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これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。
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読売新聞は10月11日、「iPS心筋移植、ハーバード大で…初の臨床応用」と報じた。
ハーバード大の森口
iPS細胞を利用した世界初の臨床応用例で、最初の患者は退院し、約8か月たった現在も元気だという。
iPS細胞の作製方法は、4種類の遺伝子を注入する山中教授の手法とは異なるものだという。
報道によると、以下の手法をとった。
・患者の肝臓から肝臓の前駆細胞を採取
・2種類の化学物質を用いてiPS細胞を作製
Nature誌によると、森口論文記載では microRNA-145 inhibitor と TGF-β ligand
・心筋細胞に変化させた後、冷却装置を用いて大量増殖
森口氏の他の本では、冷却は単に保存のためとしている。
・重症心不全患者の心臓の約30カ所に注入
更に読売新聞は森口客員講師とのインタビューを掲載した。
・患者6人
いずれも米国籍で、日系の患者も1人。ハーバード傘下の同じ病院の患者。
最初の患者は肝臓移植を受けていたため、心臓が悪くなったのに次の移植の機会がなかなか得られなかった。心筋梗塞や狭心症、糖尿病も持ち、仮に心臓移植をやっても難しかっただろう。
ほかの5人も、慢性虚血性で重症の心不全。危険因子を多く抱えていた。
3人は何か治療しなければ死んでいただろう。他の3人も1か月くらいしかもたない状況だった。
患者たちの容体は安定し、1人は社会復帰して働いている。
・チーム構成
5人ほど。私が細胞を担当。
過冷却の担当者は生命工学や機械工学を専攻するハーバード大とマサチューセッツ工科大の大学院生ら。(手術した医師の名前が出てこないのがおかしい 。同氏は東京医科歯科大学医学部保健衛生学科卒業で、看護師の資格を持つが、医師の資格は持たない。)
・日本と米国の違い
日本なら規制が色々あってできなかっただろう。
・資金調達
大学院生らがボストンのベンチャーキャピタルに行って集めてくれた。
森口氏は、米ニューヨークのロックフェラー大学で10日から開かれていた 7th Annual Translational Stem Cell Research Conference (幹細胞学会)で、iPS細胞から心筋の細胞を作り、重症の心不全患者に細胞を移植する治療を実施したとポスターで展示した。
共著者には4人の名前が挙がっている。各氏の発言は以下の通り。
東京医科歯科大学の佐藤千史教授
「メールで研究の抄録を受け取り、内容の整合性を確認、名を連ねることを了承した。注意が不十分だった」
東京大学の井原茂男特任教授
「基礎的なデータ解析は頼まれたが、人の臨床に応用するとは聞いていなかった」
杏林大の上村隆元 講師
「iPS細胞について、私は全くの専門外。事前に一切連絡はなく、なぜ私の名前が入っていたのか分からない」
慶応大医学部の興津太郎助教
(森口氏が本年9月に発表した「肝臓がんの細胞から作ったiPS細胞を使った新治療法」の共同執筆者とされた)
「掲載された研究に関与した事実は一切ない」
NHKの取材に対し森口氏は、細胞移植はことし2月以降、ボストンにあるハーバード大学の関連病院、マサチューセッツ総合病院で院内の倫理委員会の暫定承認を得たうえで実施した、と説明した。
NHKは読売の報道前に同氏にインタビューしたが、病院側の確認が取れないことや、 列挙されている著者が日本人ばかりで手術した医師などが入っていないなど、不審なことが多いため、放送しなかったという。
毎日新聞、朝日新聞、日本経済新聞も取材を依頼されたが、説明に不審な点があるため、記事化を見送ったとしている。
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読売新聞の
報道を受け、海外の記事を探したが、一切報道されていなかった。
ハーバード大学なども臨床応用実施の発表はしていない。
「1999〜2000年にかけてマサチューセッツ総合病院の客員研究員だったが、それ以来、同病院やハーバード大とは関係がない。森口氏の職務に関わる臨床試験は、同大学あるいは総合病院の審査委員会により承認されたものではない」
これを受けて国際学会を主催した財団も、「疑義が生じた」と指摘し、会場から発表内容を示したポスターを撤去する措置をと った。
ウェブで参加登録をした研究者は誰でもポスターを示して研究成果を説明することができるといい、審査などはないという。
これについて森口氏は、「きちんとした手続きにのっとって移植を実施した。私に医師の資格はないが、移植は医師の指示の下で行われたので問題はない。ハーバード大学が私が所属していないと否定するのはよく分からない」と話してい る。
森口氏が「論文を投稿する」と説明したNature Protocolsの編集部は「該当する論文は受理されていない」としている。
英科学誌 Natureは10月12日、森口氏の主張におかしな点が多数あることを指摘し、更に、iPS細胞に関する本で森口氏が執筆を担当した部分に、山中伸弥・京都大教授の論文と同じ表現があることが分かったとの記事を電子版に掲載した。
http://www.nature.com/news/stem-cell-transplant-claims-debunked-1.11584
読売新聞は10月12日、以下の通り報じた。
「iPS心筋移植」報道、事実関係を調査します。
本紙記者は、事前に森口氏から論文草稿や細胞移植手術の動画とされる資料などの提供を受け、数時間に及ぶ直接取材を行った上で記事にしました。
森口氏は本紙記者のその後の取材に対し、「(取材に)話したことは真実だ」としていますが、報道した内容に間違いがあれば、正さなければなりません。
現在、森口氏との取材経過を詳しく見直すとともに、関連する調査も実施しています。読者の皆様には、事実を正確に把握した上で、その結果をお知らせいたします。
同紙は13日、森口氏の説明は、「虚偽と判断」し、「今回の事態を招いたことに対し、読者の皆さまに深くお
「事実だ」と主張し続ける森口氏の説明は客観的な根拠がなく、説明もまったく要領を得ません。
私たちはそれを見抜けなかった取材の甘さを率直に反省し、記者の専門知識をさらに高める努力をしていきます。
本紙は過去にも森口氏の記事を取り上げています。そのうちの2010年5月の記事について東京医科歯科大が12日、同大での実験や研究を否定しました。ゆゆしき事態であると認識しています。
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読売新聞は2010年5月1日、「iPS活用 初の創薬…C型肝炎 副作用少なく 東京医科歯科大など成功」の記事を掲載した。
ヒトのiPS細胞などを使って、C型肝炎を治療する効果的で副作用も少ない薬の組み合わせを見つけ出すことに、森口尚史・米ハーバード大学研究員らと東京医科歯科大のグループが成功した。
難治性C型肝炎の治療はインターフェロンと抗ウイルス薬リバビリンの同時投与が一般的だが、インターフェロンには発熱やうつ症状、リバビリンには重い貧血などの副作用があった。
森口研究員らは既存の治療薬など10種類から2〜3種類を選択。C型肝炎ウイルスに感染した肝臓の培養細胞に同時投与して薬の効果を調べる一方、ヒトiPS細胞から作った心筋や肝臓の細胞にも同様に加えて薬の副作用を調べた。
その結果、量を4分の1に減らしたインターフェロンと、高脂血症治療薬、臨床試験中の肝がんの新薬の計3種類を組み合わせて使うと、ウイルスは10%以下まで急減。iPS細胞由来の心筋の拍動や肝臓細胞へのダメージも少なかった。
東京医科歯科大は10月12日記者会見を開き、森口氏が同大と、iPS細胞を使ってC型肝炎の新しい治療法を開発したとする読売新聞の2010年の報道について、「同大で研究実験を行った事実はない」と発表した。
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東京大学のホームページには、森口氏について以下の記載がある。
東大 先端科学技術研究センター知的財産分野 寄付研究部門
先端医療・知的財産政策(第一製薬)
客員助教授 森口尚史
1995年 東京医科歯科大学大学院医学系研究科卒業後、(財)医療経済研究機構 調査部長及び主任研究員として活動し、1999年度7月より現職。現在、ハーバ ード大学医学部マサチューセッツ総合病院 消化器内科教室リサーチフェロー及び東京医科歯科大学医学部非常勤講師を兼務。
先端研ニュース(2002/4/1)では、2002年3月31日退職となっている。
2007年9月に東大で博士号(学術)を取得した。
博士論文題目は「ファーマコゲノミクス利用の難治性C型慢性肝炎治療の最適化」
現在は東京大学医学部附属病院形成外科・美容外科で有期契約の特任研究員をしているという。
東京大学医学部附属病院は10月12日以下のコメントを出した。
本日現在、本人とは連絡がとれておりません。
東京大学医学部附属病院では、事実関係の確認を急いで行っているところです。
付記
東京大学は10月19日、同大病院の森口尚史・特任研究員について、懲戒解雇処分にしたと発表した。
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森口氏は10月13日、記者会見し、iPS細胞を使った手術について、時期や回数などに虚偽が含まれていたことを認めた。
手術は昨年6月に1件行ったとしたが、詳細は明らかにしなかった。
なぜ直ぐにバレルことをやったのだろうか。
中国税関総署は10月13日、9月の貿易統計を発表した。
全体の輸出は1863億5千万ドルで単月では過去最高となったが、前年比は9.9%増で、昨年の勢いはない。
輸入は1586億8千万ドルで2.4%増で低水準となった。
この結果、貿易収支は 276億7千万ドルの黒字で7カ月連続の黒字となった。
日本への輸出は 2.1%増の139億ドルにとどまり、輸入は161億ドルで 9.5%減となった。
中国経済の減速に加え、尖閣諸島国有化に反発した反日デモや、日本製品不買運動などが影響したとみられる。
新華社通信は、9月の輸出入は国内外の経済政策による需要回復で増加したが、近い将来の貿易の力強い回復は考えにくいとしている。
外国政府の金融緩和策とクリスマス商戦用の注文で先進国向けの輸出が増大したとしている。
中秋節・国慶節祭日(9月30日−10月7日)を前に駆け込みの輸出もあったとみられる。
1〜9月の累計の輸出は14,954億ドルで前年同期比 7.4%増、輸入は13,471億ドルで 4.8%増、輸出入を合わせた貿易総額の伸びは6.2%増に止まった。
(今年の政府目標は10%前後の増加)
1〜9月の主要地域別の貿易状況は以下の通り。
輸出入額 前年比 EU(最大の貿易相手) 4,110億ドル 2.7%減 欧州経済の不振 日本 2,488億ドル 1.8%減 9月に減少幅拡大 米国 3,554億ドル 9.1%増 ASEAN 2,889億ドル 8.1%増 ロシア 662億ドル 14.2%増 ブラジル 654億ドル 5%増
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9月28日の上海外国為替市場の人民元相場は、対ドルで反発し、一時、1ドル=6.2835人民元を記録した。
2012/9/29 人民元、最高値更新
国慶節休暇明けの10月8日以降も人民元の上昇を続いている。
終値最高値は10月12日の6.2672人民元(弾力化前の8.92%高)。
10月15日には一時 6.2580人民元(弾力化前の9.08%高)の過去最高を記録した。
この間、中国人民銀行は基準値をむしろ引き下げたため、1%の上限に張り付く状態が続いたが、12日と15日には基準値が引き上げられた。
これは中国政府が人民元の上昇を認めるものとみられ、米国による為替操作批判を避けるものとの見方が出ている。
Romney候補は、「大統領に就任すれば中国を為替操作国に認定する」と述べている。
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中国国家統計局は10月15日、9月の物価を発表した。
消費者物価指数(CPI)は前年同月比1.9%上昇した。
食品は前年同月比2.5%上昇で、豚肉は昨年の価格高騰の反動で17.6%下落した。
食品以外は1.7%の上昇だった。
CPIの1〜9月平均は前年同期比2.8%の上昇となり、政府の今年の抑制目標である4%前後の上昇の範囲内に収まっている。
同時に発表した9月の工業生産者出荷価格(卸売物価)指数は同3.6%低下し、7カ月連続のマイナスとなった。
2012/10/17 石油資源開発、秋田でシェールオイル採取
石油資源開発は、10月1日から8日まで、秋田・女川層タイトオイル(鮎川シェールオイル)の実証試験を行った。
10月10日、その結果を発表した。
10月1日、鮎川油ガス田・女川シェール層(深度1800m)に対し酸処理テスト(*)を開始
(*)既存坑井を通じ希釈塩酸等を含む酸性流体をポンプで注入
シェールオイルがあるとみられる岩盤の割れ目に詰まった石灰などを溶かす。
10月2日、流体の注入(総量:141.6kl)を終了、ガス・リフト(*)により、注入した流体の回収作業を開始
(*)高圧ガスを坑井内に放出し、坑内液体の比重を小さくし、ガスの膨張上昇エネルギーによって液体を地上に汲み上げる手法。
10月3日、地表に回収した流体中に少量の原油の混入を確認
10月8日、流体回収作業を終了
回収した流体総量:100.6kl
回収した流体に含まれた原油総量:31.1kl
その後、坑井を密閉し、資機材の撤収作業を行った。
同社では、酸を流し込んだ地層に地下水脈はないため外部に漏れ出すことはなく、酸も産業廃棄物として処理するため、環境上の問題はないとしている。
今後、取得データなどの詳細分析などを行う。
来年から水平方向に井戸を掘り進め、高い水圧で割れ目を破砕し(水圧破砕法:fracking)、原油を取り出せるかを調べる。
経済性などを調べて生産への移行を検討する。
現時点で、鮎川油ガス田には約80万キロリットル(約500万バレル)程度のシェールオイルが採れる可能性があるとみている。
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石油資源開発は8月10日、米国テキサス州のシェールオイル開発プロジェクトに参入すると発表した。
買収した権益は、テキサス州アタスコサ郡、マクミュレン郡、ライブオーク郡のEagle Ford層の権益で、軽質原油、NGL、天然ガスを産出する。Marathon Oil が95%を有し、オペレーターとなっている。
石油資源開発では、Eagle Fordシェールオイル開発に参加して得られる最新の開発技術とノウハウを、今後の国内の非在来型石油ガスの開発において利用する考え。
2012/8/15 石油資源開発、米のシェールオイル開発に参加、日本での開発への技術習得目指す
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石油資源開発は本年7月20日、石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)と共同で、秋田県由利本荘市にある同社の「鮎川油ガス田」で、タイトオイル(シェールオイル)に係るエンジニアリングスタディを3月から実施中であることを明らかにした。
シェールオイルの埋蔵が確認されているのは、「鮎川油ガス田」の地下1000〜1500メートルにある頁岩(シェール)と呼ばれる粘土質の岩盤層。
鮎川油ガス田の貯留層は、船川層、女川層、グリーンタフなど複数の貯留層から構成されている。
共同スタディは、大規模なタイトオイル(シェールオイル)開発が進んでいるカリフォニア州Monterey層と同タイプで、タイトオイルの存在が期待される女川(おんながわ)層を対象とする。
同社によると、シェールオイルを含む硬いシェール層は、県内に分布しており、1989年に発見された鮎川油ガス田など所有する秋田県内3か所の油田でシェールオイルの存在も確認されていたが、これまで採掘する手段がなかった。
シェールオイルがあると分かった女川層
2012/10/18 三菱商事、インドネシアで地熱発電の運営・開発に参画
三菱商事は10月17日、再生可能エネルギー事業の拡大を目指し、インドネシアのジャワ島で2000年以来、安定して商業運転を続けているWayang Windu 地熱発電所等の運営を統括するStar Energy Geothermal Pte Ltd.の株式20%を取得すると発表した。
2億ドル強を出資する。出資スキームは下図の通り。
Wayang Windu
地熱発電所は、約13,000ヘクタールの契約鉱区を有し、現在23万キロワットが稼働中。
2017年までに発電規模を42万キロワットとする。
増設計画が実現した場合の本発電所の総事業費は約10億ドル程度と見込まれる。
Wayang Windu 地熱発電所は ジャワ島西ジャワ州バンドン市郊外の広大な茶畑の中にある。
既設は23万キロワットで、1号機11万キロワットが2000年6月に、2号機12万キロワットが2009年3月に稼動した。今後3号機・4号機の増設を検討中。
インドネシア電力公社に30年間にわたり全量を売電する長期契約を締結済み。既存の発電所を拡張しながら新たな電源開発も進め、2020年までに計70万キロワット強の発電容量を目指す。
現在、Halmahera島で2基の新設のFSを実施中。
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Star Energy はSupramu Santosaにより設立された。
2007年にBarito Pacificのオーナーで合板王と呼ばれる彭雲鵬 (Prajogo Pangestu) がStar Energy Investmentを設立して、Star Energyの71%を3億ドルで取得した。残りの29%はロンドンのAshmore Investmentが取得した。
彭雲鵬はStar Energy Investmentの60%を保有し、事業パートナーのAgus Prajosasmito が残りの40%を保有している。
Wayang Windu 地熱発電所のほか、石油・ガスの開発を行っている。
(三菱商事は地熱発電事業のみに参加する)
Kakap PSC では石油・ガス田の開発を行っており、日量8,000バレルの石油、60百万立方フィートの天然ガスを生産している。
他の3プロジェクト、Bayumas、Sebatik、Sekayu は開発段階。
Star EnergyはSebatik油田の権益の75%を持ち、オペレーターとなっている。
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彭雲鵬はインドネシアの石油化学会社 Chandra Asri の大株主。
Chandra Asri は当初、Barito groupが75%、日本インドネシア石油化学投資(丸紅 85%、昭和電工 10%、TEC 5%)が25%出資で設立された。
2005年に日本側は撤退、その後、株主が次々に代わった。
2011年9月にタイのSiam Cement Group がChandra Asriの株式30%を取得、経営に参画 した。
Barito Pacificの出資比率は64.8%で最大株主となっている。
PT Chandra Asriは、2007年に豊田通商からスチレンモノマー製造・販売の PT.Styrindo Mono Indonesia を買収し、2011年1月1日付でPPメーカーの PT Tri Polyta Indonesiaを統合し、新社名PT. Chandra Asri Petrochemical Tbk.として上場した。
2011/6/8 Chandra Asri の増設計画
2012/10/18 中国、3Qの実質成長率が7.4%に減速
中国国家統計局が10月18日発表した2012年7〜9月期のGDP実質成長率(速報値)は、前年同期比7.4%と、7四半期連続で鈍化した。
中国政府が3月に下方修正した政府目標の7.5%を下回った。
2012年1〜9月平均は7.7%となった。
参考 2012/10/16 中国の経済(2012年9月)
2012/10/19 倒産した米太陽電池メーカーSolyndra、中国の太陽電池企業を独禁法違反で訴 え
2011年9月に倒産した米国の太陽電池メーカーのSolyndra は10月12日、中国太陽電池企業の尚徳電力(Suntech Power)、天合光能(Trina Solar)、英利緑色能源(Yingli Green Energy)の3社を相手取り、独禁法違反を理由に15億ドルの賠償を求め、 San Franciscoの連邦裁判所に訴えた。
被告らは定期的に会合を開いて共謀し、太陽電池パネルをコストを下回る価格で米国市場にあふれさせ、同社を破産に追いやったとしている。
3社の米国価格は4年で75%も低下したとしている。
Suntechでは、Solyndraが競争力ある価格で製品化できなかった失敗の スケープゴートを求めるもので、根拠はなく、徹底的に争うとしている。
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Solyndraはかつて米国のエネルギー革新のモデル企業とされ、2009年に環境・エネルギー分野で雇用創出を目指すオバマ大統領の「Green New Deal」政策の一環として535百万ドルの融資保証を受け、2011年5月にはObama大統領も訪問した。
Solyndraの製品は、ビルや商業施設に設置する円筒状の太陽光パネルで、直射日光だけではなく散乱光・反射光もすべて捉え、風や光を通すことが最大の特徴だった。
光吸収層の材料として、シリコンの代わりに、銅(Cu)、インジウム(In)、
ガリウム(Ga)、セレン(Se)などを用いた CIGS型太陽電池である。
しかし、同社は2011年9月6日に破産法(Chapter
11)を申請した。
同社の役員は、「低価格の中国製太陽電池が大量に米国に流れ込み、当社は2008年に発表した取引総額が12億ドルに達する契約を履行できなかった」と
述べた。
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米国商務省は10月10日、中国製の太陽電池およびモジュールにダンピングおよび補助金の行為が存在するとする最終判決を下した。
2012/10/13 米国商務省、中国製太陽電池のダンピングを最終認定
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10月15日付のForbesには、この訴訟は“Entire Nonsense”であるという投稿が載っている。
共謀はあったかも知れないし、中国政府の支援を受けているかも知れない。Solyndraが米政府の支援を受けていたように。
Solyndraの例の通り、米国の企業も融資保証などを受けている。
本年6月28日には米太陽光発電パネルメーカーのAbound Solarが米連邦破産法の適用を申請する方針を発表したが、同社も「Green New Deal」政策の一環として、米エネルギー省から受けた4億ドルの融資保証枠のうち7000万ドルを利用していた。
しかし、Solyndraの倒産はそのためではなく、技術面でSolyndraのとった選択によるものだ。
選択が誤りであったというのではなく、「結果論」(シリコン価格が下がったことによる)。
Wall Street Journalも同じことを述べている。
2008年頃に太陽発電用シリコンは供給不足で、価格が高く、この結果中国製パネルの価格も高かった。
Solyndraはシリコンを使わないCIGS型に賭け、高価な工場を建設した。しかしその後の4年で、新しいポリシリコン製造工場への投資が増え、価格はkg当たり400ドルから20ドルにまで下がった。
この結果、シリコンを使った中国製のパネルの価格が下落した。
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Solyndraの破産法申請直後に、FBIは会計上の不正行為の疑いなどで同社を捜査した。
これについては米議会でも問題となり、最初から収益を上げる見込みのない同社に多額の融資をした政府の責任を追求するべく、裁判所からホワイトハウスに関係書類提出令状を発令させた。
しかしオバマ政権は、これは政治目的によるもので、実際の捜査とは関係ないので協力するつもりはないと全面的に拒絶した。
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Solyndraはこのたび、裁判所に対し、破産から離脱するための再建策を申請した。
再建策では、Solyndra自体は清算し、親会社の360 Degree Solar Holdingsが存続することとなっている。
政府は貸付金142.8百万ドルの19%程度を回収できるが、残りの債務保証からの債権の385百万ドルについてはほとんど回収できない。
政府はこれに反対している。
投票権のある債権者のうち、再建策に反対しているのは政府だけとされる。
一方、税務当局(Internal Revenue Service)は再建策の目的は租税回避にあるとして、これを認めないよう主張している。
親会社には975百万ドルの税務上の損失が引き継がれ、この結果、親会社のオーナーであるArgonaut Ventures I LLC とMadrone Partners LP は300百万ドル以上の税金を免れることとなる。
Delaware破産裁判所は10月17日に再建策について5時間にわたり、双方の証言を聞いた。
10月22日に最終弁論を行う。
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これとは別に、米リチウムイオン電池メーカーのA123 Systems, Inc は10月16日、破産法11条の適用を申請した。
同時に、自動車関連の技術、製品、ミシガン州にある2工場、中国のcathode powder製造工場、上海汽車とのJVのShanghai Advanced Traction Battery Systemsの持分などを、自動車部品メーカーのJohnson Controls, Inc.に1億2500万ドルで売却することで合意したことを明らかにした。
Johnson ControlsはA123の破産法申請後の運営資金(debtor in possession financing)として7250万ドルの資金を援助する。
破産法11条の申請は、この売却をスムースに進めるためとしている。
(破産法363条では、通常の商行為をこえる財産の処分は、裁判所の許可なければできない →
許可があれば出来る。)
A123 Systems は8月16日、中国の万向集団(Wanxiang Group Corporation)が、A123 Systemsの株式の過半数を、465百万ドルで取得する契約を結んだと発表した。最終的に万向集団は、A123 Systemsの株式を80%まで買い進める計画であった。
しかし、A123はこの取引が中止になったと発表した。
取引の条件の米国の外国投資委員会(CFIUS)の承認が得られなかった。 軍事用の先進的なバッテリー開発計画がある。
また、議会からも、税金で開発した重要な知的財産を外国に売り渡すのかとの批判が相次いだ。付記
中国の自動車部品大手、万向集団(浙江省)は2013年1月30日、米外国投資委員会から、A123システムズの買収を認められたことを明らかにした。
万向はA123の競売に参加し、2012年12月に2億5660万ドルで落札した。(NECとジョンソン・コントロールズも共同で応札していた。)A123は米国防総省向け事業はナビタス・システムズに225万ドルで売却することで当局の理解を得た。
同社は、オバマ政権が打ち出したGreen
New Deal 政策を通じ、2億4900万ドルの助成金を受けていた。
同支援プログラムを受けていた企業で破綻した企業に提供された支援額は少なくとも8億1300万ドルに上り、大統領選で問題となっている。
河野太郎代議士のブログ「ごまめの歯ぎしり」(2012年10月17日)に「あなたの電気代も流用されている」という記事が掲載されている。
http://www.taro.org/2012/10/post-1276.php
日本原子力発電という会社がある。東海第二原発と敦賀1号機、2号機を保有する原子力専業の発電会社だ。
敦賀1号機は2011年1月26日に運転を停止し、敦賀2号機は2011年5月7日に、東海第二は2011年5月21日にそれぞれ運転を停止した。
この会社の発電は全て止まった。
2010年3月期の発電量は136億kWh。
2011年3月期の発電量は170億kWh。
2012年3月期の発電量は10億kWh、そう10億kWh。
前々年の14分の1の発電量で、電力料収入はほぼ同じ。
なぜこんなことになるかというと、日本原子力発電は電力会社との契約で、発電しようがしまいが「基本料金」にあたるお金がもらえる。
東京電力は、おそらく年間400億円を超える金額を日本原子力発電に支払うことになる。
2011年4月から9月に、東京電力は232億円、関西電力220億円、中部電力195億円を支払っている。
いや、正確に言うと、東電が支払っているのではない。この年間四百数十億円は、東電管内の企業と世帯に東京電力が請求する電気代に含まれている。東電の値上げのときに、さすがにこれを値上げに入れるのはおかしいだろうという議論が出たが、枝野経産大臣はすんなりと、お認めになった。
本来ならば、売るものがない日本原子力発電が破綻して、株主である電力会社がその損失を負担すればよいだけの話だ。
(途中 略)
同社の事業報告にも以下のように記されている。
当社におきましては、福島第一原子力発電所事故以降、全国的に原子力発電所が再起動できない状況が続く中、当年度は、東海第二発電所及び敦賀発電所1号機が年度を通して停止したほか、敦賀発電所2号機につきましても、燃料集合体からの漏えい事象の発生やその後の定期検査によって昨年5月以降運転を停止することとなり、その結果、当年度の全発電所の平均設備利用率は4.6%、総発電電力量は10億65百万キロワット時と、当初計画を大きく割り込むこととなりました。
同社の決算は以下の通り。
2011年度の発電量は前年度の6%しかないのに、売上高は1453億円で、前年の1743億円から17%の減に止まっている。
「支出面では,業務各般にわたり徹底した合理化,効率化の推進による諸経費の縮減に努めました結果、経常費用合計は1,394億34百万円となりました」としているが、
個別決算でみると、大きく減っているのは燃料費と使用済燃料再処理費等と原子力発電施設解体費引当で、停止に伴う当然の減である。経常損益は前年度からは下回っているが、2007年度〜2009年度と比べると、大幅増となっている。
「経常利益は75億98百万円となりましたが、災害特別損失など特別損失として108億42百万円を計上したことにより、税引前当期純損失は32億44百万円となり、法人税率の変更に伴う繰延税金資産の取崩しによる法人税等102億57百万円を控除後の当期純損失は135億1百万円となりました。」
同社は1957年5月に、電力会社の社長会で、電力会社9社が出資して日本初の原子力発電の会社を設立する案が打ち出され、電力会社9社80%、電源開発20%の出資によって設立された。
現在の株主は以下の通り。
電力9社合計 85.04% (うち東京電力 28.23%)
電源開発 5.37%
一般(142人) 9.58% (日立 0.92%、みずほコーポレート銀行 0.71%、三菱重工 0.64%)
ーーー
日本原子力発電は日本で最初の原発を建設・運営するために電力9社が中心で設立したもので、発電した電力は電力9社が引き取っており、恐らく出資比率=引取比率となっていると思われる。
このような製造合弁会社の場合、ある引取会社の引取不足による原価高を他の引取会社に影響させないよう、Take
or Pay の形をとる場合が多い。
実質的に、各電力会社が引取比率で分けた分工場を持つ形となる。
この意味では、通常のケースでは仮に引取電力量が前年の6%になっても、各電力会社が固定費分は100%支払うのはやむを得ないこととなる。 (電力会社にとっては、どの工場を止めるかだけの問題)
しかし、休止が長期間続く場合や再稼働が認められない場合は異常事態であり、負担をどうするかは日本原子力発電と株主電力会社の協議で決めることとなろう。
そして、仮に東電が負担するとしても、発電に寄与していないので、それを電気代に含めて需要家に求償することにはならない 筈である。
「東電の値上げのときに、さすがにこれを値上げに入れるのはおかしいだろうという議論が出たが、枝野経産大臣はすんなりと、お認めになった。」(上記)
「ごまめの歯ぎしり」の続き:
東京電力の原子力関係の費用のうち、固定費は3489億円。ほぼこれにちかい費用が、原発が全く動いていない2013年3月期にも費用に計上される。
そして東電は胸を張って、この費用をあなたに請求する。
原子力規制委員会が安全基準を作り直し、それに沿った審査が行われ、必要なバックフィットを実施していたら、まず当分は動かないだろう。
ということを認めれば、東電の持つ原子力関係設備は発電に寄与していないので、その維持にかかる費用は当然総括原価には盛りこまれない。
しかし、東電の計画には原発再稼働が盛りこまれているので、原発の維持コストも総括原価に盛りこまれ、あなたの電気代にそれを盛りこんで請求される。
なぜ、動かせないはずの柏崎刈羽を盛りこんだ計画が認められたかと言えば、やっぱり枝野大臣がお認めになったからだ。
(途中 略)
2012/10/22 Massachusetts General Hospital
、森口氏の特許出願を撤回
森口尚史氏がiPS細胞から作った心筋細胞の移植手術を行ったと虚偽発表した件で、Harvard
大学のMassachusetts General Hospital は10月19日、森口氏と同病院のRaymond
T. Chung医師を共同発明者とするiPS細胞作製技術の特許を米当局に出願していたが、17日にこれを取り下げたことを明らかにした。
病院の広報担当者は「正式な出願は2011年7月7日で、森口氏が医師や知的財産部門に強く働き掛けたと聞いている。結果的に虚偽の研究に基づくものと判明したため取り下げた」と説明している。
共同発明者にChung准教授が名を連ねているため、内容などに問題はないと判断し、「2人の共著論文もあったため、研究内容を信用した」としている。
同病院の知的財産管理部門が米国で暫定特許を出願、今年1月に一般公示された。
・特許内容 RNA-145 inhibitor とTGF-β activator の2種類の化合物によるiPS細胞の作製技術など
・発明者は森口氏とRaymond T. Chung氏。
Chung氏はMassachusetts General Hospitalの胃腸科のVice Chief で、肝移植計画のMedical Director。
東大病院形成外科・美容外科の三原誠助教、東京医科歯科大学の佐藤千史教授との共著で、RNA-145 inhibitor とTGF-β activator の2種類の化合物によるiPS細胞の作製について記載した “Embryonic Stem Cells — Recent Advances in Pluripotent Stem Cell-Based Regenerative Medicine
・Assignee(譲受人=特許取得後の特許権者)はMassachusetts General Hospital
ーーー
米Harvard 大学とMassachusetts General Hospital は10月11日、以下の発表を行った。「1999〜2000年にかけてマサチューセッツ総合病院の客員研究員だったが、それ以来、同病院やハーバード大とは関係がない。森口氏の職務に関わる臨床試験は、同大学あるいは総合病院の審査委員会により承認されたものではない」
しかし、Massachusetts General Hospital のRaymond T. Chung氏が最近、森口氏などとの共著を出し、両氏を発明者とする特許を同病院が申請、その特許のassigneeが同病院となっていることから、「(2000年)以来、同病院やハーバード大とは関係がない」とは言えないのではないか。
同病院の知的財産管理部門が、 共同発明者にChung准教授が名を連ねているため、内容などに問題はないと判断し、「2人の共著論文もあったため、研究内容を信用し」 、特許を出願したというのも驚きである。
今回の問題を受けて、Chung氏は森口氏との共著論文から名前を削除することを同病院を通じて表明したという。
ーーー
東京医科歯科大の佐藤千史教授 について、同大の調査委員会は事情聴取し、佐藤氏が「論理的に間違っていないかアドバイスをしただけ」と証言したため、「研究の中身について検証せず、共著となることはありえない」と判断し、処分の対象とする見通し。
付記
東京医科歯科大学は12月26日付で佐藤教授を停職2か月としたほか、森口氏に払った総額130万円余りの経費について佐藤教授への返還請求を決めた。
調査委員長は佐藤教授に、「自分が責任を持てない論文を載せるのは科学者としてあるまじき行為」と苦言を呈した。
産経新聞が読売新聞の記事を受けて佐藤氏に電話取材した際に、「(読売新聞報道の)事実関係はあっている」との説明を受けたという。(産経新聞)
東京大学医学部付属病院は、「最先端・次世代研究開発支援プログラム」の一つとして、臓器凍結保存やiPS細胞保存などの技術研究で内閣府から助成金を受けているが、プロジェクトの代表の東大病院形成外科・美容外科の三原誠助教は実施状況の報告書で、「iPS細胞保存研究に関しては、特任研究員 森口尚史を中心として進めている」と記載している。
三原医師は10月15日、読売新聞の取材に対し、「森口氏から『ハーバード大の特許の問題があるので、先生にも話せないことがある』と言われた」とし、森口氏が担当する研究論文の内容をチェックしていなかったことを認めた。(読売新聞)
内容をチェックもせずに共著者になるというのは考え難いが、日米の学者3人が名前を連ねていたということになると、学会の状況が心配になってくる。
ーーー
東京大学は10月19日、同大病院の森口尚史・特任研究員について、懲戒解雇処分にしたと発表した。
2012/10/23 ExxonMobil、カナダのCeltic Explorationを買収、 Liquids-Rich シェールの権益を取得
ExxonMobil Canadaは10月17日、カナダのエネルギー開発会社Celtic Explorationを買収する契約を締結したと発表した。
買収に伴い、ExxonMobilは liquids-rich のMontney shaleで545千エーカー、Duvernay shale (Kaybob)で104千エーカー、他に Alberta州の他の地域の鉱区の権益を取得する。
同鉱区での生産量は天然ガスが日量7200万立方フィート、原油やコンデンセート、LNGが日量4000バレル。
Celtic Explorationの2011年末時点の推定では、埋蔵量は石油換算で128百万バレルで、そのうち原油、コンデンセート、NGLが24%、天然ガスが76%となっている。
買収金額は1株当たり24.5カナダドルで、Celticの債務の引き継ぎなどを含め、総額31億カナダドルになる。
Celticの権益のうち、ExxonMobilが引き継がない権益がある。
British Columbia州のInga 地域、Alberta州のGrande Cache 地域の権益と、Alberta州Karrの石油・ガス資産の権益で、これらの事業を行う新会社Spincoが別途設立される。
Celticの株主はCeltic株1株当たり24.5カナダドルを受け取るほかに、Celtic株1株につき新会社Spincoの株式 0.5株を受け取る。
ーーー
Celtic Explorationの事業概況は以下の通り。ExxonMobil に移る権益以外も含む。
Celtic Explorationによる2012年の生産の見通しは以下の通り。(青字はExxonMobilに移らない権益)
2011実績 2012予測 2012年末 Oil (bbls/d) 3,789 5,385 8,200 Natural gas (mmcf/d) 74.54 99.69 130.20 合計 (BOE/d) 16,212 22,000 29,900 地域別 Kaybob/Fir 11,300 14,400 Resthaven/Grande Cache 8,900 13,300 Inga/other 1,800 2,200 合計 (BOE/d) 22,000 29,900
ーーー
ExxonMobil は2009年12月21日、XTO
Energyを410億ドルで買収すると発表した。
XTOは米国のみで操業する非在来型天然ガス生産大手で、シェールガス、タイトガス、コールベッド・メタン、シェールオイルなど、合計換算
45兆立方フィートのガス資源を有しており、Barnett, Fayetteville, Haynesville,
Marcellusなど主要シェールガスの全てで開発を行っている。
ExxonMobilの最大の狙いはシェールガス開発技術の適用ノウハウ(人的資源)の獲得とされる。これらのノウハウは、非在来型ガスのみならず、世界の在来型及び非在来型石油に適用可能。
ExxonMobil のCEOは2010年1月、米議会で証言し、XTO買収がシェールからの天然ガス生産拡大につながり、環境に害を与えることなく米経済を押し上げるとの見通しを示した。
今回のCeltic Exploration買収について、ExxonMobilは以下の通り述べている。
今回の買収でExxonMobilの北米の非在来型石油資源に大きなliquids-rich 資産を加えることとなる。
ExxonMobilの資金面、技術面の強みと、タイトガス、シェールオイル・ガス、コールベッドメタンなどの開発に強みを持つ子会社のXTO Energyの力を合わせると、新規取得資産の価値を最大化できる。
2012/10/24 ロシアのRosneft、TNK-BPを買収
露石油最大手 Rosneftは10月22日、BPとロシアの投資家グループAlfa-Access-Renova(AAR) の合弁 の ロシアの石油会社TNK-BPを、双方から合計550億ドルで買収することを明らかにした。6か月以内の取引完了を目指す。
BPはJVの50%を譲渡し、現金171億ドルとRosneftの株式 12.84%
を取得する。
BPは同時に、ロシア政府からRosneft株式 5.66%を48億ドルで買収する。(BPはネットで123億ドルを受け取ることとなる。)
BPは既にRosneft株式 1.25%を保有しており、この取引で合計19.75%を保有することとなり、Rosneftの取締役会に2人の取締役を出す。
Rosneftにはロシア政府が75%出資し、残りは上場している。
付記 BPは2013年3月21日、本取引を完了した。
最終的にBPはRosneft株の18.5%と現金124.8億ドル(BPが2012/12に受領したTNK-BPの配当7.1億ドルを含む)を受領。
RosneftはBPのTNK-BP持株(50%)を取得(対価は現金166.5億ドルとRosneft株12.84%)
ロシア政府(OFSC ROSNEFTEGAZ)はRosneft株5.66%を48.7億ドルでBPに売却。
他方、Alfa-Access-RenovaはJVの50%を280億ドルでRosneftに譲渡する。
覚書を締結した段階で、詳細は今後詰める。
付記
BPとAARは11月23日、両社の間の全ての争いを解決することで合意したと発表した。
両社ともTNK-BPのRosneft への売却を進める。
TNK-BPは Rosneft とLukoilに次ぐロシア第三位の石油会社で、これの買収により、Rosneftは生産能力日量450万バレルとなって、ExxonMobil(420万バレル)を抜き世界最大の石油会社となる。
TNK-BPは西シベリア(Tyumen、Khanty-Mansiysk、Yamal-Nenetsk、Novosibirsk 地域)、ヴォルガ・ウラル(Orenburg、Saratov地域)、東シベリア(Irkutsk 地域)で活動しており、2011年の生産量は石油換算で日量199万バレルであった。
Rosneftの2011年の生産量は245万バレルで、開発済み確認埋蔵量は原油換算99.6億バレル、未開発確認埋蔵慮は83.9億バレルとなっている。
BPは、これはロシアの石油事業からの撤退ではなく、むしろそれを進めるものだとしている。
Rosneft株式は長期的に保有し、大株主として同社の今後の成長を支えるとしている。
後記の通り、BPは2011年1月 に、Rosneftとの間でグローバルな戦略的提携で合意した。
但し、これはAARの反対で白紙となった。
Rosneft のCEO は22日に本件をPutin大統領に報告、大統領は、これはロシアの石油産業にとってだけでなく、ロシア経済全体にとって重要な good big deal だと述べた。
付記 TNK-BPは以下の構成となっている。
RosneftはBP及びAARとTNK-BP International の株式購入の交渉をしている。
一般株主については、Rosneft は交渉する気はないとしており、見放された形になっている。
ーーー
TNK-BP の株主のAlfa Access Renova は下記の3社の連合。
Alfa Group ロシアの新興財閥で、ロシア最大の金融産業コングロマリットのひとつ。
Mikhail Fridman と German Khan が50%ずつ保有。Access Industries ロシア生まれの Len Blavatnik が設立し所有する米国の投資会社で、Basellを買収した。 Renova Holding ロシアの長者番付では第5位のViktor Feliksovich Vekselberg (SUALの大株主)のベンチャーキャピタル。
2003年、BPと Alfa Access Renova はロシアとウクライナにそれぞれが所有する石油資産を共同で所有する戦略的パートナーシップの設立を発表、50/50所有の TNK-BP が設立された。
Alfa Access Renova はTyumen Oil Co.(TNK)株の97%とSidanko株の56%を新会社に移管、
BPはSidanko株の25%、サハリン5の事業権益、モスクワのガソリンスタンドを新会社に移管した。
2004年1月、Alfa Access Renova の持つSlavneft の持分をJVに移管することが合意された。
これにより、TNK-BP はロシアとウクライナで上流部門から下流部門まで一貫操業を行ない、生産子会社15社、精製子会社5社(うちロシア国内は4社)、販売子会社11社を保有する。
埋蔵量及び生産量で、Rosneft とLukoil に次ぎ、ロシアで第三位となった。
しかし、CEOの任命権をBPが持ち、多くの経営幹部や技術者がBP出身であるなど、BP主導で運営してきた。
このため、ロシア側株主は、TNK-BPという会社がBPの利益ための会社であって、ロシアの為の会社でないという不満を持っていた。
そもそもロシア側には、双方の貢献面から、50/50が不公平との感があった。
BPは2008年9月、TNK-BPの経営問題でロシア側株主に譲歩し、和解した。
2008/9/9 BP、ロシアの石油JV 経営問題でロシア側に譲歩
BPとロシアのRosneftは2011年1月、グローバルな戦略的提携で合意した。
Rosneft はBPの株式5%を購入、見返りにBPはRosneftの株式 9.5%を購入する。
(BPがRosneftに発行する株式の価値は現在の株価で約78億ドルになる。)
両社はロシアの北極海大陸棚にある3つの鉱区を共同で開発する。
2011/1/17 BP、ロシアのRosneft と戦略的提携
しかし、TNK-BPの株主のAlfa Access Renovaを構成する4人の新興財閥が、BPとRosneftとの取引がTNK-BPを除外しているのは、BPとTNK-BPの株主契約に違反するとして反対し、ロンドンの高等法院に訴えた。
裁判所は調停での問題解決を命じた。
2011/8/31 BPとTNK-BPの争い、仲裁へ
調停委員会は2011年5月1日、下記の決定を下した。
・TNK-BPは Rosneft
の同意を前提に、北極海開発に参加する。
・これを条件に、BPとRosneftの株交換を認める。
これに対しRosneft はTNK-BPの北極大陸棚での事業参加には難色を示した。
このため、AARの持ち株をBPと Rosneftが買い取る交渉が進められたが、AARは拒否し、この結果、BPとRosneftの契約は5月16日に時間切れで白紙となった。
2011/5/18 BPとRosneft との提携、白紙に
この後、Rosneftは2011年8月30日にExxonMobilとの間で北極海と黒海の開発、技術協力、米国その他での共同事業の実施で合意した。
2011/9/1 Rosneft、石油開発でExxonMobil と提携
この直後には、TNK-BPのロシアの少数株主のAndrei Prokhorovが TNK-BPの役員でもあるBPの役員を、Rosneftの交渉を知っていたに違いないとし、この情報をTNK-BPに伝えなかったために、TNK-BPが北極海開発の機会を失い、約870億ルーブル(約2,970百万ドル)の損害を被ったとし、訴えるということもあった。
BPはこれらに嫌気を示し、JVからの離脱を検討した。
BPは2012年7月に、Rosneft との間でTNK-BP持分の売却の交渉を行うとし、TNK-BPの契約に基づき、7月19日にAlfa Access-Renovaとも売却交渉を開始したことを明らかにした。
AARはBPに対し、BP持株の半分(25%)を100億ドルで購入するという提案を行ったとされる。
しかし、BPにとっては25%を残しても意味がなく、また25%分で100億ドルは少くな過ぎ、成立しなかった。
AARは実際には、BPにTNK-BP の持株を買ってもらい、代わりにBPの株式を10%程度取得するのが狙いであったとされる。
しかし、BPはAARがトップ株主になるのを好まなかった。また、Rosneft側が金融機関に圧力をかけ、AARは買収資金を得られずギブアップしたともされる。
問題は、TNK-BPの株を買いたいという会社が少ないことで、西側の石油メジャーは関与するのを嫌った。中国の石油会社は政治的に問題であり、結局、買収資金を持つRosneftが残ることとなった。
2012/10/25 千代田化工、自社酢酸技術をPetrobrasに供与
千代田化工建設は10月23日、自社開発した酢酸技術がPetrobrasのGas-to-Chemical complexに採用されたと発表した。
年産20万トン規模で、2013年末までに初期設計を完了の予定。契約金額は非公開。
同社は、酢酸製造技術の実施許諾、技術支援、トレーニング等を行う。
千代田化工建設が開発した酢酸製造技術(ACETICA)プロセスは、メタノール・カルボニル法酢酸製造プロセスのひとつで、同社が自社開発した固体触媒を利用し、原料のメタノールと一酸化炭素を高収率で酢酸に転換する。
高性能な固定化触媒
メタノールのカルボニル化反応にはロジウム錯体が触媒としてよく使われるが、反応液に溶かすために、大量の水が必要で、大量の水は助触媒であるヨウ化メチルと反応して腐食性の高いヨウ化水素酸を生成し、プラントの腐食を引き起こす。
また、製品酢酸から水を分離するのに大量のエネルギーを消費する。これらの課題を解決する狙いで、千代田は高温に耐えられるビニルピリジン樹脂を開発し、ロジウム錯体を樹脂上に固定化することに成功した。
循環気泡塔型反応器
樹脂触媒を活用できる循環気泡型反応器を採用
ーーー
Petronasは2012 –
2016事業計画で、ガスとエネルギーに135億ドルを投じる計画をつくった。その42%が肥料関係である。
狙いは以下の通り。
ブラジルは海上油田開発で大量の副生ガスを生産するが、これを利用したい。
ブラジルはチッソ肥料の半分を輸入に頼っている。
→副生ガスで肥料を生産
この計画の一環として、Petrobras は既に年産303千トンの硫安工場をLaranjeiras工場に建設中で、2013年に完成する。
2014年にはUFN-III(unit of nitrogen fertilizer N°3:チッソ肥料第三工場)を Matto Grosso do Sul 州のTres Lagosでスタートさせる。
これは以下の構成となっている。
尿素 年産120万トン
アンモニア 80万トン
粒状尿素 4千トン
更に2012 – 2016事業計画には、UFN-Vとして Matto Grosso州のUberabaでアンモニアの生産を行う計画が含まれている。
今回千代田化工の酢酸技術が採用されたのは、Braskemがこの一環として、Esperito Santo州Linharesで行うUFN-IV(Unit of Nitrogen Fertilizer N°4)の一つ。
UFN-IVは総額30億ドルとされ、年産100万トンの肥料を製造するもので、以下の製品を含む。
尿素、アンモニア、メタノール、酢酸、ギ酸、メラミン。
UFN-IV全体の設計その他の業務はFoster Wheelerが受注している。
計画では全体のスタートは2016年となっている。
2012/10/26 米の発電会社、不採算を理由に原発を閉鎖
米国の発電会社のDominion は10月22日、ウイスコンシン州 Carltonにある556千kwのKewaunee 原発を2013年第2四半期に停止し、閉鎖すると発表した。
米原子力規制委員会が2011年2月に、2033年までの20年間の操業延長を承認したばかりであったが、電力販売価格の低下で採算に合わないと判断した。
停止後は電力供給先の2つの電力会社には、2013年12月の契約期限までは買電により供給を続ける。
米国には、Kewauneeを含め合計104基の原発があるが、閉鎖は1973年12月のコネティカット州のMillstone 1 原発以来となる。
エネルギー需要の伸び悩みと天然ガス価格低下により、中西部で古い石炭火力の廃止が続いているが、これが原発にまで及んできたとみられている。
Kewaunee原発は1974年の運転開始で、2005年7月に同社が購入した。Dominion は2011年4月に採算面から売却を決定、買い手を探していたが、買い手を探すことが出来なかった。
同社は「運転状況が良かっただけに苦渋の決断だった。純粋に経済性に基づく判断だ」とのコメントを発表した。
Kewaunee 発電所(下の地図参照)は556千kwという最大クラスの原発の半分の能力で、かつ同地には1基しかなく、通常2基でセットになっている他の原発と比較し、間接費が高いという問題がある。
同社では中西部でいくつかの原発を購入し、間接費を薄めようとしたが、うまくいかなかった。
また、同原発購入時に、売り手との間で電力の売買契約を結んだが、この契約が切れた。
中西部では電力供給は入札制となっており、シェールガスの普及で天然ガス発電のコストが下がっているため、 現在の市場価格である従来よりかなり安い価格で売るしかない状況となっている。
原発は運転開始後の経費は安いと言われてきた。だが、米国では、原発がコスト面での優位性を失いつつある。また、東京電力福島第一原発事故を受けてNRCが3月 に追加の安全対策を指示し、コスト増の要因になるとの見方もある。
New York Timesによれば、地域によっては売電平均価格は50$/Mwh以下となっているが、ある調査では原発全体の1/4の高コストグループのコストは2008-2010年で平均 51.42$となっており、現在は更に上がっているという。
業界団体のNuclear Energy Instituteでは、これはDominion特有の理由によるものであり、原発は依然として頼りとなる、コスト面で有利な電力であると述べ、閉鎖のショックを和らげようとしているが、New York Timesは、それでは何故、もっと有利な立場にある会社がこれを買いに来なかったのかと疑問を呈している。
General ElectricのCEOのJeff Immelt は、シェールガス革命で天然ガスが豊富に供給され、再生可能エネルギーの選択肢も増えたことから、原子力発電を正当化することは難しくなったとしている。
2012/7/31 原子力発電の正当化困難にーGE会長
米電力大手Exelonは8月28日、テキサス州Victoria
County Stationの原発申請を取り下げた。
同社は、シェールガスの増産で天然ガスが値下がりし、予想しうる将来にわたって競争力がなくなったと判断した。
2012/9/6 米電力大手Exelon、原子力発電所の申請を取り下げ
ーーー
Dominionはエネルギー会社で、主な事業は3つに分かれる。
1) Dominion Virginia Power:Virginia 州での電力供給
2) Dominion Energy:天然ガス輸送・販売
3) Dominion Generation:発電
・Utility Generation 上記 1) 用の発電 19,000MW
・Merchant Generation 売電用の発電 8,500MW
Utility Generationの発電所
原子力発電所 North Anna 2基 1,647MW Surry 2基 1,678MW 三菱重工業は2010年5月7日、DominionがNorth Anna発電所3号機向けに、三菱重工業の170万kW級加圧水型原子力発電プラントUS−APWRの採用を内定したと発表した。
Merchant Generation の発電所
原子力発電所 Kewaunee 556MW
Millstone 2 878MW Millstone 3 1,138MW
2012/10/27 Dow/神華集団、楡林市の石炭化学コンプレックスの環境評価書を提出
中国の環境保護部は10月19日、ダウと神華集団(Shenhua) の陜西省楡林市の石炭化学コンプレックスの環境評価書(17日受領)を公表した。
全文(中国語)は http://hps.mep.gov.cn/jsxm/xmsl/201210/W020121019511825884207.pdf でかなり詳細なもの。
ダウは2007年5月21日、中国の国有石炭最大手・神華集団との間で、陜西省楡林市にワールドスケールのCoal-to-Chemicals コンプレックスを建設するための詳細FS実施の契約を締結した。
2004年12月に神華集団との間でFS共同実施の契約を結んだ。
神華集団は1995年に設立された国有企業で、世界8大炭田の一つとされている神府東勝鉱区の開発・運営を担当しており、関連事業として鉄道、発電、貯炭設備、輸送設備を運営している。計画では "clean coal" technologies を使用し、石炭からメタノール、メタノールからエチレンとプロピレンを生産する。電解設備も建設し、苛性ソーダ、VCM、有機塩素等を生産する。
このほか、誘導品としてグリコール類、アミン、溶剤、界面活性剤、アクリル酸と誘導品、プロピレン誘導品などが計画されている。
ダウと神華集団は2009年11月3日、陜西省楡林市で大規模石炭化学JVの起工式を行った。
FSがほぼ終了し、中央政府の承認を求め申請する段階である。
JVにはダウ中国と神華集団子会社のChina Shenhua Coal to Liquids and
Chemicals Co. 及び地方政府が出資する。
2009/11/10 ダウと神華集団、陜西省で大規模石炭化学JVの起工式
本計画は2010年3月に国家エネルギー局から仮承認を受け、2012年9月に水資源部の黄河保護委員会から水資源承認を受けている。
中国政府の投資規則によると、正式な建設開始には環境保護局の環境承認を得たうえで、国家発展改革委員会(NDRC)の承認を得る必要がある。
コンプレックスの建設期間は2013年から2018年。
投資金額は、石炭部分が40億元(うち環境投資 4千万元)、化学品部分が1000億元(うち環境投資 50億元)となっている。
今回の環境評価書では、製品が若干変更となっている。
当初計画に入っていたクロルアルカリ(50万トン)とEDC、PVC(50万トン)が削除された。
今回 | 当初計画 | |||
石炭 | 1,300万トン | |||
化学品 (3ゾーン、 23製品) |
ハイドロカーボン(8製品) (石炭ガス化〜メタノール合成〜 オレフィンとアンモニアの生産) |
メタノール(Coal to Methanol) | 400万トン | 332万トン |
オレフィン(Methanol to Olefins) | 150万トン | 122万トン | ||
基礎プラスチック(5製品) | オキソアルコール | 127万トン (内訳非公表) |
||
EO/EG | 40万トン | |||
LDPE | ||||
PP | ||||
n-プロパノール | ||||
クロルアルカリ | 0 | 50万トン | ||
EDC | 0 | 51万トン | ||
PVC | 0 | 50万トン | ||
機能性プラスチック(10製品) | エタノールアミン/エチルアミン | 172万トン (内訳非公表) |
21万トン | |
粗アクリル酸 | ||||
精アクリル酸 | 15万トン | |||
ブチルアクリレート | 20万トン | |||
オクチルアクリレート | ||||
ポリエーテルポリオール | 34万トン | |||
プロピレンオキサイド(PO) | ||||
プロピレングリコール(PG) | ||||
過酸化水素(PO原料) | ||||
グリコールエーテル |
2012/10/29
中国国務院は10月24日、
合わせて、原子力発電に関する2つの計画、
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中国は福島第1原発の事故を深刻に受け止め、原発や関連施設の安全検査を実施し、この間はエネルギー政策における原発の位置づけを再検討するため、原発新設の審査などを見合わせていた。
また、沿海部で建設中の原発27カ所は、昨年3月に工事が中断され、安全性の点検作業が行われている。
(うち、浙江省泰山第2原発の4号機については、2012年に稼働したとされる。この結果、現在稼働中は15基、建設中は26基となっている。)
国務院の温家宝総理は5月31日に国務院常務会議を開催し、全国の民間利用の原子力設備の総合的安全検査の情況報告を改めて聴取するとともに、「原子力安全プラン」を審議し原則として可決した。
2012/6/29 中国政府、原発新設を再開
今回、検査の結果、中国の原発は安全だと確認できたとしている。
過去20年間の操業で、Level 2 以上の事故を起こしていない。
操業上の指標は世界平均以上で、いくつかは世界トップレベルである。
中国は、発電所の計画、立地選択、設計、建設、操業の全プロセスで「安全第一」の原則を採っている。
安全管理監督と放射能環境管理を強化している。
今後も技術開発に投資、最新の技術を採用、機器を改良、教育に注力する。2015年までに原発能力を40百万kwに増やす。
今回の決定を受け、建設中の原発26基は工事が再開される見通し。
付記
2012年11月に福建省の福清原発と広東省の陽江原発の2基の建設工事が始まった。
12月には江蘇省の田湾原発で3、4号機を建設するプロジェクトが認可され、建設が始まった。
但し、計画中の原発については、建設認可基準を厳格化し、「建設ペースを合理的に調節し、段階的に推進していく」としている。
原発の新設は第3世代の安全基準を満たす場合のみ建設を認める
また、
安徽省、湖北省、江西省、湖南省、浙江省、広東省などに内陸部の計画がある。
「エネルギー発展第12次5カ年計画」(2011−15年) の内容は以下の通り。
全文(英語):
中国はエネルギー問題に対応するため、今後、太陽光発電、風力発電、地熱発電、バイオマスなどの再生可能エネルギー、クリーンエネルギーの利用を促進していく方針を示している。
具体的目標としては、第12次5カ年計画(2011―2015年)の終了する2015年までに、エネルギー消費に非化石エネルギー消費の占める割合を、11.4%にまで引き上げる
。
現状(2011) | 2015 | |
水力 | 230百万kw 世界一 | 290百万kw |
原子力 | 稼働中 15基 12.54百万kw 建設中 26基 29.24百万kw 全エネルギーの1.8% (世界平均は14%) |
40百万kw |
風力 | 47百万kw 世界一 | 100百万kw |
太陽光 | 3百万kw 温水暖房 2億平方マイル |
21百万kw 4億平方マイル |
その他 | バイオガス、地熱、潮力その他 | 同左 |
非化石合計 | 全エネルギーの8% | 11.4% |
GDP当たりのエネルギー消費を2010年比で16%減らす。
GDP当たりのCO2排出を2010年比で17%減らす。
中国政府はこれまで、2020年までに非化石燃料の割合を15%とし、GDP当たりのCO2排出を2005年比で40-45%減らすとの公約をしている。
この達成のため、引き続き努力するとしている。
現在稼働中と建設中の原発は以下の通り。
稼働中 15基
|
建設中 26基
千KW |
||
広東省 | 陽江 | 1,080x4 |
浙江省 | 三門 | 1,250x2 |
海南省 | 昌江 | 650x2 |
広西省 | 防城港 | 1,080x2 |
浙江省 | 方家山 | 1,080x2 |
福建省 | 福清 | 1,080x2 |
山東省 | 海陽 | 1,250x2 |
遼寧省 | 紅沿河 | 1,080x4 |
福建省 | 寧徳 | 1,080x4 |
広東省 | 台山 | 1,770x2 |
2012/10/30 寧波で大規模デモ受け、SinopecのPX増設取り止め
浙江省の寧波市政府は10月28日、Sinopecが計画していたパラキシレン工場の拡張を中止することを決めた。
パラキシレンによる健康被害を懸念する地元住民による抗議デモが、10月28日まで7日連続で発生したことを受けた措置。
Sinopecの石油精製・石油化学コンプレックスの拡張計画は中断し、再検討する。
計画のうち、パラキシレン増設については計画を取り止める。なお、既存のパラキシレンについては触れられていない。
共産党大会が11月8日に開幕するが、国の公安当局は地方政府に対し、指導者交代を前に騒乱を避けるためあらゆる手段を講じるよう要請しており、市政府は社会の安定を優先した。
しかし、デモ隊は市長の辞職も要求するなど当局への不信感を募らせており、緊迫した状態が続いている。
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Sinopec子会社の鎮海煉油化工は2009年12月に浙江省寧波市の鎮海地区にエチレンコンプレックスを完成させた。
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既存 千トン |
第一期 千トン |
技術 | |
Refinery |
23,000 |
||
エチレン | 1,000 | ||
LLDPE | 450 | Unipol | |
PP | 200 | 300 | Sinopec |
EO/MEG | 650 | Dow | |
BTX | 1,000 | 600 | |
PX | 500 | Axens (IFP group) | |
エチルベンゼン | 650 | ||
MTBE | 110 | ||
Butene-1 | 40 | ||
Butadiene | 160 | ||
SM(JV) | 620 |
Lyondell SM/PO併産 |
|
PO (JV) | 285 | ||
PG (JV) | 100 | Lyondell | |
尿素 | 600 |
ZRCCとLyondell は2007年4月に50/50製造JVのNingbo ZRCC Lyondell Chemical Company を設立した。
2010/3/4 シノペック鎮海煉油化工、新エチレンセンターのポリプロ工場を先行稼動
今回、Sinopecは増設計画を実施しようとした。
投資額は557億人民元(89億米ドル)で、Refinery 1500万トン、エチレン 120万トンのほか、能力は明らかにされていないが、PE、PPのほか、パラキシレンを含んでいる。
10月初旬から、健康被害が出るとして住民が計画撤回を求め始めた。
市政府は、工場に近い住民の移転を約束したり、環境保護対策を発表したが、住民は受け入れを拒否していた。
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中国ではこれまでもパラキシレンに対する反対運動が相次いでいる。
最初は下記の厦門でのデモで、この事件からパラキシレンは恐ろしい化学物質との情報が浸透したと思われる。
2006年に台湾資本のDragon Group(騰龍グループ)が福建省厦門の海滄投資区で芳香族とPTAプラントの建設に着工した。
しかし、2007年にインターネットで「(パラキシレン工場で)事故が起こると何千トンもの毒物が放出される」との情報がインターネットで流れ、大規模のデモが発生した。“I Love Xiamen, No PX “. といったビラが厦門市中にばらまかれた。
この結果、計画は中断され、2007年12月にこれを福建省Zhangzhou市の古雷半島に移転させることが決定、2009年5月になって、古雷半島で2年遅れで建設が始まった。
2007/6/11 中国のインターネット反対運動が石化計画を止める
2011年8月に遼寧省大連市で8月14日、化学工場の撤去を求める市民およそ1万2,000人が市政府庁舎前に集まり、抗議を始めた。
撤去を求めているのは、大連の市街地から北東約20kmの大孤山石化産業園区の沿岸部にある大連福佳・大化石油化工有限公司の工場で、パラキシレンを生産している。
台風が接近した際、工場から約50mの距離にある防波堤が決壊したが、防波堤のすぐ近くに保管されていたパラキシレンが漏れ出す恐れが強まり、付近住民らが避難する騒ぎとなった。
市政府は当初、工場の移転を一つのオプションとして検討するとし、同時に有毒物質を出来るだけ早く取り除くとしていたが、夕方になり工場の即時操業停止と早期移転を決定し、抗議活動は収束した。
2011/8/15 中国・大連で化学工場の撤去求め デモ
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中国では住民の権利意識が高まり、環境面から工場建設に反対する動きが高まっている。
本年7月2日、四川省什邡市で化学工場建設に反対する住民2万人による抗議デモが発生した。
亜鉛精錬大手の四川宏達グループが6月29日、金属モリブデンなどの精錬工場の建設を始めたのが発端。7月1日の夜、建設に反対する住民約1万人が抗議デモを起こし、翌日には2万人に膨れ上がった。
工場が完成すれば、年間 モリブデン4万トン、銅40万トン、硫酸180万トンを精錬する見通しだった。
モリブデンや銅などの精錬は汚染リスクが高く、住民らは「死神が近づいている」と不安を募らせた。
当局が工場建設の中止を発表したため、騒ぎは沈静化した。
7月末には江蘇省南通市にある王子製紙の工場から出る排水が、環境汚染を引き起こす恐れがあるとして、住民1万人以上が抗議デモを始めた。
問題の工場は江蘇王子製紙(王子製紙 90%、南通市経済技術開発区総公司 10%)の南通工場で、南通市の経済技術開発区にあるが、南通市政府は廃水を南通市が建設する約100kmのパイプラインで黄海に排出することとしていた。
住民の反対を受け、市政府は「パイプラインの建設計画を永遠に取り消す」と発表した。
2012/8/1 王子製紙の排水に抗議、中国江蘇省でデモ
2012/10/31 Dow Chemical、合理化策発表、愛知県のエポキシ工場閉鎖、リチウムイオン電池JVも評価減
Dow Chemical は10月23日、第3四半期の決算を発表するとともに、マクロ経済成長の低迷が続くなかで、コスト削減措置を加速させ、同社の変身を次の段階へ進めるための合理化計画を発表した。
1ー9月の実績は以下の通りで、売上高は欧州の減が大きい。(単位:百万ドル)
損益面では、農業科学を除き、全部門が前年比マイナスとなっている。
Sales | EBITDA | ||||||
2011/1-9 | 2012/1-9 | 増 減 | 2011/1-9 | 2012/1-9 | 増 減 | ||
Electronic & Functional Materials | 3,536 | 3,383 | -153 | 850 | 803 | -47 | |
Coating & Infrastructure Solutions | 5,639 | 5,321 | -318 | 990 | 787 | -203 | |
Agricultural Science | 4,311 | 4,816 | 505 | 768 | 821 | 53 | |
Performance Materials | 11,097 | 10,253 | -844 | 1,523 | 1,173 | -350 | |
Performance Plastics | 12,598 | 10,802 | -1,796 | 2,773 | 2,215 | -558 | |
Feedstocks & Energy | 8,456 | 8,113 | -343 | 765 | 532 | -233 | |
Corporate | 251 | 181 | -70 | -1,296 | -865 | 431 | |
Total | 45,888 | 42,869 | -3,019 | 6,373 | 5,466 | -907 | |
Net Income | 2,422 | 1,588 | -834 |
Dowは本年4月2日に欧州経済の不振に対応するため、合理化策を発表した。
欧州、北米、ラテンアメリカでいくつかの工場を閉鎖するとともに、設備投資の削減、900人の人員減を行うもので、年間250百万ドルの効果を狙い、特別損失として350百万ドルを見込んだ。
ポルトガル、ハンガリー、イリノイ州のSTYROFOAM断熱材製造工場を閉鎖、オランダの同工場を休止
ブラジルのTDI工場を閉鎖
ポリウレタン、エポキシ事業のいくつかの工場の統合
今回は更に合理化を進めるもので、主な内容は以下の通り。
人員削減 ネットで約2400人(全世界の従業員の5%)
約20の工場の閉鎖
以上によるコスト削減は年間500百万ドル(2014年末時点)これに対応し、第4四半期に1株当たり50-60セントの特別損失を計上する。
(資産除却、評価減、退職金、その他)更に、環境変化により最早優先度を持たない事業について、投資及び設備投資の削減(約500百万ドル)を実施する。
Andrew N. Liveris CEOは以下の通り述べている。
現実として、当社は短期的には低成長の環境下で事業を行っており、これらの措置は困難であるが、とりわけヨーロッパにおいて事業運営をしっかりと行い、現在の市場における変化の影響を緩和しようとする当社の決意を表している。
当社は今年初め、コストを削減し当社の利益の成長軌道を確保するために当社が実行を計画している、特定の措置を発表した。本日当社が発表する措置は、効率性を向上させ当社の成長プログラムの優先順位を決定するための次の段階を表している。
しかし、Liveris CEOは、同社の将来にとり重要のプロジェクトについては継続することを強調した。
重要なのは、例えば、Dow AgroSciences、Dow Electronic Materials ならびにSaudi Aramcoとの石化JVのSadara 計画やシェールガスを利用するU.S. Gulf Coastでの投資など、この環境下においても差別化を行うだけの価値があり、利益拡大の機会が明確であれば、当社はプロジェクトに対する資金の供給を継続していくということである。
全体としてみると、ダウの戦略は依然として損なわれておらず、当社の長期的な成長のためのファンダメンタルズは力強い。
今回閉鎖する工場は以下の通り。
ベルギーTessenderloのHDPE工場
オランダ Delfzijl の水素化ホウ素ナトリウム工場
ミシガン州Midlandのディーゼル微粒子除去フィルター工場
スペイン、英国、オハイオ州のFormulated Systems 製造工場
愛知県衣浦のエポキシ工場
これに加え、
リチウムイオン電池に対する世界的な需要の減少を反映して、Dow Kokam LLCの資産の評価減
含酸素溶剤事業の一定の資産を統合
多くのその他の小規模な製造施設を閉鎖
付記 Dowは2013年11月20日、Dow Kokamの持ち株をTownsend Ventures子会社のMBP Investors, LLC に譲渡したと発表した。
他方、同社は10月24日にGulf Coast(立地選考中)でワールドスケールの最新鋭のメタロセンEPDMを建設すると発表した。2016年の稼働を目指す。Gulf Coastでのエチレン、プロピレン増設に対応するもの。
ーーー
ダウケミカル日本の愛知県半田市の衣浦工場は1984年に生産を開始した。
現在の能力はエポキシ液状樹脂が22千トン、固形樹脂が20千トンとなっている。
ーーー
Dow Kokamはリチウム電池の製造のためのJV。
JVは2009年に、投資会社Townsend Venturesの子会社の TK
Advanced BatteryとDowのJVとして設立され、Townsendが出資する韓国のリチウム電池メーカーのKokam Co の技術を導入した。
その後2010年1月に、フランスのGroupe Industrial Marcel Dassaultが参加し、電池パック子会社のSociete de
Vehicules ElectriquesをJVに加えた。
株主
The Dow Chemical Company
Townsend Ventures, LLC.
TK Advanced Battery, LLC.(Townsend Venturesの子会社)
Groupe Industrial Marcel Dassault S.A.
現在、ミシガン州Midland、ミズーリ州Lee's Summit と フランスのLe Bouchet に工場を持つ。
2009年2月にObama 大統領は7,970億ドルの景気対策法案(Stimulus Plan)にサインしたが、この中には、電池製造支援として、米国での先進的な電池や自動車用電池メーカーへの補助金として20億ドルが含まれている。
2009年5月、Dow Kokamは161百万ドルの補助金を受けた。
2009/5/27 ダウ、ミシガン州にリチウム電池工場
付記
Dowは2013年11月20日、Dow Kokamの持ち株をTownsend Ventures子会社のMBP Investors, LLC に譲渡したと発表した。
最新分は http://blog.knak.jp