日本経済新聞 2002/10/21  

燃料タンク用樹脂 化学各社が増産 自動車軽量化に対応

 昭和電工系の日本ポリオレフィン、クラレなど化学各社は自動車の燃料タンク向け合成樹脂の生産を拡大する。自動車メーカーが車両軽量化へ向けタンク素材を金属から樹脂へ切り替えていることに対応し、供給力を高める。
 樹脂製タンクはポリエチレンとガス遮断性のある樹脂を五層から六層張り合わせる構造。日本ポリオレフィンは現在、大分工場(大分市)で耐衝撃性などに優れるタンク用ポリエチレンを年約8千トンを生産しているが、2005−07年をめどに3万ー5万トンに増やす。自動車各社の海外工場への輸出も本格化する。
 
クラレは来年夏をめどにガス遮断性樹脂「EVOH」を生産するベルギー・アントワープ工場に百億円を投資して年産能力を2万4千トンに倍増する。日米を合わせた能力は5万7千トンとなる。米国では工場増設も検討中で、テキサス州に研究開発拠点を新設し、現地での販売拡大につなげる。
 同樹脂では
日本合成化学工業も百億円強を投じて英国に工場を建設中。タンクのガス遮断には従来、ナイロン樹脂が使われてきたが、最近はEVOHへの転換が進んでいる。ガソリンタンクの樹脂化率は欧州で約9割、米国で約7割。日本は1割程度にとどまっている。


日本経済新聞 2002/9/19

生分解性プラスチック ユニチカ、耐熱牲2倍に 自動車部品など用途開拓

 ユニチカはセ氏140度と耐熱性を従来の2倍以上に高めた生分解性プラスチックを開発した。射出成型も容易になり樹脂成型品を大量生産できる。生分解性プラスチックは環境への影響を軽減でき製品廃棄時のコスト削減などにつながる。メーカーが環境対策を加速するなか、パソコンや自動車の部品などで幅広い用途開拓が期待できるとみている。
 生分解性プラスチックであるポリ乳酸樹脂に、層状ケイ酸塩という無機物の微細な粒子を加えて開発した。米国の材料試験協会が定めたDTUL規格で性能を評価、セ氏140度まで変形しなかった。従来のポリ乳酸樹脂はセ氏58度までの耐熱性だった。 
 ユニチカはノートパソコンなどOA機器の外装品や、耐熱性が重要な自動車部品などでの採用を見込んでいる。同社は米化学大手のカーギル・ダウ(ミネソタ州)からポリ乳酸樹脂を調達してこれまで生分解性フィルムや生分解性繊維を生産しており、2001年度は同樹脂の量にして500トン。今回の新技術で生分解性プラスチックの事業も始め、2005年度に同樹脂量で1万5千トン、売上高120億円をめざす。
 層状ケイ酸塩はもともと土中にある物質なので樹脂に加えても生分解性を損なわないという。開発した生分解性ブラスチック内で層状ケイ酸塩はナノ(ナノは10億分の1)メートル単位の細かい間隔で分散している。分散の仕方を工夫することで結晶化する速度が従来品の約100倍に高まり、射出成型時の樹脂の冷却時問が30秒前後にまで短縮できる。生産性が高まり大量生産しやすくなる。従来のポリ乳酸樹脂は、2分以上の冷却時間が必要だった。

生分解性プラスチック
トウモロコシやサツマイモなどの植物資源からでんぷんを抽出・発酵させてできるポリ乳酸を原料にしたプラスチック。一般に土に埋めると微生物の働きで分解され、最終的には水と二酸化炭素になるため、廃棄物を減らし石油など資源を使わない循環型の新素材として注目されている。
ポリ乳酸の商業化では米カーギル・ダウが先行するが、昨年、トヨタ自動車もインドネシアで事業化に着手した。最終製品ではソニーがミニディスクの外装フィルムに採用、富士通もノートパソコンの部品への活用を拡大するなど利用が広がっている。


日本経済新聞夕刊 2002/8/26                             

化学品統合前倒し 日商岩井とニチメン、来月に

 日商岩井とニチメンは26日、化学品事業を9月中に全面統合することを決めた。両社は3月
に関連子会社を統括する共同持ち株会社を設立したが、本体が手掛ける事業もそれぞれ分社化し、持ち株会社の傘下に置く。当初は3、4年後をメドに全面統合する方針だったが、早期に統合効果を引き出すために前倒しすることにした。
 両社が26日午後に発表する。本体が手掛けている工業塩、塩化ビニール、合繊原科などの販売や関連する内外での投資事業を分社して、両社が折半出資で設立したグローバル・ケミカル・ホールディングス(東京・港、中谷光作社長)に譲渡する。
 両社は3月に汎用化学品販売子会社をグローバル・ケミカルに移管している。今回譲渡する事業の年間売上高は日商岩井が800億円、ニチメンが500億円程度。グローバル・ケミカルの連結売上高は年間2500億円程度に拡大する見通し。
 日商岩井から約50人、ニチメンから約40人がグローバル・ケミカルの傘下に入る子会社に出向する予定。
 グローバル・ケミカルは10月以降、4つの会社を傘下に収める形となり、2003年10月までに機能ごとに再編し業務効率と収益力の向上を目指す。さらに他の商社の参画も求め連結年間売上高を1兆円まで拡大する方針だ。日商岩井とニチメンは合成樹脂でも共同持ち株会社、プラ・ネット・ホールディングスを設立している。

 


2001/3/9 日本経済新聞夕刊

ニチメンと日商岩井 合成樹脂事業を統合 
 月内に持ち株会社 売上高商社2位に    

 ニチメンと日商岩井は9日、合成樹脂事業を統合することで合意、同日午後発表する。3月末までに両社の関連子会社を統括する共同持ち株会社を設立、3,4年後をメドに合成樹脂部門全体を統合する。両社の同部門の年間連結売上高は合わせて約3600億円で最大手の三井物産に次ぐ規模になる。三菱商事と日商岩井、伊藤忠商事と丸紅が鉄鋼部門を統合するなど、総合商社の間で事業統合が相次いでいる。電子商取引の普及などで商社の取引仲介ビジネスは大幅な縮小を迫られており、事業統合による生き残り戦略が鮮明になってきた。    
 共同持ち株会社はプラ・ネット・ホールディングス(東京・港)。資本金は36億円で、ニチメンが65%、日商岩井が35%出資する。ニチメンの白井厚三専務が社長に就く。
 持ち株会社の傘下には、ニチメン系のニチパック(東京都町田市)、エヌ・アンド・エルマーブル(大阪府茨木市)、日商岩井系の日商岩井プラスチック.(東京・港)の3社を置く。ニチパックは包装材、エヌ・アンド・エルは人工大理石の製造販売を手掛け、日商岩井プラスチックは合成樹脂原料、半導体製造用資材などを販売する。
 2001年3月期の3社の売上高合計は約900億円。国内外の営業拠点の相互利用などで営業力を強化し、サプライ・チェーン・マネジメント(SCM)構築など情報技術(IT)投資も共同で進める。持ち株会社の2002年3月期の連結売上高は1千億円、営業利益は11億円を見込む。
 両社はさらに本体に残る合成樹脂原料などの部門を分離、統合する方針だ。合成樹脂分野の連結の年間売上高はニチメンが約2200億円、日商岩井が約1400億円。
 統合後の新会社はポリプロピレン、ポリエチレンなど基礎原料や半導体基板や液晶材料など電子材料を自動車、電機メーカーなどに売り込む。
 商社業界では伊藤忠商事と丸紅、三菱商事と日商岩井がそれぞれ鉄鋼部門を統合する計画。住友化学工業と三井化学が経営統合を決めるなど合成樹脂分野でもメーカーとユーザーが競争力を強化しており、取引仲介に依存する商社の収益力は低下している。
 建材、紙パなど小規模な不採算部門で始まった商社の再編は収益の柱である素材分野に一気に広がる見通しだ。  

 * ニチメン/トーメン 農医薬JV アリスタ ライフサイエンス株式会社 


日本経済新聞 2002/11/2

三井物産 合成樹脂 上海に販社設立 中間原料を増産

 三井物産は中国での合成樹脂の販売体制を強化する。月内に上海で販売会社を新設、中間原料であるコンパウンドを増産する。日系の自動車メーカーや家電メーカーの進出に対応、きめ細かい営業体制をつくる。
 新会社は三井塑料貿易(上海)公司。資本金は30万ドル(約3700万円)で三井物産と同社の中国法人とで全額を出資する。中国で三井物産が出資する樹脂専門の販売会社は香港に次いで2社目となる。
 新会社は三井物産の中国法人から、家電やOA機器の外装などに使う樹脂原料の販売を引き継ぐ。日系企業に加え現地企業の開拓も進める方針で、2006年に年間1200万ドル(約15億円)の売上高を目指す。
 また自動車メーカーの中国進出に合わせ、樹脂原料を混合・着色したコンパウンドを増産する。来春をメドに上海市内の工場に1ライン増設、年間1万5千トンから2万トンに生産能力を引き上げる計画だ。日系製造業の進出に伴い、中国における合成樹脂の需要は増えている。