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これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。

最新分は  http://blog.knak.jp


2013/8/15   世界初の人工肉ハンバーガー

牛の筋肉組織の幹細胞から作った人工肉(Cultured Beef )のハンバーガーを調理、試食するデモンストレーションが8月5日、ロンドン市内で開催された。

オランダのMaastricht UniversityのProfessor Mark Post が開発したもので、幹細胞を培養し、3カ月かけて作った筋肉組織2万本分の人工肉に、パン粉と粉末卵を加えて味を調えた。
人工肉の
色は白のため、赤かぶの汁とサフラン、それにカラメルを入れて、焼いても肉と同じような色になるように調製した。

作製にかかった費用は375千ドルで、Googleの創業者の一人Sergey Brin が資金を提供した。

牛の筋肉組織からとった幹細胞に栄養と成長を促進する化学物質を与えて培養し、3週間後の数百万個になったところでペレットにして冷凍する。これを何度も繰り返して、たくさんできたところでハンバーガーパテにしたという。

Professor Postは、「人工肉が架空のアイデアではないことが証明できた。しかし生産効率やコストといった課題は残る」と説明した。
10~20年後までに人工肉をスーパーの店頭に並べ、食料問題への対策などに貢献したいとしている。

製法の詳細は下記YouTubeにある。
  http://culturedbeef.net/resources/#video

 牛の筋肉組織から採取した幹細胞を培養し、Myotube(筋管)をつくる。

 筋管は gel hub に入れると成長し、筋繊維に成長する。
 培養された筋肉繊維には栄養を運ぶ血管は存在しないため、成長過程では細胞に人工的に栄養素が与えられた。
 人工肉は自発的には運動しないため、筋肉が衰えないよう、人工肉に対してストレッチやマイクロエクササイズも施された。

 これを集める。
 人工肉には血液が含まれないため着色された。

ーーー

本事業の発想をホームページで次のように述べている。

国連食糧農業機関(FAO)によると、次の40年で肉の需要は2/3以上増大し、現在の畜産方法では対応できない。
何か代替方法を見付けない限り、近い将来に需要増大により肉も他の主食も高価な贅沢品となってしまう。

また家畜(特に牛、羊のゲップ)は一酸化炭素より20倍以上強いメタンを放出するため、地球温暖化の原因の一つであり、畜産増大はメタン、一酸化炭素、窒素酸化物のレベルを増大させることともなる。

人工肉(Cultured Beef )はよりサステナブルなオプションとなりうる。

環境負荷がどうなるかについて、2011年に環境評価(Life cycle assessment)が発表されている。
  http://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/es200130u?journalCode=esthag

大規模生産の場合で、筋肉組織の成長の栄養・エネルギー源としてCyanobacteria hydrolysateを使うとしている。
池などで増やした藍藻を採取し、殺菌、乾燥させて、それを人工肉の培養器に入れる。
(栄養・エネルギー源として太陽エネルギーを利用していることとなる。)

結果は以下の通り。

Cultured beef  1,000kg生産での消費量、排出量
 エネルギー 26–33 ギガジュール
 土地    190–230 m2 
 水     367–521 m3 
 
温室効果ガス排出 CO2換算1900–2240 kg 

これを畜産(牛、羊、豚、鶏肉)と比較すると、エネルギー消費でのみ鶏肉に劣るが、他の点ではすべて人工肉が優れている。
温室効果ガス排出と土地・水利用はほとんど無し。


2013/8/16   旭硝子、インドネシアで苛性ソーダ、PVCの大増設

旭硝子は8月6日、東南アジアにおける苛性ソーダや塩ビなどのクロルアルカリ製品の需要増大に対応するため、約400億円を投じて子会社 Asahimas Chemical の生産能力を大幅に増強すると発表した。

PVCのインドネシアの市場規模は40万トン超で、今後、需要の伸びが見込める。
東南アジア全体の市場規模は約200万トンで成長率は年率約5%とされる。

Asahimas Chemical は約50億円を投じて電解能力を約30%増強し、苛性ソーダ能力を50万トンにしたばかりだが、更に増強 し、苛性ソーダ70万トン、PVC 55万トンとする。EDC、VCMも増設する。

2015年末稼働開始予定で、能力は以下の通りとなる。(EDCの増強後能力は発表せず)

塩素系製品では、次亜塩素酸ソーダやEDC生産時の副産品の塩酸を外販している。

同社は製品を各地に輸出している。

Asahimasは1986年に設立され、1989年にジャワ島西端のBanten州 Cilegon (ジャカルタ西部約120キロメートル)で生産を開始した。

旭硝子が52.5%、三菱商事が11.5%出資し、残りを現地資本(Rodamas 18%、Ableman Finance 18%)が出資する。

近くにChandra Asri Petrochemical の本工場(地図左下)があり、エチレンの供給を受けている。


 

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インドネシアには他に多くのPVC工場がある。これらは全て、何らかの形で現在も(又は過去に)日本企業が関与している。

1)Standard Toyo Polymer (Statomer) 上の地図中央部

東ソー 30%、三井物産 20%、現地サリム&ビマンタラ 50%(その後サリム 50%)の合弁で1977年にメラクで操業を開始した。
1999年に日本側がサリム側の保有する全株式を買い取り、東ソー60%、三井物産40%
となった。
( 通貨危機でのサリムの破綻と、
1998年7月の外資法改正で外資100%が認められた結果

現在の能力は約9万トンとされる。(未確認)
ボトルネックで2013年に約11千トン増強して93千トン体制にするという情報もある。)

原料VCMは東ソーが日本から供給。

2)PT Sulfindo Adiusaha 上の地図上部のSulfindo名の3工場

日本企業を含めた長い歴史を持つ。

現地財閥の林紹良が率いるサリム・グループは子会社 PT Sulfindo Adiusaha で、メラクに台湾の中古の水銀法電解96千トンとEDC90千トンをもっていた。

当初、サリムは同社が50%、アトケム 25%、住友商事 25% でJVを設立し、Sulfindoの電解をS&Bし、電解からPVCまでの一貫事業を構想した。

   
しかし、アトケムが離脱したため、東ソーを加えたが、東ソーがPVCのみに参加を希望したため、次の3会社となった。
  PT Sulfindo Adiusaha 電解 
  サリム100%のままとし、水銀法電解をスクラップして、旭化成法で電解を新設(塩素200千トン)

Satomo Indovil Monomer :VCM
 
サリム50%、住友商事25%、香港のBrendswick25%で設立
 EDCはSulfindo から90千トンを移管した上で175千トンを増設、VCMはアトケム法で100千トンを新設

Satomo Indovil Polymer :PVC

 サリム50%、
東ソー25%、住友商事25%で設立
 1998年に東ソー技術でPVC 70千トンを建設
   
1997年の通貨危機でサリムは破綻、資産管理会社 Holdiko に移管され、順次売却されることとなった。

上記3社については東ソー/住商によるサリム持分購入も検討したが入札が成立せず、2001年12月にサリム持分は香港のEmperor Groupに売却された。

   
2003年に Emperorは日本側追い出しを図り、Sulfindoからの塩素供給を停止してVCM、PVCの操業停止に追い込み、更に自ら、子会社のSatomo Indovil Monomerの破産申請を行った。

裁判では住友商事サイドの主張が認められたが、原料の供給は切られたままで、住商はEmperorに対して同社持分の買収交渉を行った。
   
結局日本側は撤退を決め、インドネシアのローカル銀行のPT. Pan Indonesia Bank Tbk.が全てを買収し、PT Sulfindo Adiusahaとなり、2004年10月に生産を再開した。

現在の能力:
 
苛性ソーダ 320千DMT
 EDC  320千トン
 VCM 130千トン
 PVC  95千トン  

エチレンはChandra Asri Petrochemical から供給を受ける。

3)Eastern Polymer Jakarta市内

インドネシア最初のPVC会社で香港のUnited Industriesがジャカルタに建設したが、建設以来休眠状況であった。

1975年に徳山曹達が三菱商事と組んで技術援助を行い、軌道に乗せ、1981年に徳山曹達が20%、三菱商事が30%出資した。

その後三菱商事100%となり、徳山曹達が技術指導を行っていたが、1998年に休止した。

その後、パイプメーカーのワービンが買収し、1998年12月に生産を再開している。現在能力48千トン。

4)TPC Indo Plastic & Chemicals(旧称 Siam Maspion Polymers)
 
1996年にタイのSiam Cement (30%)と同社子会社のTPC(20%)、インドネシアの塩ビパイプ大手Maspin(50%)のJVとして設立され、新第一塩ビの内部ジャケット方式技術で、東ジャワ Gresikに120千トンプラントを建設した。

2005年にMaspionが撤退し、現在はSiam Cement 60%、TPC 40% 出資のTPC Indo Plastic & Chemicals となっている。
 
 

2013/8/17 韓国、電力不足最大のヤマ場 乗り越え 

韓国では8月12日から14日にかけて 、猛暑が見込まれるなか深刻な電力不足で大停電になる恐れが予想され、政府は計画停電など緊急措置を行う可能性があると明らかにしていた。

結果的には、公共機関での冷房使用禁止など政府の大胆な節電対策、企業の生産調整、国民の節電努力などにより大停電や計画停電など最悪の事態を免れた。

電力取引所によると、14日午後3時の最大電力需要は7,802万キロワットを記録した。
節電対策を取らない場合、「52.9万キロワットの不足」と予想されていたが、さまざまな需給対策により予備電力 508万キロワットを維持した。

企業は13日に電力需要を540万キロワット減らしたのに続き、14日はさらに多い557万キロワットを削減した。

だが、残暑が続く中、9月から発電所の定期整備が続々と始まるため、電力需給は9月初めにもう一度ヤマ場を迎える。
産業通商資源部は「電力需要の推移に応じ、発電所の整備スケジュールを調整して対応する」としている。

韓国には原子力発電所23基があるが、保守点検や偽造証明書で使われていた部品の交換などのため、6基が稼働を停止している。

韓国の原子力安全委員会は5月28日、稼働中や建設中などの原発6基の安全装置に、性能確認試験の結果を示す書類が偽造された部品が使われ、一部は緊急時に十分機能しない不良品であることを確認したと発表した。

2013/5/31 韓国の原発10基が稼動中断、夏の電力不足憂慮 

原発停止に加え、無理な出力運転による火力発電所などの故障も相次いでいる。

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政府は電力不足で大停電になる恐れがあるとして8月12日から14日までの3日間、全国の公共機関で冷房の使用を禁じた。
ソウルの政府庁舎では照明も消され、半分以上のエレベーターが止まった。

韓国の産業通商資源相は8月11日、企業や公共機関、家庭などに対し、12日からの3日間の午前10時から午後6時まで、電力消費を減らすよう求めた。
長官以下の幹部は、電力消費量が多い企業約100社の経営者に一斉に節電を要請する電話をかけた。

一方では、節電目標値を達成できなかった起亜自動車や現代自動車など20社、29カ所の事業所のリストをマスコミに公表した。

電力消費量5000キロワット以上の企業2836カ所では、8月5日から30日までのピーク時間帯に電力消費量を6月に比べ3−15%節減することが求められていた。違反すれば1日当たり50万ウォンの過料で、金額は少ないが、企業名が公表される。

3%の節電を割り当てられた企業の場合、通常の操業率を維持したままエアコンを止めれば、なんとか目標値を達成できるが、5%以上の場合は、生産ラインを一部 を止める必要が出てくる。

現代製鉄は、12−14日に電炉13基のうち11基の操業を一時中断、Sオイルは12日から温山工場の石油製品生産量を削減した。
昼間の作業を夜間に回した企業も多い。

韓国政府は2006年末に2012年の最大電力需要を6712万キロワットと推定し、それに見合う発電設備を拡充した。
しかし2012年の実際の最大電力需要は当初予測を11%上回る7429万キロワットに達した。

産業通商資源部の高官は「政府が需要予測をうまくできなかった上、原子力発電の管理にも失敗したせいで、こんな状況に至った」と政府の責任を認めた。

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韓国は電気代が安いため、韓国に進出する日本企業が多い。

韓国の電気代が安い第一の理由は、発電単価の安い石炭と原子力で発電電力量の約8割をまかない、かつ韓国の寒冷な気候のため日本と比べて原子力の設備利用率が高い(95%以上)ことである が、上記のとおり、原子力発電所の多くが問題を抱えている。

これに加えて、韓国の電気料金は「政策的料金」という位置づけのもと、料金をコスト以下に設定しているという異常さがある。

これ以外にも、韓国はいろいろの問題を抱えており、今後も供給不足や大幅値上げの恐れがある。

2011/9/28  韓国の電力事情

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韓国の企業、家庭が節電に務めているなか、例外がある。

7月16日付の日本経済新聞は「韓国 電力危機、動じないサムスンの特権」 という記事を掲載した。

韓国では電力公社と政府の協議で、電力が逼迫した場合、どのように停電させるかマニュアルで決まっている。

軍事基地など国家セキュリティーに関係する施設への電力維持が最優先される。
その次の優先供給先はソウルなど大都市の官公庁施設だが、サムスンのセミコンダクター関連の主要工場はこのカテゴリーに準じるのだという。

サムスンはスマートフォンでアップルと激しい競争を世界各地で繰り広げているが、半導体など主要部材工場の安定高稼働が必要で、最先端半導体ラインでは電力供給量の上下のブレはもちろん、コンマ1秒の瞬間停電すら問題となる。

サムスンのスマホ関連工場が「政府公認の聖域」になっており、現地でこれの部材を供給する村田製作所、TDK、住友化学なども「特別扱い」の恩恵にあずかっている という。


2013/8/19 中国当局、輸入車などの独占価格調査を開始 

中国の自動車流通協会 (CADA) の羅磊副事務局長はこのほど、中国国家発展改革委員会(NDRC)の依頼を受け、国内で販売される全ての外国車の価格情報を集めていることを明らかにした。

彼によると、NDRCは自動車メーカーが中国のディーラーに最低卸価格を決めていないかどうかを調査している。
最低価格設定は独禁法違反となる。

CADAでは輸入車と中国でのJVでの生産車の全てのブランドについて調査をしており、輸入車の価格と海外での価格に大きな差があるとしている。

中国では輸入車には25%の関税がかかり、17%の増価税と消費税がかかる。

消費税は2008年9月の税率調整で排気量の大きな自動車に対し、大幅に引上げられた。

排気量1リットル以下   1% 3%
・ 同1.0~1.5リットル   3%  
1.5~2リットル   5%  
・ 同2.0~2.5リットル   9%  
・ 同2.5~3.0リットル    12%  
・ 同3.0~4.0リットル   25% 15%
・ 同4.0リットル以上   40% 20%

CADAではこれは認識しており、税金によるコスト差は問題にしていない。

新華社は先月末の社説で、外国の自動車メーカーは輸入車販売で膨大な利益を上げており、独禁法違反の調査をするべきだと報道した。
輸入車のなかには海外市場の2倍で売っているものもあるとし、例としてAudiとBMWを挙げている。

8月1日付の人民網日本語版は「高すぎる中国の輸入車 最大の原因は関税にあらず」との記事で、BMWのX5 xDrive 35i を例に分析し、輸入車が高いのは高関税のためという説を否定している。

海外市場販売価格 47,500ドル(約291,175元

CIF価格を33万元と仮定すると、関税 25%、消費税 12% (2,979cc)、増価税 17%で、税金合計が約22万元、これにディーラーの検査費用や保管費などの経費が加わり、コストは57万元となる。

これが中国国内で最高101万元で販売されている。
CIF価格は不明だが、44万元の利益が外国メーカーと国内ディーラーで分けられている。

この分析に対し、業界では、CIF価格はもっと安く(海外販売価格の29万元より安い筈)、利益はもっと高いと指摘する。
中国人消費者の海外有名ブランドに対する崇拝が、価格ををつり上げているとしている。

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中国政府は最近、価格独占の摘発に注力している。

国家発展改革委員会(NDRC)は8月7日、粉ミルクを巡る競争阻害や卸売業者に対する最低販売価格の制限などで、6社に合計約109百万ドルの罰金を課した。

2013/8/9   中国で販売価格を巡る2つの独禁法違反事件

NDRCは医薬品の価格設定システムを改善するため、GlaxoSmithKline、Merck、Novartis、Baxter Internationalを含む国内外60社の製薬会社のコストと価格を調査している。

NDRCとは別に、工商総局(SAIC)が8月15日、医薬品・医療サービス業界に蔓延している賄賂の調査(3か月)を開始した。

産業界における賄賂は、人為的に価格を上げるだけでなく、フェアな競争を妨げるとし、医薬品、医療サービスの価格交渉時での賄賂を厳しく処罰するとしている。

中国における独禁法の担当は以下の通り。

国家発展改革委員会(NDRC) 価格独占行為の調査・処分
商務部 事業者集中行為
工商総局(SAIC) 独占協定、市場支配的地位の濫用、
行政権力を濫用した競争の排除、制限

関連記事 2013/7/18   中国、GlaxoSmithKline を贈賄の疑いで捜査

NDRCは8月13日、豫園商城の子会社2社 や上海老鳳、その他、上海の宝飾店5社と上海黃金飾品行業協會に、金とプラチナの宝飾品の価格カルテルで罰金を課した。

罰金額は、5社には昨年の売上高の1%の合計1009万元、協会に50万元、合計1059万元(約170万ドル)となっている。


2013/8/20 中国商務部米医薬品・医療機器大手 Baxter International によるスウェーデンの医療機器メーカー Gambroの買収を承認

中国商務省は米医薬品・医療機器大手 Baxter International によるスウェーデンの医療機器メーカー Gambroの買収を条件付きで承認した。
2013年8月8日 公告58号

買収が完了すれば、透析市場で第2位のメーカーが誕生する。

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Gambroは医療技術志向性のグローバル企業で、腎臓透析や肝疾患治療用透析、骨髄腫腎治療、その他の慢性・急性患者の体外循環療法に関する製品と治療法の、開発、製造、供給を行っている。

Gambroの歴史は、ニルス・アルウォール教授が世界初の人工腎臓の一つを考案したことに始まる。
1961年に、実業家のホルゲル・クラフォードはアルウォール教授の考えに感銘を受け、1964年にスウェーデンのLundでGambroを設立、この新しい救命装置の開発と、商品化を図った。

1967年にシングルユースの人工腎臓と透析装置の大量生産が始動し 1970年代には初の海外生産工場がドイツに建設された。

その後、幾度かの買収を経て、Gambroは製品とサービスの範囲を広げた。

2006年6月、スウェーデンの投資会社のEQTとInvestor ABの共同所有会社のIndap ABが現金によるTOBにより全発行済み株式を取得し、現在に至っている。

2007年にGambro Groupは3つに分社化され、その後、2社は売却された。

1)Gambro(体外循環療法) 

2)CaridianBCT(血液成分分離技術)テルモが買収
     
2011/3/18  テルモ、米医療機器メーカー買収 

3)Diaverum(透析治療施設の運営)   投資会社Bridgepointが買収

Gambroは、現在7500名以上の従業員を雇用し、9カ国に13の生産拠点を有し、100カ国以上で営業活動を行っている。

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Baxter International は2012年12月4日、Gambro ABを約40億米ドルで買収する契約を締結したと発表した。

買収によりGambroの血液透析療法と急性血液浄化法の分野と、Baxterの在宅透析療法分野の製品と技術が組み合わされ、この分野での需要家のニーズを満たすことを狙う。

Gambroは血液透析(hemodialysis:HD) と持続的腎機能代替療法(continuous renal replacement therapy:CRRT) で使われる透析製品のグローバルな供給者で、2011年の売上高は約16億ドル。

ーーー

中国商務部は2012年末にBaxterから買収について独禁法による承認申請を受け、審査をしてきた。

その結果、CRRT市場と人工腎臓装置及び透析器市場での合併後のシェアが高くなり過ぎることが問題となった。

持続的腎機能代替療法(CRRT)市場シェア

    Baxter Gambro total
世界 CRRT total  7% 57% 64%
CRRT trail pipe 6% 53% 59%
CRRT dialyzer 12% 50% 62%
中国 CRRT monitor 14% 43% 57%
CRRT trail pipe 36% 48% 84%
CRRT dialyzer 15% 64% 79%

人工腎臓装置及び透析器(hemodialysis dialyzers)市場シェア

Baxter  3% Niproが受託製造
Gambro 19%  
小計 22%  
Nipro  26%  
合計 48%  

今回、承認の条件となった是正策は以下の通り。

1)CRRTについてはBaxterは事業を売却する。

2)人工腎臓装置及び透析器についてのニプロへの委託契約を2016年3月31日までに終了する。

3)その他の制限事項の遵守
 
 

なお、EUは2013年7月22日に条件付きでこれを承認した。

EUも合併後のCRRTの市場シェアが高くなり過ぎることを問題とした。また需要家は他に代替供給先を見付けるのが難しいことも問題となった。

このためBaxterは下記の対応策を提案した。

 Baxterの従業員、供給契約、知財、製品、需要家リストを含む全世界のCRRT事業の売却
  欧州市場内で、事業買収者の選んだ場所にCRRTに使用される流体を製造するラインを設置する。

人工腎臓装置及び透析器については、欧州では両社は競合しておらず、Fresenius Medical Careなどの競合社があるため、問題なしとした。

この結果、EUはBaxterによる対応策を受け入れ、合併を承認した。

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なお、テルモは2012年3月、中国の最大手医療機器メーカーである威高集団有限公司の中核事業会社である山東威高集団医用高分子製品股分有限公司と腹膜透析事業における戦略的提携に関する基本契約を3月18日に締結した。

これに基づき、テルモは2012年12月に、山東威高のグループ会社である威海威高血液浄化製品有限公司と、中国において腹膜透析関連製品の製造を行なう50/50の合弁会社「威高泰尓茂(威海)医療製品有限公司」を設立した。

透析には、腹膜透析(PD)と血液透析(HD)がある。

腹膜透析(PD:Peritoneal Dialysis)とは、内臓を覆う腹膜に囲まれた腹腔内に透析液を注入・貯留し、腹膜を介して血中の不要な老廃物や水分を除去する療法。

血液透析(HD:Hemo Dialysis)は、血液を体外に引き出し、透析器(ダイアライザー)に誘導して老廃物を取り除き、浄化した後に再び身体に戻す操作を連続して行う。


2013/8/21    田辺三菱製薬、仲裁裁定で117百万ドル受領

田辺三菱製薬は8月8日、同社が日本で販売する抗ヒトTNFαモノクローナル抗体製剤「レミケード®点滴静注用100」(REMICADE、一般名:Infliximab)に関し、Janssen Biotech(Johnson & Johnson子会社)に対して、開発販売契約に基づく供給価格の改定を求める国際商工会議所(ICC)への仲裁申立 を行っていたが、これに対し、供給価格を低減すべきとの仲裁判断を受領したと発表した。

これに基づき、過年度分(2008年4月~2013年3月)の供給価格の精算金額として約117百万米ドルをJanssenから受領した。

レミケード®は、Janssen(旧 Centocor Biotech) が創製した関節リウマチ等の治療薬で、1993年に田辺製薬が、日本及びインドネシア、台湾における本剤の開発・販売に関する契約を締結し、2002年にクローン病治療薬として日本での販売を開始した。

田辺製薬は2007年10月1日に三菱ウェルファーマと合併し、田辺三菱製薬となった。

現在では、関節リュウマチ、クローン病、乾癬、潰瘍性大腸炎、ベーチェット病による難治性網膜ぶどう膜炎、強直性脊髄炎治療薬として販売され、2012年の売上高は前年比10.8%増の735億円となっている。

仲裁申立ての背景は明らかでないが、田辺三菱製薬は2009年に、田辺に日本での販売権を与えていた両社のDistribution Agreement をもとに、Centocor Ortho Biotechの親会社のJohnson & Johnsonに対する調停申し立てを行った。

これに対し、相手側は供給価格の引き上げを提案した。

このことと、後述のMerckとJohnson & Johnsonの間の調停とを勘案すると、親会社となったJohnson & Johnsonが田辺製薬と三菱ウェルファーマの合併を理由に、販売権の打ち切りを提案したのではないかと推測される。

田辺三菱製薬は仮価格として相手側の提案価格で支払いを行い、調停を継続した。

Johnson & Johnson側の発表によると、調停パネルは2011年8月に、田辺三菱が供給価格引き下げを求めることができるとした。
2011年11月には価格を決めるヒアリングが行われ、2013年2月には田辺三菱に有利な判断が下された。

Johnson & Johnson側はこの時点で返金額の引き当てを行い、その後詳細が協議されてきた。

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Janssen Biotechは旧称 Centocor Biotechで、1979年にPhiladelphiaで設立された。

Centocorは1999年にJohnson & Johnsonの100%子会社となり、2008年にOrtho Biotechと合併してCentocor Ortho Biotechとなった。

2011年6月にCentocor Ortho BiotechはJanssen Biotechに改称した。

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Remicadeは当初、
 米国ではCentocor Ortho Biotech(現在のJanssen Biotech)
 日本、インドネシア、台湾では田辺三菱製薬
 中国では子会社のXian Janssen(1985年設立、Johnson & Johnson 子会社)
 その他地域ではSchering-Plough
が販売していた。

2009年にMerck & Co., Inc. がSchering-Plough と合併することで合意したと発表した。

2009/3/11 米Merck、米Schering-Plough を買収

2009年5月、Centocor Ortho Biotechの親会社のJohnson & Johnson はSchering-Plough のMerckとの合併を理由に、Remicadeの販売権の取り消しを求めて調停にかけた。
契約上、
Schering-Plough が売却された場合は、販売権を取り消すとの条項があった。

MerckはSchering-Ploughとの合併契約では、この条項は適用されないとして強く反発した。

調停の結果、両社は2011年4月に以下の点で合意した。

Schering-Ploughはカナダ、中南米、中東、アフリカ、アジア太平洋(売上高で30%)の権利を放棄する。
・欧州、ロシア、トルコ(売上高で70%)については従来通り、独占権を維持する。
・欧州、ロシア、トルコでの利益配分比率を変更する。
  従来はSchering-Ploughが58%、Centocor Ortho Biotechが42%、
  これを2014年に50/50となるよう、順次調整する。

詳細は不明だが、田辺三菱製薬の場合も、恐らく当初はJohnson & Johnsonが田辺製薬の合併を理由に販売権の取り消しを求め、これが無理と分かり、利益配分率の変更を求めたものと思われる。


2013/8/22  住友ゴム工業、世界初の100%石油外天然資源タイヤを発売へ 

ダンロップの住友ゴム工業は、石油や石炭などの化石資源を全く使用しない世界初の「100%石油外天然資源タイヤ」を2013年11月に発売を開始すると発表した。

同社では石油や石炭などの化石資源への依存度を最小限にすることを目指した「石油外天然資源タイヤ」の開発に2001年から取り組んでおり、2006年には石油外天然資源の使用比率を70%に高めた「エナセーブ ES801」を、2008年には同割合を97%にまで高めた「エナセーブ 97」を発売した。

天然ゴムの比率を多くするとブレーキ性能等のグリップ力の低下や耐磨耗性の悪化が避けられず、タイヤとしての性能は確保できないのが問題であった。
ダンロップは天然ゴムの分子構造を改良してその難関を克服した。

「エナセーブ 97」は従来のトレッド部に加え、天然ゴムの使用が難しいサイドウオールやインナーライナの部分にも、天然ゴムを改質して使用できるようにし、脱石油資源を大幅に進めた。
その一方で、タイヤの「転がり抵抗」を従来品と比べて35%も削減し、燃費も格段に向上させた。

このほか、鉱物油を植物油に、合成繊維を植物性繊維に代替、カーボンブラックの一部をシリカに代替し、97%まで高めた。

残り3%の原材料を天然資源化する研究を進めてきた結果、
「老化防止剤」と「加硫促進剤」については、原材料化合物をバイオマス資源から特殊触媒により合成に成功、
「カーボンブラック」については、植物由来の油分から、従来と同等の性能を有するカーボンブラックを製造することに成功した。

同社の特許に下記がある。

グルコースを微生物によって安息香酸・安息香酸誘導体に変換
(または植物から安息香酸・安息香酸誘導体を抽出)
            ↓
得られた安息香酸・安息香酸誘導体をアニリン・アニリン誘導体に変換
            ↓
老化防止剤、加硫促進剤を製造

2011年に開催された「第42回東京モーターショー2011」で「100%石油外天然資源タイヤ」のプロトタイプを発表、その後、耐久性などの信頼性の評価と量産化技術の確立に向けた開発を進めた結果、11月の「第43回東京モーターショー2013」で発表し、同時に発売を開始する。

一般タイヤ 石油外天然資源タイヤ
合成ゴム 天然ゴム
改質天然ゴム
鉱物油 植物油
カーボンブラック シリカ
植物由来の油分からのカーボンブラック
合成繊維 植物性繊維
老化防止剤
加硫促進剤
バイオマス由来原料化合物

同社では今後、石油外天然資源タイヤからの進化技術として、高機能バイオマス材料を開発し、商品化につなげていくとしている。
高機能バイオマス材料による商品化技術は、2016年に第1世代、2020年に第2世代を確立する予定。

ーーー

ブリヂストンも、再生可能原料のみを使った理想のタイヤ技術を目指している。

2012/5/30   ブリヂストン、再生可能原料のみを使った理想のタイヤ技術を目指す

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住友ゴム工業は当初、英国のDunlop Rubber の日本工場としてスタートした。
1963年に住友ゴムとなり、1999年にGoodyearと全世界のタイヤ事業で提携、2003年にオーツタイヤと合併。
 この結果、ダンロップ、グッドイヤー、ファルケンの3ブランを持つ。

  英国
Dunlop Rubber
日本
住友ゴム工業
米国
Goodyear Tire & Rubber
1888 John Boyd Dunlop が空気入りタイヤを発明    
1889 Dunlop Rubber 設立    
1898     設立
1909   Dunlop Rubber の神戸工場  
1917   法人化、ダンロップ護謨(極東)  
1960   住友グループが30%出資
(住友電工、住友商事)
 
1961   長銀出資(日本側50%)  
1963   日本側56%、住友ゴム工業に改称  
1980代前半 経営悪化    
1983 住友ゴム持株40%全てを売却 日本側100%  
1984 英独仏6工場を住友ゴムに売却 Dunlopの英独仏6工場を買収  
1985 BTRがDunlop 買収
 タイヤ部門は住友ゴムに売却
(他の部門も順次売却)
   
1986 Dunlop USAを住友ゴムに売却 Dunlop USA 買収  
1999 (左により)
Dunlopタイヤ部門は
Goodyear 75%/住友ゴム25%

欧州、北米、日本でのタイヤ事業のアライアンス

日本を含むアジア市場は住友ゴム
北米・欧州市場はGoodyear
(住友ゴムは現物出資し、25%保有)

2003   オーツタイヤと合併
 (ファルケンブランド)
 

現在の状況
 住友ゴム(SRI) 持株
  
Goodyear Dunlop Tires Europe 30%
  Goodyear Dunlop Tires North America 30%
  Goodyear-SRI Global Purchasing Co.  20%

 住友ゴムへの出資 Goodyear 1.3%

1999年のGoodyearとの提携について、当時、「住友ゴム救済のための提携」と噂された。

住友ゴムは1980年代前半に欧米で工場を買収し、その設備更新などに資金をつぎ込んだため、資金収支が悪化しており、メーンバンクの日本長期信用銀行が1998年に国有化されたこともあって、同社の安定性が問題視されていた。

住友ゴムは欧米での主導権をGoodyearに渡した。
見返りとして、欧米での合弁会社2社設立で、製造設備などを現物出資して、25%出資としたが、資産価値と出資分との差額の9億3600万ドルを
Goodyearから受け取り、負債返済に当てた。

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世界のタイヤの現在のシェアは以下の通り。

Goodyear/住友連合としては14.9%となり、ブリヂストン、ミシュランと並んだ3強となる。


2013/8/23  SABIC、二酸化炭素利用計画 始動へ 

SABIC子会社のUnited Jubail Petrochemical Company はこのたび、SABICのCarbon Dioxide Utilization Project 実施のため、Linde Groupとの間で世界最大のCO2精製・液化プラント建設のための設計・購買・建設契約を締結した。

プラントは同社のエチレングリコールプラントから出る二酸化炭素 日量1,500トンを圧縮、精製する。

精製した二酸化炭素(ガス)はSABIC子会社3社にパイプで送り、新法のメタノール、尿素の原料に使用する。
プラントでは又、食品グレードの液体二酸化炭素 日量200トンの生産が可能で、トラックで飲料、食品会社に供給される。

United Jubail Petrochemical Companyの概要は以下の通り。

LOCATION Al-Jubail
PARTNERSHIP SABIC (75%), Pension Fund (15%), General Organization of Social Insurance (10%)
FEEDSTOCKS Ethane
PRODUCTS
  
能力:千トン

Ethylene

  1,000

linear alpha olefins

150

HDPE

400

EG

1,200

50% ownership in a 800,000 mt/y HDPE/LDPE of PETROKEMYA


SABICでは、原料のハイドロカーボン、その他の原料とエネルギー(ハイドロカーボン)を使って、化学品、メタル、肥料、ポリマーを生産するが、生産の過程で大量のCO2(温室効果ガス)を発生させている。

今後、生産を更に増やすに当たり、環境問題も解決したいとの問題意識から、Carbon Dioxide Utilization Project を検討した。

2012年5月の説明会 Industrial look ahead for CO2 utilization

構想は以下の通り。

当面の計画は下記の通りで、回収したCO2(及びN2、H2)を原料に、メタノールと尿素を生産する。
     SABICでは現在、貴重なH2も無駄にしている。

将来はオレフィンの生産はCO2原料にドラスチックに移行する可能性があるとしている。

・CO2からオレフィン
・メタノール経由でオレフィン
・Syngas経由でオレフィン

現在のオレフィン製造コストは環境コストを考慮していないが、これを勘案すると、CO2を原料とするのは経済的にも有利となるとしている。

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日本では三井化学が2008年にCO2からのメタノール合成プロセスの実証パイロットプラントを建設、2009年から稼働させている。


2013/8/24   L’Oréal、中国美容パック会社の美即控股に買収提案 

化粧品世界最大手のフランスのL’Oréal は8月15日、中国の美容パック会社である美即控股(Magic Holdings International)に対し、約840百万ドルで買収提案を行ったことを明らかにした。

美即は「MG(美即)」ブランドで各種スキンケア用品、化粧品の製造を手掛け 、2012年の売上高は約150百万ユーロ。
主力製品のシートマスクの売上高は中国国内で最大手。

2010年9月に、婦人科向けの医薬品、女性用医薬品及びバイオ医薬品の研究開発、製造販売を行う華瀚生物製薬(Hua Han Bio-Pharmaceutical)から分離上場 した。

美即の株式の62%を保有する6人の株主はL’Oréalによる買収に賛成している。
買収には中国商務部の独禁法に基づく承認が必要となる。

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L’Oréal は1997年に中国に進出、現在では中国に3500人の従業員を抱え、上海に研究センター、江蘇省蘇州市と湖北省宜昌市にプラントを持つ。

2012年の中国の高級化粧品の市場シェアは下記の通りで、L'Oreal は米国のAmwayと並ぶが、伸び率は異なる。

 

Source: http://blog.livedoor.jp/kakyosha_nissy/archives/27599279.html

L’Oréal はこれまでも中国のブランドを買収している。

L’Oréal は2003年12月に中国の化粧品ブランド、小護士(「小さな看護婦さん」:Mininurse)を買収した。

小護士は1992年設立で、中国では3大スキンケア商品の一つとして人気を博し、5%のシェアを有していた。
L’Oréal のもとでリニューアルした小護士は、顧客の要望をより反映したスキンケア商品を目指し、さらなる顧客獲得を図る。

L’Oréal は2004年1月、Coty Group 傘下の化粧品ブランド、羽西(Yue Sai)の買収を発表した。

羽西は中国系アメリカ人女性のYue-Sai Kan(靳羽西)が1992年に中国で設立した中国初の化粧品専門会社で、1996年にCotyとの合弁となった。

Yue-Sai Kanは1972年に米国に移民、中国と米国の貿易を始め、テレビ番組の司会者プロデューサー、化粧品クィーン、ベストセラー作家、慈善活動家など多くの肩書きを持つ。
中国女性におしゃれを教えた功労者とされる。

 


2013/8/26 Dow Chemical、アスベスト裁判で敗訴、被害の従業員に595万ドルの賠償金支払の審決 

ルイジアナ州裁の陪審員は8月21日、アスベストの使用で癌(中皮腫)にかかった従業員に対し、Dowの責任を認め、595万ドルの賠償金支払いを命じた。

原告側弁護士は、Dowは数千人の従業員をアスベストの危険に晒しており、今回の従業員は数百人の癌の被害者の1人に過ぎないとしている。

提出された記録によると、ほとんどの化学会社が数十年前にアスベスト使用を止めているのに対し、Dowは、アスベストを含まない代替品と比べて約10%安いという理由で、世界中の製造設備でアスベストを使い続けている。

同社はEPAによるアスベスト禁止に対する反対のロビー活動を行った。
米国ではEPAにアスベスト使用を認めるよう運動して成功、海外でもアスベスト禁止に対して争っている。

裁判資料では、Dowは"cost per cancer" 分析を行い、全てのプラントでアスベストを使わない方法に変更した場合、12億ドル以上が必要と判断した。
1970年に従業員や契約労働者が(直接アスベストを扱わない人を含め)中皮腫などの癌になる可能性を予測しながら、アスベストの使用継続がコスト的に有利であるとした。

現在もアスベストの使用を継続している。

従業員の発癌の可能性を予測しながら、損益計算をしてアスベスト使用を継続したというのが本当なら、恐ろしい会社である。
Agent Orange、Bhopal、Dioxinなどへの対応も含め、社会的責任をどう考えているのだろうか。

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アスベストについては、1972年にILO、WHOの専門家会合で石綿の癌原生を指摘した。

日本では1975年に吹付け石綿の原則禁止、1976年に石綿代替促進通達が出された。
1987年に業界自主規制で使用禁止とし、1995年に使用禁止となった。

欧州でも1991年にオランダ、92年にイタリア、93年にドイツで全石綿の原則使用禁止となり、1999年にEUが全石綿の使用禁止を決定した。
(1997年のフランスの使用禁止に対し、最大の輸出国のカナダがWTOに提訴したが、WTOは2001年にフランスとEUを支持、貿易制限措置を容認した。)

 

米国では、WHOが使用禁止を勧告した1989年にEPAが石綿の使用禁止規定を制定した。

官報で、「1997年までに3段階にわたり、ほとんどの石綿含有製品の製造、輸入、加工および商業的流通を禁止する」とした。

しかし、1991年10月18日に米国連邦高等裁判所はこのEPA規制は無効であるとの判決を下した。

ただし、高裁は1989年7月のEPA規制公布日の時点で、製造、輸入あるいは販売などが行われていない石綿含有製品と、新しい石綿および石綿含有製品の使用については禁止することができる とした。

EPAはこれに基づき、石綿セメント管用テープ、ルーフィングフェルト、ビニル石綿タイルなど14品目と石綿の新用途を禁止する旨の通達を1992年4月に出した。

これに対して米国の業界が、これらのうちの多くが1989年時点で輸入されたり、製造されたりしていたとの書類を提出した。
その結果、EPAは1993年11月に以下の18品目を禁止品目から除外した。

石綿スレート波板、石綿スレート平板、石綿織布、パイプライン・ラップ、ルーフィング・フェルト、ビニル石綿床タイル、石綿セメント屋根板、石綿板(以上8品目は禁止14品目に含まれていたもの)
石綿セメント管、トランスミッション部品、クラッチ・フェーシング、摩擦材、ディスク・ブレーキ・パッド、ドラム・ブレーキ・ライニング、ブレーキ・ブロック、ガスケット、ノン・ルーフィング・コーティング、ルーフィング・コーティング

ーーー

Dow Chemical はHome Pageに「Issues & Challenges」というページを持ち、同社の抱える4つの問題点(Agent Orange、Asbestos、BhopalDioxin)について同社の立場、観点を説明している。

Asbestoについては以下の通り。(2013年2月15日更新)

Dowと子会社の UCCはアスベスト製品の工場での使用(及び、UCCの場合はアスベスト繊維等の販売)に際して政府の規則、業界の基準に従がっている。

過度に曝露されて発症した場合は補償が必要だが、裁判は大変なため、法律などによる国としての解決が必要である。

将来の補償額が不明なため多くの企業が破産に追い込まれており、この点からも幅広い国としての解決が必要である。

注)米国ではアスベストを巡る訴訟が相次ぎ、W. R. Grace は2001年に破産法11条を申請した。

Dow(アスベスト使用者として)とUCC(生産者及び消費者として)は自社に対する訴訟には防衛してきたし、今後も防衛する。
同時に、国の問題として、法律による解決を支持する。

ーーー

今回の裁判で原告側を代表している弁護士事務所 Baron & Budd, P.C.は30年以上にわたりアスベスト被害者を対象にしてきた。
The national mesothelioma (中皮腫) law firm と称し、中皮腫ニュースというホームページで被害者に呼びかけている。

55か国でアスベストを禁止しているが、米国では2011年に1,180トンが使用され、毎年3,000人が中皮腫と診断されているとしている。

今回の実績をもとに、Dowに対する訴訟も相次ぐと思われる。しかもアスベスト使用を継続する限り、患者は増え続ける。

ーーー

参考 日本のケース

2012/12/10  建設労働者アスベスト訴訟、国に初の賠償命令


2013/8/27   日揮、日本初の二酸化炭素の分離回収・貯留実証試験事業にBASFのガス精製技術を導入

BASFは8月22日、日揮との間で、BASF のガス精製技術 OASE®のライセンス契約を締結した と発表した。

日揮が苫小牧に建設する日本初のCCS (Carbon dioxide Capture and Storage:二酸化炭素の分離回収・貯留)トータルシステムの実証設備に技術をライセンスする。

出光興産北海道製油所の水素製造装置から供給される燃料ガスに含まれる二酸化炭素( CO2 )を回収するもので、年間約 20 万トンの CO2 を回収する。
また、この技術によるガス精製処理後の主に水素とメタンからなるクリーン・ガスを、CCS 設備で使用するスチームや電気などの生成に利用することができる。

BASF のガス精製技術は、その他の方法と比べて、分離回収にかかるエネルギー消費量が少なくて 済む。
ライセンスには、ガス精製技術に加え、必要な薬液と関連サービスも含まれる。

東洋エンジニアリングのホームページでは、同社は1984年にBASFのOASEプロセスのAuthorized Engineering Companyとなり、ライセンス及び基本設計の代行業務を行っているとなっている。

事情不明だが、今回は日揮が受注したため、日揮との間でライセンス契約を結んだと思われる。

ーーー

2008年5月、地球温暖化対策としてのCCSを推進するという国の方針に呼応する形で、電力、石油精製、石油開発、プラントエンジニアリング等、CCS各分野の専門技術を有する大手民間会社が結集して日本CCS調査株式会社が設立された。

経産省は2020年以降のCCS実用化(年間100万トン規模)に向けて実証試験を 計画、2008年度より複数の候補地で地質調査等を進め、2011年12月に北海道苫小牧を実証試験地として選定した。

2012年2月、日本CCS調査に二酸化炭素を含有する原料ガスから二酸化炭素を分離・回収し、圧縮から輸送、圧入、地中貯留、モニタリングまでを一貫して行う実証試験事業 を委託した。

日揮は日本CCS調査による入札の結果、原料ガスから二酸化炭素を分離・回収・圧縮し、圧入井への輸送を行う本事業の地上設備に係る設計、機材調達、建設工事および試運転役務を担当 する。

最大年間20万トンの二酸化炭素を分離・回収・圧縮する設備と地下へCO2を圧入する設備を設計・建設するとともに、2坑の圧入井 (海底下約1,000mと約3,000m)を掘削する。
納期は2016年1月末となっている。

概要は以下の通り。

ーーー

日本CCS調査のホームページでは世界の主なCCSプロジェクトを紹介している。(一部修正、補足)

  立地 圧入開始 貯留 圧入量  
ノルウェー Sleipnerガス田
(北海)
1996 海底下800m〜1000m
炭化水素貯留層の上にある深部塩水層
年間100万トン StatoilHydroが開発する天然ガスには基準(2.5%)より多い9%のCO2が含まれるため、余分のCO2を回収。

Snoehvit ガス田
バレンツ海)
2008 海底下2600m
塩水層
年間70万トン 天然ガスからCO2を分離、圧入

カナダ Weyburn

 

2000 地下1500m 年間100万トン North Dakotaで石炭ガス化で分離したCO2を323kmのpipelineで輸送し、油層に圧入 し、石油増進回収(EOR=enhanced oil recovery)に使用
アルジェリア In Salah
 
2004 地下1800m
深部の塩水層
年間100万トン 天然ガスからCO2を分離、圧入

フランス Lacq
(実証)
 
2009 地下4500m 12万トン/2年 発電プラントからのCO2を生産終了ガス田に圧入
(Totalが担当)

豪州 Otway
(実証)
 
2008 地下2050m 6.5万トン/3年 ガス田からのCO2を枯渇ガス田に圧入

米国 Mountaineer
(実証)
 
2009 地下2500m 3.7万トン/2年半 石炭火力発電プラントからのCO2を帯水層に圧入
American Electric Powerとエネルギー省がコストを 分担)

2011年に商業規模での事業化を凍結
米国での不明確な温暖化政策や経済状況の低迷を考慮


 


2013/8/28  韓国POSCO、モンゴルで石炭液化事業 

韓国の鉄鋼メーカーPOSCO は8月25日、モンゴルで同国最大企業のMCS Group と共同でCoal-to-liquid (CTL) 事業を行うことを明らかにした。現在、モンゴル鉱山局の認可待ち。

MCSとの50/50 JV Baganuur Energy Corp.で、石炭を熱分解して合成ガスを生産、これから年産10万トンのDMEと45万トンのディーゼルオイルを生産する。200MWの発電所も建設する。

投資額は20億ドルで、2018年末の完成を見込む。

ディーゼルオイルは主に炭鉱で使用される。MCS自体が南モンゴルに炭鉱を持ち、年に20~30万トンのディーゼルオイルを使用している。
DMTはLPGよりも安く、他の化石燃料と比べカーボンや粒子の排出が少なく、大気汚染対策に役立つと期待される。

POSCOはこれを通じ、世界で10位の石炭埋蔵量を持つモンゴルで資源開発の足場を確保する。

POSCOでは、これは同社のエネルギー事業をグローバルに展開するための第一歩であり、単に利益を求めるのではなく、モンゴルの開発に貢献しうる事業を築くものであるとしている。

相手のMCSは1993年設立で、現在、エネルギー、インフラ、IT、通信技術、飲料、繊維、不動産、鉱業等、幅広い事業を行っている。

モンゴルでは燃料を輸入燃料(92%はロシアから)と低品位の石炭に依存しており、低品位石炭は大気汚染の原因となっている。
POSCOとMCSは2010年以来、問題解決手段としてCTL事業を推進してきた。
昨年、カナダのHatchを使ってFSを実施した後、本年5月にBaganuur Energyを設立した。

モンゴル政府もエネルギー問題解決の手段としてCTLに期待しており、税務上の恩典等により本計画をサポートする。

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Baganuur Energyは首都Ulaanbaatarの東方 20分のBaganuur Districtに工場を建設、近くのBaganuur炭鉱の石炭を原料に年産10万トンのDMEと45万トンのディーゼルオイルを生産する。近くに鉄道と川があり、輸送に便利な場所である。

Baganuur炭鉱は政府が70%出資しており、埋蔵量は7億トン以上とされる。
今後60年は使用できるとされる。

Poscoは現在、全羅南道光陽市で年産50万トンの合成天然ガス(SNG)プラントを建設中で、2014年6月に生産開始を予定している。
同社によると、モンゴルのCTLプラントは光陽のプラントと75%は類似しているという。

POSCOは今回のCTL事業に加え、Ulaanbaatarで計画されている石炭火力IPP事業「Combined Heat and Power Plant No.5」において、フランスのInternational Power GDF Suez、モンゴルのNewcom Group、日本の双日との4社でコンソーシアムを組成、このたび優先交渉権を獲得した。

双日の発表(2013/7/6)によると、双日、GDF Suez、POSCO Energyの3社がそれぞれ30%、Newcomが10%の比率で出資する。

450MWの電気と587MWtの熱を作り出す熱電併給プラントを建設、2016年の運転開始で、Ulaanbaatarを含む中央地域における電力需要量(約960MW)の約50%を供給することが可能となる。

業界筋では、POSCOは、製鉄事業が頭打ちになっているためエネルギーや資源分野を拡大しようとしており、いろいろの事業で評判を確立したのちに、モンゴルで鉱山開発に乗り出すのではないかとみている。

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モンゴルではドイツのThyssenKruppもCTLプラントと熱回収コークス製造設備の建設についてモンゴル政府との契約を締結している。

2012年3月にモンゴル大統領がドイツを訪問した際に、ThyssenKrupp Uhdeとモンゴル政府はCTLプラントと熱回収コークス製造設備(窯出しされた赤熱コークスの顕熱を蒸気又は電気エネルギーとして回収するもの)の建設の2つの覚書を調印した。FSは既に実施済み。

同時に、ThyssenKruppはIndustrial Corporation of Mongoliaに対し、PRENFLO® 石炭ガス化技術をライセンスした。


2013/8/29 米国債、再びデフォルト懸念  

米国のJacob Lew 財務長官は8月26日、議会指導部に書簡を送り、10月半ばに米政府の資金が底をつくと警告した。

最新の見積もりでは、現在取っている特別措置は10月半ばには枯渇するし、借入上限に達するため、手持ちの現金でしか運営できなくなる。現在の予想では現金残高は約500億ドルに過ぎない。
不確定要素が多く、現金をいつ使い切るかは見積もれない。
投資家が期限のきた国債について再投資をしなければ、政府は現金不足に陥る。

借入上限引き上げは政府の支出を増やすことではなく、議会が以前に認めた支出を実施できるようにすることである。

議会のみが借入上限を引き上げられるため、米国の信用力を守るのは議会の責任である。それが出来なければ米国経済に取り返しのつかない害を与える。

議会は国に対する責任を果たし、デフォルトの危険を取り除くため、出来るだけ早く行動すべきだ。10月半前に行動すべきだ。

米国の政府債務の動きは下記の通り。

2011年に連邦政府の債務が上限の14.3兆ドルに達した。

同年7月31日、
米与野党指導者は、債務上限を2.1兆ドル引き上げて16.4兆ドルにするとともに、その条件として今後10年間で2.5兆ドルの財政赤字を削減することで合意に達した。

2011/8/3  米国、債務上限引き上げ、デフォルト回避 

与野党が具体的な削減案に合意できなかったため、2013年1月から10年間1.2兆ドルの予算カット条項が発動されることとなった。
2012年末には連邦債務は見直し後の上限16.4兆ドルに達した。
更に、2012年末で大型減税が期限切れを迎えた。

これが「財政の崖Fiscal Cliff)」である。

米与野党幹部は2012年12月31日夜、 2012年末から2013年初頭にかけて米国で減税の期限切れと政府支出の強制削減がほぼ同時に訪れる「財政の崖」への対応で、当面の回避案で合意した。

2013/1/4   米国、「財政の崖」問題を当面回避

その後の動き:

2013/2/4 米国の国債発行の法定上限を暫定的に引き上げる法案成立
  2013年5月18日までに限って
向こう3か月分の歳出に相当する額の国債の発行を政府に認める。
2013/3/1 政府予算の強制削減措置 発効

 ・ 米政府の支出を今後10年間で計1兆2千億ドルを強制的に削減
    ・ 2013会計年度(2012/10-2013/9)で850億ドルを削減
      国防費が13%、国防費以外が約9%削減

2013/3/21 暫定予算案を承認
 850億ドルの歳出強制削減を維持、削減に一定の裁量
2013/5 (2月に上限越えを認めた)約16兆7000億ドルの債務上限に達した。

現在は、デフォルトを回避するためさまざまな緊急措置を実施し、資金をやりくりしている。
年初からの富裕層向け増税、3月からの強制的歳出削減で財政状況が改善、景気回復による連邦税の増加なども役立っている。

ーーー

民主党と共和党の考え方は、税金と社会福祉について全く異なる。
2012年の大統領選挙の選挙公約となる政策綱領は以下の通り。

民主党 「成長する中間層に投資し、強い米経済を再生する」

  中間層以下には年末に期限を迎える包括減税「ブッシュ減税」を延長
  富裕層の減税は打ち切り

共和党 「アメリカンドリーム」は危機にある。政府を適切な役割に戻し、より小さく、より賢くしなくてはならない。

  最善の雇用創出計画は経済成長だ。政府による助成や一時的・人為的な雇用は提供しない。
  ブッシュ減税を延長する。中低所得者層の金利や配当、株式売却益への課税を廃止する。
  オバマ政権の医療保険改革を撤廃する。
  高齢者や低所得者向け医療保険を現在の「確定給付型」から「確定拠出型」に移行する。

オバマ米大統領は4月10日、2014会計年度(2013年10月─2014年9月)の予算教書を議会に提出した。

富裕層に対する増税や社会保障費の抑制などを通して、財政赤字を10年かけて1兆8000億ドル削減する。

大統領は、赤字削減のため民主、共和両党の妥協が必要であるとし、両党に聖域(Sacred cow)はあってはならないと述べ、富裕層に対する増税とともに、大統領としては通常なら提案しない年金の物価調整方式の変更も折り込んだ。

2013/4/13 オバマ大統領、予算教書を議会に提出

昨年末の「財政の崖」協議で富裕層増税を受け入れた共和党は、次は民主党が譲る番だとして、一段の歳出削減や社会保障制度改革を要求している。

下院多数派の野党共和党は、債務上限を引き上げる条件として大幅な歳出カットを掲げている。一部議員はオバマ政権が推進する医療保険制度改革の撤廃を求めている。

一方、オバマ大統領はいかなる取引にも応じない」と述べ、この問題を政治的駆け引きの材料とはさせない決意を示しており、大統領報道官は「議会が積み上げてきた請求書を支払う議会の責任をめぐり、議会で共和党と交渉するつもりはない」と断言した。

ーーー

なお、米国の債務残高は2000年以降、急増しているが、残高がGDPを超えたのは2011年になってからである。
GDP比でみると、イタリアでさえ130%であり、日本が突出している。


2013/8/30   福島第一原発、新型浄化装置ALPS を9月中旬に稼働へ 

茂木経済産業相は8月26日、東京電力福島第1原子力発電所で汚染水漏れが起きた現場を視察、「今後は国が前面に出る」と表明し、5項目の対策を指示した。

 1)「多核種除去設備」(Advanced Liquid Processing System:ALPS) の9月中旬からの稼働
 2)
溶接で頑丈に固めたタンクへの更新
 3)近辺の排水弁を閉じるなどの管理強化

 4)
放射線量検査のための周辺の巡回を1日2回から4回に増加
 5) 汚染水の貯蔵リスクの洗い出し

ALPSは東芝が納入したもので、汚染水に含まれる63種類の放射性物質のうちトリチウムを除く62種類を基準値以下まで除去できるとして2012年秋の稼働を予定していたが、本格運転が遅れている。

9月中旬から稼働した場合、当初計画から1年遅れということとなる。

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東京電力は2012年1月23日、福島第一原発で発生する高濃度汚染水から、ほぼすべての種類の放射性物質を除去できる「多核種除去設備」(Advanced Liquid Processing System=ALPS)を2012年秋ごろまでに設置すると発表した。年間約18万トンを処理できる見通し。

トリチウムだけは、水の一部となって存在するため除去が難しい。

2012/1/27 福島第一原発、多核種除去設備を設置 

設備は2012年10月に完成したが、原子力規制委員会による安全審査や追加の安全対策に約5カ月間を要した。

ALPSで除去される放射性物質は、濃縮してコンパクトな円筒形容器(直径約1.6m、高さ約1.9m)で保管するが、容器は樹脂製で、落下試験で中身が漏れ出るケースもあった。

2013年3月25日、 原子力規制委員会が、試運転の実施に向けた原子炉施設保安規定の変更を認可、東電は試運転(ホット試験)を月内にも開始すると発表した。

放射性廃棄物保管容器の安全確保対策は完了しており、現場で最終調整を実施してから試運転に入る。
定格流量で約4カ月間連続運転し、性能を評価した後に本格稼働に移行する 予定であった。

一日250トンを処理できる能力を持つ3系統があり、このうち、1系統で3月下旬から試運転が行われ た。
設備や運用面で大きな問題がなかったことが5月24日に開かれた国の専門家会議に報告された。

これを受けて、原子力規制庁は、残る2つの系統についても、6月中旬以降、順次、試運転を行うことを認めた。

しかし6月15日に、4月から試験運転していたA系でタンクの腐食による水漏れトラブルが発生した。

東電は7月25日に、汚染水に含まれる塩化物イオンや次亜塩素酸の影響で、厚さ約9ミリのタンクの溶接部分の腐食が進み、微細な穴が開いたことを明らかにした。
対策として、タンクの内側にゴムを張ることとし、試運転中のB系統も8月初めに停止してタンクを補修、まだ試運転を始めていないC系統も対策を取ることとし、全ての系列が停止した。

9月中旬には1基目の運転再開を目指していた。

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トリチウムは、三重水素からなる水と同型の分子構造からなる液体の放射性物質で、半減期は約12年。
水の形態で存在するため、分離は困難である。

東電ではトリチウムの除去方法について調査しているが、現在のところ使える技術はないとしている。
   http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/roadmap/images/c130426_06-j.pdf

同社はまた、本年2月28日に「福島第一原発のトリチウムについて」という発表をし、安全だとの主張をしている。

トリチウムの特性は一般的に次の通りとしている。

・化学上の形態は、主に水として存在し、私たちの飲む水道水にも含まれています
・ろ過や脱塩、蒸留を行なっても普通の水素と分離することが難しい
・半減期は12.3年、食品用ラップでも防げる極めて弱いエネルギー(0.0186MeV)のベータ線しか出さない
・水として存在するので人体にも魚介類にも殆ど留まらず排出される
・セシウム-134、137に比べ、単位Bqあたりの被ばく線量(mSv)は約1,000分の1

これに対する批判は多い。一例 東電が出してきたトリチウム安全プロパガンダを検証

 

問題はALPSで処理した水をどうするかである。

ALPSがうまく稼働すればほぼすべての種類の放射性物質を除去出来るはずだが、トリチウムは処理水に混じり込んでいる。

トリチウムの排出規制値は、経産省告示では6万ベクレル/リットル であるが、福島第一原発の汚染水には130万ベクレル/リットル 以上が含まれ、ALPS処理水も同様である。

地下水の流入は1日400トンで、流入は止まらず、汚染水は増える一方で、タンク設置も限界に達しようとしているが、ALPSでほとんどの種類の放射性物質を除去できても、トリチウムが残る限り、この問題の解決策にはならない。

政府と東電は恐らく、ALPS処理水を海洋投棄することを考えていると思われる。

仮にALPS処理水のトリチウムが130万ベクレル/リットル (規制値の22倍)とすると、ALPS処理水を汚染されていない地下水と22対1の割合で混ぜ 、規制値以下にして放出するということである。

福島第一原発で高濃度の放射能汚染水がタンクから漏れた事件で、原子力規制委員会は国際原子力事象評価尺度の暫定評価を、これまでの「レベル1」(逸脱)から「レベル3」(重大な異常事象)に引き上げた。

国際的にも注目されている。
韓国原子力安全委員会は8月29日、福島第1原発の汚染水漏れの実態把握に向け、日本に専門家を駐在させる方針を明らかにした。
 
汚染水問題をめぐっては、福島県の地元漁協が試験操業の延期を決めるなど影響が広がっている。

薄めて規制値以下にして放出するということが、国民の理解を得られるであろうか。


2013/8/31 米バイオ医薬 Amgen、同業のOnyx を買収 

Amgen Inc.は8月25日、Onyx Pharmaceuticals Inc.(オニキス)を1株当たり現金125ドル、総額 104億ドル(Onyxの現金残を考慮すると実質97億ドル)で買収すると発表した。

がん治療の有望な新薬を持つOnyxを取り込み、同分野に進出する。
昨年承認を受けたOnyxのKyprolis(
carfilzomib)は血液がんの一種である多発性骨髄腫の新薬で、アナリストによれば2021年までに30億ドル以上の売り上げが見込まれる。

OnyxはKyprolisの日本を除くグローバルな権利を持っており、米国では2019年までの独占的なorphan drug の指定を受けており、米国特許は少なくとも2025年まで有効である。

日本では小野薬品工業が2010年にKyprolisの全癌種を対象に独占的な開発・商業化の権利を取得している。
   http://www.ono.co.jp/jpnw/PDF/n10_0908_2.pdf

また、Onyxは他に3つの癌関連の製品を持つほか、開発段階のものも多い。
 ・
Bayerと共同販売している肝臓がんと腎臓がんの治療薬 Nexavar
(sorafenib)

 
・Bayerが販売している結腸直腸治療の抗がん剤新薬 Stivarga (regorafenib)

 ・Pfizer, Inc.
が開発する乳がん治療薬 Palbociclib
            2013年4月にFDAが
Breakthrough Therapy(画期的治療薬)に指定。

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Onyx は本年6月30日、Amgenから1株当たり現金120ドル(38%のプレミアム)での買収提案を受けていることを明らかにした。

同社の取締役会は財務と法律面のアドバイザーの支援を受けてこの提案を検討したが、この価格は低すぎるとし、株主の利益にならないとの結論となり、既にAmgenにこの決定を伝えたとしている。

Amgenや他の第三者からの買収提案を受けて、財務アドバイザーにOnyx買収に関心を持つ相手先との接触を任せた。

これを受け、AstraZeneca、Pfizer、Novaltis などが買収案を提示する準備を進めていると報じられた。

しかし、今回、Amgenが当初提示していた買収金額を引き上げる形で決着した。


2013/8/31  中国政府、元CNPC総経理(前政治局常務委員)の汚職をめぐる調査を開始

8月30日付の香港紙 South China Morning Post は、中国共産党指導部が周永康Zhou Yongkang前政治局常務委員の汚職をめぐる調査を開始することで合意したと報じた。

現役および退任後を含めて政治局常務委員が経済犯罪で調査を受ければ、文化大革命以降で初のケースとなる。

付記

新華社は9月1日、中国共産党中央規律検査委員会が、本年3月までCNPCの会長であった国務院国有資産監督管理委員会の蒋潔敏(Jiang Jiemin主任(閣僚級)に対し「重大な規律違反」の疑いで調査を始めたと報じた。
同氏は党で約200人しかいない中央委員を務める。薄煕来被告とも政治的に密接だったと指摘されている。

新華社は9月3日、国有資産監督管理委員会の蒋主任(閣僚級)を「重大な規律違反の疑い」を理由に罷免したと伝えた。

付記

新華社通信などは9月12日、天津市の国有企業、天津ガス集団の金建平会長が拘束され、天津市の党規律検査委員会の取り調べを受けていると伝えた。
同社は天津市で都市ガスを供給する国有企業で、天然ガスの供給をめぐってCNPCと事業提携するなど関係が深く、現地紙は「CNPC事件と関係がある可能性がある」と伝えている。

これまで中国政府が中国石油天然気集団(CNPC)と子会社PetroChinaの幹部を「重大な規律違反」で取り調べていることが報じられていた。

先ず8月26日に、中国の中央規律検査委員会の情報として、CNPC副総経理の王永春が党の規律の重大な違反で調べられていると報じら、翌8月27日には中国国有資産監督管理委員会が他の3人を取り調べていると発表、CNPCは4人の辞職を発表した。

王永春(Wang Yongchun) CNPC副総経理、大慶油田分公司総経理
李華林(Li Hualin CNPC副総経理 、子会社 昆侖能源(Kunlun Energy)会長
冉新権(Ran Xinquan CNPC副社長、長慶油田分公司總經理
王道富(Wang Daofu PetroChina 主任地質学者、勘探開發研究院(Exploration Development Institute)

参考
CNPCの現在の董事長(会長)は周吉平(Zhou Jiping)で、2013年4月にPetroChina社長から昇格した。
総経理(社長)は
廖永远Liao Yongyuan)で、副総経理は退職した2人のほかに、汪东进Wang Dongjin)、喻宝才Yu Baocai)、沈殿成Shen Diancheng)の3人がいる。

上記の4人はCNPCの元総経理で石油業界のドンとして君臨した周永康の側近(李華林・副総経理は秘書を務めていた)で、最終的に周永康を狙ったものではないかと噂されていた。

CNPC以外では、2012年12月に、周永康に抜擢された李春城・四川省党委副書記が双規(党紀律機関による幹部の拘束、取り調べ)処分となり、本年6月には長年にわたって周永康の秘書を務めた郭永祥が双規処分を受けた。

周永康は 1964年に入党、1966年に北京石油学院を卒業、1985年に石油工業部副部長(次官)となり、1988年にCNPCに転じ、1996年に総経理となった。 党に戻った後も業界で絶大な影響力を持っている。

2007年に第17期1中全会で中央政治局常務委員に昇進した。

江沢民一派の中心人物として目され、8月26日に収賄と横領、職権乱用の罪を問う公判が結審した重慶市の元トップの薄熙来(Bo Xilai)と緊密であり、薄熙来の政治局委員解任に唯一反対したと伝えられた。

薄熙来は公判で、起訴内容について繰り返し否認した。
判決は今後数週間内に言い渡される可能性がある。

習近平、李克強体制になり、昨年11月に周永康を含む旧常務委員7人は引退した。

 

South China Morning Post 紙は、調査開始決定の背景には、腐敗問題の規模や周氏一家の蓄財に対する党内の怒りが高まっていることがあるとしている。
周氏が四川省トップだった時代とCNPCに在籍していた時代が調査の中心になりそうだとしている。

周氏の息子の周斌は、薄熙来と組んだ油田事業などで多額の不当利益を得たと噂されており、周氏やその家族がこれから利益を得たかどうかが調査される見通しだという。

習近平国家主席は同調査を担当する当局者らに対し、「真相を解明するように」と命じたという。
習主席は昨年11月の就任以来、国民の不満が大きい汚職や腐敗の摘発を政権運営の柱の一つとし、権力の基盤固めを進めてきた。
「ハエも虎も一掃する」と腐敗取り締まりを宣言している。

習国家主席が自らの権力基盤を固めるため、「反腐敗を名目に石油閥に焦点を合わせた」との憶測が流れている。

 

中国共産党の新指導部体制は、太子党(高級幹部の子弟)、共産主義青年団(共青団)、上海閥の3派が並存するトロイカ体制である。

習近平国家主席は太子党
胡錦濤前主席や温家宝前首相、「リコノミクス」の李克強首相は共青団
江沢民元国家主席、周永康、薄熙来らは上海閥


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