2020/2/28  公正取引委員会

楽天に対する緊急停止命令の申立てについて

公正取引委員会は,本日,独占禁止法第70条の4第1項の規定に基づき,次のとおり,楽天に対する緊急停止命令の申立てを東京地方裁判所に対して行った。

1 被申立人  楽天株式会社

2 申立ての趣旨

 「楽天は,本件について公正取引委員会の排除措置命令があるまで,楽天が運営するオンラインモール『楽天市場』において,別紙記載の1回の合計の注文金額が税込み 3,980円以上(沖縄,離島等宛ては税込み 9,800円以上)の場合に商品の販売価格とともに『送料無料』と表示する施策など,出店事業者が一律に別途送料を収受し得ないこととなる施策を実施してはならない」との決定を求める。

3 申立ての理由

 楽天による別紙記載の「共通の送料込みライン」の導入は,自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して,正常な商慣習に照らして不当に,取引の相手方に不利益となるように取引の条件を変更しているものであって,独占禁止法第2条第9項第5号ハに該当し,独占禁止法第19条の規定に違反する疑いがある。


 また,令和2年3月18日から楽天が「共通の送料込みライン」を実施することになれば,相当数の出店事業者の自由かつ自主的な判断による取引を阻害し,自由な競争基盤に悪影響を及ぼす状況が続くことになるとともに,当該出店事業者とその競争者との競争に重大な悪影響を及ぼすなど,公正かつ自由な競争秩序が著しく侵害されることとなり,排除措置命令を待っていては,侵害された公正かつ自由な競争秩序が回復し難い状況に陥ることになるため,「共通の送料込みライン」の実施を一時停止することについて,独占禁止法第70条の4第1項に規定する緊急の必要があると認められる。

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2020/3/10 

楽天への「送料無料」停止命令の求め、公取委が取り下げ

楽天の送料無料プランを実施させないことを命令する緊急停止命令を出すよう東京地裁に求めていた公正取引委員会が、申し立てを取り下げたことがわかった。

楽天が当初予定していた18日からの一律導入の見送りを表明したため、公取委は楽天が出店者側にプランを強制するものではなくなったと判断した模様だ。

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2020/3/7

楽天、通販一律の「送料込み」延期 強制色薄める

楽天は3月6日、通販サイト「楽天市場」の商品の価格を3月18日から一律で送料込みとする施策を延期すると発表し、約5万店の出店者の任意制に変えた。

出店者の延期要求に応じた。一律に事実上の送料無料とする施策については公正取引委員会が2月末に独占禁止法違反(優越的地位の乱用)の疑いがあるとして緊急停止命令を出すよう東京地裁に申し立てをしており、楽天側には強制色を薄める意図もみえる。

18日から一部の出店者は送料込みの価格表示とする。東京地裁は月内にも停止命令を出すかどうかの判断を下す見通しで、楽天は一律の導入を断念せざるを得ない可能性がある。

「新型コロナウイルスが急に出てきて店舗が困っている声を聞き、それでも(一律導入を)やるのはおかしいと判断した」。楽天の野原彰人執行役員はネット中継の会見で価格表示のルール変更を延期する理由を説明した。

楽天は価格表示をわかりやすくするため、18日から消費者が1つの店舗で3980円以上を購入した場合、沖縄・離島などを除き価格を「送料込み」にする予定だった。

ネット通販では商品の仕入れや出荷に人手がかかる。新型コロナの国内での感染拡大で「在宅勤務のスタッフが増え、作業の人数が足りない」との悲鳴が出店者から相次いだという。客単価が1万円の出店者では3980円以上を送料込みや送料無料にすると、注文頻度が上がり、出荷作業が増える可能性がある。

軌道修正は新型コロナの影響としたが、導入を見送る店舗の延期期間は「現時点では無期限」だ。6日の会見では報道陣から「いつ一律に導入するのか」「一律導入の撤回ではないのか」と質問が相次いだが、楽天は「未定」を繰り返した。

公取委は送料込みと表示する方針が出店者に不利益を与える恐れがあるとし、2月28日、楽天に対し緊急停止命令を出すよう東京地裁に申し立てた。東京地裁が命令を出すかどうかが焦点となっている。命令が出れば楽天は即時抗告もできる。だが問題の長期化はブランドを毀損しかねない。

公取委が独禁法違反の疑いで楽天を調査するなか、施策が強制的かどうかといった判断も焦点になっている。2020年に入って楽天は相次いで軌道を修正している。

2月には「送料無料」から、商品代に送料を上乗せしやすい「送料込み」に表現を変えた。三木谷浩史会長兼社長は「送料無料の言葉が独り歩きし、誤解を招いた。(出店者の)経済的な負担がないようにする」と述べた。6日は店舗への支援策も公表。送料込みの表示にした店舗に対し「マイナスがでれば数カ月程度、支援金を出す」(楽天)とした。

一方、楽天のCEO戦略・イノベーション室の川島辰吾氏は「利用者にとって送料のわかりやすさを目指す」と、基本方針に変更がない考えも強調した。

楽天の国内電子商取引(EC)は2けたの増収だが、利益は頭打ち感が強い。19年12月期の流通総額は前の期比13%増の3兆9千億円だったが、営業利益は同11%減った。送料問題が長引くと、楽天グループ全体の成長も阻害しかねない。

米アマゾン・ドット・コムやグーグルなど、世界中のデータを集約し、サービスを提供するプラットフォーマーに対し、各国当局が個人情報保護法や独占禁止法などを駆使して規制を試みる。

日本政府も2月、巨大IT企業に取引条件を明確にするよう求める新法案を閣議決定し、国会に提出。早ければ20年度中の施行を目指す。公取委は楽天の一連の送料施策を「優越的地位の乱用」とみている。軌道修正を急ぐ楽天への東京地裁の判断が注目されている。