朝鮮日報 2008/2/27           ソニー、第八世代増設には参加

サムスン電子、ソニーに去られ液晶1位危うし

 ソニーが26日、サムスン電子ではなく、シャープと次世代液晶パネルの合弁会社を設立すると発表したことから、サムスン電子に衝撃が走った。過去4年間、ソニーと協力して液晶工場を運営してきたサムスン電子は置いてきぼりのまま、シャープとの次世代液晶工場の合弁計画を発表したからだ。つまり次世代液晶市場においてソニーは、今後サムスンと事業面で協力を行うことはないことを明らかにしたようなものだ。その結果サムスン電子は実際のダメージだけでなく、目に見えない面でのさまざまな損失が避けられなくなった。世界の業界勢力図もこれまでのように国境を越えた協力関係から、「韓国企業VS日本企業」という激しい対決の構図へと変わることになった。

◆サムスン電子の莫大なダメージ

 サムスン電子は現実問題として、合弁工場S‐LCDの次世代液晶ライン(第10世代)への投資をすべて負担しなければならなくなった。第10世代は近く登場する60インチ台の液晶パネルを製造する工場で、建設費用だけでもおよそ5兆ウォン(約5700億円)と推定される。これまで新規の液晶工場建設のたびに、サムスン電子とソニーが折半して費用を負担してきた点から考慮すると、2兆5000億ウォン(約2830億円)というサムスン電子の莫大な追加費用の負担が避けられなくなった。ソニーは2004年から06年まで、工場への追加投資としておよそ1兆ウォン(約1100億円)から1兆3000億ウォン(約1470億円)を投資しており、サムスン側の負担がそれだけ軽減されていた。

 その上、第10世代ラインの稼動による年間売り上げとして予想される4兆ウォン(約4500億円)の半分を占める、ソニーへの輸出分2兆ウォン(約2300億円)も消え去ってしまう。ソニーが次世代液晶パネルをシャープとの合弁工場から調達することにしたからだ。ソニーはこれまで4年間で毎年およそ2兆ウォン(約2300億円)から3兆ウォン(約3400億円)分を購入していた。

 また、ブランドイメージの低下も避けられない。サムスン電子は合弁が決まった2003年、世界のデジタルテレビ市場で1位だったソニーに液晶パネルを供給するということで、部品の競争力に優れた企業というイメージが定着し、その結果、世界の液晶テレビ市場で1位にまで登りつめた。現時点で液晶パネルと液晶テレビ市場で1位となってはいるが、世界的な激しい競争の中においてソニーとの協力関係終了という事実が、サムスン電子にとってプラスのイメージとなることはないからだ。合弁会社のS‐LCDにはサムスン電子の李在鎔(イ・ジェヨン)専務も取締役として名を連ねている。

 

◆日本VS韓国の対決構図に

 ソニーが今回の決定を下した理由はさまざまだ。ソニーがサムスン電子との合弁会社設立後に日本の財界から排除されるかのような雰囲気が形成されていたという事実、また当時とは異なり、サムスン電子が世界のデジタルテレビ市場でソニーを圧倒し始めたことによるソニー内部の反感、シャープが積極的な液晶パネルの増産に踏み切り、投資パートナーを積極的に探し求めていた事実、2003年に合弁に踏み切ったソニーの久夛良木社長退任後、サムスンとの人脈が途切れた点など、さまざまな要因が考えられる。テンピス投資諮問のミン・フシク常務は、「ソニーとしてはさまざまな要因が重なり、サムスンが裏金疑惑で経営に空白が生じた現時点を決断の時期と判断したのだろう」と述べた。

 しかしどのような理由があれ、背景として一貫しているのは日本メーカーによる反韓国メーカーの雰囲気というのが一般的だ。日本メーカーは90年から100年の歴史を持つにも関わらず、ここ5年から10年で韓国企業に世界トップの座を奪われている。1980年代から90年代に世界を制したメモリー半導体市場はサムスン電子とハイニックス半導体に奪われ、30年前に最初の液晶製品を販売したシャープは世界市場でサムスン電子やLGフィリップスLCDに今も押され気味だ。最近はテレビでの強者だったソニーもデジタルテレビ市場でサムスン電子にトップの座を奪われ、非常に悔しい思いをしている。この結果、最近日本メーカーは大々的な投資に乗り出し、盛り返しを図っている。そのような中でも液晶事業は唯一、両国の協力関係が維持されてきた分野だったが、今回のソニーの件で日本企業団結の雰囲気が形成されたことにより、その影響は避けられなくなった。

◆内部責任論も

 このような状況の中で、韓国企業の間では緊密な対応が要求されている。最近すでにディスプレイ産業協会を中心に、韓国生産ラインの共同使用や部品開発への支援を推進する動きが現れ始めている。

 また、液晶総括などサムスン電子内部の責任論も指摘される可能性が高い。ソニーがすでに昨年末から新ラインへの投資に参加しないことを決定しており、台湾からの調達比率を高めるなど、液晶市場での動きはソニーの離脱可能性を示唆していたにも関わらず、事前に適切な備えができていなかったからだ。

 シャープも昨年中ごろから第10世代製品への投資を発表してパートナーを探し求めていたことから、サムスン電子がこれらの状況にしっかりと対応できなかったことが現在の状況を招いたとの指摘もなされている。


日本経済新聞 2008/3/4

薄型パネル 提携加速
 ソニーとサムスン 追加投資 液晶合弁に2000億円

 ソニーと韓国サムスン電子は韓国の液晶パネル合弁工場に追加投資し、薄型テレビ向け大型パネルを効率生産できる生産ラ
インを増強することで大筋合意した。投資額は2千億円前後とみられ、両社が折半する。液晶テレビ世界2位のソニーはシャープと最先端のパネルを共同生産することを決めているが、同時にサムスンとの関係も強化。競争力のカギとなる液晶パネルで2社から安定調達する体制を固める。
 韓国忠清南道牙山市にあるソニーとサムスンの合弁会社「S-LCD」に月産能力5万ー6万枚(ガラス基板換算)の工場を増設。2009年上半期に量産を始める。S-LCDは昨夏、32型に適した「
第八世代」と呼ばれるパネルで月産5万枚の工場を稼働させており、今回の投資で第八世代パネルの生産能力は大幅に増える。
 ソニーは自前の液晶パネル工場を持たず、主に液晶パネルと同テレビで世界首位のサムスンと組んで調達してきた。だが世界の薄型テレビ市場の急拡大でパネルの需給が逼迫、S-LCDの生産能力に限りがあり、パネルの安定調達が難しくなっていた。
 このためシャープが09年中に稼働させる40型を効率的に生産できる「第十世代」工場に出資して新たな調達先を確保する一方、サムスンとの合弁工場への追加投資も決めた。ソニーは世界の液晶テレビ市場でサムスンに次ぐ二位で、シャープは三位。テレビ販売で競合するがパネル生産では協力関係を強化する。
 液晶パネルの再編では、松下電器産業が新工場建設や日立製作所への供給を決めたほか、東芝がシャープから調達する方針を表明。国内でパネルを生産するメーカーはシャープと松下電器に集約される。
 サムスンもソニーとの合弁事業は液晶パネルの増産に伴う投資負担を軽減できる利点がある。ソニーがシャープと提携した後も、ソニーとの提携関係を維持する方針だ。