平成13年10月4日  三菱化学株式会社

[今後の経営対策について]

 三菱化学株式会社(本社:東京都千代田区 社長:正野寛治)は、極めて厳しい経営状況を踏まえ、来期復配するとともに、三菱化学グループの持続可能な成長を軌道に乗せるため、当面の収益向上対策を講じ、加えてグループの事業構造改革とグループ経営体制の強化を図ることといたします。

1. 事業構造改革(各事業の位置付けと方向性の見直し)

  当社グループの今後の収益力確保と成長のため、グループの事業を大きく次の3つの分野に分け、各分野についてその位置付けと方向性を見直すこととした。

  (1) 石油化学事業
   -1 環境認識

 石油化学事業は、資産・人員とも当社グループ最大のセグメントであり、このセグメントの抜本的な競争力強化は、三菱化学グループにとって喫緊の課題である。日本の石化事業の今後については、内需の伸びが期待できない中、輸出の激減や輸入の急増等、より一層厳しい状況が予想され、国内でのエチレンの生産量は、大幅に縮小していくものと考えている。

   -2 エチレンセンター(オレフィン・アロマ)

 石化事業の川上にあたるエチレン、プロピレン、ベンゼン等の石化基礎原料は、-1の環境認識のもと、もはや自助努力だけでは限界があり、生き残りを賭けた競争力強化を図るため、国内外同業他社との様々な提携を、分社化も選択肢の一つとして、柔軟且つ積極的に進める。

   -3 石化誘導品

 誘導品分野は、保有する事業の中で、技術、マーケット等における優位性の観点から、世界的競争力があると考えるもの及び機能化学品、機能材料等他の事業分野における展開を支えるものを個々に選別し、これらについては、他社との提携を含めさらなる競争力強化、収益拡大を追求する。

  (2) 医薬及びその関連事業
   -1 位置付け

 「成長」と「収益」を両立させた戦略を堅持し、三菱化学グループの重要な柱としての位置付けを今後とも保持する。

   -2 三菱ウェルファーマ(株)

 10月1日付で、ウェルファイド(株)と三菱東京製薬(株)の合併により「三菱ウェルファーマ(株)」が発足した。
 世界で評価される国際的創薬企業を目指し、創薬力及び営業力の強化、海外展開を積極的に推進していく。本年6月販売開始した脳保護剤「ラジカット」は、順調に売り上げを伸ばしているが、これに続くパイプラインを、中枢神経系、脳・循環系、免疫・アレルギー、血漿蛋白などの分野を中心に、国内、海外で充実させ、安定した収益拡大を図る。パイプラインの主要品目は以下の通り。

・「アルブレック」 (低蛋白血症治療薬)
・FTY720 (腎移植、免疫抑制剤)
・MCC-135 (心疾患治療薬)
・MCC-555 (U型糖尿病治療薬)

  -3 三菱化学生命科学研究所

  三菱化学生命科学研究所は、本年発足30周年を迎えたが、今後とも基礎研究を継続していくとともに、本年4月、事業化研究を推進するため、同研究所内に「トランスレイショナル研究部」を設置し、三菱化学等の研究者との共同研究を推進している。当社は、同研究部の活動を通じ、三菱化学生命科学研究所においてこの30年間にわたり蓄積してきた基礎研究の成果を、サイエンスの視点から実用技術に向けブラッシュアップし、早期にビジネスに結び付けていく。

   -4 新規ビジネスの創出

 ゲノム科学、蛋白合成技術等、三菱化学生命科学研究所を始め、三菱化学グループが保有し、世界に通用する基礎研究知見、バイオテクノロジーの研究成果、知的財産等を活かし、ヒューマンヘルスケア分野での新規ビジネスを創出する。
  中でもゲノム創薬においては、三菱化学グループの研究開発に富士通(株)のバイオ・インフォマティクスを始めとするインフォメーション・テクノロジーを効果的に融合させるべく、既に両社が協力し推進中であるが、事業形態の詰めの段階にある。

   -5 研究・技術成果のビジネス展開

 研究・技術成果をビジネスに結び付けていくに当たっては、三菱ウェルファーマ(株)(製薬)、(株)三菱化学ビーシーエル(臨床検査)、三菱化学メディカル(株)(診断薬、診断装置)、(株)三菱化学安全科学研究所(前臨床試験)等のグループ各社で事業展開を進めていく他、外部とのアライアンス((株)ジェー・ジー・エス等)、ライセンス・ビジネス等幅広い展開を図っていく。

  (3) 機能化学品、機能材料、炭素アグリ、情報電子事業
   -1 Designed Specialty Chemicals へのシフト

 従来の製品主導型のビジネス(既に規格の決まった製品の販売)から、お客様のニーズ・要望に合致した解決策を提供する、いわゆるソリューション型ビジネスへの転換を強力に推進する。
 三菱化学グループの持つ総合的技術力をもとに、お客様が必要とする機能を具体的に素材上にデザインし、サービスを付加した製品、すなわちDesigned Specialty Chemicals、Designed Specialty Polymers、そしてこれらを複合化した素材・部材を提供する。この戦略に基づき、ソリューション提供の可能性、マーケットの成長性、競争優位等の観点から、これらの事業の「選択と集中」を進め、再編成する。

   -2 新しい事業領域への展開

 研究・技術開発の段階からビジネス展開を念頭に置き、研究テーマの選択、事業化を進めていく。また、外部との共同研究も積極的に行っていく。
 現在既に着手しているものとしては、フラーレンについて三菱商事(株)と合弁事業を取り進めている他、カリフォルニア大学サンタバーバラ校と先端機能材料、固体照明・ディスプレー等の分野で共同研究を行っている。*

*例
・ 先端的なオプトエレクトロニクス材料・デバイスの新規デザイン
・ 有機半導体、EL(エレクトロルミネッセンス)、LED(発光ダイオード)、
  TFT(薄膜トランジスタ)、レーザー及び光通信用材料
・ バイオ材料及びバイオセンサー
・ ナノテクノロジー
・ ナノレベルの高度精密生産技術
・ 族化合物半導体 等

   -3 テクニカル・アドバイザリー・ボードの設置

 以上の事業戦略の基盤を成すグループの研究・技術開発については、第三者である、外部の専門家から客観的な評価を受けることが必要である。
 そのため、本年年初より、グループ内に「テクニカル・アドバイザリー・ボード(TAB)」を設け、先端分野の研究・技術開発について、第一人者の視点から、適切な評価、アドバイスを得ることとした。
 TABには、表面ナノテクノロジー、ハイテク生産技術、Designed Specialty Chemicals等を専門とする、海外の研究者に委嘱しており、既に活動が開始されている。

2. 新たな連結グループ経営体制

 「1.」で述べた事業の位置付けと方向性の見直しに基づき、またグループ経営を強化する観点から、平成14年4月を目処に、三菱化学・グループ各社を問わず、ミッションや事業行動基準を共有する事業ごとに次の5つのセグメントに括り直す。

(仮称)
石化セグメント
ヘルスケアセグメント
炭素・機能化学セグメント
機能材料セグメント
共通・サービスセグメント

 これら各セグメントを一つの経営単位と位置付け、それぞれに責任者を置いて、大幅に権限を委譲し、事業展開のスピードアップを図る。
 各セグメントにおいては、資源配分や投資等に関する戦略を統合・調整し、研究・技術開発、マーケティング等で一体となり事業を運営する。

3. 当面の収益向上対策
  来期復配するため、次の対策を実施する。

(1) 役員報酬の減額
役員報酬をこの10月より最大20%減額する。
(2) 固定費の削減
諸経費について、今期、既に対前期比で10%の削減を行っているが、それにとどまらず、本社関係、生産関係その他全般にわたって抜本的に見直し、徹底したスリム化を図っていく。
(3) 設備投資の抑制
中期計画において減価償却費の範囲内に圧縮しているが、今後、設備投資は、合理化、原価低減、環境・安全及び将来に対する布石として最低限必要な投資案件に絞り込む。
(4) 研究開発費の重点化、効率化
グループの経営戦略、事業戦略との整合を図る中で、研究分野の選択と集中を一段と進めていく。研究開発費全体の更なる効率化を進める一方、戦略上の重点分野については、成果実現をスピードアップすべく注力していく。
(5) 事業の整理
不採算事業の整理をスピードアップするとともに、採算事業でも、今後資源の投入をしないとした事業については、株式公開や事業売却を通じて、資金化を図る。
(6) 総労務費の抑制
事業構造改革に基づく要員対応策、組織改革、業務改革、効率化による生産性向上施策等々諸施策を総合的に推進し、総労務費を抑制していく。

 現在これらの収益向上対策について精力的に検討を行っており、逐次スピーディに具体化し、2年後に200億円のコスト削減を実現する。