2016/6/16
テルモ、米脳血管医療機器メーカー買収 テルモは6月12日、脳動脈瘤治療に用いる新形状塞栓デバイスを開発し、世界で初めて製品化した米国のSequent
Medical の全株式を取得するための契約を締結したと発表した。
買収金額は一時金が280百万米ドル、一定の条件達成に応じて支払うマイルストンが最大で100百万米ドルになる見込み。
規制当局の承認を前提に、株式取得手続きは2016年7月から8月を目途に完了予定。
脳血管内治療市場は毎年拡大しており、2018年には約3000億円規模になると見込まれてい
る。その中でも、脳動脈瘤治療に使用される新形状塞栓デバイスは、大きな市場拡大が期待される。
テルモは、脳血管内治療を重要な成長領域と捉え、2006年のMicroVention,
Inc. 買収により市場に参入し、以降、脳動脈瘤治療に使用する塞栓コイルと、関連するカテーテルやステントを中心に製品ラインアップを揃え、総合ニューロカンパニーとしてグローバルで事業を拡大してい
る。
今回買収したSequent Medical は、脳動脈瘤治療の新たな選択肢として期待される新形状塞栓デバイスを開発し、世界で初めて製品化を実現した。
2010年には、欧州での販売に必要なCEマーク認証を取得し、既にドイツ、イギリスなどで販売を開始しており、米国での販売開始に向けた治験を他社に先駆けて実施して
おり、数年後には米国での承認取得も目指している。
カテーテルを使った脳血管手術は患者への負担が小さく年率10%のペースで市場が伸びている。
テルモは同領域の世界シェアで16%と3位グループにあるが、買収により Sequent
Medical の新形状塞栓デバイスを加えることで、首位を目指す。
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脳動脈瘤の治療は、主に瘤への血流を遮断する方法がとられる。
その治療法には大きく分けて、手術で頭を開きクリップで瘤をはさむ外科的治療と、脚などの血管から挿入したカテーテルを通して、コイルやステントなどを留置する血管内治療があ
る。
開頭手術が必要ない治療法は、患者への身体の負担を小さくでき、入院日数も減らせ、医療費削減の効果も見込める。
MicroVention の方法は下記の通りで、カテーテルを通じてプラチナ製のコイルを脳動脈瘤まで到達させ、瘤の内側に詰めて治療する。
最近では、プラチナ製コイルをコーティングしたものが開発され、より高い治療効果が期待されているが、MicroVention
は、独自のコーティング技術で、競争力のある製品をグローバルに展開している。
MicroVentionは2013年3月、コスタリカに工場を開業した。従来のカリフォルニアの工場に加え、コスタリカに生産拠点を新設し、世界の需要に応え
る。
コスタリカ工場では、主に脳血管治療用コイル、ステントなどを生産し、グローバルに供給する。
これに対し、今回買収したSequent Medical の新方法(WEB
TM 動脈瘤塞栓システム)は、同社独自の技術により、形状記憶合金が細かく編み込まれており、専用のカテーテルを通して脳動脈瘤に留置されることで、瘤内への血液の流入を抑え
る。
コイルによる治療もカテーテルで血管内から治療するため身体負担は小さいが、複数回に分けて詰める手間が必要で、手術に2〜3時間かかるのが一般的である。
メッシュ状の器具を使えるようになれば、血管内で1回膨らますだけで済み、手術に必要な時間も1時間以内に抑えられるという。
既に販売されている欧州を中心とする地域では、WEBの形状と取扱いの簡便さから、破裂した脳動脈瘤の緊急手術や、既存の塞栓術では治療が難しいとされる血管分岐部に瘤がある「分岐部病変」、瘤の入口部が広い「ワイドネック型」などの症例においても使用され、脳動脈瘤治療の新たな選択肢として期待されてい
る。