化学工業日報  2003/1/24     発表文

東レ、PLA繊維事業展開を本格化へ

 東レは23日、ポリ乳酸(PLA)を用いた繊維事業を本格展開すると正式に発表した。まず産業・生活資材用の繊維製品の開発と販売を目指し、PLAの特性を生かせるカーペットや寝装資材などで展開する。その後順次、衣料やインテリアなど幅広い用途に拡大していく予定で、初年度の2003年度には20億円以上の売り上げを見込む。成長が見込まれる環境関連分野で繊維事業の戦略的拡大を図り、2005年をめどに年間販売量4000トン、売上高100億円規模のグローバルな事業展開を目指す。


2003/1/23  東レ

ポリ乳酸を原料とした繊維事業の本格展開について

 東レ(株)は、このたび、ポリ乳酸(PLA=Poly Lactic Acid)を主原料とする繊維素材事業を本格的に開始致します。PLAは、トウモロコシなどの循環型自然資源を原料として生成される生分解性ポリマーで、石油化学資源を使わず、かつ使用後は自然環境に還元することも容易であることから、21世紀に相応しい環境対応型素材として注目されています。
 当社は、「21世紀の新しい東レ」への転換に向けた経営改革プログラム“プロジェクト New TORAY 21”において、「環境・安全・アメニティー」分野を成長3領域の一つに位置付け、2010年近傍には主要な収益源として育成することとしています。今般のPLA素材事業の本格展開により、今後大きな成長が見込まれる環境関連分野で繊維事業の戦略的拡大を図り、平成17年頃には年間販売数量4,000トン、売上高で100億円規模のグローバルな事業展開を目指します。

 具体的な事業計画は、当初は産業・生活資材用の繊維製品の開発と販売を目指し、PLAの優れた特性が活かせるカーペット・寝装資材等で展開して参ります。その後順次、衣料・インテリアなど幅広い用途へ拡大していく予定であり、初年度の2003年は、売り上げ20億円以上を計画しています。また、従来から当社が技術的蓄積の強みを保有する紡糸および高次加工技術を駆使して、一層の機能向上を図ると共に、将来は先端ナノテクノロジーを応用したファイバー化技術などにより、新しい用途分野を切り拓いていく計画です。


 さらに当社は、本年1月21日に発表された米国カーギル・ダウ社のPLA繊維素材の新ブランド「
IngeoTM」(インジィオ)を育成するパートナーの一社として参画し、ポリ乳酸繊維の事業拡大に積極的に取り組んで参ります。
 今後、当社はPLA製品を単なる地球環境対応型の商品として位置付けるだけではなく、顧客・消費者の様々なニーズを基点とした新しい素材・商品を開発し、提案していくことにより、広く社会に貢献できる素材事業を推進して参ります。


http://www.cargilldow.com/ingeo/branding.asp 

Ingeo is a product built around everyday people with extraordinary dreams. In research that spanned the Americas, Europe, Asia and beyond, people told us that product performance is what matters most. Still, they are increasingly concerned about the well-being of future generations and their planet. Ingeo addresses these concerns. Ingeo fiber has comparable performance characteristics to current synthetic fibers. It offers a better social solution and an environmentally responsible business system from raw material through to end products.

Ingeo is a brand that stands for a fundamental belief in choosing to make a difference to the world. Ingeo literally means
ingredients from the earth.It is a real sustainability solution. But as a brand it stands for so much more. It stands for the right of every individual to choose to make a difference. We believe more people would embrace change for the better if it were just a little easier. With Ingeo, it is.


How Ingeo is made and unmade:

We start with an abundant, natural raw material like corn that can easily and efficently be reproduced each year. This corn is put through a simple process to make plant sugars.

The sugars are fermented in a process similar to making yogurt.

Then the fermentation products are transformed into a high-performance polymer called polyactide, which is branded NatureWorks
TM.

Ingeo
TM fiber is extruded from NatureWorksTM.

Compostability and chemical recylability mean that under the right conditions and with the right handling, the complete life cycle of production, consumption, disposal and reuse is neatly closed.

The annually renewable source for Ingeo
TM fibers means we don't have to source from depleting fossil fuel resources.

The production and use of Ingeo
TM means less greenhouse gases are added to the atmosphere. Greenhouse gases are the chief contributor to global climate change. Once produced, IngeoTM has a natural feel that enhances the end product when used in apparel, furnishings, fiberfill, carpet and more.


2003/04/25 東レ

東レとカーギル・ダウによる「INGEO(TM)」(PLA繊維)に関する包括的契約の締結について

 東レ(株)と米国カーギル・ダウLLCは、本日、カーギル・ダウが開発したトウモロコシを原料とするポリ乳酸(PLA=Polylactic Acid)を使用して東レがPLA繊維を製造・販売する事業について、ブランド、技術ライセンス、PLAチップ供給等を含む包括的な契約を締結しました。

 両社は、東レがカーギル・ダウからPLAチップの供給と「INGEO(インジィオ)」ファイバーの製造に必要な
技術のライセンスを受けPLAファイバーの製造を日本、韓国、タイ、インドネシア、マレーシアなどで行うと共に、テキスタイルの製造についてはアジアおよび欧州を含むグローバルな地域で行うことに合意しました。また東レは、「INGEO」ファイバーおよびテキスタイルの販売について、グローバルな展開を行っていきます。

 さらに、カーギル・ダウが新しいライフスタイルを提案するPLA繊維ブランド「INGEO」について、東レは素材から最終商品に至るまでの使用許諾を受け、カーギル・ダウと共同で「INGEO」ブランドを、循環型自然資源を原料とする大型の繊維素材に育成していきます。 

 東レは、「21世紀の新しい東レ」への転換に向けた経営改革プログラム“プロジェクト
New Toray 21"において、「環境・安全・アメニティー」分野を成長3領域の一つに位置付け、2010年近傍には主要な収益源として育成する方針です。本契約締結を契機に、当社はPLA繊維事業を本格的に展開し、今後大きな成長が見込まれる環境関連分野で繊維事業の戦略的拡大を図っていきます。今後の展開については、当初は産業・生活資材用の繊維製品としての開発・販売を目指して、生分解性、抗菌性、皮膚に対する安全性などのPLAの優れた特性を活かせるカーペット・寝装資材・産業資材等の用途に取り組みます。その後、順次、衣料・インテリアなど幅広い用途へ拡大していく予定であり、2005年には年間販売数量4,000トン、売上高で100億円規模を目指して育成していく計画です。

 東レは既に、カーギル・ダウが展開する「INGEO」ブランドプロモーションのための
パートナー企業の一社として、環境対応型素材として「INGEO」繊維を育成する事を発表しており、今回の契約締結により、カーギル・ダウ社と一層強固な連携を図ることが可能となります。また、東レは今後、自社が製造・販売するPLA関連製品に対して、東レ独自のブランド“ECODEAR (エコディア)”をサブブランドとして使用することについても、同社と合意しました。東レは今後、“ECODEAR”を、「INGEO」ブランドと共に育成し、テキスタイルおよび消費者が手にする最終商品においても両ブランドを訴求していきます。

 「INGEO」および「INGEO」のロゴは、カーギル・ダウLLCの商標です。


2003/06/09 東レ(株)

グループ紡績事業の統合・再編について

 東レ(株)は、このたび、グループ関連紡績会社の大垣紡績(株)【本社:岐阜県大垣市、代表取締役社長:西川 尅弘】と扶桑紡績(株)【本社:岐阜県岐阜市、代表取締役社長:柚木 十次】について、本年7月1日付で合併することを決定いたしました。新会社の社名は大垣扶桑紡績(株)【本社:岐阜県大垣市】で、大垣紡績(株)が存続会社となり、扶桑紡績(株)の事業を継承します。新会社の資本金は4億円、従業員数は220名で、既存の2工場(大垣工場、扶桑工場)については従来通り運営していきます。また、営業体制についても、大垣工場の製品は旧大垣紡績社が、扶桑工場の製品については、丸佐(株)【本社:岐阜県岐阜市】が引き続き担当してまいります。

 現在、日本の合繊短繊維製品の需要は年44万トンと推定されますが、国内の紡績糸生産量は海外からの製品輸入の増加の影響により、減少傾向にあります。このような厳しい事業環境において、東レはグループ紡績事業における経営効率化を推進する一方、QR対応、および各社の個性を生かした新製品開発、付加価値商品の拡販に注力してまいりました。しかし、国内紡績市場は今後一層厳しくなると予想されることから、抜本的な事業体質の強化が急務となっていました。今回の統合・再編は、両社が保有する経営資源を融合して競争力を一段と高めることで、縮小する国内紡績事業における生き残りを図るものです。

 新会社は、経営の効率化とトータルコストダウンによる経営基盤の強化を推進する一方で、機能素材や非衣料用途に重点をおいた特長ある商品開発、グループ繊維関連会社の丸佐(株)が有するコンバーティング機能との連携による販売力強化を図ることにより、競争力ある合繊紡績企業としての変革を推進します。新会社は平成17年度に32億円の売り上げを予想しています。

 東レは、現在推進している経営改革プログラム“プロジェクト NT21”において、関係会社を含めた東レグループの「事業構造改革」を、抜本的体質強化のための重要プロジェクトの一つとして掲げています。その一環として、関連周辺事業の選択的拡大のため、各事業・グループ会社の収益性・成長性、並びに戦略性などを総合的に見直し、整理・再編・売却など思い切った手を打つこととしています。東レは今後も、グループ内で保有する基盤事業の営業力やグローバルな事業展開力、さらには成長領域を牽引するコア技術など、当社の強みである経営資源を統合・結集することにより、高収益企業グループを目指して参ります。


1.新会社概要 
(1)社 名 大垣扶桑紡績株式会社
(2)本 社 岐阜県大垣市美和町
(3)工 場 大垣工場(岐阜県大垣市)、扶桑工場(愛知県扶桑町)
(4)代表者 (未定)
(5)資本金 400百万円
(6)出資比率 東レ(株) 58.0%、丸佐(株) 39.3%、十六銀行 2.6%、その他 0.1%
(7)事業概要 A.合成繊維及び各種合成繊維混紡糸の製造・販売
B.繊維クッション材の製造・販売
C.色綿合成繊維紡績糸の製造・販売
(8)売上計画 32億円(平成17年度見込み)
(9)従業員数  220名(平成15年7月1日合併時点の予定)
     
2.大垣紡績(株)概要  
(1)本 社 岐阜県大垣市美和町
(2)設 立 昭和23(1948)年8月
(3)代表者 代表取締役社長 西川 尅弘
(4)資本金 400百万円
(5)出資比率 東レ(株) 98.3%、その他 1.7%
(6)事業概要 A.合成繊維及び各種合成繊維混紡糸の製造・販売
B.繊維クッション材の製造・販売
(7)売上高  24億円(平成14年度)
(8)従業員数 158名(平成15年3月末現在)
     
3.扶桑紡績(株)概要  
(1)本 社 岐阜県岐阜市美園町
(2)設 立 昭和26(1951)年5月
(3)代表者 代表取締役社長 柚木 十次
(4)資本金 80百万円
(5)出資比率 丸佐(株) 75.1%、東レ(株) 19.9%、十六銀行 5.0%
(6)事業概要 色綿主体の合成繊維紡績糸の製造・販売
(7)売上高 15億円(平成14年度)
(8)従業員数 64名(平成15年3月末現在)

 


朝日新聞 2003/12/18

東レ、中国の開発部門増強 中国人研究者500人規模に
  
http://www.asahi.com/business/update/1218/043.html

 東レは、中国の研究開発部門を強化し、大卒以上の中国人研究者を5年後に約500人に増やす。上海地区に位置する江蘇省南通市に拠点を置き、04〜05年度に20億円を投じて、繊維事業の研究体制を整える。同社の中国事業は現在、全世界での売上高の約5%にすぎないが、研究部門(世界で約2800人)としては本格的な組織となり、現地生産の拡大を技術面から支える。

 
「東麗繊維研究所有限公司」で、02年3月に設立した。南通市にはポリエステル・ナイロンを一貫生産する大規模な工場があり、中国人研究者は現在、約50人だが、04年度は大卒、院卒や海外留学組など約100人を採用。組織は約3年後に300人、08年度中に約500人規模になり、染色や紡織の研究や糸の原料開発に取り組む。中国は経済発展に伴って環境破壊が進み、安全な水をつくる浄水施設の整備も緊急課題。同社が持つ水処理技術は、中国でも需要があると見ており、こうしたハイテク分野の研究も現地化する。

 現地採用の利点は、労働力コストが日本人の60分の1〜70分の1に抑えられるほか、中国市場の需要にあった製品を素早く、効率的に開発できることが挙げられる。商品化までの時間の短縮と経費削減は、事業分野を問わず、各メーカー共通の課題。同社は、現地研究部門を一気に拡大し、対応することにした。

 中国に生産拠点をもつ他のメーカーでは、ソニーがソフト開発で中国人研究者約20人を採用。約3年後に100人規模に増やす予定。シャープは現在、家電開発にあたる研究者が8人おり、05年度に約50人に増やす。


日本工業新聞 2004/1/14

東レ、上海に繊維高分子の研究拠点開設  
 
http://www.jij.co.jp/news/chemical/art-20040113220325-DWOLCCDOCO.nwc

 東レは、中国の上海市に、繊維に関連する高分子研究を手掛ける研究所を新たに開設した。中国政府が重点大学と位置付ける上海交通大学(上海市)と連携しながら、現地の優れた研究者を積極的に投入し、先端技術研究を強化するのが狙い。上海市に設置した研究拠点を、すでに江蘇省南通市に設置している研究所のブランチ(支部)と位置付け、南通市は主に製品に近い応用研究を、上海市の支部で主に基礎研究に取り組む考えだ。

 新たに開設したのは、東レが2002年3月に江蘇省南通市に設置した
「東麗繊維研究所(中国)有限公司」の支部。上海交通大学に隣接するリサーチパーク内の施設を活用し、このほど運営を開始した。

 南通市の既存研究所は合成繊維に関する研究と技術開発を行っている。現在、南通市の研究者は50人程度だが、上海市に開設した支部と合わせて、04年度中に約100人に、さらに06年度をめどに500人に増員する計画だ。優秀で人件費の安い中国人研究者を増員することで、繊維に関連する加工技術などの先端研究を強化する。

 上海交通大学は、北京大学や精華大学などともに、中国が重点大学と位置付ける理系の総合大学。繊維に関する研究者が多く集まっているため、同大学の隣接地に研究所の支部を開設し、産学連携することで、優秀な研究者を確保する。

 東レは、中国で子会社の東麗合成繊維(南通)を通じて、ポリエステル繊維を生産している。さらに05年1月からは、同子会社でナイロン長繊維の生産も決めるなど、繊維事業で中国投資を活発化している。


2004年6月8日 東レ

繊維事業における東レ型クラスターの形成について
http://www.toray.co.jp/news/fiber/nr040608.html

 東レ(株)は、この度、繊維事業を今後とも最重要な基盤事業として発展させていくため、川中分野(織布・編成・染色・縫製など)において、新たなパートナーシップの形としてクラスターを形成するべく、「東レ合繊クラスター」を発足させました。
 これにより、東レ独自の21世紀型繊維事業経営として、世界に類のない合繊クラスターを構築してまいります。

 「東レ合繊クラスター」は、東レおよび産地企業からなる技能集積集団であり、お互いが切磋琢磨し、有機的に連携しながら、国際競争力を高めていきます。
 またその狙いは、昨年7月に策定された「繊維ビジョン」にて提言されている次の3つの課題を実践することです。
 1つ目は、「流通構造を含む抜本的な構造改革の推進」であり、生産と流通が密接にリンクして常に緻密な管理と合理的で最適な取り引きの組み合わせを追求すること等です。2つ目は、「輸出拡大と通商政策の推進への対応」であり、FTAの研究や、縫製能力の活用・連携による中国との共生を図ること等です。最後の3つ目の課題は、「素材開発力・商品開発力の強化」であり、先端材料と高次加工技術の有機的連携による新製品開発力や産業資材・工業資材への展開を強化することにより新規需要を創出すること等です。

 参画企業は、委託加工・自販・先端材料の3つのグループからなる「東レ産地企業集団」の構成メンバーであり、約70社でスタートします。
 東レおよび参画企業は、去る6月4日に、北陸地区において発足式をとりおこない、10月より本格的な活動を開始する予定です。

 東レは、日本の繊維産業の復権を目指した産業横断的な動きに呼応し、将来的には学官の連携も視野に入れたこのクラスターの形成により、原糸・高次一貫の知恵と技術を融合させて、世界最強の合繊テキスタイル事業の基盤をさらに強固なものにしてまいります。


2004年7月5日 東レ

世界初 柔軟性ポリ乳酸フィルムの開発に成功
―高機能ナノアロイ成分の位置制御でポリ乳酸を柔軟化―
http://www.toray.co.jp/news/film/nr040705.html

 東レ(株)は、この度、当社独自のフィルム微細構造制御技術により、植物由来の地球環境に優しい素材であるポリ乳酸(PLA=Poly Lactic Acid)からなる柔軟性フィルムの開発に世界で初めて成功しました。本フィルムは、PLA本来の透明性と耐熱性を損なうことなく、ラップフィルム等にも適用可能な優れた柔軟性を達成しており、今後、完全生分解性の環境対応型フィルムとして大きな需要が期待されます。

  PLAは、21世紀に相応しい環境対応型素材として着目されており、繊維、フィルム、シート、樹脂等の製品化が進んでいますが、既存の汎用プラスチック・高機能のエンジニアリングプラスチック製品の置き換え等、一般化・工業化には、熱特性(耐熱性、熱収縮など)・力学特性(強度、靱性など)などの基本性能を向上させる新技術の開発が必要です。

  新技術の中でも「柔軟化」は最重要課題の一つであり、PLAのフィルム製品化においては、従来、低分子液状可塑剤を添加する方法が提案されていますが、温度、圧力などの外的変化に弱く、可塑剤成分がブリードアウトしてしまい、透明性、柔軟性などのフィルム特性が経時的に大きく変化してしまうという致命的な欠点がありました。この度、東レの開発した下記のような新技術は、温度、圧力などの外的変化に対してもブリードアウトが生じにくく、非常に安定した柔軟性を発現させるものであり、透明性、耐熱性など、PLA本来の優れた特性を低下させず、完全生分解する点が特長です。
 以下にその技術ポイントを示します。

1.高機能アロイ成分の設計
 PLAと特異的に強く相互作用し、ナノ分散を実現する上で有効な低運動性のユニットとPLA柔軟化のキーとなる高運動性のユニットを持った生分解性高機能アロイ成分を設計しました。

2.高精度二軸延伸によるアロイ成分の位置制御
 独自の高精度二軸延伸技術を駆使してPLA微結晶を規則的に配列させることにより、フィルム中に高機能アロイ成分をナノアロイ化し、それぞれのユニットの位置を高精度に制御しました。ここで、アロイ成分の低運動性のユニットがPLA微結晶部に位置固定(ピン止め)される一方、高運動性ユニットがPLA非晶部(互いにつながった海成分的に存在)の運動性を効果的に高めますので、フィルムの柔軟性を飛躍的に高めることができます。

 今回の環境に優しい新規柔軟性ポリ乳酸フィルムは、柔軟性、透明性、耐熱性、生分解性に優れることから、軟包装などの包装材料、建材、電気・電子機器や自動車などの保護用途をはじめ、工程フィルムなどの工業材料用途にも幅広く展開してまいります。特に優れた生分解性の特性を活かしたコンポスト対応ラップフィルムは、21世紀型の環境対応商品として大きな成長が期待されます。

 当社は今後とも、次世代PLAフィルムをはじめとする地球環境に優しい循環社会対応型の先端材料開発を強化し、新しい社会ニーズに対応した価値と市場を創造してまいります。


2004/10/18 東レ

中国での研究開発を強化
−上海に新研究所を設立 ナノテク中心に高分子全般に研究開発を拡大−
http://www.toray.co.jp/news/rd/nr041018.html

 東レ(株)は中国での研究開発推進を重視し、2002年に外資企業では初めて繊維の研究所会社(東麗繊維研究所(中国)有限公司:董事長佐野啓三(略称:TFRC))を創設し(江蘇省南通市)、活動を進めてきましたが、今回その対象領域を高分子研究分野全般に広げることを主目的に上海市閔行区の紫竹科学園区に上海分公司を設立します。TFRCでは現在南通においても繊維分野の設備拡充を図っており、上海・南通での研究開発施設建設に東レは約1.2億人民元(約16億円)の資金を投入することとなります。上海分公司の新研究所は10月29日(金)に日中関係者を招き開所式を行い、25名の研究者にて活動を開始します。

 上海分公司では東レの得意とする高分子先端材料の研究開発に主体をおき、最新のナノテクノロジーを駆使した各種の樹脂・フィルムなどに利用される高分子材料の研究開発を行うと共に、機能性高分子膜を利用した分離技術に基づく、海水の淡水化・上水の浄化・排水の処理等の水処理分野の研究も推進していきます。

 上海分公司にはナノオーダーの高分子構造を観察し解析できる透過型電子顕微鏡をはじめとする最新の各種分析・解析設備を備えると共に、開発製品の具体的な品質を把握できるようにするための樹脂の射出成形機や押出し機等の製品試作設備を整え、基礎的な研究から製品への開発適用までを一貫して取り扱える機能を備えています。また、中国の大学や各種研究機関との共同研究を促進するべく、東レと連携する研究者の方々と一緒に研究できるオープンスペースも準備しています。

 東レの中国における研究開発活動の強化策は、今回の上海分公司の建設に止まらず、南通本社でも繊維の研究を更に強化するために、繊維高次加工の試験生産用各種設備を集約した高次加工棟の建設を今年完成を目指して進めるとともに、合成繊維布帛の原料となる重合体を作る技術や重合体から糸を作る技術の研究開発にも取り組むべく、試験重合・製糸設備の設置を進めており、このための重合・製糸棟も来春には完成の予定です。この様な一連の繊維関連分野での研究開発設備の設置によって、東レの基盤事業である繊維事業の中国展開が基礎研究から製品開発、新規事業用途の開拓までを含めた一貫体制として増強されます。

 この上海・南通での施設の拡充を研究開発活動に有効に生かすためには、中国の優秀な人材の確保と今後の育成が不可欠となります。この観点から、TFRCはこれまで中国の優秀な多数の若手研究技術者を採用してきており、2002年の研究会社発足時には約10名であった研究員が、現在では130名の体制となっています。また、欧米で優れた研究実績のある経験豊かな中国人研究者も採用し、本研究会社で研究して頂くと共に、若手研究技術者の指導・育成にも尽力して頂いています。この様な体制整備により若手中国人研究者の早期の戦力化が図られ、今後大きな成果が期待できると考えています。

 今後は上海で、高分子関係の基礎応用研究施設を一層充実させると共に、水処理技術開発のパイロット施設によるフィールドテストや、樹脂・フィルム分野で中規模のテスト生産なども視野入れて、南通・上海の施設拡充を図っていく所存です。この様な施設拡充も踏まえて、上海・南通あわせて、2〜3年後には200〜250名の人員を有する研究所会社に拡大して行く計画です。

 世界的に事業展開をしている東レGにとって、中国は最も事業拡大の成長潜在力がある
重要な地域と位置付けており、繊維事業の拡大はもちろんのこと、当社の先進的な高分子技術に基づく各種先端材料製品の事業拡大も重要な戦略です。
 東レGの中国での事業規模を、約500億円から2010年に3000億円への拡大を目指していくなかで、将来に向けてのTFRCの課題は、

(1) 東レGの中国での上記事業拡大計画を研究技術開発の面から総合的に支える技術者集団となること
(2) 基礎的・先進的な研究開発を産学官連携で推進し、高い技術水準の研究開発成果を生み出すこと

の二つであり、この目標に向けて、南通・上海の2拠点が積極的に活動を展開して参ります。

(ご参考)
上海分公司開所式予定
日時:2004年10月29日(金) 16:15〜
場所:開所式典 上海紫竹信息数碼港(上海紫竹インフォメーションデジタルセンター)
住所:上海市閔行区東川路555号
    式典後  上海分公司施設見学 


2002年4月25日 東レ

中国における繊維研究所の設立について
http://www.toray.co.jp/news/fiber/nr020425.html

 東レ(株)は、このたび、当社の保有する重合・製糸・高次加工にわたる繊維技術を応用した研究・開発を行う研究所である「東麗繊維研究所(中国)有限公司(Toray Fibers & Textiles Research Laboratories (China) Co., Ltd.、略称:TFRC、董事長:岡本三宜、資本金:7.6百万元、東レ100%出資)」を3月28日付けで設立いたしました。本研究所の所在地は、中国江蘇省南通市の「東麗酒伊織染(南通)有限公司(TSD)」内です。

 中国は、すでに、化合繊、合繊長繊維織物とも世界の約25%を生産する世界最大の繊維大国に躍進し、今後さらに成長を続けることが確実です。当社は、1990年代から南通市においてポリエステル長繊維製造販売会社「東麗合成繊維(南通)有限公司(TFNL)」および合繊長繊維織物製造販売会社「TSD」を設立し、事業展開を進めてきました。その中国において先進的な研究開発拠点を設立することによって、中国の優れた人材と研究成果を活用することは、当社グループの繊維事業にとって有効不可欠であるとともに、中国繊維産業の発展に大きく貢献できるものと確信しています。

 本研究所は、まず、当社からの委託により繊維高次加工分野における開発を行い、その成果は当社中国合弁会社向けにライセンシングされます。具体的には、中国市場向けとして、中国糸を活用した新規加工糸織物、新規高機能織物や高機能染色加工織物などの開発を行います。  
 将来的には、重合、製糸、糸加工、織編、染色、評価、解析にかかわる機能を充実させ、広範囲にわたる繊維に関する研究開発を行い、その成果を世界各国の当社グループや、日本国内の当社協力工場(PT)、および中国企業、海外企業向けにライセンシングを行う構想を持っています。また、当社グループ以外の機関・企業からの研究開発の受託や、商品・素材の評価・解析業務の受託も行って行く計画です。さらに、本研究所は、中国の研究機関や大学とのコンソーシアム設立による共同研究を行う中国第1級の繊維研究所とすることも視野に入れています。

 当社は、「21世紀の新しい東レ」への転換を目指した経営の抜本的改革である“プロジェクトNew TORAY 21”を本年4月からスタートいたしました。本研究所設立は、その中期の課題・改革に掲げた「中国事業の育成・拡大」を研究・技術開発面から支え、合わせて経営戦略・事業戦略に密着した「研究・技術開発機能の更なる強化」を具現化していくものです。

【新会社概要】
1. 会社名 : 東麗繊維研究所(中国)有限公司(略称:TFRC)
        Toray Fibers & Textiles Research Laboratories (China) Co., Ltd.
2. 所在地 : 中華人民共和国江蘇省南通市経済技術開発区通興路南新開路西
        *東麗酒伊織染(南通)有限公司(略称:TSD)建屋内
3. 資本金 : 設立時 7.6百万元(約1.19億円)
        *東レ100%出資 3年以内 50百万元(約7.83億円)に増資予定
4. 社員数 : 当 初 12名(日本人5名、中国人7名)
        2003年10月以降100名前後
        2007年以降 400名前後
5. 事業内容 : 繊維新製品・新技術の研究開発


2004年10月22日 東レ

ナノテクノロジーによる新たな繊維加工技術の開発について
−単繊維の表面にナノスケールの被膜形成が可能−
http://www.toray.co.jp/news/fiber/nr041022.html

 東レ(株)はこの度、繊維加工において、従来のナノ加工とは異なり、一層高度な機能を発現するための分子配列や分子集合体の形成が可能な『ナノスケール加工技術』の開発に、成功しました。
 今回開発に成功した『ナノスケール加工技術』は、布帛(織・編物)を構成する単繊維の一本一本にナノスケールの分子集合体からなる機能材料被膜を形成する技術
“ナノマトリックス”です。
 この技術を適用することにより、布帛の風合いを損なうことなく、新たな機能の発現、機能の複合化、従来機能(性能、耐久性など)の格段の向上、並びに適用素材・用途の拡大などが可能になると考えられます。

 “ナノマトリックス”は、布帛に機能性を付与する目的で「自己組織化(注1)」という概念に着目し、機能材料と繊維素材(ポリマー)との相互作用や反応の条件(温度、圧力、磁場、電場、湿度、添加剤など)を制御することにより、従来加工では単繊維間隙や、織編組織の交差部分に機能材料が不均一に付着(無秩序な付着)するのに対し、今回新たに開発した技術では、
単繊維の一本一本に対してナノスケールで機能材料の配列、分子集合状態を制御することが可能で、既に10〜30nmという被膜を形成(秩序ある付着)させ、表面を覆うことに成功しております。
 この新技術により、単繊維のそれぞれが、均一な機能材料の被膜で覆われるため、例えば衣服の着用時に布帛伸縮によって起こる、不均一付着の機能材料の剥離、脱落や、組織拘束による布帛の風合い変化などの問題が解決され、布帛の風合いを損なうことなく、安定した機能を発揮できるようになりました。また、被膜の表面積が格段に大きくなることにより連続皮膜となることで、機能性のレベルや耐久性をこれまで以上に向上させることができます。さらに、相反する性質の機能複合、例えば、ある程度の水分の吸着を必要とする制電加工と、水分を寄せ付けない撥水加工のような相反する機能の複合化も、ナノスケールでの機能材料の配列、分子集合状態を制御することで可能になります。

 近年、ナノテクノロジーは、ますます注目を集めております。ナノテクは、マクロスケールのものを小さく加工する「トップダウン技術」(例えば、リソグラフィや極微細加工技術など)と、ナノスケールあるいはそれ以下のサイズのものを組み上げていく「ボトムアップ技術」(例えば、ナノマニピュレーションと呼ばれる原子、分子を一つ一つ積み上げて構造体を作る技術など)とに大別され、ITや医療などをはじめとする分野で大いに活用されています。
 繊維の分野においても、ナノテクノロジーを謳ったナノテク繊維製品が次々と上市されておりますが、これらの最新技術を活用したものではなく、繊維加工技術との間に大きなギャップがあることは明らかです。

 このような状況下、東レは、従来品との大きな相違点を実感できる「見てわかる」「着てわかる」を開発コンセプトに、これらの最新技術を活用した様々なナノスケール技術の開発に着手しました。この中から、特に「自己組織化」という概念に着目し、繊維の『ナノスケール加工技術』の量産化を目指した研究・開発を進めた結果、ある種の条件下でナノスケールの構造が自発的に形成される自己組織化を工業的規模でコントロールし、かつ製品化を達成できる技術を確立しました。現象は複雑で未解明の部分もまだ多々ありますが、目的とする機能を発現させるための構造制御要因さえ分かれば、自己組織化によって所期のナノスケール構造の形成を可能とする、技術革新の第一歩を踏み出しました。このブレークスルーによって、資源的にもエネルギー的にも、無駄のない製造技術を生み出すことができ、今後の繊維機能加工の生産システムを一変させる技術であると確信しています。

 東レは今後も、中期経営課題“プロジェクトNT−II”で掲げる「先端材料事業群の拡大」において中核を成す、東レグループが保有する技術のひとつであるナノテクノロジーを駆使して、一層高難度な技術や高機能を持った新技術を開発していく所存です。

注1:  「自己組織化」という概念自身、研究者の間でも科学的な共通認識が得られていないのが現状であり、明確な定義は存在しないが、我々は、分子がその構造ゆえに、加工の対象となる繊維素材(ポリマー)との相互作用や反応の条件(温度、圧力、磁場、電場、湿度、添加剤など)により、特定の分子配列や分子集合体を形成する現象と考えており、コントロールされた条件下での、無秩序な状態から秩序化への自発的反応であると捉えている。
 ナノオーダーではないが、たとえば食塩の水溶液から、塩化ナトリウムの単結晶を成長させる理科の実験や、雪が気象条件によって六角形を基本として様々な結晶を造形することなども、無秩序な状態から秩序化への「自己組織化」であると一般的に言われている。

 


2006年8月23日 東レ

中国での高機能ポリプロピレン長繊維不織布新会社の設立について

 東レ(株)はこの度、中国において、高機能ポリプロピレン長繊維不織布(PPスパンボンド)およびその高次加工品の生産・販売を行う新会社を設立することを決定しました。新会社名は「東麗高新聚化(南通)有限公司」(略称 TPN)(仮称)です。中国江蘇省南通市の経済技術開発区内で2006年10月に設立し、2008年2月から操業を開始する予定です。

 東レグループのPPスパンボンド事業は、現在、韓国の子会社である東レセハン(Toray Saehan Inc.(略称TSI))で展開しています。年産49,000t規模の設備を有し、韓国国内はもちろん、日本、中国、ASEANなどアジア各国へ向けて幅広く販売していますが、今後の中国での急速な需要拡大を見込み、この度、中国での生産・販売を開始することとしました。本計画は、東レグループが事業基盤を確立している中国南通地区に生産拠点を持つことによって効率的な投資が可能となり、また輸入品対比で物流コストを削減できることから十分に競争力を発揮できると考えています。

 導入する設備は、豊富な実績を持つドイツの不織布設備メーカーの最新鋭マシン(能力:年産18,000t)で、スパンボンドとメルトブローを組み合わせた多層不織布を生産します。展開用途は、紙おむつや生理用ナプキンなどの衛生材料用途、手術用のガウンや覆い布などのメディカル用途、その他工業資材、農業資材用途が中心になります。

 このような用途に使用される高機能PPスパンボンドの中国需要は急速に拡大していますが、現状、国産品だけでは不足しており、輸入に頼っています。東レグループは、TSIで培った技術、ノウハウ、実績をベースに、高機能PPスパンボンドを中国国内で生産・販売することにより、中国へ進出するユーザーおよび中国国内のユーザーの需要拡大に対応します。

 今回の新会社設立によって、東レグループの供給能力は年産67,000tに達し、アジアでトップクラスになります。また、東レグループは、今後の需要拡大対応としてさらなる増設も視野に入れており、アジアNo.1のPPスパンボンドメーカーを目指していきます。

<新会社概要>
1. 社名(仮称) : 東麗高新聚化(南通)有限公司
           Toray Polytech (Nantong) Co.,LTD. (TPN)
2. 事業内容 : ポリプロピレン長繊維不織布および高次加工品の生産・販売
3. 所在地 : 中国江蘇省南通市
4. 設立 : 2006年10月予定
5. 資本金 : 248百万元(約37億円)
6. 株主 : 東レセハン:50%、東レ:40%、東麗(中国)投資有限公司:10%
7. 代表者 : 董事長(就任予定) 李 泳官(リー・ヨンガン)
        総経理(就任予定) 金 鎭年(キム・ジンニョン)