ドイツ連邦議会(下院)は3月14日、首相選出投票を行い、シュタインマイヤー大統領の提案通り、国政最大会派の中道右派キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)を率いるメルケル首相を再選した。
第4次となるメルケル政権は、首相のCDU・CSUと第2党のドイツ社会民主党(SPD)の大連立政権で、2017年9月24日の下院選挙から約半年続いた政権空白が収束した。
投票結果は賛成364、反対315、棄権9
で、選出に必要な355(定数709の過半数)を僅か9票上回っての再選である。与党議員総数から35票下回った。
首相の任期は4年で、任期を全うすれば、コール元首相の戦後最長在任16年に並ぶこととなるが、求心力は著しく低下しており、前途多難である。
ーーー
2017年9月24日の連邦議会(下院)選挙で、キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)は709議席のうち246議席しか確保できなかった。
メルケル独首相の与党キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)が自由民主党(FDP)や緑の党と進めていた連立協議が11月19日、決裂した。
2017/11/23
ドイツ、メルケル首相の4選に暗雲
2018年2月7日、CDU・CSUが第2党の社会民主党(SPD)と続けてきた大連立交渉が、長時間の交渉の結果、原則合意に達した。
メルケル首相が率いるCDU・CSUが SPDに大幅に譲歩したもので、4カ月間の政治空白の解消に向けて前進した。
政権樹立に向けた最後のハードルとなる社民党の46万4千人のすべての党員による投票は今後、郵送で3〜4週間にわたって行われ、3月初めにも結果が公表される。
否決されれば、連立合意は白紙となり、再選挙の可能性が高まる。
2018/2/12 ドイツ連立交渉合意、
社会民主党の党員投票結果待ち
ドイツ社会民主党(SPD)は3月4日、連立合意を党員投票で了承したと発表した。連立合意への賛成が66.02%、反対は33.98%だった。
SPDのシュルツ党首は、昨年9月の総選挙直後に「メルケル政権には入閣しない」と断言し、連立から離脱した。
その後、連立に方向転換し、さらに外相として第4次メルケル政権に入閣すると発表した。
シュルツ氏の変節に、党内外から非難が集中し、シュルツ党首は2月13日、記者会見し、党首を即日辞任した。外相就任も断った。
下院の勢力図は下記の通り。
キリスト教民主同盟 (CDU) |
キリスト教
民主・社会同盟
(CDU/CSU) |
246 |
連立
与党 |
399 |
(首相選出投票)
賛成 364
(過半数 +9)
(与党全数 -35)
反対 315
棄権 9
欠席 21 |
キリスト教社会同盟 (CSU) |
ドイツ社会民主党(SPD) |
153 |
緑の党 |
67 |
野党
|
310 |
自由民主党(FDP) |
80 |
ドイツのための選択肢(AID) |
92 |
左派党 |
69 |
無所属 |
2 |
合計 |
709 |
|
計
709
過半数は355 |
2018/3/19 トランプ政権、貿易赤字解消に躍起、対中貿易赤字1000億ドル削減を要請
Wall
Street 紙は3月14日、トランプ政権が中国に対して米国の対中貿易赤字を1千億ドル減らすよう求めたと報じた。
貿易赤字削減の要請は、習近平国家主席の経済ブレーンで政治局員の劉鶴氏が2月下旬から3月上旬にかけて訪米した際に米政府から伝えた模様。
トランプ大統領は習首席に「対中貿易赤字は持続的ではない」と不満を直接伝えるなど、赤字削減に強い意欲を示してきた。
大統領は3月7日のツイッターで「貿易赤字を1000億ドル減らす計画の策定を求めた。中国がどのように返答してくるか楽しみだ」と述べている。
China has been asked to develop a plan for the year of a
One (hundred ) Billion Dollar reduction
in their massive Trade Deficit with the United States.
Our relationship with China has been a very good one, and we look
forward to seeing what ideas they come back with. We must act soon!
TwitterではOne
Billion Dollar(10億ドル)となっており、White House
は「タイプミスで、大統領が意味したのは1千億ドルだ」と訂正した。
米国の対中貿易赤字は2017年に3757億ドルに達する。これから1000億ドルを減らすよう求めている。
しかし、不思議なことに、中国の統計では2017年の対米貿易黒字は2758億ドルで、米国の統計と1000億ドルの差がある。
米国統計では中国からの輸入が中国側の対米輸出よりも遥かに多く表示されている。
(付記 中国の貿易統計では、香港向けで多額の黒字が出ており、このうち、かなりの部分が中国向けと思われる。)
中国の商務相はトランプの1000億ドルを意識して、「米国の貿易統計は対中貿易赤字が約20%も高めに出る」と指摘した。
両国の統計の差がなぜ生じるかは明確でない。米中両政府が専門家チームをつくり、統計の差が米中間の貿易収支に与える影響を分析したとされる。
中国:中国税関総署 商品 国别(地区)总值表
米国:US Sensus 統計 Exhibit 20a. U.S. Trade in
Goods by Selected Countries and Areas - BOP Basis
なお、日本の場合はあまり差はなし。(簡便法で日本の統計を1$=110円で換算)
別途、中国商務部は本年1月には、ハイテク製品の対中輸出を制限する米国の規制が米国の対中貿易赤字の原因になっているとの認識を示した。
米国では安全保障の観点から、軍事転用可能な民生品、ソフトウェアおよび技術の輸出を商務省内の産業安全保障局(Bureau of Industry
and Security)が輸出管理規制(Export Administration Regulations)によって管理している。
この問題は2011年5月の米中戦略・経済対話の時点で既に取り上げられている。中国側は「米国は中国市場でのチャンスをみすみす失っている」と述べ、規制を緩めれば米国の対中輸出が増え、貿易不均衡は縮小するとの見通しを示した。
ーーー
トランプ大統領は、貿易赤字の縮小に躍起になっており、中国を始めとし各国に次々と圧力をかけている。
トランプ大統領は3月8日午後、鉄鋼とアルミニウムに輸入制限の発動を命じる文書に署名したが、Twitterの発言では建前の安全保障ではなく、貿易赤字を問題にしている。
米国が貿易黒字である豪州は対象外とし、日本やEUは貿易赤字を指摘、当面対象外としたカナダとメキシコについてはNAFTA交渉の結果次第としている。
2018/3/9 トランプ大統領、鉄鋼・アルミの輸入制限発動を命令
2018/3/12
鉄鋼とアルミニウムの輸入制限問題、大統領のつぶやき
トランプ政権が、知的財産権侵害を理由に中国に制裁措置を発動する方針であることが明らかになった。追加関税総額が300億〜600億ドルに達する可能性があると報じられた。
大統領は2017年8月14日、不公正貿易での制裁も視野に、中国に対する通商法301条に基づく調査を開始するよう指示している。
米通商代表部(USTR)は8月18日、中国による知的財産権の侵害を対象に通商法301条に基づく調査を開始したと発表した。
2017/8/18
米大統領、通商法301条で対中調査指示
トランプ大統領は対韓貿易赤字の解決に向けて「在韓米軍カード」の利用を示唆した。
大統領は3月14日の演説で、「われわれは韓国との貿易でとても大きな赤字を抱えているのに、彼らを防衛している」と
、「われわれは貿易で金を失い、在韓米軍でも金を失っている」と述べた。さらに「今、韓国と北朝鮮の間には米国の軍人32千人(実際には28千人とされる)がいる。何が起きるのか見てみよう」と
述べた。「同盟国は自国のことは気に掛けるが、米国のことは気に掛けない」とも述べた。
We have a
very big trade deficit with them, and we protect them.
We lose money on trade, and we lose money
on the military. We have right now 32,000 soldiers on
the border between North and South Korea.
Let’s see what
happens.
Our allies care about themselves. They don’t care about
us.
日本にも同じことを言いかねない。
2018/3/20 EU、米の鉄鋼・アルミ輸入制限への報復関税案を発表
トランプ米政権の鉄鋼とアルミニウムの輸入制限の発動予定日の3月23日が迫る中、EUの通商担当のマルムストローム欧州委員は近くロス米商務長官と会談し、NATOに属するEUを、安全保障を理由とした輸入制限の対象とすべきではないと訴える方針である。
ホワイトハウスのサンダース報道官は3月16日、「国家安全保障で協調でき、一定の柔軟性が存在する分野について複数の国と協議中」と説明、来週末にかけ交渉を続けると述べた。
付記
鉄鋼やアルミニウムの輸入制限は米東部時間3月23日午前0時1分(日本時間同日午後1時1分)に発動された。同時刻以降に米国に輸入された製品から追加関税を徴収する。
ホワイトハウスはカナダ、ブラジル、メキシコ、EU、オーストラリア、アルゼンチン、韓国への関税を5月1日まで猶予する方針を示した。完全に除外するかどうかは各国と貿易問題などを交渉して決める。
日本は除外対象にならなかった。
EUは3月16日、EUが輸入制限の対象となった場合の対抗措置として、最大25%の報復関税
を課す対象品目リストを公表した。
品目リストの提示は域内企業を対象にしたパブリックコメント(意見公募)が目的で、今後、集まった意見をもとに、最終的な品目リストを絞り込む
。
対象品のリストは10ページにわたり、とうもろこし、コメ、オレンジジュース、バーボンウイスキー、たばこなどの農産品からボート、オートバイやジーパンなどの衣料品、鉄製の家電製品(レンジやヒーター等々)まで様々な品目が並ぶ。
http://trade.ec.europa.eu/doclib/docs/2018/march/tradoc_156648.pdf
米メディアは与党共和党の有力議員の地元特産品を標的にしたと指摘した。
バーボンウイスキー:Kentucky州(上院
Majority Leader Mitch McConnelの地盤)
クランベリージュース:Wisconsin州(下院 Speaker Paul D. Ryanの地盤)
オレンジジュース:Florida 州(political swing state=選挙結果を左右する州)
タバコ:North Carolina州 (同上)
ユンケル欧州委員長は3月2日、報復関税の対象に検討する米製品として、オートバイのHarley-Davidsonやバーボン・ウイスキー、Levi'sのジーンズといった代表的な米ブランドを例示していた。
対象品の年間輸入総額は64億ユーロで、EUから米国向けに輸出される鉄鋼とアルミの金額に相当する。
リストは2つに分かれている。
Part A
は米国がEUに対し輸入制限を発動すれば即座に報復関税を課するもので、金額は28億ユーロ。これについては25%の関税を課する。
Part
BはWTOが米国の措置を違法と判断した場合、若しくは3年が経過した時に発動するもので、金額は36億ユーロ。
EUはこの対抗策を5月23日までに(又は米国の発動後60日以内に)WTOに通知する。
ーーー
なお、ある国を輸入制限の対象外とするかどうかについては大統領が最終決定するが、米国内で調達しにくい特定製品について関税の適用除外するかどうかは商務省が決定する。
商務省は米国企業からの申請に基づき、製品ごとに、@満足できる水準の品質とA十分な利用可能の量で、米国内で製造されているかどうかを審査する。
3月19日から受け付け、最長90日で判断する。
2018/3/21 建設石綿訴訟の控訴裁判決、一人親方も救済
1945年頃から2010年までに建設現場で働き、建材用アスベスト(石綿)を吸って肺がんや中皮腫などになったとして、首都圏の元建設労働者や一人親方と遺族ら354人が、国と建材メーカー42社に計約117億円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が3月14日、東京高裁であった。
1審の東京地裁は2012年12月、原告170人に総額10億6394万円の賠償を命じた。
一人親方については、国は責任を負わないとし、メーカーについては、共同不法行為は成立しないとした。屋外作業については、危険性を容易に認識できたと言えないとした。
今回の控訴審では、1審判決から賠償額を増額し、「一人親方」(被災者ベースで150人ほど)を含む327人に計約22億8140万円を支払うよう国に命じる判決を言い渡した。
一人親方については、「建設現場で労働者とともに作業に従事した一人親方らは法律上、保護される」と指摘した。労働安全衛生法の趣旨などに照らし、有害物の規制や職場環境の保全については、労働者以外も保護対象になると判断した。
メーカーへの請求は、「健康被害との因果関係が立証されていない」などとして、棄却した。
屋外作業に関わっていた原告も救済の対象にならなかった。
判決は、1972年頃には、少量の石綿粉じんにさらされても中皮腫を発症し得るとの医学的知見が集まっていたことなどから、「国は屋内で建設作業に従事していた労働者らについて、遅くとも1975年10月(改正特定化学物質障害予防規則施行日)には防じんマスクの着用などを義務付けるべきだった」と指摘した。
1審で明確に示されなかった終期を2004年9月30日(改正労働安全衛生法施行令施行日前日)とした。
1審判決では、遅くとも1981年以降に対策をとっておれば、多くの被害を防止できたと結論づけており、今回、国の責任期間を6年早めた。
ーーー
地裁段階ではこれまでの7件、高裁では今回を含め2件の判決があった。控訴審はほかに札幌、大阪、福岡の各高裁で係争中で神奈川訴訟は最高裁で争われている。
2012年5月の横浜地裁は国もメーカーも無罪としたが、他はすべて国の責任を認めた。
建材用アスベストについては、一人親方について国の賠償責任を認めたのは初めて。
メーカーについては、2016年1月の京都地裁、2017年10月の横浜地裁、2017年10月の東京高裁判決で一部メーカーの責任が認められている。
他は、発症原因のメーカーが特定できないなどとして認めていないが、2017年2月の札幌地裁は国と建材メーカーによる損害補償制度の創設の必要性を指摘した。
過去の判決については、下記を参照。
2017年10月30日 建設現場でのアスベスト被害で高裁で賠償命令、一審逆転
2018/3/22 フィリピンのJG Summit の石化増強計画
日揮は3月19日、同社とイタリアのTecnimont のJVがフィリピンの
JG Summit Petrochemical から石油化学プラント建設プロジェクトを受注したと発表した。
首都マニラの南120kmのBatangasにあるJG
Summit Petrochemical のコンプレックスに年産25万トンのHDPE設備を新設するとともに、既存のPPプラントを現在の19万トンから30万トンに拡大する。
同社は現在、HD/LLスイングプラント2系列計32万トンを持っており、今回の計画が完成すると、PE能力は総計57万トンとなる。
JVはTecnimont Philippinesが65%、日揮子会社のJGC
PHILIPPINESが35%出資する。
契約内容は建設に係るEPC
(設計、機材調達、建設工事)役務で、契約金額は180百万ドル(日揮分 63百万ドル=約70億円)。納期は2020年中頃。
JG Summit Petrochemical は同じBatangasに姉妹会社でオレフィンを生産するJG
Summit Olefinsを持つ。
JG Summit
Olefinsは年産32万トンのエチレンとプロピレン、mixed-C4、分解ガソリンを生産しているが、2021年までに3期に分けて、エチレン増強、ブタジエンプラント新設、BTXプラント新設を行うことを計画している。(フィリピン通商産業省の発表)
同社グループの各製品の能力の推移は下記の通りとなる。(千トン)
メーカー |
製品 |
当初 |
2014/11 |
今回計画 |
JG Summit Olefins |
エチレン |
ー |
320 |
B |
480 |
プロピレン |
190 |
241 |
mix-C4 |
110 |
136 |
分解ガソリン |
216 |
295 |
ブタジエン |
ー |
@ |
70 |
ラフィネート |
ー |
89 |
ベンゼン |
ー |
A |
126 |
トルエン |
ー |
76 |
キシレン |
ー |
46 |
JG Summit Petrochemical
|
PE(HD/LL)
|
175→200 |
320 |
320 |
PE(HD) |
ー |
ー |
250 |
PP
|
180 |
190 |
300 |
ーーー
JG Summit
Holdingsはフィリッピンのコングロマリットで、下記の7つのコア事業を行う。
消費財、食品:Universal Robina Corporation
不動産、ホテル:Robinsons Land Corporation、United Industrial Corporation (Singapore)
航空:Cebu Pacific Air
石油化学:JG Summit Petrochemicals、JG Summit Olefins
金融:Robinsons Bank
テレコム:Philippine Long Distance Telephone Company
電力:Manila Electric Company
JG
Summit Petrochemicalは1998年4月に JG Summit Holdings 80%、丸紅20%のJVとして設立された。
BatangasにいずれもUNIPOL™ 法で
PE(HDPE/LLDPE) 175千トン、PP 180千トンプラントを建設した。
丸紅はその後、出資比率を17.72%としたが、2007年に撤退し、JG
Summit Holdingsの100%子会社となった。
JG Summit
Olefinsは2008年に設立され、2014年11月に商業生産を開始した。同国最初のナフサクラッカーとして、6年間(2014年1月から)の免税など、税務上その他の恩典を受ける。
JG Summit Olefinsの完成に合わせ、JG
Summit Petrochemicalは
PEを1系列増強し年産32万トンに、PP能力は1万トン増強し、年産 19万トンにした。
2015/7/17
フィリッピンの石油化学の現状
2018/3/23 中国石油天然気集団、アブダビ沖合のADMA鉱区の権益取得
アブダビ国営石油会社(ADNOC)は3月21日、ADMA鉱区の3つの油田の権益を中国石油天然気集団(CNPC)の子会社
PetroChinaに与えたと発表した。
国際石油開発帝石の子会社のジャパン石油開発(JODCO)がADNOCと共同で運営してきた油田の一部である。
契約地域 |
当初権益比率 |
JODCO |
ADNOC |
その他 |
ウムシャイフ油田 |
12% |
60% |
BP
14.67%
TOTAL 13.33% |
ナスル油田 |
ウムルル油田 |
下部ザクム油田
|
上部ザクム油田 |
12% |
60% |
ExxonMobil 28% |
ウムアダルク油田 |
12% |
88% |
ー |
サター油田(SARB) |
40% |
60% |
ー |
これらの油田は 相次いで期限が来るが、生産コストが安く探鉱リスクもないことから、BPやTOTALが比率拡大を狙うほか、中国も新規参入を目指しており、今後、激しい国際競争が予想された。
国際石油開発帝石も政府の支援を得て、延長交渉を行ってきたが、ADNOCは2017年8月7日、他数(more
than a dozen )の相手と交渉中であると発表した。
国際石油開発帝石は最終的にウムシャイフ油田、ナスル油田、
ウムルル油田の権益は失ったが、下部ザクム油田は10%を確保、ウムアダルク油田はこれまでの12%を40%に増やした。
上部ザクム油田とサター油田はこれまでの権益を維持した。
この時点ではスペインのCepsa、インドのONGC Videsh のグループが新たに権益を取得した。
2018/2/28 国際石油開発帝石、アブダビの下部ザクム油田の権益取得
ADNOCは3月21日、CNPC(PetroChina)にウムシャイフ/ナスル油田と下部ザクム油田の権益各10%を与えたと発表した。
CNPCは参加料として、下部ザクムについて6億ドル、ウムシャイブ/ナスルについて5.75億ドルを支払う。
別途、ADNOCは3月11日にイタリアのENIにウムシャイフ/ナスル油田の権益の10%と下部ザクム油田の権益の10%を、3月18日にはフランスのTotalにウムシャイフ/ナスル油田の権益20%と下部ザクム油田の権益5%を与えた。Total
はジャパン石油開発とともに、これらの油田に当初から参加している。
Eniは参加料として、下部ザクムについて3億ドル、ウムシャイブ/ナスルについて5.75億ドルを支払う。
Total は参加料として、下部ザクムについて3億ドル、ウムシャイブ/ナスルについて11.5 億ドルを支払う。
鉱区 |
今回改正(青字は2018/2、赤字は2018/3の変更点) |
新期限 |
JODCO |
ADNOC |
その他 |
ウムシャイフ油田 |
12%→0% |
60% |
PetroChina 10%
Total 20%
Eni 10% |
2058/3/8 |
ナスル油田
|
60% |
ウムルル油田 |
60% |
Cepsa 20%
未定 20% |
下部ザクム油田
|
12%→10% |
60% |
ONGC Videsh 10%
PetroChina 10%
ENI 5%
Total 5% |
上部ザクム油田 |
12% |
60% |
ExxonMobil 28% |
2041/12/31 |
ウムアダルク油田 |
12%→40% |
60% |
ー |
2043/3/8 |
サター油田(SARB) |
40% |
40% |
Cepsa 20% |
2043/3/8 |
残るウムルル油田の相手先が未定である。また、下部ザクムについては、前回、ADNOCは20%分の放出を明らかにしたが、これも未定となっている。
ーーー
中国石油天然気集団(CNPC) はこれ以外にもUAEの石油事業に参加している。
国際石油開発帝石(INPEX)は2015年4月27日、ジャパン石油開発(JODCO)がアブダビ首長国の陸上のADCO鉱区の5%の参加権益を取得し、2015年1月1日からの40年間を契約期間とする利権契約を同国政府及びアブダビ国営石油会社(ADNOC)と締結したと発表した。
ADNOCの出資比率は1974年に60%となったが、他のメンバーは以下の通りであった。
BP、Shell、Exxon Mobil、Total
各9.5%、計38%
PortugalのPatex Oil and Gas 2%
これら各社の権益は2014年1月10日に期限切れで失効した。
新しく40年間の権益が与えられることとなり、各社が応札した。
先ず2015年1月1日付けでフランスのTotal が10%の権益を取得した。
INPEXの5%権益取得はこれに続くもの。
残りの25%分を次の各社が争った。
2015/4/29
国際石油開発帝石、アブダビ首長国の陸上ADCO鉱区の権益取得
2017年2月にCNPCは8%の権益を取得した。
最終の権益比率は次の通り。
ADNOC 60%
Total、BP 各10%、CNPC 8%、ジャパン石油開発
5%、中國華信能源(CEFC
China Energy:中国の新興エネルギー企業)
4%、韓国 GS Energy 3%
ーーー
CNPCは2014年に、CNPC
40%、ADNOC 60%の陸上及び海上採掘JV Al
Yasat を設立した。
海上利権は、Bu Haseer、Belbazem、Umm Al Dholou、Umm Al
Salsal、Yaser の油田で、2018年には生産開始が期待されている。
陸上油田はAbu Dhabi の南西の地域にあり、面積は7800 km²。現在開発中。
更に、中国は最大の石油輸入国であり、UAEは中国への10番目の輸出国である。
ADNOCとBorealisの60/40のJVのAbu
Dhabi Polymers (Borouge)は現在、下記の能力を持つが、中国は最大の輸出先である。Abu Dhabi Polymers (Borouge)は上海と広州にPPコンパウンド工場を持つ。
- HDPE/LLDPE 年産230万トン
- LDPE(wire
and cable用) 35万トン
- PP 176万トン
2013/1/26
アラブ首長国連邦(UAE)の石油化学の現状
2018/3/23 EU、バイエルのモンサント買収を承認
EUは3月21日、バイエルのモンサント買収を承認すると発表した。
問題となった両社の種子、殺虫剤、デジタル農業での重複に対応するため、バイエルが提出した対策を実施することが条件となっている。
付記 ロシアは4月20日、条件付きで承認した。
付記
バイエルは2018年4月26日、2017年10月のBASFとの合意内容に加え、BASFに事業と資産を 17億ユーロで売却することで合意した。
(合計76億ユーロ≒ 90億ドル)
新たに追加されたのは以下の事業で、EUや他の諸国の独禁法当局との約束を満たすための処理。
- Nunhems®ブランドで世界的に販売されているすべての野菜種子事業
- Poncho®、VOTiVO®、COPeO®
、ILeVO®の各ブランドで販売されている種子処理製品
- 小麦交配種の研究開発プラットフォーム
- 最新のデジタル農業プラットフォーム、xarvioTM
付記 米国は5月29日、条件付きで承認した。
付記 6月7日
買収完了、MonsantoはBayerの100%子会社に。両社統合は当局に約束した売却の完了後で約2か月後
ーーー
Bayerは2016年9月14日、Monsantoの現金での買収で合意したと発表した。
買収は2017年末までに完了する見通しとしていた。
2016/9/19
Bayer、Monsantoを買収
EUは2017年8月22日、買収によって農薬や種子などの分野で、競争が損なわれ、販売価格の上昇や品質の低下、選択肢の減少、技術革新の停滞などにつながる懸念があるとの暫定的な判断を示し、本件についてのin-depth
investigation を開始した。
2018年1月8日までに買収を承認するかどうか判断するとした。
これを受け、Bayerは2017年10月13日、Monsanto買収を進めるため、特定の
Crop Science事業をBASFに59億ユーロで売却すると発表した。
売却事業の2016年の売上高は約13億ユーロ。Monsantoの買収の完了を条件とする。
売却する事業は次の通り。
1) 非選択性のアミノ酸系除草剤グルホシネートアンモニウム塩(製品名:Liberty®、Basta®
、Finale® ) 対象地域は全世界。
2) 下記の種子事業
北米でのハイブリッド キャノーラ油 InVigor®(LibertyLink®
技術使用:除草剤Liberty に耐性を持つ)
欧州での菜種(oilseed rape)
欧州、米大陸での棉(インドと南アは対象外)
米大陸での大豆
関連知財、設備、育種技術
LibertyLink® 形質 及び trademark
従業員1,800 人超 (主として、米国、ドイツ、ブラジル、カナダ、ベルギー。BASFは最低3年の雇用継続を約束)
2017/10/16 Bayer、Monsanto買収の独禁法対策で、BASFに一部事業を売却
EUは当初2018年1月8日までに買収を承認するかどうか判断するとしたが、これを3月12日に延ばし、更に4月5日に延ばした。
Bayerは承認を確実にするため、Nunhems®ブランドで世界的に販売されている野菜種子事業の売却について、BASFと最終的な合意に向けた独占的協議をしていることを3月7日に明らかにした。
中国商務部は2018年3月13日、BayerによるMonsanto買収を条件付きで承認すると発表した。
承認に当たり、次の条件をつけた。
1) Bayerの世界の野菜種子事業、関連設備、人員、知財その他の処分
2) Bayerの非選択性除草剤(グルホシネートアンモニウム塩)事業と関連設備、人員、知財その他の処分
3) Bayerの世界のコーン、大豆、綿花、菜種の品種と関連設備、人員、知財その他の処分
4) 中国でのデジタル農業
Bayer、Monsanto、および統合会社の中国市場でのデジタル農業製品の商品化の5年以内に、
中国の全ての農業ソフトウエア開発企業は、正当で差別的でない条件で、ソフトウエアの使用を認められること。
Bayerはデジタル農業についての条件を受け入れた。
2018/3/16 中国商務部、BayerのMonsanto買収を条件付きで承認
ーーー
EUは@種子・形質 (Seeds and traits)、A農薬、Bデジタル農薬の分野で多くの懸念を示した。
EUは今回、Bayerが提案した下記の対策が、これらの問題を完全に解決するとした。
・両社で重複する種子と農薬の事業で、Bayerの事業と資産を処分
・それらには、種子・形質のグローバルなR&Dと、Monsantoの除草剤glyphosateと競合する製品の開発活動を含む。
処分対象にはBayerの線虫に対する種子の処理と将来競合すると思われるMonsantoの資産を含む。
・最後に、Bayerはグルーバルのデジタル農業についてライセンスを認めると約束した。
Bayerは前記の通り、2017年10月13日に特定の
Crop ScienceをBASFに売却すると発表、さらに2018年3月7日に、Nunhems®ブランドで世界的に販売されている野菜種子事業の売却について、BASFと最終的な合意に向けた独占的協議をしていることを明らかにしている。
EUは現在、この売却がEUの求める条件に合致するかどうか、また、新たな競争上の問題を生まないかをチェックしている。
このチェックが完了してから、BayerはBASFにこれらを売却できる。
ーーー
前記の通り、中国は2018年3月13日に承認を発表した。
ブラジルは2018年2月7日、買収を承認した。(2017年10月発表の特定の Crop
Science事業のBASFへの売却を条件)
オーストラリアは3月22日、買収に反対しないと発表した。
ロシアは審議中。 付記 ロシアは4月20日、条件付きで承認した。
米国は今回、審査を早めるとしたが、欧州とは状況が違うと述べた。「欧州では遺伝子組み換え種子はほとんど禁止されているが、米国では広く使われている。買収が米国の農家と消費者に与える影響の調査を続ける」とした。
2018/3/23 トランプ大統領、中国の知財侵害に制裁関税を指示
トランプ大統領は3月22日、米通商代表部(USTR)に中国の知財侵害に制裁関税を課すよう指示する大統領令に署名した。
テーマは、中国の、技術移転・知財・イノベーションに関する、法律・政策・慣行・行動についての通商法301条による行動となっている。
Presidential Memorandum on the Actions by the United States Related to
the Section 301 Investigation
内容は次の通り。
大統領は2017年8月14日、不公正貿易での制裁も視野に、中国に対する通商法301条に基づく調査を開始するよう指示した。
米通商代表部(USTR)は8月18日、中国による知的財産権の侵害を対象に通商法301条に基づく調査を開始したと発表した。
2017/8/18
米大統領、通商法301条で対中調査指示
USTRは下記の調査結果を大統領に報告した。
1)
中国は、JV規制、出資制限、その他の投資制限などの外国企業の中国での所有制限を使って、米国企業から中国企業への技術移転を強要している。
また、監査やライセンス手続きなどを使い、技術移転を求め、米国の投資や技術の価値を下げ、米国企業のグローバルな競争力を弱めている。
2)
中国は、技術供与の条件に制限を加えるなどにより、米国企業の投資や活動に重要な制限を加えたり、介入している。
結果として、米国企業は、中国側をアンフェアに利する条件でライセンスをすることとなる。
3)
中国は、最新の技術、知財を得られるよう、中国企業による米国企業や資産への投資・取得をシステマチックに行い、中国政府の産業計画に重要と思われる産業への大規模技術移転を行っている。
4)
中国は米国企業のコンピューターネットワークに不法に侵入している。それにより、中国政府は知財、事業秘密、秘密の情報にアクセスしている。これは、科学技術の進歩、軍の近代化、経済発展といった中国の戦略開発目的を支えている。
このため、下記を命じる。
USTRは、米国の通商を制限するような中国の不合理な、差別的な行動、政策、方針に対応する通商法301条の下での全ての行動をとること。
その行動に、中国製品への関税の増加を含めるかどうかを検討すること。
このため、USTRは15日以内に対象となる候補の製品と追加関税率のリストを公表すること。
その後、関係省庁と協議のうえ、最終リストを公表すること。
大統領令の60日以内に、状況を大統領に報告すること。
ーーー
USTRは米経済の被害額を年500億ドルと断定した。
USTRは15日以内に制裁関税を課す中国製品のリストを作成するが、約1300品目を想定している。
ホワイトハウス高官は、制裁対象の製品は、知財侵害の被害額と同規模の500億ドルと説明したが、トランプ大統領はその後に「600億ドルになるだろう」と述べた。
USTRによると、対象製品に航空宇宙や情報・通信技術、機械などが含まれるという。リストを向こう「数日」中に公表する。
これらに25%の関税を課す。
大統領は同時に、米財務省に中国企業の対米投資を制限するよう指示した。同省は60日以内に具体策を決める。中国の政府系企業などが最新技術の確保を狙って米国企業を買収するのを避ける狙いがある。
大統領はさらに、中国の知財侵害をWTOに提訴するよう要求した。
大統領は、中国によって「知的財産権が著しく侵害される状況が続いており」、貿易への影響は年間で数千億ドルに達すると指摘した。ホワイトハウスで署名する際に、「多数のうちの第1弾だ」と記者団に語った。
大統領はtwitterで呟いた。
ーーー
これに対し、中国政府は猛反発している。
中国大使館は「強烈な不満と断固とした反対」とする声明を発表した。「中国は貿易戦争を望まないが、恐れてもいない。あらゆる挑戦に対応できる自信と能力がある」とし、「米国は慎重に政策を決め、米中双方の経済貿易関係を危うくしないよう求める。他人を傷つけようとして自らを害する結果となることを避けるべきだ」と制裁関税の発動を見送るよう求めた。
元中国商務部次官は、「対中貿易戦争の宣戦布告だ」と述べ、「中国は貿易戦争を恐れていないし、避けようとしないだろう。われわれには自動車輸入、大豆、航空機、半導体の分野で、反撃できる多くの手段がある。トランプ大統領はこれが極めて悪いアイデアであり、勝者はおらず、両国にとって良い結果は出ないと知るべきだ」と指摘した。
米国が通商拡大法232条に基づき鉄鋼やアルミニウムに追加関税をかけることへの対抗措置としては、商務部は3月23日、米国から輸入するワインやドライフルーツ、豚肉などを対象に最高25%の関税を上乗せする準備をしていると発表した。対象は米国の2017年の輸出額で約30億ドル分。
鉄鋼・アルミの輸入制限の撤回や中国側が受けた損失の補償を求めて交渉し、まとまらなければ先ず、ワイン、果物、ナッツ、継目なし鋼管など120品目(輸入額10億ドル)を対象に15%を上乗せする。
その後もさらに交渉を続け、決裂すれば、豚肉、アルミニウムのスクラップなど8品目(輸入額20億ドル)を対象に25%を上乗せする。交渉期限は明らかにしていない。
この措置は、緊急輸入制限(セーフガード)への対抗措置として、WTO協定でも認められている。
鉄鋼やアルミニウムの輸入制限は米東部時間3月23日午前0時1分(日本時間同日午後1時1分)に発動された。同時刻以降に米国に輸入された製品から追加関税を徴収する。
ホワイトハウスはカナダ、ブラジル、メキシコ、EU、オーストラリア、アルゼンチン、韓国への関税を5月1日まで猶予する方針を示した。完全に除外するかどうかは各国と貿易問題などを交渉して決める。
日本は除外対象にならなかった。
2018/3/9
トランプ大統領、鉄鋼・アルミの輸入制限発動を命令
2018/3/12
鉄鋼とアルミニウムの輸入制限問題、大統領のつぶやき
2018/3/23 米、暫定予算期限切れ1日前に予算案承認
3月23日の暫定予算期限が近づく中、共和・民主両党の議会トップ4人は3月21日夜、10月までの政府予算を手当てする歳出法案で合意した。
本年2月8日につなぎ予算が切れ、政府機関が再度の閉鎖となった直後、2月9日早朝に両院で3月23日までの暫定予算を承認し、閉鎖が解除された。
両院で可決した上院の法案には、連邦政府支出を約3000億ドル増やす期間2年の予算合意、債務上限を1年間停止が含まれている。
2018/2/10
米国政府機関、再度の閉鎖、数時間後に予算合意で解除
米下院は同日、総額1兆3000億ドルの包括的歳出法案を公表した。
国境警備とインフラ、軍事予算を増やし、共和、民主両党議員へのアピールを狙った内容となっているが、与党共和党の内部にも反対が強かった。
歳出の大幅増額と減税により財政赤字が増大するため、歳出抑制、均衡予算を唱える多くの共和党議員にとって受け入れがたいものであった。
2200ページにも及ぶ予算案が前夜に初めて公表され、「誰も読んでいない、恥を知れ」と叫ぶ議員もいた。
トランプ大統領はメキシコとの壁建設費用として250億ドルを求めていたが、法案ではフェンス建設費など国境警備予算16億ドルだけを認めた。
大統領は事前協議で不満を示したが、法案を通すため、しぶしぶ認めた。
なお、民主党側は未成年時に親に連れられ不法入国する形で米国に来た「ドリーマー」の救済を求めていたが、共和党との協議がまとまらず、司法の判断に任すこととなり、不満を抱いている。
このほか、銃購入時の身元確認に用いるデータベースへのより厳格な報告を連邦省庁に義務付ける条項や、インフラプロジェクト予算210億ドル、過剰摂取による死亡者数の急激な増加が問題となっている麻薬性鎮痛薬オピオイド乱用対策の追加予算40億ドルも盛り込まれた。
共和党首脳は反対を抑えるため、軍事費の増額を強調し、賛成するよう求めた。
共和党のPaul Ryan下院議長は投票前に次のように叫んだ。
"Vote yes for our military. Vote yes for the safety and the security
of this country."
下院は3月22日に法案を可決した。共和党から保守派を中心に90人が反対した。
|
共和党 |
民主党 |
合計 |
賛成 |
145 |
111 |
256 |
反対 |
90 |
77 |
167 |
棄権 |
3 |
4 |
7 |
合計 |
238 |
192 |
430 |
しかし上院では保守派の反対が多く、難航した。
最後に投票に入り、22日深夜を過ぎて、可決した。共和党から23人が反対した。
|
共和党 |
民主党 |
無所属 |
合計 |
賛成 |
25 |
39 |
1 |
65 |
反対 |
23 |
8 |
1 |
32 |
棄権 |
3 |
|
|
3 |
合計 |
51 |
47 |
2 |
100 |
2018/3/24 デンソー、JOLEDに300億円出資
日本経済新聞(2018/3/20 )によると、デンソーが有機EL事業のJOLEDに300億円を出資する。
付記 JOLEDは8月23日、第3者割当増資により、総額470億円を調達したと発表した。(詳細下記)
JOLEDは2019年中に世界初となる低コスト方式での有機ELパネルの量産を始めるが、デンソーとパネルを共同開発して車載分野を強化し、先行する韓国勢に対抗する。
JOLEDは、RGB印刷方式による21.6型4K高精細の有機ELパネルを世界で初めて製品化し、2017年12月5日より出荷を開始した。
大画面に均一に一括塗布する設備技術・プロセス技術の実用化とともに、光取り出し効率が高い独自の「トップエミッション構造」により、優れた色再現性や広視野角を実現した。
住友化学が開発した高分子発光材料を使用する。印刷方式は蒸着よりコストが安い半面、パネルが大型になるほど均一に材料を塗布するのが難しかったが、これを使えば塗布のムラができにくくなる。
(JOLEDについて)
中国企業の大増設により、液晶パネル業界には「2012年問題」が発生し、2011年7-9月期に液晶パネルで世界の上位4位を占めるSamsung、LG、友達、奇美の4社が赤字となり、シャープは2012年3月期決算で3761億円の最終赤字を計上した。
これに対し、中小型液晶については日本勢はまだ頑張っていたが、個別には十分な能力増強投資ができず、競争力を失ったテレビ用パネルの二の舞いになる可能性が高い。
このため官民ファンドの産業革新機構は東芝とソニー、更に日立ディスプレイズの中小型の液晶パネル事業を統合させ、機構が2000億円を出資して「ジャパンディスプレイ」を設立した。
しかし、最大顧客の米アップルが iPhone
の新モデルで初めて有機ELを採用したことから、ジャパンディスプレイも有機EL事業の進出を図った。2015年1月にソニーとパナソニックの有機ELディスプレイパネルの開発部門を統合し発足したJOLEDに15%を出資した。
ジャパンディスプレイは2016年12月にJOLEDに51%の出資とすることを決めたが、中期経営戦略の見直しに伴い、実現していない。
ジャパンディスプレイは主力のスマートフォン向けの液晶パネルが振るわず、2017年3月期決算の純損益は317億円の赤字で、3年連続の赤字だった。
2016年にも資金難に陥り、産業革新機構から750億円の支援を受けたが、すでに底をついている。
2017/8/4
ジャパンディスプレイ、1千億円融資要請
付記 ジャパンディスプレイは2018年3月30日、JOLEDへの51%出資方針を取り消した。
JOLEDは2017年12月、生産拡大のため2018年3月末までに約1000億円の第三者割当増資を実施する方向で検討していると発表した。
約1000億円の3分の2をジャパンディスプレイの能美工場(石川県能美市)に投資し、生産規模を現在の10倍程度まで引き上げたい考え。残りは運転資金に充てる。
増資引き受けについて国内外の装置メーカーや材料メーカーなどと交渉している。
日経報道では、今回、この1000億円のうちの500億円を決めたという。
デンソーの300億円に加え、既存株主のパナソニックとソニー、発光材料の住友化学、生産設備のSCREENホールディングスもそれぞれ50億円ずつ出資する。
SCREENホールディングスは、京都府京都市にある半導体・液晶製造装置・印刷関連機器などの産業用機器を製造する企業グループの持株会社
残り500億円については、国内外の部材メーカーや商社などと交渉を続けている。
報道の通りなら、1000億円増資後の同社の出資は次の通りとなる。2018/8/23
の発表後の出資は下記の通り。
|
現状 |
増資-1 |
増資-2 |
増資完了後 |
産業革新機構 |
75% |
196億円 |
|
|
|
196億円 |
ジャパンディスプレイ |
15% |
39億円 |
|
|
|
39億円 |
Sony |
5% |
13億円 |
|
|
|
13億円 |
Panasonic |
5% |
13億円 |
|
|
|
13億円 |
デンソー |
|
|
300億円 |
|
|
300億円 |
豊田通商 |
|
|
100億円 |
|
|
100億円 |
住友化学 |
|
|
50億円 |
|
|
50億円 |
SCREEN |
|
|
20億円 |
|
|
20億円 |
others(交渉中) |
|
|
|
|
|
|
合計 |
|
262億円 |
470億円 |
|
|
|
付記
JOLEDは8月23日、第3者割当増資により、総額470億円を調達したと発表した。
引受先の内訳はデンソーが300億円、豊田通商が100億円、住友化学が50億円、SCREENファインテックソリューションズが20億円。
デンソーとは車載向けディスプレイの開発で協力するほか、豊田通商には販売面の協力を仰ぐ。住友化学とは材料開発での協力体制を強化する。
JOLEDは同日、生産設備の開発設計を行うパナソニック
プロダクションエンジニアリング、ディスプレイ製造工程で使われる各種装置と関連サービスを提供するSCREENファインテックソリューションズと、主にテレビ向けを想定した、印刷方式による大型有機ELディスプレイ製造のための印刷設備の開発・製造・販売・サービスに関する業務提携契約を締結したと発表した。
ーーー
デンソーは、「先進的な自動車技術、システム・製品を提供する、グローバルな自動車部品メーカー」である。
新技術の開発のため、積極的な投資・出資を行っている。
センサーやカメラを大量に搭載する次世代車向けでは、情報を分かりやすく表示するディスプレーの需要が高まる。
JOLEDとパネルを共同開発し、車向けの新たな販路を開拓する。
速度などの計器類を統合した大型パネルや車外のカメラ画像を映し出す「電子ミラー」などへの採用を見込んでいる。
デンソーは3月9日には、自動運転システムを始めとして、高度化、複雑化、大規模化する車両向け各種システムの開発を加速するため、そのキーデバイスである半導体の最先端技術を保有するルネサス
エレクトロニクス株式の保有比率を引き上げることを決定した。
産業革新機構から4.5%分を買い取り、出資比率を5.00%とする。
ルネサスエレクトロニクスは2010年4月に、三菱電機および日立製作所から分社化していたルネサス
テクノロジと、NECから分社化していたNECエレクトロニクスの経営統合によって設立された。
その後、下記の変遷をたどった。
2012/12
産業革新機構・トヨタ自動車・日産自動車など9社に1500億円の第三者割当増資
産業革新機構 69.16% デンソー 0.5%
2017/6 産業革新機構などの持ち株の一部を国内外投資家に売却
産業革新機構 50.10%
2018/3/14 産業革新機構が持ち株(4.5%分)をデンソーに売却
産業革新機構 45.60%、デンソー 5.00%
付記 ルネサスは4月3日、産業革新機構が12.2%分を放出すると発表、日立とNEC(退職給付信託)も一部売却する。
革新機構 45.6%→33.4%、日立 5.6%→3.7%、NEC 6.4%→4.3%
デンソーはまた、トヨタが自動運転技術の先行開発分野での技術開発を促進するために設立する「Toyota Research Institute Advanced
Development」にアイシンとともに出資する。
共同技術開発を行うことに加え、3社で3000億円以上の開発投資を実施することに基本合意した。
2018/3/24 米国歳出法案 成立
法案は難航の末、可決されたが、その後、トランプ大統領が拒否権発動をほのめかし、大騒ぎとなった。
民主党に対し、「ドリーマー」の救済(DACA制度)と引き換えにメキシコとの壁建設の予算承認を求めていたが、壁の予算がほぼ削られた。DACA制度についても決められなかった。
大統領はtwitter
でVETOを考えていると述べた。理由として壁建設費をあげたが、その前に民主党がDACAについて放棄したことをあげた。
2018/3/26 国際石油開発帝石、エクアドルの権益返還で補償金受け取り
国際石油開発帝石は3月20日、エクアドルの石油鉱区返還に関し、エクアドル政府から約199億円の補償金を受け取ることで合意したと発表した。
石油鉱区の権益を取得後、エクアドル政府の提案でサービス契約に切り替えることとし、協議を続けたが、同国政府と合意に至らず、鉱区を返還した。
同国の法律に基づき、一部のパートナーとともに、鉱区返還に伴う補償金を受け取るべく交渉し、国際商事仲裁を申し立てていたが、今回、同国政府と総額318.7百万ドル(約350億円)を受け取ることで合意したもの。
経緯は下記の通り。
帝国石油(2006年に国際石油開発と合併)は2005年1月、ブラジルのPetrobrasのアルゼンチン子会社 Petrobras Energia
からエクアドル東部オリエンテ地方の石油鉱区のブロック18とブロック31の各40%の権益を取得する契約を締結した。
取得後の権益比率は次の通り。
ブロック 18 |
ブロック 31 |
各社の概要 |
Teikoku Oil Ecuador
|
40% |
Teikoku Oil Ecuador
|
40% |
帝国石油子会社 |
Ecuadortlc S.A.
|
30% |
Petrobras Energia
Ecuador |
60% |
ともにPetrobras Energia
子会社、オペレーター |
Cayman Int'l
Exploration |
18% |
|
|
米国人の石油会社 |
Petromanabi |
12% |
|
|
エクアドル大手石油事業会社 |
その後、ブロック18について、2008年10月にエクアドル当局の承認を取得し、条件について協議を続け、同年12月に最終合意に達した。
取得価額については明らかにしていない。
なお、ブロック13については、想定された鉱区の開発の見通しが不透明なことから、取得を断念した。
ブロック18では当時、日量3万バレルの原油を生産中で、今後、既発見構造の開発を行っていく予定で、2009年には日量約5万バレルへの増産を考えていた。
2010年3月期の営業報告書では、「ブロック18鉱区において、既存油田から順調に生産を継続しております」としていた。
2010年にエクアドル政府からブロック18鉱区をコンセッション契約(採掘権付与)からサービス契約(探鉱・開発作業の請負)に切り替えるとの提案があり、協議を続けた。
しかし、政府側と合意に至らず、2010年11月に本鉱区を返還した。
エクアドルの法律では、コンセッション契約からサービス契約に移行しなかった場合は、政府から補償金を受け取ることができることとなっている。
国際石油開発帝石はPetrobrasなどとともに政府との交渉を続けたが、まとまらず、国際商事仲裁を申し立てた。
今回、エクアドル政府との間で合意に達したもの。
総額350億円のうち、同社分199億円は57%で、ほぼ同社(持分40%)とPetrobras(持分30%)で分け合うものとみられる。
補償金は2018年中に数回に分けて入金する。
同社では損益予想にはこれを折り込んでおらず、追って影響を公表する。
付記 同社は3月26日、当期純利益への貢献額として約120億円を折り込むと発表した。
2018/3/26 米国、鉄鋼とアルミの輸入制限を発動
鉄鋼やアルミニウムの輸入制限は米東部時間3月23日午前0時1分(日本時間同日午後1時1分)に発動された。同時刻以降に米国に輸入された製品から追加関税を徴収する。
ホワイトハウスはカナダ、ブラジル、メキシコ、EU、オーストラリア、アルゼンチン、韓国への関税を5月1日まで猶予する方針を示した。完全に除外するかどうかは各国と貿易問題などを交渉して決める。
日本は除外対象にならなかった。
付記
トランプ大統領は、猶予期限切れ直前の4月30日、カナダ、メキシコ、EUへの関税の猶予を更に1カ月延長すると発表した。その間に譲歩を迫る。
カナダ・メキシコとはNAFTAの再交渉中。EUは「断固とした対応をとる」としており、難航する見通し。
ホワイトハウスによると、ブラジル、アルゼンチン、オーストラリアについてはほぼ合意に達しており、30日以内に詳細を詰める。
3か国は米国にとって貿易黒字国で、米国への鉄鋼・アルミ流入抑制対策で協力する。
韓国については、3月に米韓FTAの改正・延長交渉で合意した。鉄鋼に関しては25%の追加関税を免除する代わりに、韓国は米国向け輸出数量を減らす。
2018/3/26 韓米FTA改正交渉妥結、鉄鋼の追加関税免除
なお、ある国を輸入制限の対象外とするかどうかについては大統領が最終決定するが、米国内で調達しにくい特定製品について関税の適用除外するかどうかは商務省が決定する。
商務省は米国企業からの申請に基づき、製品ごとに、@満足できる水準の品質とA十分な利用可能の量で、米国内で製造されているかどうかを審査する。
3月19日から受け付け、最長90日で判断する。
日本政府は適用除外を求めて再交渉するとともに、日本企業には品目別の除外を働きかけるよう促す。
ーーー
トランプ米大統領は3月1日、鉄鋼とアルミニウムの輸入増が安全保障上の脅威になっているとして輸入制限を発動する方針を表明した。
2018/3/9
トランプ大統領、鉄鋼・アルミの輸入制限発動を命令
しかし、実際は米国の貿易赤字解消のための交渉手段であることが明白である。
トランプ大統領は3月8日午後、鉄鋼とアルミニウムに輸入制限の発動を命じる文書に署名した。
今回の命令は、いくつかの国を除外するようになっており、国ごとに税率を変えたり、適切と思う国をリストに加えたり、リストから除外する権限を大統領に与えていると述べた。
署名前の閣議で、「我々は非常にフレキシブルだ。我々には友人もおれば、長年にわたり我々を利用し続けてきた敵もいる」と述べた。
また、署名前に「真の友人で、貿易と軍事で米をフェアに扱う国は弾力的に扱う」と呟いた。