2006年07月20日 朝日新聞

政府のCO2排出権購入、道険し 21日開始

 政府は21日、京都議定書で約束した温室効果ガスの削減目標を達成するため、民間企業が途上国で得た排出権の買い取りを始める。目標達成には削減量1億トン分(CO2換算)が足りず、これを民間からの購入で補う。しかし、排出権は価格変動が激しく、「まず買い取り量ありき」のやり方では費用が数千億円に膨らむ恐れもある。

 同議定書では、企業が途上国で温室効果ガスを削減し、国連がCO2換算の削減量を認証し、その分の排出権の売却が可能になる。先進国がこれを企業から買い、自国の削減不足を補うことが認められた。

 日本政府は08〜12年の5年間で、90年比で6%の削減義務があるが、省エネルギーだけでは不足の1.6%分(1億トンに相当)の排出権を今後8年間で購入する方針だ。

 06年度の購入費は54億円。購入事業を委託された独立行政法人の新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が21日から売り手を募集する。だが、大手商社などは「契約条件が悪すぎる」と冷ややかだ。

 温室効果ガスの削減事業では、風力発電所などの建設から排出権が売却可能になるまでには数年はかかり、実際に売れる排出権の量も見通しが難しい。

 だが、排出権を確実に上積みしたい政府は、最初から所定の年数に一定量を売るよう確約を求めており、商社側は「排出権の手持ちが少ないので、不足分を買い集める羽目に陥りかねない」(三井物産)と遠巻きにしている。

 排出権の国際取引はドル建てかユーロ建てが普通だが、為替リスクをかぶりたくない政府は円建てしか受け付けないため、契約の障害になっている。

 排出権価格の先高感も悩みの種だ。現在は政府が予算を組んだ05年当時の約2倍の1トン=10ドル前後。「民間のリスクを単純に上乗せすればこの3倍にはなる」(丸紅)とされ、購入費が3000億円を超す恐れもある。

 購入が遅れるほど契約が不利になるため、経産省は「まず購入を始めることが先決。必要な見直しは走りながら考える」という不安のスタートだ。