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これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。

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2024/1/4 欧州のEU、NATO、シェンゲン協定を巡る問題 

(ウクライナのEU加盟問題)

EUは12月14日の首脳会議でウクライナとモルドバの加盟交渉を正式に開始すると決定した。併せて、ジョージアを正式な加盟候補国とした。

2022年の申請から異例のスピードで合意にこぎ着けた。

EUは2022年6月23日開いた首脳会議で、ウクライナとモルドバに加盟候補国の地位を付与することを承認した。全27加盟国が同意し、認定に必要な全会一致で決まった。ジョージアについては、欧州委が提示した条件を満たせば候補国にする方針を示した。

EU加盟に向けて司法・行政・経済など分野ごとの加盟交渉に向けて動き出すが、国内法の改正などが必要で、実際に加盟するまでには通常10年程度かかる。

ウクライナの場合、腐敗が問題で、オリガルヒ(政商)が政財界の癒着を広げ、賄賂の横行や政治家による司法への圧力が問題。
国営企業の民営化、独占企業の解体などの市場改革も必要。
ウクライナの一人当たりGDPはEU平均の1/10以下で、今回の戦争の影響も大きい。加入の場合、EU予算の圧迫も懸念される。

2022/6/27 EU、ウクライナとモルドバを加盟候補国に認定 

ウクライナの加盟交渉開始をめぐっては、ハンガリーが長らく反対していた。

ハンガリーは、エネルギーの輸入などを通じてロシアとの経済的な結び付きが強く、オルバン首相はロシア寄りの姿勢を示し、これまでもEUのロシアへの対応をめぐる方針に反対する姿勢を示してきた。

オルバン首相はウクライナの汚職対策や、ウクライナに住むハンガリー系住民の権利保護が不十分だと主張し、加盟交渉開始や予算案に反対してきた。最近も「(交渉開始などは)加盟国の利益にならない。EUは 過ちを犯そうとしている」と改めて強調した。「ウクライナはEUからはるかに遠い位置にあり、欧州委が加盟交渉開始を約束したとの誤解を正すのもわれわれの責務だ」と指摘した。

EUは加盟交渉などの重要政策を全会一致で決めなければならない。このため、主要国の首脳らはオルバン 首相への説得を重ねたが、オルバン首相は、「他の26カ国が異なる見解を示したとしても(決定を)阻止しなければならない」と強硬姿勢を崩さず、首脳会議で拒否権を行使する考えを示していた。

土壇場で効果を発揮したのが「建設的棄権」を規定するEU条約31条である。   

年内最後の首脳会議でウクライナの交渉入りを決め、欧州の結束を示したい主要国の首脳らはオルバン 首相への説得を重ねた。

たどりついたのがEU条約31条で定める「建設的棄権」 で、一部の代表者が退室して採決を棄権した場合、残ったメンバーのみの賛成で全会一致が成り立つという取り決めがある。
  
Under unanimous voting, abstention does not prevent a decision from being taken.

その結果、ドイツのショルツ首相がオルバン首相に「コーヒーでも飲んできたらどうか」と伝え、オルバン首相が席を立って退室、オルバン首相不在のもと、ウクライナの交渉入りに必要な「全会一致」での合意は 成立した。

フランスのマクロン大統領は「我々は解決策を提案できた」と語り、事前にオルバン 首相と擦り合わせていたことを示唆した。

オルバン首相は会議後 、ハンガリーは「悪い決定に参加したくないので、今日の決定から離れた」とし、「他の26カ国がしたいなら勝手にすればいい」と語った。

オルバン首相が棄権という形で事実上の容認に転じたのは、凍結していたEU補助金の支給再開という見返りがあったから である。

ハンガリーへの補助金は、オルバン首相が裁判所の独立性を制限したとして、法の支配への懸念から凍結されている。

ハンガリーが2004年にEUへの加盟を果たし時期から、民主体制は後退していった。オルバン氏が首相に返り咲いた2010年以降,その傾向は顕著となる。

司法機関の独立性を弱める。言論と報道の自由を侵食する。汚職対策を取らないどころか,政府上層部も不正行為に手を染める。自由でない不公正な選挙を黙認(または率先)する。少数民族を抑圧する。学問の自由を制限する。ジェンダーの平等を軽視する。性的少数者を抑圧する。このようなオルバン政権の施政は,同国を独裁国家と呼ばれてもおかしくない体制に仕立て上げることになる。

EUは2022年12月にEUの基本原則である「法の支配」順守と汚職を巡り懸念があるとしてハンガリー向けの資金を凍結した。

EU名義の共同債券を財源とする復興基金の設置を採択する際に、加盟国による復興基金を含めたEU予算の不適切な使用を防止し、EUの財務上の利益を守る目的で採択された条件設定規則メカニズムにより、EU理事会の特定多数決により決定した。

(特定多数決は、@加盟国の 55%以上、および 15 ヵ国以上が賛成する、A賛成国の人口が EU 人口の 65% 以上を占める、の 2 点を要件とするもの)

欧州委員会は今回、オルバン政権の強権的な政策を理由にしてきたハンガリーへの補助金凍結を一部解除し、最大102億ユーロ(約1兆6千億円)の支給を認めると発表した。


ウクライナのEU加盟交渉開始は決まったが、合わせて審議した4年間で総額500億ユーロのウクライナ支援パッケージはハンガリーの拒否権で否決された。将来のウクライナの加盟についても拒否する姿勢を崩していない。

米政府は12月は27日、最大で2億5000万ドルに上るウクライナへの追加の軍事支援を発表した。
防空ミサイルシステム「ナサムス」のための追加のミサイルや高機動ロケット砲システム=「ハイマース」に使われるロケット弾、地対空ミサイル「スティンガー」などが含まれている。

バイデン政権は10月19日に、イスラエルとウクライナへの軍事支援と米・メキシコ国境警備強化の資金等々のため、1060億ドル近い緊急予算案を公表した。(うちウクライナ向けは614億ドル、イスラエル向けは143億ドル)
しかし、米議会では与野党の協議がまとまらないことから、軍事支援の継続に必要な緊急予算が承認されておらず、これを最後に予算は枯渇する。

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(スウェーデンのNATO加盟問題)

フィンランドとスウェーデンは2022年5月18日、NATO加盟を正式に申請した。

NATOの加盟
には、EU加盟の30カ国全部の批准が必要であるが、トルコとハンガリーのみが批准をしていない。

トルコのエルドアン大統領は、トルコ政府と対立する国内のクルド分離主義組織「クルド労働者党(PKK)」を両国が支援しているとして難色を示していた。

2022/12/9 フィンランドとスウェーデンのNATO加盟 難航 

トルコのエルドアン大統領は2023年3月17日、フィンランドのニーニスト大統領と会談し、フィンランドの北大西洋条約機構(NATO)加盟を認める意向を示した。

トルコ議会が2023年3月30日にフィンランドの加盟を承認し、全30の加盟国の批准手続きが完了し、フィンランドは4月4日に正式加盟した。スウェーデンだけが残った。

NATOのストルテンベルグ事務総長は2023年7月10日、トルコがスウェーデンのNATO加盟を支持することに同意したと明らかにした。トルコのエルドアン大統領が「できるだけ早く加盟議定書をトルコ議会に送り、批准を確実にするため議会と緊密に協力することに同意した」と述べた。7月11〜12日に開かれるNATO首脳会議を前に、大きな進展となった。

2023/7/12 スウェーデンのNATO加盟に大きな進展

トルコ議会の外交委員会は2023年12月26日、スウェーデンのNATO加盟批准に必要な法案を承認した。本会議で数週間以内に採決され、可決される見通し。その後、エルドアン大統領が署名する。

ただし、外交委の委員長は本会議での迅速な採決を期待すべきではないと指摘、採決のタイミングは議長が決定するとしている。


ハンガリーのオルバン首相は12月21日、スウェーデンのNATO加盟を巡りハンガリーとトルコの間で合意はないとし、加盟承認の採決を行う時期を決めるのはハンガリーの議会だとし、与党議員の間にはスウェーデンの加盟を積極的に承認しようという動きはないと述べた。

ハンガリーは承認手続きが遅れている理由として、ハンガリー政府が民主的権利を損ねているとの見方がスウェーデンにあることを挙げている。

 

付記 2024/3/7 正式加盟

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(シェンゲン協定:国境検査なしで国境を越えることを許可する協定)

ルーマニアとブルガリアはこのたび、2024年3月から空と海の国境を開いたシェンゲン圏に加盟することでオーストリアと合意に達した。陸上国境に関する交渉は来年も継続される。12月27日に各国が明らかにした。

2007年にEUに加盟した両国は2010年までにシェンゲン協定の加盟条件を満たしたが、オーストリアが中東からの移民対策の不備などを理由に反対を続けてきた。

オーストリア政府は、両国の協定参加の協議を契機に、オーストリアへの難民申請数が多い原因となっている現在のEUの移民制度を抜本的に変更したいためとされる。

最近の交渉で両国が国境警備の強化を表明、オーストリアが段階的参加案を提示、今回の合意に達した。 陸上国境に関する交渉はこれからである。

 

シェンゲン協定はEU各国と、EUとの関係が非常に深い欧州自由貿易連合(EFTA)加盟4カ国(アイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェー、スイス)が加盟している。

このうち、英国(EU 元メンバー)とアイルランドは適用除外が認められ、協定国との間で国境審査が継続している。英国は「国境管理は国家主権の中核」と主張し、参加を拒否した。

EU加盟国で不参加はキプロスのみで、同国は2024年までの加盟を目指している。 

付記 * 2023年腐敗認識指数 国別ランキング

  NATO EU シェンゲン協定
非欧州 米国 原加盟国 対象外 対象外 24
カナダ 12
イタリア 1952   42
オランダ 当初署名国 8
フランス 20
ベルギー 16
ルクセンブルグ 9
英国 1973加盟→2020離脱 「国境管理は国家主権の中核」 20
デンマーク 1973   1
ポルトガル 1986 34
アイスランド 非加盟 EFTA 19
ノルウェー 4
ギリシャ 1952/2 1981   59
トルコ 非加盟   115
西ドイツ→ドイツ 1955/5 1952 当初署名国 9
1991/12/26 ソ連崩壊  赤字国名は旧ソ連 
スペイン 1982/5 1986   36
チェコ 1999/3 2004/5 41
ポーランド 47
ハンガリー 76
エストニア 2004/3 12
ラトビア 36
リトアニア 34
スロバキア 47
スロベニア 42
ブルガリア 2007/1 2023/12参加
(反対していたオーストリアが容認)
67
ルーマニア 63
アルバニア 2009/4 非加盟   98
クロアチア 2013/7   57
モンテネグロ 2017/6 非加盟   63
北マケドニア 2020/3 76
アイルランド 非加盟 1973 EUで適用除外 11
オーストリア 1995   20
フィンランド 2023/4(トルコが容認) 2
スウェーデン 2024/3 6
キプロス 非加盟 2004/5 2024年までの加盟を目指す。 49
マルタ   55
スイス 非加盟 EFTA 6
ボスニア・ヘルツェゴビナ   108
セルビア 104
コソボ 83
ベラルーシ 98
モルドバ 76
ウクライナ 104
リヒテンシュタイン EFTA ---
合計 30カ国→32カ国
(フィンランド、
スウェーデン加盟)
28→27カ国
(英離脱)
27→29
(ブルガリア、ルーマニア加盟)
 

 


2024/1/5  トランプ前大統領の大統領選出馬問題

米連邦最高裁は1月5日、コロラド州の予備選へのトランプ前大統領の参加の是非について審理すると発表した。2月8日に口頭弁論を開く。

最高裁の判断は他州の予備選にも波及する可能性があり、大統領選の行方を左右しかねない。

米ミシガン州の最高裁判所は2023年12月27日、トランプ前大統領が2024年大統領選の同州での予備選に立候補できるとの判断を下した。資格剥奪を求めていた有権者団体の上訴を却下した。

有権者団体は、2021年の米議会襲撃にトランプ氏が関わったことが、反乱に関与した人物の公職就任を禁じた合衆国憲法の修正条項に触れるとして、同氏の立候補資格の剥奪を求めていた。

ミシガン州の下級裁判所は、手続き上の理由でこの訴訟を却下し、2021年1月6日の連邦議会襲撃が法律上の暴動に該当するかどうか、またトランプ氏がそれに関与したかどうかについては検討しなかった。

州最高裁のエリザベス・ウェルチ判事はこの下級裁の判断を支持した。、同州の法律はコロラド州のそれとは異なると し、上訴人が、「合衆国大統領になろうとする者に、その職に就く法的資格の証明を求めるとする類似の規定を、ミシガン州の選挙法から示さなかった」と述べた。

ミシガン州の州務長官(民主党)は、憲法修正第14条が提起している法的問題は明確ではないと述べた。州務長官は、選挙などを監督している。この問題は最終的には連邦最高裁が解決すべきだとの考えを示した 。

ーーー

米メーン州のベローズ州務長官(民主党)は2023年12月28日、大統領選の同州予備選でトランプ前大統領の出馬資格を認めない判断を示した。 元州議会議員のグループが、合衆国憲法の規定に基づき、トランプ氏の出馬資格剥奪を求めたことを受け、今回の決定となった。

連邦議会襲撃事件を巡り同氏の出馬を認めないと判断したのはコロラド州最高裁に続き2例目。

ベローズ氏はトランプ氏が2020年大統領選での不正を巡る虚偽の主張を拡散し、議員による選挙結果認定を阻止するため連邦議会に行進するよう自身の支持者に呼びかけて反乱を扇動したと結論づけた。

今回の決定は州上級裁判所に異議を申し立てることができ、ベローズ氏は裁判所が判断を示すまで自身の決定の効力を保留した。

トランプ前大統領は2024年1月2日、ベローズ州務長官を提訴した。メーン州最高裁に提出した訴状でベローズ氏の決定に関し「偏見や適切な手続きの欠如によるものであり、恣意的だ」などと断じた。「多くの証拠は(決定を)支持しない」とも訴えた。

予備選参加の是非は最終的に連邦最高裁で決着する公算が大きい。連邦最高裁は判事9人のうち共和党の考えに近い保守派が6人を占めており、どのような見解を示すかが焦点 。

 

トランプ氏は1月2日、メーン州の州務長官を提訴した。州務長官はトランプ氏側が裁判所に不服を申し立てることができる期間を設けていた。

トランプ氏は州務長官の「偏見」を主張し、州務長官にはこの件を扱う法的な権限がないとの立場を示しており、トランプ氏側の反論に十分な時間と機会を与えず、恣意的に行動したとも述べた。さらに、トランプ氏が反乱行為に及んだ事実はないと改めて反論している。

ーーー

米連邦最高裁は2023年12月22日、「大統領在任中の行動は刑事責任を免れる」というトランプ前大統領の主張を、現段階では審理しないと決めた。 説明なしに簡潔な1ページの命令で出された。

 

ジャック・スミス特別検察官は2022年11月、トランプ前大統領への捜査責任者になるよう任命された。

スミス特別検察官は、トランプ前大統領を2回起訴した。2020年大統領選の結果を覆そうとしたとされる事件と、機密資料を不正に取り扱ったとされる事件での違法行為40件についてである。

トランプ氏は刑事裁判の被告になり得ないと申し立てていたが、ワシントンの連邦地裁が2023年12月1日、大統領の免責特権が適用されるとしたトランプ氏側の主張を退けた。

大統領在任中に行った行為について、退任後に刑事責任を問えないと結論付ける法的根拠はないと判断した。

連邦地裁は起訴が合衆国憲法修正第1条で保障された言論の自由を侵害するとしたトランプ氏の主張も退けた。

トランプ氏が控訴、裁判は2024年3月に始まる予定だが、トランプ氏が判決を不服として控訴すれば、高裁、さらには最高裁で免責特権について審理が行われる間、スミス特別検察官の裁判は延期されることになる。

このため、検察側ジャック・スミス特別検察官は、免責特権についての審理を早急に進めようと、通常の控訴裁の判断を待たずに、最高裁に審理を求めていた。

最高裁が現段階で審理しないと決めたため、免責特権をめぐる判断は通常どおり控訴裁で審理されることにな り、その結果、「スーパーチューズデー」の前日の2024年3月4日に予定されていた乱入事件についての初公判は遅れる可能性が高まった。

 


2024/1/8  米国で電気自動車(EV)の税額控除の対象変更 

バイデン米政権が設定した電気自動車(EV)税控除制度で、2024年1月1日をもって新ルールが発効したことに伴い、最大7500ドルの控除対象となる車種が大幅に減少した。

税控除適格基準の引き上げで対象車は従来の20数種から13種に減少した。新しい規則では、中国メーカー製のバッテリー部品を使用した車両は税額控除から除外される。

財務省報道官は、政府は新たな制限について企業と緊密に調整しているが、まだデータを提出していない企業もあり、リストに追加される可能性があると述べた。

2023年4月に新しい対象が発表された。

2022年8月17日に発効した「北米での最終組み立て要件」と2023年1月1日に発効した「車両の希望小売価格の上限」「購入者の所得上限」の要件を満たした上で、2023年4月18日から適用する「バッテリー関連の調達価格要件」の全部またはいずれかを満たした車両となる。

2023年4月17日までの対象車両は41モデルだったが、日産「リーフ」、フォルクスワーゲン「ID.4」、リビアン「R1T」「R1S」のほか、BMW、ボルボ、現代などの外国メーカーを中心に、23モデルが対象車両から外れ、新たにゼネラルモーターズ(GM)とフォードの計4モデルが追加された。

2023/4/19 米国の電気自動車税額控除の新しい対象発表 


ルールでは、2024年から対象のクリーン車両は「懸念される海外企業」(FEOC)が製造または組み立てたバッテリー部品を含んではならず、2025年からは、「懸念される海外企業」が抽出、加工、またはリサイクルした重要鉱物を含んではならない。

しかし、この定義が明らかにされていなかった。

主な要件(控除額は個人の場合)  
税額控除額
価格が5.5万ドル(バンやSUV、ピックアップトラックは8万ドル)未満であること 必須 -
車両の最終組み立てが北米(米国、カナダ、メキシコ)で行われていること 必須 -
電池材料の重要鉱物のうち、調達価格の40%が自由貿易協定を結ぶ国で採掘あるいは精製されるか、北米でリサイクルされていること(日本については下の注を参照)

2025年からは、「懸念される海外企業」が抽出、加工、またはリサイクルした重要鉱物を含んではならない。

どちらか
必須
3,750ドル
電池用部品の50%が北米で製造されていること

2024年から、「懸念される海外企業」が製造または組み立てたバッテリー部品を含んではならない。

3,750ドル

財務省は2023年12月1日、「懸念される海外企業」と見なされるエンティティを定義する提案ガイダンスを公表した。

それによると、「懸念される海外企業」は、懸念国(中国、ロシア、イラン、北朝鮮)の企業 及びその企業が25%以上所有、またはコントロールする企業とされる。 

バッテリー部品が条件を満たすかどうかは、該当する重要鉱物の抽出、加工、およびリサイクルのすべての段階のレビューによって決定される。

2023/12/4 米政府、EV税額控除で中国の影響排除

今回発表されたものはこのルールによるもので、下表のとおり。 黄色地は抹消、青色地は追加(Eivinは復活)

Maker Model

2023年4月 Tax Credit

2024年 Tax Credit  
Stellantis
North America
(PSA/ Fiat Chrysler
Chrysler Pacifica 2022-23 $7,500 $7,500 Plug-in Hybrid
2024  
Jeep Wrangler PHEV 4xe 2022-23 $3,750  $3,750 Plug-in Hybrid
2024  
Jeep Grand Cherokee PHEV 4xe 2022-23  $3,750 $3,750 Plug-in Hybrid
2024  
Ford Ford F-150 Lightning (Standard & Extended range) 2022-23 $7,500 $7,500 EV
2024  
Ford e-Transit 2022-23 $3,750  EV
Ford Mustang Mach-E 2022-23 $3,750  EV
Ford Escape Plug-in Hybrid 2022-23 $3,750  $3,750 Plug-in Hybrid
2024  
Lincoln Corsair Grand Touring 2022-23 $3,750  $3,750 Plug-in Hybrid
2024
Lincoln Aviator Grand Touring 2022-23 $7,500 Plug-in Hybrid
GM Chevrolet Bolt EUV & EV 2022-23 $7,500 $7,500 EV
Cadillac LYRIQ 2022-23 $7,500 EV
Chevrolet Silverado 2022-23 $7,500 EV
Chevrolet Blazer 2022-23 $7,500 EV
Chevrolet Equinox 2022-23 $7,500 EV
Tesla Tesla Model 3 Performance 2022-23 $7,500

EV
2023-24   $7,500
Standard Range 2022-23 $3,750 
Tesla Model Y All-Wheel Drive 2022-23 $7,500

EV
2023-24   $7,500
Rear-Wheel Drive 2024 $7,500
Tesla Model X  Long Range 2023-24 $7,500
Rivian Rivian R1S Dual Large & Quad Large 2023-24 $3,750  
Rivian R1T Dual Large, Dual Max & Quad Large 2023-24 $3,750  

Rivian Automotive, Inc.は、2009年に設立された米国の電気自動車メーカー。2009年にMainstream MotorsとしてRobert "RJ" Scaringeによって設立され、のちにAvera Automotiveに改称、2011年にRivian Automotiveに再度変更した。

電動式のスポーツ用多目的車(SUV)とピックアップトラックを「スケートボード」(Skateboard)と呼ばれる汎用性のある次世代式プラットフォーム上に組み立てて製造する。
また、Amazonと提携し、Amazon配達用の電動式バンの製造を引き受けている。


2024/1/9   中国がトランプ大統領在任中に同氏のホテルに550万ドル支払い

米下院民主党は1月4日、トランプ前大統領の任期中、中国やサウジアラビアなど20か国の政府・国有企業から同氏所有のホテルに対し、少なくとも計約780万ドルが支払われていたと指摘する報告書を発表した。 このうち、中国政府機関は557万ドルを占める。

https://oversightdemocrats.house.gov/sites/democrats.oversight.house.gov/files/2024-01-04.COA%20DEMS%20-%20Mazars%20Report.pdf

合衆国憲法では、大統領を含む政府職員が議会の同意なく外国政府から金銭や贈り物を受け取ることを禁じている。民主党は、トランプ氏が議会に同意を求めたことはなく、憲法違反に当たると批判した。

合衆国憲法第9条第8項

合衆国は、貴族の称号を授与してはならない。
合衆国から報酬または信任を受けて官職にある者は、連邦議会の同意なしに、国王、公侯または他の国から、いかなる種類の贈与、俸給、官職または称号をも受けてはならない。


米国では公務員は、利益の相反につながる副業などが禁止されているが、この決まりは大統領には該当しない。そのためこれまでの大統領は従来、利益誘導など汚職の疑いがかからないように、個人としての資産は「ブラインド・トラスト」(白紙委任信託、第三者が完全な裁量権を持ち運用する)に預けていた。

専門家たちは、利益相反が疑われる事態が一切ないよう、トランプ氏は所有する事業の権利をすべて清算すべきだと促していたが、トランプ氏は企業資産や不動産を切り離すことを拒んだ。

今回、問題になったのはTrump Tower (NY)、Trump World Tower (NY)、Trump International Hotel (Washington DC)、Trump International Hotel (Las Vegas) の部屋の賃貸料。Trump World Towerはニューヨークの国連本部の向かいにある高層ビルで、各国の外交団が賃借や所有する。

トランプ・オーガニゼーションは、トランプ氏の在任期間中に外国政府の利用で得た利益に相当するとみられる45万ドルあまりを米財務省に寄付したとしている。また、事業のポートフォリオ全体で外国政府とのビジネスをすべて追跡するよう取り組み、在任中は新たな外国事業投資も行わなかったという。

しかし、報告書では、中国やサウジアラビアなど20余りの国・地域から合計約780万ドル支払いがあったことが示され、それらは実際の総額の一端に過ぎない公算が大きいと指摘している。

民主党はこうした会計記録から、在任時にトランプ氏の企業を通じて同氏に影響力を行使しようとする動きがなかったか、新たな懸念が持ち上がると指摘する。
 

その一例として、トランプ氏が中国工商銀行に制裁を科さなかった点を挙げる。

司法省は2016年、同行が米国の制裁を回避する目的で北朝鮮と共謀していると非難した。トランプ氏は大統領就任の際、共和党議員から「北朝鮮と取引をするさらに多くの中国の銀行を対象とした最大限の金融、外交上の圧力をかける」よう求められたが、同行に制裁を科さなかった。

同行は中国の国営銀行で、2017年2月から2019年10月までニューヨークのトランプタワーの一部を賃借し、推定536万ドルを支払った。(トランプ大統領の任期は2017年1月20日〜2021年1月20日)

中国政府関連合計は557万ドル以上としている。

これに対し、トランプ氏の次男エリック・トランプ氏は、ビジネス上の利益に関係なく、トランプ氏ほど中国に強硬だった大統領はいないとの声明を発表。「中国の製品やサービスに数十億ドル規模の関税を導入した」ことを例に挙げた。

各国政府機関の支払額は下記の通り。(万ドル)

中国 557 うち中国工商銀行 536
サウジ 62  
カタール 47  
クウェート 30  

サウジは2017年5月、トランプ政権と1000億ドル以上の武器取引を締結した。当時サウジに対しては、隣国イエメンへの軍事介入で市民の犠牲者が発生した件で超党派で懸念が持ち上がり、物議をかもす中での取引合意だった。


民主党は本件を、今年の大統領選の共和党指名候補争いでトップを独走するトランプ氏への攻撃材料にするとみられる。


2024/1/10   ホンダ、カナダにEV新工場計画、車載用電池の単独生産も検討

ホンダがカナダでEVの新工場建設を検討していると報じられている。車載用電池の単独生産も検討している。2030年頃までの稼働を目指しており、北米で生産体制を強化する。

ホンダは米オハイオ州で、2026年からEVを生産する計画を公表しており、カナダの新工場は北米で2か所目の拠点となる。
オンタリオ州にある完成車工場の近くに整備する方向で検討している。

米政府は北米で車両や電池が生産されたEVに対し、最大7500ドルの税制優遇を行っており、カナダで生産を増強し、北米全体のEV販売に弾みがつくことを期待する。

ホンダは、北米でEVと燃料電池車(FCV)の比率を2030年に40%、2040年に100%まで引き上げる目標を掲げている。車載用電池は米国では韓国大手のLGエナジーソリューションと共同で生産するが、カナダでは自前で生産することも視野に入れる。

 

ホンダは2022年3月16日、オンタリオ州アリストン工場を2023年に販売予定の新型クロスオーバーCR-Vハイブリッド電気自動車生産の基幹工場として再編させるため、6年間かけて13億8,000万カナダ・ドルを投ずると発表した。

カナダのトルドー首相とオンタリオ州のフォード首相は同日、同工場を訪れ、連邦政府と州政府が同工場のハイブリッド車製造への再編に向けて、それぞれ1億3,160万Cドルを拠出すると発表した。拠出金はHCMの投資計画の一部として充当される。

ホンダ・カナダのルクレール会長兼社長は「ホンダは、2040年までに北米の自動車販売台数の100%をバッテリー式電気自動車(BEV)にするという野心的なビジョンを掲げており、同工場への投資はホンダにとって重要なマイルストーンとなる」とコメントした。

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(米国)

米国オハイオ州で完成車を製造するメアリズビル工場で電気自動車(EV)を生産するため、2つあるラインのうち1つを2024年1月に改修すると発表した。残りの1ラインではガソリン車とハイブリッド車(HV)の生産を続ける。

メアリズビル工場のライン改修でEVやエンジン車の混流生産ができるようにする。同工場で生産しているセダン「アコード」は、2025年にインディアナ州の完成車工場に移管する。

オハイオ州の別の完成車拠点であるイーストリバティ工場もEV生産ができるように改修を進める。さらにアンナ・エンジン工場は部品の一部生産工程をアラバマ州のエンジン工場に2023年3月から順次移管、空いたスペースでEV電池のケースなどを生産する。

ホンダは2022年10月、オハイオ州のこれらの3工場に計7億ドル(1000億円程度)を投じてEVの生産体制を構築すると発表していた。

Hondaの米国現地法人は、2022年10月11日に以下を発表した。
Hondaは、今後のEVの本格的な生産に向けて、米国オハイオ州内の3つの既存工場(四輪車を生産するメアリズビル工場とイーストリバティ工場、四輪車用パワートレインを生産するアンナ・エンジン工場)に、合計7億USドルを投資して生産設備を更新する。Hondaは今後、これらの工場を、北米におけるEV生産のハブ拠点として進化させていく。

これにより、2026年に北米で発売を予定しているEV向けプラットフォーム「Honda e:アーキテクチャー」を採用したEVを、オハイオ州で生産する。アンナ・エンジン工場で製造するバッテリーケースと、LGエナジーソリューションとのEV用バッテリー生産合弁会社の工場で生産されるバッテリーモジュールを、メアリズビル工場で組み合わせてバッテリーユニットを製造し、これをメアリズビル工場とイーストリバティ工場で生産するEVに搭載する。


ホンダはオハイオ州で韓国の電池大手LGエネルギー・ソリューションと車載電池を生産する工場の建設に着工した。EVについてホンダの主力拠点であるオハイオ州で主要部品から完成車まで一貫して生産できる体制を構築する。

新工場は年間生産能力40GWhで、2024年末までの建設完了を目指す。その後、2025年中に北米で生産・販売されるEV用にポーチ型バッテリーセルとモジュールの量産を開始し、全量を北米にあるHondaの四輪車生産工場へ供給する。約2,200人の雇用を創出する 。

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ホンダと米GMは2022年4月5日、

量販価格帯の電気自動車(EV)を共同開発し、2027年以降に世界で発売すると発表した。両社で車台や生産設備の共通化も進めていく。新たに開発するEVの価格は300万円台からとなる見通し。ホンダはこれまで北米限定だったGMとの提携関係を世界に広げ、電動車シフトを加速する。

GMが開発したリチウムイオン電池「アルティウム」を使い、車両を共同開発する。ホンダはまず北米にある自社工場で生産したEVを同地域で発売する。その後、日本や中国、欧州などに販売エリアを拡大していく方針である。

関係者によると、ホンダがボディや内装を担当、GMはE&E(電気/電子)アーキテクチャや電装品を担当し、専用プラットフォームの立ち上げを計画していた。

しかし、2023年10月25日、ホンダとGMは量販価格バッテリー電気自動車(BEV)の共同開発を中止したことが明らかになった。

ホンダによると、「ガソリン車と同等レベルの競争力を持つ」3万ドル程度のEVを目指していたが、「商品性と価格のバランスを取ることが難しくなったため」という。


2024/1/11 アルツハイマー治療薬「レカネマブ」、中国で承認

エーザイは1月10日、アルツハイマー治療薬「レカネマブ」が中国国家薬品監督管理局(NMPA)より「アルツハイマー病による軽度認知障害及び軽度の認知症の治療」の適応で、承認を取得したと発表した。中国製品名は「乐意保®」で、直訳すると「保護する意欲がある」

米国、日本に続く世界で 3カ国目の承認である。2024年度第2四半期中の発売に向けて準備を進める。

米食品医薬品局(FDA)2021年6月7日、エーザイと米バイオジェンが共同で開発するアルツハイマー型認知症治療薬候補ADUHELM(一般名:アデュカヌマブ)について、脳内アミロイドβプラークを減少させることにより、アルツハイマー病の病理に作用する初めてかつ唯一治療薬として迅速承認(accelerated approval)したと発表した。従来の認知症薬とは異なり、認知機能の低下を長期的に抑制する機能を持つとして世界で初めて承認された。

2021/6/8   エーザイとバイオジェンのアルツハイマー新薬、米で承認  →2023年7月にフル承認

武見厚生労働相は2023年9月25日、アルツハイマー病治療薬「レカネマブ」を正式に承認した。

2023/8/23 厚労省の専門部会、エーザイのアルツハイマー治療薬「レカネマブ」の国内での製造販売承認を了承、近く承認へ → 承認
 

中国の承認は、大規模グローバル臨床第V相試験である Clarity AD 試験に基づくもので、主要評価項目ならびに全ての重要な副次評価項目を統計学的に有意な結果をもって達成した。

エーザイは、2024 年の中国におけるアルツハイマー病(AD) による軽度認知障害および軽度の認知症の当事者数を1,700 万人と推定しており、今後高齢化の進展と共に増加していくと考えている。

中国においては、エーザイが販売並びに専門 MR による情報提供活動を行う。今後、オムニチャネルによる AD の疾患啓発や血液バイオマーカーを含む診断環境の整備に向けた専門医との連携を進める。
保険会社との連携による AD の保険プログラムの開発など、アクセス環境の整備も行っていく。

 

レカネマブについて、欧州(EU)、カナダ、英国など、11 の国と地域で承認申請を行っていく。

 


2024/1/12  三菱商事、欧州でグリーン水素供給網

三菱商事と中部電力の欧州JVのEnecoはオランダに年産8万トンのグリーン水素プラントを新設し、2029年の稼働を目指す。日本経済新聞が伝えた。

化石燃料由来の水素を「グレー水素」、再生可能エネルギー由来の水素を「グリーン水素 」と呼び、化石燃料由来の水素だがCO2を回収するものを「ブルー水素」と呼ぶ。 
グリーン水素はCO2を排出しないため、次世代の脱炭素エネルギーの本命とされている。

Enecoはオランダに大規模洋上風力発電を持ち、これによる電気で水素を生産、自社の電力小売の販売網を使い、欧州域内の需要家にパイプラインを通じて供給する。

1箇所での水素の生産規模は、現在稼働中の世界最大プラントの30倍近くで、大量生産によりコストを低減する。

<Eneco保有の洋上風力発電所>

Enecoは2023年1月、Shell plc社と共にオランダ北西部沖合にあるHollandse Kust West Site Y洋上風力発電所(HKW)の事業権を獲得した。2026年に商業運転を開始する予定。

発電容量は76万kW。オランダ国内の電力需要の約3%を賄う規模で、オランダ政府が推進する脱炭素化施策に大きく貢献する。

 

Enecoは欧州を代表するグリーンエネルギー企業で、オランダ、ベルギー、ドイツを中心に発電、電力取引、小売、地域熱供給の主に4事業のバリューチェーンを構築してい る。
B to C向けには100%グリーン電力(
風力、太陽光、バイオマス(生物資源)などの自然エネルギー)を供給し、B to B向けには、再エネ電源を由来とする電力売買契約を締結する等、グリーン電力供給を積極的に推進している。

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三菱商事と中部電力は、欧州で総合エネルギー事業を展開するEnecoの売却入札に共同で参加し、2019年11月に優先交渉権を獲得、 2020年3月24日、三菱商事と中部電力が共同で設立したDiamond Chubu Europe B.V.(三菱商事 80%/中部電力20%)を通じて、100%の株式を約41億ユーロ(約5千億円)で買収した。

三菱商事とEnecoは、2012年より現在に至るまで3件の欧州洋上風力発電事業(123万kW)及び欧州で最大規模の蓄電事業(5万kW)で協業、欧州での再エネ導入拡大に貢献して きた。

今回両社の関係を深化させることで、Enecoの技術力・ノウハウを活用し、欧州及び欧州外での三菱商事の再エネ開発を更に加速させ、経済価値、社会価値、環境価値の三価値同時実現による持続可能な社会構築への貢献を目指 す。また、同社の顧客基盤と三菱商事の持つ様々な商材・サービスを組み合わせることで、同社顧客向けのエネルギーマネジメント関連の新サービスを充実させ、「中期経営戦略2021」で掲げた、事業経営モデルによる成長の実現を目指 す。

中部電力は、Enecoへ参画し、培ってきた知見をEnecoと融合させ、相互にビジネスモデルを進化させることで、国内外のエネルギー事業におけるシナジー創出を図る。


 

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