2003年12月11日 東洋紡績

米国におけるザイロン使用防弾チョッキの動きについて
http://www.toyobo.co.jp/seihin/kc/pbo/pdf/20031211.PDF

 米国において、当社のザイロンを使用する防弾チョッキについて、最近いくつかの動きと報道がなされておりますので、これらについてご説明申し上げます。

 2003年9月9日に、米国のセカンドチャンス社は自社の製造するザイロンを使用した防弾チョッキの性能が予想より早く劣化するとして、これらの防弾チョッキの製造を中止し、販売済の製品を回収、補強、交換等の措置を取ることを発表いたしました。
 このセカンドチャンス社の発表を契機として、米国ではユーザーである警察当局、警察官等、法の執行に携わる人々の間で、ザイロン使用の防弾チョッキの安全についての不安が広がってきました。また、一部の米国のメディアにおいては、ザイロンの繊維そのものやセカンドチャンス社の製品だけではなくザイロンを使用した防弾チョッキ製品の全ての品質を疑問視する報道をおこなったりしているものもあります。
 当社では、セカンドチャンス社の自社の製品が不適切であったという発表に関連して、セカンドチャンス社より、どのように問題であったかについてのデータや事実について情報開示を受けておりません。一方、当社が把握しているセカンドチャンス社以外でザイロンを使用、展開している米国やカナダの7つの防弾チョッキメーカーからは、ザイロンについてのかかる性能不安についての報告を今日現在一切受けておりません。また、セカンドチャンス社と異なる見解を発表している会社もあります。
 当社はこれらの米国の動きについて、注意深く、事実関係の把握及び対応に努めております。当社は、本問題については、警察官等のユーザーの生命と安全を守ることが最優先に考慮されるべきものと考えております。
 当社は、1998年に製造販売を開始したザイロンというこの新しい繊維について、知りうる限りの品質に関する情報を開示してきました。2001年7月からは、強度保持性の指標として、高温、高湿下における強度保持のデータを定期的に開示してきました。これにより、一定以上の特殊な環境下でザイロン原糸の引っ張り強度が低下することは業界で広く理解されてきたと考えております。同時に、ユーザー各位には、その製品の設計、製造にあたり、本情報を十分に考慮されるようにお願いをしてきました。
 防弾チョッキの性能は、その他のあらゆる加工製品と同様に、その使用する原料、製造加工方法、技術レベル等の総合的な組み合わせによって決定されます。具体的には、防弾チョッキメーカーは、チョッキの設計、縫製、運針、仕上げ等についてそれぞれの保有する技術の最善を尽くして、目的に十分な安全性を確認した上、最終製品を市場に送り出すことになります。残念ながら、当社は、これまで防弾チョッキメーカーの具体的使用目的、設計、製造方法等について関与しておりません。したがって現在流通している各メーカーの防弾チョッキの技術、品質を論評する立場にはありません。
 しかしながら、先日のセカンドチャンス社の問題が浮上したことで、防弾チョッキメーカー各位には、速やかにその製品の実用における性能評価を実施し、その安全性についての試験結果を公表することにより、ユーザーの安全を確保し、不安を解消されることを当社として強くお奨めしております。当社その作業に積極的に協力させていただくことも表明しています。
 最後に、この11月18日に、米国連邦司法長官が、連邦司法省に対し、ザイロン使用の防弾チョッキの性能について90日以内に徹底的に調査、報告をおこない、速やかに警察官等の安全を確保するよう命じました。また、120日以内に連邦、州、地方の法の執行機関、防弾関係業者を集めた会議を開催し、ザイロン使用製品の是非についての結論を出すことも発表いたしました。当社はこの動きを歓迎し、かかる調査に積極的に協力することを表明しております。

 当社は、ザイロン使用の防弾チョッキについての現在の懸念について事実解明と安全性確保に全力をあげますとともに、その他の用途におきましても、引続き、皆様のお役に立てるよう、最善の努力を続けてまいります。今後、より一層のご指導、ご協力を賜りますようお願いを申しあげます。


2005/07/13 東洋紡績

米国における「ザイロン(R)」繊維を用いた防弾ベストに関する集団訴訟の和解について
http://www.toyobo.co.jp/press/press204.pdf

 東洋紡績株式会社(本社:大阪市北区堂島浜二丁目2番8号)は、米国における防弾ベストのユーザー等から米国オクラホマ州メイエス郡地方裁判所に提訴されている集団訴訟(代表原告:Steven W. Lemmings氏)において、本日以下のとおり原告団と和解契約を締結いたしましたので、お知らせいたします。

1.本件訴訟の内容及び経過
 本訴訟は、当社製品のザイロン(R)繊維が使用された防弾ベストの性能が不十分であるとして、防弾ベストのユーザー等が防弾ベストメーカー(セカンドチャンス社)に対して損害賠償などを訴えていたもので、当社および当社の米国子会社である東洋紡アメリカ株式会社も被告となっていました。
 証拠開示手続が進行する中、2004年10月に
セカンドチャンス社がアメリカ連邦破産法に基づく倒産手続(Chapter 11)を申請した結果、自動的に同社との関係では本件訴訟は停止され、その後は、当社および東洋紡アメリカ株式会社に対してのみ訴訟が進行しました。
 当社は、裁判において当社に非がないことを主張する一方、原告団およびセカンドチャンス社との間で和解の道を探ってまいりましたが、このたび、原告団と当社および東洋紡アメリカ株式会社との間で和解が合意されたものです。

2.和解の内容 

(1) 当社は、和解金として2,900万米ドル(約33億円)を原告団に支払います。当該金員は、ファンドとして管理され、最終的に原告団の一人一人に分配されます。
(2) 原告団は、和解契約上さらに、米国のアーマーホールディングス社の防弾ベストを割引価格で購入する権利があります(この点についてはアーマーホールディングス社と原告団との間で別途契約がなされています)。
(3) 他方、原告団は、本件に関する当社および東洋紡アメリカ株式会社に対するその他の請求を放棄します。
(4) 当社は、上記(1)記載の和解金とは別に、原告団の代理人弁護士の弁護士費用として940万米ドル(約11億円)を支払います。
(5) 請求の基礎が本件訴訟と同一である訴訟(下記各訴訟を含みますが、それに限られません。以下「関連訴訟」といいます。)は、本件和解に伴い、当社と東洋紡アメリカ株式会社との関係において棄却申立がなされます。
  <係属裁判所 / 原告>
 ウェストバージニア州カナワ郡巡回第一審裁判所 / Jack A. Jordan 氏他
 ミズーリ州ブキャナン郡巡回第一審裁判所 / ブキャナン郡
 ルイジアナ州第14地区カルカシュー郡地方裁判所 / Patrick L. Johnson 氏
 ニュージャージー州カンバーランド郡上級第一審裁判所 / ニュージャージー州ブリッジトン市
 カリフォルニア州ロスアンゼルス郡上級第一審裁判所 /Brian Barnes 氏
 ミシガン州第三巡回裁判所 / Mark P. LaBrosse 氏
(6) さらに当社は、本件訴訟及び関連訴訟の原告として名を出している人々(Named Plaintiffs)に対し、報奨的賠償として6万米ドル(約680万円)を支払います。
(7) 裁判所の定める期間内に本件訴訟の原告団から離脱する手続(Opt−out)をした者については、本件和解は適用されません。また、連邦政府の請求、人身傷害に基づく請求等にも、本件和解は適用されません。
(8) なお、当社は原告団の主張する当社の責任を一切認めるものでない旨、和解契約上明記しております。
(9) 本件和解は、米国オクラホマ州メイエス郡地方裁判所の最終承認を得ることが条件となっています。

3.和解についての考え方
 当社は、これまでの訴訟手続きの中で、ザイロン(R)繊維は最終製品たる防弾ベストの一部分を構成する材料であり、今回のケースは防弾ベストメーカー(セカンドチャンス社)の設計、製造、販売の問題であって、ザイロン(R)繊維の瑕疵に起因するものではないことを主張し、原告団と争ってまいりました。現在においても、同社以外の防弾ベストメーカーからは、ザイロン(R)繊維を用いた防弾ベストに関する事故は一件も報告されていません。
 しかし、セカンドチャンス社が上記のとおり倒産手続に入ったため、同社の支払能力には大きな問題があるとともに、同社を巻き込んだ和解をすることが難しい状況にあること、このまま本訴訟を継続すると多額の弁護士費用等の外部コストおよび社内コストを要すること、ならびに陪審裁判制度の下では当社に対して巨額の評決が下されるリスクを完全には消滅させられないことなど、想定されるリスクを勘案し、米国および日本の代理人弁護士とも十分に協議した上で、裁判上の和解により解決することにいたしました。
 当社は、本件を早期に解決することにより、米国の警察官をはじめとする防弾ベストユーザーの不安が払拭され、安心してその任務を果たされることを希望しております。

4.業績に与える影響
 今回の和解金および弁護士費用等(合計約44億円)は、2006年3月期中間期の個別財務諸表および連結財務諸表において特別損失として計上いたします。なお、これによる今期の業績予想の変更はございません。

5.その他
 本件和解成立後も、セカンドチャンス社との訴訟および負傷した警察官との訴訟など一部の訴訟が残りますが、当社としては、引き続き相手方の主張が誤りであることを立証し、適切な防御を行っていく所存です。
 また、本件訴訟については、第146期営業報告書、第146期有価証券報告書、第147期半期報告書、第147期営業報告書、第147期有価証券報告書にて情報開示しております。