ブログ 化学業界の話題 knakのデータベースから      目次

これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。

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2018/12/1  第一三共、北里第一三共ワクチンを吸収合併 

第一三共は11月30日、ヒト用の感染症予防・治療ワクチンの研究開発、製造、販売を行っている子会社の北里第一三共ワクチンの吸収合併を含む再編スキームを決議したと発表した。

概要は次の通り。

北里第一三共ワクチンの生産機能を2018年8月に設立した第一三共バイオテックに移管し、安定生産と品質レベルの向上を図る。

第一三共を存続会社、北里第一三共ワクチンを消滅会社とし、北里第一三共ワクチンを第一三共へ吸収合併することにより、北里第一三共ワクチンの生産以外の事業(研究開発、信頼性保証、販売等)並びに同社製品の製造販売承認を第一三共に承継する。

再編の時期は2019年4月1日とする。

 

経緯は次の通り。

第一三共は、1961年に北里研究所と提携し、ワクチン販売を開始した。

両社は2011年4月に、第一三共51%、北里研究所49%出資でワクチン専門の開発・製造発売会社
北里第一三共ワクチンを設立した。

北里研究所のワクチンの製造・研究開発機能を継承し、ヒト用の感染症予防・治療ワクチンの研究開発、製造、販売を行ってきた。

参考 2011/8/26  新型インフルエンザワクチン開発・生産体制整備臨時特例交付金

2012年3月2日、GSK Biologicals(ベルギー)、GSK Japan、第一三共はワクチン事業における戦略的提携として、折半出資による合弁会社ジャパンワクチンの設立の契約を締結したと発表した。

日本の医療ニーズに合致したワクチンの迅速な供給を実現するべく、GSKと第一三共が、ワクチンの後期臨床開発、マーケティング、営業機能を担う新会社を設立することとした。

ジャパンワクチンは7月2日に事業活動を開始した。

北里研究所と第一三共との合弁、北里第一三共ワクチンは存続する。

2012/3/6 第一三共とグラクソ・スミスクライン、ワクチン事業で戦略的提携

北里第一三共ワクチンは2015年6月および2017年9月に財務基盤の強化を図る目的で募集株式の発行を行い、第一三共がその総数を引き受け、同社の議決権比率を93.3%とした。

第一三共は、2017年11月30日、第一三共グループにおけるワクチン事業の基盤強化を図ることを目的に、北里研究所が保有する北里第一三共ワクチンの全株式を取得、北里第一三共ワクチンを完全子会社化した。

第一三共は、2018年4月27日の取締役会において、北里第一三共ワクチンを生産に特化した機能子会社とする再編方針を決定した。

これに基づき、今回の決定を行った。

 


2018/12/2    米、中国への追加関税を90日猶予

 
トランプ米大統領と習近平中国・国家主席は12月1日、G20出席のため訪問中のBuenos Airesで夕食会形式で首脳会談を開き、米国が中国への追加関税を猶予することを決めた。

ホワイトハウスの発表は下記の通り。

トランプ大統領は、2000億ドル分の中国製品について、2019年1月1日に追加関税を25%に引き上げるのを止め、当面 10%に留める。

トランプ米政権は2018年9月17日、中国からの輸入品2千億ドルを対象に第3弾の制裁関税を9月24日に発動すると発表した。

家具や家電などに10%の関税を上乗せする。当初計画の25%上乗せを先延ばしにすることにより、米企業が代替サプライチェーンを探すなど対応策を講じるための時間的猶予を与える。中国が対米黒字削減や国内産業保護策の見直しなど、踏み込んだ政策変更に応じない場合、2019年以降は25%に引き上げる。

2018/9/20     米国、対中関税第3弾を9月24日発動 


これに対し中国は、金額はまだ合意できていないが、非常に多くの農産物、エネルギー、工業製品その他を米国から購入し、貿易のインバランスを減らす。
中国は米国の農家から直ちに農産物を購入し始めることに同意した。

両国は直ちに、(1)米企業への技術移転の強要 (2)知的財産権の保護 (3)非関税障壁 (4)サイバー攻撃とサイバー犯罪(窃盗)(5)サービスと農業の市場開放 の5分野での構造変化の協議を開始し、90日以内に結論を得ることで合意した。

この間に合意できない場合、追加関税は25%に引き上げられる。

付記 トランプ大統領は対中協議の責任者にアメリカ合衆国通商代表(USTR) のLighthizer 代表を指名した。政権きっての対中強硬派。
   90日は12月1日起算で、2019年2月末までの短期交渉となる。


(その他の事項)

習首席は、麻薬(強オピオイド)のFentanyl を規制物質とすることに同意した。米国に販売した場合、中国法で重刑に処せられる。

大統領と主席は、北朝鮮に関して大きな進展があったこと、両者は金正恩委員長とともに、核のない朝鮮半島にすべく努力することで意見の一致を見た。 大統領は金委員長に対する friendship and respect を表明した。

主席は、以前に承認しなかった米Qualcommによるオランダの NXP Semiconductors 買収について、再申請されれば承認すると述べた。

本年4月、米Qualcommによるオランダの NXP Semiconductors 買収を巡り、中国商務部は承認にはさらなる是正が必要だと指摘した。

7月26日午前0時が中国当局の承認を得る期限とされていたが、承認が得られず、Qualcommは買収を断念した。

2018/4/24 中国商務部、QualcommによるNXP買収の承認に慎重

トランプ大統領は、この会談を、米中の限りない可能性を示す素晴らしい、生産的な会合と呼んだ。

 


2018/12/3 Bayer、大規模な合理化策を発表、人員整理 12,000人 

Bayerは11月29日、合理化策を発表した。

6月7日にBayer のMonsanto 買収が完了した。買収額は総額625億ドル。

買収したMonsantoの除草剤 Roundup について、カリフォルニアの陪審員が8月10日に、発癌被害で289百万ドルの賠償評決を下した。San Francisco Superior Court は10月23日、損害賠償は39百万ドルのままとし、懲罰的賠償は39百万ドルに大幅減額した。 しかし、Bayer主張の無罪にならなかったため、Bayerの株価は下落した。

2018/8/28 Bayer のMonsanto買収 完了と、Monsantoの除草剤への賠償命令判決 

Monsanto の買収完了で今後の事業の方向を明確化するとともに、大規模な合理化を打ち出し、株式市場にアピールする。

合理化の内容は次の通りで、競争力を強化し、2022年にはMonsanto買収に伴うシナジー(10.4億ユーロ)を含め、年間26億ユーロの貢献を見込む。

人員削減は2021年末までに行う。

    合理化 人員整理(2021年末までに) 除却損
コア
事業
Pharmaceuticals ・イノベーションの加速、社内R&Dのリストラ
・血友病事業:ドイツWuppertalの第[因子設備を使わず、
 米Berkeleyの組換え第[因子設備に集中
 
R&D 900
Wuppertal(第[因子設備) 350
Wuppertal(第[因子設備)6億ユーロ
Consumer Health ・外部での開発が有利と思われる製品の切り離し
 スキンケア (Coppertone™)、フットケア (Dr. Scholl’s™) など
改組 1,100 Merckからの買収製品、
滇虹集団
その他、合計27億ユーロ
Crop Science ・Monsanto事業との統合 Monsantoとの統合 4,100  
Animal Health ・処分を検討(やり方は今後決める)    
Corporate   5,500〜6,000  
Currenta (60%持分) ・処分を交渉する。    
合計   約 12,000  

1) Pharmaceuticals、Consumer Health、Crop Science をコア事業とし、強化を図る。

Pharmaceuticalsでは、R&Dのリストラを行う。血友病関連では従来法設備を廃棄する。

Consumer Healthではスキンケア、フットケア製品などを切り離す。

付記

Dr.Scholl ブランドは北米とラテンアメリカではBayerが所有(Merck & Co. から買収)。Bayerは2019年7月、米の投資会社Yellow Wood Partnersに売却した。

その他の地域はReckitt Benckiserが所有していたが、2014年7月にドイツのprivate equity会社のAureliusが買収した。

Merck & Co. から買収したConsumer Care製品や買収した中国の漢方薬メーカー滇虹集団(Dihon Pharmaceutical Group)、その他の除却損を計上する。

2014/5/10 Bayer、米 Merckの大衆薬事業を買収 

2014/3/4 Bayer、中国の漢方薬メーカーを買収 

Crop Scienceでは買収したMonsantoの事業との統合を成功させる。統合により4,100名の人員減を行う。

特別損失を控除する前のシナジー効果を2022年で10.4億ユーロとみている。(うち、コストのシナジーが8.7億ユーロ)

2) 非コアとした Animal Health は処分する。処分方法は今後検討する。

3)   本社機能、補助機能、ビジネスサービスなど  5,500〜6,000の人員削減

4) Currenta GmbH & Co.   持分60%の処分

Bayerはドイツに、Leverkusen、Dormagen、Krefeld-Uerdingenの3つのChempark を持つ。石油化学等が中心である。

Bayer AGと、Bayerから分離したLanxess AG が共同で使用しているため、Chemparkの運営(用役、環境、安全、保安、分析、教育、その他のサービス)をBayer 60%、Lanxess 40% のJVのCurrenta GmbHで行ってきた。このJVはChemparkの外の需要家にもサービスを提供している。

Bayer は2014年に、Life Science 事業(HealthCare と CropScience )に注力することとし、 MaterialScience事業を別会社として上場させることを決め、2015年9月1日、Covestro として分離独立した。

2015/9/2    Bayer のMaterial Science 部門、Covestro として分離独立  

MaterialScience事業の分離で、今やこれらのChemparkの中でBayerが占める割合は大きく減少し、Currenta GmbH の60%を保有するのは正当化できないとする。

ーーー

買収したMonsantoの除草剤 Roundup の発がん性が疑われた訴訟は、今回の有罪判決に続き、米国各地で判決が出る。欧米メディアは賠償額が総額1兆円を超える可能性もあると報じている。

今回発表したリストラ策は株価の下支えだけではなく、巨額の賠償金に備える狙いもあるとみられる。

 


2018/12/4 SK Innovation、米に電気自動車バッテリー工場を建設、LG & Samsung も各地で増設 

SK Innovationは11月26日、米ジョージア州Commerce市に1兆1396億ウォン(約1140億円)を投資して、電気自動車用バッテリー工場を建設することを明らかにした。

付記

SK Innovationは2020年6月29日、第2工場の設立のための投資協約式を交わしたと発表した。2023年から年間11.7GWh規模の生産の予定。

韓国企業が米現地に電気自動車用バッテリー工場を建設するのは、2012年に完成したLG Chemのミシガン州ホランド工場(下記)に次いで今回が2度目となる。

SK Innovationは、LG Chemと同様、米国と中国と極東、そして欧州というEVマーケットのシェア9割を占める地域をカバーする。

下記の通り、北米でVolkswagenグループへの供給が決まっている。

Commerce工場は112万2000平方メートルの敷地に新設され、来年初めに着工して2022年に完成する予定。年間 9.8GWhの規模で建設される。

新工場が完成すれば、SK Innovationは韓国(忠清南道瑞山市)とハンガリー(Komárom )、中国(常州)を含めて「グローバルの四角生産体制」を構築することになる。

新工場は、瑞山工場(4.7GWh)の2倍を超える規模で、常州工場(7.5GWh)と、2022年に完成予定のKomárom工場(7.5GWh)を合わせれば、全体の生産能力は約30GWhに増える。

  稼働 建設
韓国(忠清南道瑞山市) 4.7GWh  
中国(常州) 7.5GWh  
ハンガリー(Komárom   7.5GWh
米国(Commerce   9.8GWh
合計 12.2GWh 17.3GWh
総計

29.5GWh

 
SK Innovationは韓国中西部の瑞山の主力工場に約2000億ウォンを投じて7つ目の生産ラインを設けた。年産能力は2018年後半に2割増えて容量4.7GWhに拡大した。

SK Innovationは2017年11月30日、ハンガリーにEV向けリチウムイオン電池の新工場を建設すると発表した。投資額は8400億ウォン(約840億円)。約43万平方メートルの敷地に年間容量7.5GWhのリチウムイオン電池工場を建てる。1回のフル充電で500キロメートル走行可能なEVに搭載可能な新型の電池を生産するとみられる。

ハンガリーではSamsung SDIが2017年5月にグドゥ(Goed)市に、蔚山と中国の西安とに次ぐ3つ目の工場を新設した。

 

Volkswagenグループは2018年11月13日、SK Innovationから電池セルを調達すると発表した。SKIから調達した電池は、北米および欧州で販売するVWグループの電動車に搭載する予定。

VWグループへの電池サプライヤーは、LG Chem、Samsung SDI、中国CATL(寧徳時代新能源科技)の3社にSK Innovationが加わり、これで4社目となる。

当面、LG ChemとSamsung SDIが担っている欧州向けEVの電池サプライヤーにSKIが加わることになるが、2022年からは北米向けの需要にも対応する。Commerce工場から供給する。

なお、CATL(寧徳時代新能源科技)はVWの中国での戦略的パートナーであり、2019年から中国向けEV電池の供給を始めることが決まっている。

ーーー

自動車用バッテリーでは、韓国の3社が競っている。

LG Chem は11月28日、ポーランドのヴロツワフ(Wroclaw)工場の増設に571百万ドルを投じることを決めた。ポーランドの能力を現在の年間10万個から30万個に引き上げる。

  稼働 建設
韓国(梧倉〉 10万個=6GWh  
中国(南京) 5万個=3GWh  
米国(Holland 3万個=1.8GWh  
ポーランド(Wroclaw) 10万個=6GWh 20万個=12GWh
合計 28万個=16.8GWh 20万個=12GWh
総計

48万個=28.8GWh

 

米国工場については下記参照。

2013/2/15   LGの米リチウムイオン電池工場への批判

2013/9/10 LG化学のミシガン州のリチウムイオン電池工場、生産開始2か月で停止 

ポーランドでは子会社の LG Chem Wroclaw Energy で生産している。

付記

LG化学は2018年10月23日、南京の電気自動車バッテリーの第2工場の起工式をに開催した。2023年までに2兆1000億ウォンを段階的に投資し、高性能電気自動車バッテリー(走行距離320km基準)50万台以上の生産能力を確保する計画。2019年末から1段階の量産を開始する。

LG化学は2019年1月10日、1兆2,000億ウォン(約1,155億円)を投じ、中国南京のバッテリー工場を増強すると発表した。
投資額のうち、半分の6000億ウォンは車載電池、残りはスマホやパソコン向け電池の生産ラインに投じる。
 


Samsung SDIは2017年5月にハンガリーのグドゥ(Goed)市に、蔚山5万と中国の4万とに次ぐ3つ目の工場を新設した。

  稼働
韓国(蔚山 5万台
中国(西安 4万台
ハンガリー(Goed 5万台
合計 14万台


なお、Samsung SDI は11月29日、ミシガン州Auburn Hills に62百万ドルを投じて電気自動車用バッテリープラントを建設することを明らかにした。

 


2018/12/5     カタール、OPEC脱退へ   
 

Qatar は12月3日、石油輸出国機構(OPEC)に対し、2019年1月に脱退する方針を伝えた。

エネルギー相は記者会見で、天然ガスを中心とする産業の発展に集中するためだと説明した。

エネルギー相は「原油より大きな潜在力がある天然ガスに力を注ぎたい」と強調した。

エネルギー相はOPEC脱退について「テクニカル」なもの(「何か思惑があるわけではない」の意味)であり、天然ガスの生産に集中する方針だと述べた。

しかし一方で、脱退後はOPECの合意に拘束されないと言明した。

また、「OPECは一国によって管理されている」と指摘し、サウジを暗に批判した。

    加盟 離脱 再加盟 一時停止 加盟 脱退
イラク 中東 1960          
イラン 中東 1960          
クウェート 中東 1960          
サウジアラビア 中東 1960          
ベネズエラ  南米 1960          
カタール 中東 1961         2019/1
インドネシア アジア 1962 2009 2015 2016    
リビア  アフリカ 1962          
UAE 中東 1967          
アルジェリア  アフリカ 1969          
ナイジェリア アフリカ 1971          
エクアドル 南米 1973 1993 2007      
ガボン  アフリカ 1975 1994 2016      
アンゴラ  アフリカ 2007          
赤道ギニア アフリカ         2017  
加盟国 14   14 -3 +3 -1 +1 -1 (13)

 

現在、原油安が急ピッチで進んでいる。

OPECは12月6日のウィーンでの総会で減産を決め、翌7日にロシアなど非加盟国と協調減産を続けることで合意するシナリオを描いている。

Qatar がOPEC脱退後はOPECの合意に拘束されないと言明したことは、同国が脱退後に増産に動き、原油価格を支えるための努力が損なわれる可能性があることを意味し、OPECの価格支配力が一段と低下し、原油価格の波乱要因になる。

ーーー

Qatar の石油生産量は少なく、2017年1月実施の生産枠は日量618千バレルにとどまっている。

他方、世界の1割強を占める埋蔵量を持つ巨大なガス田を域内に抱え、LNGの最大輸出国である。日本もQatar から大量のLNGを輸入している。

LNGの生産量が年間7700万トンに達しているが、2024年までに1億1000万トンに拡大する方針。

 

 

 

エネルギー相はOPEC脱退について「テクニカル」なものであり、天然ガスの生産に集中する方針だと述べた。

しかし一方で、脱退後はOPECの合意に拘束されないと言明した。また、「OPECは一国によって管理されている」と指摘し、サウジを暗に批判した。

今回の離脱発表は、サウジアラビアとの政治的対立も影響したと見られる。

2017年6月5日、サウジアラビアを中心としたペルシャ湾岸諸国(サウジアラビア 、UAE、バーレーン)とアフリカ大陸にあるイスラム国家の一部(エジプト、イエメン、モルディブ)は、Qatarに対して国交断絶を表明した。

断交理由には、サウジアラビアと対立するイランへの過度な接近やムスリム同胞団への支援を挙げている。

ムスリム同胞団については、エジプトが2013年に、サウジアラビアが2014年にテロ組織に指定している。

Qatar外相は「事実無根。決して降伏しない」と表明し、対抗姿勢を打ち出した。

その後、サウジアラビア、UAE、バーレーン、エジプトの4カ国は、Qatarに対し13項目にわたる要求を送付した。

要求の中には、アルジャジーラの閉鎖、カタール国内に存在するトルコ軍基地の停止、イランとの外交関係の縮小、過激派組織との関係断絶など があると報じられた。


Qatarはこれらの要求を拒否したうえで、各種の対抗措置をとった。

経済制裁が違法だとしてWTOに提訴するとともに、禁輸となった物資の輸入先をオマーンやインド、イラン、トルコへ切り替え。
LNGの年間生産量を従来の7700万トンから1億トンへ増やす計画を発表 。
欧米から戦闘機やコルベットを購入するとともに、トルコ軍と合同軍事演習を実施。

2018年4月、サウジアラビアがQatarとの国境線沿いに運河を建設する構想が報道された。 報道では、サウジアラビアは全長60キロに及ぶ国境沿いに軍事基地と核廃棄物処理場幅約200メートルの運河を建設し、Qatarを物理的にも孤立させるという。

 


2018/12/6   SamsungのOLED核心技術、中国BOEに流出

韓国検察当局は11月29日、Samsung グループで有機ELパネル世界最大手、Samsung Displayの生産技術を中国パネル最大手の京東方科技集団(BOE)などに流出させたとして、Samsungの取引先のパネル製造装置大手ToptechのCEOを含む9名を、不正競争防止や営業秘密の保護に関する法律に違反した罪で起訴したと発表した。

ほかに中国企業の幹部2人も取り調べたが、起訴を見送った。検察は8月に韓国の情報機関の国家情報院から情報を得て捜査を続けていた。

Samsung はスマホ向けの中小型の有機ELパネルで9割以上の世界シェアを握る。

流出したのは、Samsung電子のGalaxyスマートフォンに搭載された「曲がったOLEDディスプレー」とガラス板を装着する工程の「3Dラミネーション」生産設備および技術資料で、BOEなど4社に流出した疑いがある。流出先には中国のパネル2位である華星光電(CSOT)が含まれている模様。

検察によると、Samsung Displayは2007年から6年間に1500億ウォン(約150億円)を投じてこの技術を開発した後、協力会社のToptech に関連装備の生産を任せた。Toptechはこの装備をSamsungに独占納品する契約を結んだが、偽装会社を通じてBOE などに16台を販売した。 情報提供によりToptecは1385万ドルを受け取ったとされる。

図は朝鮮日報

Toptech 株主に宛てたメッセージを公表し「当社が自社開発した技術を基に中国企業と取引した。Samsungの技術を流出させた事実はない」と、疑惑を強く否定した。 「法廷で真実を証明するために、あらゆる法的手続きをとる」としている。

 


2018/12/7 三菱瓦斯化学、Saudi Methanol でSABICと合意、最終的には2019年3月末に決定 

三菱瓦斯化学は11月1日、SABICと日本・サウジアラビアメタノール(JSMC)との50/50JVのSaudi Methanol Company (AR-RAZI) が11月29日に合弁契約の期限切れを迎えると発表した。

2018/11/5 三菱瓦斯化学のSaudi Methanol、合弁契約の期限切れ 

 

その後、両社は合意に達し、三菱瓦斯化学は12月4日、SABICとの交渉の結果を発表した。

@  11月29日の合弁契約期限切れに伴い、JSMCのAR-RAZI持株の半分(全体の25%)を150百万ドルでSABICに売却

A 日本側は2019年3月末までに下記の条件での合弁契約の20年間継続の可否を決定する。

  継続しない場合、残り25%も150百万ドルでSABICに売却し、AR-RAZIをSABICの100%子会社とする。

  条件:
   ・ JSMCは契約延長対価としてSABICに1,350百万ドルを支払う。

   ・ 省エネ効果を高めるメタノール新技術の商業化の共同検討、および新技術によるメタノール設備更新の検討
      (SABICによると、SABICはこの新設備の“an equal co-owner” になる)

まとめると、次のとおり。

  JSMC SABIC  
従来 50% 50%  
2018/11/29 25% 75% SABICは 150百万ドルをJSMCに支払い
2019/3/末      
 Case 1  契約延長 25% 75% JSMCは 1,350百万ドルをSABICに支払い
新設備の検討
 Case 2  契約延長せず 0% 100% SABICは 150百万ドルをJSMCに支払い

付記 2019年3月22日、Case 1 の20年延長を決定。 1,350百万ドルは3年分割払い(費用としては20年分割算入)

 

まず、今回の25%分の引き渡し(対価 150百万ドル)は、サウジ現地では、SABICにとって非常に有利(“highly favourable”)と見られている。

JV契約の期限切れによるものであり、おそらく契約にはその際の株式の引取価格の規定があると思われるが、年間で120億円程度の配当のある株の取引価格としては非常に安い。

恐らく、簿価に近いものと思われる。

三菱瓦斯化学の連結決算での本件の投資損益は、2008〜2017年度平均で約120億円。日本側全体ではその倍であり、今回売却分はその半分。

三菱瓦斯化学はJSMCに47%出資するが、同社は今回、同社としての為替差損と、JSMCでの売却益に対する税金から、売却損失が50億円程度としている。

 

契約延長を決めた場合、JSMCは延長のためだけで、1,350百万ドルの支払が必要である。持分は半分に減るため、現状ベースでは年間配当は120億円程度であり、元を取るのに時間がかかる。

また、三菱瓦斯化学が開発することになる新技術を、技術料は取るにしても、SABICとのJV(出資比率は50/50になる)に出す必要がある。

 

どうするであろうか?



2018/12/8 住友金属鉱山と住友商事、チリの銅鉱山の権利取得 
 
住友金属鉱山および住友商事は12月5日、カナダの資源メジャー企業 Teck Resources Limited が保有する チリのQuebrada Blanca銅鉱山の権益のうち30%について、住友金属鉱山が25%、住友商事が5%の権益を取得することで合意したと発表した。

両社は権益取得に係る対価 8億米ドルに加え、建設工事費に対応する4億米ドルを2019年中に支払 う。
また、今後Quebrada Blanca Phase 2 における 鉱石処理量が一定の増産を達成する場合は0.5億米ドルをTeck に支払う。
将来、Quebrada Blanca 銅鉱山の大規模な拡張工事に住友金属鉱山および住友商事が参入を決定する場合にはQB銅鉱山の評価額の増大に対して、相当額の負担すべき資金を支払う

両社はQuebrada Blanca 銅鉱山について、権益を保有するアリゾナ州のMorenci 銅鉱山(住友金属鉱山25.0%、住友商事3.0 %)や ペルーのCerro Verde銅鉱山(住友金属鉱山16.8%、住友商事4.2%)と比肩するワールドクラスの銅鉱山となることを期待して いる。

両鉱山については 2016/2/19 住友金属鉱山、米国モレンシー銅鉱山の権益追加取得

Quebrada Blanca銅鉱山事業の概要は下記の通り。

投資予定額:約47億米ドル
主要投資内容:選鉱場や尾鉱ダムなど

付記 2022/8 投資予定額を当初予定の約47億米ドル(物価調整込み約 52億米ドル)から、75億米ドル(物価調整および将来の建設費増加リスク込み)に見直し

生産開始予定:2021年 生産品目:銅精鉱・モリブデン精鉱
平均年間生産量(金属量):銅約24万トン、その他モリブデン、銀
可採鉱量(金属量):銅約620万トン
マインライフ:約28年 採鉱法:露天掘り

出資者:

  現状 今後
Teck Resources 90% 60%
Empresa Nacional de Mineria 10% 10%
住友金属鉱山   25%
住友商事   5%
合計 100% 100%

立地:

 

住友金属鉱山および住友商事は、Teck Resourcesとは、アラスカのPogo金鉱山を1997年から2009年まで共同経営するなど、長年にわたりパートナーシップを維持している。

住友金属鉱山と住友商事は8月30日、豪州大手の産金会社Northern Star Resources Limitedに、アラスカのPogo金鉱山の権益を全て譲渡すると発表した。

Pogo金鉱山は、アラスカ州で2006年から操業し、2009年からは住友金属鉱山がオペレータを務めてきた。

Pogo金鉱山概要:

1)位置:米国アラスカ州フェアバンクスの南東約145キロ

2)権益比率:住友金属鉱山アメリカ社(住友金属鉱山100%子会社) 51%→85%→ 0
       Teck Resources 40%→ 0
       SC Minerals America(住友商事100%子会社) 9%→15%→ 0
         2009年4月以降、出資比率変更

2018/9/1 住友金属鉱山と住友商事、アラスカの金鉱山権益を売却 

 

両社の銅鉱山権益は下記の通り。

鉱山

権益

能力
住友金属
鉱山
住友商事 その他
Morenci 米国 25% 3% Freeport-McMoRan 72% 48万トン
Cerro Verde ペルー 16.80% 4.20% Freeport-McMoRan 53.56%
others    25.44%
30万トン→50万トン
 
Sierra Gorda チリ 31.5% 13.5% KGHM International 55% 22万トン
Ojos del Salado チリ 16% 4% Lundin Mining 80%  
Candelaria
Batu Hijau インドネシア 3.5% 18.2% Newmont Mining 31.5%
others  46.8%
 
Northparkes 豪州 13.3% 6.7% China Molybdenum  80%  

 


2018/12/8 OPEC-Plus、減産を発表 

OPECとロシアなど非加盟国は12月7日、2019年1月から合計で日量120万バレル減産することで合意した。

世界景気への不安から需要の落ち込みが懸念されて、急ピッチで下落している原油価格に歯止めをかける。

サウジアラビアのエネルギー産業鉱物資源相は「市場の均衡を目指すため行動する」と語った。

今回の合意は、原油価格を抑えるためサウジに減産しないよう圧力をかけていたトランプ米大統領の怒りを買う可能性がある。

サウジのエネルギー相は、今回の減産合意でトランプ米政権とサウジの関係は悪化するかとの質問に対し、供給が不足する事態になればサウジには増産する用意があるとし、「われわれは消費国が支払える水準を超えて価格を引き上げるようなことはしない」との立場を示した。また、最近米国が最大の産油国となったことを踏まえると、米国のエネルギー関連企業は「安堵のため息をもらしている」のではないかとも述べた。

付記

OPECは2019年7月1日、6月末で期限が切れた協調減産を2020年3月末まで9カ月延長することで合意したと発表した。
OpPECは2日、ロシアなど非加盟産油国との会合で、減産を9カ月延長することで合意、OPEC+の協力体制を定める「憲章」を採択した。OPEC+は恒久的なものとなる。


合意の内容は次の通り。

2018年10月の生産量をベースに、OPECは日量80万バレル(2.5%相当)、非OPEC諸国は40万バレル(2.0%相当)を減産する。
(当初の議論は、減産規模をOPECが日量 65万バレル、合計で日量約100万バレルとする案を中心に進んでいた。最終的に合意した数字は予想を超えるもの)

減産期間は2019年1月から6月までの6カ月だが、4月に会合を開き、減産の状況や市場環境を確認して見直しを行う。

各国の減産量の配分は公表していない。

ロシアは、これまで減産規模は最大で日量15万バレルとみられていたが、エネルギー相は10月の生産の2%に相当する日量22.8 〜23万バレル前後を減産すると表明した。

OPECでは、米国による制裁措置を受けているイランのほか、リビア、ベネズエラは減産の例外として認められた。
これまで減産を免除されていたナイジェリアは減産に復帰する。
イラクは日量14万バレルの削減を確約した。
Qatar は2019年1月からOPECを離脱する。

OPEC各国が10月の生産量の2.5%ずつを減産するとすれば、下記の通りとなる。(実際の配分は未公表)

原油市場では米国ではシェールオイルを中心に増産が続いている。一方で、貿易戦争による世界経済の先行きへの不安から需要が落ち込むとの見通しが出ており、原油価格は急降下している。


2018/12/10 華為技術(Huawei Technologies )の副会長の逮捕

カナダ司法省は12月1日、中国の通信機器最大手、華為技術(Huawei Technologies )の創業者 任正非(Ren Zhengfei)の娘である孟晩舟(Meng Wanzhou)副会長 兼 最高財務責任者(CFO)をバンクーバーで逮捕した 。12月5日に明らかにした。

裁判所は12月10日、保釈の可否を巡る審問を開いたが、判断を示すことなく休廷した。現地時間11日午前10時(日本時間12日午前3時)に再開する。

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付記

カナダの裁判所は12月11日、同氏の保釈を認める決定を下した。

条件として1000万カナダドル(約8億5千万円)の保釈金を支払ったり追跡装置を身につけたりする。夜間の外出は禁じられ、パスポートは押収される。

カナダの裁判所は来年2月に、米国の正式な要請に基づいて身柄を引き渡すかどうかを別途判断する。

米側は逮捕から60日以内に具体的な証拠を裁判所に示す必要がある。

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トランプ大統領は12月11日、ロイターとのインタビューで、米国の安全保障と対中貿易協議の進展に資するなら、この問題に介入するとの考えを示した。

"If I think it's good for the country, if I think it's good for what will be certainly the largest trade deal ever made - which is a very important thing - what's good for national security - I would certainly intervene if I thought it was necessary."

( Meng 副会長が釈放される可能性について)

"Well, it's possible that a lot of different things could happen. It's also possible it will be a part of negotiations. But we'll speak to the Justice Department, we'll speak to them, we'll get a lot of people involved."


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国際シンクタンク The International Crisis Group(ICG)は12月11日、同団体の上級顧問を務めるカナダの元外交官、Michael Kovrigが中国で拘束されたとの情報が入ったことを明らかにした。

カナダ外務省は12月13日、カナダ人実業家 Michael Spavor氏が中国の国家安全保障に脅威を与えた疑いで中国当局に拘束されたことを認めた。

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付記

カナダのトルドー首相は2019年1月26日、同国のジョン・マッカラム駐中国大使が同日付で辞任したと発表した。首相が辞任を要請した。

マッカラム氏は1月22日に中国語メディアとの会合で孟氏の逮捕にはトランプ米大統領の政治的な意向が反映されていると指摘。逮捕容疑であるイラン制裁違反に関して「カナダは(米国が求める)イラン制裁措置に署名していない」とし、引き渡しが行われない可能性を示唆していた。
 

付記

米司法省は2019年1月28日、イランとの違法な金融取引に関わった罪などで中国の通信機器最大手、華為技術(Huawei)と同社の孟晩舟・副会長兼最高財務責任者(CFO)を起訴したと発表した。孟氏を逮捕したカナダに身柄の引き渡しを求める。   


付記 

カナダの上級裁判所は2020年5月27日、孟晩舟副会長兼CFOについて、「カナダでの犯罪行為に当たらない」とする孟氏側の主張を退けた。これにより、米国への身柄の引き渡しに向けた審理が継続する。

孟氏の弁護団は(1)カナダはイランに対して米国と同様の制裁を科しておらず、孟氏の行為はカナダでは犯罪に当たらない(2)18年12月の孟氏拘束時のカナダ当局の対応は不当な尋問による人権侵害があり適切ではなかった――と主張。孟氏の早期釈放を求めており、審理の争点となっている。

ホルムズ判事はカナダの銀行に対して同様の行為がなされれば詐欺罪に当たることなどを根拠に挙げ、双罰性が適用されるとの認識を示した。米国が起訴内容に含めた詐欺などの罪状の立証については、今後順を追って判断するとした。身柄送還を巡る審理は今後、数回にわたり年末にかけて続く見通し。

 

ーーー

米司法省は、イランへの輸出に対する米国の制裁にもかかわらず、華為技術が同国に製品を販売したかどうかについて捜査を始めていた。 今年8月22日に孟氏の逮捕状を取り、11月29日に孟氏がバンクーバーに立ち寄ることを把握し、犯罪人引渡協定に基づき、カナダに逮捕と身柄引き渡しを求めていた。 (なお、今回の件が犯罪人引渡協定の対象になるかどうかについて議論があるという。)

逮捕の12月1日には、トランプ米大統領と習近平中国・国家主席 が、G20出席のため訪問中のBuenos Airesで夕食会形式で首脳会談を開き、米国が中国への追加関税を猶予することを決めている。

ボルトン米大統領補佐官(国家安全保障担当)は、孟氏が12月1日に逮捕されることを「事前に知っていた」と明らかにした。 大統領が知っていたかどうかは不明だが、ボルトン補佐官は米中首脳会談に出席しており、逮捕情報を知りつつ習氏ら中国側に情報開示をしなかった可能性が出てきたことで、中国側が今後の通商協議で態度を硬化させる恐れがある。


報道によると、米当局は少なくとも2016年から、Huawei がイランとの違法取引に関わっていないか捜査してきた。
英金融大手HSBCがHuawei の関与の疑いのある取引を見つけ、米捜査当局に報告したとされる。

12月7日にバンクーバーの裁判所で孟氏の保釈をめぐる聴聞会が開かれた。カナダ司法当局は拘束理由を明らかにし、逃亡の恐れがあるため保釈しないよう求めた。

カナダ当局によると、米司法当局は、Huawei が2009〜14年に香港に拠点を置く関係会社のSkycom Techを通じて米国のコンピュータ機器をイランの携帯電話の会社に販売したとみている。これは米国製品をイランに販売することを禁じる法律に違反するもの。しかし、孟氏は2013年に米金融機関に対して、Huawei とSkycom Techが「無関係だ」と虚偽の説明を行い、違法な金融取引に関与させた疑いがある。

米司法当局の調べでは、Huawei は2009年にSkycom Techを売却したように装っていたが、少なくとも2014年まで管理下に置いていた。
Skycom Techの登記簿によると、孟氏は2008年2月〜2009年4月に同社取締役を務めていた。

カナダの裁判所は12月10日にも聴聞会を開き、保釈の可否を判断する。米国に身柄を送還するかどうかは、裁判所が判断したうえでカナダの司法相が決める。米国で有罪となれば最大30年投獄される可能性があるという。

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Huaweiは12月6日、「現時点で逮捕に関する情報は少しもないが、不正行為の認識はない。カナダと米国の司法制度が最終的には公正な判断を下すことを信じている 。Huaweiは、事業を営む場所全てで、国連と米国とEUの輸出管理と制裁の法律・規則を含め、法と規則を遵守している」と述べた。

The company has been provided very little information regarding the charges and is not aware of any wrongdoing by Ms.Meng. The company believes the Canadian and US legal systems will ultimately reach a just conclusion.
Huwai complies with all applicable laws and regulations where it operates, including applicable export control and sanction laws and regulations of the UN, US and EU.

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孟氏はHuaweiの創業者、任正非(Ren Zhengfei)(74)の長女で1972年生まれ 。16歳の時に母親の姓に改姓した。

1992年に大学を卒業後、1年間、国有銀行大手「建設銀行」で勤務した後、Huaweiに入社 し、秘書として商品リストの打ち込みや営業サポートなどを経験した。
1997年から1年半休職し、華中理工大学で会計学を学び、その後は社内の財務部門で昇進した。

社内では2011年の役員就任時に任会長の長女であることを初めて明かした。

本年3月に副会長に就任したことで、後継有力候補と目されるようになった。

ーーー

Huaweiは中国最大の民営企業で、習近平指導部が進めるハイテク産業育成策「中国製造2025」で重要な役割を占める。 次世代通信規格「5G」のインフラに注力しており、世界66カ国の通信会社向けに約1万件の基地局をすでに出荷している。

輸出管理法を管轄する米商務省が違法と判断すれば、米国企業との取引を規制する制裁を科す可能性がある。

HuaweiはGoogleのスマホ用基本ソフト(OS)Androidや米Qualcommの半導体を採用するなど米国企業と幅広く取引して おり、米国が制裁に踏み切れば、同社の経営には大きな打撃となる。

米商務省は2016年3月、中興通訊(ZTE)が2010年にイランや北朝鮮に禁輸措置品を輸出し、その事実を隠ぺいしたとして、輸出禁止の対象とした。

その後、トランプ大統領と習主席の話し合いで、ZTEが罰金を支払うことで7月に制裁を解除した。

2018/6/8    米政府、中興通訊(ZTE)の事業再開認める


Huaweiの問題が米中協議に悪影響を及ぼすとの懸念が市場で広がっている。

トランプ米大統領と習近平中国・国家主席は12月1日の首脳会談で、両国は直ちに、(1)米企業への技術移転の強要 (2)知的財産権の保護 (3)非関税障壁 (4)サイバー攻撃とサイバー犯罪 (窃盗)(5)サービスと農業の市場開放 の5分野での構造変化の協議を開始し、90日以内(2019年2月末まで)に結論を得ることで合意した。

この間に合意できない場合、現在は追加関税が10%の2000億ドル分の中国製品について、追加関税は25%に引き上げられる。

トランプ米大統領は7日「米中協議はとても順調だ!(China talks are going very well!)」とツイッターで強調した。
米国家経済会議(NEC)のクドロー委員長は、Huawei 問題は「安全保障の問題」であり、米中協議とは「別の問題だ」と主張した。


米国政府・議会は、中国の通信・監視カメラなどハイテク企業を排除すべく、動いている。日本をはじめ、各国もこれに引き込まれつつある。

米上下両院は2018年8月、華為技術(Huawei)や中興通訊(ZTE)と、監視カメラ大手の杭州海康威視数字技術(HIKVISION )、浙江大華技術(Dahua Technology)、海能達通信(Hytera)の計5社への締め付けを大幅に強化することを盛り込んだ「2019年度米国防権限法(NDAA2019)」を超党派の賛成で可決 し、8月13日にトランプ大統領が署名し成立した。2020年からは、これら各社の製品を使用する世界の企業は米国政府との取引を禁止される。(詳細追って)

豪州政府は8月に、次世代通信規格「5G」の通信網について、「安全保障上の懸念」から、Huawei とZTEの参加を認めない方針を出した。

ニュージーランドでは同国大手通信事業者が11月下旬、5Gの整備で華為製品を使用しないと発表した。同国政府が、華為製品の使用は「国家安全保障上の重大な危機」があると警告したため。

日本政府は、Huaweiなどを念頭に、中央省庁が情報通信機器を購入する際、価格だけでなく、安全保障上のリスクを低減できるかどうかを考慮するという調達指針を策定することとした。

各省庁や自衛隊などが使用する情報通信機器について、安全保障上の懸念から、中国通信機器大手HuaweiとZTEの製品を「事実上」排除する方針を固め与党関係者によると、「政府がファーウェイの製品を分解したところ、ハードウェアに“余計なもの”が見つかった」という。

EUの欧州委員会の副委員長は12月7日、Huaweiなどの中国のIT企業は中国の情報機関との協力を義務付けられているとし、欧州の安全保障上のリスクを懸念する必要があると述べた。


2018/12/11    2019年度米国防権限法(NDAA2019)  ---  Huawei、ZTE等の米政府機関との取引からの排除 

米上下両院は2018年8月、華為技術(Huawei)や中興通訊(ZTE)と、監視カメラ大手の杭州海康威視数字技術(HIKVISION )、浙江大華技術(Dahua Technology)、海能達通信(Hytera)の計5社への締め付けを大幅に強化することを盛り込んだ「2019年度米国防権限法(NDAA2019)」を超党派の賛成で可決し、8月13日にトランプ大統領が署名、成立した。

米国では議会が2012年頃から「Huawei と ZTEの通信機器が中国のスパイ活動に利用され、米国が開発した軍事技術が流出している」として米企業に2社の製品を使わないよう呼びかけを始めた。

2017年には国防総省による2社の製品調達を禁止する法律 (National Defense Authorization Bill ) が成立 した。

2018年5月に国防総省は世界中の米軍基地の携帯電話販売店で HuaweiとZTE製のスマホの販売を禁止した。

背景には、米国による「中国製造2025」潰しもある。


2019年度米国防権限法(NDAA2019)は、禁止を国防総省以外にも拡大するもので、対象条項は、SEC. 889. Prohibition on certain telecommunications and video surveillance services or equipment.

禁止対象製品 (covered telecommunications equipment or services) は次の通り。

(A) Huawei Technologies と ZTE (関係会社を含む)製の通信機器 (Telecommunications equipment)

(B) Hytera Communications、Hangzhou Hikvision Digital Technology、Dahua Technology Company  (関係会社を含む)製のセキュリティ用のビデオ監視・通信機器 (video surveillance and telecommunications equipment)

(C) 国防長官が国家情報長官、FBI局長との協議で、中国政府の影響下またはつながりがあるとみなす企業の通信機器及びビデオ監視システムも同様の扱いとなる。

* B 条項を提案したVicky Hartzler 下院議員は次のように述べている。

中国政府があらゆる手段を使って米国を標的にしている現実に対処せねばならない。中国企業が販売するビデオ監視装置やセキュリティ機器は米国政府を著しく脆弱な状況にしている。この法律は中国政府に米国の政府機関のビデオ監視をやらせないようにするものだ。

HIKVISIONは監視カメラ業界で世界シェア31.3%で1位、Dahua Technologyは世界2位
海能達通信(Hytera)は警察など特定用無線で世界1位

禁止は2段階に分かれる。

第1 段階(発効日の1年後=2019年8月13日以降)

  米政府機関(連邦政府、軍、独立行政組織、政府所有企業)が5社の製品や、5社が製造した部品を組み込む他社製品を調達することを禁止

procure or obtain or extend or renew a contract to procure or obtain any equipment, system, or service that uses covered telecommunications equipment or services as a substantial or essential component of any system, or as critical technology as part of any system;

第2段階(発効日の2年後=2020年8月13日以降)

    5社の製品を社内で利用している世界中の企業との取引を禁止
(米政府機関に収めている製品・サービスが通信機器とは一切関係のない企業でも、5社の製品を使っておれば禁止)

enter into a contract (or extend or renew a contract) with an entity that uses any equipment, system, or service that uses covered telecommunications equipment or services as a substantial or essential component of any system, or as critical technology as part of any system.

問題は第2段階である。

既に世界の企業で多くの中国製通信機器が利用されている。企業が米国政府と取引を続けたい場合には、問題視されている機器の利用を一切やめ、その旨を米政府に報告・誓約しなければならなくなる。

中国国内に工場を持ち製品を作っている企業の多くは、中国製の通信機器を使わざるをえない状況にあるケースが多いという。これらの企業にとっては、「米政府と取引を続けるか、中国での生産活動を続けるか」という事実上の踏み絵を突き付けている。

 

日本でも多くの企業がHuaweiなどの製品を使っている。

Huawei の通信基地局の日本国内シェアは2017年度に13%で、低価格を武器に、約18%のNECや富士通に迫る。

ソフトバンクは Huawei の基地局を採用しており、同社と5Gの共同開発や実証実験を行っている。NTTドコモも5Gの実証実験で Huawei と組んでいる。

ソフトバンクは次世代通信「5G」の基地局などに中国製の設備を使わない方針を固めた。

付記 ソフトバンクは現行の携帯電話の通信規格「4G」の設備について、華為技術(Huawei)など中国製の基地局をなくす方針を固めた。
    スウエーデンの
Ericsson、フィンランドのNokiaの製品に順次置き換える。

一方、Huawei は大量の部品を日本企業から調達している。2017年の日本での調達額は約4900億円。

 

付記 

 

 


2018/12/12  Brexit 難航

英国のメイ首相は12月10日、英国のEUからの離脱案を巡り、12月11日に議会下院で予定していた採決を見送ると表明した。

離脱案の内容に対して野党だけでなく与党の一部からの反発も強く、このままでは採決しても否決が確実だと判断した。

特に、Backstop案移行期間中にも北アイルランド問題が解決しない場合に英国全土をEU関税同盟に残すという最後の策)では英国が永遠にEU関税同盟に残ることとなり、「EUの政策決定に関与できないまま、EU規則に縛られ続ける」と不満が噴出している。

英国政府は12月5日、EU離脱に関してメイ首相がコックス法務長官から受けた法的助言の全文を公表した。首相が全文公開を拒否したことが議会侮辱に当たると認定する動議を可決し、公表を余儀なくされた。

助言には、アイルランドの国境管理厳格化を避けるためのBackstopを巡り、英国がEU関税同盟に無期限にとどまるリスクが明記されている。

Backstopについては「恒久的なものを意図しておらず、別の恒久的な取り決めに替えるという当事者の明確な意思を記すものだが、国際法では代替的な合意が取り交わされるまでの間、無期限に存続する」と指摘、「停止する権利がないため、英国が長期的、反復的な交渉に縛られる法的リスクがある」としている。

メイ政権に閣外協力する北アイルランドの地域政党、民主統一党は、法的助言は「破滅的」との見解を示した。

離脱協定が発効するには下院(定数650)での合意案承認が不可欠で、正副議長らを除いた639の過半数(320)の支持が必要である。与党・保守党は下院で315議席を保持するが、 野党第1党の労働党だけでなく、保守党からも100名程度が反対するとみられ、採決した場合、大差で否決されるとみられていた。


首相はEUと再交渉して合意の修正を試みたうえで、議会の承認をめざすとみられる。

しかし、EU側は現在の合意が「唯一の選択肢」としており、再交渉に応じるかは不透明だ。

EUのトゥスク大統領は、EUが12/13-14に開く首脳会議で英国のEU離脱が議題に取り上げられるが、離脱合意案の再交渉は行わないと言明、「Backstopを含め、合意は再交渉しない」と述べた。ただ「合意なき離脱シナリオへの対応についても討議する」とした。

与党内の意見はまとまっておらず、首相が英国内の意思をまとめた修正案を作れるかどうかも不明である。

保守党内では「EU離脱により英国の主権の回復が必要」という強硬離脱派の発言力が強いが、EUとの経済関係の維持を求める意見も根強い。

付記

英国の与党・保守党は12月12日夜にメイ党首(首相)の信任投票を行い、メイ党首の続投を決めた。
保守党の規約では下院議員の15%(現在は48人)が党首交代を求める書簡を提出すると信任投票が行われる。今回はEUからの決別も辞さない強硬離脱派の議員を中心に書簡が集まった。

一時的に党を離れていた議員も含め317人が投票。信任200、不信任117で、メイ氏の信任が決まった。

メイ氏は投票に先立つ演説で「次の選挙(今の下院議員の任期は2022年まで)の時に、私は党首(首相)としては選挙戦に臨まない」と述べた。

ーーー

EU司法裁判所は12月10日、英国は、EU加盟国の同意なしに、EU離脱を一方的に撤回できるとの裁定を下した。

Brexit 反対派の英国の政治家や活動家のグループはかねてから、英国は一方的にEU離脱プロセスを止めることができるはずだと主張していた。一方で英政府やEUは、この主張を否定してきた。

今回の裁定を「追い風」に国民投票を再実施してEU残留を決めるとの動きが強まる可能性がある。ただし、メイ首相は国民投票の再実施に否定的である。


2018/12/13  三菱重工、トルコ原発計画断念へ 
 

政府や三菱重工業などの官民連合がトルコの原子力発電所の建設計画を断念する方向で最終調整に入った。日本経済新聞が報じた。

三菱重工は「当社が発表したものではない」とのコメントを出した。7月末に提出した事業化に向けた調査報告書(FS)をトルコ政府エネルギー・天然資源省にて評価中であるとしている。

建設費が当初想定の2倍近くに膨らみ、トルコ側と条件面で折り合えなかった。

 
 

三菱重工業とフランスのArebaは、1991年に燃料サイクル分野において合弁会社を設立、2006年には原子力事業でのより広範な協調で合意した。

2007年7月11日にArevaとの折半出資による合弁会社ATMEA社を設立、両社技術を融合した電気出力110万kW級の最新鋭の加圧水型軽水炉(PWR)ATMEA 1 を開発した。

2017年にフランス政府は、Arevaの救済のため、抜本的な同社の構造改革を決めた。

原子力部門はフランス電力(EDF)が主体で、三菱重工も出資した。(文末に再編図)

これに伴い、合弁会社ATMEAも、2018年1月1日にEDFと三菱重工の50/50 JVとなった。

ATMEA 1 はトルコのSinop原発で110万kW 4基の採用が決まった。 トルコの原発計画は、日本政府が成長戦略として推進する原発輸出政策の一環と位置づけられている。2013年に安倍晋三首相とトルコのエルドアン首相(現大統領)がトップ会談して本格的に動き出した。

2013年5月に日本・トルコ両政府は原子力協定と原子力発電所建設の細目を規定した政府間協定に調印したのに続いて、2013年10月に商業契約を締結した。

ロシアのRosatomが受注したAkkuyu 原発に続くもの。

Westinghouseは、トルコの三番目の原発計画(イーネアダ原発)でAP1000の原子炉4基を建設する方向で交渉したが、断念 した。

事業主体の国際コンソーシアムには、三菱重工業 15%、伊藤忠商事 15%、GDF Suez(現 Engie)21%、トルコ国営電力会社(EUAS)49%が出資することとなっていた。

トルコ建国100周年を迎える2023年の1号基稼働を目指した。

 

2013年当時の総事業費の見込みは2兆円規模だった。しかし、2011年の福島第1原発事故の後に強化された安全基準に対応した結果、総事業費は増大した。

低価格で原発輸出を進める中ロと比較され「価格差が開きすぎた」。今夏以降のトルコの通貨リラ急落も響いた。

2018年3月に採算性の調査を担当する三菱重工が内々にトルコ政府に事業費の見積もり を伝えたが、トルコ政府にはねつけられた。

三菱重工が7月末に提出した報告書では建設費が当初の2倍近くに膨らみ、総事業費は5兆円規模に達した とされる。

企業連合の出資で3割、日本の国際協力銀行などの融資で7割の建設費を確保し、売電収入で資金を回収する枠組みを想定していたが、 完全に予定が狂った。

日本、トルコ両政府が2013年に大筋合意した想定売電価格ではコストが回収できないのは明らかで、価格見直しが争点となるが、トルコ政府としても大幅値上げは難しいとみられる。


伊藤忠商事は、事業への参画はリスクが高いとみて、2018年3月末で離脱した。

三菱重工社長は2018年6月の朝日新聞のインタビューで、次のように述べた。

「われわれは(企業連合に)入る予定だが、事業体が成り立つかどうか。すべて責任を負うわけではない。設備の製造では中核になるが、事業体の中核にはならないと思う。どこが(中核に)なるかはこれからの問題で、コメントできない」

目標とする2023年からの稼働 は、「コメントできる立場ではないが、現実論として原発はかなり期間がかかるというのは事実だ」

「われわれが着工できる条件を、採算性調査の中で申し上げることに全力を尽くす。それが関係者にとって満足いくかどうかは、また別の話。みんながやりたいということにならないと進まないと思う」

 

他方、ロシアのRosatomが受注したAkkuyu 原発については、4基(能力は各120万kW)のうちの1号機の起工式が2018年4月に行われた。両国大統領は映像回線経由で参加した。

エルドアン大統領は「4基すべてが稼働すれば、同原発がトルコの必要電力の10%を賄う」と言及。計画は遅延しているが、2023年には1号機の運転を開始すると述べた。

総投資額は220億ドルと見積もられていたが、現時点での投資額は不明。

ーーー

東芝(Westinghouse)の撤退を含め、日本企業の海外原発計画は進展していない。

 

日英両政府は2016年12月22日、原子力分野で包括的に協力する覚書を結んだが、覚書では、日立傘下のHorizon Nuclear Power の英中部Wylfaの原発計画に加え、東芝傘下のNuGenが英中部 Moorside(Sellafield)で計画する原発について言及している。

2016/12/27  日英、原発建設協力で覚書、日立・東芝の案件対象

 

東芝は11月8日、英国における原子力発電所新規建設事業からの撤退を決定し、連結子会社のNewGeneration (NuGen)を解散すると発表した。

これまで売却交渉を続けてきたが、2018年度中のNuGen社の株式売却完了の見通しが立たないこと、及びNuGen社維持費用の継続負担等を勘案し、経済合理性の観点から、今般、解散を決めた。

2018/11/9 東芝、英原発事業を清算

 

朝日新聞は8月17日、「日立の英原発建設、米大手が外れる方向 建設費の高騰で」と報じた。

北ウエールズのAnglesey島 Wylfa Newydd における原子力発電所の建設(Horizon Project)で、建設工事の中核から米建設大手 Bechtelが外れる方向になった。建設費の高騰で採算をとりづらくなっているためで、原発建設のノウハウに乏しい日立には痛手となるとしている。

日本側も英国側も出資の目途はたっていない。
また、完成した場合の電力の買い取り価格も決まっていない。

2018/8/22     日立の英原発計画がピンチ

 

ベトナム政府は2016年11月22日、日本企業が受注し、同国南部に建設することになっていたベトナムで初めての原子力発電所の建設計画を中止すると決めた。

2016/11/14  ベトナムの原発建設計画 中止へ

 

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2017年のフランス政府によるArevaの構造改革のスキーム:

2017/7/14     三菱重工業、フランスのアレバ原子炉事業に出資


 

2018/12/14 JNC、新規有機EL材料を開発
 

チッソ子会社 JNCは12月11日、関西学院大学の畠山琢次教授との共同研究により開発した新しい有機 EL 材料が大手ディスプレイメーカーのスマートフォンに採用されたと発表した。

共同開発した有機EL材料は、これまでに使用されてきた材料系とは全く異なる新しい構造を特徴とした青色発光材料で 、ホウ素原子を含むヘテロ環構造を主骨格とし、電圧をかけることによって発生する光の波長の幅が従来の材料に比べ狭いことを特徴としている。これにより、発光したエネルギーロスを抑えることが可能となり、低消費電力化を実現でき る。

畠山琢次教授とJNCの共同研究は 2011 年から開始した。

2016 年には世界最高レベルの発光効率と色純度を持つ有機ELディスプレイ用青色発光材料を開発した。新しいタイプの有機EL素子に適用できる材料の開発も進めている。

JNCはこの有機EL材料を水俣製造所にて製造する。

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世界最高レベルの発光効率と色純度を持つ有機ELディスプレイ用青色発光材料は、2016年2月にドイツの科学誌 Advanced Materials のオンライン速報版で公開され た。

有機ELディスプレー用の発光材料としては、蛍光材料、りん光材料、熱活性化遅延蛍光(TADF)材料 の3種類が利用されているが、いずれも問題がある。

蛍光材料は発光効率が低いという問題がある。

りん光材料とTADF材料は、発光効率は高いものの、発光の色純度が低いという問題がある。色純度が低いと、ディスプレーに使用する際に、発光スペクトルから不必要な色を除去して色純度を向上させる必要があり、トータルでの効率が大きく低下する。


畠山教授は、発光分子の適切な位置にホウ素と窒素を導入し、共鳴効果を重ね合わせることで、世界最高レベルの色純度を持ちながら、発光効率が最大で100%に達するTADF材料 のDABNAの開発に成功した。

  発光効率 発光の色純度  
蛍光材料 低い    
りん光材料 高い 低い 不要な色を除去し、色純度を向上させる必要
(トータルでの効率が低下)
熱活性化遅延蛍光(TADF)材料
新TADF材料(DABNA) 最大で100% 世界最高レベル  

 

DABNAの特徴と TADFとの違い

DABNA  
 
   
TADF材料

光(可視光)は波長によって色が異なる。通常の光源は、一定の波長の幅を持った発光スペクトルを示すが、その幅が広ければ、さまざまな色(波長)の光が混合していることになり、色純度が低くなる。
発光スペクトルの幅が狭ければ、単色光に近づき色純度が高くなる。

TADF材料の場合、フィルターにより不要な色を除去し、色純度を向上させる必要 があり、トータルでの効率が低下する。

 

DABNAは、ホウ素、窒素、炭素、水素というありふれた元素のみからなり、市販の原材料から短工程で合成できることから、理想的な有機ELディスプレー用の発光材料 となるとしている。

 


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