長期経営ビジョン AP-New
TORAY 21
はじめに
当社は1991年4月に来るべき21世紀に向けた東レグループの長期展望として、Growth
(成長)、Group Management (連邦経営) およびGlobalization
(グローバル化)
をキーワードとして長期経営ビジョンAP-G2000を策定しました。その後、1997年4月には、これを発展させる形でNew
AP-G2000を策定し、以後5年間、体質強化に不断の努力を払うとともに、積極的な海外展開による事業拡大を引き続き推進してきました。
21世紀を迎えた今、当社を取り巻く経済環境は予想を上回るスピードで変化し、経済・社会のあらゆる局面で構造改革が迫られています。このような状況のもと、2002年4月、当社は「21世紀の新しい東レ」への転換に向けた"プロジェクト
New TORAY21"をスタートいたしました。
このプロジェクトの検討の過程でNew AP-G2000の基本路線に検証を加え、その後の環境変化や当該プロジェクトの改革によってもたらされる新たな展望を踏まえて、長期経営ビジョンの見直し・改訂を行いました。
新しい長期経営ビジョンでは、New AP-G2000の基本路線を継承してグローバルな連邦経営による成長拡大を図りつつ、従来の「ものづくり」主体の業態から、「新しいサービス」や「新しい生産・流通の仕組み」などの知恵やノウハウを盛り込むことによって、新しい価値を創造しお客さまにソリューションを提供する21世紀型"New
Value Creator"への転換を目指します。
これは、1995年4月に制定した経営理念体系を再確認し、その企業理念"わたしたちは新しい価値の創造を通じて社会に貢献します (Contributing
to Society through the Creation of New Value by Innovative Ideas,
Technologies and Products)"を発展的に具現化しようとするものなのです。
これをもって21世紀に東レグループが更なる飛躍と発展を遂げるための経営行動の統一指針とし、長期経営ビジョン"AP-New
TORAY21"といたします。
長期経営ビジョン AP−New TORAY 21
I 経営理念
企業理念
わたしたちは
新しい価値の創造を通じて
社会に貢献します
経営方針
顧客のために 新しい価値と高い品質の製品とサービスを
社員のために 働きがいと公正な機会を
株主のために 誠実で信頼に応える経営を
地域社会のために 社会の一員としての責任をもち 相互に良好な関係を
行動方針
・安全と環境 安全・防災・環境保全を最優先課題とし
社会と社員の安全と健康を守り 環境保護に努めます・顧客重視 時代を先取りし
お客さまのために智恵と技術を生かします・国際競争力 製品とサービスの品質、コスト、使用価値の競争力を高め
国際市場で常に成長をめざします・世界的連携 世界を活動の場とする企業グループとして
心を一つにして総合力を発揮します・役割と自助 社内外から期待される役割を自覚して
現実を直視し自助の精神をもって課題を解決します・働きがい 目標を達成する喜びを分かちあい互いに高めあって
人を活かし組織を活かす風土をつくります・公正と誠実 公正さと高い倫理感と責任感をもって行動し
社会の信頼に応えます
II 21世紀の東レグループの企業イメージ
1. 科学技術を基盤に発展する企業集団 | |
: | 有機合成化学、高分子化学、繊維工学などの当社固有技術に、バイオテクノロジー、IT、ナノテクノロジーなどの新しい技術領域を加えて先端的な新技術、新製品の開発に挑戦し、これを基盤に成長・発展する企業集団 |
2. 弛まぬ意識改革・体質強化を推進する企業集団 | |
弛まぬ意識改革によって「フロンティアスピリット」「質実剛健」「アントレプレナーシップ」の気風があふれ、不断の体質強化によって環境に左右されにくい強靱な企業体質を作る企業集団 | |
3. グローバルな連邦経営により成長する企業集団 | |
東レグループ各社が独自性を活かしてそれぞれ競争力のある地位を確立し、東レを中核としたグループ各社間の有機的連携を強化することにより、グローバルに成長を続ける企業集団 | |
4. New Value Creatorの事業形態を追求する企業集団 | |
「もの」の生産・販売にとどまることなく、新たなビジネスモデルを構築して、お客さまの問題解決に総合的な役割を果たし、新たな価値を創造する事業形態への転換を追求する企業集団 | |
5. 優れた人材を確保・育成する企業集団 | |
当社経営に不可欠な優れた人材の確保・育成を図るとともに、目標を達成する喜びを分かち合い、互いに高め合うことのできる、人を活かし組織を活かす経営を推進する企業集団 | |
6. 安全・防災・環境を最優先課題とする企業集団 | |
安全・防災・環境保全を最優先課題とし、社会と社員の安全と健康を守るとともに、環境保護とエコロジーに対応した製品・技術を開発し、地球環境保護に積極的な役割を果たす企業集団 | |
7. 社会的責任を自覚し、社会貢献を果たす企業集団 | |
地域社会との良好な関係を維持するとともに、経営活動の透明性向上、消費者保護に努め、さらに国内外の科学振興財団活動を通じた科学・技術の振興・発展などによって市民社会に貢献する企業集団 | |
8. 新しい企業文化、高い倫理感を持つ企業集団 | |
21世紀にふさわしい生き生きとした魅力ある企業風土を作り上げ、かつ公正さと高い倫理感を持って行動し、誠実な企業市民として社会の信頼に応える企業集団 |
III 長期事業展望
基盤事業の繊維は、グローバルな事業展開を推し進めるとともに、これまでの「ものづくり」にとどまらず新たな知恵やノウハウを盛り込んだソリューションビジネスを展開し、生産から流通・サービスまでを統合した工商一体の総合繊維事業として安定的な収益基盤を確立する。
同じく基盤事業のプラスチック、ケミカルについては、グローバルな競争力を維持・強化するために戦略的なアライアンスを構築しつつ、従来の素材に加えて部材・加工品事業に注力し、更なる収益基盤の強化を図る。
情報通信、ライフサイエンス、環境・安全・アメニティーの成長3領域に対応した事業を「戦略的拡大事業」と位置付け、成長の牽引事業として経営資源の傾斜投入を行い、かつM&Aなどの多様な経営手法を駆使し、将来の中核事業とすることを目標に育成・成長拡大させる。
エンジニアリング、サービス等の関連周辺事業については、東レグループの持つ経営資源を有効に活用した事業展開を行いつつ、選択的拡大・見直しを図る。
事業区分 | 主要事業ドメイン | 対応する事業 | 長期事業展望 |
基 盤 事 業 |
生産から流通・サービスまでを統合したグローバルな総合繊維事業
素材・部材・加工品からなるグローバルなプラスチック、ケミカル事業 |
繊維、 プラスチック、 ケミカル |
グローバルな連邦経営とソリューション ビジネス、素材に加えて部材・加工品ビジネス を展開するとともに、グローバルなアライアンスを構築することによって、安定的な収益基盤を確立する。 |
戦 略 的 拡 大 事 業 |
情報通信
ライフサイエンス 環境・安全・アメニティー |
電子情報機材、 液晶材料、 医薬・医療、水処理、 複合材料、アメニティー、機能製品 繊維・プラスチック・ケミカルの一部 |
収益性の高い事業領域に経営資源を 傾斜配分し、かつM&Aなどのグローバルなアライアンスを積極的に進め、成長拡大させる。 |
関 連 周 辺 事 業 |
エンジニアリング、サービス 等 | 関係会社各社 | 東レグループの持つ経営資源を有効に活用し、選択的拡大を行う。 |
参考:2010年近傍の東レグループの事業構造展望 (成長3領域の拡大)
参考:2010年近傍の主な業績指標
業績指標 展望値 売上高
15,000億円
営業利益
1,200億円
売上高営業利益率
8%
ROA(営業利益/総資産)
約 8%
ROE(当期利益/株主資本)
約10%
繊維事業中期経営課題「AP-as No.1」の策定について
東レ(株)は、このたび、2001〜2003年度までの繊維事業中期経営課題を、
「AP-as No.1(Action Program for new Business Model as No.1)」というタイトルのもとに策定しました。
東レは1986年から3年毎に繊維事業の中期的な経営課題を策定し、実行に移してきました。しかしながら、前回策定した「AP21」以降、海外においては中国の「繊維強国」化、韓国・台湾メーカーの凋落、欧米ケミカルメーカーの合繊事業からの撤退・分社化など、また国内においても製品輸入の増加によるミル消費の減少、合繊メーカー各社の分社化など、事業環境は激変しています。
このような事業環境認識のもと、今回策定した今後3年間の中期経営課題 「AP−as No.1」では、「事業環境変化への対応、かつ地球規模のオペレーションを強化するビジネスモデルを構築し、糸綿から縫製品までの総合繊維企業としての世界一を目指す」ことをビジョンとして掲げ、グローバルリエンジニアリングの強化と「IT武装化」による国内外のネットワーク化の推進を通じて、国内においては事業規模の堅持と収益改善、海外においてはさらなる事業拡大と収益拡大を行っていきます。
詳細は、下記のとおりです。
1. 名称と対象期間 | ||
AP-as No.1(Action Program for new
Business Model as No.1) 対象期間は、2001〜2003年度の3年間 |
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2. VISION | ||
事業環境変化への対応、かつ地球規模のオペレーションを強化するビジネスモデルを構築し、糸綿から縫製品までの総合繊維企業としての世界1を目指す。 | ||
3. 基本方針 | ||
グローバルリエンジニアリングの強化と「IT武装化」による国内外のネットワーク化の推進により、国内事業規模の堅持と収益改善、海外事業のさらなる拡大と収益拡大を目指す。 | ||
4. 国内事業における課題 | ||
1) | 営業改革の推進(収益構造改革、社内の業務改革、市場構造変化への対応、新製品開発及び新用途開発の強化とスピードアップ、意識改革はトップから) | |
2) | 産業用途の拡大(ニューフロンティアの拡大) | |
3) | 収益力強化(特品拡大とコスト競争力強化) | |
4) | プロダクションチーム(PT)のリエンジニアリング | |
5) | 環境対策(リサイクルへの対応) | |
5. 海外事業における課題 | ||
1) | 中国のWTO加盟への対応(中国内需要の取り込みと競争力強化) | |
2) | QUOTAフリー後をにらんだテキスタイル事業展開(競争力強化と新商流の拡大) | |
3) | 産業用途の拡大(増加する海外需要への対応と収益基盤強化) | |
4) | アセアン各社の収益拡大 | |
6. 目標売上げ規模 | ||
2000年度 2003年度 連結決算ベース 4,335億円 5,000億円( 665億円増、115%) |
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7. 設備投資計画 | ||
合理化投資も含めて、中経期間の累積投資額は、国内150億円、海外525億円の合計675億円を計画。 | ||
8. 生産規模
(1)原糸・原綿 2000年度 2003年度 国 内 30万t/年 30万t/年( − ) 海 外 32万t/年 37万t/年(5万t増、115%) 合 計 62万t/年 67万t/年(5万t増、108%) : (2)テキスタイル 2000年度 2003年度 国 内 7.5百万疋/年 7.5百万疋/年( − ) 海 外 13.0百万疋/年 16.0百万疋/年(3.0百万疋増、123%) 合 計 20.5百万疋/年 23.5百万疋/年(3.0百万疋増、115%) (1疋は、50m)