2023/11/27
日産自動車、英国に3700億円追加投資 新型EVを生産へ
日産自動車は11月24日、英国での電気自動車(EV)化に、20億ポンド(約3700億円)を追加で投資すると発表した。北部Sunderland工場で3車種の新型EVを生産するほか、同国で3拠点目となる巨大電池工場「ギガファクトリー」を建設する。
2021年に表明した10億ポンド(約1900億円:文末の「EV36Zero」)の投資とあわせ、累計で30億ポンド(約5600億円)をSunderland工場の体制強化
(電池工場を含む)にあてることになる。
同工場ではEV「LEAF」のほか、多目的スポーツ車(SUV)の「JUKE」と「Qashqai」を生産している
が、それぞれの車種で今後、新型EVを生産する。
3つの新型EVは、現在、日産のSunderland工場で生産されている以下3車種の将来を象徴するもの
。
- 2022年に英国で最も売れた車であり、英国で生産される全車の5台に1台を占めるオリジナル
クロスオーバーである「Qashqai」
- 販売台数100万台を突破したコンパクト クロスオーバーの常識を覆すモデルである「JUKE」
- Sunderland工場で25万台以上が生産された世界初の量産EV である「LEAF」
3つの次期型モデルは、以下のエキサイティングな次世代EVコンセプトモデルからインスピレーションを得てい
る。
- 流麗でモダンな美しさが特徴のクロスオーバーEVである「ニッサン ハイパーアーバン」
- 多面的かつ多角的なエクステリアが美しいコンパクト クロスオーバーEVである「ニッサン
ハイパーパンク」
- 2021年に発表され、Sunderland工場で生産される将来のEVのインスピレーション源である「NISSAN
CHILL-OUT」
今回の追加投資で生産するEVは英国のほか、欧州市場で販売する。欧州日産自動車は9月25日に、2030年までに欧州に投入する新型車はすべてEVとする目標を発表している。
EVの基幹部材の車載電池の工場も新設する。現在英国では中国企業傘下のAESCグループと連携し、2拠点のギガファクトリーを持つ。今後のEV需要拡大に合わせ、3拠点目の工場を新設する。
日産自動車は2018年8月3日、日産が保有するバッテリー事業およびバッテリー生産工場を、再生可能エネルギー事業者である中国のEnvision
Group(遠景能源集団)
に譲渡する契約を締結したと発表した。
エンビジョンAESCエナジーデバイス(Envision AESC Energy Devices
Ltd.)は2019年4月1日、同日付で事業を開始したと発表した。その後、AESCグループに改称した。
中国の再生可能エネルギー関連企業のEnvision Group(遠景能源集団)が80%、日産自動車が20%を出資する。
2018/8/7
日産自動車とNEC、バッテリー事業を譲渡
日産自動車は2021年7月1日、英国Sunderland工場の隣接地のInternational Advanced
Manufacturing Parkに、エンビジョンAESCが大規模バッテリー工場「ギガファクトリー」を建設することに協力すると発表した。
下記 EV36Zero でNo.2、今回 No.3 建設。
車両とバッテリーの生産は、「EV36Zero」のマイクログリッドによって電力が賄われ
る。本グリッドは、日産の風力発電と太陽光発電の設備を融合し、日産と近隣のサプライヤーに100%再生可能な電力を供給する能力を有する予定。
2021年7月1日、日産自動車はカーボンニュートラルを加速させるEV推進ビジョン「EV36Zero」を発表した。英国のSunderland工場を中心に、CO2を出さないゼロエミッションに向けて、新たに360度のソリューションを確立していく。
この革新的なプロジェクトには、日産とエンビジョンAESC、そしてSunderland市議会によって10億ポンドが投資される。EVや再生可能エネルギー、バッテリー生産という相互に関連した3つの取り組みによって自動車業界の未来の青写真を描いた。
- 新世代のクロスオーバーEVをSunderland工場で生産
- エンビジョンAESC社はSunderland工場の隣接地に新たな9GWhのギガファクトリーを建設
(No.2)
-
サンダーランド市議会が主導する再生可能エネルギーを利用した「マイクログリッド」から100%クリーンな電力をSunderland工場に供給
既存の日産の風力発電設備と太陽光発電設備に加えて、20MWの新規の太陽光発電設備が含まれる。
- EV用バッテリーをエネルギーストレージとして二次利用することで、究極のサステナビリティを実現
-
この包括的なプロジェクトにより、サプライヤーを含め、英国に6,200名の雇用を創出
2023/11/28 AGCグループのCDMO事業
AGC(旧称
旭硝子)の合成医農薬CDMO製造子会社であるAGC若狭化学は11月17日、福井県三方上中郡の上中工場において大型製造ラインの竣工式を行った。同社の製造能力を
1.5
倍に拡張する増設で、2024年第1四半期の稼働開始を予定している。
AGC若狭化学はフッ素・ヨウ素を含むハロゲン化学、新規製法の開発力、廃棄物およびレアメタルのリサイクルによる資源の有効活用とそれらによるコスト低減技術等を強みとし、新規開発品を含めた原料から原体までのワンストップの受託製造を行っている。また、cGMP対応の医薬品製造ラインも持つ。
CDMO (Contract
Development and Manufacturing Organization) は、医薬品製造および製造プロセス技術の開発を受託・代行する事業。
AGCグループは、化学品事業で培ったフッ素化合物合成など多様な化学合成技術を強みに、1985年に合成医農薬のCDMO事業を開始し、以来、高付加価値かつ高品質な製品の開発・製造を目指し、積極的な買収・設備投資を行い、事業を拡大してきた。
同社の説明:
AGCは「素材をつくる技術開発力」がベースとなっている会社で、その技術力で世界や社会にどのように貢献できるかと考えたときに、ライフサイエンス事業に注力することになった。
化学合成による低分子医薬品から微生物・動物細胞を用いた遺伝子組み換え技術によるタンパク質医薬品など、薬物の構造が多様化・複雑化している今日において、これらすべての工程を製薬会社一社が担うのは、現実的ではなく、「創薬」とその後の「開発・製造」の水平分業化が進んでいる。医薬品も製造プロセスを分離してアウトソースすることで、新たな医薬品を市場に送り出すまでのスピードを加速させることができる。
分離したプロセスに求められる精密な技術力をAGCが担っている。
AGCグループの
ライフサイエンス事業は下記の通り。
シアトル |
2017年、CDMO大手のCMC Biologicsを買収 (約600億円)
動物細胞と微生物を用いた CDMO |
2020年設備増強、新設 |
バークレー
(カリフォルニア) |
2018年増強
その後、上記と統合? |
コペンハーゲン(デンマーク) |
2018、2020、2024年増強 |
ハイデルベルグ(独) |
2016年、Biomeva Gmbhを買収
バイオ医薬品の開発・製造受託サービス |
2023年増強 |
ボルダー(コロラド) |
2020年、AstraZenecaのバイオ医薬品原薬製造工場を買収 |
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ロングモント(コロラド) |
2021年、Novartis Gene
Therapiesから遺伝子治療薬工場を買収 |
2022年増強 |
マルグラート・デ・マール(スペイン) |
2019年、合成医薬品原薬製造会社Malgrat
Pharma Chemicals, S.L.U.買収 |
2022,2024年増強 |
ミラノ(イタリア) |
2020年、遺伝子・細胞治療CDMOのMolecular
Medicine S.p.A 買収 |
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AGC若狭化学 |
1998年、旭硝子100%で若狭エイ・ジー・シー・ファインケミカルとして設立
医薬品中間体等,ファインケミカル製品の受託製造及び開発 |
2024年増強 |
千葉工場 |
2019年
買収したCMC Biologics社の技術を導入し、動物細胞を用いたcGMP対応バイオ医薬品(抗体医薬品等)開発・製造受託設備を新設 |
2020年増強・新設 |
横浜テクニカルセンター |
デュアルユース設備新拠点 2025年予定
平時:動物細胞利用のバイオ医薬品、mRNA医薬品、遺伝子・細胞治療薬
パンデミック時:ワクチン製造 |
|
同社は2023暦年から報告セグメントを変更した。従来、化学品に包括されていたライフサイエンスを独立させた。
従来 |
今後 |
ガラス |
建築ガラス |
オートモティブ |
電子 |
電子 |
化学品 |
化学品 |
ライフサイエンス(合成医農薬中間体・原体、バイオ医薬品等
) |
業績 ライフサイエンス部門の2023年1〜6月の半期決算は下記の通り。
|
2023/1-6 |
2022/1-6 |
増減 |
売上高 |
667億円 |
692億円 |
-25億円 |
営業損益 |
6億円 |
102億円 |
-97億円 |
売上高は、コロナ特需の消滅、米国バイオCDMO新規ライン立ち上げ遅延等で減収
バイオCDMO能力増強に伴う先行費用発生もあり、減益
2023/11/29 バイエルに2つの打撃
Bayerに2つの打撃が相次いで襲った。
1)MonsantoのRoundup訴訟
Bayerは5年前に米
Monsantoを630億ドルで買収したが、同社の主力の除草剤Roundupを巡る訴訟で敗訴が相次いでいる。最高裁への上訴も棄却された。
2018/8/28 Bayer
のMonsanto買収 完了と、Monsantoの除草剤への賠償命令判決
2020/6/21 米最高裁、Bayerの除草剤問題での上訴を審議せず Bayerの上訴を棄却
今回、11月17日に Missouri 州Cole Countyで陪審員はMonsanto敗訴の判断を下した。
原告のValorie Gunther (New
York)、Jimmy Draeger (Missouri)、Daniel Anderson
(California)の3人に損害賠償として合計61.1百万ドル、懲罰賠償としてそれぞれに5億ドル、合計15.6億ドルの支払いを命じた。3人は非ホジキンリンパ腫に罹ったが、それぞれ、Roundupの使用の結果であると主張している。
(懲罰賠償額は最高裁の基準を上回っており、控訴で引き下げられる可能性がある。)
陪審はこれについて、過失、設計上の欠陥、Roundupの使用の潜在的な危険性を原告に警告していないことでMlonsantoに責任があると判断した。
11月時点で、Monsantoはほぼ10万件の訴訟で和解し、約110億ドルを支払ったが、まだ4万件が残っている。
Bayerは訴訟関連費用して160億ドルを引き当てているが(当初116億ドル、2021/8に追加45億ドル)、今回の陪審の判断は、引当を全額またはそれ以上の支払いを必要としかねない衝撃的な内容である。
2)抗凝固薬アスンデキサン
Bayerは11月20日、血栓症や脳卒中を予防する新規の経口抗凝固薬 asundexian
の大規模後期臨床試験について、有効性が見られないため中止すると発表した。1万8000人の患者を対象に2022年8月に開始した試験の途中のモニタリングで、米Bristol-Myers
Squibb/米PfizerのApixaban(製品名・Eliquis)に有効性で劣ることが示され、独立データモニタリング委員会が中止を勧告した。
asundexian
はBayerのパイプラインで最も有望視されていたプロジェクトの1つで、年間50億ユーロ(55億ドル)以上の売り上げを生み出すと予想し、2026年に欧州で主要な特許による保護を失う抗凝固薬「Xarelto」(一般名・Rivaroxaban、日本製品名・イグザレルト)に代わる収益源としての自信を示していた。
Xareltoでは米 Johnson &
Johnsonと開発コストを共有し、米国市場の大部分を同社に任せたが、 asundexianでは単独開発を選択し、米国でのマーケティングや流通に多額の費用を投じる用意をしていた。
Xareltoの売上高は2022年で4,516百万ユーロ(7300億円)で、特許切れまでに後継候補でXarelto
以上の売上高を見込んでいたasundexian
の代わりが見つからない場合、悲惨なこととなる。
2023/11/8 米国医薬業界、特許切れの恐怖:住友ファーマのケース
Bayerの株価は11月20日に急落し、12年ぶりの安値となった。
今年6月に就任したBill
Anderson
CEO(直近はRocheの医療用医薬品部門CEO)は、11月8日発表した2023年7〜9月期決算(最終損益は45億6900万ユーロの赤字)について「今期の業績はまったく容認できない」と語った。
管理職の削減とともに、主要部門である農薬・種子(Crop
Science)かコンシューマー・ヘルスの分社化を検討していると明らかにした。
本年7〜9月期でCropScienceで3,964百万ユーロ(約6300億円)の特別損失があり、全社の金利・税前損益が3,594百万ユーロの赤字、純損益が4,569百万ユーロの赤字となった。Pharmaceutical、Consumer
Health はほぼ前年並み。
2023/11/30 国産の新型コロナワクチン、接種で使用へ
第一三共は11月17日、厚生労働省との間で、2023年秋開始接種に使用するオミクロン株XBB.1.5対応のCOVID-19新型コロナウイルス感染症
1価mRNAワクチン(DS-5670)を供給することに合意したと発表した。
今回の合意は、厚生労働省による本剤の薬事承認を条件とし、2023年度中に140万回分を供給するもの。
厚労省の専門部会は11月27日、本ワクチンの承認を了承した。
今後、正式承認を経て、12月上旬にも医療機関への配送が始まり、現在実施中の接種での使用が予定されている。
これまで海外メーカーのワクチンに依存していたが、国産ワクチンの使用にめどが立ったことで、今後、新たな変異株が流行しても、海外企業に頼らずワクチンを国内で調達できる体制が整う。
ーーー
第一三共は2023年1月13日、開発中の新型コロナウイルス感染症に対するmRNAワクチン
「DS-5670」について、追加免疫の国内製造販売承認申請を行った。
国内の既承認のmRNAワクチン(Pfizer-BioNTech
、Moderna)の初回免疫(2回接種)完了後の健康成人及び高齢者約5,000名を対象とした国内第1/2/3相臨床試験の結果に基づくもの。
2023/1/16
第一三共、COVID-19に対するmRNAワクチンDS-5670の国内における製造販売承認申請
第一三共は8月2日、新型コロナウイルス感染症に対する起源株1価
mRNAワクチン「ダイチロナ®筋注」(DS-5670)について、「SARS-CoV-2による感染症の予防」を適応とした追加免疫における国内製造販売承認を取得したと発表した。
国産初のmRNAワクチンで、ファイザーやモデルナのワクチンは冷凍保存が原則必要だが、冷蔵(2〜8℃)での流通・保管が可能となるため、医療現場での利便性の向上が期待できる。
しかし、今回承認された本剤は追加接種に用いられる起源株1価のmRNAワクチンであることから、供給を予定していない。
同社は、XBB.1系統1価ワクチンに対応できるよう開発を進めた。
第一三共は9月6日、開発中のCOVID-19に対するmRNAワクチン(「DS-5670」)の追加免疫を対象とした日本での第3相臨床試験において、主要評価項目を達成したと発表した。
同社は翌9月7日に、12歳以上の追加免疫に対するオミクロン株XBB.1.5系統対応のCOVID-19 1価mRNAワクチン(DS-5670)について、日本における製造販売承認事項一部変更承認申請を行ったと発表した。
今回、これが承認されるもの。
第一三共は新型コロナワクチンを埼玉県北本市の工場で製造する。「政府と合意した140万回分は生産のめどが立っている」としている。
厚労省は9月〜2024年3月末に実施する接種用にPfizer、Modernaと計4500万回分を購入契約している。第一三共製は両社に比べ購入量が少ないため、接種できる場所は限られる見通し。
PfizerやModernaが開発したmRNAワクチンは、ウイルスのスパイクたんぱく質全体が作られるが、第一三共のワクチンは、スパイクたんぱく質の中でも、ヒトの細胞と結合するRBD=受容体結合ドメインという部分だけが作られるため、設計図となるmRNAの長さがより短くなっており、製造工程で品質を管理しやすいほか、変異ウイルスに対応してmRNAを作り直す作業が進めやすいといった利点があるという。
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厚労省の専門部会は11月27日、Meiji Seika
ファルマの新型コロナワクチン「コスタイベ筋注用」の製造販売承認についても了承した。武漢由来の従来型対応のため、現在の接種では使われない見通し。
米国のバイオ企業
Arcturus Therapeutics が開発したレプリコンワクチンと呼ばれるタイプ(与後に体内で成分が増える自己増殖型ワクチン)で、PfizerやModerna製の既存ワクチンに比べ、少ない接種量でワクチンの効果が持続することが期待されている。
Arcturus
Therapeuticsは2013年に設立された米国を拠点とする製薬企業で、後期臨床ステージの感染症用ワクチンをはじめ、肝臓や呼吸器の希少疾患に有効なmRNA医薬品の研究開発を行っている。
Meiji
Seikaファルマが日本での供給や販売を担う。
従来型に対応したワクチンは4月に初回免疫用、6月30日に追加接種用として厚労省に製造販売承認を申請した。今回、これが承認される。
Meiji
Seikaファルマは本年7月、オミクロン型の派生型「XBB.1.5」に対応したワクチンを、2024年1月までに厚生労働省に申請すると発表した。小林社長は「国内で生産体制を持つことが重要だ。二度と『ワクチン敗戦』と言わせないために努力をしている」と述べた。
Meiji
Seikaファルマはワクチンを、医薬品の受託製造会社のアルカリス(千葉県柏市)と連携し、福島県南相馬市の工場で生産する予定。
アルカリスは、2017 年に武田薬品の創薬プラットフォーム事業を継承し事業を開始した日本初の創薬ソリューションプロバイダーである
Axcelead Drug Discovery Partnersのグループ企業アクセリードが、Arcturus
Therapeutics とのJVで設立したもの。
Arcturus
Therapeuticsの研究開発パイプラインの製造拠点としての責任を果たしつつ、世界中の製薬会社、創薬ベンチャー、アカデミアなど幅広い顧客に高品質のmRNA医薬品の安定供給を約束する世界初の統合型mRNA医薬品CDMOを目指している。