2001年3月30日
株式会社日本触媒
長期経営計画「テクノアメニティ NV
」及び中期経営計画について
当社はこの度、6年間(2001年度から2006年度)の長期経営ビジョンである長期経営計画「テクノアメニティ
NV」と3年間(2001年度から2003年度)の実行計画である「中期経営計画」を策定しました。
<策定の趣旨>
近年の化学業界は、国際市場の単一化、ボーダレス化の中で、国際的な大型合併や提携の進行等を伴って、勝ち組・負け組になるものが次第に選別されていく極めて厳しい状況となりつつあります。
当社の課題は、量的な拡大を追い求めるのではなく、当社の強みと弱みを認識し、選択と集中を行うことによって質的な成長を成し遂げることであり、それが「勝ち組」に残る必要条件であるという認識の元、当長期経営計画・中期経営計画を策定しました。
<長期経営計画「テクノアメニティ NV
」の要旨>
◎ | 将来像として「個性的な技術で新たな価値を創造する国際企業(Nippon Shokubai :A Global Company Creating New Values Through Unique Technologies )」を目指します。 | |
◎ | 長期計画のスローガンとして「量的成長から質的成長への変革〜21 世紀での発展をかけて〜」を掲げ、強靭な経営体質への転換を図ります。 | |
◎ | 3つの方向性 | |
@ | 新規製品分野「経営資源の選択と集中〜新規製品開発の精度向上とスピードアップ〜」 | |
A | 既存製品分野「事業ポートフォリオの確立と利益責任の明確化」 各事業の位置付け⇒別紙概要 |
|
B | 人と組織の活性化「時代の変化に迅速に対応できる柔軟で活力ある企業体を目指して」 | |
◎ | 目標指標 全社指標としてROA (総資産経常利益率)を導入し、資産効率の向上を図ります。 事業管理指標として営業キャッシュフローと販売貢献利益(当社独自指標)を使用し、製品収益力の向上を図ります。 |
<中期経営計画の要旨>
長期経営計画のビジョンに向けた前半3ヶ年を「基礎固め」の期間と位置付け、具体的実行計画を策定しました。AA
(アクリル酸)・SAP
(高吸水性樹脂)で生み出す安定的なキャッシュフローを基盤に、新規製品開発体制をさらに強化し、ファイン&スペシャリティケミカル事業の飛躍を図ります。
もう1つのコア事業である環境事業は、各種環境規制の強化による市場の拡大の中で、メジャープレーヤーの地位を確立します。
また人員を削減し、情報システムの見直しも含めて業務の効率化を図ります。
3年後の目標として「ROA5%」を掲げ、資産効率の向上、ひいては企業体質の強化を図ります。
3年後の連結業績推定は、売上は現状の約1.2倍の2000億円、経常利益は3倍以上の140億円です。
長期経営計画「テクノアメニティ
NV」の概要
1 .長期経営計画の位置付け
2001年度から始まる6年間のビジョンを示したものであり、会社全体の方向性からブレークダウンし、各事業の位置付け、目標指標を定めた。
名称の由来は、当社の経営理念である「テクノアメニティ(私たちはテクノロジーをもって人間生活に豊かさと快適さを提供します)」からくる経営方針のニューバージョン(New
Version)であり、「新たなビジョン(New Vision)をもって、新たな価値(New
Value)を創造していく」という意味を込めている。
2 .当社の将来像
「将来像:個性的な技術で新たな価値を創造する国際企業(Nippon
Shokubai :A Global Company Creating New Values Through Unique
Technologies )」
当社の企業理念「TechnoAmenity」(私たちはテクノロジーをもって人間生活に豊かさと快適さを提供します)を持ちつつ、厳しい経営環境の中でより具体的なビジョンとして将来像を設定した。
当社の強みである「技術力」をもって付加価値を絶え間なく創造していくことが、企業理念の実現そして企業業績の回復につながるということを再確認した。
3
.長期経営計画のスローガン及び3つの方向性
スローガン:「量的成長から質的成長への変革〜21
世紀での発展をかけて〜」
右肩上がりの時代の量的な拡大を追い求める姿勢から脱却し、様々な意味での質的成長(技術力、収益力、コスト競争力、営業力、資産効率、仕事の効率、社員のやりがい)を遂げることが、今の当社に必要なことであるという認識を共有する。
@
新規製品分野「経営資源の選択と集中〜新規製品開発の精度向上とスピードアップ〜」
A
既存製品分野「事業ポートフォリオの確立と利益責任の明確化」
B
人と組織の活性化「時代の変化に迅速に対応できる柔軟で活力ある企業体を目指して」
4 .各事業の位置付け
@ AA (アクリル酸)・SAP
(高吸水性樹脂)を中心としたコア事業
「コア事業としてグローバルに展開し、安定したキャッシュフローを創出」
; | ◇ | 世界3極体制をさらに強固にして、安定したキャッシュフローを供給する事業として位置付ける。 |
◇ | 世界競争が激化する中で、生産技術の見直しとさらなる大幅なコストダウンを図る。 | |
◇ | キャッシュフロー極大化の為に、M&A 始め様々な手段のアライアンスも画策する。 |
A ファイン&スペシャリティケミカル事業
「高付加価値製品の絶え間ない創出」
; | ◇ | 最重点事業の1つであり、製品のライフサイクルの短期化に対応するべく、顧客ニーズに対応した新規製品を全社体制で絶え間なく供給する。 |
◇ | 営業とR&D部門が更に緊密に連携できる開発型の組織・体制を強化する。 | |
◇ | 既存製品については、高シェア・高付加価値製品を中心として事業を強化し、選択と集中を加速する。 |
B 環境事業
「コア事業としての基盤の確立と強化」
; | ◇ | 各種環境規制の強化による市場の拡大の中で、コア事業としての事業コンセプトとその展開戦略を確立し、強固な事業基盤を構築する。 |
◇ | 環境意識の高まりとそれに伴う当事業の市場拡大に向けて、技術サービスの充実による顧客満足度の向上と、コスト競争力の強化を図る。 |
C EOD (酸化エチレン誘導品)事業
「市況に左右されない事業への変貌」
; | ◇ | 高付加価値の酸化エチレン誘導品開発を促進し、EG (エチレングリコール)の激しい市況変動に左右されない事業への変貌を図る。その方向性に向けた非EG化率の目標を75%に設定する。 |
D 樹脂事業
「生き残りをかけた事業再構築」
; | ◇ | 市場が縮小しつつある不飽和ポリエステル事業について、収益改善に向けた抜本的改革、アライアンスも駆使し、「勝ち組」として残るべく事業再構築を図る。 |
5 .今後の管理目標
全社管理目標 | :連結ROA (総資産経常利益率) |
各事業管理目標 | :営業キャッシュフローと販売貢献利益(当社独自指標) |
*販売貢献利益=営業利益+配賦費(工場管理費・一般管理費・研究開発費) |
利益追求のベクトルとして、資産効率(ROA)を重視することとした。
棚卸資産、売掛債権をはじめとした営業資産、固定資産、その他資産の見直しを行い、効率的な利益追求を行っていく。
各事業管理指標として、営業キャッシュフローと販売貢献利益を導入し、昨年導入した目標管理制度も利用し、利益責任をより明確化していく。
中期経営計画の概要
1 . 中期経営計画の位置付け
長期経営計画「テクノアメニティ NV
」のビジョン・方向性を実現する為に、前半3
ヶ年で行うべき具体的実行計画・目標を定めたのが中期経営計画である。
2 .中期経営計画のポイント
@事業ポートフォリオに基づいた3
ヶ年販売計画
; | (1) | AA (アクリル酸)・SAP (高吸水性樹脂)事業は、SAP の世界販売シェア25 %確保により、グローバルプレーヤーとしての地位を堅持。売上はSAP の需要増も見込み、増収の見通し。 |
(2) | コア事業として位置付けるファイン&スペシャリティケミカル事業と環境事業で大幅増収の見通し。 | |
(3) | 基礎化学品・合成樹脂事業は利益重視で売上横這いの見通し。 |
A
新規製品の上市加速とファイン&スペシャリティケミカル事業の強化
; | 新規製品売上高を2003年度
80億円 、2006年度
200億円を目指す。 独自の触媒技術を用いたプロセスイノベーションによる新規基幹製品・情報材料(レジスト材料等)・グリーンケミカルズ(生分解性プラスチック・キレート剤等)を中心に付加価値の高い新規製品を創出していく。 その為に以下の方策を進めていく。 |
|
(1)新規事業・新規製品開発強化の為の組織改編 | ||
新本部「新規事業企画室」を設置(2001年4月)し、その下の「事業企画部」を中心として、事業化プロセスの加速・強化、そしてより市場ニーズを反映した新規事業・製品・研究テーマ企画を行う。 また新本部内に下記の特命グループを設置し、成長分野への取り組みを加速する。今後も新しいグループを機動的に設置していく予定。 |
||
・ | 「光・電材事業企画グループ」 | |
2000年4月に発足した情報材料分野専任の営業部(情報材料開発室)と連携し、「導電性材料」、「光通信材料」、「低(高)誘電材料」分野等、新規分野への取り組みを強化する。 | ||
・ | 「燃料電池材料事業グループ」 | |
燃料電池用ジルコニアシートの本格事業化・量産化を進める。 | ||
(2)研究テーマの選択と集中・マネージメント強化 | ||
研究テーマについて17の「重点テーマ(非公表)」を選定
。研究人員をはじめとした資源の集中により新規製品上市の精度・スピードアップを図る。 また昨年4月に新設した研究企画部(研究開発本部)が、新本部と連携し研究マネージメントの強化をさらにすすめる。(ステージゲートシステムの強化等) |
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(3)ファイン&スペシャリティケミカル事業の飛躍 | ||
当事業は上記新規製品開発と密接に連携しつつ、既存製品分野についても比較競争力優位事業を中心に事業強化を図る。 (比較競争力優位事業) セメント混和剤・情報記録材料・洗剤用ビルダー・ABS 耐熱向上材・超耐候性樹脂 等 |
B人と組織の活性化と要員計画
: | (1) | 全社員の1割弱に当る250人(連結ベース)の人員削減
を行う。定年退職者による自然減と採用抑制の継続によって達成する。 2000年度末で約3300人を2003年度末で約3050人 にする。 |
(2) | 組織体制及び人事諸制度の変革を行い、人材の再配置と能力開発により、少数精鋭化を図る。 | |
(3) | 目標管理制度(昨年管理職対象に導入)の充実・強化により、成果主義を浸透させる。 |
C抜本的業務改革と情報システムの見直し
;: | 社長を委員長に据えた全社横断的委員会を設置し、業務内容・情報フロー等を抜本的に見直し、スリムで効率的な業務体制を目指す。 それに伴い情報システムの見直しを行い、ERP (統合業務パッケージ)導入の本格的検討に入る。 |
D 連結経営体制の強化と関係会社との相乗効果の極大化
: | (1) | 国内関係会社は今後当社にとっての位置付けを明確化し、一部整理という選択肢も含め、連結ベースでより企業価値を高める施策を推し進める。 | |
(2) | 海外関係会社は「当社の一部」として当社と一体化した戦略で事業展開を行う。 | ||
@AA (アクリル酸)・SAP (高吸水性樹脂)事業での具体的施策 | |||
:・ | 北米事業(NA インダストリーズ社)では、アクリル酸の現地生産化(アメリカンアクリル社2002 年操業開始予定)によって、SAP との効率的一貫生産体制を実現。 | ||
:・ | 昨年子会社化したインドネシアAA 事業(ニッポンショクバイインドネシア社)は、資本注入を行い財務基盤を強化。 | ||
:・ | 欧州SAP事業(ニッポンショクバイヨーロッパ社2001年4月操業開始)は、販社(ウルトラソルブ社)との統合を図り、製販一体化。将来はアクリル酸からの一貫生産を目指す。 | ||
Aファイン・スペシャリティケミカル事業での具体的施策 | |||
:・ | シンガポール販売拠点(ニッポンショクバイアジア社)、北米・欧州の既存関係会社でもファインケミカル製品のマーケティング機能を強化し、販売シェアを高める。 | ||
:・ | 北米(NA インダストリーズ社)でのコンクリート混和剤の生産開始(2000 年末)を皮切りに、AA・SAP 事業以外のファイン・スペシャリティケミカル事業についても海外での生産を推進し、高付加価値製品の世界展開を加速する。 |
E知的財産戦略の強化
FE-Commerce 対応の為の体制整備
G コストダウンへの全社的取り組み
3 .業績目標と業績推定
@ 業績目標
3年後(2003年度)に、連結ROA
(総資産経常利益率)5 %以上を目指す。
A 業績推定
3年後(2003年度)、売上2000 億円(2000年比1.2倍)・経常利益140億円(2000 年比3倍以上・約100 億円の増益)
売上高 営業利益 経常利益 当期純利益 総資産 2003年度業績推定 2000億円 150億円 140億円 78億円 2500億円 (日本触媒単独) (1600億円) (120億円) (130億円) (75億円) (2070億円)
増益(経常利益)要因: ファインケミカル事業・環境事業を中心とした売上増に伴う利益増 60 億円 経費削減(人件費・減価償却費等) 40 億円
新中期経営計画(2004〜2006年度)について
6年間(2001〜2006年)の長期経営計画『テクノアメニティNV』の下、当社は前半3年間の中期経営計画を終了しました。引続き後半3年間の実行計画である『新中期経営計画』を策定しました。
<策定の主旨>
『基礎固め』と位置付けた前半3年間の中期経営計画を実行した結果、目標ROA5%及び利益面については計画どおり達成できました。これは、既存製品分野では計画した諸施策(@SAP・AAのグローバル(欧州、米国、中国)展開、A住友化学とのMMA・AA事業交換、B三井武田ケミカルとの不飽和ポリエステル樹脂事業合弁会社設立、等)を順調に実行できたこと、EG、AA・AESの市況回復、高吸水性樹脂の増販、固定費の削減等に因るものが主要因と考えています。
しかしながら、当社経営の現状は高吸水性樹脂、アクリル事業に大きく依存し、安定したものではないと考えており、次の柱となるべき新規製品の創出、拡大を前半3年間以上に加速させること、環境・触媒事業の方向性の見極め、を後半3年間の新中期経営計画において達成するべき課題と認識しました。
<新中期経営計画の要旨>
◎方向性 | |
長期経営計画方針を引続き継続し、『市況に左右されない安定した利益体質』の実現を目指します。 | |
@ | 既存製品事業 … 長期経営計画方針を継続し、前半に引続き実施していきます。 |
(AA・SAP事業)コア事業としてグローバルに展開し、安定したキャシュフローを創出。 (EOD事業)非EG化比率75%を目標に市況に左右されない事業に変貌。 (樹脂事業) ジャパンコンポジットと協力し、国内市場での生残りを図り、ゼロ成長下で一層の飛躍。 |
|
A | 新規製品事業 … 2006年度に売上高200億円を目指して、新規製品事業を創出、拡大します。 |
■ | (機能性化学品事業) |
現状の当該事業部を下記のとおり二事業部に組織改編をします。混在していた各製品事業を二つの事業部に再配置し、各々の特長を事業戦略に明確に反映し、実行します。 機能性化学品事業部 『新規製品の創出、拡大を目指す』事業部とし、事業部を構成する個々の組織単位(事業ユニット)は営業・研究・開発の人材で構成される事業ユニット制を導入することとします。当該事業部は、情報材料、医薬中間原料、塗料・粘着用樹脂等を取り扱います。 精密化学品事業部 上記事業部と比較し、市場がある程度固まっており、『R&Dに裏付けされた営業戦略で販売する製品群を扱う』事業部とします。今後、本事業部は海外市場展開の強化と国内市場でのアライアンスの積極的な実施検討等を戦略の軸とし、営業キャッシュフローの一層の増大を図ります。当該事業部は、有機酸、水溶性ポリマー、コンクリート混和剤、アクリル特殊エステル等を取り扱います。 |
|
■ | (環境・触媒事業) |
前半3年間で当社のコア事業としての可能性を見極めた結果、今後はコア技術としての触媒技術に特化し、収益性を最重要課題とすることに基本方針を変更します。一方で、環境にやさしく、新エネルギーに関連する分野においては事業ユニット制を採用し、開発テーマを早期に市場に定着させることを目指します。 | |
B | 海外売上高比率のアップ |
今後も国内需要の著しい伸長は期待できないことを前提とすると、海外売上高比率を従来以上に高めることが必要です。既に配備している当社グループの欧州、米国、東南アジアそして中国の拠点を生かしてさらなる世界戦略展開を加速することが従来にも増して重要です。 | |
業績目標と業績推定
@ | 業績目標 |
2006年度に連結ROA(総資産経常利益率)7.0%以上を目指します。 | |
A | 業績推定 |
2006年度、売上高2000億円(2003年推定比18%増)、経常利益180億円(2003年推定比13%増) | |
売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 当期純利益 | 総資産 | |
2006年業績推定 |
2000億円 |
170億円 |
180億円 |
112億円 |
2440億円 |