紙おむつ原料大手の日本触媒と三洋化成工業は2019/5/29日、2020年10月をメドに経営統合すると発表した。両社はおむつ用の吸水性素材でそれぞれ世界首位と同5位で、統合によりシェアを3割まで引き上げる。アジアの競合の相次ぐ増産で需給が緩み、事業環境は悪化している。今後も世界で存在感を維持し続けるには規模の拡大が避けられないと判断した。
日触ホームページから
日本触媒は「高吸水性ポリマー(SAP)」や原料のアクリル酸を自社生産し、同業他社に比べ競争力が高い。12年9月には兵庫県姫路市の工場で爆発事故を起こし、一時的に世界規模で供給不足に陥った。連結売上高は約3500億円。
三洋化成が得意とするのはニッチな素材だ。3000種類以上持つ商品は一つ一つの需要は小さいものの、他社が手掛けず高収益の商品が多い。同社の連結売上高は約1600億円。
両社のSAPの生産能力は単純合算で年110万トンとなる。日本触媒の生産能力は18年時点で約2割と世界首位。同社の成長の柱と位置づけ、能力増強や生産性改善に資金や人員を投じている。18年にはベルギーでSAPや原料のアクリル酸の生産設備を増強しており、さらにSAPのシェアを高めているもよう。
日本触媒によると、18年の世界でのSAP需要は年300万トン。各国の経済成長に伴いおむつの利用が増え、年5〜7%の成長が続いているという。ただ国内の住友精化や中国、韓国メーカーも相次ぎ能力増強や新規参入に動いている。例えば、住友精化は昨年11月に韓国で第2工場を立ち上げた。
需要の伸びを上回る増産の結果、需給は緩み、事業環境が悪化。日本触媒のSAPを含む機能性化学品事業の売上高営業利益率は19年3月期に約7.6%と、15年3月期から1ポイント近く低下した。
三洋化成も同じ状況だ。19年3月期にはマレーシアで立ち上げたSAP新工場の稼働率が低迷し、約88億円の減損を計上した。「SAP原料を外部から調達しており価格競争力がない。投資額が大きくなっており、日本触媒の生産ノウハウを活用し収益を高める」(三洋化成の安藤社長)必要があった。
日本触媒は経営統合によりSAPの事業基盤が弱かった中国市場の強化を目指す。「三洋化成が加わるとシェアは3分の1まで上がり、トップ企業として競争力が高まる」(五嶋社長)と語る。
統合後の具体的な方策は今後詰めるが、三洋化成がSAP原料の調達を日本触媒に集約してコストを減らすといったことを検討するとみられる。また日本触媒の販売ネットワークをいかした三洋化成製品の販売拡大もありそうだ。
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2019/5/29
日本触媒と三洋化成工業の経営統合の検討に関する基本合意書締結のお知らせ
日本触媒及び三洋化成工業は、本日開催の両社の臨時取締役会決議に基づき、対等の精神に基づく両社の経営統合に向けて検討を進めていくことについて基本合意書を締結しましたので、下記の通りお知らせいたします。
今後、両社は、相互信頼と対等の精神に則って、本経営統合に向けた詳細な検討と協議を進め、2019年12月を目途に、本経営統合に関する最終契約)を締結する予定です。
1.本経営統合の目的等
(1)本経営統合の目的
日本触媒は、企業理念を「TechnoAmenity 〜私たちはテクノロジーをもって人と社会に豊かさと快適さを提供します」と定め、触媒・高分子・有機合成技術をコアに、アクリル酸、酸化エチレンなどの基礎化学品の製造から、それらを原料にした高度な機能性化学品、環境・触媒製品を開発し、製造販売してまいりました。
三洋化成は、社是「企業を通じてより良い社会を建設しよう」を理念と定め、界面活性制御技術をコア技術とし、幅広い産業分野の多様なニーズに応えるべく、約3,000種類に及ぶ高機能なパフォーマンスケミカル製品を開発し、製造販売してまいりました。
近年、化学業界を取り巻く経営環境は厳しさを増しております。日本国内では、人口減少や高齢化の進行といった社会構造の変化に伴い化学品の内需減少が見込まれ、化学メーカー同士の熾烈な競争が引き起こされている状況です。
また、新興国においては、人口増加や所得水準の向上に伴い化学品の需要が増加しておりますが、新たに新興国メーカーが台頭すると共に、欧米系の巨大化学メーカーとの規模の格差が拡大しており、日本の化学産業の競争力が低下している状況にあります。
また、両社の主力事業の1つである高吸水性樹脂(SAP)は、世界人口の増加の恩恵を受け今後も安定的な需要の伸びが期待できるものの、新興国での新規参入者による供給過剰の状況等、事業環境の変化に伴う収益性の低下により、見通しは厳しさを増しております。
一方で、2015年9月の国連サミットにおいて採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」においては、貧困の解決からグローバル・パートナーシップの活性化に至る17の目標が提示されており、企業も社会のステークホルダーの一員として、SDGsに対する取組みを期待されておりますが、それら17の目標に係る貢献を行うに際しては、両社が長年に亘って培ってきた技術力・課題解決力によって貢献できることが数多くあると考えます。
このような急激な外部環境の変化に対応するため、両社はそれぞれ中期経営計画を策定し、新たな価値の提供に向けた変革に取り組んでおります。
日本触媒においては、2025年のありたい姿として「人と暮らしに新たな価値を提供する革進的な化学会社」を掲げ、2017年度から、後半中期経営計画 「新生日本触媒2020NEXT」をスタートさせておりました。
一方の三洋化成においても、10年後のありたい姿として「全従業員が誇りを持ち、働きがいを感じるユニークでグローバルな高収益企業に成長し、社会に貢献する」ことを掲げ、2018年度から3年間の中期経営計画“New Sanyo for 2027”を策定しております。
中期経営計画においては、両社ともに、「企業活動を通じた社会への価値提供・貢献」「売上規模よりも収益性を重視」「新たな成長分野(ライフサイエンス・新エネルギー・エレクトロニクス等)へのリソースのシフト」「グローバル展開の加速」「安全・環境・品質へのこだわり」を経営方針として掲げております。 このように両社はそれぞれ中期経営計画を策定し、外部環境の変化に対する取り組みを進めておりましたが、従来より化学品原材料の取引関係を有する両社がそれぞれの経営上の課題について議論を進めていく中で、「TechnoAmenity 〜私たちはテクノロジーをもって人と社会に豊かさと快適さを提供します」を企業理念とする日本触媒と、「企業を通じてよりよい社会を建設しよう」を社是とする三洋化成の間には、企業を通じて社会貢献を行うという両社の掲げる理念・社是の親和性が高いことのみならず、それぞれの強みと経営上の課題が相互に補完関係にあることを認識するに至りました。
具体的には、日本触媒は、基礎化学品から機能化学品の一貫生産のバリューチェーンを有することを強みとする一方、ユーザーニーズを意識した新規事業の創出を課題としており、三洋化成は、顧客の課題に応えるソリューションビジネスにより約3,000種類に及ぶパフォーマンス・ケミカルスの製造・販売に強みを持ちながらも、主要原材料を日本触媒をはじめとした外部からの調達に依存していることを課題としておりました。
このような認識のもと、両社は、経営統合を含めた様々な選択肢について意見交換を進めておりましたが、両社の強みを生かし、経営上の課題を解決した上で、相乗効果を生み出していく方法としては、それぞれを相手方として経営統合を行うことが最適な方法であるとの理解に至り、両社の経営統合に向けて検討を進めていくことについて合意し、本日、経営統合の検討に関する基本合意書を締結いたしました。
本経営統合が最終的に合意に至り、実行された場合には、販売・製造・研究等の機能におけるそれぞれの強みを持ち寄り、経営資源を結集、経営基盤を拡大し、両社がそれぞれに培ってきた企業文化と経営戦略を活かしつつ、さらなる事業変革・競争力強化を実現することで、強みのある事業を複数保有する、存在感のある化学メーカーを目指すことができると考えております。
その上で、「もっと・・・」を願う人々の気持ちに応える製品・サービスの創出を通じて、持続可能な社会の創造や社会課題の解決に取組み、人と社会に豊かさと快適さを提供して参ります。
両社は、今後、相互信頼と対等の精神に則り、本経営統合の実現に向けた最善の努力を行います。
(2)本経営統合後の基本戦略 本経営統合では、本経営統合後の統合持株会社が、両社及びその子会社からなる企業集団全体の経営及び管理の機能を担うものとします。
また、本経営統合の効力発生時に、両社の経営企画、財務経理、法務、総務、人事、IR広報、内部監査、コーポレート研究、RC(レスポンシブル・ケア)その他の間接部門を統合持株会社に統合することを基本方針とします。
統合後グループの基本戦略に関しては、以下を含めることとし、詳細は協議の上、本最終契約締結までに決定します。
@事業基盤の強化:両社の経営基盤を統合することで、技術面・コスト面での統合効果を実現。特にSAP事業は、両社の生産技術力や研究開発力を融合し、品質向上・コスト削減を図り、健全な発展を目指す。
A規模拡大による競争力、収益力強化:新興国での化学品需要を取り込みながら、コストダウン等を追求し、既存事業で更なる成長を果たす。
Bポートフォリオの多角化:両社の事業を組み合わせ、両社の取組む事業の多角化を実現。その一方で、多角化した事業についても絶えず選択と集中の観点から検討を行い、強みのある高収益事業を複数育成する。
C新規事業開発の加速:両社経営資源を注力分野に集中的に投下することで、早期の収益貢献を目指す。
(3)本経営統合の効果 本最終契約締結時点までに、統合効果を創出する方策を検討します。可能な限り早期に統合効果を達成するため、両社の間接部門の早期統合や2年後を目標とした合併等の将来体制構築に向けた協議を進めていきます。
2.本経営統合の要旨(1)本経営統合の方式 本経営統合は、両社が共同株式移転)を行い、両社の完全親会社となる統合持株会社を設立し、両社を統合持株会社の完全子会社とする方法によることを基本方針とし、その詳細については、両社間で引き続き誠実に協議・検討の上、本最終契約において定めます。
なお、両社は本経営統合の効力発生の2年後を目途に、両社の合併を実行することを基本方針としておりますが、具体的な方針については、事業上の合理性を考慮した上で、今後両社の協議にて決定いたします。
大株主
日触 三洋化成 住友化学 6.84% 豊田通商 19.38% 東レ 17.30% JXTGホールディングス 5.33% JXTGホールディングス 4.80% 全国共済農業協同組合連合会 4.03% 三洋化成 3.17%(1,267 千株) 日本触媒 5.00%(1,105 千株)
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高吸水性樹脂(SAP) 原料:アクリル酸
日本触媒の現状と計画は下記の通り。(千トン)
アクリル酸 SAP 現状 計画 付記 現状 計画 付記 日本 460 80 320 +50 US 60 60 ベルギー +100 60 +100 インドネシア 60 80 90 シンガポール 40 中国 30 30Total 620 160 470 90 780 →880
560 +30→710
日本触媒は2012年1月31日、中国の能力を倍増すると発表した。
2014年3月末完成、7月から商業運転を開始する予定。
日本触媒は2014年7月31日、中国の倍増計画を中止すると発表した。
日本触媒は2013年10月23日、インドネシアでアクリル酸、SAPの竣工式を行った。
世界能力はアクリル酸が70万トン、SAPが56万トンとなった。
日本触媒は2014年10月1日、姫路のSAPの50千トン増設を発表した。
2016年6月に完成すれば、日本が370千トン、合計610千トンとなる。日本触媒は2015年5月11日、ベルギーでSAP 100千トン増設、アクリル酸100千トン新設を発表。
2018年5月に完成すれば、SAPが710千トン、アクリル酸が880千トンとなる。
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2013年9月30日
高吸水性樹脂の新合弁会社スタート
SDPグローバルとして世界展開を加速
三洋化成工業と豊田通商は、三洋化成の連結子会社で高吸水性樹脂(SAP)を製造・販売しているサンダイヤポリマーに関し、本日、新合弁契約書を締結しました。また、商号を「SDPグローバル株式会社」に変更し、新合弁会社をスタートしました。
SDPグローバルは、従来よりサンダイヤが保有する研究開発・生産体制に加えて、豊田通商が保有する販売・物流網を活用し、成長するSAP市場での積極投資を通じグローバル展開を加速し、これまで以上に市場ニーズ、顧客ニーズに応えるべく尽力していきます。
【合弁会社設立の背景】
三洋化成と豊田通商は、本年3月29日、三菱化学が保有する三洋化成の連結子会社でSAPを製造・販売するサンダイヤポリマーの株式40%を全て取得することで合意し、同日、三洋化成は三菱化学と株式譲渡契約を締結し10%の譲受けを完了しておりました。
今回、豊田通商は、国内外の競争法に基づく必要な手続き及び対応を終え、三菱化学より株式30%の譲受けを完了しました。これにより、SDPグローバルは三洋化成が70%、豊田通商が30%出資する合弁会社となります。
三菱化学は2013年3月29日、高吸水性樹脂(SAP)を製造・販売するサンダイヤポリマーの持株全てを譲渡し、合弁事業を解消すると発表した。
持株40%のうち、30%を豊田通商に、10%を三洋化成に譲渡する。この結果、三洋化成 60%、三菱化学 40%であったサンダイヤポリマーは、三洋化成70%、豊田通商30%のJVとなる。
2013/4/1 三菱化学、高吸水性樹脂事業から撤退
1974 三洋化成工業(株)がSAPの研究開発を開始
1978 三洋化成工業(株)が世界で初めてSAPの商業生産を開始
2001 サンダイヤポリマー(株)(現、SDPグローバル(株))設立
2003 三大雅精細化学品(南通)有限公司設立
2013 SDPグローバル(株)に社名変更
2015 SDPグローバル(マレーシア)SDN. BHD.設立
SDPグローバル株式会社 設 立 2001年4月 出資比率 三洋化成工業70%、豊田通商30% 事業内容 高吸水性樹脂の研究開発・製造・販売 生産拠点 日本(名古屋、大垣)13万トン 中国(南通)23万トン マレーシア(ジョホールバル)8万トン 合計 44万トン
住友精化の現状と計画は下記の通り。(千トン)
現状 増強 完成後 付記 姫路工場 110 54 164 →210
フランス
Arkema 委託20 27 47 シンガポール 70 70 →129 合計 200 81 281 →386
付記
住友精化は2013年9月、姫路の増設を発表、2015年4月稼動で、合計210千トンになる。
住友精化は2014年5月28日、韓国の麗水市に高吸水性樹脂製造設備(年産59千トン)を建設することを決めたと発表した。2019年倍増
高吸水性樹脂 アクアキープの製造
社名 Sumitomo Seika Polymers Korea Co., Ltd. 場所 麗水市 株主 住友精化 90%
スミトモ セイカ シンガポール 8%
スミトモ セイカ アジア パシフィック 2%設立 2014/7/31
http://www.sumitomoseika.co.jp/files/up1401257069.pdf
http://www.sumitomoseika.co.jp/files/up1406616621.pdf能力 59,000トン+59000 備考 能力(as of May 2015):
1. 姫路 210,000 tons
2. Singapore 70,000 tons
3. France (production commissioned to Arkema) 47,000 tons
4. 韓国 59,000 x2
2014年4月15日BASFとSINOPEC、アクリル酸と高吸水性樹脂のプラントを中国・南京に開設中国市場での需要増加に対応するため、高吸水性樹脂(SAP)、アクリル酸、アクリル酸ブチルのプラントを新設統合生産により、資源の効率化と省エネルギー化に対応BASFとSINOPEC(シノペック/中国石油化工集団公司)は、2014年4月9日、中国・南京にある両社の折半出資合弁企業であるBASF-YPCの最先端技術を誇るフェアブント(統合生産拠点)に、アクリル酸および高吸水性樹脂(SAP)の製造プラントを各々開設しました。さらに、2014年後半にはアクリル酸ブチルの製造プラントも生産を開始する予定です。新プラントの新設によって、さらなるC3(プロピレン)のバリューチェーン強化を図り、高まる川下製品の需要に対応します。特に、年間生産能力60,000トンを誇るSAPプラントにより、中国での赤ちゃん用おむつ、成人用おむつ、生理用品などの需要増に対応します。
現在、SinopecとのJVのBASF-YPC(南京市)で60千トンのプラントを建設中。
過去 現状 増強後 欧州 Antwerp 115 175 210 Mannheim 25 25 25 米国 Portsnmouth,VA 115 - - 元Clariant Aberdeen, MS 65 - - 元Chemdal Freeport,TX - 180 215 タイ Rayong 20 20 20 元Chemdal 合計 340 400 470 中国JV 南京(BASF-YPC) - - 60 再計 340 400 530 付記
BASFは2011年10月11日、ブラジルのCamaçariに60千トンプラントを建設すると発表。生産開始は2014年末。
BASF-YPCのプラントは2014年初めスタート。
更にマレーシアのKuantanでの生産をFS中。19 June 2015BASF inaugurates world-scale acrylic acid complex in Camaçari, Brazil
- First world-scale production complex for acrylic acid and superabsorbent polymers in South America
- With more than €500 million, largest investment in BASF’s history in the region
- Butyl acrylate plant in Guaratinguetá to be converted to produce 2-ethylhexyl acrylate
The complex has a capacity of 160,000 tons of acrylic acid per year.