日本経済新聞 2003/12/12

樹脂改質剤でカルテル 2社に排除勧告
 鐘淵化学と三菱レイヨン 海外独禁当局も審査中

 塩化ビニール用改質剤「モディファイヤー」の販売を巡る価格カルテル事件で、公正取引委員会は11日、大手化学メーカーの鐘淵化学工業と三菱レイヨンに対し、独占禁止法違反(不当な取引制限)で排除勧告した。勧告対象は国内に限定したが、事件は米国、カナダ、欧州の各独禁当局も審査中で今後、国際カルテル事件として改めて立件される可能性もある。
 公取委は今年2月、両社と呉羽化学工業の計3社に立ち入り検査したが、呉羽化学は今年初めにモディファイヤー事業から撤退、米国の化学メーカー、ローム・アンド・ハースに販売権を譲渡したため勧告対象から除外。ただ公取委は呉羽化学も違反認定しており、今後、他の2社とともに課徴金納付を命じる方針だ。
 公取委によると、三菱レイヨンなどは、塩ビ樹脂の強度などを高めるための改質剤モディファイヤーの国内販売価格引き上げを計画。1999年11月と2000年10−12月の出荷分について事前に会合を開き、販売価格をそれぞれ1キログラム当たり20−25円程度値上げする不正な価格カルテルを結んだ。
 3社は値上げの合意後も、営業部長らが各社の社員寮の会議室などで会合し、販売先との交渉の進ちょく状況などを情報交換。交渉が難航しそうな揚合は早期決著をはかるため、製品の種類ごとに“妥結額”を決めていたという。
 この事件を巡り米国、カナダ、欧州の独禁当局は日本の公取委と連携して今年2月、3社が各国、地域の市場でも同様のカルテルを結んでいた疑いがあるとして調査に着手。自国内の他のメーカーとの関連も含めて調べを進めている。
 モディファイヤーは塩ビ樹脂の強度を高めたり劣化を抑えるために添加する白い微粒子で、添加後の最終製品としては医薬品用の包装フィルムや水道パイプ、窓枠などがある。国内生産量は年間2数千トンで、売上高は70億円強。3社が国内市場をほぼ独占している。
 塩ビ樹脂は96年をピークに需要が低落、99年後半からは原料のナフサ価格も上昇していたことから「3社は収益悪化に歯止めを掛けようとカルテルを結んだ」と公取委はみている。 鐘淵化学工業と三菱レイヨンは、いずれも「勧告の内容を十分に検討したうえで、対応を決めたい」とコメントしている。

公取委 国際連携を強化 着手前から協力 情報共有に壁も

 今回の価格カルテル事件は、公取委が米国や欧州の独禁当局と審査着手前から連携して取り組んだ初めてのケース。公取委は国際的なカルテル事件などの摘発を強化する姿勢を打ち出しており、既にいくつかの二国間協力協定などを実現している。
 独禁法違反事件の審査などについては国・地域間の「独占禁止法協力協定」という仕組みがあり、日米間では1999年10月にワシントンで締結。相手国の市場に独禁法上の問題があると判断した場合に相手国へ審査開始を要請する。
 同様の協定は欧州連合(EU)と今年7月に締結、カナダとも昨年11月から交渉を始めているほか、シンガポールと昨年1月に経済協力協定の一環で締結、さらに豪州や韓国とも交渉を進めている。
 今回の事件について公取委は「審査着手段階で協定の一定の成果が出た」とするが、その後の審査過程ではなお“壁”も残る。各国の独禁当局はそれぞれの根拠法に基づき審査するため、守秘義務などの関係上、収集した情報や証拠を共有し合うことは難しい。
 今回の審査過程で米国や欧州にある各社の子会社も立ち入り対象となったが、審査権限はそれぞれの独禁当局にあり、公取委は国外での行為について違反認定はできなかった。
 米司法省や欧州委員会の審査の結果次第では改めて立件されることになるが、公取委は「違反認定されるかどうかや、審査結果がいつどんな形で公表されるのか、詳しい見通しは分からない」と説明するにとどまっている。

 


2003/12/22  三菱レイヨン

公正取引委員会勧告の不応諾に関するお知らせ 
  
http://www.mrc.co.jp/press/pdf/031222.pdf

 三菱レイヨン株式会社(本社:東京都港区、社長:皇 芳 之)は、平成15年12月11日付で、公正取引委員会から、モディファイヤー事業をめぐる「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」(以下「独占禁止法」)第3 条(不当な取引制限の禁止)の規定に違反するものとして、同法第48条2項の規定に基づき、勧告を受けました。
 その後、勧告の内容につき慎重に検討した結果、今回の勧告内容は当社として応諾し難く、審判の場で更に事実関係を明らかにすることとし、本日12月22日、公正取引委員会に対し不応諾の通知を致しました。
 今回の勧告では、塩化ビニル樹脂向けモディファイヤーについて、販売価格の引き上げに合意することにより、販売分野における競争を実質的に制限していたとして、独占禁止法第3 条の規定に違反するとの判断が示されています。当社としては、勧告を受けたということを厳粛に受け止めておりますが、勧告内容を慎重に検討した結果、当該勧告にいたる公正取引委員会の事実関係の認識と当社との見解が乖離しているとの結論に達しました。従って、当社は、今回の勧告に対し応諾せず、今後の審判手続きにおいて、公正な事実認定と法律の適用を求めることとしたものです。
 当社グループは、これまでもコンプライアンスを最重要課題として取組んできておりますが、改めて、強い決意を持って、全グループ社員一丸となって周知・徹底を図っていく所存です。
 このたびは、当社グループのお客様をはじめ関係の方々へご心配をおかけする事態となりましたことを深くお詫び申し上げるとともに、今回の処置について、ご理解、ご支援を賜りますよう、お願い申し上げます。


2003/12/22 鐘淵化学

公正取引委員会勧告の不応諾についてのお知らせ

 弊社は、平成15年12月11日、公正取引委員会から、日本国内における塩化ビニル樹脂向けモディファイヤーの販売分野について独占禁止法第3条(不当な取引制限の禁止)の規定に違反する行為があったとして、勧告を受けました。

 勧告の内容について慎重に検討致しましたが、その内容は到底承服できないものであり、併社は、勧告を応諾せずに審判の場で争っていくことに致しました。本日その旨を公正取引委員会に対して通知しましたので、お知らせいたします。


2004/04/26 日清紡績

高機能性樹脂素材『カルボジライト®』生産設備の増設についてのお知らせ
http://release.nikkei.co.jp/detail.cfm?relID=70466

 日清紡績株式会社(本社:東京都中央区、社長:指田禎一、以下「日清紡」)は、徳島工場(所在:徳島県徳島市)に高機能性樹脂素材"カルボジライト®(CARBODILITE®)"※1の生産設備、ならびに化学製品のパイロット設備を導入いたします。これにより、カルボジライト®の生産能力を現在の10倍以上に引き上げ、量産体制を確立し、カルボジライト®の本格的な事業化を推進してまいります。

 世界的に環境問題に対する関心が高まるにつれ、各種化学物質に対する規制は一段と厳しくなっております。そのなかで、日清紡は1994年頃から、ポリカルボジイミド
※2の化学反応を活かした樹脂改質剤の開発に着手し、カルボジライト®と称して[1]水性樹脂の耐水性を向上させたり、[2]ポリエステル・ポリ乳酸の加水分解を防止させたり、[3]エポキシ樹脂の耐熱性を向上させたりするための高機能性樹脂素材を開発してきました。

 カルボジライト®は樹脂改質剤として、その耐熱性や化学反応性、人体・環境に対する安全性等において、たいへん優れた特性を持っています。そのため、揮発性有機化合物(VOC)問題、環境ホルモン問題、シックハウス問題等々の原因となる化学物質の代替品として、また、植物由来原料の安定剤として使用されるなど、様々な分野でその特性が高く評価されております。

 一般的に、数年後の架橋剤市場は、年間の生産量が1,000t規模に拡大すると言われており、また、植物由来樹脂における安定剤も、2010年頃には年間2,000t程度の市場規模に拡大することが見込まれております。日清紡では、千葉工場(所在:千葉県旭市)に生産設備(月産能力10t)を導入し、1999年から試験的に生産を開始してきました。日清紡のカルボジライト®に対する市場からの関心度は高く、今回、開発・生産・販売体制を抜本的に見直す時期に来ていると判断し、徳島工場へ新たに設備を導入することに決定いたしました。

 現在、プロジェクトチームを立ち上げ、[1]水性樹脂、[2]ポリエステル・ポリ乳酸、[3]エポキシ樹脂の市場を中心に、カルボジライト®の本格的な事業化を推進しています。5年後には、年商50億円以上を目指しております。

 なお、カルボジライト®に関する特許については、世界各国ですでに申請・登録済みです。

 日清紡は、カルボジライト®を軸に地球環境に優しい材料を創出し、これら樹脂改質剤分野でリーディングカンパニーとしての地位を確立していきたいと考えております。


【設備投資概要】
 ◆カルボジライト®生産設備
  [1]設置場所:徳島工場
  [2]投資額:970百万円
  [3]生産能力:100t/月
  [4]完成予定:2005年3月

 ◆化学製品パイロット設備
  [1]設置場所:徳島工場
  [2]投資額:680百万円
  [3]完成予定:2005年3月


※1 カルボジライト®とは…

高機能性ポリマー"ポリカルボジイミド"をベースとした商品群の総称で、水性・油性・粉末状・液状などのタイプがあります。
日清紡では、1994年頃からポリカルボジイミドの化学反応性に着目し、各種の樹脂改質剤を開発しております。
主に次のような規制に対する分野での効果が期待されております。

化学物質の規制…揮発性有機化合物(VOC)規制、環境ホルモン問題、シックハウス問題、重金属(鉛)規制、ハロゲン不使用、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)の強化
CO2排出規制…植物由来原料の用途拡大

※2 ポリカルボジイミドとは…

分子中に「−N=C=N−」(カルボジイミド基)を有する日清紡が独自に開発したポリマー(高分子)のことで、一般的には、カルボジイミド化触媒の存在下ジイソシアネートの脱炭酸縮合反応によってつくられます。

ポリカルボジイミドは化学反応性を有し、カルボキシル基やアミノ基などと反応します。
反応性ポリマーのなかで毒性のない安全性を持つほか、水性化100%を実現し、環境にも優れている特長があります。

 
【カルボジライト®の主な商品群】
 水性樹脂架橋剤 ペースト状接着剤 ポリエステル樹脂改質剤


2006/5/10

DuPont Packaging & Industrial Polymers Launches New Family of High-Performance Modifiers

DuPont Packaging & Industrial Polymers today announced that it is launching a new family of high- performance modifiers that will impart specific desired properties to a wide variety of polymers. The first product in the DuPont(TM) Entira(TM) line to be introduced globally is Entira(TM) AS.

Developed by DuPont-Mitsui Polychemicals Co., Ltd., a joint venture between DuPont and Mitsui Chemicals Inc., Entira(TM) AS offers excellent antistatic properties, high frequency weldability and high moisture permeability. Typically, less than 40 percent by weight of Entira(TM) is needed in a polymer compound to achieve the desired benefits. The launch of Entira(TM) AS in the Japanese market was also announced today by DuPont-Mitsui Polychemicals.

Compared to surfactants that are commonly used as antistatic agents for plastics, Entira(TM) AS provides permanent antistatic properties with little bleeding, excellent processibility and miscibility with polyolefins.

Applications for this innovative resin modifier include packaging materials for health and beauty aids; electronics; food and beverages; stationery; and industrial materials.

"We are very excited to be launching this innovative new family of modifiers," said Todd Becker, global market manager, DuPont Packaging & Industrial Polymers. "Each product in this family will offer compounders the ability to enhance specific performance properties to better meet end-user needs. Entira(TM) AS is just the first in a long line of high-performance modifiers that DuPont will be bringing to the marketplace."

Headquartered in Tokyo, Japan, Mitsui Chemicals, Inc. is a diversified chemical company with offices in Europe, China, Southeast Asia and America. Mitsui Chemicals, a leading chemical manufacturer in Japan, is actively engaged in numerous industry segments including petrochemicals, basic chemicals, functional polymeric materials, and functional chemicals and engineered materials.

DuPont (NYSE: DD) is a science company. Founded in 1802, DuPont puts science to work by creating sustainable solutions essential to a better, safer, healthier life for people everywhere. Operating in 70 countries, DuPont offers a wide range of innovative products and services for markets including agriculture, nutrition, electronics, communications, safety and protection, home and construction, transportation and apparel.

The DuPont Oval, DuPont(TM), and Entira(TM) are registered trademarks or trademarks of DuPont or its affiliates.