1999年8月20日 第一勧業銀行/富士銀行/日本興業銀行

第一勧業銀行、富士銀行、日本興業銀行の全面的統合について
− 我が国を代表する新しい総合金融グループの結成 −
http://www.mizuho-fg.co.jp/release/2001/news/news_990820.html

 株式会社第一勧業銀行(頭取 杉田力之)、株式会社富士銀行(頭取 山本惠朗)、株式会社日本興業銀行(頭取 西村正雄)は、今般、関係当局の認可と株主の承認を前提として、全面 的な統合により、新しい総合金融グループを結成することについて合意いたしました。

1. 統合の趣旨
 経済がますますグローバル化し、金融ビッグバンが本格的に進展する中で、金融技術・情報通 信技術の著しい発達等の環境変化も加わり、我が国の金融機関経営は新たな時代に入ろうとしております。こうした中、我が国金融機関が、ボーダーレス化する厳しい競争に勝ち残り、国際的にも一流プレーヤーとしての地位 を確立するためには、金融ニーズに高い次元で的確、迅速に応える「顧客対応力」と、強固な財務体質に支えられた「信用力」の二つの要素を兼ね備える必要があります。
 また、我が国の金融システムを安定化させ、経済の活性化と国際競争力の強化を図るためには、21世紀の我が国金融業の強力な担い手が求められております。
 このような環境認識に立ち、3行は全面的な統合を通じ、我が国の金融システムを支える中心的な存在として、真に国民から信頼される総合金融グループを結成することで合意に達しました。
 新しい総合金融グループは、経営効率の向上と事業分野、機能面 における特色・強みの結合を実現することにより、グローバルな金融市場において、我が国を代表し、世界の五指に入る強力なプレーヤーとなることを目指します。また、金融サービスの提供にあたっては、お客さま・お取引先との「心のふれあい」を大切にし、常にお客さま本位 の経営姿勢を徹底してまいります。

今回の統合の基本精神は以下の5つであります。
(1) お客さま・お取引先に最高水準の総合金融サービスを提供する
(2) 株主、市場から高く評価され、我が国を代表するトップバンクとして、広く社会から信頼される
(3) 行員にとって働き甲斐があり魅力に富んだ職場にする
(4) 事業分野、機能について、それぞれの特色・強みを最大限に発揮するとともに、
   徹底した合理化、効率化により統合の効果 を最大限に追求する
(5) 各行の既往文化に拘らない新しい風土・企業文化を持った金融グループを創造する

 統合に当たり3行は相互信頼と対等の精神を持って、21世紀に向けて飛翔する新しい総合金融グループを創造すべく、不退転の心構えで臨んでまいります 。

2. 統合の概要
 新しい総合金融グループは、共同で設立する持株会社の下で、一体運営を行い、最終的には、顧客セグメント別 ・機能別の法的分社経営を行います。

1. 統合形態及びスケジュール………別紙ご参照
 銀行部門については、【第1ステップ】として2000年秋に、3行は株式移転により共同で持株会社を設立し、その傘下に入ります。新しい総合金融グループは顧客セグメント別 ・機能別に、3行横断的なビジネスユニット制を採用し、持株会社がグループの一体運営を行ないます。 【最終形】においては、2002年春を目処に、会社分割法制を活用して、傘下銀行を統合・再編し、持株会社の下で、顧客セグメント別 の法的分社経営を行うことを目指します。 金融関連会社については、まず第1ステップでホールセール証券(第一勧業証券株式会社、富士証券株式会社、興銀証券株式会社)の合併を行い、最終形では持株会社の直接傘下に入れた上で、銀行のインベストメントバンキング部門も統合いたします。その他の金融関連会社についても、統合の方向で検討を進めてまいります。

2. 持株会社の名称および所在地
 今後、統合の基本精神を踏まえて決定いたします。

3. 持株会社の代表者
 3行の頭取が共同して経営の最高責任を担い、持株会社の会長、社長に就任いたします。 会長(Chairman & Co-CEO) 西村 正雄(日本興業銀行頭取) 会長(Chairman & Co-CEO) 山本 惠朗(富士銀行頭取) 社長(President & Co-CEO) 杉田 力之(第一勧業銀行頭取)

4. 統合比率
 3行は対等の立場で統合され、持株会社設立に当たって発行される株式の割当比率(3行それぞれの株式1株に対して割り当てられる持株会社の株式数)を同等、すなわち1:1:1とすることを目処といたします。但し、最終的な割当比率については、外部機関の評価を踏まえ、3行協議の上決定いたします。

5. 統合準備委員会
 統合に当っては、3行間の具体的な検討・協議の場として統合準備委員会を設置いたします。委員長は第一勧業銀行副頭取 西之原敏州、富士銀行副頭取 小倉利之、日本興業銀行副頭取 奥本洋三といたします。さらに統合準備委員会の下に、分野ごとに専務・常務級の小委員会を設置いたします。

3. 統合効果
 新しい総合金融グループは、重複分野において徹底した合理化・効率化を行う一方、戦略的投資等については積極的に行ってまいります。

1.  拠点については、重複店舗を基本的に統廃合の対象とし、持株会社設立後5年を目処に、150店舗程度の削減を行います。重複する無人店舗も、原則として統合いたします。海外部門については、拠点ごとにできるだけ早めに統廃合いたします。あわせてお客さまの利便性向上の観点から、内外の店舗網等営業チャネルの整備・充実を図ってまいります。
2.  人員については、拠点の統廃合、本部の効率化を推進する一方、戦略分野への重点投入を行い、持株会社設立後5年を目処に、6,000人規模の削減を行います。人事制度については、各行の既存制度に拘らず、各人の専門性と成果 を踏まえた公正な人事制度を構築する、という理念で取組んでまいります。
3.  事務・システムについては早期統合により、コスト削減を図る一方で、戦略的なシステム投資等を積極的に実施し、主要米銀並みのシステム投資(1,500億円程度/年)を行ってまいります。
4.  経費については、拠点の統合、人員効率化、事務・システムの統合等の諸施策の効果 により、持株会社設立後5年を目処に1,000億円程度の削減を行ってまいります。
5.  業務純益については、安定的に1兆円を超える水準を目指します。

 3行が統合された新しい総合金融グループは、我が国を代表する、強力で、中立的かつ開かれた金融グループとして、銀行、証券、資産運用、信託等の分野で、最高の金融サービスを提供することを通 じて、お取引先、株主、関係各位のご期待に応えてまいりたいと考えておりますので、今後ともご支援・ご愛顧賜りますようお願い申し上げます。

 


Weeklypost 2004/8/27号

三井住友銀行によるUFJとの統合提案
http://www.weeklypost.com/jp/040827jp/news/news.html

西川善文・三井住友FG社長
「日本の資本主義がだめになる」
  メガバンク再編で三菱東京に宣戦布告

(1) 空中分解寸前のUFJ
 三菱東京か三井住友か。揺れるUFJは、空中分解の様相すら呈している。
 UFJでは、先の5月、4028億円の赤字決算を引責する形で寺西正司前頭取らグループ首脳が退任し、後任の頭取に沖原隆宗氏が就任したばかりである。だが、三菱東京フィナンシャル・グループとの統合が公になるのと軌を一にして、指導体制は形骸化していった。
 沖原氏は、三菱東京との交渉を秘密裏に進め、交渉の席上に、住友信託と統合を決めていたUFJ信託の関係者を一度も同席させなかった。UFJ信託の統合担当役員は、三菱東京との統合を報道で知った。当日朝からその役員は無断欠勤を続けた。
 事態収拾にはUFJホールディングスの玉越良介社長が動いているが、若手・中堅行員のなかには、7月の人事異動で関西地区から東京へ戻った執行役員を執行部刷新の中心に推す動きも見られる。
 司法も巻き込んでの統合劇の経緯は、前代未聞の一言に尽きる。
 UFJは多くの問題債権に苦しんでいるものの、中部、関西での営業力には定評がある。三菱東京にとっては、単に総資産世界一の看板のみならず、自らの収益力を向上させる契機になると判断したからこそ、統合を受け入れた。さらに、住友信託への売却が決まっていたUFJ信託を合わせて統合できれば、三菱東京傘下の三菱信託が、信託業界で圧倒的優位に立てるという目算もあった。

 これに危機感を募らせたのが三井住友フィナンシャルグループである。三菱東京とUFJの統合が実現すれば、総資産、業務純益ともに大きく水を開けられてしまう。
 三井住友FG・西川善文社長の決断は早かった。
 住友信託が東京地裁に三菱東京とUFJの統合交渉中止の仮処分を申請して認められると、間髪入れずにUFJとの統合申し入れを表明した。
 8月4日、UFJから地裁へ出されていた仮処分の異議申し立ては退けられ、交渉中止の命令が決定(UFJは東京高裁に保全抗告)。UFJが当事者能力を完全に失ったなか、司法は「三菱東京―UFJ」にストップをかけた。


(2) 「ケンカ屋善文」の計算に迫る
 高裁にその場を移す司法判断の結論が出されるのは8月中旬ごろと見込まれる。その結果如何によっては、(1)三菱東京とUFJが全面的に統合、(2)住友信託とUFJ信託が統合、三菱東京とUFJ銀行が統合、(3)三井住友とUFJが統合――の3つのシナリオが考えられる。
 「ケンカ屋善文」の異名をとる西川氏は、緻密な計算の上、統合の舞台に躍り出たといわれる。
 旧住友銀行時代から問題企業の整理に辣腕を振るい、97年に頭取に就任して以降、金融界で常に確固たる存在感を示してきた西川氏が三菱東京へ匕首を突きつけた最大の理由とは何なのか。

――UFJとの統合問題。勝算はあるのか。
西川 まだ確たることはいえませんが、勝算はもちろんあります。どうなるかはこの後の展開次第。

――東京地裁の「統合交渉中止」仮処分が手をあげるきっかけになった?
西川 そうですね。

――三菱東京の後を追っての統合申し込みは、奇手奇策のようにも見えるが。
西川 そうかな。奇策ではありませんよ。私は極めて冷静です。1週間ほど検討した上で結論を出した。

――統合申し入れはあなたひとりの判断か。
西川 もちろん岡田(明重)会長とは相談している。最終的には私の経営者としての判断だ。

――いつの時点からUFJ統合の構想を持っていたのか。
西川 ……(無言)。

――UFJと三菱東京との合意がなければ、三井住友は9月の中間決算後のタイミングでUFJに申し入れたかったのではないかとの指摘もある。
西川 そういうことをあまりいうわけにはいかない。

――UFJは三井住友とは交渉するつもりはないといっている。
西川 そういうしかないでしょう。向こうは(住友信託へのUFJ信託売却で)1回約束を破っているわけだから。

――三井住友とUFJが統合した場合の経営の形は?
西川 まだ固まっているわけではない。

――なぜ、あえて取りに出たのか。
西川 やはり、収益力の問題です。

(3) 決着はゼロか100か

 ――三井住友にとっての統合の意味は?
西川 東海地区は現在、国内でも非常に景気がいい地域です。UFJは同地域に強い。そしてわれわれは、どちらかといえば東海に弱い。十分、弱点を補える統合になる。バランスのいい銀行になると判断した。

――住友信託が統合交渉中止を求める仮処分申請まで行なったのは異例ではないか。
西川 そうでもないと思いますよ。というのも、UFJ信託が住友信託へ売却されることは基本合意されていることでしたし、非常にスムーズに話が進んでいた。それが突然解消されたのだから、ひどい話なんです。明らかに信義則違反ですし、契約社会なのだから決して看過されるべきことではない。住友信託への売却を反故にしておいて、一転、三菱東京と統合するなんていうあんなやり方を許していたら、日本の資本主義はダメになりますよ。

――一般の預金者、国民にとって、UFJはどちらにつくほうがメリットが大きいか。
西川 それはわれわれのほうですよ。コンシューマー(消費者)ビジネスという点ではわれわれのほうが先行している。国民にとってもいい統合になる。

――一部には、三菱東京とUFJの統合に横槍を入れて新銀行を弱体化させることこそが、三井住友が統合申し入れをする真意ではないかと見る向きもある。
西川 そんなことはまったく考えていません。われわれは真正面作戦。別に三菱東京にけんかを売っているわけでもない。堂々と手を挙げるだけです。


(4) 竹中金融庁と本音は一致
 三菱東京の独走に歯止めをかけたい――これが西川氏の本音であることは疑いようがない。三井住友中枢幹部の一人は、西川氏の胸の内をこう分析して見せた。
 「問題が司法の場に持ち込まれ、紛糾していることで三菱東京は大きなリスクを抱え込むことになった。仮にUFJが住友信託との約束を反故にして三菱東京と統合するとなれば、最低600億円ともいわれる和解金の支払い義務が生じる可能性がある。さらに、NY市場に上場している三菱東京には、業務改善命令を受けるような法令遵守に反する企業と組むことについて米国株主から訴訟を起こされるリスクもある。三菱東京がそれらを嫌って統合から降りれば、UFJはおのずとこちらに転がり込む」

 さらに、注目すべきは金融庁の対応だ。金融庁幹部はこんな言い方をした。
 「竹中(平蔵)大臣を始め、庁内には以前からUFJとりそなを組み合わせて健全化するプランがあった。他方で三井住友と組ませる考えもあった。それだけに、三菱東京の唐突な動きには竹中大臣も眉をひそめている。公的資金を返済し、独立志向の強い三菱東京がさらに力を持てば、コントロールが効かなくなるという危惧がある」
 つまり、竹中金融庁と西川氏の“本音”は、三菱東京の力を削ぐという一点で一致しているのだ。
 各行が不良債権処理に区切りをつける来年3月期以降、銀行は、健全性を軸とした競い合いから「収益力競争」へと新しい局面を迎えることになる。
 西川氏の発言は、そうした事態を念頭に置いたものだろうが、「収益力競争」の状況下では、銀行がさらなる利益至上主義に走り、これまで以上に中小・零細企業の切り捨てが断行される恐れがある。それに対する明確なビジョンは、西川氏からも、他のメガバンク首脳からも、これまでに示されていない。