2008/11/16 朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

韓国石油化学業界を襲う未曾有の不況

米国発の金融危機→中国の景気悪化→韓国石油化学業界に直撃弾

SKエナジー、35年目にして初めて工場の稼動停止…LG化学は減産

「原料より安い完成品、工場を稼動させるほど損害」

 東海(日本海)沿岸、蔚山にあるSKエナジーのナフサ(石油化学製品の原料)分解第1工場。中央調整室の38個のモニターに表示される各種工場の 稼働率は、すべて「0」を示していた。監視カメラの画面に映る極めて高い煙突からも、煙は出ていなかった。1973年に竣工して以来35年目にして初めてのことで、ごう音を響かせていた機械類は深い眠りに就いた。元気に動いていた圧力ポンプには、「運転停止」という緑色の表示が付けられていた。

 韓国南岸の麗水産業団地に集まっている石油化学各社も、例外ではない。LG化学は1991年の工場稼動以来初となる減産に入り、韓国最大のナフサ分解工場(年間181万トン規模)を擁している麗川NCCもまた、99年の設立以来最大となる30%の減産措置を断行した。

 11月6、7日に訪れた麗水と蔚山では、石油化学各社がこれまで例のない稼動中断や減産の苦痛にあえいでいた。グローバルな景気悪化の影響でプラ スチック製品や衣類など工業生産品の需要が急減し、石油化学メーカーは力なく倒れ込んでいる。業界関係者は「まるで悪い夢を見ているようだ。アジア通貨危 機のときも、ここまでひどくはなかった」と嘆いた。

◆危機の石油化学業界を襲う減産の波

 今年10月の時点で、既に石油化学各社は工場の補修という名目で稼動を一時中断していたが、10月末からはそもそも工場を動かさなかったり、減産 の幅を拡大したりしている。蔚山の泰光産業は1カ月間、25万トン規模のアクリルニトリル(衣類などの原料)生産工場の補修工事をしていたが、11月5日 からは稼動を全面的に中断した。合成樹脂の原料であるプロピレンの生産工場さえも23日まで補修工事に入り、三つある工場の内正常稼動しているのはテレフ タル酸(合成繊維の原料)工場だけとなっている。

 100万トン規模のエチレン生産能力を誇るロッテ大山石油化学は最近、稼働率を90%から70%に下げた。麗水の湖南石油化学も、NCC(ナフサ 分解施設)の稼働率を30%に下げることを検討している。工場が正常稼動中の企業も、危機感から逃れられずにいる。蔚山にあるサムスン石油化学のキム・ス ンス生産チーム長は、「現在工場は正常稼動中だが、業績は悪化し続けており、いずれ減産しなければならないかもしれない。最大限原価を抑え、状況を注視し ている」と語った。

 

◆中国の需要急減、原料より安い製品価格のせいで稼動中断

 石油化学業界が「未曾有の不況」に陥ったのは、米国発の金融危 機が世界の実体経済に影響を及ぼし始めたからだ。特に、韓国の石油化学各社にとって最大の顧客だった中国の需要不振が、最も大きな原因といえる。例年な ら、中国の工場はクリスマスを控え米国に納品するおもちゃや自動車部品を量産し、そのおかげで化学製品の原料を賄う韓国の石油化学各社も大車輪で工場を稼 動させた。ところがその中国は先月、世界最大規模のおもちゃ会社「合俊」が不渡りを出すなど、中小の輸出企業が続々と倒産している。SKエナジーの場合、 肥料の原料として使われる硫黄の輸出が北京オリンピック以降、全面中断した。

 こうした需要不振は、石油化学製品の値段を原料の値段にも満たないほど暴落させ、石油化学メーカーをがんじがらめにしている。原油価格の下落で、 石油化学製品の原料であるナフサの価格は11月6日の時点で1トン当たり324.5ドル(約3万1788円)まで下がったが、ナフサを分解して作るエチレ ン、プロピレンなどの価格は需要急減でさらに大幅に値を落とした。プロピレンの場合、価格は1トン当たり305ドル(約2万9877円)で、原料のナフサ より安く取引されている。麗水NCCのパク・ソンリョル技術企画チーム長は、「最近、合成樹脂の価格が大きく落ち込み、これらの原料となるエチレンやプロ ピレンの価格を上げられずにいる。いきなり市場が消えてしまったような感じだ」と語った。

◆今後がもっと不安…先が見えない

 SKエナジーのイ・イクヒ部長は「石油化学製品は作れば作るほど損になるため、各社とも工場を稼動できずにいる。市場が上向くのを待つほかない状況だ」と語った。

 増えていく在庫も大きな負担だ。蔚山のSKエナジーの野積み場には買い手がつかない合成樹脂の在庫があふれ、麗水の石油化学各社も、工場の周辺や道路のあちこちに在庫品を3メートルもの高さにまで積み上げている。

 しかし「米国発の金融不安→中国の景気悪化→韓国石油化学メーカーが稼動中断」といった悪循環は、簡単には改善されそうにない状況だ。米国が来年 マイナス成長を記録するという見込みが国際通貨基金(IMF)から出されるなど、第2次大戦以降最大の不況が予想されている。さらに、サウジアラビアやイ ランなどが新設・増設した石油化学工場を稼動させ始める年末からはエチレンなどの価格下落が予想されており、石油化学業界では当分の間、工場の稼動正常化 は難しいだろうと懸念している。