2002/10/04 東レ

世界初 遺伝子組換えカイコの絹糸から生理活性タンパク質を産生

 東レ(株)は、このたび、当社が誇る高いバイオ技術を活かし、独立行政法人・農業生物資源研究所と共同で、遺伝子情報を組換えたカイコ(トランスジェニックカイコ)を用いて、生理活性タンパク質を絹糸中に産生する基本技術の確立に、世界で初めて成功しました。当社は本技術を利用して、生理活性タンパク質の、全く新しい高効率生産プロセス実用化を目指します。

 今回開発した技術は、カイコの「絹糸腺」(絹糸を作る器官)の優れたタンパク質合成能力に着目し、農業生物資源研究所のトランスジェニックカイコ作製技術を組み合わせて確立したものです。生理活性タンパク質の一例として、ネコインターフェロンについて検討した結果、カイコの絹糸腺で働きやすい構造に改良したネコインターフェロン遺伝子をカイコのゲノムに挿入した「トランスジェニックカイコ」を作製することにより、絹糸腺組織、さらには絹糸自体に、生理活性を保持したネコインターフェロンを産生させることに成功しました。カイコが吐出する絹糸そのものに、生理活性タンパク質の成分が含まれ、その絹糸を回収、精製して製剤化するという、従来の常識では考えられなかった、画期的な生産プロセスとして期待されます。

 今回開発に成功した技術特徴は以下のとおりです。 

(1)  繭を回収することで、目的の生理活性タンパク質が得られる合理的なプロセスです。 
(2)  トランスジェニックカイコは、生理活性タンパク質を産生する性質を子孫に伝えることができるため、毎回遺伝子組換えを行う必要がなく、普通のカイコを飼育する場合と同じように容易に大量飼育ができます。
(3)  余分な成分である夾雑(きょうざつ)タンパク質が少ない絹糸中に、目的の生理活性タンパク質を産生させることができるため、精製が容易となります。  

 生理活性タンパク質の生産には、他にも、大腸菌、酵母など微生物や動物細胞を利用する技術が知られておりますが、いずれもタンパク質の精製、高純度化にコストがかかるという課題を持っております。今回開発した技術は、生理活性タンパク質の産生を広く効率化させるとともに、コストを低減させることが期待されます。

 東レはこれまで、ヒトインターフェロン−β“フエロン”を世界に先駈けて製品化するなど、高いバイオ技術を保有しており、中でも、カイコを用いた「組換えタンパク質」の産生技術は、当社の特徴あるバイオ技術の一つとして位置づけています。当社は今回開発した技術を、生理活性タンパク質の高効率生産プロセスとして実用化し、生理活性タンパク質の産生に広く展開するとともに、コンパニオンアニマル用医薬品の開発にも応用してまいります。 


朝日新聞 2000/10/20                住化コメント

住友化学、米で遺伝子組み換え作物の開発・販売に参入

 住友化学工業は19日、米国で飼料向け遺伝子組み換え(GM)作物の開発、販売に乗り出す方針を明らかにした。国内メーカーが家畜向けとはいえ、食用のGM作物の本格的な開発・販売に乗り出すのは初めて。日本では人体や周辺環境への悪影響を不安視する消費者が多いため、国内メーカーは消極姿勢が目立ち、出遅れていた。住友化学は販売を米国に限定し、対象を家畜用飼料向け作物に絞ることで、消費者団体などとの摩擦を回避し、欧米企業が先行する市場に参入する。
 住友化学は来年から日米の研究開発部門で本格的な開発にとりかかり、5年後をめどに米国の農家にGM作物の種子を売り出す。開発対象の作物は、家畜用飼料向けのトウモロコシや大豆と綿花などで、害虫や除草剤に強い遺伝子を組み込む。

 住友化学はこれまで、基礎研究を進めてきたが、「今後、GM作物が世界の主流になる可能性が強い。将来の穀物市場をねらうには本格的な開発と販売は避けて通れない」(幹部)と判断した。将来は年間数100億円の売り上げを目指す。また、住友化学は世界11位の農薬メーカーとして米国での販売拡大に力を入れており、全体の市場開拓につなげたいとしている。

 GM作物は1990年代半ばから米国で栽培が盛んになり、米国で生産されるトウモロコシの3割、大豆の5割、綿花の6割を占めていると言われる。開発は米国の農業化学会社、モンサントなどが先行するほか、欧州の農薬会社などが研究開発を進めている。

 日本ではサントリーがGM技術を使った花を販売している。しかし、イネや野菜など本格的なGM作物の開発を進めてきた日本たばこ産業(JT)グループなど6社は消費者の反発を考慮して販売を見合わせ、そのうちカゴメなど3社は本格的な開発もやめている。


2000/10/20 住友化学 

10月20日付け朝日新聞の「遺伝子組み換え作物の開発・販売  住友化学、米で参入  家畜飼料限定」という新聞記事に関するお知らせ

 「遺伝子組み換え作物の開発・販売 住友化学、米で参入 家畜飼料限定」という新聞記事に関しまして、当社の見解をお知らせいたします。
 当社は、将来、遺伝子組み換え作物が、食糧問題解決の有効な手段であるとの認識で、その基礎的な研究開発をしているのは事実でございます。
 しかしながら、研究開発としては初期の段階であり、米国で販売するなどの具体的な計画があるわけではございません。


日本経済新聞  2001/1/7

遺伝子特許 広範に 米特許商標庁 新指針を発表

 米特許商標庁は5日、生物の“設計図”とも言える遺伝情報に関する特許に関連して、
遺伝情報が利用可能であることを示せば遺伝子の断片でも特許認定ができるとする新指針を発表した。ヒトや動植物の遺伝子情報は特定の企業などの戦略に基づく特許の対象にすべきではないとの見解もあったが、同庁は事実上、これを退けた。
 ヒトの遺伝情報(ヒトゲノム)については米専門企業などの解読競争が繰り広げられたが、今後は医薬品開発などへの応用が期待されている遺伝子特許の獲得を巡る競争に拍車がかかりそうだ。
 米特許商標庁の指針は昨年公表した暫定案に検討を加え、最終規則として位置付けられている。特許対象になるのは、生物の細胞から断片的に取り出した遺伝子を構成するDNA(デオキシリボ核酸)分子や、アデニン、チミン、シトシン、グアニンの4塩基の配列として記録されている遺伝子情報を基に合成された分子情報など。
 同庁の規則によると、単に断片的な遺伝情報(塩基配列情報)を解読しただけでは、たんぱく質の「産業的役割」が分からないため、特許の対象にはならない。逆にそうした
役割があることを示せば、遺伝子の機能や完全な塩基配列が不明でも特許対象とする。産業的な有用性としては、「医薬品として活用できる」といったことなどが想定されている。
 ただ、学会などには遺伝情報を特許の対象とすることに根強い批判があるのに加え、米国が緩い審査基準で特許を認めるようになれば、遺伝子特許が米国企業に独占されるといった懸念もある。今後は米国が基準とした「産業的有用性」の定義などを巡り、議論が巻き起こる可能性もある。


化学工業日報 2003/1/31

栄研化学、LAMP法をニッポンジーンに供与

 栄研化学ニッポンジーンに対し、独自技術の遺伝子増幅法「LAMP法」について遺伝子組み換え食品(GMO)分野での国内実施権を供与した。これによりニッポンジーンでは、LAMP法に使う検査用試薬の開発、製造を行うことになる。日本ではダイズなどGMO農産物を使った加工食品への表示が義務付けられ、遺伝子検査市場の拡大が見込まれている。ニッポンジーンでは第1弾として、今夏をめどに製品化する計画。


栄研化学梶@ http://www.eiken.co.jp/

栄研化学は、臨床検査及び周辺領域において、価値のある製品・技術・情報・サービスの提供により、臨床検査の普及・発展を通じて人々の健康と医療に貢献していきます。

創立   昭和14年2月20日
事業内容   臨床検査薬、臨床検査機器の製造、販売
資本金   6,897百万円(平成14年3月末現在)
従業員数   668名(平成14年3月末現在)

LAMP法の原理 
     
LAMPとはLoop-Mediated Isothermal Amplificationの略で、PCRに代わる安価、迅速、簡易、精確な増幅法として栄研化学が独自に開発した遺伝子増幅法である。標的遺伝子の6箇所の領域に対して4種類のプライマーを設定して、鎖置換反応を利用し一定温度で反応させることを特徴とする。反応はサンプルとなる遺伝子、プライマー、鎖置換型DNA合成酵素、基質等を一緒に、一定温度(65℃付近)で保温することにより、検出までを1ステップの工程で行うことができる。増幅効率が高く、DNAを15分〜1時間で109〜1010倍に増幅することができる。その極めて高い特異性から、増幅産物の有無で目的とする標的遺伝子配列の有無を判定することができる。 





鞄本ジーン     http://www.nippongene.jp/

[社名由来] 
   弊社社長の恩師である、フランク E. ヤング博士[元アメリカ食品医薬品局(FDA)長官]による命名で、ニッポンジ−ンのニッポンは「日本」、ジ−ンは「遺伝子」に由来する。
   
本社
  〒101-0054 東京都千代田区神田錦町一丁目5番地 金剛錦町ビル
   
[沿革]
 
昭和57年 1月   バイテクノロジ−・ベンチャ−企業として、株式会社 ニッポンジ−ンを設立。
昭和57年 4月   遺伝子工学用試薬の開発及び製造のため、酵素研究所・工場を設立。
昭和63年 4月   体外診断薬の開発及び製造のため、免疫研究所・工場を設立。遺伝子工学用試薬の増産に伴い、醗酵研究所を設立。
平成12年 6月   研究開発部を株式会社ニッポンジーンテクとして分社
   
[事業内容]
 
研究試薬部
  制限酵素、修飾酵素、DNA、ベクタ−、分子量マ−カ−、リンカ−、プライマ−、アガロ−ス、キット、調製液等の開発製造
診断試薬部
  1)モノクロ−ナル抗体の開発製造
2)各種特異抗原検出システムの開発製造
3)各種検出システムを応用した診断薬の研究開発と製造
研究受託部
: バイオテクノロジーに関する新規技術開発
研究開発部
  研究開発部は、平成12年6月16日を以て、株式会社 ニッポン ジーンテクとして分社独立しました。

2003/2/5 東洋紡績/三井物産

〜東洋紡と三井物産がバイオ関連合弁会社設立〜
   「株式会社TMセルリサーチ」

 本日、東洋紡績株式会社(本社:大阪市北区、代表取締役社長:津村準二)と三井物産株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:槍田松瑩)は、バイオ関連の合弁会社「株式会社TMセルリサーチ」を設立します。

1.新会社設立の主旨

 今日、高度な医療ならびに医療費抑制の時代を迎えていますが、そのためには細胞組織工学(多種類の細胞を生体中にある状態と同様に組織化し、組織・臓器の持つ高次な機能を再現するための工学)を基礎とした組織の再生技術が求められています。また医薬品開発における実験動物を用いる前臨床試験でもヒト細胞機能を持つ研究材料はその開発効率の観点から大きなニーズが想定されます。
 このような背景の中で「株式会社TMセルリサーチ」は医薬品開発研究と将来の再生医療研究につながる細胞関連の技術開発と製造販売を行います。
 具体的には、細胞・幹細胞の培養技術と細胞分化制御技術を確立し、再生医学研究、医薬品開発研究の各分野で利用される細胞関連商品を開発します。
 そして将来、これらの事業展開が再生医療をサポートし、対処治療的ではない根本的な治療による医療費削減、治療効果の高い医薬品開発や開発にかかるコスト削減等、社会的にも経済的にも貢献できる技術開発となることを確信しています。

2.東洋紡と三井物産の細胞関連分野における事業展開

(1)東洋紡の事業展開
  a. 東洋紡は、細胞工学技術、酵素蛋白生産・精製技術、遺伝子工学技術、臨床診断薬などの分野で高度な技術とノウハウを所有しており、これらの技術から生まれた商品を基礎研究用試薬、医薬品開発研究用試薬、臨床診断薬などの幅広い市場へ販売しています。
  b. 特に細胞工学の分野では、初代細胞の分離培養技術、培地開発、モジュール培養技術など、2次元または3次元の細胞・組織培養技術を所有し、前駆脂肪細胞、毛乳頭細胞、人工皮膚モデル「テストスキン」や九州大学船津研究室による3次元肝臓培養モデル等、ユニークな商品開発を通じて、現在、動物実験代替分野を中心に商品を展開しています。
  c. 将来の再生医学、医薬品開発研究の動向を見据え、新たな技術分野への開拓を進め ています。その一つとして、大阪大学など大学研究機関と細胞を自在に制御すること を目的とし、幹細胞を始めとする細胞の分化制御に関わる研究開発と事業化研究を行 っています。
     
(2) 三井物産の事業展開
   三井物産は、将来の遺伝子診断事業を目指し、診断システム構築を中心としたバイオ事業展開を長期戦略に掲げ、基盤作りのための要素技術の取り組みを積極的に行っています。
  a. シンガポールではアジア人のため遺伝子発現解析、タンパク解析に取り組んでおり、研究開発を主体に行うバイオ関連ベンチャーを3社立ち上げています。
  b. 診断事業につながる分子診断チップ、タンパク解析マーカー等の要素技術開発ベンチャーやバイオインフォマティックス、遺伝子受託解析等の事業開発ベンチャーへの投資を国内外で行っています。
  c. 米国や台湾で臍帯血(さいたいけつ)バンク事業を進めているStemCyte社へ出資しており、同社の細胞分離、加工、保存技術など細胞関連技術を再生医学研究、医薬品開発研究の分野へ活用できる体制が整いつつあります。
     
 TMセルリサーチは、細胞を主体として、東洋紡と三井物産の基盤技術、情報ネットワーク、販売網を最大限活用しながら、大学等の研究機関とのネットワークを生かしユニークな研究開発ができる体制を持つ会社となることを期待しています。まずは医薬品開発研究への細胞基礎技術の提供、再生医学研究への研究サポート、さらに高付加価値な細胞を用いたアッセイシステムの開発と、順次事業の展開を計画しています。
     
3.「株式会社TMセルリサーチ」の概要
   本社は東洋紡本社内に、研究開発の活動拠点は東洋紡の敦賀バイオ研究所内(福井県敦賀市)に設けます。
     
(1)所在地   東洋紡績株式会社本社内(大阪市北区)
(2)出資額   2億5000万円(資本金125百万円、資本準備金125百万円)
(3)代表者   代表取締役 曽我部行博(現 東洋紡績株式会社 敦賀バイオ工場長)
  他に東洋紡から2名、三井物産から2名の取締役を選任
(4)出資比率   東洋紡 65%、三井物産 35%
(5)事業内容   a.細胞工学による生産物と関連商品の研究開発・製造・販売
b.細胞工学による生産物と関連原料の輸出入・売買
c.その他付帯する一切の業務
(6)設  立   2003年2月5日
(7)要  員   設立当初は、研究開発・製造・管理で10名を予定。
(8)販売計画   2008年度 売上高15億円

 

 


日本経済新聞 2003/2/19

SBI、慶大と協カ バイオ新技術事業化後押し

 ベンチャーキャピタル(VC)大手のソフトバンク・インベストメント(SBI)は、バイオベンチャーの育成で慶応義塾大学と提携した。大学内にある技術シーズを共同で発掘し、事業化する。技術に強い大学と育成に実績があるVCが連携することで、バイオベンチャーの成長を支援する。
 SBIグループの新会社、バイオビジョン・キャピタル(東京・港)がバイオ分野の投資を担う。SBIが50%、残りを経営陣らが出資した。常務最高執行責任者(COO)は東京女子医科大学バイオメディカル・カリキュラムを修了した尾崎弘之氏。バイオビジョン・キャピタルと慶大の技術移転機関(TLO)である知的資産センターは、学内の研究者に対して共同で事業化や特許、資本政策など経営戦略を助言する。
 慶大は医学部と理工学部を中心に特許を年間100件以上申請しており、大半がバイオ関連という。SBIから事業化・起業の支援を受け、ベンチャー設立を加速する。SBIは慶応大だけでなく、国内外の大学とも提携を目指す。
 最近は大学とVCの提携が相次いでいる。すでに東京大学とエヌ・アイ・エフベンチヤーズ、大阪大学の産学連携機関、阪大フロンティア研究機構と独立系のグロービス(東京・干代田)が提携している。


朝日新聞 2003/3/19

遺伝子組み換え生物規制法案を閣議決定

 政府は18日、遺伝子組み換え生物が自然界に広がって固有種と交雑したり、固有種を駆逐したりするのを防ぐ「遺伝子組み換え生物使用規制生物多様性確保法案」を閣議決定した。今国会での成立をめざし、組み換え生物の輸出入の手続きを定める
生物多様性条約カルタヘナ議定書を批准する。議定書は03年中にも発効する見通しで、同法は議定書が発効する日に施行する。

 組み換え農作物を屋外で栽培するため新たに作ったり輸入したりする業者は、事前に使用規定を提出し、生物多様性影響評価書を付けて、国の承認を受けることが義務づけられる。薬品製造用の微生物など閉鎖空間で使う場合は、省令で定める拡散防止の措置をとることが義務づけられる。

 また、未承認の組み換え生物が飼料用や食用の穀物の種子に混入するなどして、知らずに輸入するおそれがあると国が指定する業者は、輸入の際に国に事前に届け出ることが義務づけられ、国は業者に検査命令を出すことができる。組み換え生物を輸出する業者は相手国に通告する義務があり、組み換え生物の種類などを表示しなければならない。緊急時に国は業者などに立ち入り調査や回収命令などを出すことができる。命令違反は1年以下の懲役や100万円以下の罰則がある。

 


http://www.meti.go.jp/policy/bio/Cartagena-giteisho.html

生物多様性条約 カルタヘナ議定書について

条約の目的
 @生物多様性の保全(注)
 A生物資源の持続可能な利用
 B生物遺伝資源の利用から生ずる利益の公正かつ公平な配分

(注) 地球上の生物は、進化の過程で多様に分化し、その生息地域の特性に応じて分布し、それぞれの生物が自然の作用のもとでバランスして存在している(生物多様性)。外来のブラックバスが日本の魚類の生態系を変えてしまったように、ある一つの新しい生物が人為的に環境中に導入されて、ひとたびこのような生態系のバランスが壊されると、環境や人の暮らしに取り返しのつかない影響を与えるということから、遺伝子組換え生物(新しい生物)の環境への導入を適切に管理する必要性が指摘されてきた。

批准、発効

 2001年9月20日現在、103か国が署名、5か国が批准。主な未署名国は、日本、米国、タイ、豪州、ブラジル、ロシア(米、タイは生物多様性条約非加入国)。50番目の国の批准後90日目に発効。



議定書の概要

生物多様性条約の目的を達成するために、生物の多様性の保全及び持続可能な利用に悪影響を及ぼす可能性のある、モダン・バイオテクノロジーにより改変された生きた生物(LMO ;Living Modified Organism )の安全な移送、取扱い及び利用について、特に国境を越えた移動に焦点を当て、その十分な管理のための措置を講じること。
   
@ 議定書の対象となるLMO 【4 条】
  すべての改変された生きた生物(LMO )の国境を越える移動、通過、取扱い、利用(人用の医薬品を除く。【5条】)
※対象とならないもの:遺伝子組換えダイズから製造した豆腐、遺伝子組換えコーンスターチ(非生物)等
   
A主な用語の定義
@) 「閉鎖系利用」:施設、設備その他の物理的構造物の中で実施される作業であって、外部環境への接触及び影響を効果的に制限する特定の方法により管理される改変された生物に係るもの
A) 「改変された生物」:モダン・バイオテクノロジーの利用を通じて得られる遺伝物質の新しい組合せを有する生物
B) 「生物」:遺伝物質の伝達又は複製する能力を持つ生物学的個体(不稔性生物、ウィルス及びウィロイ ドを含む。)
C)   「モダン・バイオテクノロジー」:自然における生理学上の生殖又は組換えの障壁を乗り越え、かつ、従来の交配技術及び選抜技術ではない以下のもの
(a )試験管内の核酸技術(デオキシリボ核酸(DNA )の組換え及び細胞又は細胞内小器官への核酸の直接注入を含む。)
(b )分類学上の科を越える細胞融合 
   
B具体的な措置の内容
 i ) 環境に意図的に放出される改変された生物に関するルール
  ○事前の十分な情報提供に基づく輸入国の合意(AI A ;Advance Information Agreement )
  【7 条〜10 条】
  ・ 輸入国による附属書Vに基づくリスク評価【15 条】
・ 輸入国による同意又は拒否の決定【10 条】
・ 輸出の際の必要な書類の届出【8 条】
   
  ○取扱い、輸送、包装及び特定のための措置の義務付け【18 条】
※対象は、農業用種苗、家畜が中心。当省に関係するものは、環境修復のための微生物や有用物質を生産させるための微生物等。
   
A) 直接環境への放出を目的としない食用・飼料用及び加工用の改変された生物に関するルール
  ●AI A 手続きは、義務的には適用されない。【7 条】
○輸入国は、国内規制に基づき輸入の可否を決定できる。(任意)【11 条】
・ 上記の国内規制により国内利用を決定した場合に、BCH (Biosafety Clearing House ;国際的な情報集約機関)に通知
○必要な情報(「改変された生物を含む可能性あり」等)を記載した特定の義務付け【18 条】
※対象は、加工していない食用ジャガイモ、飼料用トウモロコシ、生分解性プラスチック用ジャガイモ等。
   
B) 閉鎖施設で利用される改変された生物やトランジットに関するルール
●AI A 手続の非適用【6 条】
○改変された生物であることを特定し、連絡窓口を明記することの義務付け【18 条】
※閉鎖施設で利用される改変された生物の対象は、組換え微生物を用いた酵素の生産等。
   
C) リ スク管理
○改変された生物(上記@)〜B)に対応する利用)の利用、取扱い及び国境を越える移動に伴うリスクを規制し、管理し及び制御するための適当な制度、措置及び戦略を確立し、維持する。【16 条】
   
D) 意図的でない国境を越える移動及び緊急措置
○生物多様性の保全及び持続可能な利用に著しい悪影響を及ぼす可能性が高い、改変された生物の意図せざる国境を越える移動等の場合には、バイオセイフティ・クリアリング・ハウス等に通知【17 条】
   
E) 不法な国境を越える移動
○上記@)〜B)に対応する国内措置に違反して行われるL MO の国境を越える移動を防止するため、適当な場合には罰則を科すための国内措置をとる。【25 条】
   




2003/05/15 東レ

「先端研究所」の開所について
− バイオ・ナノテクを中心とした研究拠点を立ち上げ −

 東レ(株)は、創立75周年記念事業の一環として、2002年3月から神奈川県鎌倉市(鎌倉市手広1111番地)において、21世紀の科学・技術に極めて重要な意味を持つバイオテクノロジーとナノテクノロジーに中心的に取り組む「先端研究所」の建設を進めておりましたが、この度、明日2003年5月16日に開所する運びとなりました。
 本「先端研究所」は、(1)バイオ・ナノテク関連研究の集中化による一層の強化、(2)当該関連分野の優秀な研究者の国内外からの招聘、(3)国内外の大学、研究機関との連携強化、等を主な目的として設立しました。建築面積は約3,200m2、延床面積は約8,000m2(3階建て)、人員は約50名でスタートし、近々100名程度にしていく予定です。

 「先端研究所」の所長は、4月1日付で、東大名誉教授・鈴木紘一氏を発令し、すでに着任しております。同氏は東大(分子細胞生物学研究所所長)を平成12年3月をもって退官後、東京都老人総合研究所所長を本年3月末まで勤め、退職後、東レに入社いたしました。

 本研究所では、バイオテクノロジーとナノテクノロジーおよびナノ・バイオ融合領域の研究を積極的に進めていく予定ですが、研究対象はナノ・バイオ融合基礎研究(タンパク合成・解析チップ、DNAチップ、DDS)、革新治療(細胞治療、新規体外循環)、バイオプロセス(バイオマスからのグリーン・プロセスを指向した生産手法)、ナノ材料機能化(材料、加工技術)などです。

 さらに本研究所には、社外研究機関との連携を推進するためオープンラボを設置しており、大阪大学産業科学研究所からは21世紀COEプログラムによるブランチラボを招致し、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)による先進ナノバイオデバイスプロジェクトの一環として「タンパク質合成・解析チップ」の研究を実施いたします。

 本研究所の開所により、既存の「医薬研究所」、(株)東レリサーチセンターなどに「先端研究所」が加わり、東レグループのバイオ・医薬医療関連の研究資源が鎌倉地区に集結することになります。これにより、バイオ研究ならびにナノテク・バイオ融合を当社の総力を結集して推進しうる体制が構築できました。今後もオープンラボに代表される社外との連携を有効に活用して、当社の21世紀の柱となる事業領域創出と新しい価値の創造に取り組んでまいります。