2004/4/1 新日鐵化学

グランドデザインの策定について
http://www.nscc.co.jp/download/040401-1.pdf

 新日鐵化学株式会社(社長西恒美)は、このほどグループとしての2010年の姿(“目標とする企業像”)を描き、これに向けて進むべき方向と達成の方策(“目標実現の方策”)を明確にした、グランドデザインを策定するとともに、関連諸施策の実行にも着手しました。

1.はじめに
 国際競争の激化、商品ライフの短縮化等、化学事業を取り巻く環境は激変しています。当社はこれを飛躍のための好機ととらえ、進むべき方向性を明確にするとともに、意識的・選択的に事業構造を組替えていくことにより、強靭で安定した経営構造を構築し、新日鐵グループの化学事業を担う会社として、より一層の企業価値の向上を図ってまいります。
 本グランドデザインは、そのための基本構想であり、当社が汎用素材型事業からマテリアルソリューション提案型事業への大きな構造転換を果敢に実行し、社会の発展により一層貢献していくことを狙いとしています。
 なお、グランドデザインの方向性については、今後の中期経営計画および年度予算で、より具体的な行動指針、行動基準に組み込み、当社グループの確実な躍進につなげて行くことにいたします。

2. グランドデザインの骨子(詳細は別紙参照)
2.1 目標とする企業イメージ
(企業イメージ)
 当社は、「高度な化学技術を自ら育成・蓄積し、その活用により社会に貢献する」ことを企業理念とし、次の3点を目指す会社とします。
 ・お客様のメリットを高めることができる独自商品を提案・提供できる会社
 ・その独自商品を連続して出し続けることにより技術力を高く評価される会社
 ・世界一の商品を常に3つ以上もち、それで利益の1/3 を出す会社

(収益目標)
 収益面では、以下の内容を2010年度までに達成することを目標とします。
 ・経常利益300億円(電子・情報材料分野での比率50%以上)、ROS=10%以上
 ・新規製品による経常利益で全体の20%以上を占める
 ・自己資本比率50%の達成

2.2 達成方策
(1)事業領域
 戦略的強化事業領域として、昨年3月に策定した中期経営計画「Start-Ex プラン」において、電子・情報材料事業、製鉄・タール関連事業、芳香族化学品事業の3事業としていますが、引き続きこの方針の下、事業の選択・集中を行っていきます。
 電子・情報材料事業領域では、CCL 事業を橋頭堡に、差別化商品の継続的上市による高収益事業体質を確立して行きます。また、基盤事業に位置付けられる製鉄・タール関連事業及び芳香族化学品事業においては、個社最適解の枠を越え、提携あるいは地域最適解も視野に入れての競争力強化も志向します。

 本日発表しました、エア・ウォーター・ケミカル鰍ニのタール事業統合についての基本合意およびエア・ウォーター鰍ニのガス販売事業統合についての基本合意も、このグランドデザインの基本方針にのっとった施策であります。また、新規分野としては、これまで蓄積してきた合成技術・高分子技術を核に機能樹脂関連事業の強化を行うことにしています。

(2)コアテクノロジーの選定と強化
 グランドデザインの成否を握るのは技術開発力であるとの考えから、材料設計技術として機能性樹脂および芳香族化学に関する技術、機能設計技術として接着技術および微細化技術、プロセス技術として芳香族合成技術、分離精製技術およびフイルム・シート化技術をコアテクノロジーと位置付けし、強化します。
 特に、当社の拡大事業領域に位置付けた電子・情報材料分野では、当社独自の材料・部材で直接的にお客様のご要望にお応えするために、開発ベクトルをこの領域に収斂させ、社会の恒常的変化・進化に対応していきます。

(3)運営体制
 本グランドデザインの実現に向けて、市場の変化に迅速かつ柔軟に対応すべく、以下のような運営体制に関する諸施策も策定し、本年度から実施しています。

@経営機構の改革
 ・経営意思決定の機動性を確保するために、取締役の員数を削減する
 ・業務執行機能の強化を図るとともに、経営の意思決定および監視・監督機能と業務執行機能の分化を期し、執行役員制度を導入する。

A組織改正
 CEO直属の組織として、ポストグランドデザインという視点から、次世代の当社事業の一翼を担う新事業、新商品の探索を専門に行う『フューチャービジネスクリエーションセンター』を新設するとともに、化学品事業部内に、新規大型化学品事業の創出を目的とする『ビジネスクリエーションセンター』を新設します。

B人事
 業績反映インセンティブ加算制度も整備し、各部門の業績を社員の処遇に反映させる制度を整備します。


グランドデザイン 
http://www.nscc.co.jp/download/040401-2.pdf

1.はじめに

 事業環境が激変している。我々はこれを体質転換の好機と積極的にとらえ、自らの進むべき方向性について主体的な展望を持ち、事業構造を組替えていく。
 その基本構想となるのがこのグランドデザインであり、新日鐵化学グループの“目標とする企業像”、“それを実現するための方策”を具体的に示し、社会に貢献できるエクセレントカンパニーへの脱皮を図る。2010年の姿を描き、全社が一丸となって進むべき方向について各人が認識し、各人の役割を正しく実行することにより、必ず実現できる構想である。
 今後、各部門での議論を通じて、本グランドデザインの方向性を中期経営計画及び年度予算でより具体化し、新日鐵化学グループの確実な躍進へとつなげる。

<グランドデザインの位置付け>

  グランドデザイン 中期経営計画 年度予算
機能   目標   計画   予算  
役割   方向性   行動指針   行動基準 
期間   長期   3ヵ年   1年

2.新日鐵化学の将来像
(1)企業理念
 社員共有の価値観を企業理念に定める。

企業理念
 新日鐵化学グルーブは、
 ○高度な化学技術を自ら育成・蓄積し、
   その活用により社会に貢献する。
 ○広く社会から信頼され尊敬を受ける
   にたる社員で構成される。

 当社の事業は、タール等の製鉄関連事業からスタートし、石化事業、電材事業とその業容拡大と深化を遂げ、それに対応して、技術基盤も順次拡大・高度化してきた。我々は、芳香族化学に表徴される自らの技術をさらに高め、たゆまぬ変革・創造により、力強く社会に貢献することを宣言する。
 また、社員は、あらゆるビジネス行為と業務において新たな価値創造を常に考え、それを実現していき、広く社会から、お客様から信頼され尊敬を受けることを目指しつづける。新日鐵化学の企業スローガンも、これからも脈々と引き継がれるべきものであることを再確認する。

 “素材を技術し、未来を拓く
  − For Your Dream & Happiness −”

(2)目標とする企業イメージ
 我々がこの企業理念を追求することにより達成される明日の新日鐵化学のイメージは、社会から尊敬される“エクセレントカンパニー”であり、次のようなものである。

お客様のメリットを高めることができる独自商品を提案・提供できる会社
その独自商品を連続して出しつづけることにより技術力を高く評価される会社
世界一の商品を常に3つ以上もち、それで利益の1/3を出す会社
環境、社会貢献でも胸をはれ、人材が競って集まる会社

 目標とする企業イメージを収益面・構造面から示したものが将来ビジョンであり、社の経営指標、社員処遇が名実ともにエクセレント・カンパニーに値する姿を目標とする。

将来ビジョン(連結)

 達成年度は2010年(7年後)
 収益目標
  経常利益          300億円、ROS=10%以上   
  電子情報分野での比率 50%以上
  新規製品よる経常利益  20%
 財務目標
  自己資本比率       50%
 社員の処遇          業界トップレベル

3.将来ビジョンの達成方策
(1)事業展開の基本指針
 グランドデザインの目標は、全ての事業、全ての業務において、新たな視点・発想の付加と、効率化の徹底によって達成される。事業展開の基本指針を示す。

@ 独自提案の源泉となるコアテクノロジーの強化とそれが活かせる市場の厳選を行い、戦略的な事業展開を推進する。
A 低収益で成長シナリオが描けない事業から成長シナリオが描ける事業への資源シフトを日常的に行う。
B 自分の持ち場において日常的に新たな価値創造を考える集団の形成とそれを支える人材育成に対して、常に刺激とインセンティブを与えられる経営を行う。

(2)戦略的市場領域の選定
 Start−Exプランで定めた当社が競そうべき事業領域
  ◆製鉄・タール関連事業領域
  ◆化学品事業領域
  ◆惰報・電子材料事業領域
 および、それに関連する『当社が得意とする技術』は、化学産業全体の中ではニッチな分野。今後、当社が自らの強みを活かして更なる発展・拡大することを可能にする市場領域は“情報・電子関連市場”であり、この市場を当社の戦略的市場領域として拡大していく。

(3)事業展開の方向性
 この戦略的市場領域への傾斜は、電子材料事業部のみで行うものではなく、各事業がそれぞれの素材・技術を核に、この市場に主体的に関わっていくことが重要である。しかしながら、各事業部部の事業環境・実態から、各領域での中核事業強化の方策は自ずと異なったものとなる。
 製鉄・タール関連事業、化学品事業においては、コスト競争力の徹底強化が必須課題である。たゆまぬコスト改善努カに加え、
 ●他社提携等の戦略的事業展開
 ●個社最適解の枠を越えたコンビナート最適解も視野に入れた競争カ強化
等を積極的にすすめ、国際競争カ強化を目指す。
 また、芳香族化学の強みを活かしての電材用途への展開強化も化学品事業領域における重要なミッションである。

 一方、電子材料事業においては、垣常的な革新技術の付加とソリューション提供により、進化する市場ニ一ズに俊敏な対応をとることが事業強化のための必須条件である。今後も、独自技術に根差した差別性の高い機能材料及び加工度を向上させた機能部材の創出を継続し、高収益事業体質を確立し、新生新日鐵化学の中核事業化を図る。
 以上の方向性に基づき、積極的な施策を可能なものから実行し、これを推進するための体制・組繊の整備も行う。その過程で、事業(製品)の選択と集中を一層推進し、利益率の低い事業から高い事業へのシフトを日常化させる。
 また、本グランドデザイン期間以降も収益構造を維時・強化するため、今の事業領域に拘らない視点で、次の世代(ポストグランドテザイン)の事業領域を開拓・選択するための検討に着手する。

(4)コアテクノロジー
 当社の独自商品開発のために必要不可欠な以下の技術をコアテクノロジーとして選定・強化し、お客様への価値創造の源泉とする。
 ◆材料設計技術:機能性樹脂、芳香族化学
 ◆機能設計技術:接着技術、微細化技術
 ◆プロセス技術 :芳香族合成、分離精製技術、フィルム・シート化
 開発の方向性は、中期経営計画、各年度の研究開発会議でより具体的な開発テーマに結晶させ、事業化につなげていく。

(5)運営体制
 本グランドデザイン策定のタイミングに合わせ、その趣旨を踏まえ、運営体制の改革を実行する。 @経営機構の改革
 市場変化への迅速かつ柔軟な対応を目的に、経営機構の改革を行なう。
  ◆取締役会のスリム化: 経営意思決定の迅速化
  ◆執行役員制度の導入: 業務執行体制強化

 A組織
  :・ ポストグランドデザイン世代の当社の一翼を担う新事業、新商品の探索を専門的に行うための『フューチャービジネスクリエーションセンター(FBCC)』を全社組織としてスタートさせる。
  化学品事業部内には、新規大型事業創出による事業部安定収益構造維持を目的に、『ビジネスクリエーションセンター(BCC)』を設置する。
  化学品事業部内に『機能性化学品部』を設置する。ビジネスモデル連関事業を集約し、高機能製品事業の強化とシナジー効果発現を目的とする。
  今後も、事業連関を重視したビジネスユニット統廃合・事業部間の製品移管を適宜行い、事業環境変化への対応力強化とマテリアルソリューション提案力強化を志向する。
     
 B人事
  社業の発展を社員の処遇に反映させる業績反映制度の整備や、高度な技術・高いモラルを持った人材の育成を通じてエクセレントカンパニーを実現する。
     

(6)経営資源投入
 設備投資及び投融資については、自らの強みと時代の要請を正し<認識した上で、市場変化のスピードに決して遅れることなく “世界一商品”の拡充に向け、機を逃がさず積極的な対応を図る。 また、提案カ強化および機能商品の日常的更新のため、積極的な研究開発投入も必要であり、
  ・コアテクノロジーの強化
  ・事業展開シナリオが描ける厳選されたテーマの推進
 に資源集中を行い、開発においても効率重視を志向。

4.ポストグランドデザインについて
 このグランドデザイン実行で、スリムで筋肉質な体質は維持したまま、
 ◆技術カの蓄積
 ◆改革・開発志向を持った優秀な人材の育成と確保
 ◆大学等の公的機関との連携強化
 を推進する。
 ポストグランドデザインも視野に入れ、新たな中核事業を立ち上げると共に、『マテリアルソリューション+技術販売』型企業への転換を検討することとし、前項の『フューチャービジネスクリエーションセンター(FBCC)』がこれを担当する。

 繰り返しになるが、事業を取り捲く環境はますます厳しい方向になるが、我々はこれを好機ととらえ、自らの事業領域を主体的に設定し、このグランドデザインの実現に向け周到な準備を重ね、全社一丸となってこれを推進していく。

 中期計画、年度予算でグランドデザインの詳細部品設計を行い、それを着実に実行することにより、このグランドデザインを実現化させたい。