ブログ 化学業界の話題 knakのデータベースから      目次

これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。

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2011/11/19  オバマ政権、Keystone XL オイルパイプライン計画を凍結

米国務省は11月10日、カナダ・アルバータ州の原油を米南部テキサス州などの製油所に運ぶパイプライン計画 Keystone XL を2012年の大統領選挙後まで凍結すると発表した。

付記

オバマ大統領は2012年1月18日、これを認可しないと発表した。
安全性や環境保全などが完全には保証できないとの見解を示した。

オバマ大統領は3月22日、CushingからGulf Coastまでのパイプラインの建設の推進を決め、関係する役所にすみやかに認可するよう指示した。
共和党の
ベイナー下院議長は「大統領の認可さえ必要としないパイプラインの部分で功績を上げようとしている」と批判した。

中西部ネブラスカ州の水源地帯を経由することなどから環境団体が計画中止を要求しており、オバマ政権はSand Hills地域を避ける新ルート検討も進める。

今後の計画は2013年以降に決定される。大統領は「米国民の健康や安全、環境への影響に懸念があり、疑問に答える時間が必要だ」とした声明を発表した。

大統領はこのパイプライン計画で、石油の安定的なソースと数千人の雇用を求める声と、大統領がこれを認めた場合には来年の大統領選では支持しないとする環境保護団体のおどしの挟み撃ちとなった。

オバマ大統領は大統領選の争点となりそうな問題を多数、凍結している。

・スモッグの基準のレビューを2013年まで
・北極海の深海油田のリースを少なくとも2015年まで
・発電所の石炭灰の新基準を取りやめ

TransCanada 社が建設計画中のKeystone XL パイプラインは、カナダのオイルサンドを採掘・処理した合成原油の輸入拡大を目指す取組みで、既に操業中のKeystone パイプライン (Phase 1-2)が、カナダ産合成原油を米国中西部製油所に輸送するのに対し、現在検討中のKeystone XL パイプライン(Phase 3-4)はメキシコ湾岸製油所まで輸送する。

このうち、Phase 4が問題となっている。

ネブラスカ州の1/4を占めるSand Hills 地域は湿原地帯で、Ogallala Aquifer (帯水層)の上にある。

ネブラスカ州の責任者や住民はSand Hills 地域への懸念に加え、Great Plains 諸州の飲用水のソースであるOgallala 帯水層を横切ることに懸念を表していた。

 

オイルサンドについては 2011/4/14 「岐路に立つタールサンド開発」

TransCanada は国務省と共同で新ルートを探すが、遅延の結果、計画が中止となり、数万人の建設従業員その他の仕事がなくなり、数十億ドルの税収入がなくなるかもしれないとし、その場合、大量の石油を輸入せざるを得なくなると述べた。

なお、TransCanadaは、Cushingから メキシコ湾岸に延長するKeystone XL Phase Vについて、政府の認可次第で来年初めには建設できるとの見通しを示している。

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カナダのEnbridge Energy Partners もカナダの石油をシカゴ経由でCushingまでパイプラインで運んでいる。

同社はConocoPhillipsから米テキサス州とオクラホマ州を結ぶ Seaway Oil Pipelineの権益の50%を1,150百万ドル取得した。

残り50%の権益を持つ同業の米Enterprise Products Partners LP と共同で同パイプラインの運営にあたる ことになるが、輸入原油をFreeport, TXからCushing に輸送していたSeaway Pipelineを2012年第2四半期までに逆向けにし、WTI原油を受け渡し場所のCushingから製油所の集まるメキシコ湾岸に輸送する 。

2011/11/17 WTI原油価格急騰


2011/11/21  イレッサ控訴審、東京高裁で遺族側が逆転敗訴

肺がん治療薬「イレッサ」の副作用死を巡り、患者3人の遺族が輸入販売を承認した国と輸入販売元のAstraZenecaに賠償を求めた訴訟の15日の控訴審判決で、東京高裁は遺族側主張を全面的に退けた。

イレッサ(一般名はGefitinib)は英国のAstraZenecaが開発した肺がん治療薬

厚生労働省は2002年7月、世界に先駆けて、申請から半年で輸入承認した。
2002年8月に発売され、2カ月の間に、1万人以上の患者に投与された。

がんの増殖、転移に関係する分子を狙い撃ちにする「分子標的治療薬」で、正常細胞を傷つける抗がん剤より副作用が軽いと期待されたが、市販開始直後から間質性肺炎などによる副作用死が相次いだ。

販売を始めた2002年7月には添付文書の「重大な副作用」の4番目に致死性の肺炎が記されていたが、副作用死が相次いだため、厚労省は同年10月、全国の医療機関に緊急安全性情報を出し、肺炎の副作用を「警告欄」に記載するよう改めた。

これまでの多くの研究・調査の結果から、以下のことが明らかになっている。
・ゲフィチニブは上皮成長因子受容体に特定の遺伝子異常を有する人に対して高い有効性を示す。
・日本人肺癌患者の約30〜40%程度にこの遺伝子異常が認められる。

2011年3月末時点での死亡者数は,報告されているだけでも825人にも上っている。

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これまでに大阪地裁と東京地裁で裁判があった。

両地裁は和解勧告を行ったが、原告・被告共に和解を拒否した。

両地裁は、厚生労働省がイレッサを承認し、同社が販売を始めた2002年7月から、同省が「緊急安全性情報」を出した同年10月15日にまでに服用し、副作用で間質性肺炎を発症した患者5人(うち4人死亡)について、国と同社には救済する責任があるとの見解を出し、原告らへの和解金支払いを提示した。和解金の額は示されていない。

2011/1/31 政府、イレッサ訴訟で和解勧告拒否

大阪地裁は2011年2月25日に以下の判決を下した。

アストラゼネカ:警告欄に記載するなどして注意喚起を図るべきだった。
    緊急安全性情報配布(2002/10)前は製造物責任法上の欠陥があり、賠償責任あり。
    原告9人に計6050万円の賠償。2002/10以降服用し死亡した男性の請求は棄却。

政府:添付文書に関する行政指導は必ずしも十分ではないが、当時の知見のもとでは一定の合理性がある。
    国家賠償法上の違法はない。

原告側は国の責任に関して控訴した。

東京地裁は2011年3月23日に以下の判決を下した。

患者2人について国とア社の責任を認め、計1760万円の支払いを命じる。
死亡患者3人のうち1人については、発売3カ月後に説明書の「警告」欄で副作用が注意喚起された後に服用しており、請求は退けられた。

裁判長は「国は承認前の時点で副作用による間質性肺炎で死に至る可能性があると認識していた」と指摘した。
そのうえで「安全性確保のための必要な記載がない場合、国は記載するよう行政指導する責務がある」との見解を示し、間質性肺炎の危険性を目立つように記載するよう指導しなかった国の対応を違法と結論付けた。

原告・被告ともに控訴した。

2011/3/26 イレッサ訴訟、東京地裁は国の責任も認める

今回は東京地裁の判決に関する控訴審の判決である。
高裁は、9月の第1回口頭弁論から計2回のスピード審理で判決を言い渡した。

判決骨子◆
日本人に間質性肺炎の発症率が高く、死亡もあり得るという副作用を考慮しても、イレッサには有用性があり、製造における設計上の欠陥はない
イレッサの初版添付文書に警告欄がなく、副作用が致死的になり得るとの記載がなくても、指示・警告上の欠陥ではない

・イレッサが治療困難な肺がん患者に専門医が処方する薬剤だった
・専門医であれば間質性肺炎による死亡の可能性を認識できた
・国内の治験で死亡例はなく、海外の死亡例も因果関係があるとまでは言えない
 (がんの進行による死亡の可能性もある)

アストラゼネカに欠陥ある薬を輸入販売した責任はなく、国の不作為責任は論じるまでもなく認められない

欠陥があるとの前提事実がない以上、規制権限の不行使が違法かどうか論じるまでもない

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今回の判決での国の責任に関しては「患者の保護」「予防原則」の観点から厳しい批判がある。

「予防原則」は、サリドマイドなどの薬害や水俣病などの公害を教訓に確立された。

薬の副作用や公害の健康被害は、因果関係が科学的に解明されるまで時間がかかる場合が多いため、因果関係がはっきりしない段階でも、行政や企業は予想される最悪のケースを念頭に対策を講じることが重要との考え方。

東京高裁の判決は、添付文書への副作用の記載が違法かどうかについては、臨床試験で起きた有害事象と薬の投与との間に「因果関係がある」のか、「疑いがある」というレベルなのかを厳密に区別して判断すべきだとした。

 

なお、大阪訴訟の控訴審は10月に第1回口頭弁論が開かれ、12月15日に第2回弁論がある。

付記

2012年5月25日に、西日本の生存患者1人と、死亡患者3人の遺族10人が、輸入を承認した国と輸入販売元アストラゼネカに計約1億円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が大阪高裁であった。
裁判長は、国とア社双方とも責任はないと判断。ア社に賠償を命じた一審・大阪地裁判決を取り消し、原告側の全面敗訴を言い渡した。

「担当医は肺がん治療を手掛ける医師であり、添付文書の重大な副作用欄を読めば、間質性肺炎の危険性を認識できた」

「副作用欄の4番目だからといって、担当医が致死的でないと理解するとは考えにくい」

安全性について「具体的な因果関係の強弱も考慮して総合評価すべきだ」
承認当時、治験や海外症例などを含め、副作用の間質性肺炎による死亡は11例あったが、因果関係が明確と言えるのは1例で、「一般的な副作用を超える副作用を予測することは困難だった」


2011/11/22   Shellと三菱商事、イラクで随伴ガス収集

イラク政府は11月27日に、Shellと三菱商事との間で、イラク南部の3つの油田で随伴ガスを収集する契約を締結する。

イラク国営のSouthern Gas Companyが51%出資するBasra Gas Company を設立、Shellが44%、三菱商事が5%を出資する。契約期間は25年間。

政府のスポークスマンは11月15日、内閣がこれを承認し、170億ドルの計画に青信号を与えたと発表した。

JVはイラク南部の3つの油田、Rumailah、Zubair、West Qurna 油田から日量20億立方フィート以上の随伴ガスを回収する。

回収したガスを天然ガスやLPGなどに精製するプラント2基を建設、2013年に操業を開始する。

今後さらに回収量を増やし、イラクにLNG基地を建設し、日本を含む世界中に年400万トンを輸出する計画で、プロジェクトの総事業費は170億ドル、 うちLNG輸出のための投資が44億ドル。
日本貿易保険がイラク向けとしては21年ぶりに損害の一定割合を補償する保険を付与する。

これらの油田は第一次開放対象で、状況は以下の通り。

  発見 埋蔵量
(億バレル)
現状
(千b/d)
 開発担当
北ルメイラ油田(Rumaila)
南ルメイラ油田
1953      92
    73
    470
    585
BP/CNPC
西クルナ油田(Qurna) 1973     74     300 ExxonMobil/Shell
ズベイル油田(Zubair) 1949     40     240 Eni/Occidental Petroleum/KOGAS

Shellは2008年からイラク政府との間で燃やされている随伴ガスを回収する件で交渉してきた。
本JVに関する予備契約は7月12日に調印された。

イラクは現在、1日当たり500万ドル相当のガスを燃やしてしまっている。
原油生産の増加に伴い、フレアする随伴ガスは1994年の30億m3 から100億m3 にまで増加している。


2011/11/23 Sinopec、ブラジル石油資源を取得、中国勢の南米進出続く 

Sinopecは11月11日、ポルトガルの石油大手Galp Energia のブラジル子会社Petrogal Brasil の30%を48億ドルで取得したと発表した。加えて、Petrogal BrasilのGalp Energia からの借入金の13億ドルの30%分を肩代わりする。

Sinopecでは、今後の開発投資の30%も含めると、最終的な投資は51.8億ドルになるとみている。

Petrogal Brasil はブラジルでPetrobras と組んで、21のプロジェクトに参加している。その中でSantos Basinのpre-salt層(深海の海底の岩塩層の更に下の層)にあるLula油田が最も重要である。

1974年の革命で国有化されたポルトガルの4社、SACOR、CIDLA、SONAP、PETROSULが1976年に合併してGALPが設立された。
1999年にポルトガル唯一のリファイナリーを持つGALPと、天然ガスの輸入・販売会社の
Gás de Portugalが合併し、Galp Energiaとなった。2006年に上場。

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CNOOCが50%出資するBridas CorporationがBPからアルゼンチンのPan American Energyの60%持分を買収して100%子会社にする計画は取りやめになったが、これは買い手側になんらかの思惑があってのことと思われる。

2011/11/14 BP、Pan American Energy の持株のBridas Corporationへの売却を取り消し

これは別として、中国勢の南米の資源を求めての動きは続いている。

  Sinopec によるOccidental Petroleum からのアルゼンチンの石油権益買収

2010/12/17 Sinopec、Occidental からアルゼンチンの石油権益を買収

  SinochemによるStatoilからのブラジル油田権益買収

2010/5/28 中国中化集団、ブラジル油田に30億ドル出資

  CNPC によるベネズエラのOrinoco地区の油田権益40%取得(9億ドル)

2010/2/15 国際石油開発帝石と三菱商事、ベネズエラで石油開発に記載


2011/11/24 東電、損害保険契約失効で1200億円供託へ

東電と政府は、福島第一原発で新たに事故が起きた場合の損害賠償に備え、東電が1200億円を供託する方向で検討している。
事故に備えた従来の損害保険の契約が来年1月15日で切れるが、損保各社が契約更新をしない可能性が高く、「無保険」状態では、廃炉に向けた作業もできなくなるため。

原子力損害の賠償に関する法律では、原子力事業者は、原子力損害を賠償するための措置を講じていなければ、原子炉の運転等をしてはならないとなっている。

一般の原子力損害については損害保険会社の原子力損害賠償責任保険契約に入り、責任保険契約によつては埋めることができない原子力損害(=地震、噴火、津波の自然災害)は政府が補償する原子力損害賠償補償契約を締結し、1工場当たり1200億円を賠償に充てることとなっている。

  原子力損害の賠償に関する法律

第三条 (無過失責任、責任の集中等)
 
原子炉の運転等の際、当該原子炉の運転等により原子力損害を与えたときは、当該原子炉の運転等に係る原子力事業者がその損害を賠償する責めに任ずる。
 ただし、その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるときは、この限りでない。
 

第六条(損害賠償措置を講ずべき義務)
  原子力事業者は、原子力損害を賠償するための措置を講じていなければ、原子炉の運転等をしてはならない。

第七条(損害賠償措置の内容)
  損害賠償措置は、・・・原子力損害賠償責任保険契約及び原子力損害賠償補償契約の締結若しくは供託であつて、・・・1工場当たり1200億円を原子力損害の賠償に充てる

第八条 (原子力損害賠償責任保険契約)
 原子力損害を原子力事業者が賠償することにより生ずる損失を損害保険会社がうめることを約し、
・・・

第十条 (原子力損害賠償補償契約) 
  責任保険契約によつてはうめることができない原子力損害を
・・・政府が補償することを約し、・・・

今回の事故に関しては、地震や津波によるため原子力損害賠償責任保険契約の対象にはならず、原子力損害賠償補償契約により11月21日付で文部科学省から東電に1200億円が支払われた。

東電の中間決算では特別損失に損害賠償として-8,909億円が計上されたが、これは賠償見込み額 10,100億円から賠償補償の1,200億円を控除したもの。

現在の原子力損害賠償責任保険契約は来年1月15日に期限が来るため、通常なら契約を更新する。

しかし、福島第一原発は事故で設備が大きく破壊されているため、損保23社でつくる「日本原子力保険プール」は、「原発事故後の契約はリスクが高い」として、民間保険契約を更新しない方向で検討している。

原子力損害の賠償に関する法律第六条では「原子力損害を賠償するための措置を講じていなければ、原子炉の運転等をしてはならない」となっており、廃炉へ向けた核燃料の取り出し作業などが認められない可能性がある。

運転等とは、原子炉の運転、 加工、再処理核燃料物質の使用使用済燃料の貯蔵、 「核燃料物質等」の廃棄

このため、第七条で規定する損害賠償措置のうちの「供託」により、1工場当たり1200億円を原子力損害の賠償に充てるもの。
東電は1200億円の現金や有価証券を法務局に供託し、事故が起きた場合にはこれを賠償に充てることとなる。

東電は通常なら保険料を支払うだけで済むところを、1200億円全額の支出が必要となる。


2011/11/25 韓国、韓米FTA批准案を強行可決 

韓国与党ハンナラ党は11月22日、国会で韓米FTA批准案を強行可決した。本会議場では、これを阻止しようとする野党の議員が催涙弾を投げるなど一時大混乱に陥った。

米国側は10月12日に議会が可決している

李明博大統領は29日にも批准案に署名する方針で、関係閣僚会議で来年1月1日の発効を目指す準備の徹底を指示した。
野党は強行採決に猛反発し、予算案の審議拒否など対決姿勢を強めている。

政府側は米韓FTAによる農業分野などの被害対策の再点検に乗り出し、反対派への配慮を示す。

ーーー

韓米FTA交渉は2007年4月2日に妥結した。最後まで争点となった牛肉を含む農業と自動車分野でも合意した。
なお、コメについては対象外となっている。(現在も)

2007/4/4 米韓FTA妥結 

しかし、自動車関連などで米国内の反対が強く、批准されないままとなっていた。

2010年7月の韓国・EUのFTA妥結を受け、米国でもムードが変わり、争点を話し合うための通産相会議が11月に行われたが、自動車と牛肉問題で合意に達せず、決裂した。

両国は
・米国の韓国産自動車関税撤廃期間の延長
・自動車セーフガード
・自動車部品関税払い戻し上限制の導入
・韓国の米国産自動車安全基準自己認証の拡大−−などをめぐり、かけ引きを行ってきた。

また米国は、
米国産牛肉の輸入範囲を「生後30ヶ月以上」にも拡大すること、検疫条件を緩和することを要求した。

2010/11/12 米韓FTA協議、決裂 

李大統領は交渉は決裂していないと強調、オバマ大統領もと早期の最終決着を目指す意向を表明した。

最終的に、米国は牛肉問題はFTAと別の問題とする韓国の主張を受け入れ、その代わり、韓国は自動車で大きな妥協を行い、2010年12月3日に交渉が妥結した。

韓国は米国での韓国製自動車の関税撤廃ペースを遅らせ、非関税障壁とされた安全基準、燃費基準でも妥協した。
韓国内の反発に対応して、韓国政府は韓国側が得た成果を強調した。

2010/12/4 韓米自由貿易協定(FTA)追加交渉が妥結

米上下両院は2011年10月12日、韓国とのFTAの実施法案を賛成多数で可決した。

2011/10/14 米議会、韓米自由貿易協定を可決 

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韓国では農業団体などは当初から強硬に反対していたが、韓国野党は、追加交渉で利益の均衡が崩れたとして反対している

特に、野党や一部市民団体は「ISD条項」が、韓国の国益を著しく損ねるとして批判している。 (末尾の付記参照)

ISD(Investor State Dispute Settlement:投資家対国家紛争仲裁制度)は、投資家が相手国政府の政策により被害を受けた際、当該政府を国際投資紛争センターに提訴できる制度。

野党などは、同センターが世界銀行のもとで設置され、米国の影響が強いなどとして「韓国には一方的に不利な条項」と批判している。

付記 本条項は最初から入っていた。

李明博大統領は11月15日、行事以外では就任以来初めて韓国の国会を訪問した。
与野党の代表との会談で大統領は、ISD条項について、「国会が米韓FTAを批准したら、3カ月以内に米政府にこの条項の改定について米国と交渉する」と約束した。

韓国紙は、問題は「米韓FTA」が政治問題化してしまったことだとしている。

韓国では2012年春に総選挙、12月に大統領選挙が実施される。
2つの選挙が同じ年に実施されるのは20年に1度のことで、与野党間の対立が激しくなっている。

ーーー

韓米FTAでは、市場開放による打撃を受けるのは農漁業と製薬業とされる。

農林水産食品部は、韓米FTAの発効により、農業被害が15年間で約8200億円、水産業への被害は約300億円と推定する。
農業で 被害が最も大きいのは畜産業で、15年間に約4900億円で、韓牛(韓国在来種の肉牛)の生産が大きく減少する見通し。
コメについては対象外となっている。

韓国政府は農漁業への被害を軽減するため、2010年8月に農漁業分野に約1兆4800億円を投入すると発表した。国会の韓米FTA批准案の審議の過程で、与野党が対策の強化で合意しており、関連予算はさらに膨らむ見通し。

韓国政府はまた、農漁業従事者に対する被害補填給付金の給付基準を緩和した。
今後は農作物価格が平均価格の85%程度に下落すれば、給付金を支給する。

畜産業を発展させるためには、10年間で約1700億円規模の畜産業発展基金を創設する。

製薬業界が懸念するのは「医薬品許可・特許連係制度」の導入で、多国籍製薬会社が韓国の製薬会社の後発医薬品や改良新薬をめぐり、特許侵害訴訟を起こせば、直ちに許可手続きを中断しなければならない。
このため、韓国の製薬会社は後発医薬品、改良新薬の製造が難しくなる。

逆に、自動車部品に対する関税(米国で最大4%)が即時撤廃され、米自動車メーカーに対する輸出が増えると期待される。
自動車と関連部品の輸出増大効果は年間約7億2000万ドル前後と予想される。

繊維業界は平均13.1%の米国側の輸入関税廃止で、中国、インドに比べ、価格競争力が大きく改善すると期待される。

ーーー

韓国はTPP交渉国のほとんどとFTAを締結済または交渉中で、現在のところ、TPPへの参加の意向はない。

  締結済み:EU、欧州自由貿易連合(EFTA)、ASEAN10ヵ国、シンガポール、インド、米国、チリ、ペルー

  交渉中:カナダ、メキシコ、オーストラリア、ニュージーランド、GCC(湾岸協力会議)、コロンビア、トルコ

なお、日本と韓国との交渉は7年前から中断している。

韓国は中国とのFTA交渉を進める方針。

 

付記

11月25日付の河野太郎ブログはISD条項について述べている。

この条項は、海外に投資している日本企業の利益を守るのに役立つので、1978年の日本エジプト投資協定以降に結ばれた25本の投資協定では、日本フィリピンEPAを除き、全てにおいて投資家対国家の紛争手続(ISDS)規定が含まれている。

現実に、日本政府が訴えられたことはなく、日本企業が外国政府を訴えたことはある。

NAFTAでのメキシコ政府が訴えられた例は、メキシコ政府が外資企業を差別的に取り扱ったケースであり、カナダの例も、規制が外国企業に一方的に負担を強いるものであっただけでなく、カナダ連邦政府の規制そのものが国内の手続違反だとして連邦政府が州政府に訴えられて敗訴している。

ISDS条項は、日本がTPP交渉に参加することを妨げるものではまったくない。


2011/11/26  上海市当局、日本のラーメン会社に罰金 

上海市工商行政管理局は11月16日、日本から進出している味千ラーメンがカルシウム含有量について虚偽の広告を行っていたとして不当競争防止法に基づき、20万元(約240万円)の罰金支払いを命じた。

熊本市に本店を置く重光産業が経営する味千ラーメンは、台湾出身の創業者が久留米を発祥とする豚骨ラーメンにニンニクの風味を加えたもので、 日本国内で約100店(約7割が熊本県内)、海外では中国や東南アジアを中心に約400店舗を営業している。

本年
夏に味千ラーメンは2つの点で中国メディアの大バッシングを受けた。

あるメディアが、「味千ラーメン」がPRしている煮込み豚骨スープは店舗で煮込んだものではなく、濃縮スープを希釈している」と報じた。1食分のコストはわずか数毛(1毛は1元の10分の1、約1.2円)であるとの報道もある。

味千(中国)公司によると、店舗で使われる豚骨スープの原液は、山東省泰安市にある日本の独資企業「泰安京日丸善食品工業有限公司」で生産され、西蓋米食品(上海)有限公司で日本独特の処理を経て味が調えられた後に、高温殺菌処理等を施して「味千千味スープ」として配送され、各店舗へ希釈して使用している。

これらの工程において国が定める関係法規の条件を全て満たしており、各工場も関係部門の発行する生産許可証をそろえている。

チェーン店では一般的なやり方であり、同社でも、各店舗で豚骨スープを煮込んでいるとはPRしていない。

問題は含有カルシウムの量である。

同店の公式サイトの「スープに含まれる栄養素」には、「中国農業大学食品科学・栄養工程学院の栄養・分析研究室」の分析結果を紹介し、 以下の通り述べていた。

「コクと風味の高い同店ならではの豚骨ラーメン1杯(360 ミリリットル)当たりに含まれている栄養素のうち、最も突出しているのはカルシウムで1600ミリグラム。これは肉類の10倍以上、牛乳の4倍に値する」

味千ラーメンを展開する重光産業が提示した中国農業大学の「食品成分検査報告書」 には、「豚骨ラーメンに含まれているカルシウムは100グラム当たり485ミリグラムで、牛乳の4倍、普通の肉類の10倍以上」となっている。

ただし、この検査に使われたサンプルは「濃縮スープ」となっており、店で実際に提供している希釈スープではない。
通常1リットルの濃縮スープでラーメン100杯分のスープが作れるという。

味千側は1杯に1600ミリグラムといった説明が誇大だったことを認め、メニューやウェブサイトでの宣伝を撤回して消費者に謝罪した。中国農業大学にも謝罪した。

上海市工商局は、味千ラーメンに対し、この点が「誤解を与える虚偽の宣伝」だったとして、罰金20万元を支払うよう通達した。

ーーー

なお、7月26日付の人民網日本語版は、「 味千ラーメン 大陸部でのみ品質問題が発生したのはなぜ?」との記事で、以下の通り述べている。

同じ味千ラーメンでも、日本やシンガポールなどではこのような問題は発生していない。

これは大陸部における「特殊」な食品業経営状況又はビジネス環境と無関係ではないだろう。

まず第一に、誠実と信用を守るという意識に欠け、倫理・道徳観念が低く、金銭的利益の追求が良心・人品の追求に勝り、誇大宣伝が横行している。国外ブランドを笠に着て中国製の家具をイタリア製として売り出したダビンチ家具や各種の食品品質問題などがいい例だ。

次に、監督管理メカニズムが弱く、処罰・損害賠償制度はお世辞にも整っているとは言えない。消費者権利の保護の道は暗く、違約などの代償が小さ過ぎる。高額の賠償なしに、マクドナルドが自主的にコーヒーの温度を下げるとは思えない(*1)。
中国大陸部でのみ味千ラーメンの「体質が変わった」のはある意味、「南橘北枳*2」ということではないだろうか。

*1 1992年にニューメキシコ州のマクドナルドでコーヒーをこぼして火傷をした事件。
  64万ドルの損害賠償の判決が出た(最終的に和解で解決)。 
  これ以降、VERY HOT! の表示をしている。

*2 南橘北枳
  中国江南で産する橘はたいへんな美味であるが、淮水以北に植えると橘は枳(からたち)となり、
  味が全く異なってしまう。環境が変われば性質も変わってしまう、という意。

  出典
『晏子春秋』雑下


2011/11/26    Warren Buffett、投資先のタンガロイの新工場竣工式に出席

「オマハの賢人」と称される米国の投資家Warren Buffetが11月21日、福島県いわき市の超硬工具大手のタンガロイのインサート(刃先交換チップ)の新工場の竣工に出席した。
3月に予定されたが、震災と原発事故で延期となっていた。

タンガロイは1929年に芝浦製作所と東京電気が日本初の超硬合金を開発し、「タンガロイ」と称して市販したのが始まりで、1934年に共同出資で「特殊合金工具」を設立した。
その後、「東芝タンガロイ」と称していたが、2004年にMBOにより独立し「タンガロイ」に改称した。

タンガロイは現在は、イスラエルに本社を置く超硬切削工具メーカー のイスカル(ISCAR)を中核とする切削工具メーカーグループIMCグループ(International Metalworking Companies B.V.)に帰属する。

グループにはISCAR、タンガロイのほか、米・独のIngersoll Cutting Tools Ltd.、韓国のテグテック(Taegutec Ltd.)など10社以上によって構成されており、超硬切削工具業界では世界第2位の売上高を誇る。

IMCは事業拡大のためにM&Aを必要としたが、資金がないため、Buffettの投資を求めた。
BuffettはIMCの会長の「小さな家族主義」経営に惚れ込み、2006年5月に50億ドルでIMCの80%を取得した。

その後もBuffettはIMCの経営は経営陣に任せた。

IMCはリーマン・ショック直後の2008年11月、主力顧客の自動車業界が設備投資を一斉に凍結したため大赤字に転落したタンガロイを買収した。
そのような状況下で2009年春、IMCはタンガロイ社長が温めていた100億円強の新工場の建設計画の実行を指示した。

今回の竣工式は、「タンガロイ復活の象徴」のイベントである。

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来日に際してのWarren Buffettの記者会見での発言は以下の通り。

・日本は何があっても前進をやめない国だと改めて確信した。

・持続的に成長できて、競争力があり、欠かせない事業を持つ企業に投資する。

BuffettのBerkshire Hathawayの主な投資先は以下の通り。  

  Coca Cola   132 億ドル
  Wells Fargo  111  
  IBM 107  
  American Express 65  
  Procter & Gamble  47  
  Kraft Foods  31  
  Johnson & Johnson 28  

Buffettは11月14日、IBMの株式約5.5%を取得したと発表した。
これまで「ハイテク株はわからない」として、IT株への投資を控えていた。
IBMの成長性や事業戦略に注目しているとした。

・オリンパス問題は大きな驚きだったが、こういうことは米国(エンロン事件など)でも欧州でもどこでも起こる。

・欧州政府への信認が低下している。

「各国が個別通貨を持っていないことが解決の妨げ」
「リーマン・ショックより危機が深刻」

・米国でもかなりの割合の人びとが、所得・資産の格差拡大に不満を持っている。

Buffettは本年8月、米紙の意見欄への寄稿で、富裕層の課税率は中間所得層よりも低く米国の税制は不公平となっているとの見解を表明した。

昨年の課税所得はほぼ4000万ドルだったと公表、納税が690万ドル、所得税率は17.4%で、「秘書の税率よりも低い」とした。
株式の配当やキャピタルゲインは15%の上限税率が適用される)

これを受け、オバマ大統領は、高所得層向け増税提案を「バフェット・ルール」と呼んだ。


2011/11/28 KKRと伊藤忠など、米Samsonを72億ドルで買収へ  

Kohlberg Kravis Roberts(KKR)は11月23日、伊藤忠商事などとともに、米エネルギーグループのSamson Investment Co.を72億ドルで買収すると発表した。

KKR、伊藤忠と米国の投資ファンドのNatural Gas PartnersとCrestview Partnersの4社のグループが同日、私企業としては米国最大の石油開発・生産会社の一つであるSamson Investment を買収する契約を締結した。

KKRが60%、伊藤忠が25%、NGP Energy Capital ManagementCrestview Partnersが残り15%を出資する。
買収完了後はSamson Resourcesに改称する。

Samsonは1971年設立で、米国で1万以上の油田の権益を所有し、そのうち、4000以上を運営している。

近年は非在来型資源権益を競争力のある価格で取得し、石油と天然ガスのバランスのとれた資産を保有しており、今後はこれらの開発を促進して2021年には日産16億立方フィート(天然ガス換算)への生産拡大を計画している。

主なものは以下のガスシェールと油田。

シェール:Bakken(下図)、Powder River(ワイオミング州北東、モンタナ州南東)、Green River(下図)、
      Cana Woodford(下図)、Haynesville/Bossier(下図)
油田:Granite Wash(北テキサス)、Cotton Valley(東テキサス)

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伊藤忠も11月24日発表した。

同社ではSamsonの25%株式を10.4億米ドルで買収するとしている。

KKR発表の72億ドルの25%は18億ドルで、差はSamsonの借入金の肩代わりか?

伊藤忠は長期保有を目的とした戦略的投資としており、同時に Samsonが生産する天然ガスの出資比率に応じた引き取り権(LNG換算年間100万トン:ピーク時)を確保し、米国に持つガストレード会社の販売拡大に加え、米国シェールガスの国際競争力に注目し、将来のアジア向けLNG輸出ビジネスも視野に入れた取り組みを行うとしている。

伊藤忠商事は、持分権益数量を現在の3万4千バレル/日から2015年迄に7万バレル/日以上に積上がる計画で、今回の買収を通じてこの目標達成を図る。

同時に、非在来型資源開発事業への参画を強化し、オペレーター機能も備えた本案件を北米における天然ガス事業の中核と位置付け、天然ガス・LNGトレード機能の拡充を目指す。

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伊藤忠は2010年10月、米国のエネルギー・電力・建設関連複合企業 MDU Resources Group Inc.の子会社で石油天然ガス開発会社のFidelity Exploration & Production Company との間で、米国ワイオミング州Niobraraエリア約88,000エーカーの石油ガス鉱区権益の25%を取得し、シェールオイル開発事業に参画する契約を締結している。

2010/10/19 伊藤忠、米国のシェールオイル開発に参加、商社の非従来型石油/ガス開発出揃う

北米のシェールガス開発では、日本の各社が開発に参加している。各社のシェール開発状況

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付記 

国際石油開発帝石(INPEX)は11月29日、日揮と共同でカナダの石油・天然ガス開発会社Nexenがカナダ のBritish Columbia州北東部のHorn River、CordovaおよびLiardの各地域に保有するシェールガス鉱区に40%の権益を取得することで合意したと発表した。
(40%を取得するINPEX Gas British Columbia にはINPEXが82%、日揮のカナダ子会社が18%を出資する)

このうち、Horn River地域の鉱区では、既に原油換算で日量約 8千バレルの生産を開始している。

今後、Horn River、Cordova両地域の鉱区で本格的な開発作業を進め、両鉱区合計で原油換算で日量約 200千バレル)規模の生産を目指し、Liard地域の鉱区についても、シェールガス開発生産に向けて作業を進める。

3社は2013年11月、BC州西部の太平洋岸Grassy Pointにおいて、シェールガスプロジェクトから産出されたガスを原料とした陸上ガス液化プラント(LNGプラント)建設の可能性を検討する調査権をBC州政府より取得した。

Nexenは元Canadian Oxydentalで、石油・天然ガス(北海、西アフリカ、メキシコ湾など )、オイルサンド(カナダのアルバータ州のAthabasca oil sands開発及びThe Syncrude Project への参加)とこのシェールガスを主たる事業としている。


2011/11/29 中国、宇部興産の商標権侵害で米社子会社に行政処罰 

宇部興産は11月24日、中国の蘇州工業園区の工商行政管理局がNovolyte Technologies (Suzhou) に対し、 宇部興産の 商標権の侵害行為の停止を命じ、罰金を科すという内容の行政処罰決定を行ったと発表した。

宇部興産はリチウムイオン電池用電解液で世界トップレベルのシェアを持ち、中国内でも広く「PURELYTE」の商標で拡販中だが、Novolyte は自社の電解液に「PUROLYTE」の商標を使用している。

宇部興産によると、本年夏に工商行政管理局から、Novolyteが「PUROLYTE」の商標を使用しているが、宇部興産の知的財産権の侵害にならないかとの問い合わせがあった。
宇部興産ではこの事態を知らなかったが、「E」が「O」となっているだけで、わずか1字しか違わず、明らかに商標権侵害と断定できたため、直ちに当局に対し侵害行為の停止を求める手続きを行なった。

当局側はこれに基づき、侵害行為の停止を命じ、罰金を科すとの行政処罰を決定した。

罰金額は
不明だが、宇部に対する損害賠償ではなく、当局に入るという。侵害に対する損害賠償には司法処理が必要。

中国では商標権侵害が広く行われているが、被害者からの要請に基づくのではなく、当局側が調べて当事者に連絡し、摘発するというのは日本でも考え難く、珍しい。罰金稼ぎかとも邪推される。

Novolyte Technologies (Suzhou) は、米国のArsenal Capital Management LPの子会社でリチウムイオン電池用電解液と高機能溶剤のメーカーのNovolyte Technologiesの中国子会社。

Novolyteは2008年10月に、コンパウンドメーカーのFerro Corporation からファインケミカル事業(電解液、溶剤、ホスフィンなど)を買収した。Baton Rougeに電解液の工場を持つ。
蘇州の中国子会社もFerroが設立したもので、「PUROLYTE」 の商標は米国、中国ともにFerroが取得している。

このため、本件は模倣ではなく、たまたま両社が似た商標を取っていたもの。

なお、中国での商標登録申請は宇部の方が早く、宇部にとって有利 だが、米国での申請はFerroの方が早い。

    中国での申請   米国での申請
宇部興産のPurelyte   2000-9-26     2006年
FerroのPurolyte   2004-2-1    2002年

このため、宇部が米国に輸出する場合には逆にやられる可能性もある。     


2011/11/30 Arkema、塩ビ関連事業を売却 

Arkemaは11月23日、労使協議会に塩ビ関連事業の売却を説明した。

概要は以下の通り。

・塩ビ事業をコモディティ製品に特化しているKlesch Group に売却
・Klesch Group の下で、これを欧州の塩ビ産業のリーダーとする。
・Arkemaから経営陣を派遣
・プラントはリストラなしで移管、従業員はそのまま

・Arkemaは残る2部門(Industrial Chemicals、Performance Products)に集中する。

付記
2012年7月3日に取引完了。新しいPVC会社はKEM ONE

事業ごとに異なった戦略が必要なためで、塩素化学−PVC−川下製品の事業は明確な戦略、計画、きっちりしたバランスシートを持つ新しいストラクチャーのもとで展開すべきとしている。

Arkemaは欧州3位の塩素化学メーカーで、電解からVCM、PVC、加工品(異形押出、パイプ、コンパウンド)まで一貫生産している。

PVCについては、フランスに4工場(Balan、Berre、Saint-Fons、Saint-Auban)とスペインのHernani 工場を持つ。

ArkemaはSolvin (Solvay 75%/BASF 25%のJV)との間で3つのJVを持っていたが、2010年7月1日にJVを解消した。

スペインのVinilis (VCM/PVC:Solvin 65%)はSolvinが引取り。
フランスのVinylFos(VCM:Arkema 79%)とVinylBerre(PVC:Arkema 65%)はArkemaが引き取った。

Jarrie工場はジクロロエタンプラントを閉鎖するため、移管しない。Saint-Auban工場はペースト塩ビプラントのみを移管。Balan工場のEVAは移管対象外となる。

ArkemaはTotalグループの化学部門の一つで、同グループの概要は以下の通り。

Chemical Intermediates
Plastics
Arkema Vinyl Products
 
Chlorine / Caustic Soda
Pipes and Profiles (Alphacan)
PVC
Vinyl Compounds
Industrial Chemicals Acrylics
Arkema Coating Resins
Cray Valley &Cook Composite Polymers)
Fluorochemicals
Hydrogen Peroxide
Photocure Resins (
Sartomer)
PMMA (Altuglas International) & Methacrylics
Specialty Acrylic Polymers (Coatex)
Thiochemicals
Performance Products Functional Additives
Specialty Chemicals (Ceca)
Technical Polymers
石油化学 Total Petrochemical  
肥料 Grande Paroisse  
Specialties Adhesives Bostik  
Electroplating Atotech  
Elastomer Hutchinson  
 

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買収するKleschグループは子会社を通じ、以下の事業を行っている。

 Basemet :欧州でアルミ精錬及びメタル関連事業
 Panther Trading:コモディティ
 Swiss Oil Trading and Supply:グループの製油所Heide Raffinerieの運営、エネルギー関連の取引


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