(日本経済新聞 2002/2/15 ) 

  ポリプロピレン 四日市工場の設備休止
 日本ポリケム チッソと統合控え

 三菱化学系の合成樹脂会社である日本ポリケムは14日、四日市工場(三重県四日市市)のポリプロピレン生産を打ち切ると発表した。今年末で生産設備を休止する。競争力の劣る設備を止めて他工場に生産を集約。生産性を高め、激化する国際競争に対処する。
 休止するのは年産能力3万7千トンの設備。年10億円のコスト削減効果を見込む。同社は鹿島、川崎、四日市、水島の4工場でポリプロピレンを生産していた。四日市の撤退により、3工場体制に移行。休止後のポリプロピレンの年産能力は67万3千トンに減る。
 
 日本ポリケムは三菱化学と東燃化学の共同出資会社。三菱化学が昨年1月、四日市地区で基礎原料のエチレンやプロピレン生産から撤退したため、ポリプロピレン事業の競争力が低下していた。日本ポリケムは今年夏をメドに、チッソとポリプロピレン事業を統合する計画。チッソは四日市地区にポリプロピレン設備を持ち、統合を控えて老朽設備を止めることにした。
 

 汎用合成樹脂の輸入関税は2004年までに引き下げられ、海外製品との競争が激しくなる。景気悪化による市況低迷も重なり、台成樹脂メーカーはすでにほぼ全社が赤字の状態で、過剰設備の廃棄など合理化策が不可欠となっていた。
 
 昭和電工系の日本ポリオレフィンも2002年内に、川崎地区にある年産4万トンのポリエチレン設備を停止することを決めている。業界内では合成樹脂だけでなく、基礎原料であるエチレン生産設備の廃棄が必要との声が広がっている。


化学会社の主な設備休止・廃棄

会社名   時期   内容   場所
昭和電工    2000年9月   エチレン(年15万トン)   大分
三菱化学   2001年1月    エチレン(年27万トン)   四日市
大洋塩ビ   2002年春   塩化ビニール樹脂(年1万トン)   大阪
日本ポリオレフィン   2002年内   ポリエチレン(年4万トン)    川崎
日本ポリケム    2002年末    ポリブロピレン(年3.7万トン)   四日市

(化学経済 2000/9)   
ポリオレフィン一体化会社の現況と展望 日本ポリケム        設立発表

日本ポリケムの概要
設立         1996年5月24日
営業開始       1996年9月1日
製造・研究開発の移管 1998年11月1日
資本金        200億円(1998年11月に20億円から増資)
事業内容       ポリエチレン、ポリプロピレンおよびそのコンパウンドの
              製造、販売、研究開発
売上高        約1500億円
総資産        約1300億円
従菜員数       約1100人
株主         三菱化学65%、東燃化学35%

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2004年に国際級の新鋭設備建設  ROA6%の達成目指す  

 日本ポリケムの営業開始は96年9月であり、三菱化学と東燃化学の両社ポリオレフィン部門の販売統合であったことから折半出資でスタートした。設立後も東燃化学の関係会社である日本ユニカーをはじめ、その他企業の参加努力を続け、3年後に製造およびR&D部門の統合を目指した。しかし、重点テーマであった他社の参加は思惑通りに進まず、両社は、ほぼ2年後の98年11月に製造およびR&D部門を統合する。製造部門の統合とともに資本金を20億円から200億円に増資し、出資比率も譲り受ける資産に見合って、当初の基本協定書通り65/35に変更した。  
 99年12月期は、販売会社時代のノーロス・ノープロフィットから、実質的な事業会社となり約50億円の経常利益を確保したため、収益の一部を配当している。これは97年から99年の3年間の合理化が75億円に達したことと、生産集約化などによる過当競争の是正が寄与したためである。  
 同社の使命は、ポリオレフィン事業で利益を上げること、その利益目標はR0A(総資産経常利益率)6%以上を早期に確保することであり、もう1つは原料であるエチレンおよびプロピレンを安定的、大量に合理的価格で親会社から購入することである。  
 2000年からスタートした中期経営計画は、99年のROA 4.3%を2003年に 6%以上にすることを目標とする。事業環境は販売数量が国内はGDP並みであるが、アジア全体は高い成長率に復帰するものの、価格が域内の需給ギャップ拡大と関税率の漸減で国際価格に収れんするとみる。したがって、数量は伸びても売り上げの伸びが伴わないため、総資産を圧縮してROAを高めるシナリオとなっている。  
 総資産を1200億円とすればROA 6%は72億円の経常利益であり、税引き後利益で36億円、配当性向を50%とすれば18億円の配当原資となり、年間9%の配当率となる。  


 人員を1000人以下に削減  
 合理化の中では、すでにグレード数はPEで400〜500を200前後に,PPは500を200に削減している。これをさらに前進させるほか、系列更新のための技術開発にも重点志向する。  
 人員は、販売会社時代は300人でスタートしたものが、製販統合計画の1年前倒しがあったが、予定通り340人を実現した。その後製販統合により工場および研究開発の人員を受け入れたため1160人となった。これを2000年末までに120人減の1040人とし、2001年末には1000人とする。中期計画の最終年である2003年末には970人が見込まれている。これにより1500億円の売り上げを実現すれば高効率の体制が構築される。  
 技術面では、2000年初めに新型メタロセン触媒による超低融点のPPランダム共重合体を開発、ブロックタイプの開発も進めている。メタロセン触媒では高圧法PEが水島で営業運転に入っているほか、LL技術の開発も進んでいる。こうした新技術は設備更新時に採用されるとみられる。  
 また、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーでは従来のコンパウンド型と異なり、エチレンとプロピレンを直接重合するタイプの開発に成功し、自動車内外装や家電、OA機器への開拓を進めている。  研究開発は、四日市、川崎、水島の技術センターで行われてきたが、統合により四日市が自動車部品、家電、フィルム、シート、川崎がブロー、繊維、延伸と、用途別の体制に再編した。これにより効率が高まった。 設備は、四日市のエチレンが2000年12月に停止することから、7万5100トンの高圧法PEとPP2系列7万7000トンの操業が問題となるが、特殊グレードを生産する高圧法PEは当分運転を継続し、PPのうちの1系列4万トンだけを9月末に停止する。  
 PPの場合は2000年5月末に水島の4万2000トン系列も休止し、その一部(1万トン程度)は鹿島にシフトするが、それら減少分は基本的にはシンガポールの Exxon Mobilの新設備に10万トンの引き取り権を確保しているため、そこからの供給で輸出を代替する。Exxon Mobilの新設備はメタロセン法による45万トン能力で、2000年第4四半期の稼働が見込まれている。親会社の三菱化学は原則として不安定な輸出依存からの脱却を目指しており、VCMなどでも国内の販路拡大で輸出から撤退している。  
 Exxonとは、水島で事業化しているメタロセンPE触媒でも提携関係にある。98年11月の製販統合を契機に、水島の高圧法PE系列(7万5100トン)を、C6をコモノマーとする三菱化学開発の高圧イオン重合法に転用し、触媒には Exxon Chemical のメタロセン触媒を導入した。 ポリオレフィンの商標は「ノバテック(NOVATEC)」であるが、メタロセンポリエチレンには「カーネル」を使用している。  

 コストと付加価値の両面作戦  
 2004年1月からの関税の最終税率適用では、s当たり10円程度の影響を受けるとみており、日本ポリケムとしては業界の生産集約化が進展しない場合でも、独自に新鋭大型プラントを建設すると同時に、高付加価値品の生産に適した小規模プラントを保有する二面作戦を展開する。とくに、経営計画において高圧法PEとPPは収益の源泉として前向きな施策が期待され、一方でLLとHDは基盤事業として固定費を支える役割を背負っている。  
 問題は20万〜30万トンクラスの大型プラントヘのリプレースであるが、すでに鹿島のLLDPEは27万トン規模にあり、わずかな投資で30万トンの国際級プラントになるため問題はないが、3工場に分散している高圧法LDと最大でも15万トンレベルにあるPPの設備統合が課題となっている。またHDは20万トン、4系列という体制にあるが、規模と収益面で大型化投資は容易ではないとみられる。とくに高圧法PEの大型化では日本ユニカーの参加が期待されている。  
 日本ユニカーは、東燃化学とUCCの折半出資であり、社長は東燃化学から派遣されてきた。しかし、東燃化学の親会社である東燃が Exxonと Mobilの折半から、東燃ゼネラル石油として Exxon Mobilがマジョリティーをもつ形に改組された。つまり東燃化学は Exxon Mobilの傘下企業と位置づけられる体制となった。 一方、UCCも年末までには Dow Chemicalとの合併で Dow主導に衣替えする。Exxon とUCCは ExxonとUnipolの特許管理会社である Univation Technologiesを設立している。DowはUCCとの合併条件として自社のInsiteメタロセン技術を売却することを決断し、Univationを継続することを選択した。このことは日本ユニカーが従来の株主構成で存続できることを意味しているが、Exxon Mobilのシンガポール、DowのタイにおけるPE事業の位置づけとの関係で流動的な側面もある。  
 同社が力を入れている事業に海外コンパウンド事業がある。三菱化学(旧三菱油化)と東燃化学は米国に進出した日系自動車メーカー向けにPPコンパウンド事業を展開していたが、日本ポリケムの発足とともに合体して Mytex Polymers(USA)を立ち上げた。当初の株主は Exxon50%、三菱・東燃で50%という構成であったが、現在は日本側出資を日本ポリケム30%、三菱化学アメリカ20%に変更し、日本ポリケムのプレゼンスを高めている。合弁会社はインディアナ州に年産2万5000トンの能力を有している。  
 また、シンガポールの Mytex A.P.は2000年4月に Exxon Mobilと三菱化学の折半出資で設立され、Exxon MobilからPP10万トンを引き取り販売するが、相当量を現地でコンパウンド化して販売する。同社も米国と同様にいずれは実務を遂行する日本ポリケムが30%出資となる見込みである。  
 さらに、日本ポリケムはオランダのDSMとPPコンパウンドのクロスライセンス契約を締結し、中国では三菱化学が出資する北京聚菱燕塑料に自動車用PPコンパウンドの技術を供与している。

  


化学経済 1997/4 特集・合成樹脂業界の再編成・総論

・・・ グランドポリマーは,宇部興産のLLプラントの利用で三井石油化学がメタロセン触媒技術を供与したことが始まりである。この信頼関係をベースに三井石油化学の触媒およびフィルム,宇部興産のコンパウンドおよび自動車分野での強みがそれぞれ補完関係にあったことで実現した。


(化学経済  2000/9)
ポリオレフィン一体化会社の現況と展望 グランドポリマー

グランドポリマーの概要
本社  :東京都中央区京橋1丁目18番1号
設立  :1995年7月I日
営業開始:1995年10月1日
資本金 :135億円(三井化学 66.7%、宇部興産 33.3%)
従業員 :500人
事業内容:ポリプロピレンの製造・販売
生産能力:70万1000トン
組織  :企画管理部、工業材営業部、産業材・色材営業部、生産部
     支店:大阪、名古屋、広島、福岡、札幌
     工場:市原工場、堺工場、高石工場
     開発研究所:千葉県袖ケ浦市
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新プラント建設控え、新戦略を構築  安定成長への基盤の整備進める  

 グランドポリマー(以下GRP)は、1995年7月に旧三井石油化学と宇部興産のPP事業を統合し、両社折半出資で設立された。当初、両親会社から営業譲渡を受けて土地、生産設備を貸与されて10月から営業を開始し、生産形態やグレードの調整、物流の効率化、人員削減などの合理化を進めながら事業展開を図った。その後、三井石化が旧三井東圧化学と合併し三井化学として発足するのに伴い、97年7月に三井東圧化学のPP事業が新たに加わり、再スタートを切った。このため、同社は二段階の事業調整が必要となり、他の樹脂事業統合会社に比べて煩雑な対応を強いられた。  
 しかし、各種の経営施策を進める中で、97年にはボトルネック解消で設備能力をアップして現在の供給体制とし、99年5月には生産関係をはじめシステムを統合した。また、99年4月には両親会社から設備譲渡を受け、さらに2000年3月には開発部門を千葉県の袖ケ浦の開発研究所に統合するなどスムーズな事業運営体制への足場を固め、設立5年を経てようやく安定成長への軌道が敷かれた。  
 この間同社の業績は、スタート時の95年度(半期)は収支はほぼ均衡しが、96年度は折からの原料ナフサ価格高騰の影響をまともに受けてかなりの損失を計上した。97年は各種の合理化などの効果が浸透して累積赤字がほぼゼロに近い水準となった。98年は売上高820億円、99年は800億円と前年を若干下回ったものの、両年とも黒字化を達成し、累積損失を一掃した。しかし本年は、当初予算に対してナフサ価格が高騰、この原料値上がり分の製品価格への転嫁が難しい状況にあり、厳しい収益構造となっている。  
 20万トン級以上のプラント建設へ  世界の化学企業の事業再編成は、急速なスピードと大きな規模で展開されている。PPにおいても世界最大のモンテルは1社でわが国の生産能力合計を上回る生産規模を持っている。こうした世界の状況は、日本企業に再度、経営の見直しを迫ることとなり、GRPも新たな収益構造を構築し、安定した利益を確保する生き残りをかけて、2000年4月に中期3カ年経営計画を策定、スタートした。  
 この中計の最大の目標は、20万トン級以上の大型プラントを建設してコスト競争力を強化し国内で主導権を握り、併せて輸入品に対抗できる地位を確保し、海外企業との競争に勝てるところまでもっていくことにある。  
 現在、同社の製造プラントは、千葉・市原工場(旧三井石化)2系列22万3000トン、大阪・堺工場(宇部興産)2系列13万3000トン、大阪・高石工場(旧三井東圧)3系列24万2000トンで合計59万8000トンである。これらに宇部ポリプロ9万トンのうちGRPの出資見合い分(81%)7万3000トン、浮島ポリプロ10万5000トンのうち3万トンの契約引き取り分があり、トータル供給量は70万1000トン。  
 これら製造プラントについてGRPは、99年4月に両親会社からリースを受けていた市原、高石、堺の各工場のPP設備51万3000トンおよび関連設備と宇部ポリプロのうち宇部興産の出資持ち分について譲渡を受けている。また、これに伴う60億円の増資により、資本金は135億円となった。  GRPは自社設備となったことで、名実ともに製販一貫体制が確立、キャッシュフローの確保と生産体制の再編成で効率的な戦略が打てることになった。半面、同社の製造プラントは、7系列60万トンと1系列でlO万トンを下回るものもある。世界的に規模が大型化する状況で、こうした10万トン以下のプラントで国際的にコスト競争していくには、すでに努力の限界もあった。このためGRPは、S&Bにより国際競争力のある1系列20万トン規模以上のプラントの建設計画を打ち出した。この背景の1つには、輸入関税でPPはコポリマーが99年から2.8%の最終税率が適用され、さらにホモポリマーは2004年1月から一律6.5%の従価税方式になる。これにより輸入品が激増してくることは必至で、しかも海外の最新プラントによる製品は、汎用分野では国内品に肩を並べる品質となっているだけに、これらに対抗していくには新設備によるコスト低減が、ぜひとも必要となっていた。このため新プラントは、2004年の輸入品の関税問題などを絡めて考えると、早期に最適立地や採用プロセス・触媒、スクラップするプラントなどについての結論を出し、遅くとも2003年の中ごろまでには稼働したいとしている。
 さらに、2基目の新プラントについては、原料プロピレン手当、他社との提携や海外立地を含めて検討に入っており、早期100万トン体制への対応を整えたいとしている。

 グレード統合も併せて実施
 新プラント建設については、輸入品に対抗できる国際競争力の強化と併せてグレード数の減少、荷姿の変更、物流コストの低減、倉庫の見直しなどの問題を改善していくことも需要な課題となっている。
 グレード数については、3社統合後の700から300を目標に置いて、現在は統合前にそれぞれ各社が持っていた1社分の330くらいに減少している。さらにこれをプラントのS&Bに向けて200程度にまで持っていく考えである。これと同時に、製造コストの引き下げを図りつつ、現在のプラントの特徴を生かして、特殊フィルムや自動車用などの高機能・高付加価値製品の開発に力を注ぎ、同社の1つの武器である需要家のニ一ズに対応したきめの細かいサービスを強化する。こうした技術サービスの質を維持しつつも、GRPの特徴を生かしたグレードをユーザーに持ち込み、提案していくことでユーザーをリードしていけば、銘柄を絞り込むことができるとしている。
 PPは今後も伸びが期待される樹脂で、2000年の内需は97年を上回り過去最高水準が予測されている。それだけに国際的に企業間競争は激烈で、次世代をリードする触媒・ポリマー技術や新加工技術による高機能分野での新規製品、新銘柄、新用途開発で先んじることが重要となっている。このため同社はこの3月に市原、堺、高石の3カ所に分散していた研究機能を袖ケ浦の三井化学の袖ケ浦研究センター内に開発研究所として集約、研究員約70人を擁し、この4月にオープンした。また、同敷地は三井化学の研究拠点であるのをはじめ、三井化学分析センター(分析)、サンアロイ(コンパウンド)があり、しかも、宇部の千葉石油化学工場内に高分子研究所があるなど、同社にとっては研究のシナジー効果が図られ、開発のスピード化が期待されている。

 レジンを含めて世界戦略を見直す
 同社は、最も強い自動車関係で親会社を含めて海外にコンパウンドでは、タイにグランド・サイアム・コンポジット(GSC;サイアムグループなどとの合弁)、米国にアメリカン・テクノロジカル・コンポジックス(ATC;宇部興産と丸紅の合弁)とカラー&コンポジット・テクノロジー(C&CT;三井化学、三井物産、東洋インキ製造との合弁)に加えてメキシコにATCの100%子会社のATCメキシカーナ、また、中国の上海に上海三井複合塗料有限公司(SMPC;三井グループとの合弁)、ベルギーにFMテクノロジーズ(FMT;ぺトロフィナとの合弁)を持ち、すでに世界4極で対応できる体制を確立している。このうち米国の2杜は年内に統合する予定で、またGSCは日系および欧米自動車1メーカーへの供給をターゲットに2001年初めに完成予定で設備を増強している。
 しかし、昨今の自動車業界は、化学業界と同様に世界的な急激な変化や衝撃的な再編成など一大転換期を迎えている。こうした同業界の国際化の状況下で、GRP自身、果たして現在の4極体制だけでいいのか、また、レジンまで持つことが生き残りの条件になるのか、新たな問題を抱えている。このため、成長地域であるアジアをはじめ欧米などで、パートナーと組んでレジンまで事業化することなど、両親会社とオレフィン問題を含めて詰めを急いでいる。

 


日本経済新聞 2001/3/29                                    

宇部興産 ポリプロピレン販売撤退 営業譲渡

 宇部興産は28日、代表的な合成樹脂であるポリプロピレンの販売から撤退する方針を固めた。宇部興産は現在、三井化学と共同出資のグランドポリマーを通じ、ポリプロピレンを製造販売している。三井化学と住友化学工業が10月に合成樹脂事業の統合会社を設立するのを機に、
グランドポリマーは統合会社に営業権を譲渡し、生産に特化する。これにより住友化・三井化はポリプロピレン事業で三菱化学グループを抜いて国内トップとなる。
 グランドポリマーは1995年7月に発足。三井化が3分の2、宇部興産が3分の1を出資している。グランドポリマーは年内をめどに、三井化と住友化のポリオレフィン(ポリエチレンとポリプロピレン)事業統合会社に営業権を譲渡し、その後は生産会社となって事業を継続する。
 グランドポリマーは市原(千葉県市原市)、堺(大阪府堺市)、高石(大阪府高石市)の3工場を持ち、ポリプロピレンの年産能力は約67万トン。生産能カシェアは22.6%で、同事業では三菱化学系の日本ポリケムに次ぐ業界2位だった。売上高は約800億円。
 当初は三井化と宇部興産が資本提携を解消する案もあったが、交渉に時間がかかるうえ、宇部興産単独の生き残りが厳しいため
営業権を譲渡し、生産提携を残すことにした。住友化・三井化にとっては規模拡大で競争力を高める狙いがあり、両社の統合を機に合成樹脂の再編が加速してきた。


日本経済新聞 1998/9/24

日本ポリオレフィン 製造設備を集約
 年内メドに50億円増資

 昭和電工と日本石油化学が共同出資する汎用樹脂メー力ー大手の日本ポリオレフィン(略称TPO、東京・港、上田真弘社長)は、年内をメドに50億円増資し、債務超過を回避する。
旭化成工業の水島コンビナート(岡山県倉敷市)内に持つポリプロピレンの製造設備(注 日本ポリプロ)は休止し、昭電の大分コンビナート(大分市)にポリプロ生産の大半を集約する。自動車や家電の販売低迷で汎用樹脂メーカーの業績は軒並み悪化しており、設備廃棄など合理化が相次ぎそうだ。
 JPOは資本金100億円。昭電が65%、日石化学が35%出資し、両社の汎用樹脂の製造販売事業を統合する形で95年6月に設立した。しかし、昨年末時点での累積損失が87億円程度に膨らんだ模様。98年12月期決算も20億円程度の最終赤字になる見通しで、増資により債務超過を避けることにした。

 さらにJPOは水島でのポリプロ生産(年間6万4千トン)から撤退する方針を固め、原料の供給元である旭化成との交渉に入った。この設備は
旭化成が90年末に独BASFからの技術導入で完成したが、旭化成は94年、昭電(実際は昭和電工67%出資で設立し昭電が製品を全量引き取る日本ポリプロ)に営業権付きで事業譲渡していた。
 ポリプロをはじめとする汎用樹脂の生産は、今年に入って前年比で5−10%減少、さらに市況の低迷がメーカー各社の収益を圧迫している。各社は10%前後の減産に入っているが、「中国・東南アジア向け輸出が先細りになり、生産量が再び上向くきざしがない以上、減産ではなく設備の思い切った廃棄が必要」(大手メーカー幹部)との認識が高まっている。

注 旭化成はポリプロピレン事業の営業権を日本ポリプロに譲渡 (94.10)
  
昭和電工はポリスチレン事業の営業権を旭化成に譲渡 (94.12)


(日本経済新聞 1998/10/30)

オランダのモンテル・昭和電工・日石化学  外資主動でポリプロ合弁

 昭和電工、日本石油化学とオランダの石油化学大手、モンテル・ポリオレフインズの3社は29日、代表的な合成樹脂であるポリプロピレンの製造販売会社を日本に来年5月設立する、と発表した。日本2社による合成樹脂の事業統合会社からポリプロ事業を分離し、3社の合弁会社に移管する。合弁会社はポリプロ世界最大手であるモンテルの最新技術や経営手法を導入し、コスト競争力を強化する。外資が国内で汎用樹脂を生産するのは近年例がなく、国際競争の激化に伴い外資を巻き込んだ石化再編が進みそうだ。

 事業立て直し コスト競争力を強化 来年5月製販会社 
 ポリプロは自動車のバンパーなどに使う汎用樹脂。モンテルは英蘭メジャー(国際石油資本)のロイヤル・ダッチ・シェル系で、世界に年産360万トン(日本内需は年間250万トン)のポリプロ設備を持つ。
 合弁会社はモンテルが50%、残りを昭和電工、日本石油化学が出資。本社を東京に置き、社長はモンテルが派遣する。ポリプロの年産能力は282千トンで国内5位となる。初年度売上高目標は300億円。モンテルの触媒・プロセス技術や販売・サービス手法を導入して生産・物流・販売コストを削減。設備のスクラップ・アンド・ビルドを進め、次世代樹脂を共同開発する。
 昭和電工と日本石油化学は95年にポリオレフィン事業(ポリエチレンとポリプロピレンの総称)を統合し日本ポリオレフィン(JPO)を設立した。しかし、需要減とアジア製品の流入など国際競争激化により業績は赤字で、ポリプロ事業を立て直したい日本2社と対日本格進出を狙うモンテルの思惑が一致した。
 JPOとモンテルが設立しているモンテル製高機能樹脂販社は合弁会社の一部門となる。
 汎用樹脂では、米モンサントが三菱化成(現三菱化学)と塩化ビニールを80年代半ばまで合弁国内生産していたが、外資によるポリプロ合弁生産は初めて。

 自動車メーカーに照準 モンテルアジアの拠点に
 「日本の石油化学製品の市場が前年比で1割も落ち込んでいるが、自社の研究開発力や経営ノウハウを日本の生産拠点に移植すれば、総資本利益率で10%以上は可能だ」。29日の記者会見で、モンテルのP・H・フォフトランダー社長は合弁生産事業に自信を見せた。グローバルプレーヤーのない日本の石化業界で、モンテルが台風の目になりそうだ。
 ポリプロピレンは汎用樹脂の中で市場の成長性が最も高い。世界最大手のモンテルが日本に進出するのは日本の自動車メーカーへの納入拡大とアジアヘの供給拠点確保が狙いである。これまで日本の自動車メーカーはバンパー 一つをとっても、車種ごとに異なる品種の生産を樹脂メーカーに求めてきた。しかし、欧米の現地生産拡大に合わせて、全世界で品種を共通化する動きを見せ始めた。
 こうした動きを先取りするために、モンテルは96年7月、JPOと市場開拓のための合弁会社を設立。この会社を中心に日本の自動車メーカー攻略に的をしぼった専門チームを結成、日欧米スタッフが情報交換を続けている。トヨタ自動車とは、リサイクルしやすいポリプロの共同開発にも乗り出した。
 モンテルは日本の自動車メーカーとのビジネスに目信を深めており、さらに顧客への技術サービスを強化するには、日本に製造拠点を持つべきだと判断した。
 モンテルは自動車向け以外でも、アジア戦略を着々と進めている。熱で接着できる特徴を持つ次世代型のポリプロ「キャタロイ」のアジア製造拠点を探しており、「すでにモンテルの技術でポリプロを生産している昭和電工の大分事業所が有力候補」(昭和電工の大橋光夫社長)となる。