Chemnet Tokyo 2001/8/31                              

大倉工業、マレーシアでのPE袋の製造を開始
  国内の生産体制も大幅に改善へ
 
 ポリオレフィンフィルムのトップメーカーである大倉工業は、このほどマレーシア・ペナン郊外でポリエチレン袋の生産を開始した。
 
 これは、現地の同製品メーカーの「シンリプラス社」を委託先に起用して汎用品種を主体に生産活動をスタートさせたもの。設備能力は月産300トン。ただし、工場の基礎設計は同600トンとなっている。製品は大倉工業が輸入し、主として日本の量販店に供給していく計画。需要見合いで同600トンの生産体制に拡充していく。
 
 わがのポリオレフィンフィルムメーカーの間では、PE袋の生産拠点の一部を人件費の安いアセアン諸国や中国に移すところがこのところ相次いでいる。大手ではすでに、福助工業、スーパーバッグ、和田化学、アイセロ化学、中川製袋などがアジア地域に新工場を設置し、製品を日本に持ち込んでいる。今回の大倉工業も、同製品の生産コスト削減策の一環として一部の生産をマレーシアに移すことにしたもの。この結果、日本のフィルムメーカーなり商社なりが資本あるいは技術面で密接な関わりを持つアジア地域のPE袋メーカーの総設備能力は月産1万5,500トンになったと見られている。
 
 大倉工業は、今回の措置に合わせて国内の同製品の生産体制を大幅に改善する。福岡、静岡、滋賀の3工場での生産を丸亀の本社工場に順次集約していくともに、総設備能力をマレーシアの設備同等分縮小することにもしている。これによって生産効率を高め、同時に不採算品種分野からの撤退も図る考え。

 


日本経済新聞 2001/8/7  

住化が高機能フィルム 非塩ビ系で酸素遮断 食品包装用、ナノテク活用    

 住友化学工業は食品包装用に、酸素を遮断する非塩ビ樹脂系の高機能フィルムを開発した。非塩ビ系で酸素の遮断性と強度を両立するのが難しかったが、同社はナノテクノロジーを活用、フィルム表面にナノ(1ナノは10億分の1)メートルオーダーの薄さで、ガスを通さない特殊な層を形成することに成功した。環境への配慮から塩ビを使わないフィルムの需要が伸びるとみており、フィルム大手の大倉工業と共同で事業化、3年後に15億円の売上高を見込む。  
 開発したのは、ラミネート用のガス遮断フィルム。食品の品質を保持するために酸素を遮断するもので、菓子類や畜肉加工品などの包装用に使われる。
 
 フィルム表面に非塩ビ系の樹脂とガス遮断性のある無機化合物を、1ナノメートル程度の極薄で交互に数百枚積層させた。樹脂と無機物を組み合わせることで、遮断性と強度の両立に成功したという。
 住化と大倉工業の折半出資会社、日本エコラップが今月から製造販売する。価格は塩ビをコーティングしたフィルムより約2割高いが、環境に配慮しており需要は大きいとみている。  
 フィルム業界では食品業界の要望で、塩ビを使わない製品の開発を進めているが、フィルムに他の樹脂をコーティングすると酸素の遮断性が劣るほか、金属酸化物など無機物をコーティングすると穴があくなど強度に問題があった。

ナノテクノロジー
   ナノ(1ナノは10億分の1)メートル単位で超微細加工する技術の総称。原子や分子を操作して超高速の半導体素子を開発するなど、情報技術(IT)や環境、バイオ、素材まで幅広い分野で利用可能な基礎技術として期待されている。  
 2000年に米クリントン大統領(当時)がナノテク研究の国家戦略を発表して注目が高まった。日本でも政府の総合科学技術会議(議長・小泉純一郎首相)がナノテクを重点分野の一つに掲げているほか、民間企業も研究体制を強化している。

化学工業日報 1999/4/22 

大倉工業 サウジから合樹購入  原料コスト低減へSABICと合意

 サウジ基礎産業公社(SABIC=サビック)と樹脂加工大手の大倉工業(本社・香川県丸亀市)は、SABICが大倉工業に合成樹脂を安定供給することで基本合意した。合意内容の詳細は明らかにしていないが、大倉工業は年間の樹脂消費量約17万トンのうち、汎用グレードを中心にSABIC製品を使っていくものとみられる。日本の加工メーカーは、原料コストの低減を狙いに海外品の購入を増やす姿勢を強めており、樹脂フィルム最大手の大倉工業の動きは、業界全体の輸入調達拡大に拍車をかけそうだ。
 来日中のSABICのアールマティ副会長は21日、東京都内にあるサビックジャパン内で大倉工業の久米志明会長と同意書に調印した。SABICが大倉工業にポリエチレン(PE)を中心とした樹脂の安定供給を確約したものだが、供給量や契約期間などについては明らかにしていない。ただ大倉工業では、樹脂消費量全体の約4割に相当する汎用グレードの部分が対象になることを示唆している。
 大倉工業の久米会長は昨年9月にサウジアラビアのSABIC本社を訪れ、同社が条件付きでPEなどを継続的に大量購入する用意があることを表明していた。同社はまた、SABICと合弁でPEフィルムの現地生産事業を行う構想も持っている。
 SABICは海外メーカーとの合弁を中心に中東最大規模の石油化学事業を展開し、エチレンの年産能力は2000年に170万トンと現在の約1.7倍に拡大する。PEの現在の年産能力は3つの合弁会社合計で、高密度ポリエチレン(HDPE)が48万トン、直鎖状低密度ポリエチレン(L−LDPE)が100万トン。ただ、エチレンの増強と並行してHDPEとLーLDPEでそれぞれ54万トンの増設を進めているほか、22万トンの低密度ポリエチレン(LDPE)プラントも新設中だ。
 サウジの石化競争力は驚異的で、ポリオレフィンのコスト競争力も世界一といわれる。大倉工業がSABICから原料を購入するのも価格メリットが最大の理由だが、他の樹脂加工メー力一も追随して安価な海外品調達を増やすのは必至。