻76歳で、2人とも後期国民健康保険に加入
 

(注)FPの杉浦恵祐さんの試算による。各社会保険料の2008年度の計算式に基づく。
  世田谷区と大阪市のカッコ内は譲渡益の申告がない場合の社会保険料。実際の保険料は異なる場合がある



C.複数口座間の損益通算のため確定申告をする場合は?
証券A社の口座で a円の譲渡益→ a円x1O%の税金(所得税と住民税)が源泉徴収される(源泉徴収口座の場合)
証券B社の口座でb円の譲渡損

                          ↓

・確定申告をしなければ、税金は軽減されないが、社会保険料に影響しない
・確定申告をすると、b円x1O%の税金が軽減される(軽減額の上限はa円×10%)

                          ↓

・ a円<b円の場合…通算後は譲渡損の方が大きいので、社会保険料に影響しない
・ a円>b円の場合…通算後に残る譲渡益の分は社会保険料に影響する→図B参照

                          ↓

税金の軽減額と社会保険料の増加額を比べて、どちらが得かを判断

 


D.妻(夫)が配偶者控除、配偶者特別控除の対象でなくなると、夫(妻)の税負担はどれだけ増えるか?
夫(妻)の課税所得 所得税の負担増 住民税の負担増 負担増の合計
195万円以下 1万9000円 3万3000円 5万2000円
195万円超330万円以下 3万8000円 3万3000円 7万1000円
330万円超695万円以下 7万6000円 3万3000円 10万9000円
695万円超900万円以下 8万7400円 3万3000円 12万400円
900万円超1800万円以下 12万5400円 3万3000円 15万8400円
1800万円超 15万2000円 13万3000円 18万5000円