木質系(セルロース系)バイオマスからのエタノール製造方法
http://www3.pref.okinawa.jp/site/contents/attach/6351/12-17.pdf

 木質系(セルロース系)バイオマスには、農産物系のバガス、稲わら・もみ殻等、廃棄物系の廃木、建設廃材等がある。製造工程は、酸化加水分解、糖化、発酵、蒸留・脱水からなる。エタノール製造量は、現状では例えば廃材1t当たり約200Lとなっている。

   木質系(セルロース系)バイオマス資源からのエタノール製造プロセスフロー

 


木質系バイオマスからのエタノール製造技術   佐藤正則 月島機械(株)バイオ事業推進部
http://e-tech.eic.or.jp/libra/lib_8/lib8_1.html

「環境技術情報ネットワーク」は、環境省と(独)国立環境研究所が共同で企画し、(財)環境情報普及センターが運用している環境技術情報のポータルサイトです。

 バイオマスエタノールは、地球温暖化防止のために再生可能燃料として自動車燃料、ボイラー燃料に混合して利用を進める検討が行われています。
 また、自動車燃料に関しては今年8月の「揮発油等の品質の確保等に関する法律(品確法)」の改正により3%までの混合が認められて本格的な運用に向けた法整備も併せて進められています。

 ここで紹介する技術は、未利用のバイオマスとして賦存量の多い木質系のバイオマスからエタノールを製造する技術であり、その用途として自動車燃料を目指したものです。なお、本技術は2001年に米国BCInternational社より丸紅(株)殿と共同で導入したものです。

1.バイオマスエタノールに関して

(1)原料組成
 発酵法で製造されるエタノールの原料はバイオマスである植物体の糖質成分を利用するものです。従来から利用されている原料は、デンプンまたはサトウキビなどの糖蜜が主体で現在も主要原料としています。
 木質系バイオマスの場合は、ヘミセルロースとセルロースを主要成分としたもので、デンプンや糖蜜と同じ糖質でありながら糖の結合状態や構成する単糖の種類が異なるものです。さらにリグニンが多く含まれることに特徴があります。これらの組成を示すと
図1のようになります。

 これまでヘミセルロースの分解で得られるキシロース、アラビノースなどの5炭糖は、自然界の微生物では実用的なエタノール生産をすることができませんでした。本技術は遺伝子組換え菌を用いることによって5炭糖、6炭糖の両方をエタノールに変換することができ、木質系バイオマス中の糖質の利用を高めたところに特徴があります。

(2)エタノール発酵
 代表的な6炭糖(ヘキソース)、5炭糖(ペントース)からのアルコールの生成反応を
図2に示します。いずれの場合も理論上、重量比で51%がアルコールに変換されることになります。

2.木質系バイオマスからのエタノール製造プロセス

(1)木質系バイオマスからのプロセス
 アルコール発酵は、一般的に多糖類を糖化した後、微生物によりアルコールに変換します。
 デンプンの場合の糖化方法は、酵素を加えて加熱、糊化し、次に糖化酵素にてブドウ糖(6炭糖)まで分解した後、酵母でアルコール発酵を行います。
 一方、木質系バイオマスの場合は、通常酸による加水分解で糖化を行っています。当社(TSK)のプロセスは
図3に示すように希硫酸を用いた2段での加水分解法を採用しています。

(2)加水分解
 当社の2段の加水分解方法は、連続化に主眼をおいた米国での開発(MADISON法,TVA法)をベースに、BCI社が改良したものです。加水分解の1段目は約150℃にてヘミセルロースの分解を行います。1段目で加水分解し得られた糖液を回収した後、未分解残渣について2段目の加水分解を行います。この条件は更に厳しく、200℃にて行い、セルロースを分解します。
 加水分解を2段階で行うことで単糖の過分解を抑制し、ヘミセルロースおよびセルロース両方から効率的に単糖を得ることが可能となります。
 代表的な条件を
表1に示します。

表1 各種酸糖化法 標準的な希硫酸法での加水分解反応条件

  第1加水分解 第2加水分解
酸濃度 05-1.5% 1-25%
運動温度 140-190℃ 180-240℃
運転圧力 04-1.4MPa 1.4-2.0MPa
反応時間 4分 1.5分

(3)発酵
 第1次加水分解から回収された糖液は中和後、
遺伝子組み換え大腸菌KO11により発酵します。KO11はフロリダ大のイングラム教授により開発され、大腸菌宿主にアルコール発酵菌の遺伝子を挿入したものです。
 具体的には、5炭糖(キシロース、アラビノースなど)を代謝する能力を持っているがアルコール発酵は行わない大腸菌に、テキーラの発酵に使われるザイモモナス属菌の遺伝子を組み込んだものです(
図4)。
 KO11の利用によりヘミセルロース中の主成分である5炭糖のアルコール発酵が可能とり、木質バイオマスからのエタノール収率を大幅に向上させることが可能となります。
 現時点ではKO11の生産性が低いため、ヘミセルロース由来の糖の発酵はKO11、セルロース由来の糖の発酵は一般的な酵母で行っていますが、今後生産性向上の技術改良が進めば、両工程共にKO11菌で発酵することが可能となります。

4)アルコール収量
 木質系バイオマスからのアルコールの生産量は組成にもよりますが、原料1トン(dry)から木材の場合200L程度、バガス(サトウキビの搾り滓)の場合260L程度が見込まれます。

3.廃建材からのエタノール生産技術の開発

 本技術の国内での実用化に際して、国内で比較的収集ルートが確立しており、発生量の多い廃建材を原料とするプロセスを想定し、平成13〜15年度にNEDO(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の実用化開発助成を受けて「建設系廃木材からの燃料用エタノール製造技術」の開発を行っています。

4.将来技術

 現在、行っている希硫酸法による加水分解技術は、2−3年後には安価なセルラーゼ酵素が開発されて酸触媒が酵素法に代わると言われています。そこでは同時糖化発酵、つまり糖化とアルコール発酵を同一槽で行う方法が用いられるとされ、更に10年後くらいの将来技術としては、1種類の菌体で糖化と発酵を同時に行う技術の出現が予測されています。