柔軟性と高度なガスバリア性を持つEVOH系新バリア樹脂の事業化について
http://www.kuraray.co.jp/press/2003/031204/index.html
当社は、高いガスバリア性と、ゴムのような柔軟性・弾力性、優れた加工性を併せ持つ新しいバリア樹脂(名称未定→「エバールSP」)の開発に成功し、生産設備の新設に着手しました。
当社は1972年、自社開発のEVOH樹脂<エバール>を事業化し、プラスチックとしては最高レベルのガスバリア性(汎用ポリエチレンの約1万倍)を生かして、食品の保存性に優れた包装材料として高い信頼を得てきました。また食品包装以外にも、自動車ガソリンタンクや床暖房用パイプなどの工業材料としての活用が進み、世界的に需要が急拡大しています。
しかし、<エバール>はプラスチックとしては比較的硬い材料であり、柔軟性とガスバリア性の両方が要求される用途分野への参入は困難でした。
一方、ゴムのような柔軟性・弾力性を持ち、かつ高いガスバリア性を備えたポリマーはかつてなく、工業分野でのニーズが高まっていました。
今回開発した新バリア樹脂は、<エバール>をベースとしながら、独自開発した反応技術により“硬さ”の原因である結晶特性をコントロールすることで、卓越したガスバリア性と柔軟性・弾力性を高度に両立させた新素材です。
これにより、以下の新展開が可能になりました。
・ | 食品包装分野では、柔軟性・加工性の高いガスバリア材が実現します。デザイン性の高い深絞り容器や、食品の形状に合わせたシュリンクフィルムへの展開など、新たな市場が拓けます。 |
・ | 工業材料分野では、ゴムやエラストマー等との組合せにより、従来にない「高ガスバリア性の弾性材料」が実現します。自動車関連など幅広い用途開発が期待されます。 |
当社は<エバール>事業化以来、ガスバリア性樹脂のリーディングカンパニーとして市場を開拓してきました。現在<エバール>は世界3極での生産体制を敷き、その市場は年率2割近い拡大を示しています。現在欧州での設備増強を進めており、04年秋の完工をもって当社グループの生産能力は年間45千トン/年から57千トン/年に強化されます。
今般の新バリア樹脂の事業化により、当社のガスバリア材事業は第二の柱を得て、その成長に拍車が掛かるものと期待しています。さらに当社は、従来とは異なるアプローチから新たな高機能ガスバリア材の開発を進めており、この分野で世界をリードする企業グループを目指してまいります。
概要
1. 用途展開
食品包装 | |||
・ | シュリンクフィルム・バッグなど、食品の形状にフィットするバリア包装材
…素材自体の伸縮性向上を生かした用途 |
【想定される世界市場
8,000トン/年】 |
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・ | PP系バリアフィルム(PP/アルミ箔のアルミ箔代替など)
…他プラスチックとの共延伸ができる特性を生かした用途 |
【同 8,000トン/年】 | |
・ | PET系バリアボトル
…他プラスチックとの耐剥離性を生かした用途 |
【同 5,000トン/年】 | |
・ | 超深絞りカップ・複雑なデザインのカップ
…高い加工性を生かした用途 |
【同 6,000トン/年】 | |
工業材料 | 【想定される世界市場
8,000トン/年】 |
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・ | エラストマー用途 パッキン、キャップライナー、薬栓 他 |
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・ | 自動車周辺用途 ガソリンタンク周辺部材、チューブ・ホース 他 |
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・ | その他の工業用途 コーティング材、ヒートシール材、光学材料 他 |
2. 販売構想
(1) 想定される世界市場 35,000トン(2003年)
(参考)EVOHの世界市場 70,000トン(2003年)
(2) 販売構想 2005年度 5,000トン
売上予想 50億円
2007年度 10,000トン 売上予想100億円
3. 設備投資の概要
場 所
:当社 岡山事業所(岡山市 事業所長:上席執行役員 和食 征二)
設 備 能 力 :年産5,000トン
稼 働 開 始 :2004年9月
設備投資額 :約10億円
【ご参考】
新バリア樹脂がターゲットとする用途(食品包装)
●シュリンクフィルム(食肉用) 現行品:PVDCなど
●PET系バリアボトル 現行品:PET/MXD-6など
●深絞りカップ 現行品:EVOH(新樹脂採用により、さらに超深絞り品が可能)
日本経済新聞 2003/12/6
生分解性プラスチック 数ヶ月を短縮2週間に 神鋼、加熱する新技術
神戸製鋼所は生分解性プラスチックを約2週間で分解する技術を開発した。従来は数カ月かけて微生物分解していたが、加熱工程を加えることで分解時間を大幅に短縮した。発生したメタンガスは発電などにも利用できる。来年度にも実証プラントを建設して、地方自治体向けに売り込む。
生分解性プラはサトウキビなどの植物から抽出する成分でできており、廃棄すれば微生物が水と二酸化炭素に分解する。環境負荷が小さいためごみ袋やこん包材などで採用が進んでいるが、分解に数カ月−数年かかるのが難点だった。
生分解性プラをセ氏150−180度の高温で溶解して分子量を小さくする熱加水分解技術を開発。細かくして生ごみや家畜のふん尿と同様に微生物に分解させる。
発生する大量のメタンガスは発電などに利用する。
生分解性プラは自動車や電子機器の部品などにも採用が広がり、国内需要は2002年の1万トン程度から2015年には150万トンに拡大する見通しで、効率的な再資源化技術の確立が課題となっていた。
神戸製鋼は破砕・メタン発酵を含むプラントを提供、価格は1日の処理量が30トンの場合で8億−10億円。自治体などに売り込み2005年度に20億円の売り上げを目指す。