2007/3/9 日本経済新聞夕刊
新日石 中国石油と提携拡大 石化製品・ガス
相互に供給
新日本石油は中国最大の石油会社、中国石油天然気(ぺトロチャイナ)と生産分野の提携を拡大する。従来の中国石油からの原油精製受託に加え、2007年度から樹脂原料などの石油化学製品やガスの相互供給を始める。受託精製も25%増やす。原油消費量で米国に次ぐ世界二位となった中国と同三位の日本の最大手の石油会社が石油・ガス需給の逼迫に対応した多様な協力体制を敷く。
中国石油グループの海外事業部門、中国連合石油(チャイナオイル)と9日午後調印する。新日石が樹脂などの原料となるプロピレンを中国石油に年2万トン輸出し、中国石油からは主に家庭用プロパンガスとして使う液化石油ガス(LPG)を年10万トン輸入する。互いに自社の生産能力に余裕のある製品を融通する。
受託精製は4月から25%増の1日5万バレルに増やす。新日石の国内精製能力の4%に相当する。中国石油が中東から調達した原油を新日石グループの根岸(横浜市)、水島(岡山県倉敷市)など6カ所の製油所で受け入れ、新日石が重油や軽油などに精製して中国石油に供給する。
経済成長が続く中国は石油製品の需要が急増し、昨年の原油輸入量は前年比15%増えた。製油所や石化工場の能力増強が追いついていないのが現状だ。
一方、国内のガソリン需要は昨年、32年ぶりに前年割れした。灯油も暖冬の影響で消費が大幅に減少するなど石油製品の市場環境は厳しい。最大手の新日石の3月の原油処理量は前年に比べ7%低下する見通し。製油所の稼働率は8割程度とみられ、余剰分の能力を提供することで中国側の供給不足の緩和につなげる。
新日石は04年に中国石油と提携。今年に入り韓国石油最大手のSKとも資本・業務提携し、中国やインドなど成長市場の開拓を打ち出している。今回の中国石油との提携拡大もアジア戦略強化の一環。国内設備の多くは減価償却を終え、アジアでのコスト競争力があるといわれている。アジア市場向けの輸出基地としての位置付けが強まる可能性がある。
新日石と中国石油の比較(2005年度)
新日本石油 | 中国石油天然 気グループ |
|
売上高 | 6兆1179億円 | 約7兆 8000億円 |
利益 | 1665億円 | 約1兆9900億円 |
日量原油精製能力 | 121.7万バレル | 272万バレル |
系列ガソリンスタンド数 | 10,807カ所 | 約6,600カ所 |
(注)新日石の業績は連結。利益は新日石が純利益、中国石油は税引き後利益