日本経済新聞 2007/8/15

京セラ、三洋の事業買収へ 携帯再編火ぶた
 国内市場飽和が背中押す

 京セラが三洋電機の携帯電話機事業を買収する。日本の携帯電話市場は11社のメーカーがひしめき、飽和傾向を強めている。国内携帯メーカー同士で初の事業統合となる今回の買収を機に再編の動きが広がりそうだ。
 調査会社のMM総研によると06年度の国内携帯市場で、三洋のシェアは7.6%で7位。京セラは4.1%で10位。買収により京セラはパナソニックモバイルなどと並ぶ2位グループに浮上する。
 2006年度の国内榛帯電話市場は前年度比0.4%増の4,712万台。昨年10月に電話番号を変えずに電話会社を換えられる「番号継続制度」がスタートしたが、需要は横ばいにとどまった。米モトローラなど海外勢も攻勢をかけ、シェア争いが激化している。
 高機能化に伴い開発費も膨張。最先端携帯の開発費は1台あたり100億円程度といわれ、各社は負担軽減に向け提携を進めてきた。04年にカシオ計算機と日立製作所が開発部門を統合。06年にはNECとパナソニックモバイルコミュニケーションズが携帯用の半導体と基本ソフト(OS)を開発する会社を共同で設立した。富士通、NEC、三菱電機も半導体やOSの開発で組んでいるが、国内勢が事業全体を統合する例はなかった。
 大半のメーカーの携帯電話事業は、不採算の海外事業からの撤退と開発提携のコスト削減効果により、足元では黒字化している。ただ総務省の「モバイルビジネス研究会」は近く、販売奨励金を柱とした経営手法を見直すよう携帯電話サービス会社に求める報告書をまとめる。これを受け携帯電話サービス会社は、端末は高いが月々の通信料金が安い料金プランを導入する見通し。そうなれば買い替えサイクルは今より長くなり、市場が縮小する可能性が高い。
 市場が縮小すれば提携の効果は薄まり再び採算が悪化する。開発で提携しているNECとパナソニックモバイルや、富士通・三菱電機などが共同開発の範囲を広げる動きが強まるほか、事業統合を模索するケースも出てくるとみられる。


三洋、企業規模は3/4に 事業売却加速

 経営再建中の三洋電機が事業売却を加速している。連結売上高の15%を占める携帯電話と、8%を占める半導体の売却方針を相次ぎ固めた。事業売却に加え、家電量販店での冷蔵庫などの販売からも撤退する方針。家電から電子部品、金融事業まで幅広く手がけてきた三洋は、デジタルカメラなど一部を除き消費財からほとんど撤退して生き残りを目指す。
 三洋は収益性の高い充電池や電子部品、業務用の冷凍機器などに経営資源を集中する考え。消費者向けは縮小する方向を鮮明にしつつある。
 赤字の携帯事業は京セラに売却。半導体は2007年3月期は黒字転換したものの、利益変動が激しいため国内投資ファンドのアドバンテッジパートナーズに1000億円程度で売却する方向だ。07年3月期まで6年赤字の白物家電は量販店販売から撤退する。
 三洋の07年3月期の連結売上高は約2兆2千億円。携帯と半導体の売却だけで売上高は1兆7千億円弱にまで減少、企業規模は4分の3に縮む計算になる。