週刊ポスト 1999/10/29            合併契約書締結

住友・三井合併は日本株式会社の“再武装”
http://www.weeklypost.com/jp/991029jp/news/news_1.html

(1)実質世界第1位の銀行が出現
 10月14日午前1時、住友銀行とさくら銀行が、合併を視野に入れた全面提携に向けた最終調整に入ったことが明らかになった。これにより、貸出金などの総資産額は99兆円に達し、8月に統合を発表した第一勧業銀行・富士銀行・日本興業銀行の統合3行に次ぐ、世界第2位の巨大銀行が誕生する――と新聞・テレビマスコミは報じている。が、この報道は実は正鵠を射てはいない。現在、金融機関、特に銀行が血道をあげているのは、「総資産」ではなく「顧客基盤」、すなわち「優良顧客数」であるからだ。この顧客基盤拡大による収益力向上こそが、国際競争に晒される日本金融機関に突き付けられた至上命題であり、そこに勝算と魅力があったからこそ、これまでなら考えられなかった財閥系銀行同士の合併・統合というウルトラCが成立しようとしているのである。そして、この顧客基盤という側面で見れば、旧三井銀行を母体とし1500万口座という国内最大規模の個人顧客口座を有するさくらと、1200万口座の住友の融合は、先の統合3行を上回る。この点でいえば、両行の合併は、世界第1位の巨大銀行の出現を意味するのだ。
 驚天動地の印象を受ける今回の合併だが、実はその交渉は今年夏から両行首脳クラスを中心に本格化していた。なかでも、大手都銀において不良債権比率が高く、株価も低迷していたさくら銀行には切迫した危機感があった。
 同行は当初、興銀との事業統合を模索。しかし、8月の3行統合発表により事業計画の練り直しを迫られた。これとほぼ並行して進めていたドイツ銀行との提携も極めて限定的なものに止まり、また、世界最大の生命保険会社である日本生命との全面提携も、最終的には部分的なものとなった。そうしたなか、10月7日には東海銀行・あさひ銀行が統合を発表。次なる再編の目玉としての期待感から、株価を上げてはいたが、いつまでも具体性が見えてこないさくらの動向に、「このままでは、再び株価低迷の可能性もある」(市場関係者)という厳しい見方がなされていた。

 一方の住友銀行も決して盤石だったわけではない。 「マネーセンターバンクは、4行ないし、多くて5行」と柳沢伯夫・前金融再生担当相が語っていたように、世界の金融マーケットを舞台とし、世界の資金の流れに大きな影響力を持つ国際プレーヤーとしてのメジャー金融機関の椅子は限られている。当初、その1位と2位の席には、東京三菱銀行と住友銀行が座ると目されてきた。しかし、統合3行の登場により住友のポジションは相対的に低下した。
 こうした状況の中で、関東・関西にそれぞれ本拠を置く両行は、地域的にも補完が図れ、かつインターネットバンキング、トレーディングというニュービジネスを志向するという意味からも、その思惑は合致していた。そして最終的にさくらの申し入れを住友が受け入れたのである。しかし、今回の住友・さくら両行の合併は、3行統合とは全く別の意味を内包している。それは、日本を代表する旧財閥・企業グループの垣根を超えた融合という点だ。
 3行統合においても、芙蓉グループの中核銀行・富士銀行が参加しているが、同行の山本惠郎頭取が「統合できるなら旧財閥にはこだわらない」と語っているように、3行統合は、非財閥系と弱体化した旧財閥系の統合であり、旧財閥の実質解消を意味した。しかし、今回の合併は、それぞれがいまだ強固な企業グループの中核にあり、この合併の先には、日本経済の在り方そのものを根底から覆す衝撃が秘められている。
 明治以来、日本経済界を形作ってきた旧財閥の垣根を超えたこの動きは、系列企業はもちろんのこと、産業界全体の再編を加速する「新たな大競争時代の幕開け」なのである。

(2)旧財閥・企業グループの融合
 ある都銀首脳の住友・さくら合併の見方はこうだった。
 「元々、三井銀行・太陽銀行・神戸銀行3行による統合銀行であったさくら銀行は、内部に不安定な要素を抱えていた。具体的にいえば、旧神戸銀行の幹部行員たちが反乱分子になりかけていたんだ。現在経営再建に取り組んでいる大手流通のダイエーの支援をさくらは完全にストップしている。地元神戸発祥のダイエーを育ててきたと自負のある旧神戸銀行の幹部行員たちは、それがどうにもやるせない。そうした現さくら首脳の方針に不満を抱くと同時に、なんとかもう一度ダイエー支援を行なうことが彼らの悲願なんだ。そして、そうした彼らの気持ちを理解していたのが、意外にも住友銀行なんだ」
 かつては力まかせの関西商法で悪名を馳せてもいた住友だが、86年の旧平和相互銀行の吸収合併による“東上作戦”で関東系都銀の反感を買い、90年に表面化した戦後最大級の経済事件であるイトマン事件に深く関与し、世の批判を浴びたことを契機に同行は次第に路線変更を行なっていった。東京三菱銀行のドン・伊夫伎一雄相談役と住友のドン・巽外夫特別顧問が個人的に親しく、三菱的なオーソドックスな経営手法を学んでいったという面もあるかもしれない。
 住友銀行とライバル関係にある三和銀行が「欲しいのは、旧三井銀行だけ。旧太陽神戸はいらない」と広言し、あくまで経営の主導権を握ることに固執したのに比べ、住友の対応はあくまで恩情のあるものだったという。
 その結果、今回の合併交渉が具体性を帯びてくるのだが、予兆は既に周辺にもあったのだ。例えば、構造改革を迫られている石油化学業界では、昨年春から三井化学と住友化学工業が共同出資で次世代合成樹脂の生産会社を設立、その後も関連企業による事業統合などを進めている。旧財閥の企業グループを銀行を中心とする同心円として見た場合、周辺に位置する産業界からまず垣根を超えた再編が始動。さらに今回、そのコア部分である中核銀行がその垣根を飛び越えた。そして、その波は再び、中心から周辺へと大きくうねりながら広がろうとしているのだ。

(3)“ウィンブルドン化”が進む
 英国で行なわれるテニスの世界4大大会のひとつである「ウィンブルドン選手権」。歴史と伝統ある大会ながら、地元選手が活躍せず、米国やドイツといった海外選手ばかりが活躍することになぞらえ、自国経済の主役を海外企業に取って代わられる状態を経済界では「ウィンブルドン化する」という。
「そして、まさに今、日本経済には、主役を外資に奪われるウィンブルドン化の危機が迫ろうとしている」(証券アナリスト)
 キーワードは「国際競争の激化」と「規制緩和」だ。
 戦前、旧財閥を中心に富国強兵を行なってきた日本は、戦後の財閥解体により、新たな道を模索することを余儀なくされた。それに代わって「政官財の鉄のトライアングル」が、高度経済成長を後押ししてきたことはいうまでもない。その内実は政治の55年体制、官僚の護送船団方式に代表される規制による保護、そして企業グループという系列化だった。しかし、55年体制が崩壊し、規制緩和が海外から要求され、その熾烈な国際競争の直撃を受けた企業グループは解体・解消の危機に晒されている。
 そうした流れは、例えば、かつての4大証券の一角を占め芙蓉グループの一員だった山一証券の破綻などに象徴されている。バブル経済破綻の後遺症もさることながら、外資系証券会社の攻勢に晒され、最終的にメーンバンクである富士銀行にも見放されたわけだが、そうした構造的危機の可能性を秘めているのは、金融界のみならず流通・ゼネコン・商社を始め、ほぼ全ての産業界に及んでいる。
「三菱系ならキリンビールを飲む」「住友系なら車はマツダ」というように、旧財閥・企業グループ意識は、われわれの実感以上に深く、根強く産業界に根を張っている。そうした極めて強固な社会基盤が崩れ去りつつあるいま、その影響は、旧財閥・企業グループだけではなく、産業界全体に波及することが容易に考えられるのだ。
 今回の住友・さくら合併は、バブル崩壊後、外資の攻勢に防戦一方だった日本企業が、古い垣根をとり払って再結集し、合併・融合という新たな再武装によって反転攻勢を始めようとする号砲に他ならない。


2000/5/22 さくら銀行/住友銀行

さくら銀行と住友銀行との合併契約書の締結について
http://www.smbc.co.jp/news/news_back/news_saku/topics/newsrls/pdf/000523.pdf

 株式会社さくら銀行(頭取:岡田明重)と株式会社住友銀行(頭取:西川善文)は、本日、それぞれの取締役会における合併契約書締結の決議を経て、合併契約書に調印いたしましたので、ここにお知らせいたします。

1.合併を必要とする理由
 21世紀を目前に控え、経済・金融のグローバル化及び日本版ビッグバンの進展によって、邦銀間はもとより、業界及び国境の壁を越えた金融機関の競争が激化してきております。また、情報通信技術(IT)の飛躍的向上が銀行業務に大きな変革をもたらしており、お客様の利便性を確保し、そのニーズに的確に対応していくためには、ITの活用が必須条件となってきております。更に、銀行に働く役職員においても職業観の変化・多様化が進んでおり、自由闊達で自己実現が可能な職場環境を提供していくことが、ますます重要な課題となってきております。
 このような環境の中、両行は、互いの強固な顧客基盤と高度な金融ソリューション力、充実した商品・サービス提供ネットワーク等を統合・整備し、併せて、経営の合理化を一段と進める一方で戦略的なシステム投資を積極化することにより、従来以上に付加価値の高い金融サービスをお客様に提供し、もって株主の皆様のご期待に応えるためには、早期に合併を実現することにより、新時代に相応しい新しい銀行をつくることが必要であるとの認識に至りました。

2.合併契約書の要旨

(1) 合併の方法
 法手続上、住友銀行は存続し、さくら銀行は解散する。
(2) 商  号
 合併新銀行は「株式会社三井住友銀行」と称し、英文ではSumitomo Mitsui Banking Corporation と表示する。
(3) 本  店
 東京都千代田区(現さくら銀行東京営業部所在地)に置く。
(4) 発行する株式の総数
 合併新銀行の発行する株式の総数は、167 億8,000 万株とする。
(5) 合併比率および優先株式の割当比率
 さくら銀行の普通株式1株につき、合併新銀行の普通株式0.6株を割当交付する。当該比率については、J.P.モルガン証券会社がさくら銀行に対して、ゴールドマン・サックス証券会社が住友銀行に対して、公正妥当であるとの意見書を提出している。
 また、さくら銀行の第二回優先株式1株につき合併新銀行の第六種優先株式1株、さくら銀行の第三回優先株式(第二種)1株につき合併新銀行の第五種優先株式1株を割当交付する。
   
  (第五種・第六種優先株式の概要) 略
   
(6) 増加すべき資本金
 合併により増加すべき資本金は、523,851,903,250 円とする。
 ただし、さくら銀行が発行した転換社債につき、平成12年5月1日以降合併期日前日までに普通株式への転換がなされた場合は、転換により発行された株式数に0.6 を乗じ、さらに50 円を乗じた金額を増額する。
(7) 新株引受権(ストックオプション)の引継
 合併新銀行は、さくら銀行が取締役および使用人との間で締結した新株引受権(ストックオプション)付与契約に関する権利義務の一切を、合併期日において承継する。
 新株引受権の目的たる株式の数および発行価額については、合併比率に応じて調整された数および価額に変更されるものとする。
(8) 合併交付金
 合併期日前日のさくら銀行の普通株主に対し1株当たり6円、第二回優先株主に対して1株当たり15円、第三回(第二種)優先株主に対し1株当たり13円70銭の合併交付金を、平成12年4月1日から平成13年3月31日に至る期間の利益配当金に代えて、それぞれ支払う。
 ただし、さくら銀行が中間配当金を支払ったときは、当該各種類株式につき支払われた中間配当金の額を控除した額を支払う。
(9) 合併に際して就任する取締役および監査役 略
   
  以下略

2000/6/15 TV-Tokyo

あさひが3行統合離脱
http://www.tv-tokyo.co.jp/wbs/2000/06/15/news_day/n1.html

相次ぐ再編劇で、4大グループにまとまるかに見えた大手銀行だったが・・・
三和・あさひ・東海グループのあさひ銀行が、きょう突然・・・
あさひの離脱が銀行再編劇に、新たな波紋を投げかける!

 ようやく合併や統合の大きな波がおさまったかに見えた銀行業界に再び衝撃が走りました。今年3月に事業統合を発表していた三和銀行と東海銀行、それにあさひ銀行の3行は今日、あさひ銀行が統合から離脱することと、三和銀行と東海銀行が2002年春に合併することをそれぞれ発表しました。総資産が100兆円を超す巨大金融グループ、「三和東海あさひ連合」は発表から3ヵ月で幻に終わりました。
 三和・東海・あさひの3行は3月、共同持ち株会社の下に3行がぶら下がる形での事業統合で合意しました。しかし4月ごろから、3行合併による統合を主張しはじめた三和・東海と持ち株会社方式にこだわったあさひの間に溝ができ、交渉は行き詰まりました。
 結局あさひはおとといの13日、三和と東海の両行に合意解消を通告し、電撃的離脱が決まりました。
 あさひ銀行は今後、大手の地方銀行などとの新たな提携を探るとしていますが、明確な戦略はまだ白紙です。一方、三和と東海の両行は当面2行での合併の実現へ全力を尽くす構えです。


2000/3/14 共同通信

地銀参加に期待感表明 3都銀統合で頭取会見
http://news.kyodo.co.jp/kikaku/kinyuu/kinyuu.html#kiji315%2098

 三和銀行の室町鐘緒頭取、東海銀行の小笠原日出男頭取、あさひ銀行の伊藤竜郎頭取は14日、東京都内で記者会見し、2001年4月に共同持ち株会社を設立、経営を統合することで基本合意したと正式発表した。あさひ銀の伊藤頭取は、今後三行統合に地域金融機関が合流することへの期待感を表明。当面三行体制となるリテール(小口)向け業務は、再編するかどうかを04年までにあらためて検討するとした。

 三行は発表に先立ち、それぞれ臨時取締役会を開き統合を決定。東海銀とあさひ銀の間で既に実施している現金自動預払機(ATM)の相互無料開放も三行間で01年4月の統合前をめどに実現する。

 伊藤頭取は「オープンなシステムで地銀の参加も良いとしてきた方針は不変」と述べ、当初の東海・あさひ連合の方針通り地域金融機関の参加を呼び掛けていく考えを示した。

 02年春の大企業向けなどの子会社設立後も三行体制が続くリテール分野の再編成は「地域別に再編するのがいいかどうか、02年から2年程度かけて検討する」と述べた。

 当初、東海・あさひ連合への参加を模索していた大和銀行との今後の関係について東海銀の小笠原頭取が「大和銀は大阪の地銀再編に活躍し、時間がかかっている」と指摘、大和銀が全面参加する可能性は当面小さいとの見方を示した。

 海外での業務展開については室町頭取が「取引先との関係も東海銀行との統合で強化される」とした上で、アジアを中心に戦略を強化する姿勢を強調した。

 三行計で年間約1100億円に上る情報技術(IT)投資は、統合で300億―500億円程度の節減を見込む。三行の営業基盤である首都圏、中部圏、関西圏の店舗戦略は重複店の統廃合を含め見直していく。

 信託部門では東洋信託銀行と東海信託銀行、あさひ信託銀行の統合も検討。証券分野ではつばさ証券(4月発足)や東海丸万証券など傘下の証券会社を一つにする方針だ。


2002/6

三和・東海銀が合併を正式発表
http://www.asahi-net.or.jp/~tu3s-uehr/meiji-era02.htm

 来年4月に経営統合する計画を進めていた三和銀行、東海銀行、あさひ銀行の3行は15日、統合計画からあさひ銀行が離脱することを発表した。統合見送りを受けて三和、東海の両行は同日、2002年4月をめどに持ち株会社のもとで合併する方針を発表。三和と親密な東洋信託銀行も加わり、持ち株会社のもとでの3行合併を目指すことになった。
あさひ銀行は、首都圏に基盤を置く地方銀行最大手の横浜銀行や千葉銀行を対象に持ち株による経営統合の検討を始める。

 三和、東海、あさひの3行は今年3月、持ち株会社のもとで経営統合する計画を発表していた。だが、統合形態をめぐって、合併を主張する三和、東海と経営の独自性を保つことにこだわったあさひが対立し、あさひが離脱することになった。

 あさひ銀行は今後、横浜、千葉などの有力地銀を対象に経営統合を含めた提携策を早急に詰める。あさひの伊藤龍郎頭取は、具体的な行名は挙げなかったが、「有力な地域金融機関と広範な話し合いをしている。手ごたえは十分に感じている」と意気込みを示した。

 あさひの離脱を受けて同日会見した三和の室町鐘緒頭取、東海の小笠原日出男頭取は、両行で設立した持ち株会社の傘下で合併する方針を正式に発表した。室町頭取は「東洋信託銀行は親しい関係にあり、強化していきたい」と述べ、今後、3行の合併へ向けて協議を始める意向を示した。あさひが抜けたものの、新銀行の総資産を合計すると82兆円を超える。来年4月に誕生するみずほフィナンシャルグループ、三井住友銀行、三菱東京フィナンシャルグループに次いで4大銀行の一角を占める規模になる。

 三和・東海などの新銀行は、近畿や首都圏に強い三和、東海地区に強い東海と、地域的な営業基盤を互いに補完し、企業向けの大口取引や国際業務、信託業務を一本化することで合理化効果を狙う。室町頭取は「両方にとってやりやすく有効な方向になった」と3行統合の入れ替わり劇を評した。


平成13年4月5日 あさひ銀行/東京三菱銀行

あさひ銀行と東京三菱銀行との海外業務に関る業務提携の検討開始について
http://www.btm.co.jp/press/news2001/pdf/news132.pdf

 株式会社あさひ銀行(頭取伊藤龍郎)と株式会社東京三菱銀行(頭取三木繁光)は、海外業務に係る提携について具体的検討を開始することで、本日、合意いたしました。
 今後、両行は、あさひ銀行の海外拠点におけるお客様との取引に関して協力関係を構築することを目的として、以下の事項について、検討を進めてまいります。

@ あさひ銀行が、その海外拠点を廃止するに際し、あさひ銀行の海外拠点において行っている業務を東京三菱銀行の海外拠点に移管すること
A あさひ銀行のお客様が、あさひ銀行の海外拠点廃止後、海外における取引を希望される場合、あさひ銀行はそのお客様を東京三菱銀行に紹介すること
B その他、あさひ銀行の海外拠点廃止に伴い、あさひ銀行が必要とする機能を東京三菱銀行が提供すること

 


2001/9/7 TV-Tokyo

あさひ銀 大和銀 経営統合へ
http://www.tv-tokyo.co.jp/wbs/2001/09/07/news_day/n2.html

 メガバンク時代、地域密着を目指して経営統合に動き出しました。
 あさひ銀行が大和銀行に対して、経営統合を申し入れたことが明らかになりました。大和銀行が作る持ち株会社にあさひ銀行が参加する方向で調整しています。
 大和銀行は先月近畿銀行や奈良銀行とともに金融持ち株会社を作ることを発表していますが、それにあさひ銀行が参加し、東京と大阪の地域連合の金融機関を目指します。大和銀行が分割する信託部門への出資も検討中です。
 現在はこのように4大金融グループに分かれていますが、あさひ銀行は当初参加する予定だったUFJに加わりませんでした。
 また、大和銀行も関西地区のリテール銀行として持ち株会社化する予定でした。今回この両者が統合に向けて動き出したということです。

 


2002/3/1 大和銀ホールディングス                あさひ経緯

株式会社あさひ銀行との経営統合について
http://www.resona-hd.co.jp/ir/pdf/i_01/140301_1a.pdf

 株式会社大和銀ホールディングス(社長勝田泰久)は、本日、株式交換により、株式会社あさひ銀行(頭取梁瀬行雄)との経営統合を行いました。この結果、あさひ銀行は当社の完全子会社となりました。
 今般の経営統合後の当社概要、株式交換に伴う当社およびあさひ銀行の主要株主の異動は別紙のとおりです。

(別紙)
T.統合後の当社の概要  平成14 年3 月1 日現在

  1. 商号  : 株式会社大和銀ホールディングス
(英文名称「Daiwa Bank Holdings,Inc.」)
  2. 所在地   大阪市中央区備後町2丁目2番1号
  3. 資本金   7,200億円
  4.従業員数   386名(執行役員を除く)
  5. 事業の内容   銀行等子会社の経営管理、ならびにそれに付帯する業務
  6. 取締役、監査役および執行役員 略
       
 以下 略

2001年9月

「あさひ銀行」明日なき漂流 (「選択」2001年9月号)
〜 頼みの東京三菱も「救済」断る
http://www.asyura.com/sora/hasan1/msg/436.html

 かつてこれほど醜態を晒した都市銀行があっただろうか。自らの窮状から脱出したいがために、合併先を求めて右往左往し、手当たり次第に経営統合をもちかける。あさひ銀行の漂流ぶりは今や金融界の嘲笑を買うばかりである。ほぼ1年前、大見得を切って三和銀行、東海銀行との三行統合を離脱したあさひ銀は、金融危機の波に呑まれて「沈没寸前」の様相を呈している。
 「包括的な資本提携をお願いしたい」。7月末、あさひ銀の伊藤龍郎頭取は東京・丸の内の東京三菱銀行本店を訪ねて同行の三木繁光頭取に、提携を申し入れた。あさひ銀に対する数百億円の資本参加と、個人・中小企業向けビジネスなどのリテール(小口金融取引)部門での業務提携を提案したという。しかし、「三木頭取はその場で交渉を断った」(東京三菱銀関係者)。

相手選ばず片思いの「ピエロ」
 あさひ銀にとって、東京三菱銀は「最後の望みの綱だった」(あさひ銀幹部)とされる。あさひ銀は東京三菱銀との統合をにらんで、いくつかの布石を打ってきたつもりだった。あさひ銀は
海外業務からの全面撤退を決める際、東京三菱銀に海外顧客向けサービスをすべて委託することを決定し、この分野で提携にこぎつけた。
 「脈ありだ」とあさひ銀は思い込んだに違いない。東京三菱銀の役員たちからは「ATM(現金自動預払機)や店舗交換など、提携範囲拡大の意向すら聞こえてきた」とあさひ銀幹部は言う。東京三菱銀は、経営体力こそ他の大手銀行グループをリードしているとは言え、顧客基盤では三井住友銀行やみずほフィナンシャルグループに大きく後れをとっている。
 とりわけ個人を中心にリテール分野は、かねてから最大の弱点だと指摘されている。「リテールバンク」を標榜した戦略で一部アナリストらから一定の評価を得ていたあさひ銀との経営統合が実現すれば、そうした弱点をカバーできると考えても不思議ではない。
 だが、東京三菱銀は交渉を事実上、打ち切った。
 あさひ銀が振られたのは東京三菱銀だけではない。「1年前から、あさひ銀の一方的な“片思い”が続いている」(金融庁関係者)のが横浜銀行だ。
 かつて日銀は、あさひ銀行に
横浜銀行・千葉銀行を加えた「三行統合」を画策したことがあった。いわゆる「首都圏銀行」構想である。
 あさひ銀の思惑はこの構想の延長にある。かつては大蔵事務次官経験者が頭取ポストを占める横浜銀の力を恐れ、加えて自力での神奈川、千葉地域への進出に対する過度の自信から「首都圏銀行」の実現を自らご破算にしたという。「ところが一転、窮地に陥って話を蒸し返してきた」(横浜銀関係者)というのだ。
 三和銀、東海銀との統合から離脱を発表した昨年7月、あさひ銀は金融庁に対して「
横浜銀、千葉銀との提携を視野に入れていますので安心してください」と説明し、統合破棄を強行した。
 ところが、これはあさひ銀の勝手な思い込みに過ぎなかったことがほどなく判明する。千葉銀からはその直後に、にべもなく振られた。横浜銀とは中小企業向けローンの分野で商品開発や顧客紹介などの協力まで合意したものの、経営統合については、平沢貞昭会長から「全く考えていない」ときっぱり断られたとされる。
 東京三菱銀、横浜銀との「虚しい提携交渉」を進めながら、あさひ銀はあおぞら銀行とも交渉を始める。あおぞら銀は98年12月に経営破綻した旧日本債券信用銀行である。今年6月初め、あさひ銀はあおぞら銀を買収して経営権を握るソフトバンク、オリックスを訪れ、共同持ち株会社の設立を申し入れたと伝えられるが、これも水泡に帰す。一方、三井住友銀行とは一定の距離を置いての生き残りを目指す住友信託銀行にも、あさひ銀は資本参加を要請したが、本格交渉に発展する気配はない。あさひ銀がこんなピエロを演じているのは「国有化の淵」にいるからである。

熾烈をきわめる内部抗争

 2001年3月期のあさひ銀の決算は、業務純益こそ前期比微増の1667億円だったが、不良債権処理後の最終損益は98億円の赤字に転落。不良債権残高も連結ベースで1兆4005億円と前期に比べて4923億円増加し、貸出金に占める不良債権の比率は6.79%と一年前より2.3ポイントも上昇した。経営内容は着実に悪化していることがわかる。
 しかしこのことだけ見れば、多くの都市銀行とさほど変わらない。あさひ銀の最大の問題は、98年3月、99年3月と合計で6千億円の注入を受けた公的資金(優先株など)の配当が2002年3月期に、早くもできそうにない状態になりつつあることである。
 2001年3月期のあさひ銀の配当原資である剰余金は418億円。都市銀行では大和銀行、東海銀行よりは多いものの、保有している有価証券の含み損を加味すれば、実質的には3百億円程度のマイナスだった。今期から銀行にも時価会計が導入され、有価証券の含み損の約60%分が自己資本、つまり剰余金から減額される。「公的資金の配当は、株価の大幅な上昇でもない限り無理」(銀行アナリスト)という。
 あさひ銀より剰余金が少ない東海銀は、有価証券の含み損があさひ銀より小さいうえ、三和銀との合併によって救われる見通しが立っている。あさひ銀より経営が危ういと見られてきた大和銀は、8月初旬に発表した「近畿大阪銀行、奈良銀行との共同持ち株会社」の設立によって、「まやかしではあるが、配当のめどは立った」(大手銀首脳)。銀行は銀行法によって法定準備金を資本金と同額に確保しておかなければならない。しかし「銀行持ち株会社は銀行ではない」との理由から、法定準備金を資本金の4分の1に減らして、剰余金を積み増せる「特例措置」を金融庁が認めたからである。
 あさひ銀も大和銀と同様、「持ち株会社の設立に向けて動き出した」と幹部は話す。ところが「全く進まない」という。「営業地域を東京、埼玉、それ以外の3つに分割する有力案が潰されたからだ」という。あさひ銀で、今も隠然たる力をもつ横手幸助元頭取(特別顧問)が強力に反対しているためだとされる。内部関係者によると、「埼玉地域を独立させれば、旧協和銀の収益力の弱さが露呈し、旧埼玉銀勢が勢いを増して自らの地位を揺るがしかねないと怯えている」という。「伊藤頭取以下、旧協和銀の人たちは、誰も横手元頭取に逆らえない」(あさひ銀幹部)。あさひ銀の「ドン」横手元頭取の頑迷ぶりにより、持ち株会社設立による“急場しのぎ”すらできない体たらくなのだ。
 あさひ銀の旧協和銀、旧埼玉銀の内部抗争は熾烈だ。7月中旬、金融界を驚かせる人事が発表された。あさひ銀の経営の要とも言うべき久保哲男・執行役員企画部長が突然、企画部長職を解かれたのである。
 「久保さんは三和銀、東海銀との経営統合からの離脱を先導したニューリーダーだった人物。あさひ銀の再編をめぐって、旧協和銀OBと旧埼玉銀勢の板挟みで悩んでいた」(大手銀幹部)という話が伝わってくる。解職の表向きの理由は「体調不良」で、あさひ銀は「銀行内部の対立で詰め腹を切らされたなどということはない」と説明する。しかし金融界では「久保氏は横浜銀との統合交渉の責任者だった。しかし旧埼玉銀勢が東京三菱銀との交渉を進めようとしたため、路線対立が鮮明になり、責任をとらされたらしい」と見ている。
 旧協和銀出身のある有力OBは「旧埼玉銀はしょせん田舎地銀。旧埼玉銀の役員は提携交渉もろくに進められない」と周囲に対して露骨に不満を示す。明確な経営戦略を打ち出せないのは、旧埼玉銀の人材不足と、危機感の欠如と指摘し、旧協和銀は独自に再編交渉に乗り出している。かねてから関係の深い日興證券や第一生命保険にあさひ銀への出資を求め、水面下で独自の再編を模索している。
 ところがこのことが旧埼玉銀を刺激する。「2年前に東海銀との提携を発表した直後にも、旧協和銀勢は東海銀に相談もなく、常陽、群馬、千葉の各地銀に再編話を持ち歩き、東海銀の不信感を買った」(あさひ銀幹部)。
 「東海銀に主導権を握られることを恐れた旧協和銀が、独自に動いた」わけだ。こうした動きが東海銀との提携を遅らせ、しまいには三和銀の参画という、あさひ銀にとっては好ましくない事態を招き、あげくの果ては離脱につながったと嘆く。旧埼玉銀は「旧協和銀が何もかもぶち壊す」との怨念を抱くほどである。
 あちこちの金融機関と交渉し、すべてが表面化してしまうのは、こうした内部対立が原因と見る向きは多い。
「あさひ銀は、提携話を持ち込むたびに、『その話は内部でまとまった話なのか』と逆に聞かれ、立ち往生している」(金融筋)という有様だ。


どこも尻込みする問題企業群

 あさひ銀の提携が進まない原因は、経営内部の抗争だけが原因ではない。最大の問題は不良債権問題である。
 金融界で、「あさひ銀の五つの爆弾」と呼ばれている問題企業がある。青木建設、昭和リース、共同抵当証券、不二サッシ、地産グループである。
 青木建設は言うまでもなく、「最も危険なゼネコン」と囁かれている不良企業の代表格のような存在だ。金融庁は昨年暮れ、あさひ銀に対する立ち入り検査で、青木建設の査定を槍玉にあげた。あさひ銀の青木建設向け融資残高は昨年9月時点で880億円だが、金融庁はこの貸し出しをすべて「破綻懸念先」に分類すべきだと主張したという。青木建設の再建は、二十年間かけて借入金を返済し、経営を立て直す計画。しかし国内受注は減少の一途で、「再建にはもう一度銀行による債権放棄以外に手立てはない」という切羽詰まった状況にある。
 あさひ銀の関連会社の昭和リースは、これまでにあさひ銀が多額の支援を実施してきたものの、なお有利子負債を約1兆円抱える問題企業。共同抵当証券は日興證券が今年3月に保有株式をあさひ銀に売却したため、あさひ銀の連結対象になった。日興證券幹部によると「あさひ銀主導で巨額の不良債権を抱えており、いずれ清算となれば1千億円近い損失が表面化すると見られている」。不二サッシ、地産グループも経営不振が続き、あさひ銀の「隠れ不良債権」とされている。このほか昭和地所、大栄総合開発、大栄不動産などにもあさひ銀は6百億〜8百億円もの融資残があり、今後の経営を大きく揺さぶるに違いない。「東京三菱銀があさひ銀との統合を避けたのも、経営内容を詳細に調べ、支えきれないとの結論が出ていた」からだと囁かれている。
 ここに来てより深刻な問題だと指摘されているのが旧埼玉銀の取引先である松栄建設、松栄不動産との取引だ。関係者によれば、同社グループは埼玉地場の大手ゼネコンで、借入金は総額1500億円あるが、大宮西口開発事業が地元の反対で事実上凍結され、2百億円もの債務超過に陥っているという。
 あさひ銀の伊藤頭取は8月初旬、藁をも掴む思いで
大和銀に経営統合を申し入れたという。まさに「手当たり次第の再編詣で」だ。大和銀は明確な返事はしていないが、あさひ銀の内部抗争や不良債権問題がくすぶる限り、再編は難しいと見られている。
 「一度、国有化されて今の経営陣を一掃しない限り、あさひ銀と組む銀行はないだろう」。ある大手銀の頭取はこう話す。漂流するあさひ銀に未来は見えない。