2001/2/15 クラレ
新中期経営計画「G−21」について
“独自技術によるエコフレンドリー企業”を目指して
当社はこの度、2001年度から2005年度の5ヶ年に亘る中期経営計画「G-21」を策定しました。
経営環境と主要課題
企業が世界的な競争の中で勝ち残り、今後も発展して行く条件として、
[1]国際競争力の保持(明確な成長シナリオと資産効率の向上)、
[2]環境への保全的な対応のみならず、環境負荷の低い生産・製品提供・素材調達、
[3]電子情報技術の活用とその発達に伴う新たな成長分野への取組み、
[4]グループ間での価値観・戦略の共有化によるシナジー効果の極大化、
[5]全ステークホルダーに対するバランスの取れた配慮、
が必要な時代であるとの認識に基き当中期計画を作成しました。
当中期経営計画のポイント
「独自技術によるエコフレンドリー企業」を目指します。
:: | ・ | その基本的事業方針として、“国際競争力を有する事業の拡大”“地球環境の維持改善に貢献できる事業の拡大” “世界で独自の存在感が主張できる事業の拡大”という3点を掲げます。 |
・ | 事業運営に際し効率的な経営を進めるため、[1]資本コストを上回るROA(目標値7.0%以上)の必達を目指し、[2]管理指標としてROAとキャッシュフローを重視します。また[3]M&Aの活用を 図るとともに、[4]業績悪化事業に対しては「事業再評価基準」に基づいた判断を行っていきます。 | |
・ | 組織運営については環境変化に迅速に対応し得る企業風土を創成するため、[1]組織のフラット化と大幅な権限委譲を行い、[2]各事業・グループ企業の自立と、[3]価値観・事業戦略の共有化によるグループシナジーの極大化を目指します。また[4]より業績を反映させた処遇制度を構築し、[5]BPRの推進と情報技術活用を行っていきます。 |
基幹事業・戦略領域及び業績イメージ
:: | ・ | 当社の事業領域の中で基幹事業として、世界的な競争力を有する酢ビ・ポバール系事業(ポバール・<エバール>・ビニロン・<クラロンK-II>)、イソプレン系事業(熱可塑性エラストマー・ファインケミカル)、人工皮革事業(<クラリーノ>)を位置付け、強化・拡大を図ります。 |
・ | 以上のプロダクト別戦略に加え、次の戦略領域をマーケット別に設定します。電子情報領域(偏光膜用ビニロンフィルム、高耐熱性樹脂<ジェネスタ>他)、環境フレンドリー領域(アスベスト代替、ガスバリヤー材、塩化ビニル・加硫ゴム代替)、環境事業領域(活性炭、PVAゲル、工業膜)、メディカル領域の4分野です。この分野ではマーケットインの発想に基づいた戦略により拡大を図っていきます。 | |
・ | それらの結果、2005年度の業績イメージは売上高4,600億円、営業利益440億円(2000年度見込み:売上高3,250億円、営業利益220億円)となりますが、この5年間の売上高の増加1,350億円は上記基幹事業と戦略領域で拡大させていきます。その為に積極的な設備投資とその重点配分をおこなうほか、棚卸資産の圧縮を主とする資産の効率化に加え、M&Aなども実施していきます。 |
「G-21」の概要
1.基本的経営戦略:“独自技術によるエコフレンドリー企業”を目指して
(1) 基本事業コンセプト
・ 国際競争力を有する事業の拡大
・ 地球環境の維持改善に貢献できる事業の拡大
・ 世界で独自の存在感が主張できる事業の拡大
(2) 事業運営基準
:: | 1 | 資本コストを上回るROAの必達。 | |
2 | 経営指標としてROAとキャッシュフローの重視。 | ||
3 | M&Aの活用。 | ||
4 | 業績悪化事業に対しての「事業再評価基準」による判断の実施。 |
(3)
組織運営方針(環境変化に迅速に対応する企業風土の創成など)
:: | 1 | 組織のフラット化と大幅な権限委譲の実施。 | |
2 | 各事業・グループ企業の「自立」を指向。(「カンパニー制」導入を目指す) | ||
3 | グループ全体のシナジー極大化。 | ||
4 | 業績をより反映させた処遇制度の構築。 | ||
5 | BPRの推進、情報技術の活用。 |
2.事業戦略:プロダクト別及びマーケット別戦略
(1) プロダクト別戦略
::: | [1] 酢ビ・ポバール系事業 | ||
・ | 酢酸ビニル | :自製比率引上げなどによるコスト削減を図る。 | |
・ | ポバール | :グローバル展開と樹脂から一貫した川下事業の充実を図る。 | |
・ | <エバール> | :一層のグローバル展開と新規用途開発による拡大を図る。 | |
・ | ビニロン・ <クラロンK-II> |
:素材特性を生かした新規事業分野の早期立上げを目指す | |
[2] イソプレン系事業 | |||
・ | 熱可塑性 エラストマー |
:水添系*において質・量ともに世界トップメーカーを目指す。 | |
・ | ファインケミカル | :徹底したコスト削減などによる業績の安定と、成長の見込める 医薬中間体事業の拡大を図る。 |
|
*水添系: 水素を添加することにより、炭素間の二重結合を単結合に換えたスチレン系エラストマー。 これにより通常のスチレン系エラストマーに対し、耐候性・耐熱性が向上している。 | |||
[3] 人工皮革事業 | |||
革新的な生産プロセス改良などの実施、徹底したコスト削減と品質の向上、及び欧米におけるマーケティング力の強化によるトップメーカーとしての競争力回復を図る。 | |||
上記[1] 〜[3] の事業を基幹事業とする。 | |||
[4] ポリエステル事業 | |||
規模、キャッシュフロー、雇用確保などで重要な事業だが、急激な環境変化により業績が悪化している事から、徹底した収益構造改善を必要とする事業と位置付けている。 | |||
[5] アクリル樹脂事業 | |||
ポリマーと高機能加工品を中心とする展開を進める一方、他社とのアライアンスなどを含めたコスト競争力の強化による収益改善を目指す事業と考えている。 | |||
(2)マーケット別戦略 | |||
電子情報・環境フレンドリー・環境関連・メディカルを戦略領域と位置付け、プロダクト別の基幹事業とともに今後の事業拡大の中心とする。 | |||
[1] 電子情報領域 | |||
・ | 液晶偏光膜用ビニロンフィルム、リアプロジェクションTV用オプトスクリーン、電池用セパレーターなどは成長軌道に乗っている事から、市場動向に合わせた積極的な拡大を目指す。 | ||
・ | 高耐熱性樹脂<ジェネスタ>や配線基板用液晶ポリマーフィルム<ベクスター>はグローバルな製品に育成するための事業戦略を推進する。 | ||
・ | キャパシタ用素材は市場ニーズ(自動車用途など)に合った新素材の開発を促進する。 | ||
[2] 環境フレンドリー領域(環境負荷の高い素材を負荷の低い素材へ代替) | |||
・ | ビニロン・<クラロンK-II>のアスベスト代替は欧州中心からグローバルな展開を図る。 | ||
・ | ガスバリアー材は<エバール>を核とし、他のバリアー素材を含めた総合展開を図る。 | ||
・ | 塩化ビニル・加硫ゴム代替は熱可塑性エラストマー<セプトン>を核とし、他のエラストマーを含めた総合展開を図る。 | ||
[3] 環境事業領域(環境の維持改善に寄与する事業) | |||
活性炭、PVAゲル<クラゲール>、及び工業膜では、PVAゲル及び工業膜、活性炭とを組み合せた水処理システムを展開し、拡大を目指す。 | |||
[4]メディカル領域 | |||
歯科材料と人工臓器を拡大する共に、分社化なども含め、事業スタイルに適した組織展開も検討する。 |
3.設備投資
::: | ・ | 5年間の設備投資額総計1,500億円。新増設に65%(内、戦略領域へ85%)投入。
主な新増設投資対象: 酢酸ビニル・ポバール、偏光膜用ビニロンフィルム、欧米の<エバール>、<クラロンK-II>、海外及び国内の熱可塑性エラストマー、環境事業領域(PVAゲル、活性炭など)、電子情報領域(キャパシタ用素材、<ジェネスタ>、オプトスクリーンなど)、メディカル領域(歯科材料) |
・ | 設備投資の他に事業面でシナジー効果のある案件について、M&Aも実施する。 |
4.業績イメージ (億円)
2000年度 2003年度 2005年度 00年度対比 売上高
3,250
3,750
4,600
+1,350
営業利益
220
300
440
+ 220
<前提条件>為替:1US$=105円
・1ユーロ=102円、原油:1バレル=23US$
5.事業ポートフォリオ
基幹事業と戦略領域を合せて重点事業と位置付けその拡大による成長を目指す。
(重複部分は控除しています)
(億円)
2000年度 2003年度 2005年度 00年度対比 重点事業
戦略領域
900
1,300
1,800
+900
+ その他
750
850
1,200
+450
+ 小計
1,650
2,150
3,000
+1,350
その他
1,600
1,600
1,600
0
合計
3,250
3,750
4,600
+1,350
6.資産効率化 (億円)
2000年3月 2006年3月 増減 売上債権
898
1,300
+402
棚卸資産
751
770
+ 19
有形固定資産
1,283
1,700
+417
金融資産
1,827
1,770
▲ 57
その他
279
300
+ 21
総資産
5,038
5,840
+802
・特に棚卸資産を現状の2.8ヶ月から2ヶ月以下に圧縮。
(金融資産は横這いと見ていますが、M&Aなどに活用し減少する可能性があります)
7.ROA(総資産営業利益率) 目標値:2005年度 7%以上
8.研究開発費:5年間の累計 750億円 (売上高の約4%)
9:環境中期計画:
下記をグループ(当社及び国内18社)の削減目標として設定し、達成に向け活動を進める。
2005年度目標(1999年度実績対比)
[1]有害化学物質排出量の90%削減
[2]産業廃棄物外部処分量の90%削減
[3]廃棄物有効利用率の20ポイント増加(60%→80%)
[4]エネルギー使用効率の毎年1%向上
10.全社施策
[1]
グループ企業の統廃合とカンパニー制の導入を目指す。
(目標:2年以内に実施)
[2]
本社間接部門のスリム化と「クラレ事務センター」の設立、分社化を行う。
[3] 調達・販売両面での e‐コマースの活用を推進する。