内務省は、特別エリアを最大限に保護するための規則作りに着手しており、特別地域として指定された
1,300
万エーカー以上の追加保護を検討する。特別地域での将来の石油とガスのリースと産業開発を制限することになる。
バイデン大統領は、NPR-A に近い北極海の約 280 万エーカーを、将来の石油とガスのリースの立ち入り禁止として無期限に指定する措置を講じる。
これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。
最新分は http://blog.knak.jp
アラスカ州の地元当局と多くの先住民団体は税収に期待して開発に賛成する一方、温暖化防止と野生動物保護を求める環境団体は反対し、バイデン大統領の判断に注目が集まっていた。
許可されたのは同社がNational Petroleum Reserve-Alaskaで進めるWillow project。最大で日量18万バレルを生産する計画で、事業規模は70億〜80億ドルと伝えられている。
The Bureau of Land Management の発表によると、承認されたのは3つの掘削箇所(BT1, BT2 and BT3)、合計199の井戸、付属のインフラ。
Conocoは5カ所での掘削に加え、周辺地域の道路や複数の橋梁、パイプラインの整備を計画していたが、政府は環境破壊の懸念に配慮して掘削は3カ所だけを承認し、インフラ整備計画も縮小した。
このプロジェクトはトランプ前政権が2020年末に承認していたが、米連邦地方裁判所は2021年8月に、環境アセスメントが不十分と判断、ライセンス許可を取消す判決を下した。
バイデン大統領は、連邦の土地での新たな石油・ガス掘削を認めないことを約束して就任した。
しかし、バイデン政権は2021年5月、この油田開発プロジェクトを支持する方針を示した。
今回の承認と同時に、バイデン政権はNational Petroleum Reserve-Alaska における将来の産業発展を制限するための重要な措置を発表した。
Pfizer Inc.は3月13日、がん治療の次世代薬開発で先行する米新興企業 Seagen Inc. を430億ドルで買収すると発表した。
「コロナ特需」が減り、中期では大型薬の特許失効も控えるため、がん治療薬を新型コロナ感染収束後の新たな成長分野に育てる。
2022年7月に米製薬大手MerckがSeagenの買収に向けた交渉を行っていることが報じられた。
Merckのがん治療薬KEYTRUDA® の特許が2028年に切れる。
Merckは2020年にSeagenに出資、一部のSeagen製品をKEYTRUDAと併用する試験も既に実施している。交渉は進んだ段階にあり、買収総額はおよそ400億ドルかそれ以上となる可能性があると報じられた。最終的に価格で折り合わなかったと見られる。
Seagen Inc.は抗体薬物複合体(ADC)と呼ばれる医薬品の開発で知られる。高い効果が期待できる一方、副作用が少ないとされ、次世代のがん治療薬として期待されている。
Pfizerはコロナワクチンや治療薬(Primary care部門)の販売増で、2022年の売上高は1003億ドル、最終利益は313億ドルと、いずれもコロナ前の2019年から大きく伸びたが、2023年はコロナ関連の売上高の減少が見込まれている。
(単位:百万ドル) 2022 2021 売上高 Biopharma
Primary care
うちコロナワクチン
コロナ治療薬リトナビル73,023
(37,806)
(18,933)52,029
(36,781)
( 76)Specialty care 13,833 15,194 Oncology 12,132 12,333 Total 98,988 79,557 Pfizer CentreOne(CDMO) 1,342 1,731 合計 100,330 81,288 Net Income 31,372 21,979
2022年の売上高 1003億ドルに対し、2023年の売上高予想は670〜710億ドルとみている。
さらに、Pfizerの場合、主力の医薬品で得られる約170億ドルの売上高が2020年代後半には特許切れによる危険にさらされる。
Pfizerでは、特許切れ対策として2030年までに企業買収による年間売上高250億ドルの達成を約束しているが、Seagenの「抗体薬物複合体(ADC)」買収がPfizerのがん治療薬での地位を高めるとし、2030年で100億ドル以上の貢献を期待している。
ーーー
抗体薬物複合体(ADC)の仕組みは下図の通り。
第一三共の抗がん剤 ENHERTU ®(トラスツズマブ デルクステカン)が日本で販売されている。新規の薬物トポイソメラーゼI 阻害剤を、独自のリンカーを介して、HER2発現がん(乳がん、胃がん、非小細胞肺がん及び大腸がんなど)を対象とする抗HER2抗体に結合させたものである。
Seagen Inc.はこれについて第一三共と争っている。
Seagen Inc.は旧称Seattle Genetics, Inc.で、第一三共は2008年7月からSeattle Geneticsと抗体薬物複合体の共同研究を実施したが、新薬開発の成果がでないとして2015年6月に関係を解消していた。
最終的に第一三共は抗HER2抗体とリンカー、ペイロード(トポイソメラーゼI 阻害剤)のすべてを自社技術で構築した。
2019年にSeattle Geneticsから第一三共のADC品に関する特定の知的財産権の帰属を主張して異議の通知をうけた。しかし、ADCの共同研究は現在の第一三共のADC品とは全く異なるため、同社の主張は根拠がないと考えており、デラウェア州連邦地方裁判所に同社を被告として確認訴訟を提起した経緯がある。
テキサス州東部地区連邦地方裁判所は7月20日、Seagen社の主張を認める判決を下した。
他方、デラウェア州連邦地方裁判所へのSeagenを被告とした確認訴訟で裁判所は仲裁による解決を指示、仲裁廷は
Seagenの主張を全面的に否定する判断を下した。
Seagenは2022年11月10日、ワシントン州西部地区連邦地方裁判所に仲裁判断の取消を求める申立てを提出した。
2022/8/16 第一三共の抗体薬物複合体技術に関する Seagen Inc.との紛争
2023/3/17 独VW、欧州以外で初の電池工場をカナダに建設
ドイツの自動車大手Volkswagen (VW) は3月13日、同社として初めてとなる欧州以外のEV用バッテリーセル工場を建設する場所としてカナダを選んだと発表した。
税優遇などで気候変動対策に動く企業を支援する米国のインフレ抑制法(IRA)を受け、欧州で6つの電池工場をつくる従来の計画を保留し、北米投資に傾斜する。IRAは米国のほかカナダやメキシコでの投資も対象となる。
新工場の投資額は非公表であるが、VWは最大100億ユーロ(約1.4兆円)の優遇措置を見込む。
デトロイトから北東へ約195km 離れたカナダのオンタリオ州 St. Thomasに建設する。2027年の生産開始を目指す。
VW傘下のScout Motorsは3月3日にオフロードモデルの「スカウト」の電動車ブランドとしての復活に向けて、米国サウスカロライナ州コロンビア近辺に最初の工場を建設すると発表しており、これに次ぐ北米での電気自動車関連事業となる。
「スカウト」はInternational Harvesterがかつて販売していたピックアップトラックのオフロードモデルで、2021年にVWグループのトラック・バス部門が買収した。米国で電動車ブランドとして復活させ、まず、ピックアップトラックとSUVの2車種のEVを米国市場で発売する。
投資額は20億ドルだが、IRAによる優遇措置で投資額を抑えられるとしている。
また2020年代後半にもメキシコのエンジン車工場でも新たにEVを製造できるようにすることも検討する。VWは2030年までに25車種以上のEVを米国で発売する予定で、IRAを追い風に投資を加速している。
VWは2022年7月、バッテリー攻勢を開始するために、新しいバッテリー会社「PowerCo」を立ち上げ た。グループの 世界的なバッテリー事業の責任は「PowerCo」が負うこととなり、セル生産に加えて、バッテリー バリューチェーン全体に沿った活動を担当する。同社はパートナーと共に、2030年までにバッテリー関連事業の開発に200億ユーロ以上を投資する。
カナダのギガ計画もPowerCoが担当する。
VWは2022年8月22日、カナダ政府との間でバッテリーのサプライチェーンを強化することなどを目指した覚書に署名した。EV電池の材料であるリチウム、ニッケル、コバルトの安定調達に向けてカナダと協力することで合意した。VWはカナダ国内の鉱山会社に出資し、安定的な供給を確保する 。メルセデス・ベンツも同様の覚書をカナダ政府と締結した。
参考 2023/2/20 LG Chem、北米産リチウム精鉱購買契約を締結
今回はバッテリーセル工場の詳細を発表していないが、昨年8月の時点でPowerCoの会長は、2022年内に北米工場の場所と、採掘、製錬のパートナー候補を発表することを目指していると話し、北米の生産能力は20GWhを目指していることも明らかにしている。
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VWは2021年3月、2030年までのEVなどの電動車向けバッテリーとその充電に関する技術ロードマップを発表した。
遅くとも2025年までに世界EV市場のリーダーになることを目指すとし、最重要部品となるバッテリーについて、電池メーカーとの合弁などを通じて40 GWh の工場を2030年までに欧州で6カ所設ける。規格を統一した電池(“Unified Cell”)を大量生産しコストを半減、ガソリン車より安いEVを目指す。
これまでにドイツのザルツギッター、スウェーデン、スペインのバレンシアの3カ所の建設を決めていた。
VWはスウェーデンのバッテリーメーカー Northvoltとの間で、今後10年にわたるバッテリー製造で140億ドルの契約を結んだ。提携の一環として、Northvoltのスウェーデンのプラントは拡張し、40 GWh とする。
VWはNorthvoltとのJV(16GWhのリチウムイオンバッテリー工場)を南ドイツのSalzgitterに設立しているが、これをVW 100%子会社とし、ここも40 GWh に増強する。VWは2022年3月、スペインのバレンシアに40GWのバッテリーセル工場を建設すると発表した。2026年の稼働開始を予定。
2021/3/23 VWグループ、EV向け次世代電池を大量生産
2027年には東欧(ポーランドかスロバキアかチェコ)に1工場、2030年までにあと2工場を建設し、合計6工場 240GWh の能力とする予定であった。
「4カ所目となる東欧での工場立地がまもなく決まる」。2022年12月の臨時株主総会でオリバー・ブルーメ社長はこう語ったが、VW社内でその後、欧州での電池計画の「保留」が決まった。
「欧州の投資環境は不透明感が強まり、状況を見定めるまで待つことが重要。意思決定を急ぐ必要はまったくない」としている。
欧州で2030年までに計240ギガワット時の電池生産量が必要だとの方針は変えていないが、2026年以降に4カ所目の投資決定を先延ばしすると示唆、工場の数についても「必ずしも6カ所になるとは限らない」と表現を改めた。
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VWだけではなく、多くの企業が昨年8月のIRA成立以降、米国投資に踏み切った。
BMWグループ:
2022年10月19日、サウスカロライナ州スパータンバーグの工場において、10億ドルを投じて新たにBEVを生産するほか、7億ドルを投じてスパータンバーグ近郊のウッドラフに高電圧バッテリー組立工場を新たに建設すると発表
2023年2月3日、メキシコ中央部サンルイスポトシ州の既存工場に8億ユーロを投じて、高電圧バッテリーとEV「Neue Klasse」を生産すると発表
Stellantis:
2023年2月28日、EV用の電気駆動モジュール(EDM)を生産するため、米国インディアナ州の3つの工場に合計1億5500万ドルを投資すると発表
ドイツ自動車部品大手Bosch :
2020年8月31日、サウスカロライナ州の工場を拡張し、2億ドルを投じて燃料電池車向けの燃料電池スタックを生産すると発表
本田技研工業と韓国のLG Energy Solution:
2022年8月29日、北米で生産販売されるHondaおよびAcuraのEV用リチウムイオンバッテリーを米国で生産する合弁会社の設立に合意したと発表。
2023/3/20 韓国の国家先端産業育成戦略、サムスンが30兆円の大投資
米国と中国など各国は半導体などの先端産業をめぐり競争力確保と企業誘致戦を展開しているが、韓国では、韓国企業の世界最高水準の製造能力と技術力に比べて韓国政府の支援水準と規制環境が不足しており、世界的競争でタイミングを逃せば先進国との格差が広がりかねないという危機意識が高まった。
韓国科学技術情報通信部がサプライチェーン・通商、新産業、外交・安保など技術主権観点からの戦略的重要性を根拠に12大国家戦略技術を選定し、2022年10月28日の国家科学技術諮問会議で「国家戦略技術育成方案」を発表した。
韓国国会は本年1月11日、経済安全保障の確保および先端産業競争力の強化のため、「国家先端戦略技術」を指定し、関連産業を育成・保護することを目的とする「国家先端戦略産業競争力強化および育成に関する特別措置法」(国家先端戦略産業特別法) を議決した。
韓国産業通商資源部と国土交通部は3月15日、尹錫悦大統領主宰で開かれた非常経済民生会議で、国家先端産業育成戦略、国家先端産業ベルト造成計画などを発表した。
尹大統領は「先端産業は核心成長エンジンであり、安保戦略資産で、雇用・民生とも直結する。半導体で始まった経済戦場がバッテリーと未来自動車など先端産業全体に拡張された。さらに成長するための民間投資を政府が確実に支援しなくてはならない」と話した。大統領室の報道官は「尹大統領が現在の先端産業の世界的競争状況は生きるか死ぬかの問題で急がなくてはならないと迅速な育成推進の必要性を強調した」と伝えた。
(国家先端産業育成戦略)韓国政府はこれら産業の超格差技術力確保に向け2027年までに量子と人工知能(AI)など12大技術研究開発に予算25兆ウォンを投じる。( 1 ウオンは約0.1円)
https://spap.jst.go.jp/korea/experience/2022/topic_ek_22.html
最先端設備を備えた「韓国型 IMEC」を構築し先端技術開発空間に世界の人材を誘致することにした。半導体IMEC を先に作り、二次電池・バイオなどに拡張する。
IMEC (Interuniversity Microelectronics Centre) はベルギーに本部を置く1982年創設の国際研究機関で96カ国の専門家が参加している。リソグラフィ技術や太陽電池技術、有機エレクトロニクス技術など次世代エレクトロニクス技術の開発に取り組んでいる。
これを通じて半導体、未来自動車、二次電池、ディスプレー、バイオ、ロボットの6大産業で2026年までに民間主導で550兆ウォンの投資を引き出す。
半導体 340兆ウォン 約34.6兆円 電力・車両など次世代半導体技術を育て、優秀人材を育成
うち、サムスン電池の投資は300兆ウォン(下記)ディスプレー 62兆ウォン 約6.3兆円 二次電池 39兆ウォン 約4兆円 2030年までに世界1位への跳躍。韓国で生産する二次電池の生産容量を60ギガワット時以上に。 バイオ 13兆ウォン 約1.3兆円 次世代自動車 95兆ウォン 約9.7兆円 電気自動車生産規模を5倍に拡大し、センサーや二次電池など核心技術を確保して世界3強に跳躍 ロボット 1.7億ウォン 約0.2兆円 合計 550.7兆ウォン 約56兆円
(国家先端産業ベルト造成計画)
合わせて、
韓国政府は先端産業を育てるために地域別に生産拠点を確保するという計画も発表した。
全国に国家産業団地15カ所、総面積4076万平方メートルを構築するというもので、尹錫悦政権で初の国家産業団地候補地選定である。
国土部は「先端システム半導体クラスター」向けに龍仁市処仁区南四邑一帯の710万平方メートルを国家産業団地の候補地に選んだ。
半導体クラスターのほか、地方14カ所にも国家産業団地を新たに指定することにした。具体的な候補地は下記の通り。
大田 ナノ・半導体、宇宙航空 天安 未来モビリティ、半導体 清州 鉄道 洪城 水素・未来車、二次電池 光州 2ヵ所の完成車生産工場を基盤に未来車の核心部品 高興 ナロ宇宙センターと連携し、宇宙発射体 益山 情報通信技術(ICT)と食品加工を融合 完州 水素貯蔵・活用製造業 昌原 防衛・原子力産業の輸出を促進 大邱 未来車・ロボット 安東 バイオ医薬 慶州 小型モジュール原発 蔚珍 原発を活用した水素生産産業 江陵 天然物バイオ
植物・鉱物・微生物などから抽出した物質を健康食品・医薬品・化粧品に活用
国家産業団地に指定されると、許認可の迅速な処理と基盤施設の構築、税額控除などの特典が与えられる。
政府は新規産業団地を作るため、開発制限区域(グリーンベルト)と農地規制はできるだけ緩和する。
関係機関の事前協議と予備妥当性の調査もできるだけ速やかに進める。
ここに入居する企業は取得税と財産税の減免と容積率引き上げ、迅速許認可などの恩恵を得られることになる。
ーーー
先端半導体クラスターは総面積710ヘクタールで、完成すれば世界最大規模の半導体団地になる。
サムスン電子は龍仁市に2042年までの20年間、300兆ウォンを投資し、次世代半導体製造工場5カ所など生産施設を建設する。
2042年までにファウンドリー(半導体受託生産工場)と先端メモリー半導体工場計5カ所を建設し、ファブレス(半導体設計)、素材、部品、設備企業も最大150社を誘致する。現在、世界最大であるサムスン電子の京畿道平沢半導体団地(289ヘクタール)の2.5倍に達する規模となる。
同社は「新しいクラスターが構築されれば竜仁市器興区や華城市、平沢市、(SKハイニックスの)利川市など半導体生産団地と、近隣の材料・部品・装備企業、ファブレスなどを連係した世界最大の『半導体メガクラスター』が完成する」とし、「300兆ウォンが投資されれば直接・間接的な生産誘発効果は700兆ウォン(約70兆5千億円)、雇用誘発効果は160万人に達するだろう」と予想した。
https://eetimes.itmedia.co.jp/ee/articles/2110/22/news034_4.html を補正2021/5/20 韓国、官民協力で「K半導体ベルト」構築
TSMCを追撃しているサムスン電子は現在、ファウンドリー生産ラインの規模がTSMCの3分の1にすぎず、世界で初めて3ナノメートル製造プロセスによるファウンドリーの量産に成功したにもかかわらず、両社のシェアには3倍以上の格差(TSMC 58.5%、サムスン 15.8%)があり、なかなか縮まっていない。竜仁クラスター構築によって、サムスン電子がTSMCを本格的に追撃する体制が整う。
現在、竜仁市にはSKハイニックスが120兆ウォンを投資し、415ヘクタール規模の先端メモリー半導体クラスターを建設している。
半導体クラスター構築で韓国の半導体生産能力自体が25%以上拡大する見通し。同時に試作品研究開発用ラインも拡充され、国内のファブレス企業、学界との協業もさらに活性化する 。
尹錫悦大統領は「現在のグローバル競争の状況は生きるか死ぬかの問題になっており、急がなければならない」とし、「半導体メガクラスターを世界最大規模に育てていく」と述べた。
日本はどうするのだろうか。
参考 「半導体戦略」(経済産業省 2021年6月)
2021/10/18 半導体大手、台湾のTSMCが日本で工場建設 に記載
3月10日に米国でSilicon Valley Bankが、12日にSignature Bankが破綻した影響で、欧米に金融不安が広がり、世界的に金融株が売り込まれた。
米国では金融機関が加盟する連邦預金保険公社(FDIC)が1口座あたり25万ドルを上限に保護する仕組みがあるが、Silicon Valley Bankはスタートアップ業界を顧客としており、2022年末の預金残高約1750億ドルのうち89%に当たる約1560億ドル(約21兆円)は預金保護の対象外だった。
今回、米規制当局は両行の預金を全額保護する措置をとった。
欧州では、かねてより経営不安がうわさされていたクレディ・スイス(Credit Suisse)の株価が急落した。3月15日に筆頭株主(10%出資)のSaudi National Bankの会長がクレディ・スイスに追加出資しないと述べたと伝わると、クレディ・スイス株を一段と売り込む動きが出た。
スイス当局は、スイス第二位の銀行であるクレディ・スイスを救済するためにすぐに動いた。
スイスの投資銀行大手UBSは3月19日、クレディ・スイスを約32億3,000万ドルで買収すると発表した。
買収は株式交換の形で行われ、2023年末までに完了する。3月17日時点でクレディ・スイスの市場価値は約80億ドルとされていたが、これを大きく下回る額となった。
今回の買収取引には、スイス連邦財務省、スイス金融市場監督機関(FINMA)、スイス国立銀行(中央銀行)も協力している。
スイスの財務省は金融最大手UBSによるクレディ・スイス買収をめぐって、リスクを軽減するための支援策を講じると発表した。
具体的にはUBSがクレディ・スイスから引き継ぐ資産の価値が下がり、将来の損失が一定の額を超えた場合、政府がUBSに90億スイスフラン(約1.3兆円)余りの政府保証を行う。
スイス国立銀行は、UBS に1,000億スイスフラン(約14兆円)の流動性支援を行う。
付記
UBSは8月11日、スイス政府の保証を自主的に終了すると発表した。「対象のすべての資産を精査し、資産価値を適切に調整した結果、保証は今後不要との結論に達した」としている。
ーーー
クレディ・スイスは3月19日、UBSによる買収の一環としてスイス当局の指示の下、160億スイスフラン(172億4000万ドル)相当のAT1債を無価値化すると発表した。スイス金融市場監督機構がAT1債の減損を決めて同社に通知をしたという。
発行体の経営破綻時に借入金や通常の社債などと比べて弁済される順位が低い劣後債のうち、償還期限がない債券を「永久劣後債」と呼ぶが、AT1債は金融機関が発行する永久劣後債を指す。一般に発行から一定期間後に買い戻す条項をつけることが多い。弁済順位が低い分、通常の社債に比べて高い利回りを得られる。
自己資本に算入できるため、国際的な自己資本規制「バーゼル3」の導入以降、発行が相次いだ。米ブルームバーグ通信によると、AT1債の市場規模は世界で約2750億ドルに達するという。
自己資本比率が一定水準を下回るなど銀行が資本不足に陥った場合に金融機関の自己資本に組み入れられる。AT1債の元本は削減され保有する債券投資家は損失を被る。
通常は、AT1 債で損失が生じる前に株主が最初に痛手を受ける。クレディ・スイスも先週の投資家向けプレゼンテーションで言及していた。このため、株式ではなくAT1債の評価をゼロにするという決定に、同行のAT1債保有者の一部から猛反発が起きた。
スイス金融市場監査局は、この決定がクレディ・スイスの資本増強につながると説明、民間投資家に痛みの分担を求めた。
AT1債が無価値となる一方で、返済の優先順位が社債より下位となる株式の保有者は、UBSによる株式交換方式の買収で総額32億3000万ドルを受け取ることになる。
日本の金融庁は「今回は必ずしも破綻処理ではないので株主責任を国が問うた訳ではない。AT1債には『国からの支援策があった場合、元本割れとなる』という趣旨の契約条項が入っており、今回はAT1債のみ抵触した」と説明する。
付記 スイス金融当局の説明 (3/23)
・AT1債の契約上、「存続に関わるイベント」など特別な政府支援が認められた場合には無価値にすると定めている。
・スイス政府は3月19日、流動性支援に関する緊急法令を制定した。これにより金融市場監督機構は銀行に対して評価減を命じる権限を与えられた。これに基づき、全額毀損とするよう通知した。
バーゼルIは、国際的な銀行システムの健全性の強化と、国際業務に携わる銀行間の競争上の不平等の軽減を目的として策定された。これにより、銀行の自己資本比率の測定方法や、達成すべき最低水準(8%以上)が定められた。
バーゼルIIでは、達成すべき最低水準(8%以上)はバーゼルIと変わらないものの、銀行が抱えるリスク計測(自己資本比率を算出する際の分母)の精緻化が行われた。
「その他 Tier1」がAT1 債(Additional Tier 1 債)と呼ばれ、「生き残るための資本」であるゴーイング・コンサーン・キャピタルと定義され、Tier2 は「秩序ある破綻のための資本」と定義された。
リーマンショックをきっかけに再度内容の見直しが行われ、2017年に新しい規制の枠組みである「バーゼルV」の最終的な合意が行われた。
具体的には、銀行が想定外の損失に直面した場合でも経営危機に陥ることのないよう、自己資本比率規制が厳格化された。将来の経済危機などの非常時に備え、取り崩しが可能な資本を一律に積み上げておくことが規定されている。
2023/3/22 Sempra、Port Arthur LNG Phase 1 の投資を決定
米エネルギー大手Sempraは3月20日、同社とKKRが70%出資するSempra Infrastructure Partners, LP がテキサス州Jefferson CountyのPort Arthur LNG Phase 1 の投資を決定したと発表した。2027年の稼働を目指す。
Port Arthur LNG Phase 1 プロジェクトは認可済で、2 系列 年間約1,300 万トンの天然ガス液化トレイン、2 つのLNG 貯蔵タンクを持つ。設備投資総額は130億ドル。
ConocoPhillips(500万トン)、RWE Supply and Trading(225万トン)、INEOS(140万トン)、ポーランドのPKN ORLEN S.A.(100万トン)、ENGIE S.A. などと 約1050万トンの長期契約を結んでいる。
ConocoPhillipsは30%を出資する。同社は年間500万トン、20年間の購入契約を締結している。
KKRが運営するインフラファンドGlobal Infrastructure Investors IV fund が25%〜49%を出資する。
Sempra Infrastructure Partnersは、KKRの出資比率次第で、20%〜30%を出資する。
Sempra Infrastructure は、Port Arthur LNG Phase 2(申請中、2028年稼働予定)のマーケティングと開発を積極的に行っている。ConocoPhillipsはこれについても出資と引取の権利を得ている。
ーーー
本事業には当初、Saudi Aramco が参加する予定であった。
Saudi Aramco と米国のSempra Energyは2020年1月6日、Aramco Services Company が Sempra LNG がテキサス州で開発中のPort Arthur LNG export projectに参加する Interim Project Participation Agreement に調印したと発表した。
AramcoがPort Arthur LNG の第1期分 年間1100万トン(その後、1350万トン)のうち500万トンのLNGを20年間引き取るとともに、第1期計画に25%出資する。今後、最終確定し、正式契約を結ぶ。
2020/1/14 Saudi Aramco、米国でPort Arthur LNG計画に参加
しかし、2021年6月に双方が本件を取りやめることで合意した。この後、KKRが参画した。
付記 2024/6/26 Aramco and Sempra announce Heads of Agreement for equity and offtake from Port Arthur LNG Phase 2 Aramco’s 25% participation in the project-level equity of Phase 2.
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Sempra LNGは北米の5か所でLNGプラントを建設し、グローバルなLNG市場に年間45百万トンのLNGを輸出する目標を立てており、Port Arthur LNGはその一つである。
現在具体化しているのは、次の3つ。
1) CAMERON LNG (Hackberry, Louisiana)
第1期 3基計 1200万トンは昨年出荷を開始した。
同社は次の液化設備(2基)とLNGタンクの承認手続きを開始した。
2019/6/4 キャメロンLNG、出荷開始
2) 本件 Port Arthur LNG (Port Arthur, Texas)
3)ENERGIA COSTA AZUL LNG (Ensenada, Baja California, Mexico)
Sempra LNG とメキシコ子会社 IEnova が既存の輸入LNGのガス化ターミナル(Energía Costa Azul )に液化設備の建設を計画している。
1期は1系列で年間能力 240万トン。LNGタンクやバースは既存のものを利用する。2期では液化設備2系列とタンクを新設する。
Sempraは2019年3月31日、同地での液化のため、天然ガスをメキシコに輸出する連邦政府の認可を取得したと発表した。
TransCanada所有のNorth Baja Pipelineがアリゾナ州ーカリフォルニア州を結んでおり、メキシコ国境でSempra Energyのメキシコのパイプラインに接続する。2020年11月17日、最終投資決定を行ったと発表した。
Sempraは中国へのLNG輸出を考えている。
2022年12月22日、米国エネルギー省から、米国産のLNG をメキシコから非自由貿易協定 (FTA) 諸国に再輸出する許可を受けた。
2023/3/23 NVIDIAと三井物産、日本の創薬を加速するためのAI
スーパーコンピュータ Tokyo-1 を発表
NVIDIAは3月22日、三井物産と協業して、高解像度分子動力学シミュレーションやジェネレーティブAIモデルなど創薬を加速するテクノロジーで日本の製薬業界をさらに発展させるためのAI スーパーコンピュータ「Tokyo-1」を発表した。
ーーー
NVIDIA Corporationは、カリフォルニア州サンタクララにある半導体メーカー。1993年に米半導体製造会社のAMD(Advanced Micro Devices)を辞職したJen-Hsun Huang氏(社長兼CEO)等によって設立された。
コンピュータのグラフィックス処理や演算処理の高速化を主な目的とするGPU(Graphics Processing Unit)を開発し販売する。
デスクトップパソコンやノートパソコン向けのGPUであるGeForce
プロフェッショナル向けでワークステーションに搭載されるQuadroやNVS
スーパーコンピュータ向けの演算専用プロセッサであるTesla
携帯電話やスマートフォン・タブレット端末向けのSoC(システム・オン・チップ)であるTegra
また近年は、自動運転技術の開発にも力を入れている。
ソフトバンクグループは2020年9月13日、傘下の英半導体設計 Arm Limited の全株式をNVIDIA Corporationに対して最大400億米ドルと評価した取引で売却することについて、最終的な契約の締結に至ったと発表した。
しかし規制上の制約が大きく、2022年2月8日、契約を解消したと発表した。
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「Tokyo-1」は、NVIDIA DGXで構築されたスーパーコンピュータ。NVIDIA DGX™ H100は、第4世代のNVIDIA DGXシステムで、NVIDIA H100 Tensor コア GPU とNVLink Switch System、NVIDIA ConnectX®-7を組み合わせた世界最速のAIシステム。
三井物産は数十億円を投じて複数台購入した。10月にも創薬向けに国内に設置する。三井物産が2021年に設立した創薬支援子会社のゼウレカ(Xeureka)が運営する。
第一段階として、TensorコアGPU「NVIDIA H100」を8基搭載したシステム「NVIDIA DGX H100」が10台以上導入される予定。
DGX H100は、GPUアーキテクチャー「NVIDIA Hopper」をベースとしており、生物学や化学のための生成系AIモデルを含むTransformerモデルの学習を加速させるために設計された「Transformer Engine」を搭載する。Tokyo-1上でソフトウェア「NVIDIA BioNeMo」を使用することにより、研究者はタンパク質構造の予測、低分子化合物の生成、骨格推定などの用途で、最先端のAIモデルを数百万、数十億のパラメーターに拡張できるようになるとのこと。
まずアステラス製薬、第一三共、小野薬品工業など国内6社が利用料を支払って使えるようにする。2024年3月までに10社まで増やす。
ユーザー企業に「NVIDIA DGX
H100」ノードへのアクセスを提供し、分子動力学シミュレーション、大規模言語モデルのトレーニング、量子化学、潜在的な薬剤の新規分子構造を生成するジェネレーティブAIモデルなどをサポートする。
また、ユーザーは生成系AIクラウドサービス「NVIDIA BioNeMo」創薬サービスおよびソフトウェアを通じて、化学物質、タンパク質、DNA、RNAの一般的なファイル形式の大規模言語モデルを活用することもできる。
日本の製薬業界は、COVID-19ワクチンでみられるように、開発競争で遅れをとっている。この問題を解決するための施策の一つとしてAIの導入がある。
新薬の候補となる化合物を絞り込む「創薬研究」では、従来は実際に化合物を合成することを繰り返すため、2〜3年かかっている。スパコンは膨大なデータを使ってオンラインで絞り込むことが可能で、期間を2〜3カ月とこれまでの10分の1以下に縮められる。
しかし、現在の日本では、製薬会社が十分にスパコンを活用する環境が整っていない。マイクロソフトやアマゾンもクラウド上で創薬関連ツールを提供しているが、「空き容量が足りない、利用料が高額になりやすいなどの課題がある」(三井物産)。
三井物産は、英国でのCambridge-1 を参考にした。
NVIDIA は2021年7月、英国で最もパワフルなスーパーコンピュータ Cambridge-1 を発表した。これにより、トップ サイエンティストやヘルスケアの専門家がAI とシミュレーションのパワフルな組み合わせを利用し、デジタル バイオロジーの革命を加速し、世界をリードする英国のライフサイエンス産業を強化する。
AstraZenecaはディープラーニングと AI で新薬の開発を加速、GSKはCambridge-1 の計算リソースを利用して、大規模データベースの遺伝学根拠を活用し、世界を変える医薬品を開発している。
King’s College London は人間の脳の人工 3D MRI 画像を合成可能なディープラーニング モデルを作り、さまざまな要因が脳、解剖学的構造、病状に影響を与える仕組みを研究している。
Guy’s and St Thomas’ NHS Foundation Trust は異種システムから大量の患者データを処理、取り扱い、対応する。
NHS はスーパーコンピューティングのパワーを必要とする AI テクノロジを利用し、データを分析し、クリーンアップしている。
Oxford Nanopore はゲノミクス研究を加速している。
https://www.nvidia.com/ja-jp/industries/healthcare-life-sciences/cambridge-1/
今回、日本で参加する各社の狙いは次の通り。
アステラス製薬: AI や大規模シミュレーションは、低分子化合物の研究以外にも、抗体、遺伝子治療、細胞医療、標的タンパク質分解誘導、次世代ファージセラピー、mRNA 医薬の研究などに幅広く活用できると考えている。
第一三共:AIおよびTokyo-1の最先端のGPUリソースを駆使することで、大規模演算を行い、創薬活動を加速させることができる。医薬品デリバリーの改善、個別化医療など、新たな価値を患者に提供できる可能性に期待。
小野薬品工業:高品質なシミュレーション、画像解析、映像解析、言語モデルなど、利用範囲は非常に広い。
三井物産:製薬業界が計算創薬のための最先端のツールでこの状況を一変させることができるイノベーションハブを構築する。
米連邦準備理事会(FRB)は3月21〜22日に開いた連邦公開市場委員会(FOMC)で、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を0.25%ポイント引き上げ 4.75〜5.00%とした。
一部では、米銀2行(3月10日のSilicon Valley Bank、12日のSignature Bank)の経営破綻を受け、追加利上げを一時停止する可能性も噂されていたが、金融システム不安がくすぶるなかでも、インフレを抑えこむ決意を打ち出した。
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決定は全会一致。ただ、金融市場が混乱する中、利上げが近く一時停止される可能性があることを示唆した。
インフレを抑制するために今年あと1回の利上げが必要と想定、2023年末の政策金利の予想中央値は5.1%で、昨年12月時から変わらなかった。
しかし、2022年3月のゼロ金利解除以降の声明に「継続的な利上げが適切」との文言を含めていたが、今回、この文言を削除し、代わりに「幾分の追加的な金融政策引き締めが適切になるかもしれない」との文言を採用した。
あと1回の0.25%ポイントの利上げ後は、利上げがいったん停止される可能性があることが示唆された。
物価情勢について「インフレ率は引き続き高止まりしている」と指摘し、インフレ率を2%に引き下げることに引き続き強くコミットすると述べた。但し、「重要なことはインフレ率を2%に引き下げるのに十分な引き締め政策を取ることだ」と強調し、引き締めは利上げだけでなく、金融環境の引き締まりによってももたらされる可能性があるとした。
労働市場については「雇用の伸びはここ数カ月間で上向き、堅調なペースで進んでいる」としている。
パウエル議長は記者会見で金融システム不安に言及し、「この問題がどれだけ深刻で持続的かを検証する」とし、「マクロ経済に重大な影響を及ぼす可能性は十分にあり、それを政策に踏まえることになる」と述べた。
一方で、米金融システムの安定性について繰り返し自信を表明した。
「Silicon Valley Bankの経営は大失敗だった。この銀行は非常に急速に事業を拡大させ、流動性リスクと金利リスクにさらした上、そのリスクを回避することをしなかった。保険で保護されない預金の割合や国債などの金利リスクを抱えた有価証券の保有量が異常に高く、アメリカの銀行システム全体の問題ではない。」
Silicon Valley Bankはスタートアップ業界を顧客としているが、ここ数年で預金残高を急増させ、2018年の約4倍にあたる約27兆円の預金残高となっていた。
同行は2022年からこれを長期債を中心に投資したが、FRBによる繰り返しの利上げで価値が下がり、含み損が増大した。満期までもっておれば損失は発生しないが、顧客からの解約を受け、売却せざるを得なくなり、巨額の損失を出した。
これが明らかになり、不安を感じた顧客による預金の引き出しが相次ぎ、破綻した。「過度な短期調達、長期運用」が破綻の原因で、事前に問題が指摘されていたが、同行は対策を打たなかった。
「FRBは財務省などと協力して、断固とした行動を取った。これらの行動はすべての預金が安全であることを示す」とし、Silicon Valley Bankの破綻は経営が「ひどく失敗」していたことが原因で、銀行部門の全般的な脆弱性を示すものではないと強調した。
米国では金融機関が加盟する連邦預金保険公社(FDIC)が1口座あたり25万ドルを上限に保護する仕組みがあるが、Silicon Valley Bankの2022年末の預金残高の89%は預金保護の対象外だった。
今回、米規制当局は金融システムの不安を払拭するため、Silicon Valley BankとSignature Bank両行の預金を全額保護する措置をとった。
なお、イエレン米財務長官は3月22日の上院小委員会公聴会で、銀行破綻時の預金の全額保護は検討していないと述べた。
今回の2行の全額保護は例外的な措置であり、今後も個別の影響を踏まえて判断する。
今回のTOBは、「物言う株主」から株を買い戻すためのものである。
なお、三菱ケミカル元会長の小林喜光氏は東芝の不正会計が発覚した2015年9月に社外取締役就任、2017年10 月から2020年7月末に退任するまで取締役会議長も務めた。
6000億円増資を決め、後に社長CEO解任直前に辞職した車谷氏を会長として招聘した2017年11月の取締役会では議長であった。
2020年7月の退任会見で「会社が存続するかどうかの中でよくここまで回復した」と語った。
2020年9月の日経ビジネスは「東芝復活までの5年、社外取退任の小林喜光氏が明かす真実」というインタビュー記事を載せている。
6000億円の増資:「債務超過2年で上場廃止になるという制度には問題があると思う。」
「海外投資家が6割以上を占める状況になり、いい影響もありました。経営が極めてサイエンティフィックになった。」車谷会長招聘:「議論を進める中で、金融出身者にCEOを担ってもらい、株主との対話を重視しながらも成長戦略を実行できる人物がいいという話になった。」
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00112/090200015/
韓国のLG Energy Solutionは3月24日、米アリゾナ州での工場建設計画を再始動すると発表した。
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同社は2022年3月24日、1兆7000億ウォン(約1700億円)を投じて米アリゾナ州に電池工場を建設すると発表した。2024年の稼働を目指す。
生産能力は11 GWhで同社の米工場として初めて円筒形電池を手掛ける。Teslaと米新興EVメーカーのLucid MotorsはEVに円筒形電池を搭載している。
しかし、同社は2022年6月29日、この計画について査定し直すとした。米国の異例な経済情勢と投資環境によりさまざまな投資の選択肢を見直しているとした。
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今回同社は、米アリゾナ州Queen Creek の電池工場建設について、投資規模を7兆2000億ウォン(55億ドル、約7200億円)と大幅に増やし、計画を進めると発表した。
建設費高騰などで計画をいったん止めていたが、需要の高まりやInflation Reduction Act での補助金支給の動きも踏まえ、生産規模を増やして再起動させる。
車載用の円筒型電池生産棟(投資額4兆ウォン)と、エネルギー貯蔵装置(ESS)向けパウチ型リン酸鉄リチウムイオン電池生産棟(投資額3兆2000億ウォン)を建設する。
2023年着工で、それぞれ2025年と2026年の稼働見込み。生産能力は車載向けにEV35万台分に相当する27GWh、ESS向けに16GWhを確保する。
世界の電池メーカーの中でESS向け専用の電池工場を建設するのは同社が初めてという。
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TeslaのEVには、パナソニック製の円筒型セルが採用されてきた。
「Roadster」や「モデルS」、「モデルX」にはノートパソコンなどに使われていた直径18mm×長さ65mmの「18650」と呼ぶセルが、モデル3には直径21mm×長さ70mmの「2170」と呼ぶ電気自動車向けセルが採用された。
パナソニックはTeslaからの要請で新型電池「4680」を開発中で、「技術的な面ではほぼ完成した」としている。「4680」は直径46mm、長さ80mmの円筒形電池で、「2170」から電池容量を5倍に高めることができる。
LG Energy Solutionは2022年6月にTesla向けに新型4680円筒形バッテリーを生産する同社の梧倉第2工場の生産容量を9GWh分増強すると発表している。
韓国紙によると、LG Energy Solutionが今回、一旦中止したアリゾナ州での工場建設計画を再始動すると発表したのは、LGとTesla とのバッテリー供給協議がまとまったからではないかという。
別途、LG Energy Solutionはトヨタとの間でも電池供給の交渉をしていることを明らかにしている。
Teslaは1月24日、巨大電池工場を運営する米西部ネバダ州Renoに36億ドルを追加投資すると発表した。新バッテリー工場では最新のバッテリーセル「4680」を製造し、生産能力は年間で最大200万台分となる予定。この工場ではパナソニックとTeslaのJVが電池を生産しているが、今回の増設はTeslaが単独で実施するとみられる。
Teslaは2022年2月にFremontのパイロットプラントで4680の電池を生産したことを発表している。
Teslaが電池を自製する理由としては、バイデン政権が決めたインフレ抑制法が考えられる。条件を満たした車載電池メーカーに対し「先進製造業生産控除」と呼ばれる補助金が1キロワット時当たり35ドル割り当てられる。
JV方式では、Teslaとパナソニックはこれを折半することとなる。今後、Teslaが単独で生産する場合、利益は大きい。
2023/1/31 テスラ、米ネバダ州でEV電池増産 36億ドルを追加投資
さらに、Teslaは将来的には航続距離が標準的なモデルの車載用電池については、リン酸鉄リチウムイオン(LFP)電池に世界的に移行する計画だとしている。Teslaは現在、米国ではパナソニックのNCM(ニッケル・コバルト・マンガン)電池を使用しているが、中国では寧徳時代新能源科技(CATL)から供給されるLFP電池を使用している。
LG Energy SolutionがTeslaを主な供給先として投資を決めたとしても、パナソニックと競合するうえ、Tesla自身とも競合することになる。
ただでさえEVメーカー自身による電池生産計画が相次ぐ中、車載電池メーカーに多額の補助金が支払われることとなり、この動きはひろまるだろう。電池メーカーの立場は苦しいものになる可能性が強い。
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LG Energy Solutionの北米での電池工場は下記のとおりとなる。
単独:Michigan、Arizona(今回)
GMとのJV:Tennessee、Ohio、Michigan
StellantisとのJV:カナダOntario
ホンダとのJV:Ohio2023/3/7 ホンダとLGの米バッテリー工場 起工式
2023/3/29 有機EL事業のJOLED、民事再生手続き
ソニーグループとパナソニックホールディングスの有機EL事業を統合して設立されたJOLEDは3月27日、東京地方裁判所に民事再生手続き開始の申し立てを行ったと発表した。
負債総額は約337億円。
JOLEDが培った有機発光ダイオード(OLED)ディスプレーの技術や知的財産権を継承することなどで、ジャパンディスプレイと基本合意した。
付記
ジャパンディスプレイは7月18日、民事再生手続きを申し立てているJOLEDからの事業譲受が完了したと発表した。有機ELディスプレイに関する技術開発ビジネス、およびそれに付随する一切の事業を譲り受ける事業譲渡契約を締結していた。
当初、契約の効力発生予定日は2023年6月30日としていたが、手続きに一部遅れが生じたため、効力発生日を2023年7月18日に変更していた。
ジャパンディスプレイはJOLEDの設立時に株式15%を取得したが、2020年3月に全株式を譲渡し、現在は資本関係がない。
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同社は有機 EL ディスプレイの量産開発加速及び早期事業化を目的として、ソニー及びパナソニックの有機 EL ディスプレイの開発部門を統合して、2015 年1 月に事業を開始した。
官民ファンドの産業革新機構は東芝とソニー、更に日立ディスプレイズの中小型の液晶パネル事業を統合させ、機構が2000億円を出資して「ジャパンディスプレイ」を設立した。最大顧客の米アップルが
iPhone
の新モデルで初めて有機ELを採用したことから、ジャパンディスプレイも有機EL事業の進出を図り、2015年1月にソニーとパナソニックの有機ELディスプレイパネルの開発部門を統合し発足したJOLEDに15%を出資した。
ジャパンディスプレイは2016年12月にJOLEDに51%の出資とすることを決めた。
経営再建中のジャパンディスプレイ(JDI)は2020年1月31日、独立系投資顧問のいちごアセットマネジメントから最大1008億円の出資を受け入れる方向で最終契約を結んだと発表した。
2020/2/3 JDI、いちごアセットマネジメントと最終契約
ジャパンディスプレイ(JDI)は2023年2月10日、筆頭株主のいちごトラストの支援をうけ、借入金1016億円を圧縮し、ゼロにすると発表した。
2023/2/13 ジャパンディスプレイ、株式転換や債権放棄で無借金会社へ
JOLEDは、RGB印刷方式による21.6型4K高精細の有機ELパネルを世界で初めて製品化し、2017年12月5日より出荷を開始した。
大画面に均一に一括塗布する設備技術・プロセス技術の実用化とともに、光取り出し効率が高い独自の「トップエミッション構造」により、優れた色再現性や広視野角を実現した。
住友化学が開発した高分子発光材料を使用する。印刷方式は蒸着よりコストが安い半面、パネルが大型になるほど均一に材料を塗布するのが難しかったが、これを使えば塗布のムラができにくくなる。
ジャパンディスプレイは2016年12月にJOLEDに51%の出資とすることを決めたが、中期経営戦略の見直しに伴い、2018年3月30日、JOLEDへの51%出資方針を取り消した。
JOLEDは2018年8月23日、第3者割当増資により、総額470億円を調達したと発表した。引受先の内訳はデンソーが300億円、豊田通商が100億円、住友化学が50億円、SCREENファインテックソリューションズが20億円。
2018/3/24 デンソー、JOLEDに300億円出資
その後、ジャパンディスプレイの経営悪化に伴い、2019年に447億円の支援と引き換えにジャパンディスプレイの持つJOLEDの全株式が産業革新機構から新設分割されたINCJに譲渡された。
JOLEDは2020年6月、中国ハイテク企業TCL Tech傘下のディスプレイパネルメーカー、TCL華星光電技術(TCL CSOT)と資本業務提携契約を締結した。華星光電日本を引受先とする第三者割当増資により200億円を調達するとともに、独自の印刷方式有機ELディスプレイ製造技術を活用し、TCL CSOTとテレビ向け大型有機ELディスプレイの共同開発を開始した。
今回、ジャパンディスプレイが発表した同社株主は下記の通り。
INCJ:56.8% 2018年9月、産業革新機構から新設分割
デンソー:16.1%
華星光電日本:10.8%I
産業革新機構→INCJは設立前から支援しており、支援総額は約1390億円。さらなる支援が必要だが、「追加出資は望めない事態に至った」としている。
ーーー
JOLEDは
2019 年11 月には、能美事業所において、世界初の印刷方式有機 EL ディスプレイ量産ラインの稼働を開始し、高性能・高品質な有機 ELディスプレイを、ハイエンドモニター、医療用モニター、車載向け等に生産するとともに、フレキシブルディスプレイやフォルダブルディスプレイの実用化に向けた研究開発も進めてきた。しかしながら、安定した生産に想定以上のコスト・時間を要したほか、世界的な半導体不足による影響に加え、高性能・高品質ディスプレイ需要の伸び悩みや価格競争の激化により同社を取り巻く状況は厳しさを増した。
2020年6月、中国ハイテク企業TCL Tech傘下のディスプレイパネルメーカー、TCL華星光電技術(TCL CSOT)と資本業務提携契約を締結したが、収益が伸び悩むとともに、資金流出が続いた。
JOLEDの業績推移 売上高 営業利益 純利益 利益剰余金 2018/3 5600万円 -149.19億円 -147.84億円 2019/3 14.42億円 -247.53億円 -259.04億円 2020/3 18.57億円 -284.07億円 -372.53億円 2021/3 59.08億円 -310.65億円 -877.85億円 2022/3 56.55億円 -211.18億円 -239.26億円 -1197.87億円 量産ラインを本格稼働した2021年3月期には年売上高約59億800万円を計上した。しかし、量産ラインの立ち上げが想定よりも遅れ、稼働率は低位にとどまっていた。
加えて中型有機EL自体が新しく、既存の液晶と比較して価格が高いこともあって、顧客側の本格採用の意思決定にも時間を要し、2022年3月期の年売上高は約56億5500万円に減少した。
損益面も量産稼働による労務費負担等もあって、赤字計上が続き、債務超過に転落していた。同社は2021年3月、資本金をそれまでの877億円から1億円に減資した。資本金1億円以下の企業は税制上、中小企業とみなされることから、税負担を軽くする事が目的で、悪化する財政の健全化に向けた判断とした。
今回、このまま自力で事業継続した場合、能美事業所や千葉事業所の撤退費用を捻出することも困難となるため、裁判所の関与の下で当社の事業の再生を図ることがもっとも適切であると判断し、民事再生手続開始の申立てを行うに至った。
今後、技術開発ビジネス事業については、ジャパンディスプレイの支援の下、再建を図る。他方、製品ビジネス事業(製造・販売部門)については、維持・継続に多大なコストを要する一方、早期かつ抜本的な収益改善の道筋がたっておらず、同事業をこれ以上継続することは困難であることから、能美事業所(石川県能美市)、千葉事業所(千葉県茂原市)は閉鎖し、同事業から撤退することとした。
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半導体もそうだが、液晶ディスプレイ(ジャパンディスプレイ)も有機EL(JOLED)も日本の家電メーカーが自社の原料の自製でスタートした。外部の需要家を対象としないため、小規模のまま行き詰まり、政府の支援を受けた。
これに対し、インテルやTSMC、サムスン等は世界の需要家を相手に、事業家であるトップの判断で積極的に大規模投資を早期に行い、事業を拡大している。
幸いにもジャパンディスプレイは、日本開発銀行客員研究員やモルガン・スタンレー証券の株式統括本部長を務めたScott Callon 氏が2006年5月に設立した「いちごアセット」が救済に乗り出したが、日本的経営ではこの種の事業はやっていけないのは明白である。
2023/3/30 東芝粉飾事件で元役員に対する損害賠償請求訴訟の判決
東芝は元役員に対し損害賠償の訴訟を行っていたが、東京地裁は3月28日、判決を言い渡した。
東芝は当時の西田厚聰社長(故人)、佐々木則夫社長、田中久雄社長、村岡富美雄専務→副社長、久保誠 副社長に対し、合計32億円を連帯して支払うよう求めていた。
同社は本件に関し金融庁に課徴金73億7350万円を支払い、過年度決算の修正に係る監査作業で監査法人に20億7153万の監査報酬を支払った。
このうち、課徴金分で29億円、監査報酬分で3億円、合計32億円を連帯して支払うよう求めた。
別途、株主代表訴訟で個人株主がインフラ事業グループ担当だった北村秀夫副社長と真崎俊雄副社長など他の歴代幹部10人を訴え、合わせて審理された。
これに対し旧経営陣側は、会計処理の違法性を否定し、「注意義務違反はなかった」と争う姿勢を示していた。
東京地裁は元役員のうち佐々木、田中両社長、久保、北村 、真崎副社長の5名に3億860万円の支払いを命じる判決を言い渡した。不正会計問題で旧経営陣の個人責任が認められた判決は初めて。
会社提訴のうち佐々木氏と田中氏の認容額は各1億円、久保氏の認容額は2億円で4億円だが、連帯負担のため合計2億円となる。代表訴訟での2人が1億860万円となる。
西田氏、村岡氏に対する請求は棄却された。
判決はインフラ工事での損失引当金の過少計上などを米国会計基準に反する違法な会計処理だったと認定し、田中元社長や佐々木則夫元社長ら5人は「違法な処理を認識でき、是正する義務を怠った」などと結論付けた。久保氏については1件で「引当金の先送りを提案した」、田中氏は2件で「違法処理を助長する指示をした」と認定した。
しかし、パソコン事業での利益のかさ上げなどは会計基準違反に当たらないと判断、西田厚聡元社長らの賠償責任は認めなかった。東芝は同日、「今後の対応は判決内容を精査し、代理人と協議のうえ決定する」とのコメントを出した。
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東芝による損害賠償の請求は下記の通り。 黒塗り部分は対象外で、それ以外は各金額を連帯で負担することを求めた。
2015年11月7日 提訴 |
2016年1月27日付 追加 |
判決 | |||||||
連帯して3億円 | 課徴金分対応追加 26億円 | 監査報酬対応 3億円 | |||||||
西田厚聰 | 部品取引(Buy-Sell取引)における利益の計上 |
連帯 |
請求棄却 |
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佐々木則夫 |
地下鉄向け電車用電機品の納入受注損失引当金計上 部品取引(Buy-Sell取引)における利益の計上 不適切な経費計上時期 |
1億円 | |||||||
田中久雄 |
WECの発電所建設における損失引当金の計上 ETC 設備更新工事における損失引当金の計上 部品取引(Buy-Sell取引)における利益の計上 不適切な経費計上時期 |
1億円 | |||||||
村岡富美雄 | 部品取引(Buy-Sell取引)における利益の計上 |
請求棄却 |
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久保誠 |
WECの発電所建設における損失引当金の計上 地下鉄向け電車用電機品の納入受注損失引当金計上 ETC 設備更新工事における損失引当金の計上 部品取引(Buy-Sell取引)における利益の計上 不適切な経費計上時期 |
2億円 | |||||||
15億円 | 8億円 | 2億円 | 1億円 | 1億円 | 2億円 |
連帯で4億円 |
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対象事案により嵩上げされた営業利益額の割合を勘案 | 事案数にそれぞれの事案の修正年度数を乗じた数の合計を監査のために要した総工数で割った。 |
東芝は少なくとも2009年3月期から、7年間にわたり巨額の利益をかさ上げしてきた。累計額は2306億円にのぼる。
東芝では2008年ころから「チャレンジ」と呼ばれる経営陣の無茶な業務目標の強要が始まった。各部署に、短期間ではおおよそ達成不可能な利益目標を示し、圧力をかけた。下請けや関連会社にも「チャレンジ」を押し付け、協力金を要求した。
Lehman shock での大赤字で西田社長が 赤字の映像事業撤退却の脅しをかけ、「テレビ事業の黒字化は社長の公約、あらゆる手段で黒字化を」と述べ、パソコン部品の押し込みで黒字化 したのが始まりとされる。
Buy-Sell取引で、部品供給価格で利益を計上、押し込み販売を行った。
2012年には佐々木社長がパソコン責任者に「3日間で120億円の営業利益改善」を要求した。ノーマル化の提案に対し、「会社が苦しいときにノーマルにするのは会社にとって良くない」 と述べたとされる。
小笠原 啓 東芝 粉飾の原点 内部告発が暴いた闇
2015年1月に社員が証券取引等監視委員会に内部告発し、不正会計問題が明らかになった。
粉飾額は最終的に2306億円となった。 (下表の「修正前」は粉飾決算の数字)
2015年5月に発足した第三者委の調査によって、コーポレートガバナンス(企業統治)が骨抜きにされ、「チャレンジ」という名のパワーハラスメントが横行していたこと が浮き彫りになった。
内部統制すべき経理部がチャレンジ原案作成していたこと、取締役会、監査役会、会計監査人がチェック機能 を果たしていなかったことが分かった。上司の意向に逆らえない企業風土であった。
2015年12月に金融庁が新日本監査法人に行政処分を行った。法人に21億円の課徴金に新規契約業務の3カ月間停止、担当公認会計士に6ヶ月〜1ヶ月の業務停止命令が出た。
東芝は2016年12月27日、前年末のStone
& Webster (S&W) 買収で数十億ドル規模の「のれん」計上の可能性が生じたことを明らかにした。
2016/12/30 東芝、Stone & Webster買収で数十億ドル規模の「のれん」計上の可能性
日本産業パートナーズによる東芝TOBにつながる。