日本経済新聞 2008/5/17

ブリヂストン、東洋ゴムに8%出資 共同でコスト減
 原料調達や生産委託

 自動車タイヤ国内首位のブリヂストンと4位の東洋ゴム工業は16日、資本・業務提携すると発表した。ブリヂストンが東洋ゴムに8.72%を出資し、原材料の共同調達や相互の生産委託などを進める。原油などの原材料高で収益環境が厳しさを増す中で、共同でコストを低減する。同時に主要顧客である日本の自動車メーカーの海外展開に対応し、製品のグローバル供給体制を協力して整える。
 東洋ゴムが10月に実施する第三者割当増資をブリヂストンが80億2千万円で引き受ける。東洋ゴムヘの出資比率は8.72%と、筆頭株主で投資ファンドのスパークス・グループに次ぐ株主となる。
 ブリヂストンは保有する自己株式のうち発行済み株式の0.48%相当を東洋ゴムに同額の80億2千万円で割り当てる。両社が調達した資金はそれぞれの株式取得にあてる形になる。
 両社はタイヤなどの製造技術の開発や原材料、資材の共同調達、相互生産委託、世界規模での物流体制構築などで協力する。両社でプロジェクトチームを設置し、今年秋をめどに具体的な提携内容をまとめる。
 16日の記者会見でブリヂストンの荒川詔四社長は「未曽有の厳しい環境下で、技術力のある東洋ゴムとの提携はメリットが大きい」と説明。東洋ゴムの中倉健二社長は「世界市場で成長するうえで1社では負担が大きく、提携で様々な課題に対応できる補完関係ができる」と強調した。
 国内のタイヤ業界の再編は2003年に住友ゴム工業が子会社だったオーツタイヤを吸収合併して以来。ブリヂストンと東洋ゴムは双方の経営の独立性を尊重しながら、緩やかな提携関係を維持していく方針。
 出資比率の拡大や将来の経営統合、役員の派遣などを現時点では考えていないと両社は説明している。

原材料高騰 再編促す 圧力、素材から川下分野に
 原材料費の高騰など「事業環境の未曾有の変化」(ブリヂストンの荒川詔四社長)が今回のブリヂストンと東洋ゴム工業の資本業務提携を実現させた。原油や石炭などの原料高が、素材や化成品メーカーに迫っている再編の圧力は日々強さを増している。
 「(ブリヂストンが提携を申し入れた)最大の要因は原材料の高騰」。荒川社長は16日の記者会見でこう説明した。ブリヂストンの世界シェアは約17%。仏ミシュランと首位でほぼ並んでいる。ただ2008年12月期の原材料コストは前の期より1240億円増加する見込み。より効率的に原価低減を進めるには、かねて「提携も一つの手段」(荒川社長)とみていた。
 東洋ゴムにとって申し出は渡りに船。海外では北米と中国に拠点があるだけ。世界シェアは1.7%と競争から脱落しかけていた。ブリヂストンと組むことで、規模の効果を期待できる。さらに昨年11月に耐熱材で耐火性能を偽装していたことが発覚し、株価が大幅に下落。約24%を投資ファンドのスパークス・グループが持っていることもあり、海外企業が東洋ゴムの買収に関心を示しているとの見方もあった。実際、ブリヂストンの荒川社長も他社を警戒して先に動いたと認めている。
 両社の国内生産シェアは単純合算で約6割。独占禁止法上の問題について、荒川社長は「新商品開発や販売協力は盛り込んでおらず、懸念はない]としている。また東洋ゴムは横浜ゴムと2%未満の株式を持ち合っているが、中倉社長は「持ち合う意味は薄れており、(提携解消を)横浜ゴムに相談する」と述べた。
 原料高は、まず素材業界の再編を後押しした。新日本石油と吸収石油は今年10月に合併することを決め、王子製紙は三菱製紙などと資本提携した。今回は、さらに川下のタイヤ分野にも再編の波が押し寄せた格好で、他の消費財など幅広い業種に広がりそうだ。

世界のタイヤ市場 2006年売上高シェア
リヂストン    17.2%
ミシュラン    17.2%
グッドイヤー    16.0%
コンチネンタル     6.0%
ピレリ     4.4%
住友ゴム      3.3%
横浜ゴム     2.8%
ハンコック     2.6%
クーパー     2.4%
クムホ     2.2%
東洋ゴム     1.7%
その他    24.0%