ブログ 化学業界の話題 knakのデータベースから 目次
これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。
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2008/11/1 米FDA、バイエルのサプルメント入りアスピリンで警告
米FDAは10月28日、バイエルに対し、2つのサプルメント入りOTCアスピリンで警告を発した。
効果、承認を得ていないこと(違法性)、消費者をミスリードするという点が問題となった。
問題となったのは@Bayer Aspirin with Heart Advantage とABayer Women's Low Dose Aspirin + Calcium の二つで、ともにFDAの承認を受けていない。
@は植物ステロールを含んでおり、包装にはコレステロール管理に役立つと記載されている。
Aは骨を強化し、骨粗鬆症を防止するとしている。
FDAではこれらの記載は消費者にこれを飲む目的や飲む期間について間違った認識をさせるとしている。
また、ビタミンやハーブのようなサプルメントは医薬品と異なり、安全性や効能を証明する必要はない。しかし、既に承認された医薬品にそれらを加えると、全く新しい医薬品となり、販売の前にFDAの承認を必要とするとしている。
FDAではまた、食物やサプルメントの包装に、植物ステロールが心臓病を減らすなどの健康上の効能をうたう場合は、承認を与えている。
FDAは今回、回収命令は出していないが、速やかな措置を求めている。
これに対して、バイエルでは販売する権利を主張している。
同社では宣伝で、これらを飲む場合は事前に医者に相談することと記載しており、@の場合は更にコレステロール低下剤の代わりにはならないと伝えており、問題はないとしている。
本件は下院でも問題となり、バイエルが組み合わせ製品を直接消費者に販売し、消費者をミスリードしていないか、調査を開始した。
サプルメントの業界団体のAmerican Herbal Products Association は医薬品・サプルメントのコンビネーションの基準をFDAに求め、全てを禁止するのはおかしいとFDAを批判している。
各社の中間決算が順次、発表されている。
2008年3月期には、石油化学各社は原料価格高騰分をフルに価格転嫁できず、減益となったが、9月中間決算では特に7-9月にナフサが大幅に上昇、これが転嫁できていないために、大幅な減益となっている。
既報のとおり、第4四半期にはナフサは大幅に値下がりする(60,000円/klを切る)ため、値上げへの需要家の抵抗は強く、中国市場では既に製品価格は下落しているため、下手をすると転嫁できないままとなる恐れもある。(7-9月にナフサは15千円/kl 弱のアップとなっているが、これはPE、PPでは30円/kgに相当する。)
各社は当然これは転嫁するという前提で年間予想をつくっている。(下記の通り、三井化学は年間の交易条件差をゼロとしている。)
各エチレンセンターは販売不振で減産に入っているため、価格転嫁が実現できない場合、大変なこととなる。
2008/10/31 第3四半期 国産ナフサ基準価格決定
住友化学と三井化学は棚卸資産の評価で後入先出法を採用している。
このため、最高値のナフサが全量、費用に落ちることとなり、売価に転嫁できない分がそのまま損失となる。
(逆に下期にナフサが下がると、下がった分がまるまる損益に反映される)
三菱化学や東ソーは総平均法を採用している。
この場合、上期は前期末の安いナフサとの平均で原価を計算し、売上原価も前期末の安い製品との平均で決まるため、損益への影響は緩和される。
(但し、下期はナフサ価格低下を受けて売価も下がるが、原価は9月末の高いものとの平均となるため、損益は悪化する)
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住友化学
単位:百万円(配当:円) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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営業損益対比(億円)
07/9中 08/9中 増減 08/3 09/3
予想増減 基礎化学 79 -12 -91 106 -20 -126 石油化学 20 -101 -122 45 25 -20 精密化学 61 22 -40 114 75 -39 情報電子化学 -63 123 186 63 155 92 農業化学 108 123 14 209 235 26 医薬品 260 192 -67 465 310 -155 その他 22 -36 -58 37 -80 -117 全社 -5 -1 6 -15 - 15 営業損益合計 484 310 -174 1,024 700 -324
基礎化学、石油化学が赤字に転落した。基礎化学は合繊原料やメタアクリルを含む。
原料価格高騰、円高の影響が大きい。後入先出法の影響を受けている。なお、同社では下期のナフサ価格を54,000円/kl と想定している。
石油化学は下期で上期の赤字を取り消し、年間黒字予想としている。
情報電子化学は、偏光フィルムやカラーフィルターが生産能力の増強や生産性の向上が寄与して販売が大きく増加、大幅増益となった。
医薬品は研究開発費の増大で減益。
「ラービグ計画」は、2009年第1四半期の稼動開始を予定している。
サウジ・アラムコが運営してきたラービグの石油精製設備は、2008年10月1日をもって運営や修繕などの業務を含めPetroRabigh が全面的に引き継いだ。
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三井化学
単位:百万円(配当:円) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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営業損益対比(億円)
07/9中 08/9中 増減 08/3 09/3
予想増減 基礎化学品 196 -2 -198 335 220 -115 機能材料 190 92 -98 359 190 -169 先端化学品 50 36 -14 108 90 -18 その他 14 -2 -16 34 -50 -21 全社 -23 -24 -1 -63 営業損益合計 427 100 -327 772 450 -322
機能材料(エラストマー、ウレタン材料等)、基礎化学品が大幅減益となった。
特に基礎化学品では〔変動費差+価格差〕の交易条件差が -150億円ある。(全社合計では-200億円)
同社も後入先出法の影響を受けている。
同社では年間の交易条件差はほぼゼロとしている。(下期の交易条件差は +200億円となる)
(前年との営業損益差は数量減 -120億円と 固定費増 -206億円)
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三菱ケミカルホールディングス
単位:百万円(配当:円) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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営業損益対比(億円)
07/9中 08/9中 増減 08/3 09/3
予想増減 ケミカルズ 121 70 -51 109 70 -39 ポリマーズ 107 -5 -112 112 90 -22 エレクトロ・アプリケーションズ 168 106 -62 316 250 -66 デザインド・マテリアルズ 62 27 -35 97 80 -17 ヘルスケア 212 372 160 572 790 218 サービス 51 62 11 141 120 -21 全社 -56 -70 -14 -97 -150 -53 営業損益合計 665 562 -103 1,250 1,250 0
同社は今期からセグメントの組替を行った。
石油化学については、同社は総平均法を採用している。
上期では、製品と原料の価格差はケミカルズで-110億円、ポリマーズで-90億円あるが、総平均法による在庫評価益が162億円あり、減益幅が薄まった。(他に、数量差 -40億円、合理化・固定費差 -50億円など)
下期にはナフサ値下がりで逆に在庫評価損となるが、下期損益はケミカルズでゼロ(上期は+70億円)、ポリマーズは+95億円(上期は-5億円)となっており、当然上期の未転嫁分を下期に転嫁できると見ている。なお、本中間決算の営業外収益に昨年の鹿島事故の受取保険金 89.91億円が入っている。
ヘルスケアの増益は、2008年10月の田辺三菱製薬の合併に伴うもので、2008年上期の損益には田辺製薬分が入っていないことによる。これを加えると前年上半期及び前年年間と余り変わらない。
田辺三菱製薬 営業損益(億円)
07/3 08/3 増減 上期 下期 田辺製薬 305 184 ー ウエルファーマ 400 141 →田辺三菱 540 合計 704 725 21
米国のエタノール最大手 VeraSun Energy は10月31日、子会社24社とともに会社更生法(Chapter 11)を申請したと発表した。
コーン価格の更なる上昇を予想して先物購入をした結果、第3四半期にコストが急上昇し、大きな赤字を計上した。資本市場の悪化、与信のタイト化により、資金が行き詰ったもの。
同社では雇用と生産販売は従来どおり続けるとしている。
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同社はArcher Daniels Midland とトップ争いを続けている。(第3位には大きく水を開けている)
同社は2001年の設立で、本社は南ダコタ州
Sioux Falls にあり、8州16箇所(1箇所は建設中)に工場を持っている。
85%エタノール含有のガソリン
E85
も直接販売している。
米国の再生可能燃料能力(単位:百万ガロン/年) | ||||||||||||||||||||||||||||||||
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ソース Renewable Fuels Association (October 30, 2008) |
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同社の本年第2四半期は好業績であった。
売上高は前年第2四半期の
169.6 百万$ から499%増えて 1,015.2百万ドルになった。
増設により販売数量が420%増えたこと、価格が17.1%上がったことによる。
この結果、金利・税金・償却前利益(EBITDA)は前年の33百万ドルから73百万ドルに増えた。
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コーンの市況は、石油や他の農作物と同様、7月から急落した。
当然、エタノール価格も下落した。
しかし、同社は高値が続くと見て先物を購入していたため、コストと売価が大幅な逆ザヤとなった。
同社は9月に、第3四半期の損益は103百万ドル程度の赤字になると株主に予告している。
同社では資金繰りのため、9月16日に20百万株の増資を発表したが、2日後にそれを取り消し、Morgan Stanley に代替案の検討を依頼していた。
信越化学
減益発表が相次ぐなかで、信越化学は好調である。
単位:百万円(配当:円) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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営業損益対比(億円)
07/9中 08/9中 差異 08/3 09/3
予想増減 有機・無機化学品 482 555 73 995 塩ビ系 163 182 19 315 シリコーン系 211 228 17 431 その他 108 145 37 249 電子材料 790 794 4 1,621 半導体シリコン 695 699 4 1,411 その他 95 95 0 210 機能材料 130 154 24 260 調整 -2 -2 0 -4 合計 1,400 1,501 101 2,871 3,070 199
塩ビは日米の住宅不振、中国の需給緩和などで、世界の各社が大幅減益となっているなか、シンテックは世界中の顧客に販売し、フル操業を継続した。
昨年度はさすがに減益となったが、中間決算では前期並みとなった。
なお、ドルベースでは 2007/6 の134百万US$から2008/6は153 百万US$と増えている。信越化学の塩ビ系連結営業損益182億円に対してシンテックの上期経常損益は160億円で、ほとんどをシンテックで確保した。
これに対して、米国の塩ビ各社はトントンか、赤字の状況。
好業績を受け、同社は配当をどんどん増やしている。
中国国家品質監督検査検疫総局は10月30日、日本から輸入したしょうゆなどから有害物質トルエンと酢酸エチルが検出されたことが広東省検疫当局の調べで分かったと発表した。
検出されたのはトルエンは0.00064〜0.0053ppm、酢酸エチルは0.417〜0.537ppm で、輸入業者が既に対象製品を販売店から撤去したという。
北京の日本大使館は31日、問題の商品名とメーカーを公表した。
ヤマサ醤油 「NH小包日式醤油」
万城食品
「NH小包わさびペースト」
キッコーマン 「公務小醤油」
キッコーマンは31日、同社に「公務小醤油」という名前の商品はないとした上で、下記の発表を行なった。
この件につきましては、日本醤油協会よりすでに、「微量であり、人の健康に影響を及ぼすとは考えられない」 との見解が示されております。(下記)
弊社としましても、トルエンおよび酢酸エチルは、通常、しょうゆに含まれていること、検出量が微量であることから、人の健康に影響をおよぼすものではないと考えております。なお、しょうゆ中に微量のトルエンが含まれていることについては、20年以上前より日本農芸化学会で報告されており 学会での定説とされています。
また、酢酸エチルは、醸造物中に香気成分として含まれます。酵母によって生成されたエチルアルコールと原料由来、あるいは酢酸菌や乳酸菌によって生成された酢酸から酢酸エチルが生成されます。
日本醤油協会では「いずれも微量であり、人の健康に影響を及ぼすとは考えられません」とし、検出レベルについて以下のように説明している。
上記検出レベルに対する考察
@ トルエン
○ 日本の水道水の水質管理目標値 0.2mg/L(ppm)以下
○ WHO 水質基準ガイドライン値 0.7mg/L(ppm)以下
上記の0.0053ppmは、水道水に設定された値に比較し十分に低いレベルである。A 酢酸エチル
醸造物中の酢酸エチルの濃度(ppm)
しょうゆ(15)、清酒(12〜45)、米焼酎(25)、高粱酒(中国酒)(1280)、茅台酒(中国酒)(1390)、
ビール(10〜20)、赤ワイン(95〜174)、白ワイン(46〜98)
上記の0.537ppm は、一般に醸造物中に含まれる量に比較し低いレベルである。
ヤマサ醤油も、「NH小包日式醤油」という商品名の商品は弊社にはありませんとし、キッコーマンと同じ説明をしている。
万城食品では、「検出された量はいずれも微量であり、当社としては人の健康に影響を及ぼすものとは考えておりません」としている。
同社では製造工程ではトルエン・酢酸エチルは一切使用していないが、包装フィルム製造時これらの物が使用されている事は承知しているとし、食品衛生法・食品・添加物の規格基準の何れの数値をも下回っているので、何ら問題ないものと判断するとしている。
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実はこれは厚生労働省の措置に対する報復であった。
厚生労働省は10月7日、以下の発表を行なった。
つぶあんからのトルエン、酢酸エチルの検出について
本日、別紙のとおり、名古屋市において公表されたのでお知らせします。
なお、トルエンと酢酸エチルが検出された製品の同一ロット品については、輸入者が自主回収を行っています。本事案の発生を踏まえ、厚生労働省としては次の対応をとったところです。
1 当該製造者からのあんについて、本日以降、輸入手続を保留
2 都道府県等に対し、同様の事案があった場合には直ちに報告するよう要請
3 当該品は日本国内において加工されておらず、未開封で流通していたことから、
中国政府に対し、製造段階における異物混入の有無等について確認を要請
<製品の概要>
1.品 名:つぶあん (賞味期限2009年4月17日)
2.輸 入 者:マルワ食品株式会社(静岡県磐田市宮本218-2)
3.原 産 国:中華人民共和国
4.製 造 所:LANGFANG TORA YA FOODSTUFF CO., LTD.(河北省廊坊市)5.検査結果
項目 苦情品 苦情品と同一品(1) 苦情品と同一品(2) トルエン 0.008ppm 0.008ppm 0.010ppm 酢酸エチル 0.16ppm 0.28ppm 0.11ppm 6.検査機関:名古屋市衛生研究所
「粒あんを食べてめまいがした」との苦情が保健所に寄せられ、食べ残しを検査した。
同日付の朝日新聞は以下の解説をつけている。
トルエンは、塗料の溶剤などとして使われる。空気中の濃度が高まると、のどや目に刺激を感じるとされる。健康被害が報告された中国製冷凍ギョーザの包装の外側から検出されたことがある。酢酸エチルはトルエンと同様に溶剤として使われ、マニキュアの除光液にも含まれる。口にすると頭痛や眠気を催すほか、意識を失うことがある。
実際には、この検査結果は、上記の日本醤油協会の「考察」によると、「いずれも微量であり、人の健康に影響を及ぼすとは考えられない」ものである。
検疫総局は、(それを知った上で?)、日本の報道を引用し、日本でトルエンなどが入った食品を食べた人が体調不良を訴えたと指摘している。
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国立医薬品食品衛生研究所の畝山智香子さんは「食品安全情報blog」で、「これは日本側が先にやった間違いだし、謝った方がいいと思うけど」、とコメントしている。
中西準子さんはホームページの雑感451-2008.11.4「信じられない認識と対応−トルエン」で、以下のように述べている。
これまで、マスコミの過剰報道がしばしば問題になってきた。しかし、厚生労働省がこうではどうしようもない。国際紛争の引き金になりかねない。猛省を望む。そして、もっと勉強してほしい、監視安全課と言うからには。
武田薬品工業
武田薬品の中間決算は前年同期比で増益となったが、損益は大幅減益となった。(但し、当初予想よりは増益)
配当は4円増配し、年間配当予想は176円とした。
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* 当初予想は2008/5/9 |
同社は Abbott
Laboratories との50/50JVのTAP
Pharmaceutical Products Inc.の会社分割を実施し、TAPの販売機能を武田ファーマシューティカルズ・ノースアメリカに、開発機能を武田グローバル研究開発センターに移した。
また、米国バイオ医薬品会社 Millennium
Pharmaceuticals, Inc. を買収した。
2008/4/4 武田薬品工業、米国事業再編
両社の子会社化により、両社の売上高が本年5月から武田の連結売上高に加わった。
円高による影響額(280億円の減収)を補い、増収となった。
この米国事業再編に伴い、多額の無形固定資産と「のれん」の償却や、仕掛中の研究開発費(インプロセスR&D)が発生、これらを上期に費用処理したため、一時的な費用 2078億円が発生した。
これを除くと、営業損益は前期比増益となる。
経常損益は買収に伴う米国の手元資金の大幅減と金利低下により受取配当が減少するなどで、実質ベースでも減益となった。
なお、TAPの分割によるルブロン事業の譲渡益を上期の特別利益に計上した。
米国事業再編によるTAP社の分割・子会社化およびミレニアム社買収の影響 | |||||||||||||||||||||||||||||
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なお、同社は2007年3月期に、移転価格税制に基づく更正処分に関する追徴税 571億円を計上した。
TAP Pharmaceutical Products との間の2000年3月期から6年間の製品供給取引等に関して、米国市場から得られる利益が武田に過少に配分されているとして、移転価格税制に基づき、追徴課税を受けたもので、同社は異議申し立てを行っていた。
この期間のTAPは利害の反する武田薬品とAbbott との50/50JVであり、大阪国税局の課税はおかしい。
2006/6/29 武田薬品、移転価格税制に基づく更正
しかしながら、今回、分割後のTAPは武田薬品の100%子会社となるため、移転価格税制が適用される。
このため、同社は取引価格について、関連企業間取引の価格設定の妥当性について事前に税務当局に確認を受ける制度である「事前確認」を申請、上記課税について、国税庁に対し、米国との相互協議申立書を提出した。
本年度の鉄鉱石価格は大幅に上昇した。
鉄鋼大手各社は2月に、2008年度の鉄鉱石(ブラジル産)について、資源最大手Vale do Rio Doce との間で前年度比65%の値上げで合意した。
1トン当たりの価格は80ドル弱となり、07年度と比べ約30ドル上昇する。鉄鉱石の値上げは6年連続。
2008/4/8 鉄鋼原料価格 急騰
スポット価格は140ドルにもなっており、この価格はそれでも非常に安いものであることが分かった。
6月23日にRio Tinto は宝鋼集団向けの価格(単位:cent/dry metric ton unit)が下記の通り決定したと発表した。
2007 2008 粉状鉱 80.42 144.66 79.88%up 塊状鉱 102.64 201.69 96.5%up
dry metric ton unit は含有鉄分1%当たりの鉄鉱石価格。
豪州産ヘマタイト系鉄鉱石には通常、鉄分64%程度、ブラジル産ヘマタイト系鉄鉱石には同66.50%程度が含まれている。
参考までに日本・韓国向けの上記Vale の価格(cent/dry metric ton unit)は次の通りで、Rio の中国向け価格より20%程度安い。
2008 Southern System fines 118.98 65%up
Vale do Rio Doce はRioとの値上げ幅の差の解消を狙い、日本や中国の鉄鋼メーカーに10月出荷分から1〜2割の追加値上げを求めた。
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しかし、中国では経済減速に伴い鉄鋼需要が頭打ちとなった。
鉄鋼大手は相次ぎ減産を打ち出しており、鉄鉱石の需要も落ち込んでいる。湾港倉庫の鉄鉱石在庫が増加している。
11月4日の中国紙は、Vale が中国向け鉄鉱石の12%追加値上げ要求を撤回したと報じた。
日本向けも値上げ要求を撤回するとみられる。→ 12%追加値上げ要求を撤回
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オーストラリア資源中堅のMount Gibson Iron はこのたび、中国鉄鋼大手の首鋼集団(Shougang Group )と1トン当たり40米ドルで鉄鉱石(塊状、粉状とも)の売買契約を結んだ。
同社は中国の日照鋼鉄などと長期契約(上記のRioの宝鋼集団向け価格と同価格)を結んでいるが、このうち数社から10ー12月期の出荷見合わせを要請され、11月に入って3社から契約破棄を通告されたという。
11月7日の日本経済新聞では、塊状201.69ドル、粉状144.66ドルから40ドルに(最大80.2%)の値下げとなっているが、これは価格のcent/dry metric ton unit を$/tと誤ったもので、粉状でみると、96ドルから40ドルへの値下げとなる。
同社は首鋼集団への安値での鉄鉱石販売とともに、首鋼集団からの出資も受け入れる。
中国首鋼グループ傘下の2社が1億6250万豪ドルを出資し、1株
0.6豪ドルでMount Gibson Iron の株式を購入し、支配権を得る。
これにより、今後の鉄鉱石供給を確保する。
首鋼グループは今年年初、鉄鉱石の供給を保障するねらいで、Mount Gibson Iron の株式を1株 2.60豪ドルで買い上げ、同社の支配権を獲得しようとした。
この時はオーストラリ
アの監督部門が公開買付を求め、阻止した。
しかし、金融危機により、同社の株価は下落を続けたため、今回、年初の23%の株価で買収することとなった。
この鉄鉱石の大幅値下げは他にも波及すると思われる。
三菱レイヨン
各事業とも原燃料価格の高騰、円高の進行、期後半からの世界的な景気減速による需要減の影響を受け、減収減益となった。
上期損益は前年同期の109億円から1億円、年間損益は前年の143億円からゼロになる予想で、配当も昨年の年間11円を年間6円に減配する。
一般的には売価上昇により増収となる企業が多いが、同社の場合、アクリル繊維が中国市場需要減退、生産調整強化により、前年同期比-116億円の減収となった。同部門は赤字に転落する。
同社は退職給付会計の数理計算上差異を翌年度に営業費用計上しているが、前年度の損の半年分30億円を計上したのも影響した。
株式市場の低迷により、今後、各社とも(損益算入の方法により差があるが)影響を受けると思われる。
特別損失としてインドネシアの紡績会社(日本向け紡績糸供給基地)を売却し撤退する損失引当43.5億円を計上した。(後記)
単位:百万円(配当:円) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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同社は2006年3月期以降、退職給付会計の数理計算上差異の処理を変更し、前年度の差異を翌年度に一括営業費用に落としている。
2008年3月期は28億円の損が発生、前期分調整後、営業損益で-21億円(純損益で-12億円)の処理を行なった。
2009年3月期は同様に61億円の損が発生、営業損益で-60億円(純損益で-36億円)処理する。
営業損益対比 (億円)
07/9中 08/9中 増減 07/3 08/3 09/3
予想増減 化成品・樹脂 131 33 -98 387 223 87 -136 アクリル繊維・AN 15 -32 -47 22 7 -71 -78 炭素繊維・複合材料 67 20 -47 121 110 32 -78 アセテート・機能膜 16 7 -9 66 34 12 -22 全社 -1 1 2 1 0 0 0 合計 228 29 -199 597 375 60 -315 数理計算上差異を除外すると、以下の通りとなる。
営業損益対比 数理計算上差異除外 (億円)
07/9中 08/9中 増減 07/3 08/3 09/3
予想増減 化成品・樹脂 136 52 -84 295 236 125 -111 アクリル繊維・AN 15 -29 -44 1 10 -65 -75 炭素繊維・複合材料 69 25 -44 103 113 40 -73 アセテート・機能膜 16 10 -6 54 36 20 -16 全社 0 1 1 1 0 0 0 合計 235 60 -175 455 395 120 -275
前年上期対比の減益175億円の内訳は以下の通り。
原燃料価格 -122
販売価格 37(為替-39)
数量 -41
コストその他 -49
合計 -175
特別損失の事業整理損失引当金として、特別損失に4,352百万円を計上した。
インドネシアの紡績会社(アクリル繊維) P.T. Vonex Indonesia 保有全株式をインドネシア人実業家Choi Wijaya 氏に売却し、インドネシアにおける紡績事業から撤退する。
同社は1974年設立、三菱レイヨン97.3%、Choi Wijaya氏 2.7%(当初株主の双日から取得)の出資で、90年代以降、日本市場への紡績糸供給基地であったが、日本産地縮小により糸需要が減少、業績が悪化していた。
原料コスト上昇、世界的需要減退で事業環境が急速に悪化したため撤退する。2009年1月に経営権を譲渡、4月に株式を譲渡する。
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東ソー
単位:百万円(配当:円) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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営業損益対比(億円)
07/9中 08/9中 増減 08/3 09/3
予想増減 石油化学 71 45 -26 150 76 -74 基礎原料 12 -8 -20 27 -90 -117 機能商品 207 66 -141 380 202 -178 サービス 17 18 1 34 32 -2 営業損益合計 307 120 -187 591 220 -371
前年同期比 -187億円のうち、
東ソー本体 -78億円(うち、売価差-購買価格差が-36億円)
連結子会社と調整が-108億円となっている。年間対比 −371億円は、
東ソー本体 -223億円(うち、売価差-購買価格差が-62億円)
連結子会社と調整が-148億円となっている。
基礎原料部門はVCM-PVCが中心で、機能製品部門にはウレタン原料がある。
同社はこれまでビニル・イソシアネート・チェーンに大きな投資をしてきたが、今後はこれらが足を引っ張る恐れがある。
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旭化成
ケミカルズの減益が大きい。
単位:百万円(配当:円) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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営業損益対比(億円)
07/9中 08/9中 増減 08/3 09/3
予想増減 ケミカルズ 362 185 -177 652 435 -217 ホームズ 48 30 -18 214 230 16 ファーマ 77 102 24 127 150 23 せんい 35 17 -18 72 20 -52 エレクトロニクス 115 82 -32 222 140 -82 建材 21 8 -13 28 15 -13 サービス・エンジニアリング等 27 31 3 52 50 -2 全社 -49 -53 -5 -90 -90 0 営業損益合計 637 401 -236 1,277 950 -327
ケミカルズでは上期の前期比増減 -177億円の内訳は、
数量差 -23
売価差 216 (うち為替要因 -100)
コスト差等 -370
となっている。
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三菱ガス化学の上期の損益は、今後の日本の化学会社の損益の方向を示唆している。
・中国市場需要減退、生産調整強化による減収 | → | 日本市場の需要減退も、輸出は壊滅的に |
→ | それに伴う競争激化による値下げ競争 | |
・上期の原料価格未転嫁 | → | (競争激化による値下げ競争→)上期の原料価格未転嫁分の転嫁も不可能に |
→ | 販売数量減、売価低下、減産によるコストアップで赤字に | |
・為替差損 | → | 円高で輸出及び海外事業損益で為替差損 |
・退職給付会計の数理計算上差異で損失処理 | → | 株価低落で損失増加 |
・事業整理損失 | → | 国内外での事業整理損失の増大 |
2008/11/11 SABIC、1系列で世界最大のPPプラント 生産開始
SABIC子会社IBN ZAHR(Saudi European Petrochemical Co.)はこのたび、Al Jubail で建設していたPPプラントが生産開始したと発表した。
能力は500千トンで、1系列としては世界最大。
第1系列 320千トン(当初
260千トン)と第2系列
320千トンと合わせ、合計能力は
1,140千トンとなる。
SABICはほかにYanbu でYANPET (SABIC/ExxonMobil JV) がPP(260+350千トン)を生産している。
また、IBN RUSHD (Arabian Industrial Fibers) がYanbuでPPプラントを建設する。
2008/8/12 SABICのArabian Industrial Fibers、PP進出
SaudiAramco と住友化学のJVのPetro-Rabigh は2系列(ホモ、ブロック各350千トン)合計700千トンのPPを建設している。
本計画は、Dow
のUNIPOL法を採用、ホモとランダムを生産する。
YANPET のPPと合わせると、SABICでのUNIPOL法PPの能力は175万トンに達する。
計画管理と基礎設計はAker Kvaerner が担当、建設は三星エンジニアリングが担当した。
IBN ZAHR は1984年にSABIC(70%)、Neste Oy(10%)、Eni
子会社のEcofuel (10%)、Arab
Petroleum Investment (APICORP) (10%) のJVとして設立された。
2006年7月にSABICがNeste Oy の持株を買収し、現在は80%の株主となっている。
IBN ZAHR ではPPのほか、MTBEを生産販売している。
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付記
本日の日本経済新聞に三菱レイヨンのルーサイト買収の記事が出た。
2008/9/5 MMAメーカー Lucite、売却か? 参照
三菱レイヨンは11月11日、ルーサイト買収を発表した。
Ineos 持分を含め 100%を、16億米ドル(外部借入金引受を含む)で買収する。
最新分は http://knak.cocolog-nifty.com/blog/