2005/11/5 国際石油開発/帝国石油 日経記事
国際石油開発株式会社と帝国石油株式会社
共同株式移転契約締結のお知らせ
http://www.inpex.co.jp/news/2005/1105_2.pdf
国際石油開発株式会社(代表取締役社長 黒田直樹、以下「国際石油開発」)と帝国石油株式会社(代表取締役社長 椙岡雅俊、以下「帝国石油」)は、このたび、経営統合を行うことについて最終合意に至り、本日、両社取締役会において「共同株式移転契約」の締結を決議いたしました。両社は、平成18年1月31日開催予定のそれぞれの臨時株主総会による承認等を前提として、同年4月3日に、株式移転により共同で持株会社「国際石油開発帝石ホールディングス株式会社」(以下、「共同持株会社」)を設立することとなりましたのでお知らせいたします。
1. 経営統合の背景及び意義
近年、米国・中国を筆頭とする世界経済の成長を背景として石油・天然ガス需要が急速に伸びる一方、長期に亘る低油価の下、開発投資が抑制されてきたことや不安定な中東情勢等から、石油・天然ガス価格の高騰が続いております。
このような中、中国・インド等が国を挙げて中東・アフリカ・中南米・カスピ海など世界各地で上流権益確保に邁進する一方、海外の大手石油開発企業は合従連衡により競争力を一層強化する等、資源獲得競争は益々激しくなっております。海外における上流権益獲得により企業価値の向上を図ることを目標としている両社にとりまして、このような厳しい競争環境の中で持続的に発展していくためには、グローバルな石油会社に比しても遜色ない、高い国際競争力を備えた強靭な経営基盤の早期確立が必要であります。
このような認識に立ち、今般、国際石油開発と帝国石油の両社は、よりバランスのとれた資産ポートフォリオの構築、健全な財務基盤の更なる強化、資源開発のための技術力の結集を通じ、一層強靭な企業体力と有望権益獲得能力を具備することにより、国際競争場裡において確固たる地位を築くべく本経営統合を行うことといたしました。
2. 統合で期待される効果
(1) | 優れたポートフォリオバランス |
ー | アジア・オセアニア、中東、カスピ海を中心に事業展開している国際石油開発と国内天然ガス開発を基盤として中南米、アフリカを中心に海外事業を展開している帝国石油とは各々の上流資産に重複がなく、高い補完性があり、この結果、事業地域が拡大し、カントリーリスクが分散されます。また、探鉱・開発・サービス事業など、リスクの異なるプロジェクトを一層多様に組み合わせることで事業リスクを低減させます。 |
ー | 国内に保有する埋蔵量・未開発鉱区・ガスパイプライン網などの国内資産は、カントリーリスクや為替相場変動リスクの影響がなく、内外資産のバランスのとれた強固なポートフォリオが形成され、経営基盤の長期安定に寄与することになります。 |
ー | 国内外の上流部門に加え、総延長1,300km に及ぶ国内パイプライン網、発電等を包摂する垂直的な事業展開と海外ガスアセットを組み合わせたLNG サプライチェーン構築への途を拓くことになると考えております。 |
(2) | 国際的な有力中堅企業としてのプレゼンス向上 |
ー | 高い収益性と成長ポテンシャルを有する海外事業に加え、カントリーリスク、為替相場変動リスクのない安定的な国内事業を保有することにより経営基盤の安定化が図れると考えております。 |
ー | 両社合算の石油・天然ガス埋蔵量は、確認埋蔵量注が18.05
億BOE(石油換算平成17 年3 月末時点)、推定埋蔵量注が21.52
億BOE(平成17 年年3
月末時点)となり、また、ネット生産量については、日量37.2
万BOE となります。 注:確認埋蔵量は米国証券取引委員会(SEC)規則の定義、推定埋蔵量は石油技術者協会(SPE)及び世界石油会議(WPC)の両機関が定めた指針による。なお、帝国石油の数値については権益譲渡に係る政府承認手続中の確認埋蔵量及び推定埋蔵量を含む。 |
ー | 既存プロジェクトの推進による海外基盤の強化に加え、政府の資源外交との連携による優良案件へのアクセス機会の増大を通じて海外アセットの拡大が図れると考えております。 |
(3) | オペレーター能力等の強化 |
ー | 国内外のオペレータープロジェクトの運営、海外有望資産の評価・獲得等の豊富な経験を有する高度で実践的な技術を結集することにより、上流企業としての技術力が飛躍的に向上すると考えております。本件統合により石油開発技術者は700 名体制となります。また、オペレーターノウハウ及び技術研究所を核とする操業支援体制を有効活用することが可能となります。 |
ー | 海外大手石油企業・産油国国営石油会社等との緊密な協力関係を有し、また、新規有望鉱区の取得・外国パートナーとの共同事業運営を通じて培ってきた経験、対外交渉能力を有する人材を結集することにより、新規有望鉱区の取得機会の拡大とともに、プロジェクトの運営能力の向上が図れると考えております。 |
ー | オペレーター体制の拡充は、イラン(アザデガン)、豪州(イクシス)やインドネシア(アバディ)などの大型プロジェクトの推進力になると考えております。 |
(4) | 効率的・機動的な経営体制の確保 |
ー | 両社に共通する健全な財務体質、効率化志向の経営方針、質実剛健な企業風土の集積による統合効果の迅速・的確な実現が可能であると考えております。また、両社は、本件株式移転後、共同持株会社の2 年目の事業年度決算に係る定時株主総会を目途に、共同持株会社並びに国際石油開発及び帝国石油の合併により、事業持株会社への移行を計画しており、これにより一層効率的・機動的な経営体制を確保することが可能となります。 |
3. 経営統合の要旨
(1) 株式移転の日程
平成17 年11 月5 日
両社取締役会(共同株式移転契約書の締結)
平成18 年1 月31 日(予定)
両社臨時株主総会(株式移転の承認)
平成18 年3 月28 日(予定) 両社株式の上場廃止日
平成18 年4 月3 日(予定)
株式移転期日・共同持株会社設立、共同持株会社の上場日
平成20 年6 月(予定)
共同持株会社及び両社の合併により事業持株会社に移行
但し、今後手続きを進める上でやむを得ない事由が生じた場合は、両社で協議の上、日程を変更する場合があります。
なお、共同持株会社の株券交付開始日は平成18
年5 月26
日を予定しております。但し、上記株式移転の日程の変更等やむを得ない事由が生じた場合は、両社で協議の上、株券交付開始日を変更する場合があります。
(2) 株式移転比率
国際石油開発 | 帝国石油 | |
株式移転比率 | 1 | 0.00144 |
注. 国際石油開発は端株制度、帝国石油は1,000
株を1
単元とする単元株制度を採用しております。
1) 株主に対する株式の割当
上記株式移転比率に従い、国際石油開発普通株式1
株に対し、共同持株会社の普通株式1株を、帝国石油普通株式1株に対し、共同持株会社の普通株式0.00144
株を、それぞれ割り当てます。また、国際石油開発の甲種類株式1
株に対し、共同持株会社の甲種類株式1
株を割り当て交付します。共同持株会社の甲種類株式は、国際石油開発の甲種類株式が同社定款上有する権利と同等の権利を有するものとします。
2) 共同持株会社が発行する株式の種類及び数
共同持株会社が株式移転に際して発行する株式の種類は普通株式2,360,659.95
株、甲種類株式1 株とします。但し、株式移転期日の前日までに国際石油開発及び帝国石油において自己株式の消却がなされた場合には、当該自己株式への割当分につき共同持株会社が株式移転に際して発行する普通株式の数を減ずるものとします。また、共同持株会社においては、端株制度を採用するものとします。
3) 自己株式の消却
国際石油開発及び帝国石油は、株式移転期日の前日までの適切な時期において、当該時点においてそれぞれの有する自己株式の全部を商法の定めに基づき消却するものとします。
4) 株式移転比率の算定根拠
国際石油開発はJ.P.モルガン証券会社を、帝国石油はゴールドマン・サックス証券会社を本件株式移転に関するそれぞれの財務アドバイザーに任命いたしました。財務アドバイザーは、それぞれ、両社の株価動向の調査及びディスカウンテッド・キャッシュ・フロー(DCF)分析/ネット・アセット・バリュー(NAV)分析、貢献度分析等に基づいて本件普通株式移転比率を検討いたしました。国際石油開発と帝国石油は、両社のそれぞれの財務アドバイザーによる分析と助言、その他の様々な要因を総合的に勘案した上で協議・交渉を行い、本件普通株式移転比率を決定致しました。また、国際石油開発甲種類株式については、両社が協議を行い、国際石油開発の定款上有する権利と同等の権利を有する甲種類株式を、国際石油開発甲種類株式を有する株主に対して割当てることを決定いたしました。
(3) 株式移転交付金
株式移転交付金につきましては、株式移転期日の前日の帝国石油の最終の株主名簿に記載又は記録された各株主及び登録質権者に対し、株式移転期日後3
カ月以内に利益配当の支払いに代えて、その所有する帝国石油の普通株式1
株に対して3 円の株式移転交付金の支払いを行います。
但し、株式移転交付金の額は、帝国石油の資産・負債の状態、経済情勢の変化、その他の事情に応じ、国際石油開発及び帝国石油の協議により変更することができるものとします。
(4) 株式移転期日までの利益配当限度額 | ||
1) | 国際石油開発は、平成18 年3 月31 日の最終の株主名簿に記載又は記録された株主及び登録質権者に対し、その普通株式及び甲種類株式それぞれ1株につき5,500円、総額10,559,081千円を限度として、利益の配当を行うことができます。 | |
2) | 帝国石油は、平成17 年12 月31 日の最終の株主名簿に記載又は記録された株主及び登録質権者に対し、その普通株式1 株につき4 円50 銭、総額1,372,504 千円を限度として、利益の配当を行うことができます。 |
(5)
共同持株会社の上場申請に関する事項
国際石油開発及び帝国石油は、新たに設立する共同持株会社の株式について、東京証券取引所市場第一部に新規上場申請を行う予定です。
4. 共同持株会社の概要
(1) | 商号 国際石油開発帝石ホールディングス株式会社(英文: INPEX Holdings Inc.) |
(2) | 事業内容 国際石油開発帝石ホールディングス株式会社は傘下子会社及びグループの経営管理並びにそれに付帯する業務を行います。 |
(3) | 本店所在地 東京都渋谷区恵比寿四丁目1番18号(現在の国際石油開発の本店所在地)といたします。 |
(4) | 取締役及び監査役(予定) 代表取締役会長 松尾邦彦 代表取締役 磯野 啓 代表取締役 椙岡雅俊 代表取締役社長 黒田直樹 なお、その他の取締役、監査役につきましては、両社の臨時株主総会の招集前までに決定する予定としております。 |
(5) | 資本金 300億円 |
(6) | 発行予定株式数 普通株式2,360,659.95株、甲種類株式1株。但し、株式移転期日の前日までに両社のそれぞれの自己株式の消却がなされた場合には、当該自己株式への割当分につき共同持株会社が株式移転に際して発行する普通株式の数を減ずるものとします。 |
(7) | 決算期 3 月31 日 |
(8) | 会計監査人 共同持株会社設立時における会計監査人は、新日本監査法人を予定しております。 |
(9) | 業績の見通し 業績見通しについては、現時点では未定ではありますが、確定次第改めて開示いたします。 |
日本経済新聞 2005/11/5
国際石油と帝石 合併へ 来春メド 資源開発で補完 売上高5600億円強に
石油開発で国内最大手の国際石油開発と同3位の帝国石油は4日、合併する方向で最終調整に入った。合併時期は来春の見通し。資源高を背景に石油・ガス開発の国際競争が激化する中、日本勢は米企業や中国などのアジア大手に投資規模で劣っている。両社は有力鉱区獲得と開発資金の確保を狙い、合併によって国際市場で開発中堅の地位を固める。
存続会社は国際石油開発となる見込みだが、合併比率など詳細は近く発表する。新会社の年間売上高は2004年度で5600億円強(帝石は04年12月期)。石油開発では国内最大手の地位が強固になる。
国際石油開発はアジアを中心に世界約20鉱区で石油、天然ガスの開発権益を保有し、原油換算で日量33万バレルの石油・天然ガスを生産する。帝石の海外での生産量は4.5万バレル。両社ともさらにアフリカや南米の鉱区で増産を予定しており、合併により日本の原油輸入量の約1割に相当する日量50万バレルの生産量となる見通し。
国際石油開発の2005年3月期の連結営業利益は原油価格高騰で2686億円と過去最高を更新、売上高営業利益率は50%を超えた。株式の36%を旧石油公団から引き継いだ政府(経済産業相)が保有。04年に政府系の旧ジャパン石油開発を合併し中東での権益を増やしたが、生産量の6割近くはインドネシアなどアジアに偏っていた。米国が核開発問題を巡って開発に慎重な姿勢を示しているイラン・アザデガン油田の権益も持つ。
国策会社として設立された帝石は現在、純民間企業。新潟県内などの国内ガス田と、首都圏へのガスパイプラインを保有、営業利益の7割を国内で稼ぐ。南米や北アフリカを中心に海外14鉱区で開発するが、国際的な開発事業強化が課題になっていた。両社は合併により世界的な地盤を補完する。帝石は開発を巡って中国と対立する東シナ海のガス田鉱区で探鉱の権利を持っている。
資源開発では中国政府系会社が米中堅のユノカル買収に一時動くなど、国際的に再編機運が高まっている。今後はアフリカやイラクなど未開発の地域でも資源開発競争が激化しそうだ。
国際石油開発 資源開発専業の国内最大手。政府系の石油開発会社、北スマトラ海洋石油資源開発として1966年設立。その後、インドネシア石油に社名変更し、2001年から現社名。昨年11月に東証一部上場。本社東京都。資本金は295億円で経済産業相が36%、石油資源開発が12.9%の大株主(05年3月時点)。同3月期の連結売上高は4785億円、同経常利益は2586億円。 帝国石油 1941年、国内での天然ガス開発の国策会社として発足した。東証一部上場。ベネズエラやエジプトなどで石油開発も手掛ける。本社東京都、資本金は196億円で、筆頭株主は新日本石油の16.5%(2005年6月時点)。04年12月期の連結売上高は840億円、同経常利益は165億円。 |
新たな国策会社の色彩 権益確保へ外資買収も
国際石油開発と帝国石油が合併に踏み切るのは、世界でメジャー(国際石油資本)や中国、インドを含めた資源争奪戦が激しさを増す中、規模の拡大で対抗するためだ。国内勢の中では開発実績や技術力で優位に立つ両社は、合併後に海外開発会社の買収も視野に入れており、資源開発での新たな国策会社の色彩を強める。
国際石油開発は国内石油会社では最大規模の自主開発油田を持ち、有数の収益力を誇る。一方、帝石は国内開発が主力とはいえ、試掘や生産にかかわる高い技術を持つ。両社は開発地域も重複が少なく、相互補完のメリットが多いと判断した。
原油価格は今年8月にウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物価格で1バレル70ドルを突破。加えてインドや中国が国を挙げて権益取得に動いており、国際的な入札で競合するケースが急増している。開発関連費用も高騰するなか、両社は合併で収益力を高め権益拡大を狙う。
日本の石油開発は長年、石油公団が民間会社にリスク資金を投じる国主導で進められてきた。しかし公団は投融資で7千億円超の累積赤字を抱え、今年3月末に廃止。民主導の開発に転換しつつある。
ただ、経済産業省は公団廃止後も中核的な企業群が必要として、公団の主要な出資先である国際石油開発とジャパン石油開発などを合併した経緯がある。今回の合併は、国主導で将来的にメジャーに対抗できる中核企業を育てたい経産省の意図が反映されたようだ。
主な石油会社の連結業績(単位・円)
(注)東燃ゼネラル、昭和シェル、帝国石油は04年12月期。その他は05年3月期 |
国際石油開発株式会社 [INPEX CORPORATION]
当社は、エネルギー資源の乏しいわが国において石油と天然ガスの安定供給を確保するという使命のもと、海外における石油資源の開発を推進する先導的な企業として、1966年に設立されました。爾来、幾多の困難を乗り越え、インドネシアにおいて1970年以降、逐次巨大油ガス田の発見に成功致しました。その後、こうしたインドネシアでの事業によって培われた財務基盤を活かし、1970年代の第一次及び第二次石油危機をはじめ、湾岸戦争、旧ソ連の崩壊などの石油を取り巻く事業環境の大きな変化の中で、事業活動地域の多角化を進めてまいりました。この結果、現在では、インドネシア、オーストラリアをコアエリアとして、カスピ海沿岸、中東、南米などの世界の有望地域で、着実かつ積極的に事業を展開しております。
一方で当社は、地球環境問題に対する配慮から、クリーンエネルギーとしてますます内外の期待が高まっている天然ガスの開発にも力を注いでおり、現在、世界最大級の液化天然ガス(LNG)基地であるインドネシアのボンタンLNGプラント向け天然ガスの最大の供給者として、わが国の主要LNG輸入先であるインドネシアからのLNG輸入の四分の一強を担っております。また、チモール海共同石油開発地域のバユ・ウンダンLNGプロジェクト及びインドネシアのタングーLNGプロジェクトに参画しているほか、西ナトゥナ海からシンガポール及びマレーシア向けの海底パイプラインによるガス輸出、さらにはインドネシア、オーストラリアの国内市場に対するガス供給も行っております。
当社はオペレータープロジェクトにも注力しており、100%権益を保有するインドネシアのマセラ鉱区及びオーストラリアの
WA-285-P鉱区で探鉱に成功し、それぞれアバディ、イクシスという有望な天然ガス・コンデンセート田を発見したほか、イラン・イスラム共和国のアザデガン油田においてオペレーターとして評価・開発作業に従事するなど、その実績を着実に積み重ねております。
メジャーズを含む世界の有力国際石油企業とともに権益を保有するカザフスタンのカスピ海沖合では、世界でも屈指の超巨大油田となる可能性を秘めたカシャガン構造で原油の発見に成功し、開発作業を進めております。また、アゼルバイジャン沖合で生産・開発中のアゼリ、チラグ、グナシリ巨大油田群(いわゆるACGプロジェクト)の権益を買収したほか、これらカスピ海地域の各油田から産出される原油の主要搬送ルートとなるBTC(バクー〜トビリシ〜ジェイハン)パイプラインプロジェクトにも参画し、カスピ海地域を重要な事業拠点として地歩を固めております。また2004年2月には、前述のイラン・イスラム共和国の巨大なアザデガン油田の権益を75%取得するサービス契約(いわゆるバイバック契約)を締結し、オペレーターとして総合的に評価・開発作業に従事し、次いで2004年の5月には、アラブ首長国連邦アブダビ沖合の巨大油田群の開発・生産を推進するジャパン石油開発株式会社の株式を100%取得し、統合致しました。こうした活動により、当社は地域等のバランスを図りつつ保有資産の着実な拡充を進め、優れた資産ポートフォリオを構築してまいりました。
インドネシア
当社のコアエリアであるインドネシア。当社の事業の基礎となり、現在主力地域となっている東カリマンタン沖に加えて、当社はナトゥナ海、ジャワ・スマトラ沖地域でも成功プロジェクトを有しております。また、オペレーターとして天然ガス・コンデンセート発見に成功したマセラ鉱区(チモール海)や、新たなLNG 基地として期待されるタングーLNGプロジェクトなどの有望資産を保有すると共に、新規探鉱鉱区への挑戦も継続しています。
また、国際的コンサルティング会社Wood Mackenzie社による「インドネシアにおける石油・ガス資産保有会社ランキング」において、当社は第1位にランクされました。オーストラリア及びチモール海共同石油開発地域(JPDA)
同じく当社のコアエリアとして位置付けられる地域です。同地域においては、西オーストラリア州沖にて成功を収めたアルファ石油を中心として事業展開を行っており、JPDAにおけるバユ・ウンダンLNGプロジェクトへの参画の他、資産の拡充を目指し、積極的な探鉱活動を展開しております。また、西オーストラリア州沖合WA-285-P鉱区においてはオペレーターとして天然ガス・コンデンセートの発見に成功しております。カスピ海沿岸諸国
諸国豊富な資源が注目されているカスピ海周辺地域に当社は1998(平成10)年に進出し、北カスピ海の巨大油田であるカシャガン油田の発見に成功、2003 (平成15)年には既生産大規模油田であるACGプロジェクトの権益も取得し、同地域における資産の拡充を行っております。また、両油田の輸送施設として貢献するBTC(バクー〜トビリシ〜ジェイハン)パイプラインプロジェクトにも参加、ターゲットエリアである同地域事業を着実に推進中です。中東 / 南米
中東では、アブダビ沖にてABK鉱区およびADMA鉱区に権益を有し、計6油田より原油の生産を続けております。また、イランのアザデガン油田ではオペレーターとして評価・開発作業を推進しております。一方、南米ブラジルにおいては、アルバコーラ油田開発協力契約を締結した他、北カンポス沖のフラージ鉱区における油田の開発に参加しております。中東および南米は、カスピ海同様当社が引続き注力していくターゲットエリアと位置付けられております。
■ アラブ首長国連邦ADMA(アドマ)鉱区 (ジャパン石油開発株式会社)
当社は2004年5月、石油公団が保有するジャパン石油開発株式会社の全株式を、株式交換により取得し完全子会社化しました。
ジャパン石油開発株式会社は、1973年に設立され、アラブ首長国連邦アブダビ沖のADMA鉱区にて現在5油田より原油を生産しております。同海域最大の油田である上部ザクム油田、ならびに同社が開発を手掛けたウムアダルク油田及びサター油田については、それぞれ1982年、1985年及び1987年の生産開始以来、順調に生産を継続しております。また、既生産油田であったウムシャイフ油田及び下部ザクム油田においてもそれぞれ1962年、1967年以来、生産を続けております。生産された原油はパイプラインによりダス島またはジルク島に送られ出荷されております。
これら油田の操業は、現地に設立された操業会社(アブダビ国営石油会社(ADNOC)と同社等との合弁会社)を通じて行われており、ジャパン石油開発株式会社から技術者を中心に人員を継続的に派遣しております。
ベネズエラ
ベネズエラ石油 ・ サンビ・グエレ石油:
中東地域以外で最大の原油埋蔵量を誇るベネズエラ。1991年、同国国営石油会社PDVSAは、国際入札方式による生産停止中の油田に対する再活性化事業と新規探鉱事業の対外開放政策を発表しました。帝国石油は、その第一次入札よりこれに参画し、中央部陸域の2鉱区(イースト・グアリコ鉱区/サンビ・グエレ鉱区)を落札、いずれもオペレーターとして、現在日産約4千バーレルを生産しています。
さらに、同国でも高まりつつある天然ガス需要に対応するため、2000年にイースト・グアリコ鉱区内からの天然ガス供給事業を開始し、現在日量約80百万立方フィートを生産しています。
帝国石油は、2002年10月、サン カルロス・ティナコ鉱区での天然ガスを対象とした探鉱・開発事業に参加し、現在、探鉱作業を実施中です。
エジプト
エジプト石油開発:
1975年6月、エジプト石油開発は、エジプト・アラブ共和国政府との間に、同国スエズ湾沿岸の東部砂漠、ウエスト・バクル地区を対象に、石油探鉱・開発協定を結びました。帝国石油はこのプロジェクトに対し資本参加と技術支援を行い、事実上のオペレーターとして探鉱作業を進めた結果、3箇所の構造で油田を発見し、1980年から商業生産を開始しました。その後も開発井の追加掘削を実施しながら、現在日産約5千バーレルを生産中です。
帝石スエズSEJ:
帝国石油は、2003年12月に、帝石スエズSEJを設立。エジプト・アラブ共和国スエズ湾のSouth East July(SEJ)鉱区での探鉱・開発事業に参加し、2004年7月から試掘作業を進めております。
コンゴ
帝石コンゴ石油:
帝国石油は、1970年8月、帝石コンゴ石油(株)を設立。現在のコンゴ民主共和国沖合で、米国とベルギーの会社が行っていた石油探鉱の共同プロジェクトに参加、32.28%の利権を取得しました。1970年にスタートした試掘は、その年にGCO構造で、1973年にはMIBALE構造でそれぞれ出油に成功。1975年11月より日産約25千バーレルで生産を開始しました。
また、1978年からは原油回収率を高めるため水攻法を実施。周辺海域では新たな油田も発見され、日産約19千バーレルの生産を順調に続けています。他の構造に対する探鉱も積極的に実施するなど、今後もアフリカにおける生産拠点として安定供給を見込んでいます。
アルジェリア
近年国営企業の民営化が進むアルジェリアは、世界第4位の天然ガス輸出量を誇るOPEC加盟国です。地中海を隔てた西欧のガス需要は今後更に高まり、将来は消費量全体の25%をアルジェリア産天然ガスが占めると予測されています。帝国石油は同国東部陸上における2件の石油・天然ガス開発事業に参画しています。
オハネット・オイル・アンド・ガス:
2001年1月、オハネット・オイル・アンド・ガス社に資本参加。同社は、豪BHP社をオペレーターとしてオハネット・ガス田の開発事業に取り組んできましたが、2003年10月より生産を開始し、今後ピーク時には日量、天然ガス7億立方フィート、LPG/コンデンセート47千バーレルを生産する予定です。
帝石エル・オアール石油:
2001年12月には、帝石エルオアール石油を設立。同社は、El Ouar I及びII鉱区での探鉱・開発事業に参加いたしました。現在、開発移行の可能性について検討を進めています。
メキシコ
Teikoku Oil de Burgos:
帝国石油は、2003年9月、 Teikoku Oil de Burgosを設立。メキシコでのガス開発サービス事業(Cuervito鉱区/Fronterizo鉱区)に参加し、2004年2月より操業を開始しています。同社は、日本企業としては初めて同国における石油・天然ガス開発事業への進出となります。
マレーシア
日石サラワク石油開発・日石マレーシア石油開発:
マレーシア国サラワク州ミリ沖合で展開する両事業は、日石マレーシア石油開発(SK-10鉱区)が1987年に、日石サラワク石油(SK-8鉱区)が1991年にそれぞれ設立されました。これ迄にヘラン・ガス田(SK-10鉱区)、セライ・ガス田及びジンタン・ガス田(SK-8鉱区)などを発見し、ヘラン・ガス田は2003年11月より、セライ・ガス田は2004年6月より、ジンタン・ガス田は2004年8月より生産を開始しています。
今後、3ガス田合計で、天然ガスは日量最大10億立方フィート、コンデンセートは同42千バーレルの生産を見込んでいます。天然ガスはLNGとして、日本、韓国等へ供給されています。
帝国石油は、新日本石油グループとの業務提携の一環として、 2000年11月、上記2社へ資本参加。両プロジェクトは、わが国エネルギー産業の国際化に対応し、開発から販売にわたる一貫したエネルギー供給体制を強化する事業として、内外から期待・注目されています。
石油資源開発株式会社
JAPAN PETROLEUM EXPLORATION CO.,Ltd.(略称 JAPEX)
設立年月日 1955年12月1日(現会社設立 1970年4月1日)
資本金 142億8,869万4千円
大株主 石油公団 49.94%
帝国石油(株) 4.98%
国内探鉱開発
当社の中核事業である国内天然ガスビジネスの持続的な成長を図るため、当社はコスト競争力の強い国産天然ガスの埋蔵量を拡大することを基本戦略としています。このため当社は、「国内探鉱開発の徹底的な再構築」という方針に基づき、2003年度より5年間を積極的な探鉱開発期間と位置づけ、国内における原油・天然ガス埋蔵量の拡大を図っています。
基本戦略として、新潟県、秋田県及び北海道における当社保有油ガス田周辺での埋蔵量の上積みを志向した探鉱開発と、新たな地域において大規模な埋蔵量の発見を目指した探鉱を実施しています。
2005年3月期の国内平均生産量は、原油1,600kl/d(10,000bopd)、天然ガス2,900千m3/d(102mmcfd)でした。
アジア
中国では、連結子会社の新南海石油開発(株)が南シナ海珠江口沖Lufeng
13-1油田の共同オペレーターとして生産操業活動を行っています。2004年は、原油回収率の向上を目的として生産井2坑を掘削しました。また、4坑のワークオバーを実施し、生産量の維持に努めました。2004年の油田全体の平均生産量は、1,900
kl/d(12,000bopd)でした。
インドネシアでは、持分法適用会社の(株)ユニバースガスアンドオイルが東カリマンタン陸上のサンガサンガ鉱区に権益を保有しています。原油・天然ガスの生産は、バダック、ニラム、ムティアラ及びスンベラの4油ガス田を主体として行われ、2004年の鉱区全体の平均生産量は、原油46,000kl/d(29,000bopd)、天然ガス26,000千m3/d(900mmcfd)でした。また、原油・天然ガス回収率の向上と生産量の維持を目的として生産井19坑の掘削及び3坑のワークオバーを実施しました。
フィリピンでは、2004年12月にネグロス島とセブ島の間の海域に位置するSC46鉱区におけるサービス契約を同国エネルギー省との間で締結しました。2005年7月、同鉱区の権益35%をファームアウトし、当社権益は65%となりました。当社は、オペレーターとして、これまでに2次元地震探鉱データの取得を行い、現在、同データの処理・解釈作業により、構造の摘出、評価作業を実施しています。
カナダ
カナダでは、連結子会社のカナダオイルサンド(株)がアルバータ州アサバスカ地域ハンギングストーン地区においてオペレーターとしてSAGD(Steam
Assisted Gravity Drainage)法によるオイルサンド開発事業を行っています。SAGD法は、油層に上下2本の水平井を約5mの間隔で平行に掘削し、上部の水平井から水蒸気を圧入し、油層を加熱することで流動化したビチューメンが重力により油層下部に集積するため、これを下部の水平井から回収生産するものです。
2004年は、水平井3ペアを追加掘削し、合計12ペアの水平井から平均1,160kl/d(7,300bopd)の生産を行っています。2005年は、さらに水平井3ペアを掘削し、1,600kl/d(10,000bopd)程度に生産量が増加する見込みです。
中東
イランでは、持分法適用会社のJJI S&N B.V.がSoroosh油田およびNowrooz油田の開発生産事業に参加しています。2005年5月に生産処理施設が完成し、同年7月、両油田からの生産量が30,210kl/d(190,000bopd)の本格生産を達成し、生産操業はイラン国営石油会社に移管されました。
イラクでは、同国石油省との間に、油田評価等の共同スタティ実施と、専門家育成のための同省職員への教育訓練を中心とする技術協力覚書を締結しました。同覚書により、当社は、同省と共同でバグダッド近郊の油田の開発検討、イラク北東部の油田及び探鉱プロスペクトの評価等について技術的検討を実施するとともに、当社から石油省に対して、3次元地震探鉱の実施に必要とされる機材・ソフトの提供を含む技術支援及び探鉱開発技術等に関する教育訓練を実施していきます。
ロシア
当社は、ロシア連邦極東地区のサハリン島北東沖海上のチャイウォ、オドプト、アルクトン・ダギの3油ガス田の探鉱開発事業(サハリン-1プロジェクト)に30%の権益を保有するサハリン石油ガス開発(株)(SODECO)への出資等を通じて、同事業に関与しています。現在、チャイウォの原油開発を対象としたフェーズ1作業として、大偏距掘削(Extended
Reach Drilling)による開発井の掘削、陸上生産処理施設及び原油出荷基地等の建設が行われています。
新日石が帝石株買い増し 国際石油開発との統合牽制か
新日本石油は22日、帝国石油の株式を発行済み株式総数の20.4%まで買い増したと発表した。新日石は帝石の筆頭株主となって事業統合をめざしていたが、帝石はこれを受け入れず、今月上旬に国が筆頭株主の国際石油開発との経営統合を決めた。新日石は帝石株の3分の1を取得すればこの統合案を拒否できるが、さらに株を買い増すかどうかについて「現在は白紙」としている。
新日石は15日、市場外の相対取引で帝石株の3.9%分を167億円で取得した。新日石は「筆頭株主としての存在感を高める」としており、統合比率など統合条件について妥当かどうかを慎重に検討するという。統合を決めるための1月の臨時株主総会をにらんで発言力を高める狙いがあるとみられる。
帝石と国際石油開発が統合すれば、新日石が保有する統合会社の持ち株比率は3.8%になる。
新日石は00年、外資の買収から帝石を防衛するため筆頭株主となり、石油開発から精製・販売まで手がける垂直一貫型の石油会社の実現をめざして事業統合を働きかけた。しかし帝石が吸収合併されるのを嫌って拒んだ経緯がある。
日本経済新聞 2005/11/23
新日石 帝石に統合提案へ 出資比率20%超に 国際石油含む3社で
石油元売り最大手の新日本石油は22日、国際石油開発との経営統合を決めた帝国石油に、3社統合を含む提携を提案する方針を明らかにした。国際石油と帝石の統合で誕生する国内最大の資源開発会社に新日石も加わり、精製・販売も含む一貫操業の連合を目指す。ただ、国際石油と帝石はまず開発専業として新会社の基盤を固める方針で、提案が実現するかどうかは不確定要素も多い。
新日石は帝石の株式16.5%を持つ筆頭株主だったが、3.9%分を買い増して持ち株比率が20.4%になったと同日発表した。市場外での相対取引で、取得額は167億円。株主としての影響力を高め、交渉を優位に進める狙いとみられる。さらに株を買い増す可能性は「今のところ白紙」としている。
帝石と国際石油は今月5日、2006年4月に経営統合すると発表したが、新日石は2000年に帝石に出資して協力関係にあるため動向が注目されていた。
新日石首脳は22日夜、「石油開発など上流の統合だけでは中核企業にならない」と指摘。帝石と国際石油が来年1月末に開く臨時株主総会までに「統合や提携など様々な形による一段の連携を帝石に提案していく」と述べた。
新日石 国際石油主導 再編に危機感
新日本石油が帝国石油と国際石油開発が統合してできる新会社との連携を目指すのは、政府系の国際石油主導で進む開発会社の再編に危機感を抱いているためだ。
新日石は3月に発表した中期経営計画で、開発から精製・販売までの一貫操業体制を目指す方針を打ち出した。国内需要が頭打ちの製品販売だけでは将来の成長が見込めない中で、原油高で潤う開発部門を収益源に育てる戦略だ。その核となるのが石油・ガス開発で豊富な実績を持ち、技術者も多く抱える帝石との連携だった。新日石は2000年3月に帝石に出資。ベトナムやマレーシアで共同探鉱・開発を手掛けるなど協力関係を深めてきた。
ところが、帝石は国際石油と経営統合する道を選択。新日石にとっては「寝耳に水」で、統合がこのまま実現すれば、開発部門は大幅な戦略の見直しを迫られる。今回の株式買い増しは、来春の統合までに時間がない中で提携交渉を少しでも早く進めるための窮余の策だったとみられる。
ただ、帝石が同日発表したコメントは「国際石油との経営統合に協力するという意向に沿ったものと理解している」という内容で、新日石の意向とはずれがある。国際石油の松尾邦彦会長も「帝石との合併が最終的に完了する2008年まで他の再編は考えない」と言明しており、3社の交渉の先行きは不透明だ。
日本経済新聞 2005/12/20
石油開発、新日石と連携 国際石・帝石の統合会社 株持ち合いも拡大
来年4月に経営統合する国際石油開発、帝国石油と帝石の筆頭株主である新日本石油の3社は19日、石油開発事業で協力関係を強化すると発表した。統合新会社と新日石の株式痔ち合いも拡大する。新日石は両社の統合への賛否を明確にしてこなかったが、関係強化を条件に賛成する。国内の石油開発業界の核ができることで、再編の動きが活発化することも予想される。
国際石油と帝石は来年4月に共同持ち株会社の「国際石油開発帝石ホールディングス」を設立。その後、2008年6月に両社と持ち株会社が合併して完全統合する。
3社の合意内容は、まず統合会社と新日石が新規の油田開発などで協力する。共同で権益の取得や探鉱作業をするほか、重質油からガソリンなど軽質の石油製品を取り出す新日石の精製技術を活用。天然ガスから合成液体燃料を作る「ガス・ツー・リキッド(GTL)」事業でも協力する。
新日石は現在、帝石株を20.4%保有するが、統合後は比率が3.8%に低下する。今回の合意により、新日石は08年6月までに5%程度にまで買い増すほか、それ以降も7.5%を限度に高めることができる。帝石は新日石株の保有比率を現在の0.7%から08年6月までに1.5%程度まで引き上げる。
統合新会社の設立時点で、新日石は第5位株主だが、仮に7.5%まで買い増すと、経済産業相(29.3%)、石油資源開発(11.3%)、三菱商事(8.2%)に次ぎ、三井石油開発(7.5%)と並ぶ第4位株主となる。国際石油と帝石は同日、統合新会社の社外取締役として新日石の平井茂雄常務を招くことも発表した。
新日石は国際石油と帝石の統合発表後に帝石株を買い増し、国が保有する国際石油の「黄金株」の問題や統合比率の妥当性について検討してきた。19日会見した新日石の西尾進路社長は「(重要案件に対して1株で拒否できる)黄金株の権利を行使できるのは限られた場合で、統合比率についても問題ないと判断した」と述べた。
新日本石油、帝国石油の提携の流れ | ||||||||||||||||
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精製・販売 「川下」協力は不透明
新日石が国際石油と帝石の経営統合に賛成を表明したことで、統合への最大の障害が取り除かれる。ただ、新日石が両社に強く求めていた「精製・販売など川下を含む一貫操業体制」への道筋は不透明のまま。株式持ち合いに対する認識にも差があり、新日石は最終的な陣営入りの方針を固めたわけではない。
新日石は帝石の筆頭株主。帝石と組み石油開発事業の拡大を目指していた。十分な説明がないまま国際石油に影響力を持つ国が主導する形で経営統合が決まったことには不満。加えて新日石の渡文明会長は「石油開発など上流の統合だけでは経営が安定しない」と、2社に一貫体制への道筋を示すよう求めていた。
19日の会見でも新日石の西尾進路社長は「今回の協力強化は完ぺきな(一貫操業の)形ではないが、一つのステップ」と語った。これに対し国際石油の黒田直樹社長は「統合会社は開発専業を目指す方向に変わりはない」と述べた。
株式持ち合いに関し黒田社長は「7.5%が限度」と明言。西尾社長は「将来のことは今後の検討事項」と述べ、政府が保有株を放出するなど情勢の変化によっては、株式をさらに買い増すことに含みを持たせた。
油田の共同開発については必要に応じて組むだけで、他社との協力を排除しない。西尾社長は他社と組み一貫操業グループを形成する可能性を「今後の検討事項」と否定しなかった。
国内では他の石油元売りも規模は小さいながら開発事業を手がけるほか、石油資源開発、アラビア石油などの専業会社がある。今回の統合をきっかけに再編が動き出す可能性は高い。新日石がさらに統合会社の株を買い増して関係を強化するのか、自ら中核となって新グループをつくるのかで業界の構図は大きく変わる。