2003/2/4 帝人
Way to Innovation for New Teijin
Group
中期経営計画WING 2003
T.中期経営基本方針
ブランドステートメントを“Human
Chemistry,Human Solutions ”と定め、3G =Profitable
Growth 、Group Management 、Global Expansion
を経営基本ポリシーとし、帝人グループ全体の永続的な企業価値の増大を目指す。 “Human Chemistry,Human Solutions ” <人と地球環境に配慮した化学技術の向上と、社会と顧客が期待している解決策を提供することで本当の価値を実現することに挑戦し続けます 。> |
1 .全社収益力の再構築・強化 | |
2003年〜05年度の中期経営計画期間を、ビジネスモデルの革新と重点戦略事業の基盤拡大を核とする「全社収益力の再構築・強化期」と位置付ける。 | |
2 .「集中と選択」の徹底 | |
ポートフォリオ上の位置付けの高い事業には積極的な投資を行い、グループ内事業として位置付けることの難しい事業については、ダイベスト(売却・撤収・アライアンス・統合等)を図る。 | |
3 .持株会社制移行によるグループ経営の強化 | |
全体最適実現のためのグループ・マネジメント体制を確立すると同時に、分社化による個別事業競争力の徹底強化、グループ経営における透明性・公正性・迅速性の一層の向上を図る。 | |
4 .株主期待利益を反映した総資本コスト概念の導入 | |
株主資本コストに負債コストを加えた総資本コストをベースに利益の算定・評価を行い、株主の期待利益に応えうる利益水準の確保を目指す。 | |
5 .トータル・リスクマネジメントの推進 | |
企業を取り巻く種々のリスク(不確実性)を統合的に把握・管理し、企業経営に活かすための組織的アプローチであるトータル・リスクマネジメント体制の構築・確立を目指す。 | |
6 .地球環境の重視と高い企業倫理の維持 | |
人と地球環境に配慮した化学技術を徹底的に追及し、グループ全体として地球環境改善に資する事業展開・事業活動を行う。 高い倫理観を全グループメンバーが共有すると同時に、グローバルな展開にあたっては、それぞれの国の法律・規制・慣習等を十分に尊重した企業活動を行う。 |
U.中期経営目標
<全体目標> | ||||
02年見通し | 03年 | 04年 | 05年目標 | |
売上高 (億円) | 8,900 | 9,400 | 10,000 | 10,700 |
営業利益(億円) | 320 | 400 | 600 | 800 |
当期利益(億円) | -180 | 70 | 170 | 250 |
ROA (%) | 3.0 | 3.8 | 5.7 | 7.6 |
ROA : 営業利益/総資産 |
<事業別目標>
売上高(億円) | 営業利益(億円) | ROA (%) | ||||
02年見通し | 05 年 | 02年見通し | 05 年 | 02年見通し | 05 年 | |
繊 維 |
4,800 |
5,700 |
75 |
270 |
1.6 |
5.5 |
化成品 |
1,850 |
2,300 |
30 |
120 |
1.3 |
4.7 |
医薬医療 |
950 |
1,050 |
150 |
200 |
21.6 |
27.8 |
IT ・新事業 |
1,300 |
650 |
65 |
110 |
3.3 |
20.0 |
杏林製薬の中期計画は、05 年 売上高1,000 億円 営業利益250 億円 |
||||||
*全社引当 |
|
|
|
-150 |
|
|
合 計 |
8,900 |
10,700 |
320 |
800 |
3.0 |
7.6 |
*全社引当は不確実要因による引当である。
<中期財務目標>
02年見通し | 05 年 | 備考 | |
D/E レシオ |
1.5 |
0.9 |
有利子負債 ÷ 株主資本 |
有利子負債 |
4,300 |
2,850 |
1200 億円削減 |
総資産圧縮 : |
10,500 |
10,500 |
杏林製薬との事業統合により資産は増加するが、 |
<中期経営資源投入計画>
【設備投資】 3年累計1,750億円 償却費1,750億円 | |
戦略事業への重点投資 | |
: | アラミド繊維「トワロン」増設 ポリカーボネート樹脂中国工場建設 中国のポリカーボネートコンパウンド工場建設 特殊ポリエチレンフィルム「ソルフィル」の増設 |
【研究開発投資】 3年累計1,300 億円 医薬医療750 億円、新規事業130 億円 | |
【連結グループ人員】1,000 人減少 | |
03年3月末23,700人
→ 06年3月末22,700人 うち、帝人製機グループの持分法会社化による減少 △2200 人 杏林製薬との事業統合・連結子会社化による増加 +1700 人 |
V.前中期計画「前進2000
年」の総括
(1 )R O A 目標7.6%→実績見通し3.0% | ||
: | @
衣料繊維事業の需給失調下での展開力不足 A フィルム事業の米国IT不況下での顧客対応、生産構造変革の遅れ B 樹脂事業のポリカーボネート樹脂増設下での世界的な価格下落 C 医薬医療事業の在宅診療報酬の大幅引き下げ |
|
(2 )フリーキャッシュフロー 目標800 億円 → 実績見通し200 億円 | ||
@設備投資の増加
約500 億円 ・アラミド繊維「トワロン」の増設 ・ポリカーボネート樹脂の増設 ほか A 利益目標の未達成 約400 億円 B 資産圧縮ほか 約▲300 億円 |
||
(3 )前中期計画で現出した課題と対応 | ||
<課 題> | ||
@ グローバル環境の変化 | ||
: | 景気停滞とデフレの長期化、IT バブルの崩壊、中国のプレゼンスの拡大不確実性の増大と変化のスピードの加速 | |
A 事業経営要因 価格スプレッドの縮小、定番品競争力の喪失と資産圧縮の対応遅れ |
||
B
制度的環境の変化 在宅診療報酬の大幅引き下げと年金資産不足額の償却 |
||
<対応策> | ||
@
事業ポートフォリオの再編の促進 A 成長事業と成熟事業の峻別対応 B 成熟事業は収益性の重視、固定費の徹底削減 C 機能素材、産業用途への大幅シフト D 中国への展開:成長事業と加工事業 E リスクの定量的把握と限定化 |
W.新中期経営計画の重点戦略・重点課題
1 .事業ポートフォリオの再構築 | |
(1) | “集中と選択”の徹底とコアコンピタンスの強化のため、成長性と収益性に基づく定量的尺度による資源配分の優先順位づけを行い、各事業を、「重点戦略事業」「安定収益事業」「選別投資事業」「再構築事業」のいずれかに位置づける。 |
(2) | 重点戦略事業については、積極的な資源投入による事業基盤の拡大を目指し、低収益事業についてはビジネスモデルの革新を行い、利益効率の向上と財務体質の改善を図る。 |
(3 ) | 各事業グループは、収益性、コアコンピタンス、シナジー等の観点からダイベスト対象とした事業については、適切なタイミングで売却・撤収・アライアンス・統合等を図る。 |
2 .重点戦略事業と安定収益事業への峻別的対応
【重点戦略事業】産業繊維事業、樹脂事業、医薬医療事業、IT ・新事業 | ||
積極的な資源投入を行い、事業基盤の拡大(コアコンピタンスの強化・拡大)を図る。 | ||
(1 ) | 人員のシフト 約350 名(約5 %)の増員 | |
(2 ) | 設備投資の拡大 3 年累計1100 億円、償却額より300 億円増 | |
(3 ) | 医薬事業の事業統合 人員1700 名増、研究開発費150 億円増 | |
【安定収益事業】衣料繊維事業、フィルム事業、流通・リテイル事業 | ||
衣料繊維事業、フィルム事業は、安定収益の確保を目指して、低収益構造から安定収益構への転換を図るため、事業再構築(ビジネスモデルの革新)を早急に行う。流通・リテイル事業は、素材系事業グループとの連携によるグループプレミアムの増大に貢献すると共に、繊維専門商社として事業展開範囲を再編し、安定収益事業とする。 | ||
(1 ) | 人員の削減 約1000 名(約8 %)の削減 | |
(2 ) | 設備投資の圧縮 3 年累計550 億円、償却額より300 億円減 | |
(3 ) | 差別化の拡大 |
3 .医薬事業の事業統合シナジーの追求 | ||
本年10月1日より、杏林製薬との事業統合会社「杏林製薬」が連結子会社として営業を開始する。呼吸器系、骨関節系の医療用医薬品ではトップメーカーとなり、新薬上市計画の充実などの帝人・杏林製薬両社のシナジーにより、事業基盤の拡大・強化を目指す。 | ||
(1 )期待効果 | ||
@
営業体制の強化:MR1200
名体制(業界10 位) A開発パイプラインの強化 : 特定領域の拡充(3 →6 領域) 開発パイプラインの拡充 研究費300 億円体制へ |
||
(2 )事業規模 03年3月期見通し単純合算ベース <売上高> 約1700 億円 <営業利益> 約 290 億円 |
||
4 .新規事業の創出機能・体制の強化 | ||
発展性のある将来ポートフォリオ構築を目指し、新規事業・新製品の探索、育成機能を強化する。 持株会社内に「新事業開発グループ」を新設する。 |
||
【新事業開発グループ】 | ||
(1 )新規事業の創出 | ||
開発効率とスピードを重視した事業企画、コーポレート研究、技術導入、事業開発の実施。 | ||
(2 )新製品・新プロセスの開発による各事業グループへの貢献 | ||
コア技術・先端技術の深化と複合。 | ||
5 .経営システムの改革 | ||
(1 )コーポレートガバナンスの更なる強化 | ||
帝人グループ取締役会は10 名以内とし、その内3 名は社外取締役とする。社外取締役には、アドバイザリー・ボードの日本人メンバー3 名の就任を予定しており、経営トップの後継指名・報酬に関する諮問機能を有するアドバイザリー・ボードとの連携強化により、コーポレートガバナンスの強化を図る。 | ||
(2 )トータル・リスクマネジメント(TRM )の推進 | ||
経営戦略や戦略的アクションの決定等に伴う不確実性を「経営戦略リスク」(SR :Strategic Risk )とし、災害や品質問題、コンプライアンスリスク等を「業務運営リスク」(OR :Operational Risk )と規定し、それぞれの対応を強化する。 | ||
【CSO 、CRO の新設】 | ||
新たにCSO (Chief Strategy Officer )、CRO (Chief Risk ManagementOfficer )を置き、それをスタッフするための組織を持株会社内に設ける。 | ||
【TRM コミティーの新設】 | ||
CEO をTRM
最高責任者とし、新たにTRM
コミティーを設置する。TRM
コミティーは、CEO (議長)、CSO
、CRO 、CESHO の4
名を常任メンバーとする取締役会内委員会として位置付け、TRM
基本方針・年次計画の策定と取締役会への提案等を行う。 取締役会は、TRM コミティー提案を、意思決定を行う際の重要な判断材料とする。 監査役は、取締役会のTRM に関する適切な方針決定・監視監督等について監査する。 |
||
(3 )新利益管理制度の導入 | ||
株主の期待に応えるための株主資本コスト概念導入による事業評価の徹底を図り、持株会社への最低必要配当レベルの明確化を目的にTSVA とROA ハードルレートによる事業評価システムを導入する。 | ||
【TSVA 】(Teijin Shareholders ’Value Added ) | ||
株主資本コスト控除後の税後利益の絶対額と総資産に対する比率(TSVA
スプレッド)を事業評価に加える。各事業グループのTSVA
はグループ経営に対する貢献額を示し、グループ全体のTSVA
は帝人グループの企業価値(株主価値)の増減を表す。また、TSVA
スプレッドを指標に加えることにより、効率も併せて評価する。 これに関連して事業グループ別に、資本・負債の構成を考慮した営業利益ROA ベースの最低必要利益率=ハードルレートを設定する。 |
||
6 .コーポレートブランド戦略の推進 | ||
帝人グループに対する認知度の向上、理解促進を図ると同時に、グローバルマーケットでの存在感の向上と拡大する帝人グループの求心力強化を目指して、新たなコーポレートブランド戦略を推進する。 | ||
(1 )ブランドステートメントの策定 | ||
ステークホルダーズに対する帝人グループの約束を“Human Chemistry,HumanSolutions ”「人間と地球環境に配慮した化学技術で、最適な解決策を提供します」とし、帝人グループの総力を挙げてその実現に向けて努力する。 | ||
(2 )ブランドロゴの刷新 | ||
03 年度を「帝人グループの創生の年」と位置付け、ブランドロゴの刷新を行う。 | ||
(3 )グループ内外に対する訴求・浸透策の実施 | ||
コーポレートブランドの訴求・浸透を目的として、TV 宣伝等メディアミックスによる対外訴求活動と啓蒙ツール作成によるグループ内浸透活動を行う。 | ||
X.営業利益拡大要因と事業戦略 | ||
営業利益 03 年〜05 年 480 億円増加 | ||
1 .重点戦略事業 +500 億円 | ||
(1 )産業繊維 | ||
産業繊維のフルラインサプライヤーの地位強化。 @ アラミド市場の構造変化への対応=細モノ化とその設備対応 A トワロン増設設備の早期フル稼動=03 年操業開始05 年フル稼動 B 炭素繊維の日米欧供給体制の確立 C アジア、北米でのタイヤコードの供給基盤整備 |
||
(2 )樹 脂 | ||
成長するアジア市場で最大のポリカーボネート樹脂供給者へ。 @ 中国10 万トン体制への基盤確立=05 年第1 系列操業開始 A シート、コンパウンドへの積極展開と一般用途へのシフト B上海コンパウンド工場建設 C 光学用ポリカーボネートフィルムの増設 |
||
(3 )医薬医療 | ||
<医薬品>
杏林製薬との事業統合シナジーの発現。 @ 創薬研究シナジーの促進 A 販売ネットワークの再編・強化 B 新薬の着実・継続的な上市=喘息薬・痛風薬・糖尿病薬等 |
||
<在宅医療>
総合プロバイダーとしての地位強化。 @ 革新的小型在宅酸素濃縮器の開発、上市=コスト競争力と差別化 A 在宅人工透析の円滑な事業化=04 年上市目標 BCPAP 等新規在宅ビジネスの拡大 |
||
(4 )IT ・新事業 | ||
ニッチトップ戦略の推進。 <IT サービス> @ サービス事業へのシフト A 音声認識、ヘルスケアへの展開 |
||
<エレクトロニクス材料> @ 特殊ポリエチレンフィルム「ソルフィル」のコンデンサー向け世界標準材料化 A 「ソルフィル」第1系列の早期操業と第2 系列の増設へ |
||
2 .安定収益事業 +130 億円 | ||
(1 )衣料繊維 | ||
「
シェア重視」から「収益重視」への転換。 @ ポリエステル長繊維の日本・アセアン・NAFTA 3 極最適生産体制の確立 A 衣料から非衣料、紡績から非紡績、感性から機能へのシフト B 環境対応型商品の積極展開=PET ボトルto 繊維、繊維to 繊維 C 差別化とコストダウンの両立 |
||
(2 )流通・リテイル | ||
素材事業との連携強化によるグループプレミアムの追求。 @ 川中〜川下での総合的事業展開=商社−アパレル−小売 A 売上拡大から利益重視への転換 B 不採算事業の整理 |
||
(3 )フィルム | ||
戦略的商品開発とコストダウン。 @ グローバル競争力の強化→固定費生産性の向上 A グローバルR&D の強化→3 極開発体制 B 中国事業の強化・拡大 C 重点事業分野:工業用/包装用スペシャルティ,PEN フィルムの強化・拡大 |
||
3 .ほかに不確実性要因に対する引当として▲150 億円考慮している。 |