日本経済新聞 2007/7/31
シャープ堺新工場 液晶の集積拠点に コーニングなど部材大手が進出 投資6000億円
太陽電池も生産
シャープは堺市に建設する液晶パネルの新工場を、ガラスなど主要部材メーカーを集めた液晶産業の一大拠点とする。パネルやテレビの生産設備に加え、大日本印刷やガラス大手の米コーニングが進出。液晶と共通部材を使う太陽電池の最新工場も併設する。周辺産業を含めた投資額は合計6千億円規模になる見通しで、2009年に稼働させる。関運企業の集中で生産を効率化、競争が激化する液晶テレビ市場での競争力を高める。
31日に発表する。新工場は新日本製鉄の堺製鉄所に隣接する遊休地に建設。敷地面積は最大で約120ヘクタール、同社の亀山工場(三重県亀山市)の4倍になる見通し。
シャープは液晶パネルとテレビ組み立て工場、太陽電池工場を建設。大日本印刷がパネルの基幹部材であるカラーフィルター工場を併設する。液晶向けガラス基板で世界シェア1、2位のコーニングと旭硝子も生産拠点を設ける。パネル製造に使う薬液やガスメーカーなどの進出も促す。
パネル工場では縦横約3メートルのガラス基板を加工する「第十世代」と呼ばれる世界最新鋭の設備を導入。シャープだけで数年問で計約4千億円を投じ、月6万枚(ガラス投入べース)の生産能力を整える。部材メーカーの投資額は計2千億円程度になる見通し。
基幹部材や太陽電池工場を含む液晶パネルの複合生産拠点は世界で初めて。大型化するパネルの製造や輸送を効率化するには、同一敷地内で材料からの一貫生産体制の構築が必要と判断した。シャープは堺市の新工場をデジタル素材メーカーの集積拠点に育て、韓国サムスン電子などライバルメーカーに対抗する。
一方、太陽電池の新工場は09年度中に、年産能力100メガワット程度で操業を始める。数百億円かけて順次能力を増やす。太陽電池は液晶と共通の工業ガスなどを使うため、液晶工場と併設することでパネルの生産効率を高める。
一貫・一体生産で競争力
液晶主導権争い激しく
シャープが堺市に液晶産業の集積拠点を設ける背景には、激しさを増す液晶の主導権競争がある。内外の競合企業に対抗するにはコスト競争力と次世代技術の実用化で先行することが不可欠。シャープは液晶テレビで世界シェア3位、太陽電池では首位。部材メーカーとの連携による一貫生産や、複数品目の一体生産で優位に立つ戦略だ。
新工場では液晶生産に世界で初めて第十世代のガラス基板を採用する。世界最大の基板を使うζとで50ー60型台の大画面テレビの生産を効率化。そのためには縦横3メートルになる巨大な基板を生産するコーニングなどとの連携が欠かせない。部材メーカーが同じ敷地内に進出すれば、輸送コストを軽減し、生産計画に柔軟に対応できる。
さらに新工場の大きな特徴が太陽電池工場の併設だ。新工場で生産する「薄膜型」と呼ばれる最新タイプは電極付きのガラス基板にシリコンの薄膜を形成、現在主流の「結晶型」に比べ使用するシリコンの量が100分の1程度ですむ。薄膜を吹き付ける時に使う工業用ガスなどは液晶パネルと共通して使え、一括購入でコスト削減が期待できる。
シャープの太陽電池の07年3月期の連結売上高は1514億円。06年の世界シェアは17.4%(米PVニュース)と7年連続で首位を守っている。ただシャープはシリコンを外部購入に頼っており、半導体原料として争奪戦が激しいシリコンの調達量は十分ではない。傘下にシリコンメーカーを持つ世界2位の独Qセルズなどの攻勢も強まっている。
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2007年7月31日
最先端の液晶パネル工場、太陽電池工場および関連企業工場を集結
シャープ「21世紀型コンビナート」を展開
シャープは「環境先進企業」を目標に、省エネの“液晶”と創エネの“太陽電池”を事業の柱として取り組んでまいりました。そしてこの度、新たに大阪府堺市に最先端の液晶パネル工場と、薄膜太陽電池を量産する太陽電池工場を併設することを決定しました。
同じ敷地内に、関連するインフラ施設や部材・装置メーカーの工場を誘致し「21世紀型コンビナート」として展開してまいります。
1.「21世紀型コンビナート」
1)亀山工場で培った「垂直統合型」のさらなる深耕化
このコンビナートでは、当社の新しい液晶パネル工場に隣接してインフラ関連施設や装置メーカーの工場に加え、マザーガラスやカラーフィルターなど複数の有力部材メーカーの工場を誘致します。ガスや電気などインフラの共用化により、生産性の向上が図れます。
亀山工場で構築した、液晶パネルから液晶テレビまでの「垂直統合型」の事業展開をさらに川上まで推し進め、「企業の垣根を超えた垂直統合型」を目指します。
これにより、物流コストの削減、生産計画などのオペレーションの一元化など、従来にない画期的な事業展開を実現します。
また、優れた技術力を持つ部材・装置メーカーと当社の技術者が緊密に連携を図ることで、知識やノウハウを融合し新たな技術革新を図ります。
2)薄膜技術の水平展開
TFT液晶と薄膜太陽電池は同じ薄膜技術をベースにしており、材料やユーティリティなどの共用化が可能です。薄膜太陽電池は液晶技術の応用により、一層の生産性向上が期待できます。
2.液晶パネル工場
亀山第2工場(第8世代)の約1.6倍、畳5畳分にあたる世界最大の第10世代(2,850mm×3,050mm)のマザーガラスを、世界で初めて採用します。この第10世代マザーガラスからは、60型クラスのパネルが6枚、50型クラスは8枚、40型クラスは15枚取れることから、大型テレビ用液晶パネルを大変効率よく生産できます。
本年11月に着工し、2010年3月までに生産を開始する予定です。
3.太陽電池工場
太陽電池工場では、薄膜太陽電池の量産を行います。当社は太陽電池生産量世界NO.1※1であり、薄膜太陽電池も業界トップクラスの発電効率を実現し、すでに商品化しております。
本工場で量産する薄膜太陽電池の生産量は、最大限の量産効果が見込まれる年間1,000MW(100万kW)規模を計画しており、世界最大※2の太陽電池工場となります。
稼動時期は、液晶パネル工場と同時期を予定しています。
※1.米国「PV NEWS」(2007年4月号による) ※2.
2007年7月31日現在
2007年7月31日
<新工場の概要>
・所 在
地:大阪府堺市堺区堺浜地区(大阪府堺市堺区築港八幡町)
・敷地面積:127万m2(38.5万坪)
※液晶パネル工場について
・投 資 額:約3,800億円(新工場の全土地代含む)
・着工 :2007年11月
・稼動開始:2010年3月まで
・主な生産品目:40型・50型・60型クラスの大型テレビ用液晶パネル
・マザーガラスサイズ:2,850mm×3,050mm(第10世代)
※60型クラス6面取り、50型クラス8面取り、
40型クラス15面取りが可能
・投入能力 :月72,000枚(稼動当初は月36,000枚)
※太陽電池工場について(投資額など詳細は検討中)
・稼動開始:2010年3月まで
・生産品目:薄膜太陽電池
シャープは,液晶パネルと太陽電池の新工場を大阪府堺市に建設する。2007年7月31日に大阪で開催した記者会見で発表した。
ガラス基板やカラー・フィルタなどの部材や装置,ガス・電気といったインフラ関連の企業を同じ敷地に誘致,「コンビナート」として展開する。既に,米Corning社や大日本印刷,関西電力グループの誘致が決まっている。「亀山工場で構築した垂直統合の形態を,さらに川上まで推し進める。企業の垣根を超えたノウハウを集約して,モノづくりを進める」(シャープ 代表取締役社長の片山幹雄氏)。
すでに、マザーガラスメーカーとして米コーニング、カラーフィルターのメーカーとして大日本印刷などが進出することが決定
シャープは素材メーカーではないので,素材メーカーに新工場の敷地内に入ってきてもらうことになる。片山氏は,現在まで決まったサプライヤーとして,ガラス基板の米Corning社やカラーフィルターの大日本印刷を挙げ,さらに他の素材メーカーとも話を進めている最中だという。特に,同氏が強調したのがガラスだ。原料のケイ石を溶かす炉まで工場内に建設し,原料からガラス基板まで作成する一貫ガラス工場をつくるのだと言う。それを聞きながら筆者は,確か韓国メーカーも炉を含めた一貫ガラス基板工場を液晶パネル工場に隣接して建てていることを思い出したが,片山氏はそれを見透かしたように続けて次のように語ったのだった。
「シャープのコアは薄膜技術」
「そうしたことは韓国や台湾メーカーも既にやっているのではないかという声は当然あると思います。では,シャープのコアは何かといいますと,薄膜の技術なんです。シャープはこれまで,先代の社長の時代から,21世紀に生き残るために環境配慮を意識した企業として,省エネの液晶テレビと創エネ,つまりエネルギーをつくる太陽電池の2つを軸にしたいと言ってきました。(中略)新工場の薄膜太陽電池では,液晶パネルと同じく,ガラスの上に薄膜シリコンを形成します。シランガスを使いますから,ガスの供給プラントからガラス基板など,さまざまなハンドリングを共有化できます。つまり,液晶パネルと薄膜太陽電池の工場を同時につくることでインフラのトータルコストを抑えられると考えています」。
記者会見での主な一問一答は以下の通り。
――コンビナート全体の投資が1兆円になるとの話だが,その内訳は
液晶パネル工場への投資は,第2期ラインを立ち上げて投入能力を7万2000枚/月にするまでで約3800億円を想定している。これに部材やガス・電気などインフラ関連の企業の投資額が4000〜5000億円,さらに太陽電池工場への投資額を加えると大体その程度になる。ただし,太陽電池工場の投資額などの詳細は現段階では決定していない。
――液晶新工場の競争力についてどのように考えているか
液晶パネルと液晶テレビの技術が融合して相乗効果を生んだのが亀山工場だった。今回は,融合の範囲を部材や設備まで広げる。そこに大きな意味がある。それぞれの技術が融合して相乗効果を発揮することで,単にガラス基板が第10世代に大きくなっただけではないメリットが生まれる。
――大型品の生産に向く第10世代(2850mm×3050mm)のガラス基板を採用するわけだが,50型や60型台といった大型液晶テレビの需要に確信があるのか
現在は32型がボリューム・ゾーンだが,今後はこれに加えて42型の需要も相当大きくなると見込んでいる。新工場は,まずはこの42型の生産に照準を絞ることを考えている。採用するガラス基板からは42型が15枚取れる。42型を中心にしながら,57型や65型なども生産する予定だ。
――亀山・第2工場で採用したインクジェット技術によるカラー・フィルタ形成のように,新たなプロセスの導入は考えているのか
生産効率を高めるという点では,部材やガス・電気などのインフラを取り込んで,コンビナートとして展開する効果が非常に大きいと考えている。もちろん,新たなプロセス技術も導入していくが,詳細については容赦してほしい。インクジェット技術によるカラー・フィルタの形成は,新工場でも展開する予定だが,さらに新たなカラー・フィルタ技術を各社が開発してきている。そうした新規技術も導入したいと考えている。
――ガラス基板はコンビナートに誘致する米Corning社からの1社供給になるのか
Corning社に加えて,近くに工場がある旭硝子からも供給する。1社供給ということはない。
――新工場の立ち上げに合わせて液晶パネルの外販を積極的に始めるとのことだが,なぜ従来と方針を変えるのか
これまでは,パネルの生産能力が不足していた。世界の液晶テレビの需要の高まりがあまりに急激すぎて,外販できる能力を持ち合わせていなかったのが実情だ。新工場が立ち上がれば,十分な供給能力が備わる。テレビ・メーカーからの要望があれば,積極的に供給していきたい。
――外販比率はどの程度にするのか
これからテレビ・メーカーの要望を聞いたうえで判断していく。外販比率の目安は決めていない。
――液晶パネル工場への投資額である3800億円は,どの程度で回収できるのか
数年以内に回収できると試算している。
――「亀山モデル」という名称は今後どうするのか
今のところ決めていない。さまざまな意見を聞きながら検討していきたい。
――今後,有機ELパネルの存在感が高まった場合,どうするのか
液晶技術は今のままで止まらない。これからも,「すごい液晶」を提供していく。真の壁掛けテレビの実現に向けて,液晶技術を進化させる。
――太陽電池の工場を液晶パネルの工場と同じ敷地に建設することによって,どのような相乗効果を期待しているのか
部材やガス・電気などのインフラを取り込んで生産効率を高めるという液晶パネルと同様のシミュレーションが,太陽電池においても成り立つと考えている。
――コンビナートには,最終的にどの程度の企業が集まるのか
現時点では回答を差し控えたい。
――新工場の建設地を堺市に決めた理由は
関連企業の工場を集結したコンビナートにするために,亀山工場に比べて広大な土地が必要だった。まずは,その点で候補となった。さらに,シャープのような会社の規模では技術者の数が限られている。そのため,できるだけ技術者の拠点(天理や亀山など)から近いところが良いと判断した。本社からも近いという利点がある。
2007/02/08
コーニング、日本における第8世代LCDガラスの生産能力を拡大
大型製品の供給能力向上により日本と台湾の顧客を支援
コーニングインコーポレイティッド(以下、コーニング、本社:米国ニューヨーク州、社長兼CEO:ウェンデル P.ウィークス)は本日、同社の取締役会が1億6,000万ドルの設備投資計画を承認したと発表しました。この計画は同社の静岡工場におけるアクティブ・マトリックス型液晶ディスプレイ(LCD)用大型ガラス基板の生産能力を新たに拡大することを目的とするものです。
この設備投資は来年にかけて実施されるものであり、ガラス基板の生産は2008年半ばまでに開始される見込みです。生産能力数値は公表されていません。
コーニングディスプレイテクノロジー社長ジェイムズ P. クラッピンは次のように述べています。「コーニングは優れた技術的ノウハウによって、卓越した製品の安定的供給源となるための取り組みを強化し今日のリーダーシップを築いてきました。日本と台湾における当社の顧客に対する液晶テレビの需要は40インチ以上の製品を中心に高まる一方であり、今回の生産能力拡大によってそれら顧客への支援が強化されることになります」。
2006年、コーニングはシャープ株式会社との長期供給契約を締結し、それによって三重県にあるシャープの第8世代工場に対するガラス基板の主供給メーカーとなりました。この工場は40インチ以上の液晶テレビの生産に特化しています。
第8世代のサイズは 2160 x 2460 mmであり、現在世界最大のガラス基板となっていますが、次世代の基板もすでに準備が進められています。「第8世代の生産能力拡大とともに、コーニングはさらに大型の基板に対する顧客の需要に備えるため、第9世代以降の製品開発にも着手しています」とクラッピン社長は述べています。
静岡工場で生産される第8世代の基板はコーニングのEAGLE XG™ ガラスです。EAGLE XGは重金属を含まない初めてのLCD向けガラス基板です。またハロゲン化合物も含んでおらず、現在市場に出ている製品の中で最も環境に配慮したLCDガラスとなっています。
コーニングは以前、2007年のLCDガラス基板市場は全体として30%台半ば前後の伸びを示す見込みであると述べました。また、世界のテレビ市場における液晶テレビの普及率は、昨年の22%から本年度は33%に達するものと予想されます。さらに、2007年における世界的な総ガラス量は2006年の12億平方フィートから約4億平方フィート増大する見込みです。
コーニングについて
コーニング(www.corning.com)は、多岐分野に供給可能なハイテク技術を有し、特に成長が期待される産業分野に貢献しています。特殊ガラス、セラミック、ポリマー、および光の特性操作に関する専門知識と高度な製造プロセスと生産能力を組み合わせて、通信、フラットパネルディスプレイ、環境、半導体、ライフサイエンスなどの産業向けの革新的製品の技術開発および供給を行っています。
2007/10/20
大日本印刷、堺に進出 シャープ関連企業で初
大日本印刷は十九日、シャープが液晶テレビのパネル工場を建設する大阪府堺市堺区の堺浜地区に、液晶カラーフィルターの新工場を建設すると発表した。二〇一〇年三月までに稼動させ、製造するすべての液晶カラーフィルターをシャープの堺浜新工場に供給する。
大日本印刷の投資額は四百三十五億円規模で、フィルターの生産量は月間三万六千枚。設備の延べ床面積は約五万七千平方メートルで、従業員数は約百二十人となる。十一月に着工する。
大阪府は、堺市へ進出するシャープの関連部品メーカー四社に対し、十年間で計百八十億円の補助金交付を決めており、大日本印刷はそのうちの一社。
他の三社もそれぞれ、百億円を超える大規模投資を検討しており、本年度から施行された企業立地促進条例に基づく補助金の要件を満たしている。大日本印刷への補助額は「三十五億円から五十億円」(府企業誘致推進センター)程度になる見通し。
太田房江知事は「シャープの堺浜新工場には、関連企業の立地が十数社あると考えているが、第一号が早々に決まったことは大変喜ばしい。企業立地促進条例に基づき、同社に必要な支援を行っていきたい」とコメントした。
府は、シャープと関連企業で一兆円の投資額と二兆円の出荷額を推計、十年間で千二百億円の税収増を見込んでいる
2007年10月19日 | ||||||||||||||||||||||||||
大日本印刷 世界最大サイズの第10世代向けに インクジェット方式による液晶用カラーフィルター工場を建設 |
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大日本印刷株式会社(本社:東京
社長:北島義俊 資本金:1,144億円 以下:DNP)は、インクジェット方式による第10世代(2,850mm×3,050mm)液晶用カラーフィルターの新工場を、大阪府堺市に建設します。
この新工場で製造するカラーフィルターは、シャープ株式会社が大阪府堺市に建設を進める新工場へ全数を供給する予定です。投資額は約435億円規模程度、生産能力は第10世代のマザーガラスで月産3万6千シートです。本年11月に着工し、2010年3月までに稼働を開始する予定です。 【背景と概要】 DNPは、堺の新工場のほか、これまで独自に進めてきた北九州黒崎工場での、インクジェット方式の第8世代ラインの増強計画も予定通り実施し、供給体制を強化する方針です。 【DNPの液晶カラーフィルター生産能力】
【新工場の概要】
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化学工業日報
2007年11月16日(金)
大陽日酸−エア・ウォーター、産業ガス供給で合弁
産業用ガス最大手の大陽日酸と業界2位のエア・ウォーターは、シャープが建設を決めた大阪・堺市の液晶パネル工場を中心とするコンビナート内に合弁会社を設立してガス供給に参画する。産業用ガス業界でメーカー同士が合弁により顧客の新工場建設の段階からガス供給で協力し合うのは初めて。投資額は当初見込みでは1000億円だったが、600億円程度で決着しそう。出資は両社の折半と見込まれる。すでに両社は基本合意しており、来年8月までに新会社を設立する方向で調整が進められている。
2007/11/29 日本経済新聞夕刊
凸版、シャープ向け新工場 堺の液晶拠点で主要部材
液晶テレビ用カラーフィルター世界最大手の凸版印刷は29日、シャープが堺市に整備を進める液晶産業コンビナートへの進出を決めた。400億円超を投じて液晶パネルの主要部材であるフィルターの新工場を建設、2009年に稼働させる。シャープは堺工場で世界最大級のガラス基板を使った次世代液晶パネルを組み立てる計画。堺の液晶コンビナートにはカラーフィルター2位の大日本印刷も進出を決めており、液晶の先端技術を核にした新しい形の産業集積が進む。
シャーブは畳5枚サイズの「第十世代」のガラス基板を扱う液晶パネル新工場を09年秋までに本格稼働させる見通し。凸版の新工場はこれに合わせてカラーフィルターを供給する。月産能力はガラス基板換算で約3万6千枚。第十世代の基板から効率よく生産できる40型以上の液晶テレビの需要が伸び、設備投資に見合う収益が確保できると判断した。
同コンビナートにはガラス基板を供給する米コーニングが進出を表明、大日本印刷も新工場を建設する。凸版はカラーフィルターの外販市場で35%のシェアを握る世界最大手。液晶パネル部品の世界大手が集結する産業集積となる。
シャープと凸版、大日本は生産計画を共有して在庫管理や物流を効率化、第十世代の液晶パネル生産でも競争力を高める。シャープはガラス基板換算でパネル生産能力を7万2千枚まで増強する計画で、凸版の進出によってかラーフィルターの調達のメドが立つ。
凸版は堺工場をめぐっては、「市場動向を見極めたい」(首脳)として方針を明らかにしなかったが、大日本への対抗上進出を決めた。
2007年11月29日 凸版印刷
凸版印刷、フォトリソ方式による第10世代カラーフィルタ工場を建設 2009年度中に量産開始
凸版印刷株式会社(本社 東京都千代田区、代表取締役社長 足立直樹、以下、凸版印刷)は、大阪府堺市にシャープ株式会社(本社 大阪市阿倍野区、代表取締役社長 片山幹雄、以下、シャープ)が建設を進めている「21世紀型コンビナート」内に、※第10世代サイズ(2850mm×3050mm)対応カラーフィルタの新工場を建設することを決定しました。
総投資額は、約420億円となります。将来の需要拡大が見込まれる40インチクラス以上の液晶テレビ市場向けの需要に対応します。
凸版印刷は第8世代での実績を基に、世界で初めて「フォトリソ方式」を第10世代のカラーフィルタ生産に導入し、高い品質で安定的に供給していきます。2009年度中の稼動開始を予定しており、これにより、トッパングループ全体のカラーフィルタ月産能力は1,600万枚(14インチ換算)以上となり、世界最大の生産規模をさらに拡大します。
<ねらい>
トップメーカーとしての競争力
・凸版印刷は世界に先駆けて、1971年に撮像管用カラーフィルタの生産を開始し、30年以上フォトリソ方式の技術を蓄積してきました。フォトリソ方式では他社に先駆けて2004年から第6世代を、2006年からは第8世代を導入し、シャープ亀山工場向けなどにカラーフィルタを納入してきました。第10世代においても新たに生産・供給を行い、カラーフィルタのトップメーカーとして液晶テレビ市場の拡大に貢献していきます。
・第10世代においては、全ての工程、設備、材料、建築などを徹底的に精査し、設備投資額を約420億円に最小化し、生産効率を大幅に改善します。
フォトリソ方式の採用
・凸版印刷では、既にフォトリソ方式で第8世代の高品質なカラーフィルタを安定的に供給しており、液晶業界では高い評価をいただいています。
・2010年以降はスーパーハイビジョンなどの放送規格も検討されており、液晶テレビに対して大画面、高画質、高精細への市場ニーズがさらに高まると予想され、これらへの対応も踏まえ、当社は大型サイズで実績のあるフォトリソ方式を採用します。
・凸版印刷は、既に第10世代でのフォトリソ方式による技術を開発し、カラーフィルタでの世界トップクラスの高品質を実現します。
<第10世代対応新工場の概要>
・所在地:大阪府堺市堺区堺浜地区(大阪府堺市堺区築港八幡町) ・総投資額:約420億円
・建築面積:約14,200m2
・延床面積:約46,300m2
・生産能力:最大生産能力 3万6千シート/月
(最大生産能力まで需要に合わせ段階的に増強)
新工場の稼働により、トッパングループ全体の生産能力は日本国内、台湾合計
で月産1,600万枚以上(14インチ換算)となり、世界最大の生産規模をさらに
拡大します。
第6世代以上の生産能力においても、月産245万枚以上(32インチ換算)とな
り、世界最大の供給能力になります。
・量産開始:2009年度中に稼動予定
<第10世代対応新工場の主な特徴>
1)最小限の設備投資で、最大の生産効率。
2)建築物には、大規模地震が発生した場合にも生産に影響を与えないような耐震・制震構造を採用。
3)廃棄物、排水、CO2などの排出削減に配慮した「環境先進工場」。
※第10世代サイズ
・第10世代のマザーガラスは畳5畳分に相当します。このサイズからは60インチクラスのカラーフィルタは6枚、50インチクラスは8枚、40インチクラスは15枚取ることができ、今後の大型液晶テレビ市場に必要とされるサイズが効率よく生産できます。