日本経済新聞 2002/11/12(夕刊)

プラント各社 廃材発電 商用化へ   環境配慮、排水利用も

 プラント各社は生ごみや木くずなどバイオマス(生物資源)を燃料とする発電事業に乗り出す。石川島播磨重工業は排水から出るガスを燃やして発電し、食品工場向けなどに電力を供給。日揮は廃木材から石炭化燃料を生産、電力会社に販売する。バイオマスは温暖化対策につながるエネルギー源として注目される。新サービスで需要を掘り起こす。

 石播は食品工場や商業施設の敷地に最大2500キロワットの出力が得られるガスタービンを設置。排水から出る有機物を含むメタンガスなどを燃料に発電し、工場などに低価格で売電する。現行の電力料金より1割弱安くする方針。1台数億円の発電設備は石播の負担で設置する。石播は売電で年数件の受注を目指す。
 自社開発のガスタービン「IM270」を改良した発電設備を利用する。排水などから取り出すガスは不純物が多く都市ガスの約半分のカロリーしかない。燃料を空気と混ぜてから燃焼室に注入する新たな希薄燃焼機構を搭載し、完全燃焼できるようにした。
 日揮は2003年度から廃木材を石炭化した燃料を電力会社に販売する。廃木材をセ氏300度、120気圧の高温高圧下で石炭化し、さらに石炭を流体燃料化して利用する。既存の火力発電所で使うことができる。価格は重油より約3割高くなるが、量産化で価格引ぎ下げを目指す。
 今年度中に約2億円を投じ茨城県大洗町の技術研究所に試験プラントを設置。来年度に月間約6千トンの廃木材から3千トン程度の石炭をつくる商用プラントを建設する。
 2003年度はバイオマスのほか風力や太陽光など再生可能な自然エネルギーの一定以上の利用を目指した「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法(RPS法)」が施行される。各社はプラント販売だけでなくバイオマスの需要拡大につながる売電事業などを強化する。

バイオマス発電
 生ごみや下水汚泥、廃木材など動植物をもとにしたエネルギー源を活用した発電。廃棄・焼却処分に
なるものから燃料となるガスを取り出せるため、化石燃料の利用を減らし二酸化炭素の排出量を抑える効果が期待できる。
 微生物の投与や高温で熱して取り出したガスを発電利用するのが一般的。風力や太陽光と異なり燃料の備蓄が可能。政府はバイオマス発電について、2010年度に1999年度の約6倍に相当する原油換算で34万キロリットルという導入目標を掲げている。

バイオマス発電の主な取り組み

企業名 内容
日揮 廃木材を石炭燃料化
川崎重工業 廃木材からガス抽出
荏原 廃木材、生ごみ向けプラントを開発
鹿島 生ごみからメタンガスを抽出する技術を開発
石川島播磨重工業 排水利用し発電
三井造船 家畜ふん尿など向けプラント販売
神戸製鋼所 下水汚泥向けプラント販売

 


2002/11/24 朝日新聞

生物資源アルコール混合ガソリン普及に法改正へ

 経済産業省は、木くずや廃材、間伐材などバイオマス(生物資源)から取り出したアルコールをガソリンに混ぜた自動車燃料の普及を促すため、03年の通常国会に揮発油等品質確保法改正案を提出する方針を固めた。これまでアルコール混合燃料について特に規定はなく、アルコールを多く含む燃料も売られていたが、新たに規制対象に含める一方、省令で安全・環境の基準を定めることで、自動車ユーザーが安心して使えるようにする。
 経産省は法律を改正した後、03年秋をめどに販売可能なアルコール濃度の基準も定める。0〜5%程度になる見通し。基準を超える燃料は販売禁止になるが、個別に審査して安全や環境面で問題がない場合には認可する制度も設ける。

 海外では自動車燃料へのバイオマス利用が進んでいる。経産省によると、米国ではトウモロコシが原料のアルコールを10%混ぜたガソリンのシェアが約1割。ブラジルでは、サトウキビからつくるアルコールを22%前後混ぜた燃料がシェア9割近くを占める。ただし、両国で製造・輸入される自動車は、混合燃料が使えるよう素材などが強化されている。

 日本では、現在市販されている自動車にそのまま使えることを前提に基準を決める。

 日本ではまだ、バイオマス燃料開発の動きはあまり活発ではないが、用途を増やすことで促進される可能性がある。有望なのは木材で、経産省は05年に木材からアルコールを取り出す技術を開発するため、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)を通して大阪府立大学などに研究開発を委託している。

 リサイクルだけでなく、木材の利用が増え植林が進めば、二酸化炭素(CO2)の排出を抑えることにもつながるとの期待もある。


バイオマス混合燃料事業へ、商社など参入に前向き

 経産省が、バイオマス製の低濃度アルコール混合燃料の自動車への利用を増やすため、法改正の方針を固めたが、商社や石油元売り会社は新たなビジネスチャンスとして、前向きな姿勢をみせている。地球温暖化の防止対策として、欧米をはじめ世界中で同燃料の導入の動きが広がっていることも背景にある。
 三井物産の全額出資子会社「
バイオ・ナノテック・リサーチ・インスティチュート」(BNRI、本社・東京)は、ナノテクノロジー(超微細技術)を使ったエタノール製造装置を開発した。水を含んだ濃度約93%のエタノールを、蒸留せず、独自のフィルターを通すことで99.7%まで濃縮する。エタノールは、ブラジルではサトウキビから作られ、混合燃料に使われている。

 BNRI社は、ブラジルで、今年末にも装置の実証試験を始める。半年間の試験後に発売する予定。この装置で製造したエタノールをブラジルから日本へ輸出することも視野に入れており、「国の法改正の動きには注目している」(同社幹部)という。

 石油元売り業界最大手の新日本石油も「(アルコール混合燃料の)導入に反対しない」(松村幾敏取締役・開発部長)方針だ。当面の理由としては地球温暖化防止対策だが、将来の「燃料電池」の実用化を考えると導入は必要という。

 燃料電池の燃料にはオクタン価が低いガソリンが適しているが、それは通常のガソリンエンジンの燃料としては不向き。エタノールを混ぜてオクタン価を上げたものならば、燃料電池、ガソリンエンジン両方の燃料としても使える、という。


日本経済新聞 2003/2/20

自動車燃料にバイオマス 商社など実用化へ 温暖化ガス削減めざす

 大手商社や機械メーカーが、廃材や穀物などバイオマス(生物資源)を使った自動車燃料の実用化に乗り出す。生物資源を原料にエタノールなどを生産、ガソリンや軽油の代替燃料として利用する。丸紅などは年内にタイに生産プラントを建設、2006年にも日本への輸出を開始する。日揮や三菱重工業も国内で実証実験に着手した。温暖化ガス削減の有力手段として、生物資源燃料利用の動きが広がってきた。
 丸紅はサッポロビール、月島機械と共同で、タイのアルコール製造会社とエタノールの生産プラントを6月にも建設を始める。投資額は20億−30億円。サトウキビの搾りかすなどを微生物を使って発酵分解する施設。2005年春にも年間3万キロリットルの規模で生産を開始する。
 丸紅によると、タイではガソリン消費量の約10%にあたる60万キロリットル分の生物資源燃料の需要が見込まれるという。丸紅などは年間10万キロリットル程度と総需要の6分の1にまで生産規模を拡充し、一部は日本に輸出する計画だ。
 三井物産はエタノールから水分を取り除く濃縮装置を開発し、ブラジルのエタノール製造会社コザンと3月に生産試験を開始する。技術開発にメドが付きしだい、日本への輸出も検討する。伊藤忠商事もマレーシアでパーム油を原料に生物資源燃料を生産する計画。来年度に約20億円を投じて、年間5万トン規模のプラントを建設する。
 機械メーカーも実用化に向けた準備を急ぐ。日揮は昨年、廃木材や古紙などからエタノールを生産する実証プラントを鹿児島県出水市に設置した。三菱重工業は長崎総合科学大学と共同で実用化に向けた技術開発に取り組んでいる。
 生物資源燃料の実用化の動きは環境規制の厳しい欧州や、農産物の利用用途拡大などを狙った米国、ブラジルなどで1990年代から広がった。ガソリンなどに10−20%混ぜ利用するのが一般的。日本ではコストが割高なことから事業化に慎重な企業が多かったが、昨年末、政府が「バイオマス・ニッポン総合戦略」を閣議決定。温暖化ガス削減の有力手段として、生物資源燃料の利用を促す方針を表明した。
 日本自動車工業会もエンジンの耐久性や安全性などについての検討組織を設ける計画で、普及に備える。政府見通しによると、生物資源燃料が国内で普及し始めるのは2004年ごろで、国内エネルギーの総消費量の6%程度をまかなえるとの試算を公表している。


2004/05/21 宇部興産

セメント工場内に「廃木材チップ燃料化設備」完成
http://release.nikkei.co.jp/detail.cfm?relID=72137

 宇部興産(株)(社長:常見和正)は、木質バイオマスを自家発電設備の燃料として利用するための「廃木材チップ燃料化設備」を本年3月に完工し、このたび本格稼動に入った。
 
 本設備は、宇部セメント工場内に設置した「廃木材破砕設備」と伊佐セメント工場内に設置した「発電用ボイラへの投入設備」を併せたものであり、山口県内及び県外で発生する間伐材や建設廃木材等を、破砕設備でチップ化した後、同社の専用道路(興産道路)を経由して伊佐セメント工場に搬送し、自家発電用の循環流動層ボイラに投入することになる。

 処理能力は約45,000t/年で、自家発電設備で使用する燃料の20〜25%を置き替える予定である。

 なお、本計画は林野庁の補助事業「木質バイオマス利活用施設整備特別対策事業」として実施したものであり、森林間伐材の有効利用を促進し森林資源の生育を図ることも狙いの一つ。

 また、平成14年「建設リサイクル法」の改正により建設廃木材の再生利用義務が強化され、廃木材利用先の確保という社会的要請にも対応したものである。

 宇部興産(株)のセメント工場(宇部・伊佐・苅田)では、現在3工場で年間約300万t以上の廃棄物を受入・使用しており、セメントの原料として利用しているものは、全国各地の火力発電所からの石炭灰、鉄鋼業界からのスラグ類、西日本地区の自治体からの上下水汚泥やトクヤマ社との共同出資会社「山口エコテック」から無害化処理した都市ゴミ焼却灰等である。

 一方、最近では石炭に代わるセメント工場の燃料用として、廃プラ、廃タイヤや古畳等の受入も積極的に進めており、今回の廃木材チップ燃料化もその一環である。

 宇部興産(株)は本設備により、セメント工場における発電コストの削減を図るだけでなく、資源の有効活用促進、CO2削減による地球環境保全等への貢献を果たすものと考えている。


日刊工業新聞 2004/6/15

丸紅テクノなど、タイでバガスからエタノール抽出する事業立ち上げ

 丸紅テクノシステム(東京都千代田区、石川透社長)、月島機械、サッポロビールの3社連合はタイでサトウキビのバガス(絞りカス)からエタノールを製造するモデル事業を立ち上げる。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から委託を受け、04年度に企業化の調査を行う。月島機械が米国から導入して研究を進めている高効率エタノール転換技術を利用する。バガスからエタノールを取り出すシステムを海外で実用化するのは初めて。

 タイはサトウキビから砂糖とエタノールを抽出する事業を各地で進めており、このエタノールは日本へも輸出している。現地に豊富にあるサトウキビから、焼却以外に使われていない大量発生するバガスをエタノールに転換するシステムを、分解・発酵して得た糖蜜(とうみつ)からのエタノール生産と合わせて事業化する。エタノールを取り出す比率はバガスからが10%、糖蜜からが90%。


丸紅テクノシステム http://www.marubeni-techno.com/
   
1987年9月  丸紅株式会社の100%出資により日本アグリシステム株式会社として設立。
1994年4月  幅広く産業機械分野に対応する会社として、業務内容拡張に伴い商号を丸紅サンキ
 株式会社に変更。 
2000年4月  丸紅(株)生活産業機械部及び丸紅マシナリー(株)生活産業部、設備機械部との統合
 に伴い、商号を丸紅テクノシステム株式会社に変更。

月島機械 バイオマス技術 
http://www.tsk-g.co.jp/tech/industry/bio.html

バイオマスについて

 バイオマスは広くは生物由来の資源全体を表し、環境調和型の再生可能エネルギー源として注目されています。特に廃棄物系バイオマスに分類される林地残材、建築廃材、稲わら、籾殻、家畜屎尿、厨芥、下水汚泥などは発生量が年間数千万トンにのぼり、資源として大きなポテンシャルをもっています。

  現状では大部分がそのまま焼却等による熱回収、あるいは廃棄処分されていますが、近年、農水省等関係省庁が策定した「バイオマスニッポン総合戦略(案)」に見られるように、今後バイオマスをより有効に利用していく動きが大きくなりつつあります。このうち、特に木質系バイオマスは元をたどれば植物の光合成によるCO2の固定化を通してつくられるため、再生可能な資源であることに加え、正味のCO2排出量はゼロであり化石資源の使用に比べて温室効果ガスを削減する効果を持ちます(図1)。

 従ってバイオマスをエネルギーや化成品など様々な有価物に変換することによって持続可能な社会形成に貢献できるものと考えます。

図1)再生可能なバイオマス資源
バイオマスは一般に生物起源の原料を表し、燃料や生分解性プラスチックなど様々な化成品変換し利用されます。植物はCO2を吸収して成長し、新たな原料となるため、バイオマスは再生可能な持続的資源と見ることができます。

バイオマスの変換技術

 バイオマスの変換技術の一例を示したのが(図2)です。地域の実状、バイオマス原料の種類によって製品および変換技術の選択は多様なものとなることが予想されます。この中で月島機械はサーマル変換による発電、バイオ変換よるエタノールやメタンガスの製造、貯蔵 などに取り組んでいます。

図2)バイオマスの変換技術

 

エタノール製造

 その中でも2001年に米国から技術導入したバイオマスエタノール 技術(図3)は環境にやさしい燃料として期待されるエタノールを 木質系廃棄物から高い収率で製造する技術です。

 米国ではバガス(サトウキビの絞り滓)を原料にパイロット規模で実証されており(図4)、信頼性の高いプロセスです。当社では本技術を建築廃材 に適応するべく環境プロセス開発センター(千葉県市川市)にてパイロットテストプラントの建設を進めています。

 

 

 

 

 

 

 

 


図3)エタノール製造
BMTプロセスでは従来利用できなかったC5糖分をエタノールに変換する組換え菌を用いることによって、様々なバイオマス廃棄物から高い収率でエタノールを製造することができます。

図4)パイロットプラント概要

■ 場所  米国ルイジアナ州ジェニングス
■ 運転期間  2年間超
■ 処理量  第1パイロットプラント 1T/日
 第2パイロットプラント 4T/日
■ 運転員  6名
■ 原料  バガス、籾穀、ウッドチップ  

 


2005/12/19 Petrobras

Incorporation of company in Japan for the import and distribution of ethanol
http://www2.petrobras.com.br/publicacao/imagens/_2548_empresa_no_japao_ing.pdf

PETROBRAS, a Brazilian international energy company, announces that its subsidiary, Petrobras Internacional Braspetro BV- PIB BV, with registered offices in the Netherlands, is incorporating Brazil-Japan Ethanol Co., Ltd. in Japan (in Japanese, to be known as
Nippaku Ethanol K. K.). The companys purpose will be to import and distribute Brazilian-produced ethanol and the developing of technical and commercial solutions for the reliable and long term supply of alcohol to the Japanese market.
The ownership of Brazil-Japan Ethanol Co., LtD will be shared equally between Petrobras and
Nippon Alcohol Hanbai K.K., with a 70% share in the distribution of ethanol to the Japanese market. Company management will be shared by the two companies, thus combining their distinctive and complementary know-how, technology and experiences for realizing the safe bulk export of quality fuel ethanol from Brazil to Japan.
The new company will seek to identify technical and commercial solutions for inserting ethanol into the Japanese energy matrix in substitution for fossil fuels and in line with the objective of reducing green houses gases, such as carbon dioxide (CO2), and thus contributing to the success of the Kyoto Protocol. In effect since February 16 2005, the protocol - considered to be the most promising of the approximately 200 agreements on the environment under the auspices of the United Nations - provides for the reduction by industrialized countries of emissions of six gases causing global warming.
Strategically, the incorporation of Brazil-Japan Ethanol Co., Ltd. is in line with the objective fixed in the Strategic Plan 2005-2015 for the internationalization of the Company
s business. It will permit Petrobras to break into one of the most complex and important energy markets in the world, both in terms of ethanol logistics distribution as well as providing additional opportunities for the Company in the fuel distribution sector in Japan.


日本アルコール販売梶@昭和22年政府専売アルコール元売捌人として設立
http://www.aruhan.gr.jp/aruhan/index.html


August 02, 2005

ブラジルPetrobras(ペトロブラス)社、エタノールの輸出を開始
http://greencars.air-nifty.com/news/2005/08/petrobras_9c6d.html

ブラジルのPetrobras(ペトロブラス)社は今週、エタノールの輸出を開始した。初出荷はベネズエラ向けで、同国向けの当面の輸出予定量は25,000立方メートル(約660USガロン)。 
Petrobrasは、国営の石油・ガス・エネルギー会社で、今年初め、再生可能エネルギーの貿易市場に参入する意思を表明していた。 
同社は、事業に必要な輸送用基盤施設開発のため、今後
5年間に3億3千万ドルを投資する計画で、2010年までに輸出可能容量を年間80億リットル(21USガロン)にしたいとしている。 
ブラジルの燃料業界全体では
2004年に24億リットル(634百万USガロン)を世界市場に販売した。
Petrobras社の輸出先としてはベネズエラに続いて中国が、さらにそれを追う形で日本が予定されている。