ブログ 化学業界の話題 knakのデータベースから 目次
これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。
最新分は http://blog.knak.jp
中国で工場の環境汚染 問題が多発している。
次の2件は単なる事故ではなく工場側の不当行為によるもので、当局の姿勢にも批判が出ており、今後の当局の対応が注目される。
1)江西省蓮花県
江西省萍郷市蓮花県にある アロイ等を生産する隆森實業公司で8月16日、鉛やクロムなどの有害物質を排出しているとして操業停止を求めた住民数千人が出入り口をふさいで抗議し、警官隊との衝突で20人以上が負傷した。
工場周辺では、住民が鉛中毒の疑いで死亡するなど、工場で生産される鉛やクロムによるとみられる中毒症状が拡大。付近の川でも大量の魚が死ぬなどしたため、住民らが省政府にたびたび操業停止を求めていた。
住民は、工場側が賄賂を贈り、住民の要求を抑えたと批判している。
香港の人権団体「中国人権民主化運動情報センター」が最初にこれを報道し、ニューヨークに本部を置き、衛星放送で世界中で視聴できる中国語専門のテレビ局
新唐人テレビ(NTDTV )も記者を派遣し、詳しく報道した。
日本語版 http://www.ntdtv.jp/ntdtv_jap/environment/2011-08-20/632843263169.html
インターネットでも情報が飛び交っている。
8月14日に大連市で化学工場の移転を求める大規模デモが起き、地元当局が即日、工場移転を約束した。
2011/8/15 中国・大連で化学工場の撤去求め デモ
このまま住民の抗議を無視するわけにはいかないと思われ、今後の江西省当局の対応が注目される。
2)雲南省曲靖市
8月12日、雲南省曲靖市陸良県の化学会社 陸良化工実業公司の工場が5000トン余りの重金属クロムスラグを違法に投棄し、汚染された水が南盤江に流れ込んだとの情報がネットを駆け巡った。
工場の排水口付近には3千人が暮らしており、2002年ごろからがん患者が増加した。
市当局は8月15日、工場がクロムを不当に廃棄したことを認めた。
2人のトラック運転手が輸送費節約のため道端に捨てたとし、2人は既に逮捕した。汚染されたのは現地で使われていなかった溜め池で、その面積もわずかの100立方メートルにすぎないとし、南盤江の水質をモニタリングしたところ、何ら異常は認められないとしている。
新華社は以下の通り問題点を列挙している。
・陸良化工はクロムの残渣を過去17年間処理せず、野積みしている。
・このような大規模な有害物質の廃棄を規制当局が知らない筈はない。なんらかの不正があったのではないか。
・当局が水質に異常は認められないとしたのはおかしい。隠そうとする意図があるのではないか。
中国中央政府・水利部の珠江水利委員会は8月17日、陸良化工の不法投棄で、「人畜の飲用水の安全に、深刻な影響が発生している」との調査結果を明らかにした。
陸良化工は4月から6月までの間、重金属であるクロムを含む汚泥を曲靖市内3カ所で、計5000トンを不法投棄した。現地では干ばつが続いているが、6月に降った少量の雨にクロムが溶け出し、周辺地域の川や地下水を汚染した。
調査チームは曲靖市および隣接する昆明市の河川で水質を検査した。今のところ汚泥が廃棄された周辺以外で六価クロムは検出されていないが、現在は干ばつであるために汚染が広がっていないだけの可能性もあり、今後も厳重な警戒が必要という。
陸良化工の社長は「2003年に当社を買収したが、その時すでに汚泥は屋外に積まれていた。合計で28万8400トンになる計算だ」と述べた。
同社はその後も汚泥を屋外に放置し続けた。操業を開始した1989年から数えると、22年にわたり猛毒の六価クロムを含む汚泥を屋外に積んでいた計算になる。
新唐人テレビ(NTDTV )の上記のホームページ(中国語版)は、南盤江付近の状況のビデオを掲載している。
2011/8/23 台湾4企業が福建省に石油精製・石油化学基地を建設へ
台湾の石油化学4社は8月17日、シノペックと組み、福建省の古雷半島で石油精製・石油化学基地を建設すると発表した。
参加するのは、台湾聚合化学品、李長栄化学、中国石油化学工業開発、和桐化学の4社で、この計画を主導する台湾区石油化学工業同業公会の陳武雄理事長(和桐の創業者)が代表団を率いて北京市を訪問し、シノペック及び福建省政府との間で一貫生産拠点の建設に向けた枠組み協議に調印した。
台湾聚合化学品
USIカプロラクタム、アクリロニトリル、氷酢酸、ナイロンチップなど 李長栄
Lee Chang Yung ChemicalDME、アセトアルデヒド、MIBK、MEK、PPなど 中国石油化学工業開発(中石化)
China Petrochemical Development CorporationLDPE/EVA、LLDPE 和桐化学
Ho Tung ChemicalNormal paraffin, Alkyl Benzene, LAS など
4社は台商古雷石化(州)を設立し、福建煉油化工(シノペックと福建省政府のJV)との折半出資で事業を行う。
投資額は45億米ドルとされる。
台湾紙によると、計画内容は以下の通り。
さらに長春大連集団や国喬石油化学(グランド・パシフィック)などが参加を計画しており、全体の投資額は150億米ドルに上るとみられている。
万トン | 投資 | |
石油精製 | 1,600 | JV |
ナフサ分解 | 120 | JV |
EVA | 20 | 台湾聚合化学品 |
PE | 49.1 | 台湾聚合化学品 |
合成ゴム | 14 | 李長栄 |
PP | 63.4 | 李長栄 |
n-パラフィン | 16.6 | 和桐 |
LAB | 20 | 和桐 |
年末にも始動し、3年内に稼働にこぎ着けたいとしているが、問題は台湾政府の認可が得られるかどうかである。
投資には経済部投資審議委員会の認可が必要となるが、台湾政府は現在、「投資が認められるのは石油精製と川中〜川下のみ」とし、エチレンについては認めていない。
政府は遅かれ早かれナフサ分解プラントの対中投資を解禁するとみられているが、総統選挙を控え、年内に中台絡みの大きな政策変更をするのは難しいとの見方が強い。
本計画は2009年に既に明らかになっていた。
当時は福建省泉州市泉港区の泉港石化工業区で検討しており、和桐化学、大連化学、李長栄、長春人造樹脂、國喬石油化学、台湾合成ゴムの6社が参加するとしていた。
2009/5/26 台湾の石化メーカーが中国でエチレンコンプレックスを計画
なお古雷半島には、パラキシレンの反対運動を受けて、騰龍アロマティックスが福建省厦門の海滄投資区から移転している。
この計画の背景の一つに、台湾での今後のエチレン不足問題がある。
台湾国営の中国石油は高雄に日産
270千バレルの製油所と50万トンのエチレンコンプレックスを持つが、住民からの公害問題での苦情を受け、2015年までに閉鎖することが決まっている。
このため、中国石油は、2006年1月に、同社43%出資で誘導品各社との合弁会社の國光石化科技を設立し、雲林に日産30万バレルの製油所とエチレン120万トンを建設することを決めたが、土地買収に失敗した。
その後、彰化県大城濱海区での計画を進めていたが、 環境アセスメントをめぐり、地元住民との対立が続いた。
予定地 彰化県大城濱海区 着工予定 2011/11 完工予定 2015/4 主要工場 ナフサ分解、製油所、誘導品約30プラント
馬英九総統は本年4月にこの計画を支持しない方針を正式に表明した。
建設予定地の彰化県を訪れた際に農民やカキ養殖業者が天に祈っている姿に心打たれたとし、同地は「国家湿地自然公園」として開発するよう内政部に指示した。
馬総統は、「政府は石化産業の発展を放棄したわけではない。ただ産業構造や政策の方向性を再検討する必要がある」とし、これまでの量的成長から質的成長へとかじを切る方針を示した。川中〜川下産業の高品質、高付加価値化の実現を目指すとしている。
中国石油では投資規模を縮小し、彰濱工業区か台中港区で特殊化学品を生産する方向で調整しており、エチレンについては海外への移転が焦点となる。
マレーシアやインドネシアなどが候補先として挙げられているが、中国石油では一時、中東進出も検討していた。
2007/1/24 台湾の中国石油、中東進出か?
中国石油のエチレン供給量は現在年間108万トンで、2013年に林園の第3ナフサの設備更新によって150万トンへの拡大が見込まれるが、第5ナフサが停止すれば、直ちに50万トンの供給不足が生じるという。
2011/8/24 旭化成、医薬品開発中止に対する損害賠償請求の第一審で勝訴
旭化成は8月19日、旭化成ファーマが開発したRho-kinase 阻害剤「ファスジル」のライセンス契約に関連して、スイスのActelion社およびその関連会社・役員を被告とする損害賠償請求訴訟で、被告らに対して総額516.6百万米ドルの支払いを命ずる第一審判決が下されたと発表した。
付記
旭化成は11月22日、判決後の原告・被告の異議申立手続において、裁判所が被告の主張を一部認容し、損害認定額が約101百万ドル減額され、訴訟費用を含め総額415.7百万ドルとなったと発表した。
ーーー
付記
旭化成は2014年3月13日、カリフォルニア州最高裁判所から勝訴確定の決定が下されたと発表した。
2011年11月、被告らに対して総額415.7百万米ドルの支払いを命ずる第一審判決が同高裁から出たが、被告側はこれを不服として控訴した。だが同高裁は13年12月、第一審判決を維持するとする判決を下した。
これに対して被告側はカリフォルニア州最高裁判所に上告申し立ての手続きを行ったが、これを却下する決定が最高裁判所から下され、旭化成ファーマの勝訴が確定した。同社は3月18日、特別利益 530億円(税引き後 330億円)を計上すると発表した。
旭は2006年6月に米国のCoTherix社に対してファスジルの開発・販売権を供与するライセンス契約を締結した。
CoTherixは2007年1月にActelionに買収されたが、買収完了の当日に旭化成に対しファスジルの開発を取り止めると通告、旭化成に返却した。
これに対し旭は、CoTherixに対しては、ライセンス契約の違反に基づく損害賠償を求めて国際商工会議所(ICC)において仲裁手続を行い、2009年12月、約91百万米ドルの支払いをCoTherix に命ずる裁定を得て、既に全額を受領している。
2009/12/26 旭化成ファーマ、ライセンス契約違反の仲裁裁定で91百万ドル受領へ
旭化成ファーマは並行して、Actelionおよびその関連会社・役員に対して、被告らが不法に開発を止めさせたことを理由として損害賠償を求める訴えを米国カリフォルニア州サンマテオ郡地方裁判所に提起した。
Actelionはファスジルと競合する自社のTracleerの利益を保護するため、ファスジルの開発を止めさせる 目的でCoTherixを買収した。
第一審の陪審員は5月4日に旭の主張を認め、Actelionに577百万ドルの支払いを命じた。
利益喪失に358.95百万ドル、開発費として187.4百万ドル、役員の懲罰的賠償として20百万ドル。
これに対しActelionは仲裁により支払った額の一部を相殺するよう求め、裁判所は7月29日に70.35百万ドルの引き下げを認めた。
(差し引きすると506.6百万ドルとなり、旭化成発表と若干異なる。金利加算か?)
米国の石油会社
Sunocoは8月16日、オハイオ州HaverhillのFrankford
のフェノール工場を売却すると発表した。
これにより、同社の石油化学は消滅する。
Sunoco は2008年12月にアナリスト説明会を開催したが、その中で、能力で北米3位のPP、北米1位のフェノールを含む化学品部門の売却を考えていることを明らかにした。
同社は2004年に無水フタル酸、オキソ、エステル、2-エチルヘキサノールなどの可塑剤事業をBASFに売却している。
2008/12/19 Sunoco、化学品部門の売却を検討
Sunocoは2010年2月、PP事業をブラジルのBraskemに売却する契約を締結したと発表した。
同社のPP工場は下記3工場(合計能力は95万トン)で、米国全体のPP能力の約13%を占める。PittsburghにあるR&Dセンターも売却する。
テキサス州La Porteとウエストバージニア州Nealは2000年に三菱商事から買収した旧Aristech Chemicalの工場で、
ペンシルバニア州Marcus Hookは元Epsilon Products(Sunoco とBAR-L のJV)の工場。なお、Sunocoは2009年春にテキサス州Bayportの能力18万トンの工場を閉鎖している。これは2003年にEquistar Chemicals(その後Lyondell と合併、現在はLyondellBasell)から買収したプラント。
2010/2/3 Sunoco、ポリプロ事業をブラジルのBraskemに売却
フェノール、アセトンについては同社はFrankford (Philadelphia, PA) とHaverhill, OHに工場を持っていた。
Frankford は1998年7月にAlliedSignalから買収した。
能力はフェノールが450千トン、アセトンが280千トン、α-メチルスチレンが 30千トン。Haverhillは2001年に三菱商事から買収したAristech Chemical の工場。
同社は2003年11月に老朽化した1系列160千トンを休止した。
現在の能力はフェノールが306千トン、アセトンが173千トン、ビスフェノールA が110千トンとなっている。
Sunocoは2011年5月、Frankford
工場をHoneywell International に85百万ドルで売却した。
Honeywell はHopewell, Virginiaに375千トンのカプロラクタム工場を持ち、これまでSunocoから原料のフェノールの供給を受けていた。
Frankford工場の元の持ち主のAlliedSignal は1999年にHoneywellと合併しており、今回元の持ち主に戻ったことになる。
Sunocoは8月16日、Haverhill工場を、化学品商社のVinmar International などを有するコングロマリットGoradia Capital に売却する契約を締結した。売却額は106.5百万ドルで、Goradia Capitalは運営のためHaverhill Chemicalを設立した。
売却するのは、フェノールが306千トン、アセトンが173千トン、ビスフェノールA が110千トン。
この売却により、コア事業以外の事業を売却し、化学事業から離脱するという同社の戦略が完了することとなる。
Sunoco はPennsylvania州のMarcus
HookとPhiladelphiaに製油所をもっている。
Philadelphia 製油所には545千トンのキュメン工場を持つが、これは維持する。
付記
Sunocoは9月6日、Refinery事業からも撤退し、Marcus HookとPhiladelphiaの製油所の売却手続きを開始したと発表した。同時に抜本的な戦略レビューを行っていることを明らかにした。
事業の収益性悪化によるもので、収益性の高いRetail とlogisticsに経営資源を集中させたいとしている。なお、同社は子会社で冶金コークス大手のSunCoke Energy をスピンオフさせた。
同社のBusiness Unit は以下の通り。
Refining & Supply 撤退検討
Retail Marketing
Chemicals 撤退完了
Logistics
Coke スピンオフ付記
Carlyle Groupは2012年7月2日、Sunocoとの間でJVのPhiladelphia Energy Solutionsを設立することで合意したと発表した。
8月に停止予定であったPhiladelphia Refinery (東海岸で連続稼働する最古の製油所、日量330千バレル)をJVに移し、稼働を続ける。
CarlyleはJVのマジョリティを持ち、運営責任に当たる。Sunocoは現物出資でnon-operating minority interestを得る。
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参考
Sunocoは2001年に三菱商事からAristech Chemical を買収した。
Aristech Chemical は化学品(フェノール、アセトン他)、ポリマー製品(ポリプロピレン他)の製造販売を行っていた。
1989年にHuntsmanがAristech の買収を計画した。Aristech はこれを拒否、一時は住友化学にもPPを分離してJVにする提案もしたが、1990年に三菱商事が買収提案を行い、Huntsmanが買収を諦めたため、三菱商事による買収が確定した。
買収額は850百万$だが借入金の 引継ぎなどをいれると10億$以上となるといわれた。当初同社には三菱化成、三菱油化、三菱瓦斯化学、三菱レ−ヨンが各4.48%出資して三菱グループ総力を挙げて取り組む姿勢を見せたが、その後、 三菱商事100%となった。
三菱商事は石油化学品事業の戦略において、北米の橋頭堡として位置づけてきたが、原料価格の上昇を製品価格に転化しきれず、採算が大幅に悪化し、売却した。
2011/8/26 新型インフルエンザワクチン開発・生産体制整備臨時特例交付金
厚労省は8月19日、新型インフルエンザワクチン開発・生産体制整備臨時特例交付金の第2次交付事業について4事業者が応募した事業を採択したと発表した。
対象事業は 細胞培養法ワクチン実生産施設整備等推進事業で、平成24年度までにワクチン生産のための実生産施設の構築・治験の実施等を行い、平成25年度の実用化を目指す。
昨年の第1次交付事業では細胞培養法開発事業の実験プラント整備等を補助対象にしており、今回、実生産工場整備等のための公募がなされた。
目標は全国民分の新型インフルエンザワクチンを約半年で生産可能な体制を平成25年度中を目処に構築することで、
現在の鶏卵培養法では1年半〜2年を要するが、細胞培養法を開発することにより、半年に短縮する。
これにより、日本で大流行が起きた際に、これまでのように輸入ワクチンに頼らずに済む体制が整う。
6事業者から応募があり、4事業者が選ばれた。
事業者 | 基準額 | ワクチン生産量 (製造後半年の量) |
化学及血清療法研究所 | 23,984百万円 | 4000万人分以上 |
北里第一三共ワクチン | 29,959百万円 | 4000万人分以上 |
武田薬品工業 | 23,984百万円 | 2500万人分以上 |
阪大微生物病研究会 | 23,984百万円 | 2500万人分以上 |
報道では他に、アステラス製薬と技術提携している医薬品ベンチャーのUMNファーマと、スイスのノバルティスの日本法人が応募したとされる。UMNファーマは第1次では選ばれて実験プラント整備事業を行ったが、今回は選ばれなかった。
付記
北里第一三共ワクチンは、第一三共(51%)と北里研究所(49%)の合弁によるワクチン専門の開発・製造発売会社で、2011年4月に発足した。
付記 第一三共は2015年6月30日、追加出資により出資比率を80%にすると発表した。
4事業者は交付金を活用して最先端ラインを整備し、新型インフルエンザ専用ラインとするが、新型インフルが流行していない時期には季節性インフルや他の感染症向けワクチンの生産に利用でき、他社と比べ優位な地位を得たことになる。
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なお、第一次交付事業は2010年7月に下記の各事業者が選ばれている。
予算額は細胞培養法開発事業が127,700百万円、その他が164百万円となっている。
事業者 | ||
細胞培養法開発事業 (実験プラント整備事業、増殖性試験実施事業等) |
化学及血清療法研究所 | |
北里研究所 | ||
武田薬品工業 | ||
UMNファーマ | ||
鶏卵培養法生産能力強化事業 | 化学及血清療法研究所 | |
「第3世代ワクチン」等 開発推進事業 |
皮内投与デバイス及び 皮内投与ワクチンの開発 |
テルモ |
経鼻投与式細胞培養新型 インフルエンザワクチンの開発 |
阪大微生物病研究会 |
8月17日午後、韓国蔚山のSKの石化コンビナートでHyundai EP(旧称 Hyundai Engineering Plastics)のポリスチレン工場で爆発事故が発生した。
12日から16日まで操業を停止して整備しており、再稼働の過程で火災が発生、爆発した。作業員8人が重軽傷を負った。
Hyundai EP は1988年にHyundai Development Co. の石化部門として設立された。
1991年にSolvay Engineered Polymers((2008年にLyondellBasellに買収された)から技術を導入した。
1994年に工場を完成、Hyundai Motorにバンパーや内装材を供給した。
2000年にHyundai Engineering Plastics としてスピンオフし、2006年に現在のHyundai EP に改称した。
現在、自動車向けのPPコンパウンドを中心に、下記の製品を扱っている。
PP Compound
PE Compound
Engineering Plastics (Nylon compounds, PBT compounds, PC/ABS and PC/PBT
alloys, m-PPO alloys)
PS/EPS
PB Pipe (Basell の高品質Polybutylene-1 のパイプ)
このうち、PSとEPSは2010年4月に東部韓農(Dongbu HiTek、旧称Dongbu Hannong Chemical)から買収した。
東部韓農は蔚山のSKコンプレックスに、SM 270千トン/PS 100千トン/ EPS 50千トンを持っていたが、PS/EPSを売却した。
なお、大山のHyundai
Petrochemical はLG Chemと湖南石化に買収され、現在は両社の工場となっている。
2006/4/12 韓国の石油化学-3
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蔚山では過去に多くの事故が発生している。
2010年7月に砂糖メーカーの三養社の子会社三養ジェネクスで砂糖製造反応器が爆発。
2011年2月 タンクが爆発。
同社では2004年に水素低圧タンクが爆発して3名死亡している。2011年5月と6月に三養社でサイロが爆発。
2011年2月 大韓油化のPP工場で爆発、1名死亡、2名負傷。
残留ガスを取り出した後、タンク内壁のスラッジをウォータークリーニング作業している間、原因不明の火災が発生しタンクが爆発した。
蔚山消防本部 によると、これまでの発生数は2007年が38件、08年が44件、09年が31件、10年が33件。11年はすでに26件発生しており、人命被害は、2007年が1人死亡、5人負傷、09年が9人負傷、10年が1人死亡、9人負傷、11年は1人死亡、7人負傷だった。
聯合ニュースでは、大多数の石化プラントが建設されて30年を越えるなど施設が老朽化したためと、各企業が安全管理を徹底的にしなかったためと分析している。
2011/8/27 Nord Stream Pipeline、欧州ネットワークに接続
年間最大550億立方メートルのシベリアの天然ガスをサンクトペテルブルク北方のビポルクからバルト海海底約1200キロを通ってドイツ北東部グライフスバルトまで供給するNord Stream Pipelineがこのたび、OPAL natural gas pipeline(Baltic Sea Pipeline Link)と接続した。
付記
2011年11月に供給を開始した。
2012年4月に2本目の敷設工事が完了した。10月から稼働予定で、輸送量は倍増し、合計で年間550億m3になる。
Nord Stream Pipelineは、2005年9月、ロシアのGazpromとドイツの電力会社E.On、及びBASFのエネルギー分野の子会社Wintershallの3社が設立し、
その後、オランダのNederlandse
GasunieとフランスのGDF
SUEZが参加した。
現在の出資比率は、Gazprom
51%、Eon 15.5%、Wintershall 15.5%、Gasunie 9%、
GDF SUEZ 9%となっている。
なお、BASFのエネルギー分野の子会社Wintershallはロシアの South Stream 天然ガスパイプライン計画に参加することで合意している。
2011/3/30 BASFがロシアの South Stream 天然ガスパイプライン計画に参加
OPALは全長470kmのパイプラインで、Nord Stream がドイツのLubminで地上に出たところからドイツとチェコの国境のOlbernhau まで南下する。
OPALはWINGAS Group が80%、E.ON が20%出資する。
WINGAS GroupはWintershallが50%+1株、ロシアのGazpromが50%-1株を所有する。
OPALと既存の欧州のガスパイプラインとの接続も検討されている。
OPALは既に完成しており、第4四半期にもロシアの天然ガスが欧州に流れる。
2011/8/29 韓国の李大統領、中央アジア3か国歴訪、ガス田開発、石化事業などで合意
韓国の李大統領は8月21日からモンゴル、ウズベキスタン、カザフスタンを訪問し、資源・エネルギー分野の協力強化で合意した。
モンゴルでは、両国の関係を「善隣友好協力パートナー関係」から「包括的パートナー関係」に格上げし、レアアースなどの確保に向けたエネルギー・資源分野の戦略的協力了解覚書も締結した。
ウズベキスタンで41億6千万ドル規模のSurgil ガス田開発プロジェクト、カザフスタンでは石炭火力発電所とLG化学の石油化学JVなど80億ドル規模の契約を結んだ。
1)モンゴル
李明博大統領は8月22日、エルベグドルジ大統領と会談し、2006年に締結した「善隣友好協力パートナー」関係を1段階高い包括的パートナー関係に引き上げることで合意した。韓蒙間の「中期協力行動計画」もまとめた。
中期行動計画には、埋蔵量世界2位の銅、4位の石炭、14位のウラン、鉄などの原料加工分野に対する韓国企業の投資を増やすための政府間協力を進めるという内容が盛り込まれた。
また、豆満江開発事業(韓国、北朝鮮、中国、ロシア、蒙古の5カ国共同の地下資源・植物・地質などの探査)のために努力し、大陸鉄道網連結のための共同研究も進めることにした。
鉱物資源の探査・開発を強化するという了解覚書も締結された。特にレアアースとウランでの協力を強化する。
2)ウズベキスタン
ウズベキスタンのアラル海に近いSurgil ガス田を開発し、ガス化学プラントを建設する総額41億6千万ドル規模の超大型プロジェクト契約が8月23日に締結された。
2006年に韓国ガス公社(KOGAS) とウズベキスタン国営ガス公社(UNG) が了解覚書を締結し、2008年に双方が50%ずつ出資する合弁会社(UZ-KOR) を設立し交渉を続けてきた。
UZ-KOR 株主
ウズベキスタン Uzbekneftgaz(UNG) 50.0% 韓国 韓国ガス公社(KOGAS) 17.5% 湖南石油化学
(当初は子会社のロッテ大山石化)17.5% STX Energy(双竜グループ) 5.0% LG International 5.0% SK Gaz 5.0%
今回、GS Engineering & Construction、Samsung Engineering、Hyundai EngineeringとUNG、UZ-KORがガス田開発とパイプライン建設に対する契約を結んだ。韓国3社はまた、ガス設備、エタン分解設備、エチレン製造工場、付帯設備などの契約文書に署名した。
Surgil のガス埋蔵量は1300億立方メートルで、液化天然ガス換算で9600万トン、原油換算で8億3000万バレルに上る。
3)カザフスタン
李大統領は中央アジア歴訪最終日の8月25日、カザフスタンで政府間協定を含め80億ドル規模の事業権関連契約を締結した。
知識経済部とカザフスタン産業技術省は、Balkhash石炭火力発電所事業権を韓国コンソーシアムに与える内容の政府間協定を締結した。
Balkhash湖の南西部沿岸に45億ドルで66万kw規模の石炭火力発電所2基を建設し今後20〜30年間にわたり運営する。
韓国側からは韓国電力 (35%) とSamsung C&T (35%) が、カザフスタンからは国営電力会社のSamruk-Energo
(25%) とカザフスタン資源大手のKazakhmys (5%) が参加する。
ーーー
LG化学と国営企業のKazakhstan Petrochemical (KPI) はAtyrau石油化学団地建設と関連の合弁契約に署名した。
50/50JVを設立し、カスピ海近くのTengiz油田から出るエタンガスを活用してエチレン、ポリエチレンを製造する。
LG化学が工場建設・運営・製品販売を担当する。
KPIは国営石油会社KazMunaiGasが51%、私企業のSAT & Co が49%を保有する。
能力はエチレンが84万トン、PEが80万トン。
投資額は40億ドルで、両社が6億ドルずつ出資、残り28億ドルはプロジェクトファイナンス。2016年の生産開始を目指す。
LGでは低コスト原料の海外石化基地を確保でき、将来的に中東と競合する地位を得たとしている。
なお、KazMunaiGasのAtyrau 製油所では石化コンプレックス計画第一期としてSinopec Engineeringが芳香族工場の建設を請け負っている。
ベンゼン 133千トン、パラキシレン 496千トンで、2013年に生産開始の予定。今回のLGの計画はAtyrauの石化コンプレックス計画の第二期になる。
付記
2016年1月、LG Chem は撤退を発表した。原油価格の低落と投資額の大幅増大を理由としている。
LGとGMは8月25日、LGによるChevrolet Volt やOpel Ampera用のバッテリー供給での協力関係を拡大し、電気自動車を共同で開発すると発表した。
GMとLGの提携関係は、2009年にLG化学がGMの電気自動車シボレー・ボルト用バッテリーの単独供給メーカーに選定されたことから始まった。
2009/1/17 LG化学、GMに電気自動車用バッテリー独占供給へ
今後GMが製造する次世代電気自動車向けのバッテリーやモーター、車内冷暖房システムなど主要部品や中核ソリューションなどの開発をGMと共同で進める。
GMは今後、LGのバッテリーやその他のシステムを利用することにより製造販売する電気自動車の数と種類を増やし、LGはこれにより自動車部品メーカーとしての製品種類を広げる。
GMでは、この協力関係により、将来のニーズがより早く解決できるようになるとしている。需要家は最新の省エネ技術をより早く利用でき、我々は開発段階での時間と費用を節約できると述べた。
GMが開発を進める次世代EVは早ければ4‐5年後、市場に登場するものと予想されている。
GMのパートナーとなったLGは今後一定期間、主要部品をGMに独占的に供給する可能性が高い。
LGではこれまで、エネルギー、Living&Eco、ヘルスケアを3大次世代成長エンジンとし、電気自動車事業をエネルギー部門の下位単位に分類してきたが、今回、電気自動車を加えて4大 次世代成長エンジンとして育成する。
LGではLG電子がスマートホン時代に一歩遅れて対応したため不振に陥っており、LGディスプレー
も液晶表示装置(LCD)市況の悪化に悩む。
このためLGはグループを挙げて電気自動車事業に「全てをかける」ことにした。
LG化学のバッテリー、LG電子のエアコンおよび換気システム、LGイノテックのモーター、LG CNSの充電インフラ、V−ENSの自動車部品設計など、系列会社を総動員して電気
自動車事業に本格的に参入する計画。
このため、LGは大規模な電気自動車研究施設を設立することにし、今年初めから仁川市と用地選定について協議を行っている。
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自動車向け二次電池ではLGがトップを切っているが、その素材の大部分を日本からの輸入に頼っている。
2010/9/13 三菱化学、リチウムイオン二次電池用負極材の製造能力増強 (後半に各部品のシェア)
このため韓国政府は2010年7月、二次電池(充電式電池)を次世代の基幹産業に育てる2020年までの長期計画をまとめた
2010/7/15 韓国、「二次電池の競争力強化に向けた統合ロードマップ」を確定
今回のLGのように最終の自動車を抑えた上で、上流に遡られると、電池部品での日本の優位も危うくなる。
大阪府の泉南地域の石綿紡織工場の元労働者や元周辺住民ら29人が石綿肺や肺がんなどになったのは、国がアスベスト(石綿)の規制を怠ったのが原因だとして、国に計9億4600万円の賠償を求めた訴訟の判決が2010年5月19日、大阪地裁であった。
小西義博裁判長は「石綿対策を省令で義務づけなかったのは違法」とし、
賠償金を支払うよう命じた。
勝訴したのは26人で、賠償額は1人あたり 687万円〜4,070万円で総額は約4億3500万円。
工場近くで石綿粉じんにさらされたとして「近隣暴露」を訴えた元周辺住民の請求は退けた。
2010/5/22 アスベスト被害で国の責任認定
これに対し、厚生労働省と環境省は控訴を断念する方向で調整に入っていたが、政府は関係閣僚会議を開き、控訴する方針を決めた。
仙谷国家戦略相は、「短時間でこの問題を確定させてしまえば、後々出てくる問題点について合理的な解決策を示す余地がなくなる。全体的な解決策を、裁判所に入っていただくこともありうる前提で検討する」と述べた。
この控訴審判決が8月25日、大阪高裁であった。
三浦潤裁判長は、国の不作為責任を初めて認めた1審判決を取り消し、原告側逆転敗訴の判決を言い渡した。
「国が1947年以降、健康被害の危険性を踏まえて行った法整備や行政指導は著しく合理性を欠いたとは認められない」と、国の責任を否定した。
裁判長は、「過去に吸い込んだアスベストによって深刻な被害が現実化していることを考えると、長期的な危機管理として必ずしも十分でない部分があったことは否定できない」とも述べた。
最近の訴訟では国の不作為責任を認める司法判断の流れが続いており、1審判決もこの流れに沿ったものであったが、控訴審は逆の判断を示した。
原告団と弁護団は「泉南地域の被害と国の加害の事実から目をそむけ、国民の生命、健康よりも経済発展を優先させた国の責任を不問に付すもので、信じがたい暴挙。直ちに上告し、引き続き泉南アスベスト被害の全面解決を求めて最後まで闘い抜く」との声明を出した。
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1審の大阪地裁と今回の高裁の判決理由はそれぞれ以下の通り。
・1960年時点で石綿肺防止のための省令を制定しなかったこと
地裁:違法
石綿肺の医学的知見が1959年におおむね集積され、被害の防止策を総合的にとる必要性も認識していた 筈。
この時点で省令を制定せず、71年に旧特化則(特定化学物質等障害規則)で粉じんが飛散する屋内作業場に排気装置を設置することが義務付けられるまで、対策をとらなかった。
省令を制定・改正し、排気装置の設置を義務づける規定を設けなかったのは、著しく合理性を欠き、違法 。
高裁:違法でない
当時は排気装置の設置が、技術的に確立していなかったうえ、コストの高さもあって工場が導入に積極的ではなかった。
1971年に設置を義務づけるまで国の対策が遅れたとは言えない。国は、1947年に制定された旧労働安全衛生規則で、アスベストも規制の対象にして事業者に排気装置の設置や防じんマスクの着用などの適切な措置を指導するとともに、その後も法整備や行政指導を順次行ってきた。
日本がアスベストを禁止した時期も、海外に比べて特に遅れたとは言えない。
・1972年時点で国が石綿肺防止の省令を制定しなかったこと
地裁:違法
石綿粉じんと、肺がんと中皮腫発症の関連性があるという医学的知見は、1972年におおむね集積された。
粉じん測定機器としてメンブランフィルター法も実用化され、一般の事業所で粉じん濃度の測定ができるようになった。
特化則により、石綿を製造し、取り扱う屋内作業場で6カ月以内ごとに1回、定期的に粉じん濃度を測定、記録することが義務付けられた。測定結果の報告などを義務づける必要があったが、国はこれを怠った。これは著しく合理性を欠き、違法。
・省令制定権限不行使の違法と石綿粉じん暴露による損害との因果関係
地裁:
国の省令制定権限不行使の違法と、60年以降に石綿粉じんに暴露し石綿関連疾患になった労働者の原告、またはその相続人らの損害には、相当因果関係がある。
・規制権限のあり方
高裁:
化学物質の危険性が懸念されるからといって、ただちに製造、加工を禁止すれば産業社会の発展を著しく阻害しかねない。
規制の判断要素になる医学的知見などは変化するため、権限行使の時期や内容は大臣によるその時々の高度に専門的で裁量的な判断に委ねられている。
健康被害が発生した場合も、規制権限の不行使がただちに違法にはならない。
許容される限度を逸脱して、著しく合理性を欠くときに限り違法
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労災認定の時効(死後5年)を理由に補償請求権を失ったアスベスト(石綿)関連患者の遺族らの救済措置を復活、延長する改正石綿健康被害救済法は8月26日の参院本会議で全会一致で可決、成立した。
救済措置が当面10年間延長される。近く施行される見通し。
現行の石綿救済法は2006年3月27日(同法施行日)までに死亡した住民らの遺族に特別遺族弔慰金など(約300万円)を支給しているが、今年3月末から新たな時効の救済が打ち切られていた。
このため改正法は、施行日から10年が経過する2016年3月27日前までに死亡した被害者に拡大する。(請求期限は2011年3月)
BPは本年1月、ロシアのRosneftとの間でグローバルな戦略的提携で合意した。
Putin首相と腹心のIgor
Sechin副首相がこれをバックアップした。
Rosneft はBPの株式5%を購入、見返りにBPはRosneftの株式 9.5%を購入する。
両社はロシアの北極海大陸棚にある3つの鉱区(EPNZ 1,2,3)を共同で開発する。2011/1/17 BP、ロシアのRosneft と戦略的提携
しかし、これに対し、BPのロシアのJVのTNK-BPの株主のAlfa
Access Renova (AAR)を構成する4人の新興財閥が、BPとRosneftとの取引がTNK-BPを除外しているのは、BPとTNK-BPの株主契約に違反するとしてロンドンの高等法院に訴えた。
BPが株主契約に基づき、ロシアではTNK-BPを通して活動することを求めた。
TNK-BPはBPとAARが45%ずつ出資、残り5%が一般株主となっている。
AARの構成は以下の通り。
Alfa Group ロシアの新興財閥で、ロシア最大の金融産業コングロマリットのひとつ。
Mikhail Fridman と German Khan が50%ずつ保有。Access Industries ロシア生まれの Len Blavatnik が設立し所有する米国の投資会社で、Basellを買収した。 Renova Holding ロシアの長者番付では第5位のViktor Feliksovich Vekselberg (SUALの大株主)のベンチャーキャピタル。
2月1日、裁判所は調停での問題解決を命じた。
調停委員会は2011年5月1日、下記の決定を下した。
・TNK-BPは
Rosneft
の同意を前提に、北極海開発に参加する。
・これを条件に、BPとRosneftの株交換を認める。
これに対しRosneft
はTNK-BPの北極大陸棚での事業参加には難色を示した。
このため、AARの持ち株をBPと
Rosneftが買い取る交渉が進められたが、AARは拒否し、この結果、BPとRosneftの契約は5月16日に時間切れで白紙となった。
2011/5/18 BPとRosneft との提携、白紙に
AAR側は4月の時点で、BPの行動により TNK-BPが北極海開発の機会を失ったとして、100億ドルの損害賠償を求める意向を明らかにした。
この対抗策として、BPは8月5日、AARのメンバーのRenova
Holdingに対し、調停の通知を行った。
RenovaがIES Holding Ltdを通じて大規模な天然ガス、燃料事業を行い、株主契約に違反しているとする。
Renova側はTNK-BP の株主契約になんら違反しないとし、AARが予定している仲裁を遅らせることを狙っていると批判した。
この直後の8月10日にTNK-BPのロシアの少数株主のAndrei Prokhorovが
TNK-BPの役員でもあるBPの役員Peter
Charrow と Richard Sloanを訴えた。
BPとRosneftの交渉を知っていたに違いないとし、この情報をTNK-BPに伝えなかったために、TNK-BPが北極海開発の機会を失い、約870億ルーブル(約2,970百万ドル)の損害を被ったとしている。
このAndrei Prokhorovはごく少数の株を持っているだけで、AARの利益を代表しているとみられている。
ロシア紙によると、西シベリアのTyumen仲裁裁判所が9月21日にヒアリングを予定している。既にTNK-BPとBPに資料提出を求めている。BP はこの訴えは根拠がないとし、徹底的に争うとしている。
付記
ロシアの司法当局は8月31日、モスクワのBPの事務所を家宅捜索を行った。
裁判所が派遣した捜査員や武装警官、訴訟原告の代表者など二十数人が到着、Rosneftとの提携交渉やTNK-BPに関連した書類を 調べた。その後、BPはこの家宅捜査を法律違反であるとして取り消しを求め、連邦執行局(Federal Bailiff Service)は9月10日まで執行を延期した。
付記
シベリアの裁判所は2011年11月、Andrei Prokhorovの訴えを却下した。
AARは8月15日、Stockholm仲裁パネルに、BPがRosneftとの提携によりTNK-BPの株主契約を破ったかどうかの審理を求めた。
AARでは損害賠償についての判断は求めていない。
損害賠償はAARとBPとのストックホルムでの調停ではなく、TNK-BPとBPの間の英国での裁判でやる必要があるとしている。
5月の調停では、Rosneft
の同意を前提にTNK-BPが北極海開発に参加する
とし、これを条件にBPとRosneftの株交換を認め
た。
BPとAARの株主契約を尊重したものであり、調停ではBPが株主契約を破ったとの判断が下される可能性がある。
BPは北極海開発での将来の利益を失ったうえに、多額の損害賠償を求められる可能性があり、メキシコ湾原油流出事故に続く大きな負担となる。
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BPとRosneftの契約は5月16日に時間切れで白紙となった。
Rosneft は8月30日、北極海大陸棚などでの油田探査・開発に関し、ExxonMobilと業務提携することで合意した。
対象はロシア北部の北極海と、ロシア南部の黒海の深海油田で、Rosneft が66.7%、ExxonMobilが33.3%のJVで油田のほか、ガス田の開発を行う。
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BPは2011年2月、インドの石油精製・石油化学最大手のReliance
Industries と提携し、インドでの石油・ガス開発を拡大すると発表した。
両社はロンドンで枠組み協定に調印した。
BPはRelianceが操業しているベンガル湾のKrishna
Godavari (KG)海盆のKG
D6 blockを含む23の鉱区(総面積27万km2)の石油・ガス権益の30%を取得する。
また50/50のJVを設立し、インド市場でのガス販売の市場調査などを実施する。
JVはまた、インドで天然ガスの受け入れ、輸送、販売のためのインフラ作りに努力する。
2011/2/28 BP、インドでのガス・石油開発でRelianceと提携
両社は2011年8月30日、正式契約に調印した。
BPは対価として72億ドルを支払うが、実績に応じて追加で最高18億ドルを支払う。
日本各社やBASFが高吸水性樹脂の増強を行う中、日本触媒やBASFとトップを争うEvonik(旧 Degussa)も高吸水性樹脂の増強を決めた。MMAについてもドイツ、米国、中国の工場の増強を決めた。
2010/12/22 BASF、高吸水性樹脂を増強
2011/8/4 日本の各社、高吸水性樹脂を増強
Evonikは8月17日、サウジのNational Industrialization
Company (Tasnee) とSahara Petrochemicalsのアクリル酸系製品の統合会社の Saudi Acrylic
Acidとの間で、高吸水性樹脂を製造するJVのSaudi Acrylic Polymersを設立する契約に調印した。
出資比率は明らかにされていない。(他のJVの例からみると、Evonikの出資比率は25%か?)
Tasnee、Sahara及び両社のポリオレフィン計画については、下記参照。
2006/5/13 サウジの民間ポリオレフィン計画
工場はAl Jubail chemical parkのTasneeの工場に立地し、能力は年産80千トン。2013年下期のスタートアップを目指す。
同地にはTasneeとSaharaの競争力のあるプロピレンと、それを使ったアクリル酸のプラントがあり、新会社は低コストのアクリル酸を使い、高吸水性樹脂を生産する。
これは中東で最初の高吸水性樹脂で、Evonikでは、成長の著しい中東市場への進出の第一歩とするとともに、高吸水性樹脂の世界のリーダーとしての地位を更に高めるとしている。
Tasnee とSaharaのアクリル酸コンプレックスは以下の通り。(青字は付記)
製品 | エチレン、プロピレン、PE | 持株会社 | アクリル酸 | 高吸水性樹脂 |
社名 |
Saudi Ethylene and Polyethylene (SEPC) |
Saudi Acrylic Acid |
Saudi Acrylic Monomer (SAMCO) |
Saudi Acrylic Polymers |
出資 |
Tasnee & Sahara Olefins 75% LyondellBasell 25% |
Tasnee & Sahara Olefins
65% Tasnee 13% Sahara 22% |
Saudi Acrylic Acid
75% Rohm & Haas(Dow) 25% |
Saudi Acrylic Acid
75% Evonik 25% |
能力 |
エチレン 1,000千トン プロピレン 285千トン HDPE 400千トン LDPE 400千トン |
アクリル酸 250千トン | 高吸水性樹脂 80千トン | |
原料ソース | SEPCのプロピレン | SAMCOのアクリル酸 |
なお、TasneeとSaharaはSEPC設立以前に、それぞれ、LyondellBasellとの間でPPのJVを設立している。
製品 | プロパン脱水素とPP | プロパン脱水素とPP |
社名 | Saudi Polyolefins | Al-Waha Petrochemical |
出資 |
Tasnee
75% LyondellBasell 25% |
Sahara
75% LyondellBasell 25% |
能力 |
プロピレン 450千トン PP 485千トン 現在 720千トン |
プロピレン 467千トン PP 450千トン |
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Evonik は8月25日、需要増大に対応するため、MMAモノマーの増強を行うと発表した。
2011年と12年に、ドイツWormsとWesseling、米国ルイジアナ州 Fortier及び上海工場のデボトルネッキング等により、合計約50千トンの能力増を行う。
EvonikのMMA事業の元はドイツのRoehmで、(更にその元はRohm & Haas で、第一次世界大戦の敗戦で米国子会社が分離独立した)1989年にHulsに買収された。
Hulsは1899年にDegussaと合併してDegussa-Hulsとなり、その後、Degussaに、更にEvonikに改称した。
米国のCyroは、当初はRoehmの米国再進出のため、CytexとのJVとして設立されたが、現在は100%子会社となっている。
2009年11月、上海ケミカルパークの同社のMMAコンプレックスが商業生産を開始した。
イソブチレン 105千トン
MMA 115千トン
メタクリル酸 15千トン
ブチルメタクリレート 20千トン
PMMA 40千トン
Degussa の欧・米のMMAはともにACH法であるが、今回の上海のMMA計画遂行に当たり、同社は日本メーカー(名前を明らかにせず)から直酸法の技術を導入した。
最新情報は http://blog.knak.jp/