2009/1/17 日本経済新聞

米シティ、会社2分割
 アセットとコーディアル 日興2社売却も 銀行業務に回帰

 米大手銀行シティグループは16日、同行を預金、融資、投資銀行事業などを手がける中核部門の「シティコープ」と証券仲介事業など非中核部門の「シティ・ホールディングス」の2部門に分割すると発表した。シティは財務内容が急速に悪化しており、非中核事業のリストラ・売却による事業のスリム化を通じて生き残りを目指す。

シティグループ事業再編の概要 

不良資産を分離
・中核部門の「シティコープ」と非中核部門の「シティ・ホールディングス」に会社を二分割
・シティコープは預金・カード、投資銀行、プライベートバンクなどの事業を継承、
・シティ・ホールディングスは証券、仲介、資産運用や消費者金融業、その他の不良資産を継承。リストラ対象に
・日興コーディアル証券、日興アセットマネジメントは非中核部門に位置付け

 日本で展開する日興コーディアル証券と日興アセットマネジメントは「シティ・ホールディングス」に含まれる。パンディット最高経営責任者(CEO)は16日、日興コーディアル証券について「世界戦略上、(事業価値や位置づけが)不十分で、経営を複雑にしている」と述べ、日興アセットとともに将来の売却の可能性を示唆した。
 世界を代表する大手金融機関だったシティが過去10年来掲げてきた「総合金融」の旗印を降ろした形で、各国の金融機関は今後、新たなビジネスモデルの模索に迫られる可能性が高い。
 米政府は昨年、主要銀行への資本注入に加えて、シティには個別に損失保証や資本注入を実施した。しかし、二度にわたる支援策にもかかわらず経営状況は改善せず、株価は急落、抜本的な改革に追い込まれた。
 「シティコープ」は従来の主力業務を引き継ぐ。世界百カ国以上で展開する預金・カード業務、法人向けの融資や証券引き受けなど投資銀行業務、富裕層向けのプライべートバンクといった事業を展開する。
 一方、「シティ・ホールディングス」には既に経営権の売却を発表した個人向け証券のモルガン・スタンレー・スミスバーニー、証券仲介・資産運用事業、消費者金融・住宅ローン事業の一部や米政府と損失負担で合意した不良資産などを移管する。
 「シティコープ」の総資産は約1兆1千億ドル(約99兆円)で、これまでのシティの総資産(約2兆ドル)と比べると半分程度の規模にすぎない。「シティ・ホールディングス」は今後、事業の売却などを通じて資産の圧縮を進める予定だ。シティは事業のスリム化を通じて資金効率を高めたい考えだ。


日本経済新聞 2009/1/17

バンカメに10兆円保証 米政府、資本再注入1.8兆円

 米政府は16日、米銀行大手バンク・オブ・アメリカ(バンカメ)に公的資金で追加支援を実施すると発表した。バンカメが保有する1180億ドル(約10兆6千億円)の不良資産から今後生じる損失の大半を米政府が肩代わりする。同時に200億ドル(約1兆8千億円)の資本再注入も実施する。バンカメが買収した米証券大手メリルリンチの不良資産から生じる損失が膨らんだためで、大手銀への追加支援は昨年11月のシティグループ向けに続く。実体経済の悪化を受けて米国の金融システムの深刻な実態が改めて浮き彫りになった。
 米財務省、米連邦準備理事会(FRB)、米連邦預金保険公社(FDIC)は、同日未明に共同声明の形で発表した。
 損失肩代わりの対象となるのは、住宅ローンや企業向け貸し出し、デリバティブ(金融派生商品)などの不良資産。今後生じる損失のうち最初の100億ドルはバンカメが負担。それ以上損失が膨らんだ場合は政府が大半(90%)を負担する。不良資産はバンカメの貸借対照表(バランスシート)に残るもののバンカメの将来の損失拡大は限定される。
 政府はこれまでに250億ドルの資本注入をバンカメに実施した。今回は新たに優先株で200億ドルの資本注入を実施する。不良資産の損失保証の手数料としてバンカメは政府に配当利回り8%の優先株を40億ドル発行。ワラント(株式購入権)も提供する。
 バンカメが16日発表した2008年10-12月期決算は、最終損益が17億9千万ドルの赤字となった。

不良資産の損失負担 バンカメ:最初の100億ドル+残りの10%

米金融機関への公的資金投入
  一次 二次 不良資産保証
シティグループ       2008/10 250億ドル 2008/11 200億ドル 3,010億ドル
バンク・オブ・アメリカ
 (メリルリンチ買収)
2008/10 250億ドル 2009/1 200億ドル 1,180億ドル
JPモルガン・チェース
 (ベア・スターンズ買収)
2008/10 250億ドル      
ゴールドマン・サックス 2008/10 100億ドル      
モルガン・スタンレー 2008/10 100億ドル      
ウェルズ・ファーゴ
2008/10 250億ドル      

2009/3/1  シティ再建 

優先株転換後のシティの株主構成

   米政府  36%
   GIC(シンガポール政府投資公社) 10%
   サウジ アルワリード王子ら  8%
   (以上 政府系 54%)

   2008年前半の公募優先株  21%

   合計 金融危機後の株主 75%


2009/3/2  AIG支援 

   政府が最大300億ドルの資本を追加
     AIGは議決権の77.9%を持つ優先株発行
   アリコ、AIAの株式を特別目的会社に移管(FRBが間接保有、経営はAIG) 売却も検討
     FRBは2社の事業収益(約260億ドル)を受ける見返りに、融資残高を削減 600億ドル→250億ドル
   生命保険契約の一部(85億ドル)を証券化し、FRBへの返済に充当
   FRBは残りの融資にかかる金利も軽減
   損害保険事業をAIUホールディングスに移管 将来株式公開も