1965年に、水着では国際的な知名度を有する英国のメーカー、SPEEDO社とライセンス契約を結び、日本における同社ブランド製品の製造・販売のみならず、SPEEDOブランドグループ全体における最先端技術の開発の役割も担ってきた。

ミズノが英スピード社の協力を得て完成させた話題のサメ肌水着は「スピードファーストスキン」。採用した素材は東レと共同開発の「アクアブレードR」。この素材表面に刻まれたサメ肌状のざらざらの正体は「リブレット」と呼ぶ微小な凹凸だ。

シドニー五輪の競泳競技で、ファーストスキンの着用者は、出場選手1677人の6割にあたる1006人(138カ国)に上った。メダルは、151個のうちの100個(66%)を獲得。

しかし2006年、創業100周年を機に、『全商品のブランドを“MIZUNO”に統一する』方針を決定。これに基づき、まだ期間が残っていたライセンス契約を、2007年5月31日付で打ち切り、以後は自社ブランドの水着を製造・販売することとなった。

なおライセンス契約については、三井物産に事実上譲渡(三井物産が改めてSPEEDO社と契約)し、契約切れ後直ちに商品展開。三井物産は、商品製造をゴールドウインに委託。

1951年、富山県西部の小矢部市に、ゴールドウインの前身である株式会社津沢莫大小(メリヤス)製造所を設立。

1952
・今日のスポーツ産業の隆盛を先取りし、一般メリヤスメーカーから、スポーツウエア専業メーカーへと転身。現在の方向性を確定づける

1963年、社名を株式会社ゴールドウインに改める。

ーーー

2006.12.15 三井物産/ゴールドウイン

三井物産、ゴールドウインをメインパートナーとして「SPEEDO(スピード)」ブランドを展開
2008年春夏シーズンより販売開始

三井物産株式会社は、英国 SPEEDO INTERNATIONAL LIMITEDと、世界のトップスイムブランドである「SPEEDO」の日本におけるトータル展開につき、ライセンス契約を締結いたしました。同時に、スイムウエア・ゴーグル・アパレル等、「SPEEDO」の主要商品カテゴリーの開発・製造・販売を担当するパートナーとして、株式会社ゴールドウインとサブライセンス契約を結びました。

スピードインターナショナル・三井物産・ゴールドウインの3社は、強固なアライアンスネットワークを形成し、現在173ヶ国で展開するグローバルブランドの製品販売を、2008年春夏シーズンより日本で開始いたします。

ーーー

スピードの水着を使っていた北島康介選手や寺川綾選手らの契約は、ミズノに引き継がれた。

ミズノ 特別損失

ライセンス契約解除に伴う費用:スピード社とのライセンス契約の早期解除に伴う諸費用

  2007/3月期 327百万円
  2008/3月期 252百万円

北島康介


北島 康介(きたじま こうすけ、1982年9月22日 - )

「SPEEDO」ブランドの水着を愛用しており、全世界で展開しているブランドの広告にも日本代表として加わっている。東京SC時代は、広告規制の絡みもあり同クラブと関係が深かった「arena」ブランドの水着を着用し、規制の枠内で同ブランドの広告活動も行っていたが、2004年に北島に関し独自のCM活動が解禁となってからは、真っ先に「SPEEDO」水着に乗り換えた。

2004年1月13日

ミズノ「スピード」で北島康介選手と契約

ミズノは「スピード」ブランドで03年度世界選手権の100・200m金メダリストである北島康介選手とアドバイザリー契約を結びました。期間は2004年の1年間ということ。

今後、北島康介選手はスピードのスポーツウエア、水着、ゴーグル、タオル、スイミングキャップ等を使用することになります。

他、ミズノ商品開発へのアドバイス、JOC契約に基づく肖像権の使用及びイベントへの参加なども含まれていて、これから水泳業界の広告塔となっていくに違いない。

2005年01月15日

北島 ミズノとの契約を4年間延長

 競泳のアテネ五輪男子平泳ぎ2冠の北島康介(22=東京SC)がミズノとのアドバイザリー契約を4年間延長したことが14日、発表された。05年から08年までの異例の長期契約で、北京五輪までの完全サポートを受けることになった。



2008年05月13日 相沢光一(スポーツライター)

http://diamond.jp/series/sports_opinion/10013/

 

スピード社水着問題」 企業の論理に翻弄されメダルに赤信号

――北京オリンピック開幕直前に勃発したドタバタ劇

 北京オリンピック開幕まで3ヵ月を切ったというのに、競泳日本代表チームが迷走を続けている。ご存じの通り、好記録が出せる水着の着用を巡って揉めているのだ。

 今年2月、英国・スピード社が最新の機能を満載した水着「レーザー・レーサー」を発表。着用した選手が軒並み好記録を出した。今季はすでに18の種目で世界記録が更新されているが、このうち17が「レーザー・レーサー」を着用した選手によるものだ。日本代表選手が試しに着て泳いだところ、100mで0.5秒は短縮できる感触があったという。北京オリンピックでは6割以上の選手が着用し、上位を独占するともいわれている。

 ところが、日本の選手は「レーザー・レーサー」を今のところ使用できない。日本水泳連盟が日本代表公認ウェアとして公認しているメーカーは、ミズノ、アシックス、デサントの3社。スピード社とライセンス契約を結んでいるゴールドウィンは公認メーカーではないためだ。

3週間で新商品開発という無理難題

 現場からは「このままではメダルは獲れない」という声があがった。この声に押される形で日本水連は5月7日に理事会を開き、3社合わせて1億円を超すといわれる違約金を払ってでもスピード社の水着を使用できる新たな契約を結ぼうと動いた。

 しかし、公認3社の抵抗は大きかったようだ。3社は長い年月をかけて水連とのパイプを築いてきた。大会を後援し、有力選手には用品の提供などの支援を行っている。それもこれもオリンピックの舞台で自社のブランドマークをつけた選手が活躍し、ブランドイメージを高めるためである。もし、スピード社の水着使用が認められたら、個人的にメーカーと契約している選手(北島康介=ミズノ、柴田亜衣=デサントなど)以外の多くは「レーザー・レーサー」に流れるだろう。そうなったら、これまでの努力は何にもならなくなる。

 現場の声とメーカーの抵抗の板ばさみになった日本水連はスピード社公認の決断を下せず、かわりに3社に対し、5月30日までに現状の水着の改良することを要請した。しかし、「レーザー・レーサー」はNASAをはじめ、多くの研究機関の協力を得、3年あまりをかけて開発されたといわれる。それに匹敵するものを3週間で作れというのは無理難題。その間、選手たちはスッキリしない気持ちを抱えて直前練習をしなければならないのである。

自社ブランド確立のため長年のパートナーと決別したミズノ

 なぜ、こんな事態が起こってしまったのだろうか。

 ポイントとなるのはミズノである。ミズノは昨年5月まで、スピード社とライセンス契約を結んでいた。つきあいは長く、業務提携関係になって40年以上になる。競泳関係者は「スピード=ミズノ」と思い込んでいる人もいるほど。日本のエース・北島康介もアテネオリンピックではミズノを通してスピード社の水着を着用。両社が共同開発したサメ肌水着で2個の金メダルを獲得した。ミズノがライセンス契約を続けていれば、今回の騒動は起こらなかったのである。

 契約解除はミズノサイドの意向だといわれる。理由は自社のスイムブランドの確立。スピードのブランドを持つことは売上には直結するが、自社のアピールにはならない。スピードではなく、ミズノのブランドマークをつけた水着を選手に着せ、技術力やイメージを訴求したかったのだ。

 独自に開発した新作水着にも自信があったようだ。ミズノが発表したのは「カジキ水着」。時速100キロ以上で泳ぐカジキの体表面を研究、生地にはそのぬめりと同様のジェル加工がほどこされ、水になじませて抵抗を減らすというものだ。

 しかし、着比べた関係者によれば、機能性は「レーザー・レーサー」に軍配が上がる。

 ミズノとスピード社は長年ともに技術開発を行なってきたパートナーだ。基本的にはライバル会社だから情報を共有することはないだろうが、ミズノの開発担当者はスピード社が画期的な水着を作っているという噂ぐらいは聞いたことがあるはずである。それに勝てると思っていたのだろうか。

ミズノが読み違えた規定強化の流れ

 キーワードは“浮力”である。「レーザー・レーサー」は生地を超音波で貼り合わせたうえ体を締めつけ抵抗を極限まで減らした点や生地の撥水性が特徴とされるが、着用した人によれば一番の違いは浮力だそうだ。とくに脚の部分が浮きやすく、水の抵抗を受けにくい姿勢(ストリームライン)が作りやすいという。

 だが、国際水泳連盟には「競技中に速さや浮力、持久力の向上につながる道具を身につけてはいけない」という規則がある。最近は用具規定が厳しくなる傾向にあり、ミズノは浮力に抵触する「レーザー・レーサー」は認められないと読んでいたフシがある。

 しかし今回は問題視されることなく許可された。浮力に関する明確な数値規定はなく、規定違反かどうかは国際水連役員の裁量で決まる。加えてスピード社は世界のトップブランド。英国の会社でもあり、ヨーロッパ人の役員が多い国際水連への影響力も大きい。その力学で不問にふされたとも考えられる。その辺をミズノは読み違えたともいえるのだ。

 この水着騒動は見方を変えれば、スポーツブランドの主導権争いの側面がある。スピード社にはトップブランドとしてのプライドがある。パートナー関係といっても意識ではミズノは傘下の会社。そこが、もう世話にはならぬとばかりに新たにブランド展開を決め、独自に水着開発を始めた。

 また、ミズノは陸上競技をはじめ多くの競技で世界的なブランドになっている。競泳界でも強力なライバルとなる可能性はあり、その危機感から総力をあげてつぶしにかかったと見ることができる。アスリートが企業の論理に振りまわされる構図がここにはある。

新素材が救世主となるか?
ドタバタに翻弄される選手たち

 ともあれこの騒動、今後どう展開するのだろうか。

 まず、30日までに3社の開発部門がどのような答えを出せるかだ。日本には水の抵抗を減らす効果ではスピード社を上まわる素材を開発した山本化学工業という会社があり、3社はこの素材の導入、独自の技術を合体させて改良水着の開発に取り組んでいる。おそらく担当者は今、徹夜仕事を強いられているにちがいない。

 しかし、限られた時間で「レーザー・レーサー」と同等の戦闘力を持つ水着ができるのか。また、もしできたとしても、国際水連の規定というハードルもある(山本化学工業の素材自体はすでに認められているが)。

 この水着改良案が不調に終わった場合は、ギリギリになってスピード社の水着使用を認めることになる。だが、「レーザー・レーサー」は特殊加工のため、大量生産はできない。世界の強豪のひとつに数えられる日本競泳陣が水着で悩んでいる状況とあれば、ライバル国がスピード社に働きかけて「時間がなくて用意できない」と断らせることだって考えられる。まだ、二転三転の波乱がありそうなのだ。

 スポーツの面白さは本来、よりイーブンな条件でアスリートが力や技、気持ちなどを競うところにある。用具の進歩は競技の発展に欠かせないが、その優劣で明らかな差が出る状況はやはりおかしい。差が出やすい全身水着を禁止し、覆うのは体の表面積の何パーセント以下といった規則を考える時期にきているのではないだろうか。

 でなければ気の毒なのは、このドタバタに翻弄される選手たちである。