概況 

http://www.1ban.co.jp/tachibana/geppo_bn/200206/geppo200206_tansoseni.html

「立花月報」2002年6月号より

東レ
 PAN系炭素繊維では世界トップシェア。航空機向け炭素繊維では特にボーイング社向けに強い。2010年を最終年度とした長期経営改革計画では繊維・素材事業の立て直しと情報通信、生命科学など成長分野を拡大し利益向上を図る。

東邦テナックス
  PAN系炭素繊維では世界第二位。エアバス社のA380向け炭素繊維ではジャムコの生産する垂直尾翼構造材、床構造材向け炭素繊維を全量供給することから、東レの供給量を上回り約70%の高シェア。

三菱レイヨン
  PAN系炭素繊維では世界第三位。ゴルフシャフトなどスポーツ分野を得意としているが、中期的には需要拡大期待の産業用分野の強化と、これまでは手掛けていなかった航空機用炭素繊維にも参入する方針。高収益高成長型企業を目指す。

炭素繊維需要は過去最高を記録
  炭素繊維の需要が拡大している。炭素繊維は合成繊維のアクリル長繊維からつくる
PAN(ポリアクリロニトリル)系炭素繊維と石炭タール、石油ピッチからつくるピッチ系炭素繊維があり、需要の約90%はPAN系炭素繊維で占めている。繊維メーカー各社が手掛けるPAN系炭素繊維はアクリル長繊維を高温で焼成、炭素化させた糸状の繊維を縦横に織り込みシート状にして使用されることが多い。PAN系炭素繊維の引っ張り強度は最強で鉄鋼の10倍、重量は5分の1程度といわれ、軽くて強い繊維である。

  PAN系炭素繊維は他の素材と比べて単価が高いことがネックとなり、当初はゴルフシャフト、釣りざおなどスポーツ、レジャー用品をはじめ航空機・宇宙関連などの限られた分野で使用されていた。

価格低下、代替素材として用途拡大
  90年頃にはPAN系炭素繊維の販売価格は1キログラム当たり8000円前後していたが、現在では1000円程度まで値下がりし、本格的に他の素材の代替として、需要は広がっている。近年では地球環境面から自動車燃料にガソリンではなく天然ガスや燃料電池を利用する動きが高まっているが、天然ガス自動車の燃料タンクにPAN系炭素繊維が使用されはじめている。そのほか風力発電の発電効率を高めるために鉄製の羽根に代わって炭素繊維の羽根を使う方向にあるし、深海底において鉄製のパイプの代替として高圧力に耐える海底油田の油送パイプ、また、エネルギー効率を高めるためにトラックのボディーとしても有望視されている。軽量、高強度という特性をもつPAN系炭素繊維は鉄の代替素材として最適な素材であり用途は拡大している。

日系3社で世界シェアの約80%
  世界のPAN系炭素繊維需要は1998年には1万360トンであったが、2001年には1万2960トン(前年比11%増)と過去最高を記録した。中期的にも2005年には1万9755トン(2001年比52%増)と年率2ケタの伸びが期待されている。なお、2001年のPAN系炭素繊維の用途別構成比は一般産業用が44%、スポーツ用が31%、航空機用が25%であるが、今後の需要牽引として期待されるのが一般産業用ならびに航空機用向けである。

  PAN系炭素繊維は日本が強い分野であり
東レ、東邦テナックス、三菱レイヨンの三社で世界市場の約80%を占めている。PAN系炭素繊維の市況は3、4年前には炭素繊維メーカー各社が設備増強を行なったことから、需給バランスが崩れ市況は弱含みで推移している。現在、世界のPAN系炭素繊維の年間生産能力は2万トン強とみられ、設備過剰の状況下にあるが、中期的な需要拡大とともに需給関係はタイトになり市況改善も見込まれるだけに炭素繊維メーカーを取り巻く環境は明るさを増してこよう。

一次構造材として用途拡大
  PAN系炭素繊維の今後の需要拡大のひとつの分野が航空機向けとみられる。航空機に炭素繊維が使用されたのは1980年代、当初は二次構造材として内装用に使用されていたが、6〜7年前からは一次構造材として主翼、垂直尾翼など骨格の一部として使用されている。ジャンボと呼ばれる米ボーイング社のB747には一機当たりの炭素繊維使用量は約4トン、ハイテク新鋭機のB777では同約9トン。一方、エアバス・インダストリー社(仏、独、西、蘭などの共同出資。以下、エアバス社)が開発した超大型旅客機、A380の炭素繊維の使用量は最低でも33トン程度とみられる。

A380は機体構造重量の約10%を使用
  A380はB747を上回る標準555席の超大型機であり、B747に比べ床面積で49%増、座席数で35%増という広さ。また、世界初の総二階建てのワイドボディであり、全長約83メートル、翼幅約80メートル、機体構造重量は約360トン。このA380のPAN系炭素繊維の使用部分としては機体部材をはじめ床構造材、垂直尾翼構造材などに従来の旅客機より多く使用される模様で機体構造重量の約10%を占めるとみられる。これに対してB747のPAN系炭素繊維の使用量は機体構造重量の約2%、B777では約5%であり、A380は炭素繊維の使用量、機体構造重量に対する比率とも航空機のなかでは世界最大規模となっている。エアバス社は世界のエアラインからすでにA380を97機受注、当面は300機の生産を行う方針。すでに、炭素繊維メーカーはエアバス社にサンプル供給を開始、2006年春の就航予定に合わせて2003年頃から徐々に炭素繊維の生産は本格化、売り上げも2004年頃から本格化する見通し。なお、航空機用のPAN系炭素繊維は強度と弾性値との組み合わせにより各種あるが、垂直尾翼や主翼フラップ(上下に可動する部分)などに構造材として使用されるものは最高品質のものが要求され、高付加価値製品であり炭素繊維メーカーの収益寄与は大きいものとみられる。


2002/7/5 日本工業新聞

東邦テナックスと三菱レイヨンが炭素繊維の海外生産拡大

 ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維で世界2位の東邦テナックス、同3位の三菱レイヨンが相次いで海外生産を拡大する。東邦テは、買収により北米に製造拠点を確保する方針を決め、複数のメーカーと交渉に入った。今秋の合意を目指す。一方、三菱レは欧州に年産1500トン規模の新工場を建設する検討に入った。PAN系炭素繊維は、一般産業用途を中心に今後世界的に年率10%以上の成長が見込まれている。両社はそれぞれ日米欧3極に供給拠点を持つことになり、首位の
東レを追撃する。

 
東邦テは三島工場(静岡県長泉町)に年間3700トン、ドイツの全額出資子会社、テナックス・ファイバーズに同1900トン、合計5600トンの生産能力を保有する。日本を含むアジア、欧州で30%以上のシェアを握っているが、製造拠点のない北米は市場開拓が遅れ、7%にとどまっている。

 このため北米に年間2000トン規模の供給能力を確保する方針で、買収戦略によりスピーディーな供給を実現する。北米には東邦テと同じタイプの製品を手がけるメーカーが2社、タイプの違う製品メーカーが3社、計5社あり、東邦テは製造設備や経済合理性などを勘案し、買収先を絞り込む。

 一方、
三菱レは豊橋事業所(愛知県豊橋市)、米国の全額出資子会社、グラフィルの年産能力を今春までにそれぞれ500トン増の3200トン、800トン増の1500トンに引き上げたばかり。

 今後の能力拡張は、生産効率の高い新ラインを建設する方針で、未立地の欧州で企業化調査(FS)に入った。現在、欧州に年間10000トン弱を輸出しており、今後、現地生産のペイラインとなる1500トン以上に供給量が増やし、現地生産につなげる。PAN系炭素繊維(レギュラー・トウ)市場では日系3社が世界シェアの75%を占めている。


化学工業日報 2002/8/13

三菱レイヨン、エネルギー分野でPAN系炭素繊維本格展開

 三菱レイヨンは、PAN(ポリアクリロニトリル)系炭素繊維を用いた燃料電池自動車用部材の開発に着手した。同社が出資しているカナダのCNG(圧縮天然ガス)タンクメーカーのダイナテックと共同で、燃料電池車の燃料となる水素ボンベの開発をスタートさせたもの。燃料電池車はトヨタやホンダが計画を前倒しして年末をめどに販売開始することを表明するなど開発が加速している。三菱レイヨンではすでに試作車に採用されている水素ボンベの本格採用に向け開発を急ぐ。さらにこれまで投資してこなかった海底油田掘削用ライザーや風力発電用ブレードなどにも研究開発投資する方針。高強度で軽量な特徴を持つ炭素繊維のエネルギー関連での本格採用を図り、中長期的に事業を大幅に拡大させる考え。


2001年7月11日   三菱レイヨン株式会社

新日鐵化学株式会社よりプリプレグ事業の譲り受けについて
   〜炭素繊維・複合材料事業のさらなる拡大に向けて〜

 三菱レイヨン株式会社(本社:東京都港区、社長:皇 芳之(すめらぎよしゆき)は、新日鐵化学株式会社(本社:東京都品川区、社長:西 恒美)のプリプレグ事業*の生産設備、販売権等を譲り受けることで7月2日に基本合意しました。
 本譲り受けにより、新日鐵化学の生産設備は当社の豊橋事業所へ移設します。移設時期は8月中旬で稼働は今秋を予定しています。設備を集約することにより、当社プリプレグの生産能力は約3割増となり、主に産業用途、スポーツ用途向けに積極的な展開を図るとともに、炭素繊維・複合材料事業の市場拡大、収益向上を目指します。

1.譲り受けの背景および今後の展開
 

  三菱レイヨンは本年4月の中期経営計画において、PAN系炭素繊維の生産設備能力を2002年の稼働を目処に、日米拠点合計で1,300t(豊橋事業所500t、グラフィル社(米国)800t)増強を発表し、年産4,700t体制を整えます。また、原油輸送用パイプの有力メーカーであるファイバースパー社(米国)へ三菱商事とともに1000万米$出資し、産業資材向けの炭素繊維の供給を行います。炭素繊維の需要回復見込みと、急成長している産業用途への拡販を視野に入れての積極投資の一環です。
 本プリプレグ事業の譲り受けにより、新日鐵化学の得意としていたゴルフ、釣竿などのスポーツ分野や、印刷ロール、医療関連などの産業分野等の事業を継承し、当社の強みであるスポーツ分野を一層、強化拡充するとともに、成長分野である産業分野においても用途拡大が推進されるものと確信しています。期待される新成長産業分野としては、オフショア(油田用パイプ等)、圧力ガス容器(水素、天然ガス等)、土木建築材料、風力発電関連、輸送・航空・車輌関連、産業用機器、医療関連、水浄化関連等が挙げられます。またプリプレグに使われる樹脂が当社の持つ樹脂のバリーエーションに加わることにより、用途に適したきめ細かい顧客対応が可能になります。

 当社の炭素繊維複合材料事業は、生産効率を図りつつ、品質、コスト競争力を高め、さらなる市場開拓を推進します。

2.新日鐵化学株式会社の概要<数値:平成13年3月末現在>

・社 名 : 新日鐵化学株式会社(Nippon Steel Chemical Co.,Ltd.)
・設 立 : 昭和31年10月
・社 長 : 西 恒美 (にし つねよし)
・所在地 : 東京都品川区西五反田7−21−11
・事業内容 : 炭素材・ガス事業、化学品事業、機能商品事業、その他
・資本金 : 409億6641万円
・大株主 : 新日本製鉄(株)(67.1%)
・売上高 : 2037億円
・従業員数 : 1305名

注)プリプレグとは…
 炭素繊維に樹脂を含浸させた中間素材であり、主に航空機、産業用途、スポーツ用途で使われている。

【参考資料】-会社概要-

【グラフィル社】
  社名   Grafil,inc.
  社長   池上 隆司
  所在地   アメリカ カリフォルニア州サクラメント
  事業内容   炭素繊維の製造・販売
  出資比率   三菱レイヨン  100%
  設立   1991年6月
  資本金   1,207千ドル
       
【ファイバースパー社】
  社名   Fiberspar Corporation
  社長   Peter Quigley (ペーター・クゥイグリー)
  所在地   アメリカ マサチューセッツ州
  事業内容   炭素繊維強化油田用スプーラブルコンポジットパイプの開発および生産販売
  出資比率   Halliburton社
Peter A.Quigley & Family
三菱レイヨン(株)/三菱商事(株)
その他
約34%                    
約16%
約14%
約36%
  設立   1986年
      *1997年に油田用スプーラブルコンポジットパイプ事業をスタート
  資本金   2000年実績:580万米ドル
2001年見込み:1300万米ドル

 


化学工業日報  2003/4/21

東レ、米国でPAN系炭素繊維を倍増へ

 東レは、米でPAN(ポリアクリロニトリル)系炭素繊維の生産設備を増設する。年産1800トンの焼成設備1系列を増設するもので、早ければ2005年にも稼働させる計画。同社は欧州での生産設備増設も決めており、炭素繊維事業を戦略的拡大事業の1つに位置付け、積極投資する方針を打ち出している。日欧米の世界3極の生産拠点によるグローバルオペレーション体制を強化・拡大することで、世界シェアトップのポジションを一段と強固にする。


日本経済新聞 2003/1/9

炭素繊維 仏で増産 東レ、エアバスヘ売り込み

 東レは2004年8月からフランスで炭素繊維を増産する。合弁生産拠点の設備を増強し、年産能力を3倍強の2600トンに引き上げる。同時に国内での炭素繊維の原料生産能力も約3割増の年1万9千トンにする。合計投資額は約80億円。エアバスが2006年に就航予定の超大型旅客機向けなどの需要増大に対応する。
 炭素繊維はアルミなどに比べ強度が2、3倍高いうえ、重量も半分程度と軽いのが特徴。ゴルフクラブのシャフトなどスポーツ用品向け以外に、航空機や風力発電といった産業資材向けの需要が拡大している。
 欧州ではエアバスが世界最大の旅客機「A380」を就航することで、同旅客機向けの需要が拡大する見込み。左右の主翼の接合材料など主要な構造材料に炭素繊維が使われる予定。東レは「A380」の部材として売り込む計画で、現地での生産能力を拡大することにした。風力発電など他の産業資材向けの需要も開拓する。
 東レが能カを増強するのは合弁会社のソフィカール社が持つ生産設備で、同社は現在約800トンの炭素繊維を製造している。
 このほか愛媛工場(愛媛県松前町)で年4700トン、米国工場では年1800トンの生産能力を持つ。東レの生産能力は世界一位。設備増強後の全体の生産能力は年9100トンとなる。 炭素繊維事業の2002年の連結売上高は約350億円。欧州での事業拡大などを通じて、2005年には約500億円に引き上げる計画だ。炭素繊維の世界需要は年1万8千トン程度で、今後10年間で年率6%ほどの成長を見込んでいる。


能力  (トン)

    現状   増強   増強後  
愛媛    4700        : 4700  
米国  *1   1800       1800  
仏JV *2    800   1800   2600  
  7300   1800   9100  

 *1 Toray Carbon Fibers America(CFA)  Decatur, Alabama  
     
プリプレグはアメリカ Toray Composites America(TCA)
 *2
Societe des Fibres de Carbone S.A.(SOFICAR)


 フランスのSOFICAR(ソフィカール)は、フランス政府の肝いりで、82年に設立された合弁会社で、85年から商業生産を開始しています。現在の出資構成は、東レが70%、フランスの化学会社が30%となっています。

 SOFICAR社は二つの役割を持っていて、東レから提供された“トレカ”の製造技術を用いて現地生産を行う工場としての役割と、もうひとつは、フランス製“トレカ”はもとより、日本や米国で生産された“トレカ”を欧州域内で輸入販売することです。“トレカ”の生産は、日本、米国、フランスの3極体制をとっており、フランスは重要な欧州拠点です。工場はスペイン国境のPau(ポー)という町の近くに、販売事務所はパリにあります。
( 
http://www.digitbrain.com/city/toray/flash/k/k2_b.html )

 


2003/07/07 東レ

炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の自動車材料用途における本格事業展開について

 東レ株式会社は、炭素繊維の用途拡大、特に将来の大型需要として期待される自動車用途への本格進出を図るべく、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)部材の開発に取り組んでまいりましたが、このたび自動車メーカー各社の量産車種に採用された実績をもとに、
自動車用CFRP部材事業の本格展開を行います。

 量産車種に採用されたのは、エンジンから動力を駆動輪に伝える「
プロペラシャフト」と、ボンネットやトランクフードといった「外板部材」、および自動車の空力特性を向上するスポイラーなどの「2次構造部材」です。

 プロペラシャフトは、平成11年に三菱パジェロに世界で初めて採用された後、国産自動車メーカー2社の主力車種(日産フェアレディZ:平成14年7月販売、マツダRX−8:今年4月販売)に採用されています。さらに、欧州の自動車メーカーにおいても、来年発売予定の新型車に採用される見込みです。

 炭素繊維強化プラスチック(CFRP=Carbon Fiber Reinforced Plastics)は、炭素繊維にエポキシ樹脂などの高分子材料を含浸した後、硬化させて成形した複合材料で、強度に優れ、鉄やアルミなどの金属に比べ、同じ強度・剛性であっても、より軽量化できるという特長を有しています。CFRP製プロペラシャフトは、従来のスチール製に比べて約50%の軽量化を図ることにより、自動車の燃費改善や運動性能の向上に効果があります。さらに、乗員の安全性向上にも配慮し、当社独自の設計により、正面衝突時には軸方向に破壊し、十分な衝撃吸収機能を有する構造になっています。これらCFRP製プロペラシャフトならではの特長が自動車メーカーから高い評価を受け、相次いで各社の"フラッグシップ・モデル"に採用されています。当社はCFRP製プロペラシャフトについて、今年度は20万本近い生産を見込んでいます。

 一方、外板部材や2次構造部材では、平成12年に日産スカイラインGT−Rの最高級グレード(V・specII)のボンネットにCFRPが初めて採用されましたが、今年1月には三菱ランサー・エボリューションVIIIのリアスポイラーに採用されました。CFRP製スポイラーは、従来の樹脂製に比べて40%以上の軽量化を実現するとともに、空力特性の向上というスポイラーの機能性と意匠性を高い次元で両立しつつ、高強度、高剛性という優れた特長を有しています。

 現在、プロペラシャフトと外板、および2次構造部材については、国内外の自動車メーカー併せて10社程度で、量産車種への採用に向けて技術評価中であり、近い将来、CFRPが自動車の"標準"材料として一気に普及する可能性が期待されます。今後は、1次構造部材や衝撃吸収部材など新規部位における早期の実用化により、自動車材料用CFRP事業において、5年後200億円、10年後1,000億円の売上を目指します。

 CFRPは将来の自動車用材料として、従来の自動車用鋼板や樹脂材料に対して軽量化が図れること、その燃費改善効果による環境対応、さらには衝突安全性、歩行者保護の観点から、自動車メーカー各社より注目されつつあります。CFRPは当初、環境規制や自動車安全基準の法整備に早くから取り組んできた欧州において、高級スポーツカー分野で採用され、その有効性が実証されてきました。しかし、量産車種への普及にはコスト面や量産技術の確立など課題があり、採用の対象は少量生産車種やオプション装備などに限定されていました。そのような中、東レは炭素繊維事業における、原糸から成形品までの一貫生産体制を持つ優位性を生かし、低コストで大量生産が可能なCFRP成形技術の開発に成功することにより、量産車種への対応を実現しました。

 今後は、世界最大の炭素繊維メーカーとして、長年のノウハウに基づいた複合材料設計技術、当社のコアテクノロジーのひとつである高分子化学を応用した樹脂成形技術、および自動車用材料に適した表面仕上げ技術の深化を図るとともに、国家研究プロジェクトによる先端材料開発のさらなる加速、一方では炭素繊維リサイクルの積極推進により、次世代自動車材料としての普及拡大に取り組んでまいります。

 東レは経営改革プログラム"NT21"において、今後高い成長が見込まれる「成長3領域」の拡大、および顧客へのソリューション提案を通じて付加価値を提供する"New Value Creatorへの転換"に取り組んでいますが、自動車用CFRP部材事業の本格展開はその一環にあたります。また、東レは「複材加工」分野を21世紀の当社の発展を担う事業育成のための重点強化4分野の一つと位置づけ、昨年7月に社長直轄組織であるACM事業プロジェクトを発足させ、経営資源の思い切った傾斜配分を行うことにより、技術開発を迅速的かつ機動的に展開しています。東レは引き続き、当社コア技術に基づく"先端材料"を付加価値とともに提供することにより、成長事業の拡大を図ってまいります。


2003-7-28 Asia Chemical weekly

China Conglomerate Plans Country
s First PAN, Carbon Fiber Plants

China Worldbest Group (
上海華源股分有限公司 Changzhou, China), a conglomerate of resin producers and a major producer of pharmaceuticals and textiles, says it plans to build a 500-m.t./year polyacrylonitrile (PAN) and carbon fiber plant at Bengbu, China. The company has awarded Amec a $25-million contract to engineer and build the unit for completion in February 2005. It will be the first combined PAN and carbon fiber complex in China, China Worldbest says. The project will also include a storage unit for PAN feedstock acrylonitrile and a preparation area for the carbon fiber.

Acrylo is polymerized to produce PAN, which is spun into a yarn and further processed and dried to form carbon fiber. Carbon fiber is used to make a broad range of consumer goods including bicycles, fishing rods, and tennis rackets. Carbon fiber composites use is increasing in industrial applications, including automobiles and offshore oil installations, China Worldbest says. China imported more than 3,000 m.t. of carbon fiber in 2002, the company says.

Amec has begun design work for the project at its Shanghai and London offices. Amec says it will work in partnership with Applied Composite Engineering (Manchester, U.K.) on engineering, procurement, project management, building supervision, and commissioning of the plant. This is the third major contract that Amec has been awarded in China in the past year, Amec says.

China Worldbest says it is China
s leading producer of pharmaceuticals and textiles.
http://www.worldbest.sh.cn/index.asp


日本工業新聞 2003/8/19

東邦テナックス、耐炎繊維の生産設備を2倍に増設

 
東邦テナックスは、アクリル系耐炎繊維の生産設備を2004年度をめどに2倍に増設する。車両用断熱材や溶接の火花受けシートといった従来用途に加えて、東京電力と九州電力が事業化したNAS(ナトリウム−硫黄)電池の電極材用途など「新規用途の拡大」(宇都宮吉邦社長)にめどがついたことから、増産に踏み切る。耐炎繊維の供給能力を高めることで、化成品事業を強化する。

 耐炎繊維は、揖斐川事業所(岐阜県神戸町)で年600トンを生産している。これを倍増に当たる1200トンに引き上げる。生産設備の建設場所については「グローバルに検討中」(宇都宮社長)としているものの、紡績の生産能力を縮小したことで、敷地に余裕がある揖斐川事業所が有力とみられる。投資金額については明らかにしていない。

 増産する
アクリル系耐炎繊維「パイロメックス」は、特殊なアクリル繊維を焼成し炭素化することで、耐熱性や電気絶縁性、耐薬品性を高めた繊維。電車など車両向けの断熱材や、溶接・溶断の火花受けシート、炉前服といった耐炎性が求められる用途に使用される。

 東邦テナックスは、耐炎繊維の新規用途の開発の一環として、
日本ガイシと共同で、NAS電池向けの電極材を開発した。共同開発した材料は、耐炎繊維を不職布加工した後に、焼成して黒鉛化した電極材。日本ガイシが電池の量産を開始している。

 NAS電池は、鉛蓄電池に比べて電力貯蔵能力が約3倍と高く、コンパクトで長寿命という特徴がある。東京電力と九州電力が、安い深夜電力で充電し、昼間に放電する電力貯蔵用などで本格的に事業化したことで、電極材の需要についても拡大が見込まれている。

 東邦テナックスはNAS電池の電極材用途のほかにも、新規用途開発を進めており、需要の伸びに合わせる形で、耐炎繊維を増産する。


Pyromex       http://www.tohotenax.com/

Oxidized PAN Fiber:耐炎繊維
炎に強く、ソフトな繊維

「パイロメックス」は、抜群の耐炎性をもつ有機繊維です。

耐熱性、電気絶縁性、耐薬品性にも優れ、無機繊維にはない紡織加工性やドレープ性およびソフトな感触をもっています。

溶接・溶断火花受けシート、炉前服、各種防炎シート、断熱材、グランドパッキングなど、また、最近 NAS 電池 用グラファイトフェルト等の電極材用途、C/Cコンポジット材の原料として使用されています。

炭素繊維を応用した電極材としての特長

通電性に優れる。
金属系電極材に比べ化学安定性に優れる。(腐食しない)
繊維状の為、織物や不織布の形状加工が容易。
微細(繊維直径5〜15μm)ゆえに、エネルギ−の授受効率が高い。

NAS(ナトリウム・硫黄)電池用電極材  

 電力の平準化を目的およびバックアップ電源として、近年大型の二次電池の商品化が進められている。その中でもNAS(ナトリウム・硫黄)電池は高エネルギ−密度、高効率、長期耐久性に優れており、その正極に当研究所開発の炭素繊維構造材が応用されている。


2002年6月25日 http://www.nikkei.co.jp/kansai/kakushin/6926.html

 「1994年から日本ガイシ、東邦テナックスと共同で開発に取り組んできた。東邦テナックスの耐炎化繊維を当社独自の不織布加工技術で高密度フェルトにして、日本ガイシが最終製品に仕上げる。東京電力がNAS電池システムの国内販売を始めるなど今後の需要拡大が期待できる」 
<フジコー(フェルト、不織布大手)青木勝治社長>

NaS電池       http://eco.goo.ne.jp/ecoword/files/word/75.html

 液体ナトリウムと液体硫黄、特殊セラミックスを利用した蓄電池。自動車のバッテリーに使われる鉛蓄電池の約3倍の蓄電能力があります。この性質を使って、電力使用量の少ない夜間に充電して、昼間にその電力を使うという利用法が進めば、余分な発電所をつくる必要性がなくなるなど、電気の効率良い利用が可能となります。各電力会社とも2000年以降の実用化を見込んで開発中です。また、98年9月末からは、沖縄宮古島で太陽電池と組み合わせて電力を貯めて使うという実験も始まっており、天候に左右されやすい太陽光発電の弱点を補う役割も期待されています。


日本工業新聞 2003/8/29

東邦テナックス、帝人の技術で炭素繊維の生産性を2割向上

 
東邦テナックスは、帝人と連携し、自動車や航空機部品などに使用する炭素繊維の生産性を、従来比で約2割向上させることに成功した。短繊維による炭素繊維の製造プロセスに、帝人が持つ長繊維の製造技術を新たに活用することで、繊維の収率や歩留まりを向上させた。新規用途の開発による拡販に加えて、生産性向上によるコスト削減で、炭素繊維を主体とする化成品事業の2005年度の営業利益を20億円(2002年度実績は5億円の赤字)に引き上げる計画だ。

 炭素繊維はアクリル繊維を焼成して炭素化し、耐熱性や強度を高めた繊維。樹脂などで加工して、ゴルフクラブなどのスポーツ用品や自動車、航空機部品などに使用される。東邦テナックスは、独自技術により、1975年にポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維を事業化した。三島事業所(静岡県長泉町)に年産3700トン、独子会社に同1900トンの製造設備を持つ。

 従来、三島事業所では、短繊維の技術で炭素繊維を生産していた。ただ、原料となるアクリル繊維が短いため、長繊維と比較した場合、収率が低いといった課題があった。このため、親会社でポリエステルなどの長繊維技術に強みを持つ帝人と連携して、長繊維から炭素繊維を製造する技術を確立した。既存の設備を一部改良することで、収率や歩留まりが向上、生産性が2割程度高まった。独子会社の設備にも順次、同技術を導入し、生産コストを低減する。

 東邦テナックスは東レに次ぐ世界第2位の炭素繊維メーカー。自動車関連やCNG(圧縮天然ガス)タンク、風力発電部品など新規用途開発に加えて、製造コストの低減に注力し、売上高比率で約50%を占める化成品(炭素繊維)事業を強化する考えだ。


日本経済新聞 2004/4/26             発表

炭素繊維 米で一貫生産 東レ、新型旅客機向け ボーイングに供給

 
東レは軽量で高強度の先端素材である炭素繊維を米国で一貫生産する。約160億円を投じて原糸の生産設備を設けるほか、加工設備を増強して米ボーイングの新型旅客機「7E7」向けなどに供給する。東レは仏でもエアバスの新型旅客機向けに炭素繊維の生産能力を拡大中。日米仏で世界最大の1万トン体制を構築する。
 炭素繊維は原糸を焼成し、樹脂を混ぜてシート状の複合材料にして顧客に供給するのが一般的。これを成型して航空機部品などを作る。東レは現在、原糸を日本から持ち込み、米国では焼成工程と、複合材料に加工する工程を手掛けている。
 今回の一貫生産ではアラバマ州に原糸の生産設備を新設し、焼成設備の能力を2006年に2倍の年間3600トンに引き上げる。ワシントン州の複合材料設備も生産能力を2倍に増やし年間1120万平方メートルにする。
 ボーイングは炭素繊維の採用に意欲的で、東レは現行の「777」では、主翼や胴体など機体の主要部分(一次構造材)向けに独占供給。ボーイングは2008年就航予定の「7E7」では機体重量の約半分に炭素繊維の複合材料を利用する方針だ。
 1機当たり約20トンの炭素繊維を利用することから、東レは生産能力を倍増し、安定供給できるようにする。米国では大型車の燃料タンク向けなどの需要も今後、増えると期待している。
 炭素繊維の世界市場規模は約2万トンで、年7−8%の成長が見込まれている。東レは現在、7300トンの年間生産能力を持つ世界最大メーカー。


2004年4月26日 東レ

PAN系炭素繊維“トレカ”複合材料の米国における生産増強について
http://www.toray.co.jp/news/carbon/nr040426.html

 東レ(株)はこのたび、炭素繊維複合材料の中長期的な需要拡大に対応するべく、米国におけるPAN系炭素繊維の生産設備増強を決定しました。

 今回の決定は、当社の米国における炭素繊維とプリプレグ
1の生産拠点2カ所で設備の新設と増強を行うもので、トーレ・カーボンファイバーズ・アメリカ社(CFA)(所在地:アラバマ州ディケーター市)では年産1,800トンの“トレカ”焼成設備を1系列増設するとともに、炭素繊維用原糸(プリカーサ)の重合・製糸設備を1系列新設して現地での一貫供給体制を構築します。一方、プリプレグの生産拠点であるトーレ・コンポジット・アメリカ社(TCA)(所在地:ワシントン州タコマ市)では、既存設備の増能力と新規設備1系列の増設を行い、年産600万m2の能力増強を図ります。総投資額は約160億円で、それぞれ2006年初めの稼働開始を目指します。今回の生産増強により、当社は世界最大の需要地である米国において炭素繊維複合材料の供給体制を強化し、トップサプライヤーとしてのポジションを確固たるものとします。

  今回の設備増強により、CFA社の炭素繊維生産能力は3,600トン/年に(現:1,800トン/年)、当社グループ合計で10,900トン/年に拡大します(現:7,300トン/年、本年10月に仏ソフィカール社で増設1,800トン/年が稼働開始予定)。一方、TCA社のプリプレグ生産能力は1,120万m2/年(現:520万m2/年)になります。

 現在、PAN系炭素繊維の世界需要は約20,000トン/年と推定されますが、中長期的には航空機用途の回復や今後のエアバスA380、およびボーイング7E7等の次世代高性能旅客機の需要急拡大が見込まれます。加えて、自動車用CNG(圧縮天然ガス)タンクや風力発電ブレードなど一般産業用途の堅調な拡大基調から年率7〜8%の成長が予測されています。当社は、このような炭素繊維の本格的な需要拡大に対応するべく、仏ソフィカール社の増設に引き続き、今般、米国における生産増強と一貫生産体制の確立により、日本、フランスを含めた世界3極体制によるグローバルなオペレーションの拡充・強化を図ってまいります。

 東レは、本年4月からスタートした中期経営課題 “プロジェクトNT−II”(NT−II)における課題・改革の一環として、「先端材料事業の拡大」と「世界ナンバーone事業の拡大・強化」を図ることとしており、今回の炭素繊維複合材料事業における事業拡大計画は、このような“NT−II”の攻めの経営方針に基づくものです。

1 プリプレグ(Prepreg):炭素繊維にエポキシ樹脂を含浸したシート。

<ご参考>

トーレ・カーボンファイバーズ・アメリカ社(CFA)概要
英文名 Toray Carbon Fibers America, Inc.(CFA)
事業概要 PAN系炭素繊維の製造・販売
設立 1997年5月
資本金 75百万USドル(9,015百万円)
出資 東レ100%
所在地 米国アラバマ州ディケーター市
生産能力 1,800トン/年(増設後:3,600トン/年)
     
トーレ・コンポジット・アメリカ社(TCA)概要
英文名 Toray Composites (America), Inc.(TCA)
事業概要 航空機、スポーツ用途向けプリプレグの製造・販売
設立 1992年5月
資本金 44百万USドル(5,289百万円)
出資 東レ100%
所在地 米国ワシントン州タコマ市
生産能力 520万m2/年(増設後 : 1,120万m 2/年)


東レグループ・PAN系炭素繊維生産能力(年産)

  現 在 2004年10月 2006年初

日本(愛媛工場)

  4,700 トン

  4,700 トン

  4,700 トン

フランス(SOFICAR)

800 トン

2,600 トン

2,600 トン

アメリカ(CFA)

1,800 トン

1,800 トン

3,600 トン

グループ計

7,300 トン

9,100 トン

10,900 トン

 


2004年5月26日 東レ

炭素繊維複合材料でボーイング社と長期供給基本契約に調印
−B7E7向けで約3,300億円を受注−
http://www.toray.co.jp/news/carbon/nr040526.html

 東レ(株)はこの度、米ボーイング社(Boeing Inc.本社;米国イリノイ州シカゴ)が計画している次世代中型旅客機B7E7(2008年就航予定)一次構造材料向けの炭素繊維複合材料について、同社との間で、本年(2004年)から2021年までの18年間に亘る長期供給に関する基本契約に調印しました。

  契約内容は、この期間にボーイング社が当該機種1,500機を生産する前提で炭素繊維プリプレグ を供給するもので、
受注額は約3,300億円となります。今回の受注に加えて、現在材料認定作業中の複合材料を加えれば、受注額はさらに大幅に拡大する見込みです。

  今回、東レはボーイング社から炭素繊維複合材料の唯一の調達先として選ばれました。当社の炭素繊維“トレカ”は、1982年にB757・B767向け二次構造材として初めてボーイング社に採用され、また1992年からは、“トレカ”プリプレグがB777に一次構造材として独占的に採用されてきました。“トレカ”および“トレカ”プリプレグの品質優位性に加えて、こうして長きに亘ってボーイング社との間で培った信頼関係と、これまでの安定した供給実績が評価され、今回、長期供給基本契約の締結に至りました。

  ボーイング7E7(愛称:“ドリームライナー”)は、オール・コンポジット・エアプレーンと呼ばれ、 一機あたりの二次構造材を含めた炭素繊維複合材料は、約30トンの使用が見込まれます。また同機は、乗客がノンストップで目的地まで移動できる「ポイントトゥポイント(Point to Point)」のコンセプトに基づき、経済性(Economy)と効率(Efficiency)を追求した次世代中型旅客機で、現在、燃費効率の改善と航続距離の向上を目指して開発が進められています。本プロジェクトでは機体の軽量化による省エネルギー運航が最重要課題とされており、機体の構造材料には“軽くて強く、高耐久性を有する”炭素繊維複合材料が大幅に使用される見込みです。これまで東レの高強度炭素繊維“トレカ”と高靱性樹脂を組み合わせた“トレカ”プリプレグは、B777の尾翼やフロアビームなど、重要な一次構造部材に独占的に採用されてきましたが、今回のB7E7ではさらに主翼や胴体など、ほぼ全ての構造部材が炭素繊維複合材料に代替される見通しです。これにより、従来の機種に対して飛躍的に炭素繊維複合材料の採用が拡大します。

  東レは今回の材料認定取得と長期供給基本契約の締結に伴い、B7E7向けには、米国のプリプレグ製造販売拠点であるトーレ・コンポジット・アメリカ社から“トレカ”プリプレグを供給することを決定しています。これに対応して先般、2006年初めの稼働開始を目指して、米国で炭素繊維とプリプレグの各生産設備について
能力増強を決定しました。約160億円を投じて、米国の炭素繊維生産拠点であるトーレ・カーボンファイバーズ・アメリカ社(CFA)で炭素繊維原糸(プリカーサ)の生産設備新設と焼成設備の倍増、また、トーレ・コンポジット・アメリカ社(TCA)ではプリプレグの生産設備を倍増し、米国で炭素繊維原糸(プリカーサ)からプリプレグまでの一貫生産体制の構築に先行着手しています。これは今回のB7E7という新たな大型需要に対応するべく、戦略的な設備投資として実施するものです。一方で、世界的な需要拡大に対応して、フランスではソフィカール社での炭素繊維焼成設備の一系列増設、および愛媛工場では炭素繊維原糸(プリカーサ)の生産増強、併せて約80億円を投じたプロジェクトが進行しており、本年10月からの稼働開始を予定しています。

  東レは、本年4月からスタートした新中期経営課題“プロジェクトNT-II”における課題・改革の一環として、「先端材料事業の拡大」、「世界ナンバーOne事業の拡大・強化」、および「海外事業の拡大」を推進しており、炭素繊維複合材料事業は、その中核となる戦略的拡大事業です。東レは今回のボーイング社との契約締結を機に、先端テクノロジーが要請される航空・宇宙分野の有力なユーザーである同社とのパートナーシップを引き続き強固にしていく一方、日米欧3極の生産拠点によるグローバルオペレーション体制に基づき、炭素繊維のリーディング・カンパニーとして、一層の事業強化と拡大に取り組んでまいります。

* プリプレグ(prepreg):炭素繊維にエポキシ樹脂を含浸したシート。

<参考>
東レグループ・PAN系炭素繊維生産能力(年産)


2004/10/08 東邦テナックス/ 帝人

ドイツにおける炭素繊維製造ライン増設について
http://release.nikkei.co.jp/detail.cfm?relID=83443

 当社は本日開催の取締役会において、当社100%子会社であるドイツのTenax Fibers GmbH(以下「テナックス社」)に、2006年10月稼動を目標に炭素繊維製造ラインを1ライン増設することを決議いたしましたので、下記のとおりお知らせいたします。

1.テナックス社の概要
(1)商 号         Tenax Fibers GmbH
(2)所在地        ドイツ国ブッパタール
(3)代表者氏名     会長 青山年宏(東邦テナックス(株)常務取締役)
(4)現在の生産能力  年産1,900トン(標準銘柄換算)

2.増設の目的
 炭素繊維の需給バランスは2003年半ば頃から急速に改善してきており、今後も年率10%程度ずつ拡大をつづけると見込まれております。特に欧州ではエアバス向け航空機用途および風力発電などの一般産業用途の需要が拡大しており、テナックス社の保有する生産能力1,900トンでは供給が追いつかない状況となっております。今後の需要拡大に応えるため、ドイツにおいて1ラインを増設することといたしました。

3.設備の概要
(1)名 称       Tenax Line III
(2)設置場所     オーバーブルフ工場
(3)設備内容     炭素繊維製造設備および附帯設備
(4)生産能力     年産1,500トン(標準銘柄換算)
(5)投資額       38百万ユーロ(約50億円)

4.スケジュール
 2004年10月 工事着工
 2006年10月 営業運転開始

5.今後の見通し
 今期の決算に与える影響はありません

6. 増設後の生産体制

東邦グループの炭素繊維生産能力
  RT=レギュラートウ、LT=ラージトウ(単位:d/年)

  現在 2005年
米国改造後
2006年
ドイツ増設後
日本 RT 3,700 RT 3,700 RT 3,700
ドイツ RT 1,900 RT 1,900 RT 3,400
米国
LT 3,500 
RT  700
LT 1,300
RT   700
LT 1,300
合計 9,100
内訳
RT 5,600
LT 3,500
7,600
内訳
RT 6,300
LT 1,300
9,100
内訳
RT 7,800
LT 1,300

(ご参考) RT(レギュラートウ)とLT(ラージトウ)の違い
RTとLTはその特長により、使用分野における棲み分けが進んでいます。

  RT LT
フィラメント数 〜24K(24,000本) 40K(40,000本)〜
主な使用分野 航空宇宙
スポーツレジャー
産業資材
産業資材(チョップ)
特長 機械的性能が高い
取扱い性が良い
低価格