日本経済新聞 2007/7/10
2010年自動車生産台数 中国、日米を逆転も
大手14社、1600万台計画 06年の2.5倍
中国の自動車大手14社が2010年に06年の2.5倍にあたる合計1600万台の生産を計画していることが明らかになった。実現すれば日米を超えて世界最大の生産国になる。内需の拡大を期待し、シェア獲得を狙う各社が外資との合弁も含め、工場の新設を加速させる。ただ、積極的な設備投資が過剰供給を招く可能性もある。
中国では大手14社が国内全体の9割を生産しており、現在は日、米、欧、韓国メーカーとの合弁生産による外国ブランド車が大半を占めている。世界1、2位の日米の生産はそれぞれ年産1100万台強。最近は年数%の増減で推移しているのに対し、3位の中国は同20%以上伸びている。
10年の中国市場は1千万台を超える見込みで、各社は外資との合弁会社だけでなく、自主開発した中国ブランド車を生産する工場の能力も増やし、成長市場でいち早くシェアを獲得する考え。地元経済のけん引役と期待する地方政府が税制や認可で優遇し、増産を後押ししている。
四大大手の第一汽車、上海汽車、東風汽車、長安汽車は10年に年約200万台を目指す。一汽は5月に年20万台の新工場を稼働させた。東風は自主開発した新型車を増やすため70億元(約1100億円)をかけ開発センターをつくる。奇瑞汽車はダイムラークライスラーからの受託生産を決め工場を増強して06年の3倍の百万台へ増やす。
国内市場向けだけではなく、自主開発車を軸に輸出も拡大する。一汽や長城汽車などは小型車や多目的スポーツ車(SUV)をロシアや中東などへ輸出する。06年の輸出は30万台だが、各社の増産計画が実現すれば年600万台前後が輸出される可能性もある。
設備過剰、経営悪化の恐れ
中国の自動車各社の積極的な設備増強は能力を過剰にさせ、国内の価格競争を激しくさせる可能性がある。すでに中国内の生産能力は過剰気味で、国内の販売価格は平均で年率5%前後下がり、各社の利益に打撃を与えている。こうした状況を懸念した中央政府は自動車メーカーに再編を促し、増産などの認可を厳しくする政策を打ち出したが地方ではあまり厳格に適用されている気配がない。
政府は貿易黒字の拡大を抑えるため、7月から全輸出商品の約4割で輸出時の税還付を撤廃、または減らしたが、自動車については輸出の税制優遇に手を付けていない。余った自動車が国内にあふれかえることがないよう輸出を奨励している。
ただ、思惑通りに輸出が増える保証はない。日米欧の自動車メーカーは価格が安い中国車を意識し、価格を下げてきている。値下げ競争激化で各社の利益が減ることで、技術開発に回す資金が足りなくなり、中国車の国際競争力が低下する可能性もある。
中国自動車大手の生産計画(万台) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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