2007/4/29 日本経済新聞             地図及び日本の備蓄基地は前ページ参照

サウジと原油備蓄 首相が提案 沖縄の設備提供 緊急時に融通

 安倍晋三首相は28日午後(日本時間同日夜)、政府専用機で中東五カ国訪問の最初の訪問国であるサウジアラビアのリヤドに到着した。首相は同日、同国のスルタン皇太子と会談。サウジアラビアと日本とが協力して備蓄向けの原油を管理する「共同備蓄構想」を提案した。
 沖縄にある日本の国家備蓄用タンクをサウジ側に無償で提供し、緊急時には日本に融通してもらう内容。原油の最大の輸入先であるサウジとの相互依存関係を深め、原油の安定確保につなげる。サウジ側も提案を受け入れる見通しだ。
 構想では、日本が沖縄東岸の平安座島にある国家備蓄タンクを国営石油会社サウジアラムコに無償提供する。平時には同社がここに流通在庫を保管。原油輸入が途絶した場合などに、日本が優先的に買える契約を結ぶ。日本がこうした形で国内備蓄をするのは初めて。
 中東産油国との原油取引では、日本の元売り会社など顧客側が原油をタンカーで受け取りに行くのが通例。産油国側が日本国内に在庫を抱える慣行はない。サウジが国内に大量の在庫を置けば、日本とのつながりを内外に示すこともできる。他の産油国が追随する可能性もあり、日本のエネルギー安全保障に貢献するとの期待は大きい。

2007/4/30 毎日新聞 

首相が提案した国家石油傭蓄基地の活用は、沖縄県の平安座島(へんざじま)などにあるタンク群(計525万キロリットル、10日分の備蓄)の一部を空け、国営石油会社サウジアラムコの商業用備蓄に貸し出し、緊急時に日本が購入できるようにするもの。

  参考 堺屋太一 小説「活断層」 (小説では豊那味村)


 

2007/4/28 ロイター

サウジとは石油を超えた幅広い関係を目指す=安倍首相

 安倍晋三首相は28日、中東歴訪の最初の訪問国であるサウジアラビアに到着、日本とサウジは石油中心の関係を超えて、幅広い経済分野での協力関係を築く必要があるとの考えを明らかにした。首相の中東訪問は、日本の中東における存在感を高め、中東地域からの原油の安定供給を確実にすることが最大の目的。

 首相は日本とサウジの経済界トップらが参加した経済サミナーで挨拶し、日本と中東の新たな関係を目指すことを強調、そのためには中東の主要国であるサウジとの関係拡大が不可欠、との認識を示した。また、経済関係を「多層的な関係」に広げるために、日本の経験や知識を活用する意向も表明した。

 首相は、同行した約170人から成る日本経団連ミッションに石油産業だけでなく様々な業種のトップが参加していることを指摘、この異例のミッションは日本がサウジへの投資に強い関心を持っていることを示している、と強調した。

 安倍首相はこの後、アラブ首長国連邦、クウェート、カタール、エジプトを訪問した後、5月2日に帰国の途に着く予定。


2007/4/28 日本経済新聞

経団連訪問団もサウジに到着・御手洗会長ら170人

日本経団連の中東訪問団は28日午前、サウジアラビアに到着した。経団連の御手洗冨士夫会長は同日午後、リヤドで開いた日本とサウジアラビアのビジネスフォーラムで「資源・エネルギー分野にとどまらず、貿易・投資を多様化することで両国の戦略関係は奥行きを増す」と強調した。

訪問団には石油、化学、商社、プラント、自動車や電機、銀行・証券など企業約80社から合計で約170人が参加。会長・社長クラスだけで40人前後と経団連としてかつてない規模の訪問団。経団連が首相の外国訪問に同行団を派遣するのは昨年11月のベトナムに次いで2度目。

湾岸諸国は産業構造の多様化やインフラ整備、人材育成に長期的視点から取り組んでいる。日本からの投資拡大や技術協力への期待は強く、御手洗会長は「どのようなニーズがあるのか、まずは現地の声に耳を傾けたい」としている。


共同声明  2006年4月6日

日本・サウジアラビア王国間の戦略的・重層的パートナーシップ構築に向けて

 日本国総理大臣小泉純一郎閣下の招待により、サウジアラビア王国皇太子兼国防航空相兼総監察官スルタン・ビン・アブドルアジーズ・アール=サウード殿下は、2006年4月5日から7日(ヒジュラ暦1427年ラビーア月7日から9日に相当)まで、日本への公式訪問を行った。

 スルタン・ビン・アブドルアジーズ・アール=サウード皇太子殿下は、空港到着時に日本国皇太子殿下に出迎えられた。

 日本国天皇陛下は、スルタン・ビン・アブドルアジーズ・アール=サウード皇太子殿下に敬意を表して主催した午餐会にて同皇太子殿下と会見した。

 スルタン皇太子殿下と日本国総理大臣小泉純一郎閣下は、2006年4月6日、東京にて会談を行い、次の声明を発出した。

  1. 双方は、1960年に交通通信大臣としてスルタン・ビン・アブドルアジーズ・アール=サウード殿下が行った最初の訪日が、サウジアラビア王室からの最初の訪日であり、サウジアラビア王室と日本国皇室との間の友好の絆の歴史の幕を開けたこと、また、1971年のファイサル国王陛下の訪日、1998年のアブドッラー皇太子殿下(当時)の訪日、1981年の日本国皇太子殿下及び同妃殿下(当時)、及び1994年の日本国皇太子殿下及び同妃殿下のサウジアラビア訪問、2005年の日本国皇太子殿下のサウジアラビア訪問を含む日本国皇室とサウジアラビア王室からの相互の諸訪問が、日本・サウジアラビア間の緊密な絆を更に強固にしたことを想起した。
  2. 双方は、両国間の友好関係が双方にとって有益であり、また、特に外交関係樹立50周年記念事業が二国間関係の強化に大きく貢献を果たしたことを認識しつつ、繁栄した関係を更に進めるとの堅い決意を表明した。その目的に向けて、戦略的パートナーシップ構築のための歴史的機会を提供したスルタン・ビン・アブドルアジーズ・アール=サウード皇太子殿下の訪日の重要な意義に留意しつつ、「日本国外務省とサウジアラビア王国外務省との間の政策協議に関する覚書」が署名された。
  3. 双方は、そのパートナーシップを強固にするため、経済、文化、環境、航空交通等の様々な分野において、あらゆるレベルで戦略的対話を一層促進していく意思を共有した。双方は、両国外相間の対話を含むハイレベルな政治対話を促進する意向を表明した。
  4. 双方は、二国間の最近の経済・商業上の発展と活動を満足の念を持って留意しつつ、経済関係の更なる発展が日本・サウジアラビア間の戦略的・重層的パートナーシップに向けての主要な原動力となるとの見解を共有した。日本側は、サウジアラビアのWTO加盟を、同国国内のビジネス機会を拡大するものとして祝福した。また、日本側は、在京サウジ商業事務所開設の発表を歓迎した。
  5. 双方は、住友化学とサウジアラムコ(サウジアラビア石油会社)との間のラービグ石油化学プロジェクト、SPDC(サウジ石油化学開発会社)とSABIC(サウジ基礎産業会社)との間のシャルク・プロジェクト昭和シェル石油株式会社へのサウジアラムコの投資等双方向の投資の大幅な増加を歓迎した。また同様の観点から、双方は、日・サウジアラビア・ビジネスカウンシル合同会合の枠組みにおける諸活動の前向きな成果に特別の注意を払いつつ、両国企業関係者同士の協力を歓迎した。
  6. 日本・サウジアラビア経済関係の更なる発展に向けて、双方は、主に二つのレベルにおいて同時に努力することの重要性を強調した。
     第一に、双方は、相互投資の促進の方途について議論を活性化する意向及び二国間投資協定の交渉再開の用意があることを表明した。
     第二に、地域レベルにおいて、双方は、日本・GCC(湾岸協力会議)諸国間における財及びサービス貿易を対象とする自由貿易協定(FTA)が、日本・サウジアラビア間及び日本・GCC諸国間全体の経済・商業関係の一層の強化に資するものであるとの認識の下、同協定に係る正式交渉を開始し、2006年5月に準備会合を開催する旨の決定を歓迎した。
  7. 双方は、世界石油市場の安定が世界経済の健全な成長のための礎石であるとの見解を共有した。その観点から、日本側は、世界及び日本への最大かつ信頼できる確実な石油輸出国であり、石油輸出国機構(OPEC)における指導的な国家であるサウジアラビアが担っている重要な役割に対して謝意を表明した。双方は、世界最大の炭化水素資源を有するサウジアラビアとエネルギー関連の先進技術を有する日本との間の相互補完的な関係に基づいて、エネルギー分野における緊密な対話を通じた二国間協力の更なる促進の重要性を認識した。サウジアラビア側は、日本への石油の安定的供給を保証し続ける意思を表明し、日本側はこれに謝意を表明した。双方は、国際エネルギー・フォーラム(IEF)の世界石油市場の透明性向上における役割を強調しつつ、同フォーラム本部がアブドッラー・ビン・アブドルアジーズ・アール・サウード国王陛下(二聖地の守護者)によってリヤドに成功裡に開設されたことを歓迎した。この観点から、双方は、来る第2回国際エネルギー・ビジネス・フォーラム(IEBF)及び4月22日-24日に開催される第10回国際エネルギー・フォーラムにおいて相互に協力することへの決意を再確認した。
  8. 双方は、相互利益に基づく重層的な経済関係の重要性を認識し、合同委員会の重要な役割について見解を共有した。その関係から、双方は、次回会合を可能な限り早期に開催するとの強い希望を表明した。
  9. サウジアラビア側は、日本が日本・サウジアラビア協力アジェンダを実施するために人的資源開発の様々な分野において、主に独立行政法人国際協力機構(JICA)を通じてこれまで提供してきた技術支援に対する感謝を表明した。双方は、両国政府及び民間部門間の連携による努力の有益な成果であり、職業訓練のモデル的役割を担う「サウジ日本自動車高等研修所(SJAHI)」の業績を歓迎した。サウジアラビア側は、「プラスチック加工高等研修所(HIPF)」、女性起業家促進プロジェクト等の諸プロジェクトへの謝意を表明した。
  10. 双方は、異文化・文明間の相互理解と相互尊重は、急速にグローバル化する世界において基礎であることを確認した。その関係から、日本側は、文明の衝突の思想を非難し、そのような思想が、諸文明間の建設的平和共存の思想により置き換えられ、諸国・諸国民間の関係が互いに他者を尊重し合う真の対話の段階に入るべきとのアブドッラー・ビン・アブドルアジーズ・アール・サウード国王陛下(二聖地の守護者)による呼びかけに対する支持を表明した。この文脈において、サウジアラビア側は、イスラム世界、アジア、西洋間を含め多様な諸文明間の相互理解促進に日本がこれまで果たしてきた貢献に留意した。サウジアラビア側は、偏見に満ちたステレオタイプに立ち向かい、諸文化・諸文明間の理解を促進することを常に心がける日本の賢明な姿勢に対する謝意を表明した。
  11. 双方は、両国がその中心的メンバーであり、これまで三度の会合が開催され(第一回会合は東京、第二回会合はエジプトのアレクサンドリア、第三回会合はサウジのリヤドでそれぞれ開催)、日本・アラブ間の相互理解を促している日アラブ対話フォーラムの重要性に留意し、第四回会合が2006年5月に東京にて開催される予定であることを歓迎した。また、サウジアラビア側は、この関連で、文明間対話、文化交流ミッション派遣といった日本と中東との相互理解深化に向けて日本が取っているその他のイニシアティヴを評価した。日本側は、日本語教育促進におけるキングサウード大学、及び、アラビア語教育とイスラム文化の日本社会への紹介において在京のアラブ・イスラム学院が果たしている重要な役割に対する謝意を表明した。
  12. 双方は、以下の諸問題において、中東全体の平和と安定のための日本・サウジアラビア間の連携的な共同努力の死活的な重要性を強調した。
  13. 中東和平プロセスに関し、双方は、アラブ・イスラエル紛争の公正かつ包括的な解決が中東地域の安定と繁栄への重要な貢献となり、国際の平和と安定への緊張と脅威の主要な源のひとつを根絶するであろうことを強調した。双方は、2002年のアラブ首脳会合で採択されたアブドッラー・ビン・アブドルアジーズ・アール・サウード国王陛下(二聖地の守護者)による和平イニシアティヴとロードマップの重要性を強調しつつ、独立し存続可能なパレスチナ国家設立への支持を表明した。双方は、パレスチナ人への継続的支援を確認しつつ、公正で包括的な和平を実現すること、2006年1月に行われた選挙の結果を第242号及び第338号を含む関連国連安保理決議に従った民主的なパレスチナ国家建設に向けた一歩として受け入れること、及び、パレスチナ人への人道的支援を継続することの重要性を強調した。
  14. 双方は、より良い未来への切望の実現に取り組むイラク国民への支援に対する両国のコミットメントを再確認しつつ、同国民がその資源の最善の恩恵を受けることができるよう、安定及び領土の一体性を達成し、イラク国民のすべてのグループの国民統合及び平等を促進すべく支援するために、相互に緊密な調整を行うことを決定した。サウジアラビア側は、イラクの復興と安定に対する日本の重要な貢献に対して謝意を表明した。
  15. 双方は、アフガニスタンの平和及び安全への移行の重要性を評価しつつ、その目的達成に向けてアフガニスタンにおいて両国が共同で進めている取り組みの重要性を強調した。
  16. 双方は、中東のすべての国家の核拡散防止条約への加盟を奨励すること、及び、国際的に正当な関連諸決議に合致した形にて、中東をあらゆる大量破壊兵器とその運搬手段が存在しない地域のひとつにすることの重要性を強調した。また、双方は、核兵器不拡散のための国際的努力を支援すること及びイランの核問題の外交的解決に向けて取り組むことの重要性を確認した。
  17. 双方は、国際の平和と安定に対する脅威となるあらゆる形態のテロに対する非難を繰り返し、テロとの闘いにおいて国際社会が一体となるべきとの見解を共有した。この文脈において、双方は、対テロの国際合意及び国連安保理の関連決議の実施に対する強固なコミットメントを再確認した。日本側は、2005年2月にリヤドにおいて、日本も参加した国際テロ対策会議を開催するなどのサウジアラビアのテロ対策におけるイニシアティヴを評価した。双方は、アブドッラー・ビン・アブドルアジーズ・アール・サウード国王陛下(二聖地の守護者)による国際テロ対策センター設立の提案を含む同会議の提言の重要性、及び、国際テロ包括協定交渉締結の緊急の必要性を強調した。
  18. 双方は、世界平和及び安定と繁栄における国連の増大する役割を認識しつつ、国連が21世紀の新たな現実を反映するよう包括的に改革されなければならないとの見解を共有した。また、双方は、総会、事務局、経済社会理事会、安全保障理事会を含む国連諸機関の昨年9月に採択された世界首脳会議成果文書に基づいた革新と活性化に向けた協力を確認した。特に、双方は、安全保障理事会改革が全体の改革の不可欠の要素であると認識しつつ、国連総会今会期中の早期の改革が必要であるとの見方を共有した。サウジアラビア側は、期待される安全保障理事会の改革にそのメンバーの拡大が含まれる場合には、日本の安全保障理事会常任理事国入りへの支持を表明した。日本側は、サウジアラビアの支持に深い謝意を表明した。