日本経済新聞 2007/1/18

「マイカル大連」工事費・訴訟 清水建設の敗訴確定

 中国遼寧省の大型商業施設、「マイカル大連商場」の工事費用の残金支払いなどを巡り中国で争われていた裁判で、清水建設の敗訴が確定したことが17日分かった。清水建は契約書などを根拠に支払いを求めたが認められず、逆に約20億円の支払いを命じられた。今後、日本のゼネコンの中国事業参加にも影響を及ぼす可能性もある。
 清水建は「契約も残高確認書も全く無意味という事態は経験がなく、どうにも理解し難い判決」(広報部)としている。
 判決は中国の最高裁にあたる最高人民法院が昨年12月26日に言い渡した。同法院は2004年12月29日に
遼寧省高級人民法院が下した判決を全面的に支持。一審と同様、溝水建に対し、工事費用の過払い分の払い戻しや欠陥工事の修理費用などに加え、二審の裁判費用全額の支払いを命じ、清水建の敗訴が確定した。


マイカル大連商場

日本の元マイカル(Mycal)系列のデパートだったのですが現在は中国資本のMYKAL(麦凱楽)となっている。

日本国内でサティ、ビブレを経営するマイカル(Mycal)は、1998年9月に大連の中心部に「マイカル大連商場」をオープンさせた。これは、商場の名が示すとおり、ファッション衣料・生活用品・スポーツ用品・家電製品・免税品の販売のほか、レストラン街、アミューズメント施設などを持つ複合的ショッピングセンターである。ユニークなのは吉本興業がプロデュースした劇場を設置し、さらにビルの上層部には5つ星級のホテル(スイスホテル)、マンション、レンタルオフィスも経営している点である。

大連の老舗デパート大連商場と提携し大連の一等地に建つ37階建ての「大連国際商貿大厦」という名前のビルである。マイカル側の出資が7割だった。躍進中の大商集団が買い取って、経営権を得た。

マイカルの売場自体は「マイカル大連商場」という名前になっおり、地下1階から地上6階までを使っている。延べ床面積は大連の百貨店最大の4万9857平方メートルで、1階に吉本興業が中国で初めてプロデユースする劇場「龍舞天堂」(190席)があり、5階には香港以外では初めての市中免税店がある。6〜7階には「フェンディ」「ミッソーニ」などイタリアの高級ブランドショップ16店を集めた「マジア大連」が入っている。
このビルはホテルなどにも使われ、スイス航空系列のスイスホテルが運営する「スイスホテル大連」(327室)のほか、マンション(14〜20階)、オフィス(11〜13階)が入る。


マイカルは2001年9月14日に経営破綻。(メインバンクの第一勧業銀行から金融支援の打ち切り宣告)
  社長・銀行:会社更生法、他取締役:民事再生法
  社長解任で民事再生法を申請するが、難航
  イオンが会社更生法による支援表明。
  2001/11 会社更生法申請(民事更正法申請取消)
2003年 会社更生法の適用を受け、イオンの支援により再建、2003年にイオンの完全子会社となり、2005年12月31日、更生手続きの終結決定をした。


■与信管理に関する最新ニュース■ 2005/3/9  http://www.kmjpn.com/news050309.htm

◆清水建設、債権回収の訴訟で敗訴

清水建設が中国の大連で受託した旧「マイカル大連」の工事費の未払いを巡り、大連国際商貿大廈を相手取って中国で訴訟を提起した。総額154億円の工事代金は4回の分割支払いであったが、4回目の代金に当たる38億5千万円相当が未払いとなっていた。

遼寧省の高級人民法院における一審の判決結果は、清水建設の全面敗訴。それどころか、逆に清水建設に対して過払いがあったとして、約17億円の返還を命じるものとなった。清水建設はこれを不服として、北京の中国最高人民法院に上訴した。

中国側の言い分は、工事代金の154億円は概算に過ぎず、第三者機関の鑑定結果によれば、実際は多く支払いすぎていた、だから4回目は支払っていなかったというものだ。

清水建設にしてみれば、「4回目の代金を支払わないばかりか、逆に17億円を払えとはどういうことだ」という心境ではないだろうか。

これがいわゆる中国における「地方保護主義」である。外国企業が中国で争えば、外国企業が敗訴する可能性が高い。

同じ中国の企業同士の訴訟であれば、上海の企業が大連の企業を遼寧省で提訴すれば、大連の企業が勝訴する可能性が高くなる。

そういう意味では、司法の場を北京に移すことで、二審は公正な司法判断が期待できるかもしれない。しかし、いずれにしても中国企業を中国で提訴することに変わりはない。


http://www.chinasupercity.com/218.html

 発端は1998年10月末、マイカル大連商場を施主である大連国際商貿大厦(国貿大厦)に完成物件を引き渡した時に遡る。96年1月の契約締結時から引き渡し時までに4分割で支払われる予定だった最後の工事代金、つまり4分の1(3850万ドル)が未払いとなったことが原因だった。清水建設は、中国の時効となる2000年10月に日本の高裁にあたる遼寧省高級人民法院に国貿大厦を提訴した。
 マイカル大連商場は、商業施設およびホテルを予定通り開業させている。契約通りに建てて引き渡しを終えたのだから、清水建設が当然勝つものと当の清水建設関係者は考えたのも無理はない。が、結果は被告となった国貿大厦の言い分がほぼ認められ、逆にこれまで清水建設に支払った工事代金を国貿大厦に返済させる判決が下ったのである。
 その理屈はこうだ。清水建設は契約通りの引き渡しを国貿大厦に行っていない。清水建設が建てた建物は1億5400万ドル(契約締結時)の価値はない。この結果、
すでに支払われていた1億1550万ドルから新たな鑑定結果から差し引いた938万841ドルの返還に、工事の品質に起因する改善費用などを加えた約1590万ドル(約16億円)を国貿大厦に支払うように命じたのである。
 訴訟で浮き彫りになったのは、清水建設と国貿大厦との認識の違い。清水建設側は当初契約通りで、中国の建築基準に従った建物を建てた。引き渡しも終えているので約束通りに代金を支払えという。一方の国貿大厦側は、契約通りの建物ではなく、正式な引き渡しを終えていないから、新たに鑑定しその価値分を支払う。一審では後者の国貿大厦側の言い分を認めた。「清水建設の言い分を知る限り日本の商慣行ではあり得ない判決」(日本の建設業界関係者)だ。「国貿大厦は清水建設に減額請求という形で反訴したが、建物建設をめぐりこれだけの減額を認めた判決は非常に珍しい。地方では政府、裁判所、弁護士が想像以上に癒着していることを思えば、公平な裁判かどうかも疑わしい」と上海の弁護士も話す。また98年当時、未払い金の理由について国貿大厦は「建物の瑕疵」であると言及しておらず、これはむしろ裁判後に持ち出された主張」であることからも、何らかの意図が働いたことが推察されるのだ。