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2023/11/15 米下院、政府機関閉鎖回避へつなぎ予算案可決 上院に送付

つなぎ予算は11月17日に失効するが、下院のジョンソン議長は11月11日、1週間後の政府機関閉鎖を前に、共和党の暫定予算案を発表した。

内容は:

新規のつなぎ予算案は退役軍人省やエネルギー省、農務省、運輸省、住宅都市開発省向けが来年1月19日まで、それ以外は2月2日までの歳出をまかなう。

共和党保守派の一部が求めている支出の即時30%削減や移民政策変更を盛り込まなかった。

イスラエルやウクライナへの新たな支援も除外された。

下院では共和党議員のうち少なくとも7人が反対の姿勢を示した。

上院民主党トップのシューマー院内総務が13日に これを支持する意向を示した。完璧には程遠いとしつつも、大幅な歳出削減が含まれていないことに「満足している」と表明した。

シューマー氏は上院の暫定予算案を進める取り組みを保留した。これにより下院が先に動くことが可能になる。

2023/11/14 米下院議長が暫定予算案

米下院は14日、政府機関閉鎖回避のためのつなぎ予算案を可決した。

  共和党 民主党 合計 欠員
賛成 127 209 336  
反対 93 2 95  
棄権 1 1 2  

合計

221 212 433 2

ホワイトハウスの大統領報道官は11日、「この提案は共和党にとってのさらなる混乱と政府閉鎖リスクの種になる("a recipe for more Republican chaos and more shutdowns - full stop." )」と政権として懐疑的な立場を表明した。そして、「下院共和党は時間の無駄遣いをやめ、政府閉鎖を回避するため超党派の手法で取り組む必要がある」と訴えた。

しかし、民主党議員はほぼ全員が賛成した。懸念していた大幅な歳出削減が盛り込まれなかったこと、法案を蹴れば、政府閉鎖の責任を民主側が背負うリスクもあったことによる。

送付される上院では与野党のトップが同案への支持を表明している。政府閉鎖の回避に向けて大きく前進した。

上院を通過すれば法案はバイデン大統領の署名を経て成立する公算が大きい。

 

付記

米上院は11月15日深夜の本会議で、下院で議決した新たなつなぎ予算案を賛成87、反対11の圧倒的賛成多数で可決した。

  共和党 民主党 民主系
無所属
Sanders, King
無所属

Sinema
合計 欠員
賛成 37 47 2 1 87  
反対 10 1     11  
棄権 2       2  
合計 49 48 2 1 100

民主党 Dianne Feinstein(90歳)が9月29日に逝去したが、カリフォルニア知事が後任にLaphonza Butlerを指名した。

上記の議決前に、共和党議員が予算額を1%カットする修正案を出したが、32対65で否決された。 

  共和党 民主党 民主系
無所属
Sanders, King
無所属

Sinema
合計 欠員
賛成 32       32  
反対 14 48 2 1 65  
棄権 3       3  
合計 49 48 2 1 100

バイデン米大統領の署名で成立する。政府機関の閉鎖は回避されることがほぼ確実になった。

 


2023/11/16  ExxonMobil、アーカンソー州でリチウム生産 : GMはネバダで

ExxonMobilは11月13日、アーカンソー州で2026年までにリチウム生産を開始する計画を発表した。

同社は本年5月にGalvanic Energyが所有するアーカンソー州の「スマックオーバー層」(深さ約9,000フィートで発見されたジュラ紀上部の岩石層)の12万エーカー以上の土地を買収した。

スマックオーバー層は石油とガスの鉱脈で、油田の塩水に臭素とリチウムが含まれている。現在、アーカンソー州は世界第2位の臭素供給地 である。エクソンにとり、石油およびガス産業で使用されているのと同じ技術の多くを使用して臭素とリチウムを確保できる。

Galvanic社はこの土地には炭酸リチウム相当量(LCE)が400万トンあると推定しており、これは5000万台のEVの製造に十分な量であるとしている。最近掘削された試験井で平均LCE量が1リットルあたり325ミリグラムであることが示されたと報告しており、これは北米のリチウム塩水貯留層の中で最高濃度であるとしてい る。

ExxonMobilはこの計画を“Project Evergreen” と名付け、「スマックオーバー層」の掘削を進めるとともに、商業生産の鍵を握る「直接リチウム抽出法(DLE)」(かん水をフィルターや吸着膜などを通すことによりリチウムを抽出)と呼ばれる新たなリチウム生産方法の試験を行ってきた。

6月下旬に同社は隣接地を所有するTETRA Technologiesとの提携し、リチウムと臭素を含んだ塩水鉱床を開発する契約を結んだ。


TETRA Technologiesとの提携で、2026年までに少なくとも年間1万トンの生産を開始する計画で、これはEV約10万台のバッテリー生産に必要な量に相当する。成長を続ける国内のEV製造拠点への主要サプライヤーとなる立場に なる。

ーーー

米国のリチウム産地はもう一つある。

ゼネラルモーターズ(GM)は2023年1月31日、カナダの資源会社Lithium Americasが進める米国ネバダ州Thacker Pass鉱山でのリチウム開発プロジェクトに対し、6億5,000万ドルの株式投資を行うと発表した。

タッカーパス鉱山は2026年後半に生産を開始する予定で、GMは今回の投資を通じ、生産開始後の第1フェーズで独占的にリチウムの供給を受ける権利を得る。

Lithium Americasは2007年に設立された企業で、現在は米国のほか、アルゼンチンでのリチウム開発プロジェクトも手掛ける。

GMが今回投資するタッカーパスのリチウム鉱床はネバダ州北部にあり、約1,630万年前に形成され現在は活動を停止している1,200平方キロの大規模火山McDermitt Calderaに位置する。火山噴火時に形成されたリチウムを豊富に含む湖が再度の火山活動により干上がり、地表近くに鉱床が形成されたという。Illite と呼ばれる珍しい粘土に高濃度のリチウムが閉じ込められている。

リチウムの埋蔵量は米国最大で、炭酸リチウムに換算して年間8万トン、最大で100万台分のEVバッテリー用のリチウム生産が可能になると見込まれている。

この土地は、Paiute、Shoshone、Washoe の先住民3族からなるReno-Sparks Indian Colonyの聖地であり、勝手に開発を始めたとして裁判になったが却下された。

 

参考



   https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.adh8183

    

南米ではチリ北部、ボリビア南西部、アルゼンチン北西部で形成するアンデス山脈沿いの高地(標高4000m級)に「リチウム三角地帯(LithiumTriangle」と呼ばれる塩湖地帯が広がっている。ボリビアは世界最大のウユニ塩湖、チリは世界第2位のアタカマ塩湖 を擁し、アルゼンチンはオンブレ・ムエルト塩湖をはじめとしていくつもの塩湖が点在する。埋蔵量はチリが930万トンと圧倒的に多い。


2023/11/17   INCJ、出資から10年でルネサス株の売却完了

ルネサス エレクトロニクスは11月14日、INCJ(2018年9月に産業革新機構から新設分割)が所有するルネサスの全株式を売却したと発表した。

ルネサスは、2013930日にINCJ等を割当先とする第三者割当増資を実施し、INCJの所有割合は69.15%となった。

産業競争力強化法に基づき設立された産業革新機構(現「INCJ」)は、2025年3月までに保有する全ての株式等を処分する必要があり、現在は新規投資は行わず、既投資案件のバリューアップとエグジットに注力してきた。

2017年よりINCJはルネサス株式の売却を段階的に開始し、20231113日時点での所有割合は7.38%に低下していた。残りも海外機関投資家などに売却し、本売却完了により、INCJの所有割合は0.00%となる。

ルネサスの株価は2013年9月の出資時から直近までに約5倍に上昇した。

  2010/4 2014/3/31 2018/6/30 2020/12/31 2021/12/31 2022/12/31 2023/11/14
産業革新機構→INCJ - 69.15% 33.38% 32.15% 20.14% 12.43% 0%
三菱電機 25.1% 6.26% 4.53% 4.37% 2.60% 2.82%  
日立製作所 30.7% 7.66% 3.71% 3.57% 3.18% 3.44%  
NEC 33.4% 0.75% - - - -  
デンソー - 0.49% 4.99% 8.84% 7.87% 8.52%  
トヨタ自動車 - 2.49% 2.99% 2.88% 3.85% 4.17%  
日産自動車 - 1.49% - - - -  

ーーー

ルネサスエレクトロニクスは2010年4月に、日立製作所と三菱電機のJVのルネサステクノロジと、NECのNECエレクトロニクスが合併して誕生した。

しかし、過剰な設備や人員を抱え、最終赤字が続いた。

2012年12月に懸案となっていた財務基盤の抜本的強化について、産業革新機構・トヨタ自動車・日産自動車など9社を割当先とする総額1500億円の第三者割当増資を行うことを発表した。2013年9月30日に払込手続きが完了し、産業革新機構が 約69%で筆頭株主となった。

その後、大規模な人員削減や不採算事業の撤退を進めた。

2013年10月、確実に収益をあげる企業体質を目指し、「ルネサスを変革する」として、各種構造改革から成る「変革プラン」を発表、2014年3月期に2010年のルネサス エレクトロニクス発足来、初めて最終黒字化した。

その後、NECは 持株を売却した。産業革新機構は株の売却(69.15%→33.38%)で約4000億円の利益をあげた。

今回の株式売却に当たり、INCJは「変化の激しい半導体業界を勝ち抜くための成長投資として、2013年に出資をしてから10年、ルネサスは、構造改革を着実に実行し、確実に利益を出せる体質に変革を遂げた」と述べた。

ルネサスは「ルネサスの成長に向けた礎の構築に大きく貢献したINCJの出資とこれまでのご支援に深く感謝する。ルネサスは、今後も更なる成長を加速し、組み込み半導体ソリューションのリーダーを目指す」としている。

演算用のマイコン半導体と車載などに使うアナログ半導体を組み合わせる販売戦略で業績を拡大、2022年12月期の売上高はINCJ出資前の2013年3月期比で約9割増えた。

最近の同社の業績は下記の通り。(億円)

  2018/12 2019/12 2020/12 2021/12 2022/12
売上収益 7,565 7,182 7,157 9,944 15,027
営業利益 1,040 925 1,375 2,966 5,594
株主帰属当期利益 834 759 1,115 2,222 3,773

 


2023/11/20 東京電力等、内幸町の再開発ビルに折り曲げられる次世代太陽電池「ペロブスカイト型」を導入

東京電力等は「内幸町一丁目街区南地区第一種市街地再開発事業」を推進しているが、11月15日、積水化学工業が開発したフィルム型ペロブスカイト太陽電池(Perovskite solar cell:PSC)をサウスタワーのスパンドレル部(ビ

ルの各階の床と天井の間に位置する防火区画に位置する外壁面)に設置すると発表した。

東電本社などを解体して開発する高層ビルの外壁に設置する。フィルム型の太陽電池を各階の床と天井の間にできる空間を埋めるように敷き詰める。

サウスタワーでの太陽光発電の発電容量は定格で1,000kW超を計画しており、実現すると世界初の「PSCによるメガソーラー発電機能を実装した高層ビル」となる。都心部におけるエネルギー創出の最大化およびエネルギーの地産地消の促進に取り組む。

ーーー

ペロブスカイトは灰チタン石といわれる酸化鉱物の一種 で、基本的な化学組成をチタン酸カルシウム(CaTiO3)とする。高温で等軸晶系、低温でペロブスカイト構造という結晶構造をとる。


光が当たると、ペロブスカイト層でプラスの電荷を持つ「正孔」とマイナスの電荷を持つ「電子」が生まれ、正孔は正孔輸送層に、電子は電子輸送層へ移動する。この現象を利用して外部回路に電気を取り出す。

  https://www.komei.or.jp/komeinews/p305874/

ペロブスカイト膜は、塗布技術で容易に作製できるため、既存の太陽電池よりも低価格になる。さらに、フレキシブルで軽量な太陽電池が実現でき、シリコン系太陽電池では困難なところにも設置することが可能になる。

ーーー

2009年にこの画期的な太陽電池を最初に提案したのが宮坂力・桐蔭横浜大学 大学院工学研究科 教授で、世界的な注目を集めた。

宮坂教授はチタン酸カルシウムは用いておらず、これと同じペロブスカイト構造を採るNH3CH3PbI3と を使った。濃い褐色であり、可視光の利用率が高い。宮坂教授はこの材料を、世界で最初に太陽電池に応用した。

現在の主流は、ヨウ化鉛メチルアンモニウム(MAPbI3などで、この主要な原料はヨウ素で、日本のヨウ素生産量は実はチリに次ぎ世界第2位で、エネルギーの安全保障という面でも注目されている。

ーーー

積水化学のフィルム型ペロブスカイト太陽電池の厚さは全体で1mmほど。厚みのほとんどはバックシートとバリアフィルムで、基材が100ミクロン、ペロブスカイトの発電層はわずか1ミクロンしかない。この厚さ1mmの中に真空成膜や切削加工、精密塗工の他、いわゆる接着剤のような役割を果たす封止技術も取り入れ、水の浸入を防ぐ。


2023/11/21 2024年度の公的年金支給額も実質減額 

2024年度の公的年金支給額も、2023年度と同じく、変動率が直近1年の物価変動率を下回り、実質減額となる。

付記

米国で約7千万人に支給される年金給付(Social Security Benefit)が2023年は8.7%の大幅増額となった。

物価上昇に伴う生計費調整(COLA:Cost-of-Living-Adjustment)の規定によるもので、前年第3四半期の勤労者消費者物価指数(Consumer Price Index for Urban Wage Earners and Clerical Workers =CPI-W) の平均を採用、これを 1年間適用する。

2022/10/18 米国の2023年の年金給付、生計費調整で8.7%の大幅アップ 

2024年については、3.2%の増額となる。 


公的年金支給額の改定は次のように決められる。

A:直近1年の物価変動率を基本とし、過去3年の名目手取り賃金変動率が物価変動率より低い場合は賃金変動率を採る。

B:公的年金被保険者の変動と平均余命の伸びに基づき、マクロ經濟スライド調整を行う。
  但し、Aがマイナスの場合はスライド調整を行わず、翌年度に繰り越す。

「マクロ経済スライド」とは、公的年金被保険者の変動と平均余命の伸びに基づいて、スライド調整率を設定し、その分を改定率から控除するもの

公的年金加入者数の変動(過去2〜4年度前の3年平均)マイナス 平均余命伸び率(現在は0.3%で固定)

2022/1/22 2022年度の公的年金支給額、前年度から0.4%引き下げ


2023年度については、物価変動率は+2.5%、過去3年の名目手取り賃金変動率は+2.8%のため、+2.5%が採用され、マクロ経済スライドが繰越を含めて-0.6%のため、差し引き+1.9%となった。

2023/1/21     2023年度の公的年金支給額、実質減額 

 

2024年度について、ニッセイ基礎研究所 中嶋 邦夫上席研究員の試算が発表された。
   https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=76730?site=nli

直近1年の物価変動率予想           +3.1%
過去3年の名目手取り賃金変動率予想  +3.0%  これを採用

マクロ經濟スライド  -0.4% : (年金加入者数の3年平均変動率 -0.1%) - (平均余命の伸び率 0.3%)

差引合計 +2.6%

65歳に到達し、新たに年金を裁定(決定)するときには、直近の賃金の動向を反映させるため、賃金の変動による改定(+マクロ経済スライド)を行う。2024年度は既裁定者と同じ+2.6%となる。

これにより、直近1年の物価変動率 +3.1% に対し、2024年度も実質減額となる。

 

計算は下記の通り。

既裁定者(68歳到達年度以後の受給権者)

  実績 予想 原則
2020年度 2021年度 2022年度 2023年度 2024年度
直近1年の物価変動率(基本) +0.5% +0.0% -0.2% +2.5% +3.1%

基本は物価変動率
賃金変動率が物価変動率より低い場合は賃金変動率を採用

過去3年の名目手取り賃金変動率 +0.3% -0.1% -0.4% +2.8% +3.0%
(採用) +0.3% -0.1% -0.4% +2.5% +3.0%  
マクロ経済スライド
公的年金被保険者の変動と平均余命の伸びに基づいて、スライド調整率を設定し、その分を改定率から控除
-0.1% -0.1%
(調整せず)

当期 -0.2% 
繰越 -0.1%
計  -0.3%

(調整せず)

当期 -0.3%
繰越 -0.3%
計 -0.6%
当期   -0.4%
繰越       0
計  -0.4% 

上記の(採用)がマイナスの場合は、調整せず、その分を翌年に繰り越す。

最終改定率 +0.2% -0.1% -0.4% +1.9% +2.6%  
マクロ経済スライド繰り越し   -0.1% -0.3%  


65歳に到達し、新たに年金を裁定(決定)するときには、直近の賃金の動向を反映させるため、賃金の変動による改定(+マクロ経済スライド)を行う。

  実績 予想 原則
2020年度 2021年度 2022年度 2023年度 2024年度
過去3年の名目手取り賃金変動率 +0.3% -0.1% -0.4% +2.8% +3.0%  
マクロ経済スライド
公的年金被保険者の変動と平均余命の伸びに基づいて、スライド調整率を設定し、その分を改定率から控除
-0.1% -0.1%
(調整せず)
当期 -0.2% 
繰越 -0.1%
計  -0.3%
(調整せず)
当期 -0.3%
繰越 -0.3%
計 -0.6%
当期   -0.4%
繰越       0
計  -0.4% 

上記の(採用)がマイナスの場合は、調整せず、その分を翌年に繰り越す。

最終改定率 +0.2% -0.1% -0.4% +2.2% +2.6%  
マクロ経済スライド繰り越し   -0.1% -0.3%  

 


 
2023/11/23 フォード、バッテリー工場計画を縮小

米Ford は11月21日、2カ月前に休止していたミシガン州マーシャル工場の建設を再開するが、EV向けにバッテリーの能力を年間40万台分から23万台分に縮小すると発表した。同社はEVの需要が弱まると想定している。

ーーー

Ford は2023年2月13日、ミシガン州Marshall近郊に35億ドルを投じて電気自動車(EV)用のリン酸鉄リチウムイオン (LFP)電池製造工場 BlueOval Battery Park Michigan を建設する計画を発表した。
同社は韓国のSK InnovationとのJVのBlueOvalSK でテネシー州とケンタッキー州に3つの電池工場を建設している。

今回はFordの単独事業で、中国の大手電池メーカーの寧徳時代新能源科技(CATL)から技術のライセンス供与や技術支援を受ける。CATLは出資はしない。

新工場は、当初の生産能力がEV年間40万台分に相当する35ギガワット時で、2026年に稼働する予定。Fordはこの工場を含め、これまで北米と欧州に4カ所の電池製造工場建設を表明している。

リン酸鉄リチウムイオン電池はエネルギー密度の低さなど制約もあるが、Ford が工場建設を推進している背景には、CATLの技術によるコスト低下や再充電速度の向上などを通じて大口購入の法人など多くの顧客を取り込めるとの判断がある。

2023/2/16    フォード、ミシガンにEV用電池工場建設 中国CATLが技術支援

Fordは9月25日、ミシガン州の35億ドル規模の電池工場建設を一時中断したと発表した。「競争力を持って工場を運営できると確信できるまで」作業を中断し、建設支出を制限すると表明。中断のきっかけとなった具体的な理由については明かさなかった。

Fordは全米自動車労組(UAW)との賃上げ交渉で何度も提示額を引き上げているが合意に至っておらず、そうした中での発表となった。

UAW執行部は10月29日、Fordとの労働協約を承認した。フルタイム従業員の30%以上の賃上げなど、会社側から大きな譲歩を勝ち取った。

議会共和党は、本計画に関し、中国の寧徳時代新能源科技(CATL)の技術使用について調査している。

ーーー

今回、当初の40万台分を生産する計画を23万台分に縮小した。工場建設計画を発表した時点では、2500人を雇用するとしていたが、1700人となる見通し。投資額も生産規模の40%削減に比例して当初の35億ドルから20億ドル程度に減らす見通し。

同社はEVモデルへの120億ドル(約1兆7700億円)支出を延期するなど、EV戦略を縮小している。2026年末までに年間200万台のEVを生産するとの計画を断念した後、その節目に到達するとみられる時期についてまだ明らかにしていない。人気車種のピックアップトラック「F150」のEVモデル、「F150ライトニング」の販売台数は7−9月に46%減少した。

同社のCEOは記者会見で、EVの普及は「われわれや業界が期待していたようなペースでは伸びていない」と指摘。「資本の配分方法に関して厳格でありたい。生産および将来の生産能力が需要に基づいたものになることについて考えたい」と述べた。

 

同社は同工場で生産するリチウムイオン電池が米政府のインフレ抑制法(IRA)のEV向け補助金の対象となるよう財務省に働きかけている。

しかし議員らはIRAの下でEV向け補助金が中国の寧徳時代新能源科技(CATL)に流れることを問題視している。下院中国特別委員会のMike Gallagher委員長(共和党)は同日、フォードの決定に失望したとし、この道義に反する取引を永久に中止するべきだと強調した。

 


2023/11/24  慰安婦訴訟 ソウル高裁が1審を破棄、日本政府に賠償命じる 

韓国のソウル高裁は11月23日、元慰安婦の女性らが日本政府に損害賠償を求めた訴訟の控訴審で、原告の請求を却下した1審判決を取り消し、日本政府に1人当たり2億ウォン(約2300万円)の慰謝料の支払いを命じた。

 

上告期限を迎えた中、 上川陽子外相は12月8日の記者会見で、「国際法上の主権免除の原則から日本国政府が韓国の裁判権に服することは認められない」と述べ、上告しないと述べ、 裁判所の判決が確定することによる影響については「韓国側に適切な措置を講ずることを求めていく」と述べた。

ーーー

韓国の元従軍慰安婦らが日本政府を相手取り損害賠償を求めた訴訟で、ソウル中央地裁は2021年4月21日、国家は外国の裁判権に服さないとする国際法上の「主権免除の原則」を認め、訴えを却下した。

「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯」が支援する元慰安婦の李容洙氏や遺族ら20人が2015年の韓日慰安婦合意から1年後の2016年に提起した。「精神的、肉体的な苦痛を受けた」として計約30億ウォン(約2億8千万円)の損害賠償を日本政府に請求した。

日本政府が、国際法上の「主権免除」の原則を理由に訴訟に応じてこなかったため裁判が進展していなかったが、裁判所が公示送達の手続きを取ったことで、2020年から動き始めた。

当初1月13日に元慰安婦や遺族の20人による訴訟の判決が言い渡される予定であったが、判決は延期され、裁判所は追加の審理の必要性があるとみて弁論を再開した。

1審のソウル中央地方裁判所は判決で、「国際慣習法や韓国の最高裁判所の判例にのっとり、外国の主権行為について損害賠償の訴えは認められない」として、「主権免除」の原則が適用されるとの判断を示し、原告側の訴えを退けた。

「主権免除を認めなければ、外交的衝突は不可避だ」とし、慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的な解決」を確認した2015年の日韓合意の有効性も認め、原告側が控訴していた。

2015年12月28日、岸田文雄外務大臣は日韓外相会談直後の共同記者発表において,慰安婦問題について以下のとおり発表した。
 
ア 慰安婦問題は,当時の軍の関与の下に,多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり,かかる観点から,日本政府は責任を痛感している。
 安倍内閣総理大臣は,日本国の内閣総理大臣として改めて,慰安婦として数多の苦痛を経験され,心身にわたり癒しがたい傷を負われた全ての方々に対し,心からおわびと反省の気持ちを表明する。

イ 日本政府は,これまでも本問題に真摯に取り組んできたところ,その経験に立って,今般,日本政府の予算により,全ての元慰安婦の方々の心の傷を癒やす措置を講じる。具体的には,韓国政府が,元慰安婦の方々の支援を目的とした財団を設立し,これに日本政府の予算で資金を一括で拠出し,日韓両政府が協力し,全ての元慰安婦の方々の名誉と尊厳の回復,心の傷の癒やしのための事業を行うこととする。

ウ 日本政府は上記を表明するとともに,上記(イ)の措置を着実に実施するとの前提で,今回の発表により,この問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する。
 あわせて,日本政府は,韓国政府と共に,今後,国連等国際社会において,本問題について互いに非難・批判することは控える。

2021/4/21    韓国地裁、慰安婦訴訟2件で原告側の訴えを却下

ーーー

日本政府は、国家は他国の裁判権に服さないとする国際法上の「主権免除」の原則から、訴えは却下されるべきだという立場である。

しかし、2審のソウル高裁は11月23日の判決で、「現在までに形づくられた国際慣習法を考慮すると、日本に対する韓国の裁判権が認められる」と判断し、1審判決を取り消し、原告に1人あたり日本円でおよそ2300万円の慰謝料を支払うよう、日本政府に命じた。

「訴訟は被告(日本政府)が当時占領していた朝鮮半島で、国民である原告に働いた不法行為への損害賠償を請求した事案だ」と指摘。国際慣習法は、主権免除を認める範囲を狭める方向に変化しているとして、「領土内での国民に対する不法行為では、(主権)免除は否定される」と断じた。

一方、慰安婦問題の解決をうたう2015年の日韓合意について、ソウル高裁は「日本政府が裁判で意見を主張しなかったので争点にならなかった」と説明した。

今回、外務省は下記の発表を行った。

  1. 11月23日、岡野正敬外務事務次官は尹徳敏駐日韓国大使を召致し、元慰安婦等が日本国政府に対して提起した訴訟の韓国ソウル高等裁判所における控訴審において、2021年1月8日の判決に続き、国際法上の主権免除の原則の適用が否定され、原告の訴えを認める判決が出されたことは、極めて遺憾であり、日本政府として本判決は断じて受け入れられない旨強く抗議を行いました。
     
  2. 慰安婦問題を含め、日韓間の財産・請求権の問題は、1965年の日韓請求権・経済協力協定で「完全かつ最終的に解決」済みです。また、慰安婦問題については、2015年の日韓合意において「最終的かつ不可逆的な解決」が日韓両政府の間で確認されています。
     
  3. 韓国政府に対して国際法違反を是正するために適切な措置を講じることを改めて強く求めます。

ーーー

元慰安婦をめぐる裁判では、2年前にもソウル中央地裁が「主権免除」の原則を認めず日本政府に賠償を命じていて、この時は日本政府が裁判への関与を拒んで控訴せず、判決が確定した。

韓国で旧日本軍の元従軍慰安婦の女性らが日本政府に損害賠償を求めた訴訟で、ソウル中央地裁は1月8日、請求を認め日本政府に賠償支払いを命じる判決を出した。

調停申請時、原告は12人だったが、多くが他界し、生存者は5人となっている。

ソウル中央地裁は、原告1人あたり1億ウォン(約948万円)の支払いを命じる原告勝訴の判決を出した。

日本政府は国家は外国の裁判権に服さないとする国際法上の「主権免除」の原則から、 調停にも審理にも、一度も出席していない。

日本政府は賠償の支払いに応じていない。

2021/1/8 元慰安婦訴訟で日本政府に賠償命令 

 



2023/11/27  
日産自動車、英国に3700億円追加投資 新型EVを生産へ 

日産自動車は11月24日、英国での電気自動車(EV)化に、20億ポンド(約3700億円)を追加で投資すると発表した。北部Sunderland工場で3車種の新型EVを生産するほか、同国で3拠点目となる巨大電池工場「ギガファクトリー」を建設する。

2021年に表明した10億ポンド(約1900億円:文末の「EV36Zero」)の投資とあわせ、累計で30億ポンド(約5600億円)をSunderland工場の体制強化 (電池工場を含む)にあてることになる。

同工場ではEV「LEAF」のほか、多目的スポーツ車(SUV)の「JUKE」と「Qashqai」を生産している が、それぞれの車種で今後、新型EVを生産する。

3つの新型EVは、現在、日産のSunderland工場で生産されている以下3車種の将来を象徴するもの 。

  • 2022年に英国で最も売れた車であり、英国で生産される全車の5台に1台を占めるオリジナル クロスオーバーである「Qashqai
  • 販売台数100万台を突破したコンパクト クロスオーバーの常識を覆すモデルである「JUKE
  • Sunderland工場で25万台以上が生産された世界初の量産EV である「LEAF

3つの次期型モデルは、以下のエキサイティングな次世代EVコンセプトモデルからインスピレーションを得てい る。

  • 流麗でモダンな美しさが特徴のクロスオーバーEVである「ニッサン ハイパーアーバン」
  • 多面的かつ多角的なエクステリアが美しいコンパクト クロスオーバーEVである「ニッサン ハイパーパンク」
  • 2021年に発表され、Sunderland工場で生産される将来のEVのインスピレーション源である「NISSAN CHILL-OUT」

今回の追加投資で生産するEVは英国のほか、欧州市場で販売する。欧州日産自動車は9月25日に、2030年までに欧州に投入する新型車はすべてEVとする目標を発表している。

EVの基幹部材の車載電池の工場も新設する。現在英国では中国企業傘下のAESCグループと連携し、2拠点のギガファクトリーを持つ。今後のEV需要拡大に合わせ、3拠点目の工場を新設する。

日産自動車は2018年8月3日、日産が保有するバッテリー事業およびバッテリー生産工場を、再生可能エネルギー事業者である中国のEnvision Group(遠景能源集団) に譲渡する契約を締結したと発表した。

エンビジョンAESCエナジーデバイス(Envision AESC Energy Devices Ltd.)は2019年4月1日、同日付で事業を開始したと発表した。その後、AESCグループに改称した。
中国の再生可能エネルギー関連企業のEnvision Group(遠景能源集団)が80%、日産自動車が20%を出資する。

2018/8/7   日産自動車とNEC、バッテリー事業を譲渡

日産自動車は2021年7月1日、英国Sunderland工場の隣接地のInternational Advanced Manufacturing Parkに、エンビジョンAESCが大規模バッテリー工場「ギガファクトリー」を建設することに協力すると発表した。
下記 EV36Zero でNo.2、今回 No.3 建設。

車両とバッテリーの生産は、「EV36Zero」のマイクログリッドによって電力が賄われ る。本グリッドは、日産の風力発電と太陽光発電の設備を融合し、日産と近隣のサプライヤーに100%再生可能な電力を供給する能力を有する予定。

2021年7月1日、日産自動車はカーボンニュートラルを加速させるEV推進ビジョン「EV36Zero」を発表した。英国のSunderland工場を中心に、CO2を出さないゼロエミッションに向けて、新たに360度のソリューションを確立していく。

この革新的なプロジェクトには、日産とエンビジョンAESC、そしてSunderland市議会によって10億ポンドが投資される。EVや再生可能エネルギー、バッテリー生産という相互に関連した3つの取り組みによって自動車業界の未来の青写真を描いた。

  • 新世代のクロスオーバーEVをSunderland工場で生産
  • エンビジョンAESC社はSunderland工場の隣接地に新たな9GWhのギガファクトリーを建設 (No.2)
  • サンダーランド市議会が主導する再生可能エネルギーを利用した「マイクログリッド」から100%クリーンな電力をSunderland工場に供給
    既存の日産の風力発電設備と太陽光発電設備に加えて、20MWの新規の太陽光発電設備が含まれる。
  • EV用バッテリーをエネルギーストレージとして二次利用することで、究極のサステナビリティを実現
  • この包括的なプロジェクトにより、サプライヤーを含め、英国に6,200名の雇用を創出

2023/11/28 AGCグループのCDMO事業  

AGC(旧称 旭硝子)合成医農薬CDMO製造子会社であるAGC若狭化は11月17日、福井県三方上中郡の上中工場おいて大型製造ライン竣工式った。同社製造能力 1.5 拡張する増設で、2024年第1四半期稼働開始予定している。

AGC若狭化フッ素・ヨウ素を含むハロゲン化学、新規製法の開発力、廃棄物およびレアメタルのリサイクルによる資源の有効活用とそれらによるコスト低減技術等を強みとし、新規開発品を含めた原料から原体までのワンストップの受託製造を行っている。また、cGMP対応の医薬品製造ラインも持つ。

CDMO (Contract Development and Manufacturing Organization) は、医薬品製造および製造プロセス技術の開発を受託・代行する事業。

AGCグループは、化学品事業ったフッ化合物合成など多様学合成技術みに1985合成医農薬CDMO事業開始し、以来、高付加価値かつ高品質製品発・製造目指し、積極的買収・設備投資い、事業拡大してきた。

同社の説明:

AGCは「素材をつくる技術開発力」がベースとなっている会社で、その技術力で世界や社会にどのように貢献できるかと考えたときに、ライフサイエンス事業に注力することになった。

化学合成による低分子医薬品から微生物・動物細胞を用いた遺伝子組み換え技術によるタンパク質医薬品など、薬物の構造が多様化・複雑化している今日において、これらすべての工程を製薬会社一社が担うのは、現実的ではなく、「創薬」とその後の「開発・製造」の水平分業化が進んでいる。医薬品も製造プロセスを分離してアウトソースすることで、新たな医薬品を市場に送り出すまでのスピードを加速させることができる。

分離したプロセスに求められる精密な技術力をAGCが担っている。

AGCグループの ライフサイエンス事業は下記の通り。

シアトル 2017年、CDMO大手のCMC Biologicsを買収 (約600億円)
 動物細胞と微生物を用いた CDMO
2020年設備増強、新設
バークレー (カリフォルニア) 2018年増強
その後、上記と統合?
コペンハーゲン(デンマーク) 2018、2020、2024年増強
ハイデルベルグ(独) 2016年、Biomeva Gmbhを買収
 バイオ医薬品の開発・製造受託サービス
2023年増強
ボルダー(コロラド) 2020年、AstraZenecaのバイオ医薬品原薬製造工場を買収  
ロングモント(コロラド) 2021年、Novartis Gene Therapiesから遺伝子治療薬工場を買収 2022年増強
マルグラート・デ・マール(スペイン) 2019年、合成医薬品原薬製造会社Malgrat Pharma Chemicals, S.L.U.買収 2022,2024年増強
ミラノ(イタリア) 2020年、遺伝子・細胞治療CDMOのMolecular Medicine S.p.A 買収  
 
AGC若狭化学 1998年、旭硝子100%で若狭エイ・ジー・シー・ファインケミカルとして設立
医薬品中間体等,ファインケミカル製品の受託製造及び開発
2024年増強
千葉工場 2019年
買収したCMC Biologics社の技術を導入し、動物細胞を用いたcGMP対応バイオ医薬品(抗体医薬品等)開発・製造受託設備を新設
2020年増強・新設
横浜テクニカルセンター デュアルユース設備新拠点 2025年予定
平時:動物細胞利用のバイオ医薬品、mRNA医薬品、遺伝子・細胞治療薬
パンデミック時:ワクチン製造
 

 

同社は2023暦年から報告セグメントを変更した。従来、化学品に包括されていたライフサイエンスを独立させた。

従来 今後
ガラス 建築ガラス
オートモティブ
電子 電子
化学品 化学品
ライフサイエンス(合成医農薬中間体・原体、バイオ医薬品等 )

 

業績  ライフサイエンス部門の2023年1〜6月の半期決算は下記の通り。

  2023/1-6 2022/1-6 増減
売上高 667億円 692億円 -25億円
営業損益 6億円 102億円 -97億円

 売上高は、コロナ特需の消滅、米国バイオCDMO新規ライン立ち上げ遅延等で減収

 バイオCDMO能力増強に伴う先行費用発生もあり、減益


2023/11/29 バイエルに2つの打撃 

Bayerに2つの打撃が相次いで襲った。

1)MonsantoのRoundup訴訟

Bayerは5年前に米 Monsantoを630億ドルで買収したが、同社の主力の除草剤Roundupを巡る訴訟で敗訴が相次いでいる。最高裁への上訴も棄却された。

2018/8/28 Bayer のMonsanto買収 完了と、Monsantoの除草剤への賠償命令判決 

2020/6/21 米最高裁、Bayerの除草剤問題での上訴を審議せず  Bayerの上訴を棄却


今回、11月17日に Missouri 州Cole Countyで陪審員はMonsanto敗訴の判断を下した。

原告のValorie Gunther (New York)、Jimmy Draeger (Missouri)、Daniel Anderson (California)の3人に損害賠償として合計61.1百万ドル、懲罰賠償としてそれぞれに5億ドル、合計15.6億ドルの支払いを命じた。3人は非ホジキンリンパ腫に罹ったが、それぞれ、Roundupの使用の結果であると主張している。 (懲罰賠償額は最高裁の基準を上回っており、控訴で引き下げられる可能性がある。)

陪審はこれについて、過失、設計上の欠陥、Roundupの使用の潜在的な危険性を原告に警告していないことでMlonsantoに責任があると判断した。

11月時点で、Monsantoはほぼ10万件の訴訟で和解し、約110億ドルを支払ったが、まだ4万件が残っている。

Bayerは訴訟関連費用して160億ドルを引き当てているが(当初116億ドル、2021/8に追加45億ドル)、今回の陪審の判断は、引当を全額またはそれ以上の支払いを必要としかねない衝撃的な内容である。

 

2)抗凝固薬アスンデキサン

Bayerは11月20日、血栓症や脳卒中を予防する新規の経口抗凝固薬 asundexian の大規模後期臨床試験について、有効性が見られないため中止すると発表した。1万8000人の患者を対象に2022年8月に開始した試験の途中のモニタリングで、米Bristol-Myers Squibb/米PfizerのApixaban(製品名・Eliquis)に有効性で劣ることが示され、独立データモニタリング委員会が中止を勧告した。 

 asundexian はBayerのパイプラインで最も有望視されていたプロジェクトの1つで、年間50億ユーロ(55億ドル)以上の売り上げを生み出すと予想し、2026年に欧州で主要な特許による保護を失う抗凝固薬「Xarelto」(一般名・Rivaroxaban、日本製品名・イグザレルト)に代わる収益源としての自信を示していた。

Xareltoでは米 Johnson & Johnsonと開発コストを共有し、米国市場の大部分を同社に任せたが、 asundexianでは単独開発を選択し、米国でのマーケティングや流通に多額の費用を投じる用意をしていた。

Xareltoの売上高は2022年で4,516百万ユーロ(7300億円)で、特許切れまでに後継候補でXarelto 以上の売上高を見込んでいたasundexian の代わりが見つからない場合、悲惨なこととなる。

2023/11/8 米国医薬業界、特許切れの恐怖:住友ファーマのケース


Bayerの株価は11月20日に急落し、12年ぶりの安値となった。

 

 

 今年6月に就任したBill Anderson CEO(直近はRocheの医療用医薬品部門CEO)は、11月8日発表した2023年7〜9月期決算(最終損益は45億6900万ユーロの赤字)について「今期の業績はまったく容認できない」と語った。

管理職の削減とともに、主要部門である農薬・種子(Crop Science)かコンシューマー・ヘルスの分社化を検討していると明らかにした。

本年7〜9月期でCropScienceで3,964百万ユーロ(約6300億円)の特別損失があり、全社の金利・税前損益が3,594百万ユーロの赤字、純損益が4,569百万ユーロの赤字となった。Pharmaceutical、Consumer Health はほぼ前年並み。

 


2023/11/30 国産の新型コロナワクチン、接種で使用へ 


第一三共は11月17日、厚生労働省との間で、2023年秋開始接種に使用するオミクロン株XBB.1.5対応のCOVID-19新型コロナウイルス感染症 1価mRNAワクチン(DS-5670)を供給することに合意したと発表した。

今回の合意は、厚生労働省による本剤の薬事承認を条件とし、2023年度中に140万回分を供給するもの。

厚労省の専門部会は11月27日、本ワクチンの承認を了承した。

今後、正式承認を経て、12月上旬にも医療機関への配送が始まり、現在実施中の接種での使用が予定されている。

これまで海外メーカーのワクチンに依存していたが、国産ワクチンの使用にめどが立ったことで、今後、新たな変異株が流行しても、海外企業に頼らずワクチンを国内で調達できる体制が整う。

ーーー

第一三共は2023年1月13、開発中の新型コロナウイルス感染症に対するmRNAワクチン 「DS-5670」について、追加免疫の国内製造販売承認申請を行った。

国内の既承認のmRNAワクチン(Pfizer-BioNTech 、Moderna)の初回免疫(2回接種)完了後の健康成人及び高齢者約5,000名を対象とした国内第1/2/3相臨床試験の結果に基づくもの。

2023/1/16  第一三共、COVID-19に対するmRNAワクチンDS-5670国内における製造販売承認申請 

第一三共は8月2日、新型コロナウイルス感染症に対する起源株1 mRNAワクチン「ダイチロナ®筋注」(DS-5670)について、「SARS-CoV-2による感染症の予防」を適応とした追加免疫における国内製造販売承認を取得したと発表した。

国産初のmRNAワクチンで、ファイザーやモデルナのワクチンは冷凍保存が原則必要だが、冷蔵(28℃)での流通・保管が可能となるため、医療現場での利便性の向上が期待できる。

しかし、今回承認された本剤は追加接種に用いられる起源株1価のmRNAワクチンであることから、供給を予定していない。
 

同社は、XBB.1系統1価ワクチンに対応できるよう開発を進めた。

 

第一三共は9月6日、開発中のCOVID-19に対するmRNAワクチン(「DS-5670」)の追加免疫を対象とした日本での第3相臨床試験において、主要評価項目を達成したと発表した。

同社は翌9月7日に、12歳以上の追加免疫に対するオミクロン株XBB.1.5系統対応のCOVID-19 1価mRNAワクチン(DS-5670)について、日本における製造販売承認事項一部変更承認申請を行ったと発表した。

今回、これが承認されるもの。

 

第一三共は新型コロナワクチンを埼玉県北本市の工場で製造する。「政府と合意した140万回分は生産のめどが立っている」としている。

厚労省は9月〜2024年3月末に実施する接種用にPfizer、Modernaと計4500万回分を購入契約している。第一三共製は両社に比べ購入量が少ないため、接種できる場所は限られる見通し。

PfizerやModernaが開発したmRNAワクチンは、ウイルスのスパイクたんぱく質全体が作られるが、第一三共のワクチンは、スパイクたんぱく質の中でも、ヒトの細胞と結合するRBD=受容体結合ドメインという部分だけが作られるため、設計図となるmRNAの長さがより短くなっており、製造工程で品質を管理しやすいほか、変異ウイルスに対応してmRNAを作り直す作業が進めやすいといった利点があるという。

ーーーーーーーーー

厚労省の専門部会は11月27日、Meiji Seika ファルマの新型コロナワクチン「コスタイベ筋注用」の製造販売承認についても了承した。武漢由来の従来型対応のため、現在の接種では使われない見通し。

米国のバイオ企業 Arcturus Therapeutics が開発したレプリコンワクチンと呼ばれるタイプ(与後に体内で成分が増える自己増殖型ワクチン)で、PfizerやModerna製の既存ワクチンに比べ、少ない接種量でワクチンの効果が持続することが期待されている。

Arcturus Therapeuticsは2013年に設立された米国を拠点とする製薬企業で、後期臨床ステージの感染症用ワクチンをはじめ、肝臓や呼吸器の希少疾患に有効なmRNA医薬品の研究開発を行っている。

Meiji Seikaファルマが日本での供給や販売を担う。

従来型に対応したワクチンは4月に初回免疫用、6月30日に追加接種用として厚労省に製造販売承認を申請した。今回、これが承認される。

Meiji Seikaファルマは本年7月、オミクロン型の派生型「XBB.1.5」に対応したワクチンを、2024年1月までに厚生労働省に申請すると発表した。小林社長は「国内で生産体制を持つことが重要だ。二度と『ワクチン敗戦』と言わせないために努力をしている」と述べた。

 

Meiji Seikaファルマはワクチンを、医薬品の受託製造会社のアルカリス(千葉県柏市)と連携し、福島県南相馬市の工場で生産する予定。

アルカリスは、2017 年に武田薬品の創薬プラットフォーム事業を継承し事業を開始した日本初の創薬ソリューションプロバイダーである Axcelead Drug Discovery Partnersのグループ企業アクセリードが、Arcturus Therapeutics とのJVで設立したもの。

Arcturus Therapeuticsの研究開発パイプラインの製造拠点としての責任を果たしつつ、世界中の製薬会社、創薬ベンチャー、アカデミアなど幅広い顧客に高品質のmRNA医薬品の安定供給を約束する世界初の統合型mRNA医薬品CDMOを目指している。

 


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