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目次
これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。
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2016/1/1 理研に新元素113 の命名権
国際純正及び応用化学連合(IUPAC)は2015年12月30日、新元素113、115、117、118
を公式に認めた。発見者に命名権が与えられる。
新元素113(仮の名称 ununtrium=Uut) は理研チームが発見者と認定され、命名権が与えられた。
周期表に日本発の名前を、アジアの国として初めて書き加えることとなる。
1908年に当時第一高等学校教授であった小川正孝が第43番元素を発見し、ニッポニウム(Nipponium: Np)と命名した。
しかし後にそれは43番元素ではなかったことが判明し、ニッポニウムは幻の元素となった。
これは原子番号75のRheniumであった。
今回の113には、一度間違いとされた元素名ニッポニウムは使用できない。
付記
IUPACは2016年6月8日、新元素の名称案を発表した。
113 ニホニウム=Nh(Nihonium) 日本
115 モスコビウム=Mc(Moscovium)Moscow
(Joint
Institute for Nuclear Research)
117 テネシン=Ts(Tennessine) Tennessee(Oak
Ridge National Laboratory, Vanderbilt University, and the University of
Tennessee)
118 オガネソン=Og(Oganesson)
Professor Yuri
Oganessian
新元素115 (仮の名称 ununpentium=Uup)
、117(ununseptium=Uus)、118(ununoctium=Uuo) はロシアのDubna研究所とアメリカのLawrence Livermore
National Laboratory及びOak Ridge National Laboratoryの共同研究グループが発見者と認められた。
ーーー
現在、原子番号1 番の水素(H)から112 番のコペルニシウム(Cn)までと、114
番フレロビウム(Fl)、116 番リバモリウム(Lv)の計114 種類が認定されている。
自然界には92番ウランより重い原子が存在しない。93 番以降は人工的に合成され、最近では2011年6月に114 番と116
番についてロシアと米国の共同研究グループが存在を報告、元素発見の優先権について国際的な認定を受けている。
93以上の原子番号の原子核は短い時間で崩壊し、安定な別の原子核へと変化してしまう。このため、新元素の合成を証明するには、その元素が崩壊連鎖を起こして既知の原子核に到達することが重要となる。
ロシアと米国の共同研究グループは、カルシウム(Ca)のビームを、アメリシウム(Am)やバークリウム(Bk)、カリホルニウム(Cf)に照射して113、115、117、118
番を合成し、その発見を主張した。
113番元素については、「115番新元素の原子核の初合成に成功し、その崩壊連鎖上の原子核として原子番号113の原子核も発見した」と発表したが、崩壊後に既知の原子核に至っていない。
理研の森田浩介准主任研究員(現 グループディレクター、九州大教授)らは
、理研の重イオン加速器施設「RIビームファクトリー(RIBF)」の重イオン線形加速器「RILAC」を用いて、2003年9月から亜鉛(Zn)のビームをビスマス(Bi)に照射し、新元素の合成に挑戦してきた。
2004年7月に初めて原子番号113の元素合成に成功し、その後、2005年4月にも合成に成功した。
しかし、113 が崩壊してできたボーリウム(Bh)が1例の報告しかなく既知核と確定できないこと、また、観測数が
2個と少ないことを理由に認定されなかった。
その後、研究グループは、2008〜2009 年にボーリウム(Bh)を直接合成し、既知核への到達が確かであることを実験的に示した。
2012年8月12日、3 個目の113 の合成に成功し、これまでの4 回のアルファ崩壊に続き2 回のアルファ崩壊を観測、最後は原子番号101
のメンデレビウム(Md)になったことを確認した。
この113 は、これまでに理研が確認した2個とは異なる新たな崩壊経路をたどったため、113 番元素の合成をより確証づけるものとなる。
Db は、自発核分裂かアルファ崩壊で崩壊することが知られている。
前回は自発核分裂を起こしたが、今回はアルファ崩壊でLrとなり、両方を観測したこととなる。
2012/10/1 新元素
113
IUPAPが推薦する委員で組織された合同作業部会は、両研究グループの研究結果が認定基準を満たしているかを審議し、森田グループが観測した113番元素は確実に既知の原子核につながっているなどの理由から、森田グループが113番元素の発見者であるとIUPACに報告し、IUPACがそれを認めた。
2016/1/4 サウジアラビア
10兆円超の赤字予算、石化原料も値上げ
WTI原油価格12月18日には34.73ドルとなり、12月31日は37.04ドルで終わった。
2015年の平均は48.78ドル/バレルと、前年までから大幅に低下した。
この結果、産油国の財政は急激に悪化した。
2015年11月8日,IMFのラガルド専務理事は湾岸協力会議(GCC)諸国の財政相との会合で、思い切った財政改革と歳出削減の必要性を強調した。早急に付加価値税を導入する必要があるとも述べた。
サウジアラビアのサルマン国王は12月28日、閣議を開き、2016年の予算を承認した。
原油価格の低迷が続くなか、歳入が5138億リアル、歳出が8400億リアルとなり、財政赤字が3262億リアル(日本円で10兆4000億円)を上回る。
これに合わせて、財務省は2015年の予算執行の現状も発表したが、11兆7000億円を超える財政赤字になる見通しとなった。
単位:億リアル ( )は億米ドル 1リアル =0.26662米ドルで換算 |
|
2015 予算 |
2015 実績 |
2016 予算 |
収入 |
7,150 |
(1,906) |
6,080 |
(1,621) |
5,138 |
(1,370) |
支出 |
8,600 |
(2,293) |
9,750 |
(2,600) |
8,400 |
(2,240) |
赤字 |
1,450 |
(387) |
3,670 |
(978) |
3,262 |
(870) |
|
2015年については、収入が予算よりも減少し、支出が増加した結果、赤字が予算の1,450億リアルから3,670億リアルに2.5倍に膨れ上がっている。
収入減は、石油関連の収入減少によるもの。
北海ブレント原油価格は1バレル37ドル前後で、2014年の高値の3分の1という低水準で、産油諸国の財政を圧迫している。
2015年の予算では、前提となる原油価格を明らかにしていないが、収入が前年度比で約30%減少すると見ていた。
実績はこれをはるかに下回る。
サウジは、これを覚悟の上で「減産しない」との決定を行った。
支出増は、1月にサルマン新国王の即位を祝って、総額320億ドルにのぼるボーナスを国民に支払った分と、隣国イエメンに対する空爆による軍事費の拡大などが影響した。
アブドラ国王が2015年1月23日に逝去し、弟のサルマン皇太子が新国王に就任した。
サルマン国王は「親愛なるわが国民はもっと報われるべきだ、わたしからどれだけのものを与えようとも、あなたがたに相応しいだけのものを与えることはできない」と述べ、下記のボーナスを支払った。
・国家公務員(軍人を含む)に基本給2か月分
・公教育を受けている全ての学生に2か月分の褒賞
・退職者に2か月分の年金
・社会保障の対象者、障害者に2か月分の給付金
・社会保障関係機関、スポーツクラブなどへの助成金
・電気・水サービスへの200億リアルの拠出
イエメンへの軍事介入に関連した防衛・安全保障関連支出の増加は200億リアル(53億ドル)に達する。
政府は2016年の防衛・安全保障関連費として予算で最大の割合の2130億リヤルを配分している。
赤字の補填について、サウジアラビア政府は、2016年の歳出の削減と一部国有組織の段階的民営化のほか、下記の諸案を検討している。
1) 国債の発行や対外資産の取り崩し
サウジは国債の発行や外貨準備の取り崩しで急場をしのいでいるが、準備資産残高は11月時点で2兆3832億リヤルと前年同月に比べ14%落ち込んだ。IMFは2015年10月、このままでは5年以内にサウジの準備資産が枯渇すると警告している。
2) 付加価値税の導入
IMFなどは湾岸諸国に対し、VAT導入や法人税・物品税の拡大などで歳入を多様化することを求めている。
アラブ首長国連邦の財務大臣によると、湾岸協力会議(Gulf
Cooperation Council
)のメンバー諸国、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、バーレーン、クウェート、オマーン、カタールの6カ国は12月初めに会合を持ち、付加価値税(VAT)導入で大筋合意した。各国は3年以内にVATを導入する計画で、最終合意には至っていないが、健康、教育、社会福祉、及び食品(94品目)を対象外とすることで合意した。
2015/12/12 湾岸諸国が付加価値税導入で合意
3) タバコやソフトドリンクへの増税
4) 今後5年間で光熱費や水道料金などに投入されている巨額な補助金の見直し
料金を安く抑えるために投入されている補助金の見直しの一環として、サウジアラビア政府は国内のガソリンや光熱費、それに水道料金などを値上げをすると発表した。
2015年12月から2016年1月にかけて実施され、企業や大口契約者だけでなく、国民も対象となる。
このうち、
ガソリンは12月29日から値上げとなり、高オクタンガソリンはリットル当たり0.60リアルから0.90リアル(24セント)に50%アップし、低オクタンガソリンは0.45リアルから0.75リアル(20セント)に
67%アップとなる。
天然ガス、ディーゼル、ケロシンなどの油類や、補助金の大きい電気代、水道代も値上げされる。
こうした対策は、生活を直撃し、国民の不満につながるおそれがあるため、政府は慎重に検討を進めるものとみられる。
5) 石油化学原料も12月29日から大幅に値上げされた。
メタンの価格はこれまでの100万BTU当たり75セントから1ドル25セントに、エタンは75セントから1ドル75セントに引き上げられる。
(米国の最新のエタン価格は100万BTU当たり2ドル24セント)
これを受け、サウジの石化各社は影響額予想を発表した。
SABIC |
5%のコストアップ |
Saudi Arabia
Fertilizers Co (SAFCO) |
8%のコストアップ |
Yanbu
National Petrochemical Co (Yansab) |
6.5%のコストアップ |
National
Industrialisation Co (Tasnee) |
190百万リアル (51百万ドル) |
Saudi Cement
Co |
68百万リアル (18百万ドル) |
Petro Rabigh |
300百万リアル (80百万ドル) |
|
|
付記 |
|
Saudi International
Petrochemical Co (Sipchem) |
120百万リアル (32百万ドル)
|
2016/1/5 東芝メディカルシステムズの争奪戦?
東芝は2015年12月21日、画像診断装置などを手掛ける全額出資子会社の東芝メディカルシステムズを売却する方針を明らかにした。「少なくとも50%以上、場合によっては100%の株式売却も考える」としている。売却額は数千億円規模になる見通し。
付記
東芝は3月9日の取締役会で東芝メディカルシステムズの売却先としてキヤノンを選んだ。独占交渉権を付与し、条件の詳細を詰める。
キヤノン側が示した7000億円規模の買収額や、事業の重複が少なく、独占禁止法の審査が容易で売却手続きが円滑に進むとみられる点を重視した。
3月4日に実施した第2次入札にはキヤノン、富士フイルム、コニカミノルタと英投資会社Permiraの企業連合の3陣営が応札していた。
付記
キャノンは3月17日、譲渡契約書を締結したと発表した。購入金額は約 6,655 億円。
これとは別に、東芝アメリカが保有する東芝アメリカメディカルシステムズ等の株式を東芝メディカルシステムズに約225億円で譲渡した。
同社は2014年2月のヘルスケア事業戦略説明会では、東芝の目指す姿として、「エネルギー」「ストレージ」に加え「ヘルスケア」を第3の柱としてスマートコミュニティを実現するとしていた。
しかし、今後は原子力事業やNAND型フラッシュメモリーに経営資源を集中させる方針で、ヘルスケアは売却による財務体質の改善を優先させる。
同社の室町社長は「メモリーは今の市況は厳しいが、将来は成長する。原子力発電所も世界ではある程度、新設が進む」と説明した。
半導体事業について分社化で収益力強化を図る考えがあることを改めて示唆した。原発事業のうち国内向けが中心の沸騰水型軽水炉(BWR)については他社との連携の可能性は排除しない」としつつも、「まだ白紙だ」と述べるにとどめた。
参考 2015/12/8 東芝の原子力事業
東芝メディカルシステムズはコンピューター断層撮影装置(CT)、磁気共鳴画像装置(MRI)、超音波診断装置などに強みを持ち、画像診断機器全体の国内シェアは28%で首位、世界でもシェア12%で4位となっている。
2016年3月期の売上高は4400億円、営業利益は150億円を見込む。
関係者によると、ソニー、キャノン、富士フィルム、英GE Healthcare
などが候補に挙がっており、Kohlberg Kravis Roberts (KKR) などのファンドも関心を寄せている。
東芝では今後入札を実施し、速やかに売却を完了させたい意向で、2016年1月の早い時期に売却条件などの情報を開示するとしている。
ーーー
東芝が売却を富士フイルムホールディングスに打診していることが分かった。
富士フイルムは健康・医療部門などに注力しており、デジタルX線画像診断や超音波診断装置など比較的小型の医療機器に強みを持っている。東芝側は大型機器に強く、事業統合による相乗効果は大きい。
富士フィルムのヘルスケア部門
東芝メディカルシステムズは、富士フイルムとのつながりが深
い。2002年3月に富士フイルムグループのフジノン(旧富士写真光機)と東芝メディカルシステムズが「フジノン東芝ESシステム」(富士フイルム60%、東芝メディカル40%)を設立し、東芝グループの内視鏡事業の一部を継承した。
東芝は内視鏡事業から全面撤退を発表、2009年3月末にフジノン東芝ESシステムの株式をフジノンに売却した。
富士フイルムは内視鏡事業をメディカル・ライフサイエンス事業の中でも重点分野として位置付け、2008年10月にフジノンより富士フイルムメディカルに移管し
て開発・製造・マーケティング機能を強化しており、2009年4月にフジノン東芝ESシステムを富士フイルムメディカルと統合した。
また、富士フィルムと東芝のメインバンクは三井住友銀行である。
ーーー
日立製作所も東芝メディカルシステムズの買収を検討している。
日立はヘルスケア事業を成長戦略の柱と位置付けており、東芝メディカルを取り込み、事業を拡大したい考え。
日立は子会社の日立メディコがMRI やCT
を手がけているが、世界シェアは数%にとどまり、GEや独Siemens、オランダのPhilips
などの後塵を拝している。
東芝メディカルの買収により、3強を追い上げる考え。
日立は2014年度で3,379億円だったヘルスケア事業の売上高を2018年度には6千億円に引き上げる計画で、診断機器事業の拡大を図るとしている。
2016/1/6 中国、日本などの海運企業に独禁法違反で罰金
中国の国家発展改革委員会(NDRC)
は12月28日、日本やチリなどの海運企業8社が独占禁止法に違反して輸送価格を不正につり上げたとして、このうちの7社に対して計4億700万元(約77億円)の罰金を科すと発表した。
発表によると、8社は2008年から2012年にかけて、電話やメール、会議などを通じて、自動車や建設機械を運ぶ大型貨物船の中国と北米、欧州などを結ぶ航路の輸送費について協議し、価格を不正につり上げた。
8社は違法行為を認めて調査に協力したため、罰金額は軽減され、日本郵船は免除された。(法律上の最高は売上の10%)
各社に科す制裁金は下記の通りで、同貨物船による中国市場での2014年度売上高の4〜9%に相当する金額となっている。
|
罰金 |
売上高比 |
罰金額 |
1. 調査協力グループ |
|
|
日本郵船 |
免除 |
0 |
川崎汽船 |
4% |
2,398万元 |
商船三井
(Mitsui
OSK Lines) |
7% |
3,812万元 |
2. 違反の大きいグループ |
Eukor Car Carriers
(韓国) |
9% |
2億8,400万元 |
Wallenius Wilhelmsen Logistics
(ノルウェー) |
8% |
4,506万元 |
3. 違反度が少ないグループ |
|
|
イースタン カーライナー |
5% |
1,127万元 |
Compania Sud Americana de Vapores
(チリ) |
6% |
308万元 |
CCNI (上記の子会社) |
4% |
120万元 |
|
|
|
合計 |
|
4億 671万元 |
このほか、ノルウェーの Hoegh Autoliners も調査を受けたが、カルテルに参加していないことが判明した。
イースタン
カーライナーは主に東南アジアを中心とした海上輸送サービスが中心の海運会社で、主要株主は商船三井、辰巳商會、東陽倉庫など。
ーーー
このカルテルを巡っては日本の公取委、米司法当局や欧州連合も調査している。
日本の公取委は2014年3月18日、自動車運送業務を行う船舶運航事業者に対し、独禁法違反行為を行っていたとして、排除措置命令及び課徴金納付命令を行った。
|
北米航路 |
欧州航路 |
中近東 |
大洋州 |
課徴金 (千円) |
日本郵船 |
○
4,022,420 《30%》
|
○ 3,876,500《30%》 |
○
3,549,190 《30%》 |
○
1,652,960 《30%》 |
13,101,070 |
川崎汽船 |
○
1,918,910 《30%》 |
○
1,561,430 《30%》 |
○
1,155,090 《30%》 |
○
1,062,960 《30%》 |
5,698,390 |
Wallenius Wilhelmsen Logistics (ノルウェー)
|
○
54,350 |
○
3,441,360 |
|
|
3,495,710 |
日産専用船 |
|
○
423,310 《30%》 |
|
|
423,310 |
商船三井 |
○
《100%》 |
○
《100%》 |
○ 《100%》 |
○
《100%》 |
− |
合計 |
5,995,680 |
9,302,600 |
4,704,280 |
2,715,920 |
22,718,480 |
|
《 》は減免率 日産専用船は商船三井、日産自動車、ノルウェーのHoegh
AutolinersのJV |
2014/3/22 公取委、自動車運送の船舶運航事業者に課徴金納付命令
米国も米国発、米国着の乗用車・トラックなどの roll-on, roll-off
cargo の輸送のカルテルの調査を行った。
これまでに川崎汽船を含め3社が有罪を認め、合計136百万ドルの罰金支払いで同意している。
また、日本人3名が禁固刑と罰金刑を受けている。
|
罰金
(百万$) |
決定日 |
|
個人 |
禁固刑 |
罰金 |
決定日 |
Compañía Sud Americana de Vapores S.A.(チリ) |
8.9 |
2014/2 |
|
|
|
|
川崎汽船 |
67.7 |
2014/9 |
H. T. |
1年6ヶ月 |
2万ドル |
2015/1 |
T. Y.
|
14ケ月 |
2万ドル |
2015/2 |
日本郵船 |
59.4 |
2014/12 |
S. T. |
15ケ月 |
2万ドル |
2015/3 |
2015/2/3
米、海上貨物輸送カルテルで日本人に禁固刑
なお、米司法省は2015年10月6日、海上貨物輸送カルテルで新たに3人(川崎汽船1名、日本郵船2名)を起訴した。
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2016/1/7 素材・化学産業における新事業創出プラットフォームの確立を目指すVenture Capitalの設立
産業革新機構(INCJ)は1月4日、素材・化学産業における新事業創出プラットフォームの確立を目指すVenture Capitalの設立を発表した。
1) Venture Capital ユニバーサル マテリアルズ インキュベーター(UMI) を設立(2,000万円を上限とする出資)
2) UMIがUMI 1号投資事業有限責任組合(UMI 1号ファンド)を設立
INCJが60億円を上限とする戦略的LP投資
宇部興産、積水化学工業、デクセリアルズ、DIC、日本触媒がLP出資
その他の日本の大手素材・化学企業からもLP出資を受け入れる予定
- UMI 1号ファンドは、素材・化学産業の大企業やベンチャー、アカデミアが保有する優れた技術や事業に着目し、これらの受け皿となり積極的な事業化の支援を行う新事業創出プラットフォームの確立を目指す。
テーマの発掘には
INCJと協力関係にある素材・化学分野に強いアカデミアを中心に、大企業やベンチャー企業との幅広いネットワークを活用するほか、INCJが相互協力の覚書を締結している物質・材料研究機構
(NIMS)や、同様にINCJと相互協力協定を締結している科学技術振興機構(JST)、産業技術総合研究所(AIST)、新エネルギー・産業技術総合開発機構
(NEDO)、さらに素材・化学分野に強い大学などの各アカデミア関連機関とも連携していく。
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- 出資企業のデクセリアルズ
(DexterousとMaterialsとを組み合わせた造語) の前身はソニーケミカルで、
2000年1月にソニーの完全子会社となり、上場廃止
2006年7月1日にソニー宮城と合併し、ソニーケミカル&インフォメーションデバイスと改称
2012年9月にVGケミカル(日本政策投資銀行
60%、ユニゾン・キャピタルの投資ファンド 40%)に売却され現社名に変更
付記
ユニバーサル・マテリアルズ・インキュベーター(UMI)は2019年11月7、イスラエルの国立ヘブライ大学と技術提携した。同大学の持つ素材関連の基礎技術を、ファンドに出資する国内化学会社などに紹介して、事業化を支援する。
ヘブライ大学の技術移転機関(TLO)の「Yissum」から得た、同大発のスタートアップや基礎技術に関する情報を日本の化学会社などに提供、スタートアップとの協業も促す。
UMIは同時に自社が運営するファンドを通じて、Yissumがスタートアップ育成のために設立したファンドに1億円を出資する。
ーーー
産業革新機構(Innovation Network Corporation of Japan : INCJ)は2009年7月に産業競争力強化法(平成25年法律第98号)に基づき設立された。
我国と日本企業にとって、「オープンイノベーション(今まで慣れ親しんできたビジネスモデルに拘ることなく、従来の業種や企業の枠にとらわれずに、その発想と行動において自己変革と革新を推し進めていくこと)」が重要な鍵となるとの考えに基づき、次世代の国富を担う産業を創出するため、産業界との連携を通した様々な活動を行う。
2016/1/8 コスモ石油、丸善石油化学を連結子会社化
コスモエネルギーホールディングスは1月7日、持分法適用関連会社の丸善石油化学の連結子会社化に向け、公正取引委員会に対し、株式取得に関する計画届出書を提出したと発表した。
今後、公取委による企業結合審査と並行し、丸善石油化学の他の株主と株式の譲受けに向けた協議を継続し、3月末までに、株式譲渡契約を締結し、連結子会社化することを目指す。
石油化学事業を取り巻く環境は、今後厳しくなることが懸念されるが、連結子会社化により、石油精製事業と石油化学事業の一体運営を進め、各事業の競争力強化を図る。
両社の関係は次のとおり。
丸善石油化学の現在の株主は下記の通り。
|
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付記 |
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|
コスモ |
40% |
→48% |
コスモエネルギーホールディングス 30%、コスモ松山石油 10% |
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宇部興産 |
12% |
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デンカ |
12% |
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JNC |
12% |
→ 4% |
(チッソ) |
|
東ソー |
5% |
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KHネオケム |
2% |
|
旧称 協和発酵ケミカル
2010/10/27
協和発酵キリン、子会社の協和発酵ケミカル売却で合意 |
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三菱東京UFJ |
4% |
|
|
|
みずほ |
4% |
|
|
|
自己株式 |
9% |
|
|
|
付記
コスモは3月11日、連結子会社化を完了したと発表した。
チッソ子会社JNCから8%分を取得した。
これにより、議決権ベースで52.7%所有となった。 (40+8)/91=52.7%
|
千株 |
持株比率 |
議決権 |
コスモグループ |
8,000 |
40 |
|
取得 |
1,600 |
8 |
|
合計 |
9,600 |
48 |
52.75 |
JNC(チッソ) |
2,400 |
12 |
|
売却 |
-1,600 |
-8 |
|
合計 |
800 |
4 |
4.40 |
宇部興産 |
2,400 |
12 |
13.19 |
デンカ |
2,400 |
12 |
13.19 |
東ソー |
1,000 |
5 |
5.49 |
KHネオケム |
400 |
2 |
2.20 |
三菱東京UFJ |
800 |
4 |
4.40 |
みずほ銀行 |
800 |
4 |
4.40 |
自己株式 |
1,800 |
9 |
ー |
合計 |
20,000 |
100 |
100.00 |
丸善石油化学は1959年に設立された。
1960年10月にルルギのエチレン技術導入の承認を受け、宇部興産(LDPE)、新日本窒素(アセトアルデヒド、PPほか)、電気化学(SM、PS、ABSほか)、日産化学(高級アルコール)、日本曹達(EO/EG)と丸善石油化学コンビナートを形成した。
1964年に第1エチレンプラント、1969年に国内初の年産30万トンの第3エチレンプラントを完成。
1994年には年産
60万トンと国内最大の生産能力を誇る第4エチレンプラントを、三井化学・住友化学とのJVの京葉エチレンとして完成した。
コンビナートの現在の主な製品とメーカー、過去の経緯は下記の通り。
製品 |
社名 |
株主 |
能力
千トン |
丸善石化 |
その他 |
エチレン |
|
丸善石化 |
100% |
|
525 |
|
京葉エチレン |
55% |
住友化学 45% |
768 |
住友化学が50%+α を引取
(当初は三井化学が22.5%出資、25%引取) |
LDPE |
宇部丸善ポリマー
|
50% |
宇部興産 50% |
LD 123
LL 50 |
宇部興産のLDPE事業を分離 |
HDPE |
|
丸善石化 |
100% |
|
111 |
1981 日産丸善ポリエチレン(日産化学 51%、丸善石化
49%)
1991 丸善石化 100%、丸善ポリマーと改称
2005 丸善石化が吸収合併 |
|
JNC石油化学 |
ー |
JNC 100% |
63 |
旧 チッソ石油化学 |
|
京葉ポリエチレン |
50% |
JNC石化 50% |
ー |
上記2社の製品の共同販売会社 |
EO/EG |
丸善石化 |
100% |
|
115 |
1963 日本曹達100%の日曹油化でスタート
1985 日曹油化
50%、丸善石化 50%で 日曹丸善ケミカル
1999 丸善石化が日曹油化(四日市でEO)を買収
2000 日曹油化と日曹丸善ケミカルが合併、丸善ケミカル
2005 丸善石化が吸収合併 |
VCM |
京葉モノマー |
18.75% |
旭硝子 56.25%
クレハ 25.00% |
200 |
1993/6 旭硝子75%、丸善石化 25%で設立
1995/7 クレハ参加(引取枠5万トン)
2003/1 クレハがPVC商権を大洋塩ビに譲渡
(京葉モノマー出資はそのまま、VCMは塩化ビニリデン用を除き、大洋塩ビが引取) |
SM |
千葉スチレンモノマー |
ー |
デンカ 100% |
270 |
当初、電気化学 60%(162千トン)、住友化学
40%(108千トン)
2012 住化離脱、デンカは自社プラント(240千トン)を停止 |
PP |
日本ポリプロ |
ー |
日本ポリケム 65%
JNC 35% |
250 |
2003年 日本ポリケム(三菱化学 65%/東燃化学 35%)
とチッソが事業統合
その後、日本ポリケムは三菱化学 100% |
ブタジエン |
千葉ブタジエン |
50% |
宇部興産 50% |
170 |
有機化学製品 |
五井化成 |
50% |
日立化成 50% |
|
1972 丸善石油と日立化成が設立
1984 丸善石化が丸善石油から譲受 |
ミックスキシレン |
CMアロマ |
35% |
コスモ石油 65% |
|
その他 |
丸善石化 |
|
|
|
ーーー
石油業界では、出光興産と昭和シェル、JXホールディングスと東燃ゼネラル石油の経営統合が発表された。
2015/11/16 出光興産と昭和シェル、経営統合に関する基本合意書締結
2015/12/4
JXホールディングスと東燃ゼネラル石油の経営統合
コスモは、これらの発表の前に、千葉で東燃ゼネラル石油と、四日市で昭和シェルグループの昭和四日市石油との事業提携を発表している。
千葉では共同事業会社へ精製設備を一元化し、その際に、コスモの2系列のうちの1系列(100千バレル/日)を廃棄する。
四日市では、今後想定される石油需要減少および高度化法二次告示に対応するため、コスモ四日市の常圧蒸留装置1基を停止する。
上記の経営統合で、これらの事業提携に変化があるのかどうか不明(現在のところ、発表はない)
各社の製油所とトッパー処理能力は下記の通り。(千bbl/d)
|
トッパー処理能力 |
|
当初 |
高度化法 |
現状 |
東燃ゼネラル石油 |
川崎 |
335 |
268 |
258 |
2015/3/31 10 削減 |
堺 |
156 |
156 |
156 |
|
和歌山 |
170 |
132 |
132 |
|
合計 |
661 |
556 |
546 |
|
極東石油工業 |
千葉 |
175 |
152 |
152 |
|
東燃グループ合計 |
836 |
708 |
698 |
|
|
コスモ石油 |
千葉 |
旧 丸善 |
240 |
240 |
220 |
No.1 100 →今回廃棄 |
No.2 120 |
四日市 |
旧 大協 |
175 |
112 |
132 |
No.5 63 |
→いずれか1基を停止 |
No.6 69 |
堺 |
旧 丸善 |
80 |
100 |
100 |
|
坂出 |
旧 アジア |
140 |
0 |
0 |
|
コスモ石油合計 |
635 |
452 |
452 |
|
|
昭和四日市石油 |
四日市 |
205 |
255 |
255 |
→コスモ石油に石油製品・半製品を供給 |
西部石油 |
山口 |
120 |
120 |
120 |
|
東亜石油 |
京浜 |
70 |
70 |
70 |
|
昭和シェル |
扇町 |
120 |
0 |
0 |
|
昭和シェル合計 |
515 |
445 |
445 |
|
2015/5/21 コスモ石油、千葉と四日市で精製能力半減
2016/1/9 韓国の製薬会社、日本の富士製薬に初のバイオシミラー技術輸出
韓国の製薬会社、鐘根堂(Chong Kun Dang
Pharmaceutical)は1月5日、日本の富士製薬工業との間で、持続型赤血球造血刺激因子製剤「ダルベポエチンアルファ」のバイオ後続品「CKD−11101」
の日本国内での独占開発、製造及び販売に係るライセンス契約を締結したと発表した。
富士製薬工業も同日、発表した。
「ダルベポエチンアルファ」は協和発酵キリンが開発したもの(商品名:ネスプ)で、腎性貧血の治療に用いられる持続型赤血球造血刺激因子製剤であり、保存期慢性腎臓病および腹膜透析の腎性貧血患者に対し貧血の症状を改善する目的で、日本国内で広く使用されている。
赤血球や白血球の元となる細胞が「赤血球へ変化せよ」というシグナルを受け取ることにより赤血球の細胞へと変化するが、このシグナルとなるのがエリスロポエチン(EPO)という物質である。
エリスロポエチンは腎臓で生成されるが、腎臓の機能が落ちている慢性腎不全の患者では、エリスロポエチンを産生する能力も落ちているため、赤血球が作られず、貧血に陥る(腎性貧血)。
腎性貧血を治療するため、エリスロポエチンと同じ働きをする物質を外から補う薬は今までも存在していたが、半減期が短いという欠点がある。
半減期を長くすることで週に1回の投与にした薬がネスプである。
ネスプの世界市場規模は約2500億円に達する。
鐘根堂では、「ネスプのバイオシミラーの中でCKD-11101の開発が最も先行している」とし、「日本市場に参入することによって、グローバル市場に進出する足がかりをつくった」と強調した。
鐘根堂は2018年の発売を目標にCKD-11101の臨床第V相試験を進行中。
ーーー
富士製薬は1965年設立の医薬会社で、製品は下記の通り。
急性期医療分野
非イオン性 尿路・血管造影剤
非イオン性MRI用造影剤
バイオ後続品 遺伝子組み換えヒト顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)製剤「フィルグラスチムBS注シリンジ『F』」
女性医療分野
月経困難症治療薬
不妊症治療薬
体外診断用医薬品
CKD−11101は、富士製薬が2013年に発売した遺伝子組換えヒト顆粒球コロニー形成刺激因子(G-CSF)製剤の「フィルグラスチムBS注シリンジ「F」」に次いで開発するバイオ後続品になる。
フィルグラスチムは、血液中の好中球の産生や機能を高める作用等を持ち、がん化学療法による好中球減少症治療等の新たな選択肢となる。
富士製薬がジーンテクノサイエンスと共同で開発を開始し、その後持田製薬と共同で開発した。
日本化薬とテバ製薬も2013年2月に同剤のバイオシミラーの製造販売承認を取得している。
欧州各国でTeva Pharmaceutical が販売しているバイオシミラーと同じ原薬を使用する。
2016/1/9 中国の2015年のCPI、前年比 +1.4%に止まる
中国の国家統計局は1月9日、中国の消費者物価指数(CPI)と生産者物価指数(PPI)を発表した。
2015年の年間のCPIは前年比+1.4%と、2009年以来の低い伸びにとどまり、政府が掲げる通年の目標の+3%(2014年の+3.5%から引き下げたもの)を大きく下回った。
また、通年のPPIは前年比 -5.2%で、2014年の前年比 -1.9%
から更に大きく減少した。
製品価格の落ち込みで企業の実質的な金利負担が高まり、新規投資などが鈍る悪循環が生じている。
|
2015/12
前年比 |
2015年間
前年比 |
2014年間
前年比 |
CPI |
+1.6% |
+1.4% |
+2.0% |
(うち食品) |
(+2.7%) |
(+2.3%) |
|
( 非食品) |
(+1.1%) |
(+1.0%) |
|
PPI |
-5.9% |
-5.2% |
-1.9% |
2016/1/11 米司法省、DuPontの企業秘密盗難めぐり中国の攀鋼集団を起訴
米司法省は1月5日、DuPontの塩素法酸化チタンに関する企業秘密を不正に取得したとして、中国の鉄鋼企業の攀鋼集団(Pangang
Group)を起訴した。
攀鋼集団は四川省に本拠を置く企業で、鉄鋼のほか、子会社でバナジウムやチタンを生産する。
サンフランシスコ連邦裁判所に提出された起訴状によると、攀鋼集団は、DuPont のコンピューターに不正アクセスしたハッカーが得た情報を入手したとして、経済スパイの共謀罪と未遂罪が問われている。
攀鋼集団の技術者が2011年に「DuPontのコンピューターに不正にアクセスして入手した情報」を含む資料を中国から米国に持ち込んだという。
ーーー
攀鋼集団は2012年にもDuPontの塩素法酸化チタンに関する企業秘密を盗んだ容疑で起訴されている。
サンフランシスコの連邦陪審院は2012年2月8日、攀鋼集団とその子会社3社及び米企業1社を、商業機密窃取の疑いがあるとして起訴した。
また中国系アメリカ人夫婦2人、デュポン前職員2人が起訴された。
起訴されたのは、
攀鋼集団と子会社の攀鋼バナジウムなど
Robert J. Maegerle(元DuPont社員)
Tze Chao(同上)
Walter &
Christina Liew(夫婦)
USA Performance Technology Inc. (Walter Liewの経営していたコンサルタント会社)
中国系アメリカ人夫婦が2人のDuPont元社員からDuPontの二酸化チタンに関する商業機密を手に入れ、攀鋼に売却した疑い。
Liewの貸金庫にあった書類には、Liewは1991年に中国政府の役人から中国で二酸化チタン工場を建設するための技術の取得を依頼されたと書かれている。
検察側はLiewと会った中国人の一人は中国共産党の高官で、その後政治局入りをしていることを明らかにした。
検事は論告で、中国は二酸化チタンの能力が不足しており、この技術の確保が経済的にも科学的にも必要であるが、DuPontが中国にライセンスする気がないため、中国政府はこれを盗もうとしたとしている。
1998年に Maegerle
は二酸化チタン製造プラントの設計に必要なプロセスや機器などのDuPontの秘密情報を Liew に渡した。
2005年にMaegerleはDuPontの塩素法プロセスに関する秘密情報を送った。
2008年にMaegerle、Liew、Tze
Chaoは攀鋼集団に、中国で年産10万トンの二酸化チタンのプラントを建設するための資料を送った。
しかし攀鋼集団については、検察側が容疑を通知するやり方が法律上は不十分であったとして、判事が起訴を却下した。
攀鋼集団側の弁護士も出廷したが、米国の司法が中国企業を裁くことは出来ないと主張、司法権についての争いのためだけの出廷だとした。
この事件では、関与した個人は全て有罪となっており、Walter Liew は禁固15年となった。
2012/3/15 中国企業によるDupontの二酸化チタン技術の産業スパイ事件
今回の起訴状によると、攀鋼集団と身元不明のコンピューターハッカーは、上記のLiew夫妻などと並行してDuPontの機密を盗もうとした。
ーーー
DuPontは2013年7月に統合応用科学戦略を全事業で展開するための人事を発表したが、二酸化チタン事業を含む Performance
Chemicals 事業をどうするかを戦略的に検討することを明らかにした。
スピンオフ、売却、その他の取引により同事業の全体又は一部分を分離することを検討するとしていたが、2015年7月1日にThe Chemours Company
としてスピンオフし、New
Yorkで上場した。
2013/7/29 DuPont、Performance
Chemicals 事業の売却を検討
Pangang
Titaniumによると、2014年末時点での酸化チタン能力は16万トンで、更に10万トンのプラントを重慶市に建設中で、2015年末には総能力は26万トンになる。
DuPont に関しては、同社の有機ELに関する企業秘密を盗んで母校の北京大学に持ち帰ろうとしたとして中国生まれの研究員Hong
Mengが2010年10月に禁固14か月となっている。
2009/9/12 DuPont、産業スパイを摘発
2016/1/12 タイのIndorama Ventures、BPのアラバマのPX、PTA、NDCコンプレックスを買収
タイのIndorama Ventures
は1月6日、BPのアラバマ州Decatur のPX、PTA、NDCコンプレックスを買収する契約に調印した。
買収する事業は下記の通りで、全てBPの独自技術を使用している。
このうちNDC(ナフタレンジカルボン酸ジメチルエステル)はBPが世界で唯一、商業生産しているもので、機能性樹脂やフィルムに使用される。
Indorama は米国でのPET製造のため、AlphaPet
Inc.を設立、BPのDecatur工場に隣接して432千トンのプラントを運営している。
原料のPTAはBPから供給を受けている。
2007/4/14 タイのIndorama
Polymers、北米でPET工場新設へ
今回の買収で、DecaturでPX、PTA、PETの一貫生産を行うこととなる。
同社では今回の買収をProject AlphaPet U
と称している。
ーーー
BPは収益性改善と長期的成長の観点からグローバルな石油化学事業の見直し(BP技術を使用するワールドクラスで、低コストの設備に集中する)を決め、2015年11月にこのコンプレックスの売却を決めたと発表していた。
これにより、BPは南カロナイナ州Cooper
RiverのワールドクラスのPTA(2系列計130万トン)設備と、テキサス州Texas
Cityの原料パラキシレン、メタキシレン設備(合計能力 150万トン)に投資を集中する。
欧州ではベルギーのGeel (PTA 130万トン、PX
70万トン)にアップグレードのための投資を行う。
中国では2015年7月3日、広東省のBP
珠海ケミカル(BP 85%、Zhuhai Port 15%)
の第3期(125万トン)の生産開始の式典を行った。
これは1系列では世界最大で、BPの最新技術を世界で初めて使用する。
第1期 35万トン、第2期110万トン(当初 90万トン)と合わせ、合計能力は270万トンとなった。
2011/2/22 BP、中国のPTA事業を拡大
ーーー
この買収はIndorama
Venturesにとって、2015年1月以来、8つ目の買収となる。
|
|
相手先 |
|
@ |
PET resin plant
|
Polyplex (Thailand)
|
PET 252千トン |
A |
Performance Fibers Asia |
Sun
Capital Partners Inc (中国) |
Tyre
fabrics メーカー
中国第二位の工場を持つ。 |
B |
Bangkok Polyester PCL
|
|
PET
(買収によりタイでのシェアが43%→58%) |
C |
カナダのPTA事業 |
Cepsa Química |
600千トン(カナダ唯一のPTA工場) |
D |
Ethylene cracker (Lake Charles,
LA)
(休止中) |
ルイジアナ州 |
エチレン 370千トン
プロピレン 30千トン
175百万ドルを投じ、手直し、
シェールガス利用で再開 |
E |
スペインのPIA、PTA、PET事業 |
CEPSA Spain |
PIA 220千トン
PTA 325千トン
PET 175千トン |
F |
Micro Polypet Private Limited
(MicroPet)(インド) |
|
PET 216千トン |
今回のBPからの買収で、同社の北米のPTA能力は162万トンとなる。
付記 Dについて
2015年9月、Occidental Chemicalから
Lake Charles近辺の休止中のクラッカーを買収した。
タイのIndorama Ventures Public Company Limited (IVL) が76%、Indorama
Corporationが24%を出した。
2018年7月中に再開する。
米国では、Indoramaは既に、Invistaから南カロライナ州SpartanburgのPETとポリエステルステープルの工場と、メキシコ子会社Grupo
Artevaの同事業を、またClear
Lake, TexasにEO/EGの設備を持つOld World のパートナーシップの100%を買収している。
Invistaから
1. Spartanburg
工場
PET、Specialty
Polymers、Fibers、Film
の製造設備(能力
470千トン)
2.
メキシコ子会社Grupo
Arteva 及びその子会社の事業
PET、Specialty
Polymers、Fiber
の製造設備(能力
535千トン)
Old World
Product |
Capacity
(tons) |
EO |
435,000 |
|
|
最終製品 |
|
Purified EO |
204,000 |
MEG |
358,000 |
DEG |
64,000 |
TEG |
6,400 |
2010/11/18 タイのIndorama、米国と中国でポリエステル等の工場を買収
今後稼動するエチレンを含めると、北米での活動は下記の通りとなり、大きなシナジー効果が期待できる。
Indorama Group は1974年にMohan
Lal Lohia (ML
Lohia)によりインドで設立され、インド、インドネシア、タイなどでPTA、PET、ポリエステルなどの事業を拡大した。
ML Lohia
は事業を3人の息子に分割した。長男OP
Lohiaはインド、次男
SP Lohia はインドネシア、三男
Aloke Lohia (APL)
はタイを受け継いだ。同じような事業を行っているが、それぞれが独立して事業を行っている。
1月8日付けの日本経済新聞は「アジアひと未来(6)」で、
「国境なき民、世界駆ける インドラマのロヒアCEO」というタイトルでIndorama Ventures のAloke
Lohia を取り上げている。
2015年11月、インドのニューデリー郊外。タイの石油化学大手インドラマ・ベンチャーズのグループ最高経営責任者(CEO)、アローク・ロヒア(57)は間もなく買収する工場を視察し、愛用の電子たばこの煙をくゆらせた。異国で起業して27年。進出21カ国目で故郷へ錦を飾った。
同社はペットボトル用樹脂(PET)で世界首位。飲料容器の6本に1本へ原材料を供給する。供給網は南米を除く4大陸に広がり、米コカ・コーラやペプシコの世界戦略の「黒子役」を担う。
父は印西部のマルワール地方出身。その商才から「インドの近江商人」と称されるマルワリ商人で、農産物や繊維を世界に売り歩いた。ロヒアの姉は神戸生まれだ。いったんビルマ(ミャンマー)に居着いたが、1962年の軍事クーデターで追われた。アジアを転々とした後、インドネシアに紡績工場を構えた。
家業を手伝う息子3人のうち2人に、父はインドとタイで起業を命じた。リスク分散のためだ。550万ドル(約7億円弱)を渡されたロヒアの行き先はタイ。88年、29歳で創業し、先進国の石化大手には片手間だったPETを主力に据えた。
「息子全員をインドネシアに置かなかった父を思い出した」というロヒアは03年の米企業買収を合図に世界進出を始めた。
ルクセンブルクが本拠の鉄鋼世界最大手、アルセロール・ミタルCEOのラクシュミ・ミタル(65)はロヒアの義姉の兄。共にインドネシアに住み着いたマルワリ商人の父同士が縁組した。息子2人は買収に次ぐ買収で世界の頂上に立った。
2016/1/13 オバマケア廃止法案
米下院は1月6日、オバマ大統領の看板政策である医療保険制度改革(ObamaCare)を廃止する法案を240 対
181の賛成多数で可決した。
廃止法案は上院で昨年12月3日に可決済みで、オバマ大統領のもとに送られた。
法案にはObamaCareの廃止と、望まない妊娠・出産や性病の拡散を防止すべく設立されたNPOのPlanned
Parenthood への補助金を停止する内容が含まれる。
このNPOには、人工妊娠中絶された胎児の臓器を研究者に売買していたとの疑惑が取り沙汰されている。
議決は下記の通り。
|
上院(2015/12/3) |
|
下院(2016/1/6) |
共和党 |
民主党 |
無所属 |
合計 |
共和党 |
民主党 |
合計 |
賛成 |
52 |
0 |
|
52 |
239 |
1 |
240 |
反対 |
2 |
44 |
1 |
47 |
3 |
178 |
181 |
棄権 |
|
|
1 |
1 |
4 |
9 |
13 |
合計 |
54 |
44 |
2 |
100 |
246 |
188 |
434 |
上院では審議入りにはフィリバスターを避けるため、上院の5分の3以上の議員(60人以上)の打ち切り賛成が必要だが、今回の廃止法案では予算審議をからめる特別な投票手続き
(Budget reconciliation)を使用し、民主党によるフィリバスターを回避し、過半数の賛成で可決にこぎつけた。
2016/1/14
EU、ベルギーの「税優遇制度」は違法
EUは1月11日、多国籍企業約35社に対するベルギーの「超過利益 ("Excess
Profit" ) 制度」と呼ばれる優遇税制度を違法とする判断を下し、約
7億ユーロの追徴課税を求めた。
ベルギーの企業はベルギーでの活動による実際の利益に対して課税されている。しかし、2005年から実施されている「超過利益制度」のもとで、多国籍企業に対しては著しく低い課税を認めている。
この制度では、事前のルーリングにより、多国籍企業の利益を同様の状況にある個別企業の平均利益率と比較し、差額を「超過利益」として課税対象から除外する。
対象となる企業の課税対象利益は一般に50%以上、ケースによっては90%も引き下げられていた。
多国籍企業の「超過利益」は、シナジー効果、規模の利益、名声、需要家とのネットワーク、新市場へのアクセスなど、多国籍企業の一員であることの結果であるとの前提による。
これは、一般企業との利益の差の説明にはなるが、課税を免除する理由にはならない。
ベルギー政府はこの制度を二重課税防止のために必要な割引であると主張したが、実際には同じ利益に対して他国が課税を主張しているものでなく、ベルギー政府が一方的に実施しており、二重課税の証拠を求めておらず、二重課税のリスクさえ示す必要がない。「二重非課税」になっている。
欧州委員会は調査の結果、この制度はベルギーの税制からも、EUの国家支援ルールの前提となる「市価基準」("arm's
length principle" )からも逸脱する違法なものであると判断した。
約35社の多国籍企業は、実際の利益に課税されている(多国籍企業でない)一般企業と比較し、アンフェアな優遇を受けている。
"arm's length principle"では、多国籍企業の超過利益は経済実態に合わせてグループの各社に配分され、それぞれで課税される。
しかしベルギーの制度では、超過利益はタックスベースから一方的に割引されている。
これはEUの国家支援ルールでは違法である。
競争政策担当のMargrethe Vestager
委員は、「これは多国籍企業でない小規模の競合者を不公平に扱うもので、競争を歪めている」とし、「EUには投資誘致のために優遇する制度は多くあるが、特定の多国籍企業に違法な税優遇をすることは、EU内での公正な競争を著しく傷付け、最終的にEU市民を害するものである」とした。
欧州委員会が2015年2月にこの調査を開始して以降、ベルギーは新規のルーリングを行っていないが、既に認められいる多国籍企業は今も恩典を受けている。
今回の決定により、ベルギーは将来にわたり「超過利益制度」の適用が出来ないだけでなく、不当な利益を取り除き、競争を回復するため、違法な恩典を受けた約35社の多国籍企業から納付されなかった税金全額を徴収する必要がある。
欧州委員会では総額を約7億ユーロと計算している。
追徴課税される企業名は記者会見で公表しなかったが、関係者によると、BP、BASF、PfizerやAnheuser-Busch InBevが含まれているという。
ベルギー紙は、他にBritish American
Tobacco、スウェーデンのコンプレッサー、産業機器、土木鉱山・建設機械の世界的リーダー
Atlas Copco を挙げている。
また、BASFの追徴課税は2億ユーロになるとも報じられている。
ベルギーの財務相は、EUの決定を受けた追徴課税は対象企業に「大きな」影響を及ぼすと注意を促し、追徴課税そのものも「極めて複雑」になるとの考えを示した。
ベルギーがEUとの「交渉を継続」する方針で、交渉の結果によってはEU司法裁判所に異議を申し立てることも辞さないと述べた。
ーーー
欧州委員会は2013年6月以降、メンバー各国の租税ルーリング制度を調査している。
2015年10月にはStarbucksがオランダ政府から、Fiat Finance
and Tradeがルクセンブルグ政府から、それぞれEUでは違法となる優遇税制を受けていたと判断した。
2015/10/27 欧州委員会、StarbucksとFiatの税優遇を違法と認定、追加徴税を指示
現在、アイルランドのApple、ルクセンブルグのAmazon、ルクセンブルグのMcDonald's の優遇措置を調査している。
2014/11/27 欧州委員会、オランダのStarbucks
への税優遇の内容を公表 Amazonも
2015/12/9
EU、McDonald'sに対するルクセンブルグの法人税優遇措置を調査
2016/1/15 中国化工集団、射出成型機械製造の独KraussMaffei を買収
中国化工集団(ChemChina) は1月11日、ドイツの射出成型機械メーカーのKraussMaffei
をカナダのOnex Corp.から925百万ユーロで買収すると発表した。
ChemChinaは同社を、國信國際投資公司及びHenry
Cai (蔡洪平)のAGIC Capital(漢コ資本集團)と共同で買収する。
KraussMaffei
は2014年の売上高が11億ユーロの射出成形機のメーカーで、従業員は世界で4500人、うちドイツが2800人となっている。
KraussMaffeiはドイツの重機械メーカーであった旧KraussMaffei
の射出成形機部門である。
1838年にJA Maffei が設立され、1866年にKraussが設立された。
1908年にはMaffeiは当時世界最高速の蒸気機関車を生産している。
1931年に両社が合併してKraussMaffei となり、軍事製品(トラック、戦車など)を生産した。
1957年に世界初の全自動大型射出成形機を開発した。
1986年に射出成形機部門が分離独立し、その後同業他社と合併し、Mannesmann
Plastics Machinery GmbH となった。
1999年に、機関車部門がSiemensに買収され、軍事製品部門はWegmannに売却され、Krauss-Maffei Wegmannとなった。
射出成形機メーカーのMannesmann
Plastics Machinery は2006年に米国のMadison Capital Partners
に買収され、2007年末に旧称のKraussMaffei
AGに改称した。
2006年に日本にクラウスマッファイ社を設立している。
2012年9月にKraussMaffei
はカナダのOnex に買収された。
今回、ChemChinaがこれを買収することとなったが、2011年に既に関心を示していた。
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ChemChinaはこの数年、世界各地で買収を進めており、イタリアのタイヤ大手
Pirelliも買収している。
2015/3/27 ChemChina、伊タイヤ大手ピレリを買収
同社は最近、スイスの農薬メーカーのSyngenta AG の買収交渉を行っている。
Syngentaは2015年5月8日、Monsantoから総額450億米ドル(うち45%を現金)で買収する提案を受けたが、取締役会は拒否することを決めたと発表した。
Monsantoは8月18日にSyngentaに新しい提案をしたが、Syntentaは拒否、Monsantoは8月26日に買収を諦めると発表した。
2015/5/12
Syngenta、Monsantoによる買収提案を拒否
2015年11月にChemChinaがSyngentaに417億スイスフランでの買収を提案し、拒否された。
しかし、12月に買収額を引き上げる新提案をした。現時点で70%を取得し、後日残りの30%を買い取る案とされる。
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