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これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。

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2012/9/1 火星探査機の着陸用パラシュートに帝人のアラミド繊維

帝人は8月28日、NASAの無人火星探査機 Curiosityと超音速パラシュートとをつなぐサスペンション・コード(吊り下げ用のコード)の素材として、帝人テクノプロダクツのパラ系アラミド繊維「テクノーラ」が採用されたと発表した。

宇宙船 Mars Science Laboratoryは8月5日、火星の大気圏に接近するにつれて火星の重力に引かれて加速、時速2万1240キロで大気圏に突入した後は、超音速パラシュートによって減速し、降下部分(Decent stage)がロケットエンジンを点火してさらに減速。上空約10mの地点で滞空し、クレーンを使って1トンのCuriosityを火星のGale Craterに吊り降ろした。

2012/8/6 火星探査車Curiosity、着陸に成功

この超音速パラシュートは、「テクノーラ」製のサスペンション・コードを80本装着しており、コードも含めると総重量約60kg、直径約15m、全長は16階建てのビルに匹敵し、これまでに製造されたパラシュートの中で最大のサイズ、最高の強度を誇る。

NASAの計算によると、火星着陸時にこのパラシュートが受けた重力は9Gで、これは80本の「テクノーラ」製サスペンション・コードが、27トンの重量に耐えたということになる。

同コードは、実際に72.5トンの重量に耐え得る強度を備えており、さらに寸法安定性、耐熱性などの「テクノーラ」の優れた特性がNASAに高く評価され、採用された。

ーーー

帝人は「テクノーラ」を独自に開発し、1987年に生産を開始した。

「高強力」、「耐疲労性」、「寸法安定性」、「耐熱性」、「耐薬品性」の特徴を有しており、産業用のロープやケーブル、光ファイバーケーブル、ゴムベルトやホース、コンクリートなど、幅広い製品の補強材として使用されている。

アラミド繊維はDuPont(日本では東レ・デュポン)と帝人が世界の市場を二分している。
(帝人とDuPontはアラミドペーパーで折半出資の合弁会社 デュポン帝人アドバンスドペーパーを設立している。)

韓国のKolonは1979年にアラミドの基礎研究を開始、1994年に完成させ、2005年末から商業生産を開始したが、DuPontに敗訴している。

   
2011/9/21 DuPont、アラミド繊維の技術盗用裁判で韓国のKolonに勝訴

 

3社の状況は以下の通り。

  パラ系アラミド メタ系アラミド 2009年生産量
(新聞情報)
poly-p-phenylene-
terephthalamide
左に
ジアミノフェニレン-
テラフタルアミドを共重合
poly-m-phenylene-
isophthalamide
DuPont Kevlar®   Nomex® 28,000 t 
帝人    Twaron®
(オランダで生産)
テクノーラ®
 
コーネックス®
 
25,000 t 
Kolon Heracron®     5,000 t

Twaronについて:

Courtauldsの繊維部門Enkaが開発した。
DuPontとの特許紛争があったが、1988年に和解している。 

1998年にAkzoNobel がCourtauldsを買収、EnkaとCourtauldsの繊維、化学部門を統合して
Acordis設立した。
その後、1999年にCVC CapitalがAcordisを買収した。)

日本では1987年に住友化学とEnkaが日本アラミドを設立した。
2001年に帝人がAcordisのアラミド事業(日本アラミドも)を買収した。


2012/9/3 米地裁、DuPontのアラミド繊維技術盗用で韓国Kolonに20年間の製造販売停止命令 

バージニア州 Richmondの米連邦地裁は8月30日、韓国のKolon Industriesに対し、今後20年間、アラミド繊維を製造販売することを禁じる命令を出した。

付記

米連邦検察は10月18日、デュポンの営業秘密の転用(1件)、営業秘密の窃盗(4件)、調査妨害(1件)の罪で Kolon と同社の社員や元社員5人を起訴した。

Kolon は、30年以上にわたり独自技術の開発に努めてきた会社の名誉を傷つけ、世界市場で公正に競争する権利を奪うことだと批判し、「厳しく対応していく」との方針を明らかにした。
 

ーーー

DuPontとKolonは長期間争っている。

DuPont2007年に、同社を2006年初めに退職し、その後Kolonのために Aramid Fiber Systems LLCを設立した技術者の行動に疑念を持ち、FBIと商務省に懸念を伝え、共同で調査を続けた。

問題の技術者は秘密情報を自宅のパソコンに入れており、これをKolonに渡したとされる。
技術者は
200912月に罪を認め、2010年3月に懲役18ヶ月の判決を受けた。

DuPont20092月にKolonを商業秘密盗用で訴えた。

これに対し、KolonDuPont技術の盗用を否定、自社技術で生産していると反論していた。

Kolon 2010年7月、DuPontが米国の需要家にKolonのアラミドを購入しないよう、圧力をかけているとして、連邦裁判所に訴えた。

2010/8/7 韓国Kolon、アラミドの独禁法問題でDuPontを訴え

バージニア州Richmondの連邦裁判所の陪審は2011年9月、Kolonに対し、DuPontのアラミド繊維(Kevlar)に関する商業秘密と秘密資料を盗んだとして、919.9百万ドルの損害額を認定した。
米地裁は11月22日、懲罰賠償として35万ドル、合計920.3百万ドルの支払いを命じた。

2011/9/21  DuPont、アラミド繊維の技術盗用裁判で韓国のKolonに勝訴 

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今回の判決で裁判官は、Kolonに対し、20年の間、世界中であらゆるパラアラミド製品の製造、使用、マーケティング、販売促進、販売、流通、販売提案、勧誘を禁じた。
同時にDuPontから盗んだ秘密情報の利用を永遠に禁止した。
また、10月1日までに秘密情報をDuPontに返還することを命じた。

裁判官は、Kolonの役員がKevlarの秘密情報を意図的かつ不当に利用し、違法行為を行ったと陪審員が結論付けたとし、盗んだDuPontの秘密情報はKolonのHeracronの製造に肝要で不可欠のものであるとみなした。

更に、Kolonが今後もDuPontの秘密情報を使い続け、DuPontが損害を受けるとすれば、さきの920百万ドルの損害賠償だけでは充分な解決にはならないと述べた。

Kolonは、「アラミド技術を開発するため、過去30年間注いできた努力を水の泡にする結果であり、わが社の従業員の働き場を奪う横暴な判決だ」と、遺憾の意を表明、直ちに控訴手続きに入るとし、その間、この命令を停止するよう求めた。

Kolonは自社のアラミド繊維Heracronは、DuPontのKevlarと製品特性は似ているが、生産工程などは完全に異なる製品だと主張している。

同社は1979年に韓国科学技術研究院の故・尹漢殖博士のアラミド繊維国産化研究を支援し、本事業に進出した。

「DuPontの元社員とコンサルティング契約を結んだのは事実だが、DuPontの営業秘密を侵害した事実は全くない」としている。

米裁判所は全世界での生産・販売を禁止するとの判決を下した。
各国が必ずしもそれに従わなければならないわけではないが、Kolonは控訴審での攻防を念頭に、亀尾工場(年産能力5,000トン)の操業中断に踏み切った。

Kolonの昨年の売上高は約2,810億円で、うちアラミド繊維の売上高は約620億円。
過去 5年間に米国で販売したアラミド繊維は約23億円とされる。

付記

米バージニア州の連邦地裁は9月4日、Kolonに対しDuPontの営業秘密に関する全ての書類を10月1日までにDuPontに渡すほか、コンピューターに関連ファイルが残っている場合は全て削除するよう命令した。

裁判所の許可を受けDuPontが雇用した専門家がKolonのコンピューターとコンピューターネットワークに接続し、営業秘密の関連資料が完全に削除されているか確認するよう指示した。

さらに、DuPontの営業秘密を知る社員や営業秘密が保管されている場所、営業秘密について言及した全ての事案を特定し、DuPontに知らせる義務も課した。

これに対し「企業のコンピューターへのアクセスを許可することは、もう一つの営業秘密の侵害ではないか」との批判が出ている。

ーーー

アラミド繊維については9月1日の記事参照。


2012/9/4 古河スカイと住友軽金属、経営統合で合意 

アルミニウム圧延品最大手の古河スカイと2位の住友軽金属工業は8月29日、2013年10月1日付で経営統合することで合意したと発表した。

合併比率は古河スカイ1に対し住軽金0.346で、古河スカイが存続会社になる。新会社の社名は未定。

アルミニウム圧延事業を取り巻く環境は急速に変化しており、厳しい状況にある。

国内アルミニウム圧延品需要の減少
  ・ 人口減少・高齢化等
  ・ 需要家の海外への製造拠点移転
東アジア地域における競争激化
  ・ 海外アルミニウム圧延メジャーの攻勢
  ・ 中国、韓国等東アジア地域における新興アルミニウム圧延メーカーの台頭

両社は経営統合により、相乗効果を追求し、アルミニウム圧延市場における競争力と企業体質の強化を図る。

統合の目標は以下の通り。

@新規成長分野・成長市場への積極的なグローバル展開

A企業価値の向上:研究開発・設備投資等への積極的投資、グローバルな供給体制の構築

B経営統合効果

ーーー

住友軽金属は1959年に、住友金属工業の伸銅、アルミ圧延部門が分離して設立された。

現在、住友金属工業が9.32%、住友商事が5.44% 出資している。
(住友金属工業は古河スカイに出資する新日本製鐵と10月1日に統合し、新日鉄住金となる。)

古河スカイは2003年10月1日に、スカイアルミニウムと古河電気工業の軽金属部門の事業統合で設立された。

スカイアルミニウムは1964年に、昭和電工(S)、カイザーアルミナム(K)、八幡製鐵(Y)の3社(SKYの社名の由来)により設立されたアルミニウム板圧延会社。

その後、1973年にカイザーが離脱した。

1998年に古河電工とスカイアルミニウムはアルミニウム事業についての業務提携を開始し、2000年4月にはユニファスアルミニウムを設立して販売部門を統合、全体の事業統合に向けて着実に進め、2003年10月に統合した。

スカイアルミニウム
昭和電工   37.25%
新日本製鐵   36.25%
丸紅   12.75%
三井物産   12.75%
富士銀行   1.00%
 

 

古河電気工業
軽金属部門

 

 

 

 

 

古河スカイ (合併時)
古河電気工業   70.0%
昭和電工   11.2%
新日本製鐵   10.9%
丸紅   3.8%
三井物産   3.8%
みずほコーポレート銀   0.3%
 
古河スカイ (現状)
古河電気工業   53.00%
昭和電工    ー
新日本製鐵   8.23%
丸紅   1.00%
三井物産   1.00%
みずほコーポレート銀     ー

なお、昭和電工は別に50.1%出資の昭和アルミニウムを持っていた。

ユニファスアルミニウム設立による販売部門の統合についての合併審査に当たり、公取委は押出類のシェアに関し、これを問題にした。
平成11年度:事例7

古河電工は押出類を製造販売しているが、スカイアルミは製造販売していないことから、当事会社が設立する新会社についてみれば、シェアは増加しないものの、
昭和アルミニウムの販売分を加算した場合、
押出類中、棒における販売数量シェアは40%弱でその順位が第1位となり、上位3社での市場占拠率は80%強となること、
また、管についても合算シェアは30%強となり、その順位が第1位となることから、
新会社と昭和アルミとの間で協調的な関係が生じた場合、競争への影響が懸念される。

これに対し、「新会社と昭和アルミニウムとの間の販売活動の独自性を保持するための具体的措置を講じる」旨の申出があったこと等から、公取委は、押出類の販売分野において、競争を実質的に制限することとはならないと判断した。   

昭和電工は2001年7月1日に昭和アルミニウムを吸収合併し、古河スカイ設立時にはスカイアルミ株主として参加したが、その後、古河スカイ株を売却した。

なお、2009年1月に、「古河電気工業と昭和電工がアルミ事業統合で最終調整しており、同年夏にも両社のアルミ事業を古河スカイに集約する」と観測報道されたことがある。

ーーー

住友軽金属は2011年44日、古河スカイ、住友商事、伊藤忠商事、伊藤忠メタルズとともに、BPからアルミ板圧延品メーカーのARCO Aluminumの全株式を譲り受けることに合意したと発表した。
両社の合併で、新会社は共同持ち株会社の75%を占めることとなる。

2011/4/11 住友軽金属など、BPから米のアルミ板圧延メーカーの株式取得 

ーーー

統合により、新会社の能力は以下の通りとなる。

・古河スカイと住友軽金属の能力は単体ベース
・TAAは上記のARCO(現 Tri-Arrow Aluminum)
・タイ新工場は古河スカイが昨年発表した100%出資のアルミ板圧延工場(能力は1期及び2期分)
・乳源は中国の乳源東陽光精箔、BALは英国のBridgnorth Aluminum。いずれも古河スカイ持分法適用会社で
 能力は持分比率割合。

Novelis   2005年にAlcanからスピンオフ。上記Logan Millのパートナー。
Chinalco   Aluminum Corp. of China
Constellium   Parisに本社を置く大手アルミ圧延会社

2012/9/5  DuPont、Performance Coatings事業をCarlyle Group に売却

DuPontは8月30日、Carlyle Group にPerformance Coatings事業を現金49億ドルで売却する契約を締結したと発表した。
Carlyleは、250百万ドルのDuPontの同部門の年金積立不足額も継承する。

付記

同社は12月11日、この売却代金の入金を前提に、2013年に10億ドルの自社株購入を行うと発表した。

付記

Carlyle GroupはこれをAxalta Coating Systems LLCと名付けた。

Performance Coatingsは自動車用及び産業用塗料(液体塗料、粉末塗料)を扱い、2012年の売上高は40億ドル以上で、従業員は11千名を超える。

DuPont CEOのEllen Kullman女史は 「この取引は、デュポンのビジョンである“世界で最もダイナミックなサイエンスカンパニー”に沿っており、また、高い成長率と高収益の事業、すなわち農業・栄養健康・高機能素材・バイオテクノロジー事業に注力するというデュポンの長期戦略にも沿うもの」とし、 「DuPontの変身は続いている」と述べた。

DuPontの部門別実績は以下の通りで、Performance Coatings事業の利益率は6.3%で、Nutrition & Health を除き、 最低である。
同社では全社の長期的な利益率を12%としている。

DuPont200110月に医薬部門をBristol-Myers Squibb 78億ドルで却している。
但し、条件として、抗高血圧薬のCozaarとHyzaarCozaarチアジド系利尿剤 との合剤) の権利は DuPont が維持し、Merckにライセンスした。
現在の「医薬部門」の利益はこの特許料である。

Performance Coatings事業の採算は2010年に経営陣を入れ替え、かなり改善したが、「同事業の将来的な成長はDuPontの外部、すなわちCarlyleへの売却により達成されるとの結論に至った。」(Ellen Kullman)

本事業の売却は昨年秋から噂されていた。
DuPontが売却先探しにCredit Suisseを採用したとの報道も行われた。

本年1月にはオークションを開始した。
Carlyle のほかに、Apollo Global Management と KKR
/Onex Corp.連合が争っていた。

Kullman CEOは、この売却後もDuPontは自動車産業に一層注力することを強調した。
引き続き、自動車業界の需要家と協力し、自動車軽量化、環境負荷を低減する冷媒製品、バイオベースの内装シート表皮材、次世代バイオ燃料など、科学を基礎としたイノベーションを提供するとしている。


2012/9/6 米電力大手Exelon、原子力発電所の申請を取り下げ 

米電力大手Exelonは8月28日、テキサス州Victoria County Stationの原発申請を取り下げた。
同社は、シェールガスの増産で天然ガスが値下がりし、予想しうる将来にわたって競争力がなくなったと判断した。

同社はさきに、建設を長期間遅らせことを決め、一括許認可(COL)の申請を取り下げていたが、今回、早期立地許可(ESP) の申請取り下げをNuclear Regulatory Commissionに通知した。

米国では原発建設に2種類の認可がある。
早期立地許可(Early site permit for land:ESP)
  炉型を想定し、サイトの立地適性を審査し、立地のみ単独で認可する。

一括許認可(Combined construction and operating license:COL)
  サイト毎に建設許可と運転許可を一括して審査し、認可する。

同社は米国内で合計10カ所(17基)の原発を運営する。

同社はテキサス州南部のビクトリア市近郊に原発2基を新設する方向で検討し、2008年にCOLの申請を行った。
しかし新設決定に至らず、2010年にCOL申請を取り下げ、ESPの申請を行った。これにより、20年間建設決定を延ばすことができる。

今回のESP申請取下げでこの計画は完全取り止めとなる。原子炉のメーカーは決まっていなかった。

ーーー

Exelonは、シェールガスの増産で天然ガスの値下がりし、予想しうる将来にわたって競争力がなくなったと判断したと述べているが、ガス価格が約10年ぶりの水準に下落、今後も低位安定すると見られている。


  詳細は  2012/2/21  三菱商事がカナダのシェールガス開発に参加

7月30日付の英 Financial Times は、“Nuclear 'hard to justify', says GE chief” のタイトルでGeneral ElectricのCEOのJeff Immeltのインタビュー記事を掲載した。

シェールガス革命で天然ガスが豊富に供給され、再生可能エネルギーの選択肢も増えたことから、原子力発電を正当化することは難しくなったという。

2012/7/31 原子力発電の正当化困難にーGE会長 

ーーー

なお、NRG Energyも2011年4月、福島第1原発事故の影響で「規制動向など先行きが不透明になった」として、東芝との合弁会社でテキサス州で進めていた原発2基の新設計画への投資を打ち切った。同計画の認可申請は取り下げられていないが、事実上計画は宙に浮いている。

NRGは2008年にNuclear Innovation North America(NINA)を設立。同年に東芝が300百万米ドル(12%) 出資し、サウステキサスプロジェクト原子力発電所に改良型沸騰水型原子炉 (ABWR)2基(3号機、4号機)を増設する計画を進めていた。

ーーー

米原子力規制委員会は2012年8月7日、最近の連邦控訴裁判所の判決で提起された使用済み核燃料の保管に関する規則を見直すまで、原子力発電所建設の認可手続きを停止すると発表した。

連邦高裁は2012年6月、運転をやめた原発の敷地内で60年間、使用済み燃料の保管が認められていることについて、NRCの安全性評価は不十分だとして再検討を命令。原発敷地内ではなく、最終処分場の候補地を検討するよう求めている。

ーーー

米国で計画中の原発は以下の通り。

NRCは本年2月9日、Southern Nuclear Operating Companyのジョージア州オーガスタの南東26マイルのVogtle power plantの2機の建設・運転一括許可を承認した。

東芝は3月31日、同社グループ会社のWestinghouseによる新型加圧水型原子炉「AP1000®」の建設運転一括許可(Combined License=COL)を米国原子力規制委員会(NRC) が承認したと発表した。

2012/4/4 米、2件目の原子力発電所新設を承認 

  申請 機種 立地 基数 既存
稼働
 状況
NRG Energy 2007/9/20 ABWR South Texas Project 2 TX 取り止め
NuStart Energy 2007/10/30 AP1000 Bellefonte 2 AL 保留
UNISTAR 2008/3/13 EPR Calvert Cliffs 1 MD 審査中
Dominion 2007/11/27 USAPWR North Anna 1 VA 審査中
Duke 2007/12/13 AP1000 William Lee
 Nuclear Station
2 SC 審査中
Progress Energy 2008/2/19 ESBWR Harris 2 NC 審査中
NuStart Energy 2008/2/27 ESBWR Grand Gulf 1 MS 保留
Southern Nuclear
Operating Co.
2008/3/31 AP1000 Vogtle 2 GA 2012/2 承認
South Carolina
Electric & Gas
2008/3/31 AP1000 Summer 2 SC 2012/3 承認
Progress Energy 2008/7/30 AP1000 Levy County 2 FL 審査中
Exelon Nuclear
Texas Holdings
2008/9/3 ESBWR Victoria County
 Station
2 TX 申請取下げ
Detroit Edison 2008/9/18 ESBWR Fermi 1 MI 審査中
Luminant Power 2008/9/19 USAPWR Comanche Peak 2 TX 審査中
Entergy 2008/9/25 ESBWR River Bend 1 LA 保留
AmerenUE 2008/7/24 EPR Callaway 1 MO 保留
UNISTAR 2008/9/29 EPR Nine Mile Point 1 NY 保留
PPL Generation 2008/10/10 EPR Bell Bend 1 PA 審査中
Florida Power
 & Light
2009/6/30 AP1000 Turkey Point 2 FL 審査中
AP1000  Westinghouse Electric(東芝)
EPR  Framatome (Areva), Electricité de France, Siemens
US-APWR  三菱重工業
ESBWR  General Electric   

ソース:http://pbadupws.nrc.gov/docs/ML1200/ML12004A009.pdf

 


2012/9/6 番外編 TV番組紹介  

山形大学大学院 有機デバイス工学 城戸淳二教授が「世界一受けたい授業」に出演!

当初 9月1日に放送が予定されていたが、放送日が変更になりました。

日本テレビ 9月8日(土)午後7時56分〜8時54分

http://junjikido.cocolog-nifty.com/blog/2012/07/post-7ff3.html

 


2012/9/7   三井化学、千葉地区における石化事業の構造改革

三井化学は9月5日、国内勝ち残りへ向けて、千葉地区で更なる石化事業の構造改革を実施することを決定したと発表した。

出光興産と共に運営している千葉ケミカル製造有限責任事業組合(LLP)で、低稼働領域で高効率となる改造を行い、2013年8月から稼動する。
合わせてLLPの2基のエチレン製造装置をより柔軟に最適運営出来る対策を進めている。

ーーー

三井化学と出光興産は2010年4月に、「千葉地区における生産最適化」の第1ステップとして両社のエチレンの運営統合を発表した。

中東及び中国を中心とした大型石化設備の新増設、北米におけるシェールガスの台頭などにより、日本の石化事業は抜本的な国際競争力の強化が必須の状況にあるとし、統合により、日本トップレベルの競争力をもつエチレンセンターの構築を目指した。

2010年4月1日付けで両社折半出資で「千葉ケミカル製造有限責任事業組合」(LLP)を設立、同年10月1日に出光の37万トン、三井の55万トン、合計92万トンのエチレン装置を譲渡し、LLPの運営を開始した。

2010/4/3  出光興産と三井化学、千葉のエチレン統合

今般、エチレン装置について、今後の誘導品流入による内需の低下及び輸出市況の低迷による低稼働を見込み、需要動向に柔軟に対応するために改造を行う。

生産能力は変わらないが、稼働率を70%まで落としても高効率な安定運転を維持できるという。

ーーー

合わせて、両社のポリオレフィンJVのプライムポリマーの姉崎工場(旧 出光)の高密度ポリエチレン製造設備1系列(13万トン)を2013年3月に停止することを発表した。

プライムポリマーではポリオレフィン事業で以下のような徹底的な合理化と汎用分野から高付加価値分野へのシフトを進めている。

1)宇部ポリプロ 停止、精算(2010/4/5 発表)

宇部市三井化学西沖工場内 9万トン 2011/3 停止、2012/3 精算

2)ポリプロピレン製造設備 1系列 停止(2012/6/20 発表)

市原工場(旧 三井) 9万トン 2013/6停止

プライムポリマー PP能力 (トン)
    処理前 処理後

徳山ポリプロ

徳山

200,000

 200,000

宇部ポリプロ

宇部

90,000 0

プライムポリマー

出光 千葉

400,000

400,000

三井 千葉

223,000

133,000

三井 大阪

448,000

448,000

合計

(1,071,000)

(981,000)
総合計 1,361,000 1,181,000

3)メタロセン触媒系HAO-LLDPE 「エボリュー」の増強 (2010/2/24発表)

日本エボリュー(出資比率:プライムポリマー 75%、住友化学 25%の生産JV)

三井化学且s原工場内 2011/11完工

  当初
 200千トン
増強
 240千トン
増強
 300千トン
プライムポリマー  150  190  250
住友化学   50   50   50

4)高密度ポリエチレン製造設備1系列 停止 (今回発表)

姉崎工場(旧 出光) 13万トン 2013/3 停止

 

プライムポリマー PE能力 (トン)
会社名 工場 LDPE LLDPE LL/HD併産 HDPE 合計 処理後
LL HD

日本エボリュー

千葉

240,000

240,000

  300,000
三井化学 岩国・大竹

3,000

3,000

3,000

プライムポリマー

出光興産千葉

60,000

130,000

190,000

60,000

三井化学千葉

85,000

11,000

87,000

116,000

299,000

 

小計

(145,000)

(11,000)

(87,000)

(246,000)

(489,000)

(359,000)
三井・デュポン
ポリケミカル

千葉

110,000

110,000

 

岩国・大竹

60,000

60,000

 

小計

(170,000)

(170,000)

(170,000)
総合計 170,000 385,000 11,000 87,000 249,000 902,000 832,000
* 日本エボリュー能力には住友化学枠(50千トン)を含む。

 

なお、三菱化学も本年6月29日、日本ポリエチレンと日本ポリプロが川崎市千鳥地区のHDPE及びPP工場(旧 東燃化学)各1系列を2014年4月に停止すると発表している。

  日本ポリエチレン 日本ポリプロ
停止プラント HDPE 第二系列(スラリー法) PP 第3系列(バルクー気相法)
元の所有者 東燃化学(昭電より譲受) 東燃化学
能力 52,000トン/年 89,000トン/年

2012/7/9 三菱化学、旧東燃化学川崎のPEとPPを停止へ

ーーー

三井化学と出光興産は千葉地区のエチレンを統合して千葉ケミカル製造有限責任事業組合(LLP)を設立したが、三菱化学と旭化成も水島地区のエチレンを統合し、西日本エチレン有限責任事業組合を設立している。

定修スキップ年能力は、旭化成は504千トン、三菱化学は494千トン。

西日本エチレン有限責任事業組合の最適化計画は以下の通りで、エチレン需要3割減を前提とした減産体制を取り、更にエチレン需要が縮小すれば、その時点でエチレンを1基に集約するとしている。

 (1) 両社ともエチレンセンター生産設備のダウンサイジング
     エチレン需要3割減を前提とした設備対応(2012年までに実施)
 (2) さらなるエチレン需要の縮小時にはエチレンセンターを1基に集約(需要動向にあわせて実施)

            以下略 

2011/3/1  三菱化学と旭化成、水島地区エチレンセンター統合のためのLLP設立 

東西のエチレン統合会社はいずれも、需要減に対応して統合しながら、工場を止めず、双方の工場の 70%操業を前提にした設備対応をとることになる。

最適合理化策は、どちらか1つのエチレンの停止であり、固定費削減により大きな効果が得られる。
仮にエチレンが若干不足すれば、他のエチレンセンターは減産しているため、どこからでも安く購入できる。

これが出来ないのは、雇用問題を中心とする日本の固有事情であるが、敢えてこれに踏み切らない限り、生き残りは難しい。


2012/9/8   韓国のシェールガスへの関心 

韓国知識経済部の趙石第2次官は8月29日に米ヒューストンの総領事館で開かれた記者会見で、北米で開発が進む新型天然ガス「シェールガス」について述べた。

 ・シェールガスの黄金時代が来るだろう。
 ・他国から多くのエネルギーを輸入する韓国にとって、シェールガス開発への参加はエネルギーの円滑な供給に向け非常に重要だ。

 ・全ての輸送費用を含めても従来のガスより30%安いと見込まれる。
 ・韓国ガス公社がこの水準の価格で2017年からガスを輸入する契約を結んだ。

韓国ガス公社は本年3月、ルイジアナ州のSabine Pass で天然ガスのLNG化設備を建設中のCheniereとの間で、2017年から20年間にわたってシェールガスを液化した液化天然ガスを年間350万トン輸入する契約を結んだ。
これは韓国の昨年の輸入量の10%以上に相当する。

FOB価格は、原料ガスコスト(Henry Hub 渡し市況 x 115%)+固定費(ガス化費用など)。

Cheniereは2010年9月に米国がFTAが発効している国に限定して輸出許可を受けたが、異議申し立てを行い、2011年5月に条件付きですべての貿易相手国への輸出が認められた。
この結果、当時はFTAが発効していなかった韓国の韓国ガス公社も認められた。

2012/2/24 米国からのLNG輸入問題 

韓国石油公社(KNOC) は2011 年3 月、独立系大手の石油・天然ガス会社Anadarko Petroleum とテキサス州の Eagle Ford Shale 鉱区の資本参加に15.5 億ドルで合意したと発表した。

KNOC はMaverick 盆地鉱区でのAnadarko の2011年の掘削費用100%とそれ以降2013年末までの90%(合計15.5億ドルまで)を支払い、その見返りに23.67%の権利を取得する。

同鉱区で生産可能なシェールガス量は1億5000万石油換算バレルに達すると見込まれる。

韓国政府は、韓国ガス公社などの公営企業と民間企業による共同体を作って、アメリカとカナダが進めるシェールガス田の開発に参入する方針を決めた。

大統領府青瓦台が7月20日に明らかにしたところによると、アメリカとカナダのシェールガス田の開発に、韓国も政府レベルで参入し、向こう数年間に数十兆ウォンを投じる。

まず、韓国ガス公社や韓国石油公社などの公企業及び民間企業によるコンソーシアムを組織し、米国とカナダのシェールガス田開発に参入するため、シェールガス鉱区買収の検討を進めており、近く具体化する。

韓国はエネルギーの海外依存度が97%に達し、原油やガスの海外鉱区開発・買収により確保した資源の比率を示す自主開発率は13.7%にすぎない。このため、エネルギーの安定的な確保は恒常的な課題になっている。

ーーー

米国はLNGを戦略物質とみなし、輸出を個別の許可制にしている。

唯一の例外は本土48州に輸送不可能だったアラスカのKenai LNGの輸出だった。

日本の各社が米国のシェールガス開発に相次いで参加しているが、日本への輸出には米国政府の個別承認が必要となる。

米国は輸出承認で米国とFTAを締結している国とそれ以外で差をつけており、FTAを結んでいない日本はガス輸入のハードルが高い。

中国との紛争を避けつつ、中国へのLNG輸出を避けるためには、FTA締結を条件にする案が出てくる。

野田首相は4月30日のオバマ米大統領との首脳会談で、LNGの対日輸出拡大などエネルギー面での協力を求めた。

オバマ大統領は首相の輸出要請に対し、「日本のエネルギー安全保障は米国にとっても重要」と理解を示す一方、「(対日輸出は)政策決定プロセスにある」として、明言は避けた。日本政府内には「少なくとも11月の大統領選までは、オバマ大統領が輸出認可に動く可能性は低い」との見方が強い。

これに対し、韓国の場合は米韓FTAが発効しているため、LNGの輸入許可の問題はない。

LNGの輸入問題で韓国に差を付けられる恐れがある。

 


2012/9/10 Lanxess、中国江蘇省に世界最大のEPDMプラント建設 

Lanxessは9月5日、江蘇省常州市のChangzhou Yangtze Riverside Industrial Parkに世界最大のEPDMプラントを建設すると発表した。
能力は年産16万トン、投資額は235百万ユーロで、2015年に生産開始の予定で、必要なすべての認可は取得済み。

この投資額は同社の中国への投資で最大のもの。

付記 2015年4月、生産を開始した。

原料のエチレンとプロピレンは、同地に建設中のMTO(メタノールからのオレフィン製造)プラントから供給を受ける。

付記

MTO計画はDMTO触媒のメーカーの正大能源材料(大連)有限公司 China Tai Energy Materials (Dalian)が行うもので、能力は年産33万トン(メタノール投入量 年100万トン)

同社はこの工場で最新のKeltan ACE技術を使用する。

Lanxessは2011年に DSM から310百万ユーロでDSM Elastomers部門を買収した。

DSM ElastomersはNova ChemicalsのSingle Site触媒技術の独占使用権を取得し、これをベースに効率的にEPDMを製造する触媒技術を開発、これをKeltan ACE と名付けた。
触媒廃棄物がなく、省エネで、Green technologyであるとしている。
また、油展EPDMや特殊高分子量EPDMなど、新しいグレードの生産も可能である。

2010/12/20 Lanxess、DSM Elastomersを買収

Lanxessは中国をグローバルな成長戦略の基盤とみており、香港・台湾・マカオを含めたGreater Chinaで2012年の売上高目標を10億ユーロ以上としている。同社の13部門の全てが、Greater Chinaの10か所で事業を行っている。

常州市では皮革用化学品の工場(能力5万トン)を建設中で、2013年上半期に生産を開始する。

ーーー

LANXESS はEPDMをドイツのMarl(6万トン)、米国のOrange(6万トン)で生産していたが、DSMからのオランダのGeleen(16万トン)、ブラジルのTriunfo(4万トン)を加え、合計能力は年産32万トンとなっている。

DSM1989年に出光とのJVの出光DSMを設立し、千葉でEPDM 年産4万トンの生産をしていたが、20049月末に千葉での生産を停止し、JVを解散した。
DSM
はまた2004年に、老朽化した米国ルイジアナ州Addisの工場を停止している。

LANXESSはGeleen の能力の半分を2013年にKeltan ACEに転換する。

付記

同社は2013年7月、転換を完了した。

12百万ユーロを投じ、それまでのZiegler-Natta触媒からACEに転換。
EPT-3プラントは能力95千トン(工場全体180千トンの半分以上)

LANXESSは昨年末以来、ブラジルのTriunfoで世界初のバイオベースのEPDM(ブランド:Keltan Eco)を生産している。

Braskemが砂糖キビから製造するバイオベースのエチレンをパイプラインで既存のEPDM工場に運ぶ。

Bayerから分離独立したLanxessEPDMをBayerから引き継いだBuna EPブランドで販売していたが、Buna EPのブランドを廃止し、2013年1月からブランドをKeltanに統一する。

2011/10/5 LANXESS、EPDM事業を強化

ーーー

Lanxessはまた、合成ゴムでのアジア進出を進めている。

同社は2010年5月にシンガポールのジュロン島で年産10万トンのブチルゴム工場の着工式を行った。
2013年第1四半期のスタートを目指している。

Lanxess20082月、シンガポールに年産10万トンのブチルゴム生産拠点を新設すると発表した。

当初は
2010年稼動の予定であったが、需要の減少を受け、二度にわたり、延期し、この期間を利用し、製造技術の更なる改良を行った。
その後
20105月に前倒しでの再開を決定し、20105月に着工式を行った。

Shellは、Jurong島に隣接するブコム島にある同社のコンプレックスのブタジエン抽出設備から、ブタジエン抽出後のラフィネートをパイプラインを通してLanxessに供給する。

また、本年9月11日には、この隣接地で年産14万トンの新しいネオジウム触媒ポリプタジエンゴム (Nd-PBR)の鍬入れ式を行う。

2011/6/6 Lanxess、シンガポールでポリブタジエンゴムを生産


2012/9/11   三井化学、岩国大竹工場の事故のその後 

4月22日午前2時15分ごろ、三井化学・岩国大竹工場のレゾルシンプラントで爆発事故が発生した。

2012/4/24 三井化学大竹工場で爆発事故

この事故で隣接するサイメン工場も延焼、損傷した。

事故発生で全工場が停止したが、安全を確認して順次稼働した。

現在の停止プラントは以下の通り。
  レゾルシン(損傷)
  サイメン (損傷)
  メタパラクレゾール (原料サイメンの損傷)
  ハイドロキノン

メタパラクレゾールとハイドロキノンは無傷だが、レゾルシノールの類似施設であるため、再開には地元自治体や消防の承認が必要。

付記  2012年12月25日発表

レゾルシン プラント再建について検討を重ねたが、再建を断念し、本年12月末をもって事業撤退
サイメン 2013年央を目標に、プラント復旧を目指す。
メタパラクレゾール 原料サイメンは市原工場で代替生産し、メタパラクレゾールプラントが稼働を再開(9月28日)
ハイドロキノン 当局に改善完了報告書を提出し、12月21日に承認を得た。
今後、プラント立ち上げの準備を行い、2013年1月を目途に稼動を再開する予定。

付記

三井化学は2013年1月21日、「ハイドロキノン」プラントが9カ月ぶりに稼働を再開したと発表した。

三井化学は2013年7月23日、「サイメン」プラントの稼働を開始したと発表した。
これで事業撤退したレゾルシンを除き、同工場の全プラントが事故発生から1年3カ月ぶりに全面再開したことになる。

ーーー

1) 事故報告

三井化学では4月24日に事故調査委員会を設置し、原因調査と対策検討を行った。

これに基づき、同社は事故報告書を8月16日に山口県等に提出し、8月20日に受理された。

三井化学は8月29日に事故報告書を発表した。
  
http://jp.mitsuichem.com/release/2012/pdf/120829.pdf

付記 同社は2013年1月23日、最終報告書を発表した。
    http://jp.mitsuichem.com/release/2013/pdf/130123_02.pdf

事故の起こったレゾルシンの製造プロセスは以下の通りで、事故は酸化工程で起こった。

事故の原因は以下の通りと推定された。

工場内蒸気系トラブルでレゾルシンプラントを緊急停止した。
インターロック作動で空気の供給が停止され、窒素が投入された。

循環水への切り替えのため、インターロックを解除したが、その結果、攪拌用の窒素が停止し、
液相流動が低下、液相上部の温度が上昇、温度・圧力が急上昇し、爆発した。

これで見ると、これまででも、もしバッチ酸化反応中に緊急停止処置を取れば、同じ事故が発生していたこととなる。

ーーー

レゾルシンの世界のメーカーは以下の通り。

 

能力

 
住友化学  30,000トン 千葉2万トン、大分1万トン(2010/4 新設)
INDSPEC Chemical 20,000トン 当初、Koppers
現在、Occidental Petroleum子会社
Petrolia, Pennsylvaniaに工場
三井化学 7,600トン 岩国大竹
その他 約2千トン インド、中国など
(ロシアメーカーは操業中止)
合計 約6万トン  

住友化学と三井化学はプロピレン、ベンゼンを原料とし、1,3-diisopropylbenzeneから製造している。
これに対し、INDSPECは旧法で1,3-benzenedisulfonic acid から製造する。

INDSPEC :
Koppersが最初にレゾルシンを企業化、Petrolia工場を1988年まで保有。
1988年初めに英国のBeazer East がKoppersを買収した際、Petrolia工場と近くの研究センターがMBOで独立、INDOSPECとなる。
1999年にOccidentalが買収し、子会社に。
(残る旧Koppers設備は1988年末にMBOで再度 Koppersに)

Hoechst  1992停止(1,3-benzenedisulfonic acid から製造)

その他ではインドのAtul が能力1500トンで、5000トンへの増設を希望している。
中国に小規模メーカーが数社あると言われる。
以前にはロシアの Orgsintez が生産していたが、2007年に停止した。

付記

浙江鴻盛化工Zhejiang Hongsheng Chemical が2万トンの設備を完成させていることが分かった。既に稼働している模様。

同社は染料等のメーカーの浙江龙盛集团Zhejiang Longsheng Groupが75%、香港の万津集団が25%を出資する合弁会社で、浙江省上虞市Shangyu)に自社技術で建設した。

2012/11/30 中国企業がレゾルシン製造 

ーーー

2) メタパラクレゾールの再開

メタパラクレゾールは、 半導体の製造工程に不可欠なレジスト材料の原料として用いられているほか、液晶パネルの製造工程向け、汎用向け(石けん、ビタミンE)と用途は幅広い。三井化学の半導体用途 の世界シェアは7〜8割を占める。

これまで在庫の取り崩しで需要に対応してきたが、10月にも在庫払底の可能性があった。

今回の事故でメタパラクレゾールの生産設備そのものは火災の直接の影響がなく無傷であったが、レゾルシノールの類似施設であるため、再開には地元自治体や消防の承認が必要となる。

三井化学では8月20日にメタパラクレゾール施設の改善計画書を県などに提出、これに基づき8月22日に立ち入り検査が行われた。

これに基づき、三井化学では改善工事を実施し、実質的な再稼働の承認を得た。9月下旬に生産を再開する。
(同じく類似施設のハイドロキノンについても同様の手続きが取られる予定で、現在、改善計画を策定中)

原料のサイメンについてはプラントが損壊しているため、市原工場でサイメンを生産し、岩国大竹工場に輸送する。

付記

三井化学は9月28日、メタパラクレゾールプラントが稼働を再開したと発表した。

岩国大竹工場のサイメンプラントは2013年央復旧を目指す。

メタパラクレゾールの生産プロセスは以下の通り。

プロピレン     トルエン     para-Cymen
(イソプロピルトルエン)
  メタパラクレゾール
(混合クレゾール)
  副産アセトン
C3H6  

→(酸化)→ 60%

 

40%

   
         

火災でプラント損壊
千葉で代替生産し
輸送

 

改善工事を実施 
実質的な再稼働の承認

 

日本ではメタパラクレゾールを住化メリゾール(10,000トン)と三井化学(30,000トン)が同じ製法で生産している。
(他の製法ではメタとパラの比率が異なる)

住化メリゾールは旧称が住化メリケムで、住友化学の大分工場のメタパラクレゾールプラントを住友化学と米国のクレゾールメーカーのMerichemとの50/50 JVとした。
その後、1997年にMerichem と南アのSasol がクレゾール部門を統合してMerisol を設立したため、住化メリケムも住化メリゾールに改称した。
製品は両社が別々に販売している。
(住友化学はメタクレゾールを原料に農薬のスミチオンを生産している。)

オルソクレゾールは旭化成と新日鉄化学のJVの日本クレノールが旭化成の川崎工場で、2,6キシレノールの併産で生産していた(12,000トン)が、旭化成のPPE事業のシンガポール 移転で、日本クレノールを解散した。
(日本クレノールは旭化成70%、新日鐵化学30%で、2,6キシレノールを旭化成が、オルソクレゾールを新日鐵化学が引き取っていた。)

シンガポール計画は以下の通り。
  
  新日鐵化学は旭化成にオルソクレゾール(12,000トン)の製造委託を行っている。

このほかに2社が、コールタール蒸留によりクレゾールを生産している。

シーケム:新日鐵化学とエア・ウォーターケミカル(旧称 住金エア・ウォーター)のタール事業を統合
JFEケミカル:川崎製鉄化学事業部とNKKの化学事業のアドケムコが合併

 


2012/9/12   中国アルミ、モンゴルの石炭大手の買収を断念 

中国国有大手のAluminum Corp. of China (Chalco) 中国アルミは9月3日、モンゴル石炭大手SouthGobi Resources の買収を断念すると発表した。

SouthGobi ResourcesはモンゴルのOvoot Tolgoi炭鉱を運営しており、そのSouthGobi Resources(カナダで上場)にはカナダのTurquoise Hill Resources が57.6%を出資している。

Turquoise Hill Resources は旧称 Ivanhoe Mines で、2012年8月2日付で改称した。

Rio Tintoが51%を出資する。

Rio Tinto は2009年106日、モンゴル政府との間でモンゴル南部のOyu Tolgoi 銅・金鉱山開発のための投資契約を締結した。

Rio2006年にIvanhoe9.9%を出資したが、モンゴル政府との投資契約締結後に19.7%とし、更に固定株価で43.1%まで、またその後は時価で最終46.65%まで増やす権利を持った。

その後、2012年1月に49%から51%に増やした。

なお、現地で開発を担当するIvanhoe Mines Mongoliaモンゴル政府が34%出資している。

2009/11/28 Rio Tinto、モンゴルの鉱山開発で中国アルミと提携か?

Chalco は本年4月、Ivanhoeに対しSouthGobi の60%を1株当たり C$8.48で買収する提案を行った。
Ivanhoeが持株全部を売れば、898百万米ドルとなる。

Chalco は主力のアルミ精錬が売価ダウンと燃料コストアップで赤字に転落したことから、多角化を図った。

しかし、モンゴル政府は本年5月、外国企業がモンゴルの主要戦略資産の49%以上を取得する場合、国会の承認を必要とするとの法律を通した。

この結果、近い将来に必要な認可を得られる可能性はなくなり、Chalcoは買収を諦めた。

モンゴルをはじめ世界各国では、中国が資源買い占めに走っていることへ警戒が高まっている。

日本経済新聞では、モンゴルは(中国・ロシアに次ぐ)「第三の隣国」と位置付ける日本や欧米との関係強化を進めると見るが、「日米欧企業の投資が増えないまま中国からの投資が減れば、モンゴルの経済成長に悪影響を及ぼす」との見方も紹介している。

ーーー

中国国有石炭大手の神華集団によるTavan Tolgoi 炭鉱の開発参画も、権益保有比率が当初素案の40%から低下する可能性がある。

モンゴル政府はタバントルゴイ石炭地を2ゾーンに分けた。
1ゾーンは国際会社が、2ゾーンはモンゴル国営エルデネスタバントルゴイ会社が掘削する。国営エルデネスタバントルゴイ会社の株式のうち50%を政府、残りの50%を投資家やモンゴル国民が保有する。

2011年7月、国際会社の入札結果として、
 中国神華エナジー(三井物産が加わるとの情報もあり)40%、
 米国のPeabody Energy24%、
 残りの36%は
国営ロシア鉄道韓国の国策資源開発のKorea Resources の連合
    (伊藤忠、住友商事、丸紅、双日の4商社が加わるとの情報もあり)

と発表された。

神華エナジーはモンゴル国境まで鉄道をつなぎ、Oyu Tolgoi と Tavan Tolgoi の石炭と銅を中国に運ぶ計画のコンソーシアムの中心となっている。

三井物産は2010年9月、神華集団と、世界の炭鉱開発や石炭貿易の拡大などで提携することで合意した。
提携の柱の一つが
Tavan Tolgoi 炭鉱への共同応札となる。

2010/9/15  三井物産、神華集団と包括的業務提携

しかし、直後にこれは仮であるとされた。

2012年5月には、外国企業がモンゴルの主要戦略資産の49%以上を取得する場合、国会の承認を必要とするとの法律を通した。

モンゴル工業相は、「2012年の末までに共同開発の新たな枠組みをまとめたい」としている。

ーーー

Turquoise Hill Resources (Ivanhoe Mines) はモンゴルのOyu Tolgoi 銅・金鉱山、Ovoot Tolgoi 炭鉱のほかに、豪州Queensland Cloncurry 酸化鉄・銅・金プロジェクト、カザフスタンのBakyrchik Gold Project などを手掛けている。

同社は2008年、中国のJinshan Gold Minesの権益(全体の42%)を中国黄金集団(CNGC)に譲渡した。
Jinshan Gold Minesは、内モンゴル自治区において2007年から金鉱山の操業を開始しており、現在120oz(3.7t)/年に向け増産体制を整えている。

中国黄金集団は1979年に設立された政府系企業で、Ivanhoe Minesは同社との間で長期的な戦略パートナーシップを目指している。今後、共同で中国での金、銅の探鉱、鉱山開発に集中していく。

Turquoise Hill Resources (Ivanhoe Mines) の活動地域は以下の通り。


2012/9/13  JX日鉱日石金属 と三井金属鉱業、チリ・アルゼンチンの銅・金の探鉱権益を取得 

JX日鉱日石金属と三井金属鉱業は9月10日、両社のJV(JX 66%、三井金属 34%)の銅事業会社パンパシフィック・カッパーが石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)からチリとアルゼンチンにまたがるFrontera 地域における銅・金資源の探鉱権益を譲り受けたと発表した。

パンパシフィック・カッパーでは三井物産とのJVのSCM Minera Lumina Copper Chileで、これに隣接するチリのCaserones 銅・モリヴデン鉱床の開発を行っている。



1)Frontera 計画

JOGMECはカナダのNGEx Resourcesと共同でチリとアルゼンチンにまたがるFrontera 地域で銅と金の探鉱を行ってきた。
(JOGMEC 40%、NGEx Resources 60%)

NGEx Resourcesはカナダ・バンクーバーに本拠を置く非鉄金属探鉱会社 で、南米・カナダに探鉱鉱区を所有している。

Frontera 地域は、両国の国境付近の山岳地帯に位置し、アクセスが困難であることから十分な探鉱が行われてこなかった有望地域の一つ。

チリ共和国第V及びアルゼンチン共和国San Juan 州北西部とLa Rioja州南西部にまたがるアンデス山岳地帯に位置する。総面積は約24,000ha、北側はCaserones 銅・モリヴデン鉱床と接している。

JOGMECは、2004年に初期探鉱段階にあった本事業に参画して以降、ボーリング調査等を実施し本地域内のLos Helados地区(チリ)に経済的に採掘可能な銅・金鉱床が賦存する可能性を把握した。現在、Los HeladosとFilo del Sol(アルゼンチン)の2地区において精力的に探鉱活動が行われている(このほかに、アルゼンチンのJosemaria地区でも探鉱を行っている。)

JOGMECではこの時点で、Frontera 地域に係る権益の譲渡に関する入札を実施し、落札者であるパンパシフィック・カッパーに譲渡した。

パンパシフィック・カッパーでは今後、探鉱を実施して埋蔵鉱量を確認のうえ、開発に向けた検討を進めていく。

2)Caserones計画

当時の 日鉱金属と三井金属鉱業の共同出資による銅事業会社パンパシフィック・カッパーは、2006年5月に権益を取得して、チリのCaserones 銅・モリヴデン鉱床開発プロジェクトの鉱量確認探鉱、選鉱試験等に基づく経済性評価を実施した。

その結果、このプロジェクトの開発は充分な経済性が見込まれるとの結論を得て、チリの第3州環境委員会による環境認可が採択されたため、開発への移行を決定 した。

このプロジェクトに三井物産が25%の出資比率で参加することを決め、両社はJVのSCM Minera Lumina Copper Chileを設立した。

当初の投資額は20億米ドルであったが、その後の銅価上昇に伴う対米ドルでのチリ・ペソ高、資機材・工事価格の上昇、詳細設計に基づく工事計画の一部変更等を勘案して投資額の見直しを行い、2011年11月に約30億米ドルに見直した。

付記

チリ訪問の安倍総理大臣は、2014年7月31日、カセロネス鉱山の開山式に出席し、中南米のチリ、メキシコ、コロンビア、ペルーの4か国と協力し、アジア太平洋地域の経済連携の強化に取り組んでいく考えを示した。

 

概要は以下の通り。

 プロセス

  (銅精鉱・モリブデン精鉱の生産)
 破砕・磨鉱→浮遊選鉱・脱水→銅精鉱・モリブデン精鉱→出荷
採掘(露天掘り)  
 
(溶媒抽出電解採取法=SX-EW法による電気銅の生産)
 ダンプリーチング→SX-EW→電気銅→出荷

生産量(見込み)当初 10 年間平均

   銅: 銅精鉱(量)  約 15 万トン /年
         電気銅       約  3万トン /年
    計       約 18 万トン /年
 モリブデン      約  3千トン /年


2012/9/14  BP、メキシコ湾の非戦略的石油資産を売却 

BPは9月10日、同社がメキシコ湾で生産、開発している油田のうち、非戦略資産を現金 55億5千万ドルで独立石油・ガス企業のPlains Exploration and Productionに売却すると発表した。

年末までに取引を完了する。

この非戦略資産の売却は、巨大油田や深海開発を含むBPの強みを生かすというグローバル戦略に沿ったもので、また、メキシコ湾では少数の大油田で収益を高めるという方針にも合ったもの。

売却するのは以下の油田。 
 Marlin、Dorado、King 油田 (BP 100%)
 Horn Mountain 油田 (BP 100%)
 Holstein 油田 (BP 50%)
 Ram Powell (BP 31%)
 Diana Hoover 油田(BP 33.33%)

BPは四大プラットホーム(Thunder Horse、Atlantis、Mad Dog、Na Kika )での生産を継続する。
また、開発段階の3油田、Mars、Ursa、Great Whiteの権益を保持する。

本年6月にはGalapagos計画をスタートさせた。

Isabela 油田(BP 67%)、Santiago 油田、Santa Cruz油田 (共にBP46.5%)で、BPがオペレーターとなり、それぞれがBPのNa Kita油田のプラットフォームにケーシングで接続している。

BPのCEOは、「メキシコ湾の石油はBPのグローバルの開発・生産ポートフォリオの重要な部分であり、今後の10年間、毎年少なくとも40億ドルを投資する」としている。

     

ーーー

BPは流出事故費用をまかなうため、また、BPの強みと成長機会を生かすため、2010年から2013年の間で380億ドルの資産売却を目標としている。(2010年7月には、2011年末までに300億ドル分の資産を売却するとしていた。)

今回の売却を含めると、累積額は320億ドルを超える。

同社は2010年11月末までに合計140億ドルの売却の契約を締結し た。そのうち、既報分は以下の通り。

2010/7/22  BP、北米とエジプトの石油資産をアパッチに売却 70億ドル
   
2010/8/5  BP、コロンビアの石油関連資産を売却 19億ドル
   
2010/9/2  BP、マレーシアのエチレン、ポリエチレンJV持分をペトロナスに売却 363百万ドル
   
2010/10/22  BP、ベネズエラとベトナムの川上事業を売却 18億ドル
 
2010/10/25  BP、メキシコ湾の4油田の権益を丸紅に売却 650百万ドル

2010年11月には、アルゼンチン最大の原油輸出企業のPan American Energyの持株(60%)を、残り40%を保有するBridas Corporationに70.6億ドルで売却する契約を締結したと発表したが、これは翌年取り消された。

2010/12/1  BP、アルゼンチンのPan American Energy の持株をBridas Corporationに売却 

2011/11/14    BP、Pan American Energy の持株のBridas Corporationへの売却を取り消し

その後の売却のうち、大口のものは以下の通り。

発表 売却資産 売却相手 売却金額
  百万ドル
2010/12 ほとんど全てのパキスタンの権益
 同国南部のSindh provinceの9つのブロック
 アラビア海の4つの海上ブロック
United Energy Group Limited (連合能源集団) 775
2011/3 U.S. Fuel Storage and Pipeline Assets Buckeye Partners L.P 225
2011/3 Wattenberg, Colorado natural gas processing plant Anadarko Petroleum 575.5
2011/4 ARCO Aluminum 住友軽金属等の日本企業連合 680
2011/5 北海油田 Wytch Farm Perenco UK 610
2011/9 Namibia, Botswana, Zambia, Malawi and Tanzania
の燃料販売事業
Puma Energy 296
2011/11 メキシコ湾 Pompano and Mica fields Stone Energy Offshore 204
2011/12 Canadian NGL Business Plains Midstream Canada 1,670
2012/2 Kansas ガス田、精製プラント  LINN Energy 1,200
2012/3 北海 Southern Gas Assets Perenco UK 400
2012/6 Jonah and Pinedale upstream operation(Wyoming)  LINN Energy 1,025
2012/6 北海 Alba and Britannia fields 三井物産 280
2012/8 Texas Midstream Gas Assets Eagle Rock Energy Partners 227.5
2012/8 Carson Refinery
ARCO Retail Network
Tesoro 2,500
今回 メキシコ湾油田 Plains Exploration and Production 5,550

 今回の売却を含めると、累積額は320億ドルを超える。

 


2011/9/15  ブルガリア、ユーロ導入を無期限に凍結 

ユーロ問題が複雑化するなか、これまで近い将来のユーロ圏加盟を目指してきた各国が方針を変更しつつある。

ブルガリアはこのたび、ユーロの導入計画を無期限に凍結した。

ボリソフ首相とジャンコフ財務相は9月3日、Wall Street Journalとのインタビューで、歴代政権の長期的な戦略的目標だったユーロ導入計画の棚上げを決定したことを明らかにし、経済情勢の悪化とEUの見通しの不透明さの高まり、それに緊縮政策3年目に入ったブルガリアの世論の決定的な変化に対応したものだ、と指摘した。

「今ではユーロ導入の利益は何もなく、あるのは費用だけだと見ている」、「ブルガリアにとってリスクは大きすぎ、ルールが何であり、それが1年あるいは2年後にどうなってしまうのか、はっきりとしていない」と付け加えた。

現在、EU加盟国は27か国で、うち、17か国がユーロを採用している。

EC条約では、EU加盟国は、基本的に単一通貨ユーロを導入することが想定されている。
但し、適用除外規定Opt out clauseがあり、英国とデンマークは適用除外が認められている。

スウェーデンは適用除外は受けていないが、国民投票で加盟が否決された。
再度、国民投票を行い、その賛成を得て、加盟するとしているが、国民投票時期は明確でない。

その他の7か国は、これまで一定の経済収斂基準を満たしていないとして加盟が認められていなかった。

ブルガリアは賃金と年金の削減によって、2011年の財政赤字の対GDP比を2.1%にまで低下させることに成功し、基準を満たしたが、ブルガリア側からユーロの導入計画を無期限に凍結した。

各国の状況は以下の通り。

EU
加盟
             ユーロ圏
参加
(記載なしは 1999/1)
不参加
1952 フランス、ドイツ、
イタリア、オランダ、
ベルギー、
ルクセンブルグ
   
1973 アイルランド 英国  
デンマーク 2000年9月の国民投票でユーロ参加否決
自国通貨の対ユーロ変動幅を中心交換レートから上下2.25%内の変動に維持
国民投票の実施は、欧州経済危機もあり適切な時期ではないとし、
先送り。
1981 ギリシャ (2001/1)    
1986 スペイン、
ポルトガル
   
1995 オーストリア、
フィンランド
スウェーデン 2003年9月の国民投票で否決
2004-05 キプロス (2008/1)、
マルタ (2008/1)、
スロベニア (2007/1)、
スロバキア (2009/1)、
エストニア(2011/1)
 
ラトビア 2013年春にユーロ導入のタイムテーブルを決定
(これまでは2014年に導入するとしていた)
リトアニア 「欧州の準備が整った」時にのみ加盟する。
ポーランド 2015年導入説を否定
ユーロが2015年までに十分に安定した通貨になる可能性はほとんどない」
チェコ 早くても2017年以降になる」
ハンガリー 2012年1月1日施行の新憲法に、公式通貨を「フォリント」とする旨明文化
ユーロ導入には憲法改正が必要
2007   ブルガリア 2012年9月、EUの将来をめぐる不透明性が高まっていることを理由に無期限凍結
(2010年1月の時点では、2013年にユーロを導入する方針)
ルーマニア 2015年のユーロ導入を目標とするが、今後のEU経済及び12年秋の選挙結果を見つつ、再検討。
合計 17か国 10か国

 


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