オープンスカイ協定

1944年、52カ国が米国のシカゴに集まり、その後の国際航空輸送の基礎となる協定に合意した。こうして、航空輸送サービスは「二国間による航空サービ ス協定」をもとに決定されるという原則が出来上がった。輸送量、路線、使用する空港、輸送価格などは二国間の交渉により決定される。
シカゴ条約により確立した二国間協定体制は、50年以上、国際航空法の不可欠な部分をなしてきた。A国が自国の3空港へのB国航空機乗り入れを許可する代わりに、A国の航空機もB国の3空港へ着陸できるといった具合だ。安全と保安の問題はこの協定の基幹部分であり、通常互恵的なもので、国際民間航空機関 (ICAO)により監視される。

しかし、1970年代以降、航空輸送にも米国と欧州が推進する自由化が浸透し始めた。より自由な協定が考案されるようになり、政府による輸送量や価格面で の規制が排除されていった。これがいわゆる「オープンスカイ」協定であり、今後さらに政府の就航路線や使用空港に関する規制も緩和されていく可能性があ る。
オープンスカイ協定は、基本的に二国間、または地域内の各国において、航空サービス市場へのアクセスを規制緩和するというものだ。そうしてA国またはA地 域とB国またはB地域が相互に航空輸送の規制を取り払うことを許可される。どの航空会社がどの空港を使い、どの路線を使うかは市場が設定する需要により決定する。2002年までには世界の約70カ国で約85のオープンスカイ協定が実施されるようになった。そのうちの3分の2は米国が関係している。2004 年には、10地域でオープンスカイ協定が実施されるに至った。

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オープンスカイ協定が結ばれれば航空会社が自由に決められる。
すると新規参入が可能な競争環境になったとみなされ、米当局が航空会社に対し、独占禁止法の対象外と認定する例が多い。

antitrust immunity (“ATI”)

運賃協定
その他協定
 
コードシェア協定 一つの便を異なる航空会社が共同で運行することで、
 FFP協定 Frequent Flyer Program
 プール協定 競争路線において過当競争を避けるため収入をプール

このような提携関係(とりわけコードシェア便に見られる統合性の高い運行形態)は、ともすれば寡占化を促す存在にもなりかねない。
米運輸省(DOT)も、これを反トラスト法の適用対象と考えていた。

そこでDOTは、相手国とのオープンスカイ協定締結を引き替え条件に、提携便に関する反トラスト法の適用除外(ATI)を受け入れた。

欧米や米韓などオープンスカイ協定が結ばれた2国間では、同じ国際航空連合に属する2社がこの認定を受けて合弁事業を設立。スケジュールや価格を調整、効率的に収益をあげて、利益を配分する手法が一般化している。

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日本と米国の両政府は、米国の首都ワシントンで2009年12月11日、オープンスカイ協定の締結で合意した。

日米両政府が合意した柱は次の通り。日米両国の大臣が2010年10月までに署名し、実施される。

・日米の航空会社がともに、自国内、中間地点、相手国内地点、以遠地点のいずれも制限なく選択でき、自由にルートを設定できる。

・参入企業数は制限しない。

・便数は原則制限しない。

・2010年10月以降に、日米両国の航空会社がそれぞれ羽田空港と米国主要都市間で1日4往復まで旅客便を運航できる。

・2010年3月の成田空港の発着枠拡大時に、米国航空会社のシェア(市場占有率)を現行の28%から25%程度に低下させ、その後もシェアの低下を目指す。

全日本空輸は同じ航空連合「スターアライアンス」の米航空大手ユナイテッド航空、コンチネンタル航空とともに米独占禁止法適用除外(ATI)を申請。全日空など3社は、ATIを取得後に日米間の路線運航を一体運営する方針。

2009年12月24日共同リリース

ANA、ユナイテッド、コンチネンタル航空がアメリカ運輸省にATI申請

ANA、ユナイテッド航空、コンチネンタル航空の3社は合同で、ワシントン時間の2009年12月23日、ア メリカ運輸省に対し太平洋間ネットワークに関するATI(反トラスト法適用除外)の申請をしました。
今後申請が受理され、審査の後ATI認可が下りれば、3社合同でのネットワーク調整、収入管理、販売等を実施する戦略的提携(Joint Venture)に向けて大きく前進することとなり、お客様へより多くのフライト、運賃の選択を提供できるようになることから、ますますお客様への利便性 が向上します。

スターアライアンスパートナーとして、ANA、ユナイテッド航空、コンチネンタル航空は今後さらなる関係の強化を図り、お客様のさらなる利便性向上に努めてまいります。どうぞご期待ください。

米国は既に欧州連合(EU)や韓国など90を超える国とオープンスカイ協定を結んでいる。日本は発着枠に限りがある羽田空港、成田空港を除き、アジア各国とのオープンスカイ協定の実施で合意している。

JALは2月9日、ワンワールドメンバーであるアメリカン航空(AA)と太平洋線における提携を強化し、共同事業を行うことを決定、両社は2月12日、米運輸省に対し、独占禁止法の適用除外(ATI)を申請した。

早ければ、羽田空港の発着枠が拡大する10月にも認可される見通し。両社間で効率的な運航スケジュールを組むことなどが可能になる。

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■日本法上の処理
※公取委事務総長会見記録(2009/12/2)

(問)日米のオープンスカイ協定の関連でお伺いしたいのですが、年内にオープンスカイ協定が締結されるという 見通しになっており、各航空会社から独占禁止法の適用除外の申請があるかと思いますが、それを受けて、公正取引委員会としてどういったところに目配りしな がら対応されていかれるのか、その辺をお伺いできますでしょうか。

(事務総長)オープンスカイ協定、特に日米間でのオープンスカイというのが年内にも合意されるのではないかと いうことが言われているわけでありまして、そもそもオープンスカイ政策というのは、御案内のとおり2国間で乗り入れできる空港とか航空路線、便数等につい て、2国間の政府間、航空当局間で決定していたものが、航空事業者自ら事業者の判断で自由に決定ができるようになるわけであります。
 こういう航空自由化の下、締結される事業者間の協定に関しましては、アメリカであっても日本であっても、それぞれ
所管の当局に認可を受けるということが 必要になってくるということだろうと思います。
一定の範囲において独占禁止法の適用除外になっているということでありまして、米国においても、そういう
米国の反トラスト法の適用除外が受けられるかどうかということも1つの争点になっているわけでありますが、日本におきましても、現在、国際航空協定につきましては、航空法第111条第2項における要件、すなわち、利用者の利益を不当に害さないこととか、不当に差別的でないことと、あるいは加入、脱退を不当に 制限しないこと、協定の目的に照らして必要最小限度であることという要件に照らして、国土交通省が内容を検討されて認可の可否を判断します。
公正取引委員会は、国土交通大臣から認可の通知を受けますと、当該協定の内容を確認して、今、申したような4つの要件に合致しているかどうか、もしもその4つの要件に適合するものでなくなったと認める場合には、国土交通大臣に対して協定についての認可の取消しとか変更を求めるという措置請求を行うことができるというのが現在の航空法の規定になっているわけであります。
 いずれにしましても、これからどういう形でオープンスカイ、日米間の合意がなされ、それを踏まえて事業者間で話がなされるところでございますので、それ を待ってからということになるわけでありますが、公正取引委員会は以前からも公正かつ自由な競争を促進して利用者の利益を確保するということが重要であろ うということで考えておりますので、そういう視点から適切に対処してまいりたいと考えているところであります。

航空法

(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の適用除外)
第110条 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の規定は、次条第1項の認可を受けて行う次に掲げる行為には、適用しない。
ただし、不公正な取引方法を用いるとき、一定の取引分野における競争を実質的に制限することにより利用者の利益を不当に害することとなるとき、又は第111条の3第4項の規定による公示があつた後1月を経過したときは、この限りでない。

1.航空輸送需要の減少により事業の継続が困難と見込まれる本邦内の各地間の路線において地域住民の生活に必要な旅客輸送を確保するため、当該路線において2以上の航空運送事業者が事業を経営している場合に本邦航空運送事業者が他の航空運送事業者と行う共同経営に関する協 定の締結

2.本邦内の地点と本邦外の地点との間の路線又は本邦外の各地間の路線において公衆の利便を増進するため、本邦航空運送事業者が他の航空運送事業者と行う連絡運輸に関する契約、運賃協定その他の運輸に関する協定の締結

(協定の認可)
第111条 本邦航空運送事業者は、前条各号の協定を締結し、又はその内容を変更しようとするときは、国土交通大臣の認可を受けなければならない。

2 国土交通大臣は、前項の認可の申請に係る協定の内容が次の各号に適合すると認めるときでなければ、同項の認可をしてはならない。

1.利用者の利益を不当に害さないこと。
2.不当に差別的でないこと。
3.加入及び脱退を不当に制限しないこと。
4.協定の目的に照らして必要最小限度であること。